説明

プログラム、制御器及び冷水システム

【課題】複数のコンプレッサをON−OFFして冷却能力を調整するチラーを複数台備えて構成された冷水システムに関して、エネルギー消費を抑制しつつ冷却能力を効率的に調整可能なプログラム、制御器及び冷水システムを提供すること。
【解決手段】複数のコンプレッサから凝縮器、膨張機構、蒸発器を経た冷媒が前記複数のコンプレッサに循環する冷凍サイクルを有し、前記複数のコンプレッサを発停することにより冷却能力を制御する複数のチラーを備えた冷水システムを制御するプログラムであって、冷却対象の温度に基づき、前記冷水システムにおいて作動する前記凝縮器の数を最大とするように前記コンプレッサを作動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のチラーを備えた冷水システムを制御するためのプログラム、制御器及び冷水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のコンプレッサを備えたチラーを運転する場合、例えば、冷却対象である水の水温に基づいて、各コンプレッサを発停(ON−OFF)して、冷却能力を調整することが一般的に行なわれている。
また、冷却能力を容量制御可能な可変容量型チラーを運転して調整する場合、例えば、水温等に基づき、コンプレッサを停止〜定格出力の範囲で連続的に調整することが一般的に行なわれている。
【0003】
複数のチラーを用いて冷水システムを構成する場合、例えば、可変容量型チラーでは、所定の冷却能力を得る際に必要な、各チラーの冷却能力及び消費電力に基づいて、冷水システムのCOP(成績係数)が高くなるように運転して、エネルギー消費を抑制しつつ冷却能力を調整する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一方、上記複数のコンプレッサを発停して冷却能力を制御する複数台のチラーにより冷水システムを構成する場合、水温に基づいて、各チラーを同一出力で運転することが一般的であり、各チラーを合算した冷却能力が負荷に対して過剰となった場合には、全チラーを停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−145176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数のコンプレッサを発停して冷却能力を調整するチラーは、可変容量型チラーのように、冷却能力を自在に調整することが困難であるため、複数のコンプレッサを発停して冷却能力を調整するチラーにより構成された冷水システムに関して、エネルギー消費を抑制しつつ冷却能力を効率的に調整するための技術に対する強い要請がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、複数のコンプレッサをON−OFFして冷却能力を調整するチラーを複数台備えて構成された冷水システムに関して、エネルギー消費を抑制しつつ冷却能力を効率的に調整可能なプログラム、制御器及び冷水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、複数のコンプレッサから凝縮器、膨張機構、蒸発器を経た冷媒が前記複数のコンプレッサに循環する冷凍サイクルを有し、前記複数のコンプレッサを発停することにより冷却能力を制御する複数のチラーを備えた冷水システムを制御するプログラムであって、冷却対象の温度に基づき、前記冷水システムにおいて作動する前記凝縮器の数を最大とするように前記コンプレッサを作動させることを特徴とする。
【0009】
請求項7に記載の発明は、制御器であって、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプログラムを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項8に記載の発明は、冷水システムであって、請求項7に記載の制御器を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明に係るプログラム、制御器、冷水システムによれば、冷却対象の温度に基づき、冷水システムにおいて作動する凝縮器の数を最大とするように各チラーのコンプレッサを作動させるので、各コンプレッサの負荷が低減されて、エネルギー消費を抑制しつつ冷水システムの冷却能力を効率的に調整することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプログラムであって、前記冷却対象の温度と対応させて設定した前記コンプレッサの組合せに基づいて、前記コンプレッサを作動させることを特徴とする。
【0013】
この発明に係るプログラムによれば、冷却対象の温度と対応させてコンプレッサの組合せを設定するので、冷却対象の過冷等を抑制して、コンプレッサを適切かつ効率的に作動させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のプログラムであって、前記凝縮器がすべて作動している場合に、出力の小さいコンプレッサを優先的に作動させることを特徴とする。
【0015】
この発明に係るプログラムによれば、凝縮器がすべて作動している場合に、出力の小さいコンプレッサを優先的に作動させるので、コンプレッサの負荷を低減してエネルギー消費を抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のプログラムであって、前記凝縮器がすべて作動している場合に、前記冷水システムのCOPが最大となるように前記コンプレッサを作動させることを特徴とする。
【0017】
この発明に係るプログラムによれば、冷水システムのCOPが最大となるように前記コンプレッサを作動させるので、冷水システムのエネルギー効率を向上することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラムであって、前記冷却対象の温度が、前記チラーの熱交換器の入口水温あるいは出口水温のいずれかまたはこれらの組合せであることを特徴とする。
【0019】
この発明に係るプログラムによれば、冷却対象の温度が、チラーの熱交換器の入口水温あるいは出口水温のいずれかまたはこれらの組合せによるので、冷却対象を目標温度に適切かつ効率的に対応することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラムであって、前記冷却対象の温度が、前記チラーにより冷却される冷水タンク内の水温であることを特徴とする。
【0021】
この発明に係るプログラムによれば、チラーにより冷却される冷水タンク内の水温を対象として冷却能力を調整するので、冷水タンク内の冷水の水温が上昇した場合に、計画的に小さな冷却能力により冷却することにより、エネルギー消費を抑制しつつ効率的に冷却して、目標温度に移行させることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、冷水システムであって、複数のコンプレッサから凝縮器、膨張機構、蒸発器を経た冷媒が前記複数のコンプレッサに循環する冷凍サイクルを有し、前記複数のコンプレッサを発停することにより冷却能力を制御する複数のチラーと、前記冷却対象の温度を検出する温度検出手段と、制御器と、を備え、前記制御器は、冷却対象の温度に基づき、前記冷水システムにおいて作動する前記凝縮器の数を最大とするように前記コンプレッサを作動させることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る冷水システムによれば、冷却対象の温度に基づき、冷水システムにおいて作動する凝縮器の数を最大とするようにコンプレッサを作動させるので、凝縮により冷媒の圧力を短時間で低下させて、コンプレッサの負荷を小さくすることができる。その結果、冷水システムにおけるエネルギー効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係るプログラム、制御器、冷水システムによれば、冷水システムにおいて作動する凝縮器の数を最大とするようにコンプレッサを作動させるので、エネルギー消費を抑制しつつ冷水システムの冷却能力を効率的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る冷水システムの概略を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るチラーの一例を示す概略構成図である。
【図3】第1の実施形態に係る冷水システムにおいて、各チラー内で駆動するコンプレッサの組合せを示す図である。
【図4】第1の実施形態の冷水システムの運転を制御するプログラムの一例を説明するフロー図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る冷水システムにおいて、各チラー内で駆動するコンプレッサの組合せを示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る冷水システムにおいて、各チラー内で駆動するコンプレッサの組合せを示す図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る冷水システムにおいて、各チラー内で駆動するコンプレッサの組合せを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1から図4を参照し、この発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る冷水システムを示す図であり、符号1は冷水システムを示している。
【0027】
冷水システム1は、図1に示すように、3台のチラー10、20、30を備えたチラー群2と、制御部(制御器)4と、冷水タンク6とを備え、給水源から供給された水を冷水タンク6に貯留し、冷水タンク6内の水をチラー10、20、30に循環させて冷却するようになっている。
また、冷水システム1は、冷水タンク6が冷水ポンプ8P、圧力スイッチ8S、手動バルブ8Vを介して消費設備9(例えば、野菜を洗浄する洗浄装置等)と接続されていて、圧力スイッチ8Sが検出する冷水ポンプ8P出口の圧力に応じて冷水ポンプ8Pが作動、停止して、消費設備9への冷水供給を制御するようになっている。
【0028】
冷水タンク6は、高温側6Aと低温側6Bに区画されており、各チラー10、20、30は、流入配管10A、20A、30Aを介して冷水タンク6の高温側6Aと接続され、流出配管10B、20B、30Bを介して冷水タンク6の低温側6Bと接続されている。また、流入配管10A、20A、30Aには、移送ポンプ10P、20P、30Pが配置されていて、移送ポンプ10P、20P、30Pを駆動することにより、高温側6Aの水が流入配管10A、20A、30Aを介して各チラー10、20、30の熱交換器14に流入し、その後、流出配管10B、20B、30Bを介して低温側6Bに戻すようになっている。また、高温側6Aには、温度センサ6Tが配置されている。
【0029】
第1チラー10は、図2に示すように、例えば、それぞれ定格出力が10kWの第1コンプレッサ11と、第2コンプレッサ12と、第3コンプレッサ13とを備えた定格出力が30kWのチラーとされ、第1コンプレッサ11、第2コンプレッサ12、第3コンプレッサ13は、互いに並列に接続され、凝縮器15、膨張弁(膨張機構)16、蒸発器17と直列に接続され、蒸発器17を通過した冷媒が各コンプレッサ11、12、13に循環することにより冷凍サイクルが構成されるようになっている。
【0030】
凝縮器15は、第1コンプレッサ11、第2コンプレッサ12、第3コンプレッサ13のいずれか又はすべてが駆動された場合に、圧縮された冷媒を凝縮するものであり、凝縮器15では圧縮された高温の冷媒を冷却ファン18により冷やすようになっている。
熱交換器14は、膨張弁16を通過した冷媒が循環する水から気化熱を奪うことで蒸発し、循環する水を冷却するようになっている。
【0031】
第1コンプレッサ11、第2コンプレッサ12、第3コンプレッサ13は、それぞれ定格出力10kWのON−OFF制御式コンプレッサとされていて、駆動モータMをON−OFFすることにより発停するようになっている。
第2チラー20は、第1チラー10と構成が同一の第1コンプレッサ11、第2コンプレッサ12、第3コンプレッサ13を備えている。同様に、第3チラー30は、第1チラー10と構成が同一の第1コンプレッサ11、第2コンプレッサ12、第3コンプレッサ13を備えている。
【0032】
制御部4は、各チラー10、20、30、温度センサ6T、10T、20T、30Tと信号線4Aにより接続され、各チラー10、20、30からの信号(例えば、各チラー10、20、30の状態を示す信号)及び温度センサ6T、10T、20T、30Tからの信号が入力されるようになっている。また、制御部4は、各チラー10、20、30、移送ポンプ10P、20P、30P、給水源からの給水を制御する給水バルブ7V、冷水ポンプ8Pと信号線4Bにより接続され、これらに信号を出力して制御するようになっている。なお、図1において、制御部4と、第2、第3チラー20、30、温度センサ20T、30T、移送ポンプ20P、30Pとの間の信号線4A、4Bは、チラー10の場合と同様であるため、簡便のため省略している。
制御部4は、温度センサ6Tの検出温度(水温T)に基づき、各チラー10、20、30内の作動容量を制御するようになっており、制御部4には、水温Tに基づいて各チラー10、20、30内で駆動するコンプレッサの組合せが、データテーブルとして記憶されている。
【0033】
この実施形態において、水温Tに対応して各チラー10、20、30内で駆動されるコンプレッサの組合せは、例えば、図3(A)に示すような、水温Tと対応する設定水温(T1〜T5)と、運転パターン(各チラー10、20、30において駆動するコンプレッサの組合せ)と、各運転パターン(第1〜第5運転パターン及び冷却完了後待機)において駆動されるコンプレッサの組合せにより定義されている。図3(A)おける(●)は、駆動されるコンプレッサを示している。
【0034】
なお、設定水温T1〜T5は、例えば、図3(B)に示すような値が適用されており、T5は、目標水温(例えば、1.0℃)とされている。
図3(A)に示す「冷却完了後待機」は、水温Tが冷却により目標水温T5未満となった後に、全チラー10、20、30のすべてのコンプレッサを停止して待機させた状態をいうものとし、「出力」は、各運転パターンにおける3台のチラーの総出力を参考に記載したものである。
また、図3(A)における第1、第2運転パターンは通常の運転パターンであり、第3〜第5運転パターンは、作動する凝縮器15を最大数とする省エネ運転パターンである。
【0035】
第1の実施形態において、省エネ運転パターンとは、冷水システム1で作動する凝縮器15の数を最大としてコンプレッサの負荷を低減することで、エネルギー効率を向上させる運転パターンをいい、例えば、冷水システム1で作動する凝縮器15の数と、コンプレッサの駆動数とを同一で運転する場合をいう。
すなわち、通常の運転パターンである第1、第2運転パターンでは、各チラー10、20、30において駆動するコンプレッサを同一数にして、コンプレッサの駆動数を維持して、駆動するコンプレッサを順次停止し、第3〜第5運転パターン(省エネ運転パターン)では、各チラー10、20、30の第1コンプレッサ11、21、31を順次停止して冷水システム1の出力を減少するように構成されている。
【0036】
この実施形態に係るプログラムは、例えば、図4に示すフロー図のような概略構成とされている。以下、図4を参照して、プログラムの一例に係るフロー図について説明する。
まず、冷水システム1の運転を開始する。
(1)制御部4は、温度センサ6Tにより水温Tを検出する(S1)。
(2)制御部4は、冷水システム1が、冷却完了後の待機中(冷却システム1が目標温度に到達した後にすべてコンプレッサが停止している状態)であるかどうかを判断する(S2)。
冷水システム1が、冷却完了後の待機中でない場合はS3に移行し、冷却完了後の待機中である場合はS18に移行する。
なお、冷水システム1の運転を開始した際のコンプレッサの全停止は、冷却完了後における冷水システム待機中には該当せず、また、冷水タンク6に給水した場合は、冷却完了後における冷水システム待機中はリセットされるものとする。
(3)制御部4は、検出した水温T≧第1設定水温T1 であるかどうかを判断(S3)し、T≧T1 である場合はS4に移行し、T<T1 である場合はS5に移行する。(以下、同様に、判断後は、図4のフローによるものとする。)
(4)制御部4は、各チラー10、20、30に対して第1運転パターンに対応する信号を出力する(S4)。
各チラー10、20、30に対して第1運転パターンと対応する信号を出力したら、水温Tを記憶してS1に移行する。各チラー10、20、30に対する運転パターンの出力は、データテーブルを参照して行なう(以下、同様である)。
(5)制御部4は、水温T≧第2設定水温T2 を判断する(S5)。
(6)制御部4は、水温Tが低下したかどうかを判断する(S6)。
水温Tが低下したかどうかは、検出した水温Tと記憶している前回検出の水温Tの比較による。
水温Tが低下している場合はS7に移行し、水温Tが低下していない場合はS4に移行する。
ここで、S3から移行してS5を実行する場合、水温Tは必ず低下しているが、例えば、前回検出した水温Tが第2設定水温T2未満であっても、水温Tの低下が認められない場合に、出力が大きな運転パターン(ここでは、第1運転パターン)に移行して、冷却能力を増加することを意味している。なお、運転開始後、S6を初めて実行する場合、又は冷水タンク6に給水されて冷水システムの冷却完了後の待機がリセットされた直後にS6を実行する場合は、S6は省略するものとする。(以下、水温Tが低下したかどうかの判断において、上記意義及びS6実行を省略する意義を適用し、判断後は、フロー図によるものとする。)
(7)制御部4は、各チラー10、20、30に対して第2運転パターンに対応する信号を出力する(S7)。
各チラー10、20、30に対して第2運転パターンと対応する信号を出力したら、水温Tを記憶してS1に移行する。
(8)制御部4は、水温T≧第3設定水温T3 を判断する(S8)。
(9)制御部4は、水温Tが低下したかどうかを判断する(S9)。
(10)制御部4は、各チラー10、20、30に対して第3運転パターンに対応する信号を出力する(S10)。
各チラー10、20、30に対して第3運転パターンと対応する信号を出力したら、水温Tを記憶してS1に移行する。
(11)制御部4は、水温T<第4設定水温T4 を判断する(S11)。
(12)制御部4は、水温Tが低下したかどうかを判断する(S12)。
(13)制御部4は、各チラー10、20、30に対して第4運転パターンに対応する信号を出力する(S13)。
各チラー10、20、30に第4運転パターンと対応する信号を出力したら、水温Tを記憶する。
(14)制御部4は、水温T< 第5設定水温T5 を判断する(S14)
なお、ここで、第5設定水温T5は、目標水温(例えば、1.0℃)である。
(15)制御部4は、各チラー10、20、30に対して第5運転パターンに対応する信号を出力する(S15)。
各チラー10、20、30に第5運転パターンと対応する信号を出力したら、水温Tを記憶してS1に移行する。
(16)制御部4は、各チラー10、20、30に対して、すべてのコンプレッサを停止状態とする待機信号を出力する(S16)。
各チラー10、20、30に、待機信号を出力したらS17に移行する。
(17)制御部4は、各チラー10、20、30に対して待機信号を出力した際の水温Tを記憶する(S17)。
(18)制御部4は、水温T≧冷却完了時の水温+設定値(例えば、0.5℃) を判断する(S18)。
上記(1)から(18)を繰り返して実行する。
【0037】
次に、図3を参照して、冷水システム1の作用について説明する。
まず、冷水システム1の運転を開始すると、温度センサ6Tが検出した水温Tに基づいて、運転パターンが設定され、対象のコンプレッサを駆動する。
(1)例えば、水温Tが2.5℃以上である場合は、各チラー10、20、30に第1運転パターンにて運転する信号が出力されて、各チラー10、20、30の第1コンプレッサ11、21、31、第2コンプレッサ12、22、32、第3コンプレッサ13、23、33が駆動される。その結果、冷水システム1は、出力90kW(チラー3台×(コンプレッサ3台/チラー)×10kW)で冷水タンク6から循環される水を冷却する。
(2)水温Tが1.5℃以上(かつ2.5℃未満)である場合は、各チラー10、20、30に第2運転パターンにて運転する信号が出力されて、各チラー10、20、30の第1コンプレッサ11、21、31、第2コンプレッサ12、22、32が駆動される。その結果、冷水システム1は、出力60kW(チラー3台×(コンプレッサ2台/チラー)×10kW)で冷水タンク6から循環される水を冷却する。
(3)水温Tが、1.0℃以上(かつ1.5℃未満)の場合には、省エネ運転パターン(第3〜第5運転パターンが相当)により、以下のように駆動される。
(3−1)
水温Tが1.3℃以上(かつ1.5℃未満)である場合は、各チラー10、20、30に第3運転パターンにて運転する信号が出力されて、各チラー10、20、30の第1コンプレッサ11、21、31が定格出力(各10kW)で駆動され、出力30kW(チラー3台×(コンプレッサ1台/チラー)×10kW)で冷水タンク6から循環される水を冷却する。
その結果、出力30kWで3つの凝縮器15が作動して、冷水システム1のエネルギー効率が向上して、省エネルギーを実現することができる。
(3−2)
水温Tが1.1℃以上(かつ1.3℃未満)である場合は、各チラー10、20、30に第4運転パターンにて運転する信号が出力されて、第1チラー10の第1コンプレッサ11、第2チラー20の第1コンプレッサ21が、それぞれ定格出力(各10kW)で駆動され、出力20kW(チラー2台×(コンプレッサ1台/チラー)×10kW)で冷水タンク6から循環される水を冷却する。
その結果、出力20kWで2つの凝縮器が作動して、冷水システム1のエネルギー効率が向上して、省エネルギーを実現することができる。
(3−3)
水温Tが1.0℃以上(かつ1.1℃未満)である場合は、各チラー10、20、30に第5運転パターンにて運転する信号が出力されて、第1チラー10の第1コンプレッサ11が定格出力(各10kW)で駆動され、出力10kW(チラー1台×(コンプレッサ1台/チラー)×10kW)で冷水タンク6から循環される水を冷却する。
その結果、各チラー10、20、30は、それぞれ出力10kWで運転される。一方、各チラー10、20、30において凝縮器15が作動し、冷水システム1において最大数の凝縮器15が作動しているため、凝縮が速やかに行なわれて、コンプレッサの負荷が低減しエネルギー効率が向上する。
(4)第1〜第4運転パターンで運転されている場合、水温Tが低下して、コンプレッサの駆動台数が少ない運転パターンに該当したら、該当する設定水温の運転パターンにて運転される。
(5)水温Tが、1.0℃未満に到達した場合は、水温Tが目標値に到達したと判断して、各チラー10、20、30に冷却後待機とし、冷水システム1を待機状態とする。その結果、各チラー10、20、30への冷水タンク6からの水の循環が停止される。
(6)冷水システム1が、第2から第4運転パターンで駆動されていて、冷水タンク6から循環される水の温度が低下していないと判断した場合には、コンプレッサの駆動台数が多い運転パターンに移行する。また、第5運転パターンで運転されている場合には、水温が低下しなくても、目標水温T5に到達するまで第5運転パターンを維持する。
また、目標水温T5に到達した後に、設定水温(例えば、0.5℃)以上の水温上昇が検出された場合には、冷水システム1をあらためて駆動する。
また、最後に停止するコンプレッサは、優先順位付けによって定期的にローテーションされるようになっており、かかるローテーションにより各コンプレッサの作動回数を平準化するようになっている。
【0038】
冷水システム1によれば、冷却水の水温Tに基づき、冷水システム1において作動する凝縮器15の数を最大とするようにコンプレッサを駆動するので、各コンプレッサの負荷を低減して、冷水システム1のエネルギー消費を抑制しつつ冷却能力を効率的に調整することができる。また、冷水システム1によれば、冷却水の水温Tと対応させてコンプレッサの組合せを設定するので、冷却水の過冷等を抑制して、コンプレッサを適切かつ効率的に作動させることができる。
また、冷水タンク6内の水温が上昇した場合に、冷水システム1を小さな冷却能力で計画的(例えば、将来の温度上昇の予測等に基づき)に制御して、エネルギー消費を抑制しつつ効率的に冷却能力を調整するとともに効率的に目標水温T5に移行させることができる。
【0039】
次に、図5を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なるのは、水温Tに対応して駆動する各チラー10、20、30内のコンプレッサの組合せ及び水温Tと対応する設定温度T1A〜T10A(目標水温)の構成が、図3(A)に示したものと相違する点である。その他は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
第2の実施形態に係る各チラー10、20、30において駆動するコンプレッサの組合せは、図5に示すとおりである。
第1の実施形態では、第1、2運転パターンにおいて、各チラー10、20、30で同じ数のコンプレッサを駆動し、省エネ運転パターン(第3〜第5運転パターン)のみで、各チラー10、20、30の第1コンプレッサ11、21、31を順次停止して凝縮器15の作動数を最大としていたのに対して、第2の実施形態では、省エネ運転パターンでない第1〜6運転パターンにおいて、各チラー10、20、30のコンプレッサを1台ずつ順次停止するように構成されている。
その結果、省エネ運転パターンでない第1〜6運転パターンにおいても、冷水システム1の冷却能力を小さな単位で調整することができ、運転パターン冷水システム1のエネルギー効率を向上することができる。
【0041】
次に、図6を参照して、この発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態が第1の実施形態と異なるのは、第2コンプレッサ12、22、32が定格出力15kW、第3コンプレッサ13、23、33が定格出力20kWとされ、水温Tに対応して駆動する各チラー10、20、30内のコンプレッサの組合せが、図3(A)に示したものと相違する点である。なお、第3の実施形態において、省エネ運転パターンは、第1の実施形態に加え、各チラー10、20、30において、それぞれ2台のコンプレッサが駆動されている状態を含むものとする。その他は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
第3の実施形態に係る各チラー10、20、30において駆動するコンプレッサの組合せは、図6に示すとおりである。
まず、第1〜第3省エネ運転パターンでは、定格出力が最小(各10kW)の第1コンプレッサ11、21、31を、優先的に順次駆動することで作動する凝縮器15の数を最大とする。
次いで、第4運転パターンでは、各チラー10、20、30が、定格出力が最小の第1コンプレッサ11、21、31から、定格出力が次に大きい(各15kW)第2コンプレッサ12、22、32に切換える。
同様に、第5運転パターン〜第8省エネパターンでは、各チラー10、20、30において駆動するコンプレッサの組合わせを、出力が同一でかつ順次出力が大きくなるように切換えるようになっている。
その結果、作動する凝縮器15の数を最大としてエネルギー効率を向上するとともに、すべての凝縮器15が作動した場合に、各チラー10、20、30において駆動するコンプレッサの出力を同一として動作を簡単にしつつ冷水システム1に必要とされる出力に対して小さな出力単位で追従させることで負荷に対する冷水システム1の応答性を向上させることができる。
【0043】
次に、図7を参照して、この発明の第4の実施形態について説明する。図7は、第4の実施形態に係る運転パターンのうち省エネ運転パターンの一部を示すものである。
第4の実施形態が第3の実施形態と異なるのは、必要とされる出力を得るために駆動する各チラー10、20、30内のコンプレッサの組合せが、図6に示したものと相違する点である。その他は、第3の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
第4の実施形態に係る駆動するコンプレッサの組合せは、図7に示すとおりであり、各チラー10、20、30内で駆動させるコンプレッサの組合せを、冷水システム1に必要とされる出力に対して小さな出力単位で追従させつつ、作動する凝縮器15の数を最大とするように構成されている。
その結果、負荷に対する冷水システム1の応答性を向上させつつ、冷水システム1のエネルギー効率を向上することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、冷水システム1が、それぞれ3台のコンプレッサを搭載した3台のチラー10、20、30から構成される場合について説明したが、冷水システム1を構成するチラーの台数、定格能力、及び各チラーが搭載するコンプレッサの台数、定格出力等の構成は、任意に設定することができる。
【0046】
また、冷水システム1の運転に関して、上記第1〜第4の実施形態を示したが、作動する凝縮器15の数を最大とする際のコンプレッサの組合せ変更に係る設定温度数、設定温度の値については、第1〜第4の実施形態以外に任意に設定することができる。
【0047】
また、上記実施の形態においては、各チラー10、20、30のコンプレッサがすべて発停制御式コンプレッサである場合について説明したが、例えば、いずれかのチラーがインバータ制御等の容量制御式コンプレッサを備える構成としてもよく、かかる場合に、凝縮器15の作動数を最大とするために、容量制御式コンプレッサの全部又は一部を、出力ゼロと定格出力のいずれか(すなわち、実質的に発停)で駆動し又は無段階で駆動するかは任意に設定してもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、各チラー10、20、30がひとつの凝縮器15を備えていて、ひとつの冷凍サイクルを形成する場合について説明したが、例えば、1台のチラーが複数の凝縮器を有して、複数の冷凍サイクルを形成している場合には、それらを複数の凝縮器15として制御してもよい。
【0049】
なお、上記実施の形態においては、冷水タンク6の高温側6Aの水温Tに基づいて例システム1を制御する場合について説明したが、冷水タンク6の高温側6Aの水温Tに代えて、例えば、各チラー10、20,30の温度センサ10T、20T、30Tが検出する熱交換器14の入口水温に基づき、各チラー10、20,30内のコンプレッサを駆動してもよい。また、温度センサ10T、20T、30Tが検出した水温のうちひとつを代表温度として、各チラー10、20、30内のコンプレッサを駆動してもよい。また、熱交換器14の入口水温に代えて、熱交換器14の出口水温、熱交換器14の入口水温と出口水温の組合せに基づいて制御してもよい。
【0050】
また、上記実施の形態においては、冷水を冷水タンク6から冷水消費設備9に送り出す場合について説明したが、例えば、冷水タンク6に熱交換器を設けて低温側6Bの水を循環させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 冷水システム
4 制御部(制御器)
6 冷水タンク
10、20、30 チラー(第1〜第3チラー)
6T、10T、20T、30T 温度センサ(温度検出手段)
11、12、13、21,22、23、31、32、33 コンプレッサ
14 熱交換器
15 凝縮器
16 膨張弁(膨張機構)
17 蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンプレッサから凝縮器、膨張機構、蒸発器を経た冷媒が前記複数のコンプレッサに循環する冷凍サイクルを有し、前記複数のコンプレッサを発停することにより冷却能力を制御する複数のチラーを備えた冷水システムを制御するプログラムであって、
冷却対象の温度に基づき、
前記冷水システムにおいて作動する前記凝縮器の数を最大とするように前記コンプレッサを作動させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラムであって、
前記冷却対象の温度と対応させて設定した前記コンプレッサの組合せに基づいて、前記コンプレッサを作動させることを特徴とするプログラム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプログラムであって、
前記凝縮器がすべて作動している場合に、出力の小さいコンプレッサを優先的に作動させることを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のプログラムであって、
前記凝縮器がすべて作動している場合に、前記冷水システムのCOPが最大となるように前記コンプレッサを作動させることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラムであって、
前記冷却対象の温度が、
前記チラーの熱交換器の入口水温あるいは出口水温のいずれかまたはこれらの組合せであることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラムであって、
前記冷却対象の温度が、
前記チラーにより冷却される冷水タンク内の水温であることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプログラムを備えることを特徴とする制御器。
【請求項8】
請求項7に記載の制御器を備えることを特徴とする冷水システム。
【請求項9】
複数のコンプレッサから凝縮器、膨張機構、蒸発器を経た冷媒が前記複数のコンプレッサに循環する冷凍サイクルを有し、前記複数のコンプレッサを発停することにより冷却能力を制御する複数のチラーと、
前記冷却対象の温度を検出する温度検出手段と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、
冷却対象の温度に基づき、
前記冷水システムにおいて作動する前記凝縮器の数を最大とするように前記コンプレッサを作動させることを特徴とする冷水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−220082(P2012−220082A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85596(P2011−85596)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)