説明

プレス機械

【課題】クラウンとコラムが傾ぐことを抑制可能なフレーム構造をもったプレス機械を提供する。
【解決手段】課題を解決するプレス機械は、上面にボルスタ1aを有するベッド1と、ベッド1上に立設されたコラム2と、コラム2に載置されたクラウン3と、コラム2の間に支持され、クラウン3に収容された駆動機構により往復運動するスライド4と、コラム2間に架け渡された平板状のステー10と、を含んで構成される。ステー10は、縦方向の上縁11がコラム2間の間隔に相応する長さをもち且つクラウン3に固定されると共に、横方向の両側縁13,14がコラム2に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プレス機械のフレーム補強に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
ベッドの上面にコラムを立設し、このコラム上に頭部のクラウンを載置するフレーム構造のプレス機械が、例えば特許文献1,2に開示されている。このプレス機械は、クラウン内に収容した駆動機構(例えばクランク機構)により上下に往復運動するスライドが、ギブと呼ばれるスライドガイドを介してコラム間に支持される。そして、スライド下面に取り付けられる上金型と、ベッド上のボルスタに取り付けられる下金型とにより、プレス加工が行われる。
【0003】
特許文献1,2に開示されたプレス機械では、縦方向(スライド往復方向)の中間位置においてコラム間に横方向(スライド往復方向に直交する方向)のステーが設けられており、剛性を最も必要とする部位の強化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−056996号公報
【特許文献2】特開2002−059298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ステーを設けたプレス機械では、中間部位の補強によりコラムの撓みは抑制される(特許文献1の図面参照)。しかし、スライドから偏芯荷重がかかったときのクラウンも含めた全体的な歪みを矯正するには至らない。例えば、図3中に点線で示すように、偏芯荷重がかかったときのプレス機械は、クラウン及びコラムが全体的に横方向へ傾いで歪むことがあるが、コラム中間部位のステーではこれに抗することができない。
【0006】
このような背景に鑑みると、クラウンとコラムが傾ぐことを抑制可能なフレーム構造をもったプレス機械が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して提案するプレス機械は、上面にボルスタを有するベッドと、該ベッド上に立設された複数のコラムと、該コラムに載置されたクラウンと、前記コラムの間に支持され、前記クラウンに収容された駆動機構により往復運動するスライドと、前記コラム間に架け渡された平板状のステーと、を含んで構成され、そのステーは、縦方向の上縁が前記コラム間の間隔に相応する長さをもち且つ前記クラウンに固定されると共に、横方向の両側縁が前記コラムに固定されたものとなっている。
【発明の効果】
【0008】
上記提案に係るプレス機械では、上縁をクラウンに固定すると共に両側縁をコラムに固定した平板状のステーが、クラウンとコラムとの接続角度を一定に維持する突っ張り部材として機能する。偏芯荷重がかかったときでもクラウンとコラムとの接続角度が変化しなければ、当該クラウンとコラムが傾ぐことはなく、歪みは抑制される。その結果、スライドや金型の損傷防止に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プレス機械の実施形態を示した正面図。
【図2】図1のプレス機械の側面図。
【図3】クラウンとコラムが傾ぐことの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、プレス機械の実施形態を正面及び左側面からみて概略的に示している。図示のプレス機械は、ベッド1、コラム2、クラウン3、スライド4、そして、ステー10を含んで構成される。なお、以下の説明においては、図1に示す正面から見たときの「左右」及び「前後」を使用する。
【0011】
ベッド1は、水平で平坦な上面を備え、下金型を固定するためのボルスタ1aをその上面に有する。このベッド1上面の左側と右側の端に、コラム2が立設されている。本実施形態のコラム2は、ベッド1上面の四隅に立設された4本の支柱部2aを有し、これら支柱部2aのうち、左側の前後に並んだ2本の支柱部2aの上端どうし及び下端どうしが、それぞれ桟部2bによって連結されている。また、支柱部2aのうち、右側の前後に並んだ2本の支柱部2aの上端どうし及び下端どうしも、それぞれ桟部2bによって連結されている。すなわち、左側のコラム2及び右側のコラム2は、それぞれ長方形枠の形態(図2参照)に形成されており、前後の方向には傾ぎ難い構造である。このような長方形枠の形態のコラム2は、2本の支柱部2a及びその上下端を連結する桟部2bを一体形成した金属枠、あるいは、支柱部2aと桟部2bとを別体として形成し、後から溶接やボルト止め等で組み立てた金属枠とすることができる。
【0012】
ベッド1上に立設されたコラム2には、クラウン3が載置される。クラウン3は、クランク機構等の駆動機構を内部に収容し、この駆動機構から下面を通して、スライド4を取り付けるアーム5が突出する。駆動機構に従ってアーム5が上下に往復運動することにより、スライド4が上下に往復する。スライド4は、その四隅の角を、コラム2の内側に設けられたスライドガイドであるギブ6に支持されることにより、アーム5に従って往復運動する。
【0013】
左側と右側のコラム2の間、すなわち、左右の支柱部2aの間には、平板状のステー10が架け渡されている。ステー10は、本実施形態の場合、長方形の金属板であり、その長辺を横方向としてコラム2間に架け渡してある。一例として、ステー10のサイズは、長辺(横方向)の長さが3m程度、短辺(縦方向)の長さが1m程度、そして厚みが16cm程度にもなる。
【0014】
具体的に本実施形態のステー10は、縦方向の上縁11がコラム間の間隔dに相応する長さに形成される(数mmから数cm程度短くてもよい)。一方、縦方向の下縁12は、上縁11に比べて若干短く形成されており、これにより、ステー10の横方向の側縁13,14のうちの右側の側縁14が、コラム2に対して傾斜することになる。すなわち、ステー10において、左側の側縁13と上縁11との間の角度α13は直角であるが、右側の側縁14と上縁11との角度α14は鋭角である。この形状により形成される、側縁14とコラム2との間の隙間に、くさび15が差し込まれる。くさび15は、左右のコラム2間の間隔dとステー10の上縁11の長さとに生じ得る寸法誤差を補うために、ステー10の取り付け時に差し込まれる。差し込んだくさび15は、ボルト16により仮止めすることができる。ステー10の右上隅の角度α14は鋭角であるが、くさび15を差し込むことによって、クラウン3とコラム2とは直角に接続される。また、反対側のステー10の左上隅の角度α13は直角なので、ここでもクラウン3とコラム2とは直角に接続される。
【0015】
ステー10の上縁11は複数のボルト17によってクラウン3に当接して固定され、ステー10の左側の側縁13も複数のボルト18よってコラム2に当接して固定される。また、ステー10の右側の側縁14は、くさび15を介在させて、複数のボルト19によってコラム2に固定される。ボルト19は、くさび15を貫通してコラム2にねじ込まれており、くさび15と共に側縁14を固定している。各ボルト17,18,19は、ボルト止めのために設けられたステー10の表面凹所から差し込まれて締められる。
【0016】
このように、平板状のステー10が、上縁11をクラウン3に固定すると共に両側縁13,14をコラム2に固定して設けられていることにより、当該ステー10は、クラウン3とコラム2との接続角度(本実施形態の場合は直角)を一定に維持する突っ張り部材として機能する。すなわち、スライド4から偏芯荷重がかかり、図3のようにクラウン3及びコラム2が傾ごうとしても、ステー10がこれに抗し、クラウン3とコラム2との接続角度が変化しないように突っ張るので、当該クラウン3とコラム2とが傾いで歪むことは抑制される。その結果、スライド4や上下金型の損傷防止に貢献する。
【0017】
なお、上記実施形態のコラム2は、長方形の金属枠としてベッド1上の左右に設ける例を示してあるが、コラム2は、支柱部2aの間の桟部2bが無く、4本の支柱部2aが角柱として独立して四隅に立設されているものもある。この場合、左右のコラム2間と前後のコラム2間の両方にステー10を架け渡すことができる。
【符号の説明】
【0018】
1 ベッド
1a ボルスタ
2 コラム
2a 支柱部
2b 桟部
3 クラウン
4 スライド
5 アーム
6 ギブ
10 ステー
11 上縁
12 下縁
13 側縁(左側)
14 側縁(右側)
15 くさび
16,17,18,19 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にボルスタを有するベッドと、
前記ベッド上に立設された複数のコラムと、
前記コラムに載置されたクラウンと、
前記コラムの間に支持され、前記クラウンに収容された駆動機構により往復運動するスライドと、
前記コラム間に架け渡された平板状のステーと、
を含んで構成され、
前記ステーは、
縦方向の上縁が前記コラム間の間隔に相応する長さをもち且つ前記クラウンに固定されると共に、横方向の両側縁が前記コラムに固定されている、
プレス機械。
【請求項2】
前記ステーは、
前記側縁の一方と前記上縁との間の角度が直角であり且つ前記側縁の他方と前記上縁との間の角度が鋭角であり、
当該側縁の他方は、前記コラムとの間にくさびを介在させて前記コラムに固定されている、
請求項1記載のプレス機械。
【請求項3】
前記コラムは、
前記ベッド上面の四隅に立設された4本の支柱部と、
前記支柱部のうちの左側2本の上下端を連結する2つの桟部と、
前記支柱部のうちの右側2本の上下端を連結する2つの桟部と、
を有し、
前記ステーは、
前記コラムの左側の前記支柱部と右側の前記支柱部との間に架け渡される、
請求項1又は請求項2記載のプレス機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−16729(P2012−16729A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155946(P2010−155946)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000105394)コータキ精機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】