説明

プレス機械用タイミング装置

【課題】
プレス機械のスライド位置に同期して動作する周辺装置の駆動を行うタイミング信号を発生するタイミング装置において、スライド位置だけでなく、その他可能にする。
【解決手段】
エンコーダ等から得られるプレス機械のスライド位置信号およびスライド位置信号以外の外部センサの検知信号により起動開始および停止タイミングデータを設定するデータ表示入力部と、設定データを記憶する記憶部と、プレス機械のスライド位置信号及びスライド位置信号以外のセンサの信号を入力できる入力部と、スライド位置信号及び外部センサからの検知信号とを利用し、タイミング信号を演算する演算処理部と、該演算処理部で演算されたタイミング信号を外部の周辺装置に出力する出力部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械の駆動と同期して駆動する周辺装置の起動または停止を行うためのタイミング信号を出力するタイミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドの昇降動作を行うプレス機械において、クランク軸や駆動用のモータ軸にスライドの位置を検出するためのエンコーダを取り付けたものはよく知られている。そして、このエンコーダからの出力を利用し、他の機器を起動(ON)又は停止(OFF)するタイミング信号を出力するプレス機械用タイミング装置もよく知られている。例えば、特開平9-225696号には、エンコーダの出力を利用したタイミング装置が開示されている。
【0003】
このようなタイミング装置は、スライドの動作位置に同期して、周辺装置を駆動することが行われている。例えば、プレス機械の動作に対応して、搬送装置が加工材料を搬入したり排出したりすることが行われるが、このような場合にタイミング装置のタイミング信号を用いて搬送装置を駆動するなどである。一般的なプレス機械用タイミング装置では、プレスのスライド位置がある位置からある位置に達するまで、あるいは、ある位置に達してから一定時間、周辺装置に対して起動信号を出力できるようになっており、このタイミング信号により周辺装置を起動又は停止させることで、プレス機械との同期を実現している。タイミング装置が周辺装置に対し起動信号を出力している時間は、プレスと周辺装置の動作を予測して設定を調整する。
プレスの動作に対応してタイミング信号を出力する場合に、そのタイミング信号の設定をモーション上のある一定区間駆動信号を出力するタイミング装置は特開2004-58131号などにも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−225696号
【特許文献2】特開2004−58131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなタイミング装置を用いて、プレス機械の動作に合わせて搬送装置の起動、停止を行う場合、作業者がタイミング信号を慎重に調整する手間がかかるという課題がある。すなわち、作業者は、周辺装置が確実に動作できるような条件を考慮してタイミング信号を調整し、試運転により問題が無いことを確認した後加工作業を開始することが必要である。この作業者のタイミング信号調整は、加工物の変更の都度繰り返すこととなる。
ところで、周辺装置の起動又は停止タイミングには、例えば、起動はプレス機械の動きに動作させるが、停止のタイミングはプレスの動きとは無関係に、他のセンサ(例えば、材料搬送の特定位置に設けた材料検知センサ)からの信号で停止させることができる場合がある。また、反対に、起動は他のセンサの検知信号により行い、停止はスライド位置信号により行う場合がある。
しかし、従来のタイミング装置は、プレス機械の動作に対応して起動時間の調整はできたが、それとは独立に外部のセンサの信号を利用して起動又は停止を行うことはできなかった。もし、外部のセンサからの検知信号を利用する場合は、タイミング装置とは別個の専用の制御装置を準備しなければならない不便さがあった。
【0006】
本発明の目的は、エンコーダ等のプレス機械のスライド位置検出器からの信号を用いて、周辺装置の起動等のタイミング信号を出力するだけでなく、外部からのタイミング信号によってもタイミング信号を調整可能なプレス機械用タイミング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、プレス機械のスライド位置信号を用いて起動開始および停止タイミングデータを設定する設定部を有するデータ表示入力部と、該設定入力されたタイミングデータを記憶する記憶部と、該プレス機械のスライド位置信号を入力する入力部と、該プレス機械のスライド位置信号と該記憶部に記憶されたタイミングデータとを比較し、該プレス機械のスライド位置信号が起動開始タイミングデータと一致した時点から停止タイミングデータと一致する時点までの期間タイミング信号を演算する演算処理部と、該演算処理部で演算されたタイミング信号を外部の周辺装置に出力する出力部とを有するプレス機械用タイミング装置において、
プレス機械のスライド位置信号以外の外部センサの検知信号を入力する入力部を設けると共に、前記データ表示入力部は、プレスの位置信号を用いた起動開始および停止タイミングデータに加えて該外部センサの検知信号により起動開始又は停止することを設定する設定部を有し、前記記憶部は該データ入力部により設定されたデータを記憶し、前記演算部は該記憶部に記憶された起動および停止を指示するデータに基づき、起動開始及び停止タイミングを演算することを特徴とする。
【0008】
上記課題解決手段によれば、入力部からプレス機械のスライド位置以外の外部センサの検知信号を入力することができ、また、データ入力部を用いて、起動開始をスライド位置が所定位置に達した時点で起動開始するかもしくは外部センサの検知信号で起動開始するか、又はスライド位置が所定位置に達した時点で停止するかもしくは外部センサの検知信号で停止するかを選択し、記憶部に入力するする。演算処理部は記憶部に記憶されたデータに従い、タイミング信号を演算し、出力部を介して出力する。
【発明の効果】
【0009】
上述したように、本発明は、プレス機械のスライド位置検出器以外の外部センサの検知信号を入力し、この検知信号によっても起動開始あるいは停止を行うことができる。したがって、スライド位置データに同期させつつ、スライド位置データと外部センサの組み合わせによりタイミング信号を自由に選択できるようになり、外部センサを設置できる周辺装置においてはタイミング信号の調整作業を軽減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を示す図
【図2】図1に示す実施形態におけるデータ表示入力部の設定部の一例を示す図
【図3】タイミング信号の設定例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施形態を示す図であり、図2は図1のデータ表示入力部の一例を示す図である。
【0012】
図1において、10はプレス機械であり、被加工材(ワーク)30を予めスケジュールされた形状にプレス加工する。1はモータであり、プレス機械のスライド(図示せず)の昇降動作を行わせるための駆動力を付与する。2はモータ1の回転駆動力を直線運動に変換するクランク軸である。3はエンコーダであり、クランク軸2に連結され、スライドの位置に対応するクランク軸の回転角度を検出するものである。20はエンコーダとは別個に設けられたセンサである。このセンサ20の検知信号は、後述するタイミング装置に与えられ、タイミング信号の演算に使用される。
【0013】
タイミング装置40は、エンコーダ3によって検出されたスライダ位置信号(駆動軸の角度位置)を入力する入力部41、センサ20の検知信号を入力する入力部42と、周辺装置を駆動するためのタイミング信号を出力する出力部とを有する。更に、タイミング装置40は、タイミング信号を発生するために必要な設定データを行うためのデータ表示入力部45と、その設定データや演算に必要なプログラムを記憶する記憶部46と、記憶部46に記憶された演算プログラムに従い、設定データを使用してタイミング信号を演算出力する演算処理部47を有する。44は信号やデータを各機器に伝送するためのバス(信号線)を示す。
【0014】
図1の構成におけるタイミング信号を演算出力する動作を、図2及び図3を用いて説明する。
まず、作業者は、図1のデータ表示入力部45により、タイミング信号、すなわち、周辺装置の起動(ON)、停止(OFF)を行うための信号を発生させるための設定データを入力する。図2にその入力の一例を示す。図2では、図1の出力部43からタイミング信号を2種類(TWS NO.1とTWS NO.2)出力させる場合の設定例を示している。図2から分かるように、TWS No.1のタイミング信号の設定は、起動指定(ON指定)をプレス機械のスライド位置信号(クランク軸回転角度)にし、その起動開始の角度(ON角度)は190度とするように設定した例を示している。そして、停止指定(OFF指定)についてはセンサ20の信号を使う(信号同期)ように設定している。
また、図2のTWS No.2のタイミング信号の設定例は、起動指定(ON指定)を信号同期、すなわちセンサ20の検知信号ONによることとし、停止指定(OFF指定)はスライド位置を利用し、その角度(位置)は30度に設定している。
作業者は、データ表示入力部45の画面を見ながら、必要な(図2に示す)設定データを入力し、その設定データはバス40を介して記憶部46に記憶される。
【0015】
このような作業者による設定作業終了後、プレス機械10が駆動され、タイミング装置40はタイミング信号を周辺装置に出力する。このタイミング信号の演算出力について、図1〜図3により説明する。
モータ1が駆動され、プレス機械のスライドが昇降動作を開始すると、エンコーダ3が回転に応じて位置検出信号(クランク軸の回転角度に対応した信号)を出力する。この信号出力は入力部41を介して、時々刻々タイミング装置40に取り込まれる。このようにして得られた回転角度は、演算処理部47によって、記憶部46に記憶されている設定データとの比較演算を繰り返す。
【0016】
図1、図2では、2つのタイミング信号を出力するようにしているので、まずTWS No.1のタイミング信号について説明する。上述したように、エンコーダから得られる回転角度が、図3に示すように、作業者により設定された角度である190度に達したT1時点となると、演算処理部47は、TSW No.1のタイミング信号をONとし、駆動状態のタイミング信号を出力部43から周辺装置の駆動部に供給し始める。図2に示すように、TSW No.1の停止指定(OFF指定)はセンサ20の検知信号としており、この設定データが記憶部46に記憶されている。したがって、演算処理部47は、センサ20がワーク30を検知して検知信号が入力部42を介して装置40に入力される時点T2まで継続してON状態を維持するようなタイミング信号を出力する。入力部42からセンサ20の検知信号が入力されると、演算処理部47は、TSW No.1のタイミング信号を停止(OFF)状態とするタイミング信号を出力する。すなわち、TSW No.1は、図3において、T1時点でON状態となりT2時点でOFFとなるタイミング信号を発生する。
【0017】
TSW No.2のタイミング信号は、図2で示したように、起動をセンサ20の検知信号とし、停止をスライド位置に対応する回転角度30度に設定しているので、センサ20の検知信号が発生した時点T2でON状態となり、スライド位置に対応する回転角度が30度になる時点でOFF状態となるタイミング信号を出力する。
【0018】
このように、スライドの位置(クランク軸回転角度位置)のみでなく、ワークを検知するセンサの検知信号によってもタイミング信号を作成することができる。
【0019】
なお、上記の説明ではスライド位置をクランク軸に取り付けたエンコーダの出力を用いた例で説明したが、スライド位置を計測するものはこれに限らない。スライド位置を直接検出するリニアセンサのようなものでも良い。また、上記の例では、タイミング信号を2個とし、エンコーダ以外のセンサを1個設けた例で説明したが、センサは2個以上用意することでも良い。またタイミング信号も2種類のタイミング信号を出力した例で説明したが、タイミング信号は必要に応じて3種以上出力するようにしても良い。
【符号の説明】
【0020】
1 モータ
2 駆動軸
3 エンコーダ
10 プレス機械
20 センサ(ワーク検知器)
30 ワーク
40 タイミング装置
41 入力部
42 入力部
43 出力部
44 バス
45 データ表示入力部
46 記憶部
47 演算処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械のスライド位置信号を用いて起動開始および停止タイミングデータを設定する設定部を有するデータ表示入力部と、該設定入力されたタイミングデータを記憶する記憶部と、該プレス機械のスライド位置信号を入力する入力部と、該プレス機械のスライド位置信号と該記憶部に記憶されたタイミングデータとを比較し、該プレス機械のスライド位置信号が起動開始タイミングデータと一致した時点から停止タイミングデータと一致する時点までの期間タイミング信号を演算する演算処理部と、該演算処理部で演算されたタイミング信号を外部の周辺装置に出力する出力部とを有するプレス機械用タイミング装置において、
プレス機械のスライド位置信号以外の外部センサの検知信号を入力する入力部を設けると共に、前記データ表示入力部は、プレスの位置信号を用いた起動開始および停止タイミングデータに加えて該外部センサの検知信号により起動開始又は停止することを設定する設定部を有し、前記記憶部は該データ入力部により設定されたデータを記憶し、
前記演算部は該記憶部に記憶された起動および停止を指示するデータに基づき、起動開始及び停止タイミングを演算することを特徴とするプレス機械用タイミング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−230166(P2011−230166A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103526(P2010−103526)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】