プログラム可能な印刷電気コード、印刷電気コードの製造方法およびプログラミング装置
本文献は、本質的に電気的非導電体の基板(105、10)と、該基板上に形成された電気的に導電しているコードエレメント(108)とを備える電子コードを開示する。本発明によれば、少なくとも一つのコードエレメント(101、108)は、コンダクタンスを電気的に変えることのできる編集可能な領域(109)を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による、プログラム可能な印刷電気コードに関するものである。
【0002】
本発明はまた、印刷コードの製造方法およびプログラミング装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来技術によれば、光学的に読み取り可能なバーコードおよび遠隔的に読み取り可能なRFID識別子の両方が貨物運送で使用されてきた。
【0004】
バーコードは標準化テクノロジーの利点を持っているが、このテクノロジーは可視的なマークと、少なくとも見通し距離における読み取り技術とを必要とし、これによって用途の使用が制限されてしまう。可視マークによってこの技術は乱用されやすくなる。
【0005】
RFIDテクノロジーには上述のバーコードテクノロジーよりも優れた多くの利点があり、これらの利点には、遠隔可読性およびコード全体を製品に隠す可能性が含まれており、このテクノロジーはコードの偽造を防止するために使用することができる。しかしながら、このテクノロジーで使用されている識別子は、バーコードテクノロジーよりも明らかに高価でありえる。
【0006】
米国特許第5818019号明細書は、金銭価値の割り当てられた容量的な検証抵抗マーキングの測定に読み取り装置を使用する解決策を開示している。この機械では、短距離での非接触による測定が可能である。測定において、いくつか(例えば8つのアイテム)の抵抗の大きさを、同時測定によって、各抵抗の抵抗値が所定の限界値内となるように決定する。従って問題は「デジタル技術」を使って宝くじの電気的な正当性を判断するということである。全ての抵抗が所定の範囲内であればチケットは合格となるが、一つでも範囲外であると不合格となる。
【0007】
電気的に読み取り可能なコードもあり、これらのコードは、例えばコード上を読み取り装置でスイープすることによって近距離から読み取られる。このような種類のコードはそれらの最終的な固有の値に印刷される。このテクノロジーは柔軟性がなく、非常に時間がかかる、というのも、各々のコードは、固有のコード値を得るために個々に生成されなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
米国特許第5818019号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の最先端技術の欠点を取り除くことを目的とし、この目的のために全く新しいタイプの電気コード、該電気コードの製造方法および該電気コードのプログラミング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、印刷後に変更することのできる少なくとも一つの領域を含む、いくつかの導電線からのコードの形成に基づくものである。
【0011】
本発明の一つの好適な実施形態によれば、変更可能領域は電気焼結によって変更できるものである。
【0012】
より具体的には、本発明によるコードは、請求項1における特徴の部分の記載によって特徴付けられる。
【0013】
一方で、本発明による方法は、請求項10における特徴部分の記載によって特徴付けられる。
【0014】
さらに、本発明によるコーディング装置は、請求項16における特徴部分の記載によって特徴付けられる。
【0015】
本発明を用いて大きな利点を得ることができる。
【0016】
本発明は、コード構造体の作成後にその内容の電気的な書き込みまたはプログラムを行うことができる電気印刷コードを提供する。同一のコード構造体を作成することができ、これは大量生産にとって望ましいことである。コード固有の内容は、おそらくそれらのコードを作成するサプライチェーンと同じ団体によるものではない専用装置によって、後で書き込まれる。従って本発明は、作成工程および製品の価値連鎖のどちらも最適化することができる。一つの好適な製品の例として、セキュリティコードがある。
【0017】
本発明の一つの好適な用途分野として、製品のオリジナリティ、認証または消費者製品(薬のパッケージ、高価な製品)およびチケットなどの文書のセキュリティコードもしくはマーキングがある。固有の電気製品またはセキュリティコードの大量印刷は、コードが同一のものでない場合には問題となる。これはグラビア印刷などの高速大量印刷法が、大量で同一の構造体を生産する場合のみに適しているからである。インクジェット印刷はアイテムレベルでの特注生産を行うことができるが、インクジェットは一般に、大量生産を行うには遅すぎる。本発明は、電気焼結技術を用いてコードの特注生産を行うことによって、問題を解決するものである。
【0018】
本発明は、バーコードを不可視にする可能性のお陰で、バーコードに関連する明確な利点を提供する。この不可視コードは、偽造品の簡単でコスト効率の良い確認のために使用することができる。
【0019】
実際、本発明の用途は、RFIDテクノロジーおよびバーコードテクノロジーの用途と類似している。本発明によるコードは、可視的なものか、不透明な保護膜の下に隠すものかの何れかとすることができる。本発明によるコードは、例えば、アクセスコントロール用途、製品データコーディング、認証および製品の出所の検証に使用することができる。
【0020】
電気的に読み取り可能なRFIDタグに関して、本発明は大きなコスト優位性を提供する、というのもコードは印刷技術を使って製造できるからである。
【0021】
マーキングの電気的特性を最適化するので、測定電子機器をより安価なコンポーネントで製造することができる。
【0022】
以下、例を用い、また添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるプログラム可能コードの上面図である。
【図2】本発明による他のプログラム可能コードの上面図である。
【図3】コードのプログラミングをAC焼結をスイープすることによって行うことができる、本発明の一実施形態による略斜視図である。
【図4】印刷インク層が連続する領域であり、その領域の局所表面インピーダンスが本発明によるAC焼結装置を用いて変更される、本発明の一実施形態による略斜視図である。
【図5】電気焼結による影響を受けない固定抵抗率の導電性の良い部分と、焼結で抵抗が変化する部分とから成る、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図6】図19の考えを拡大して、非書き込みおよび書き込みインピーダンスレベルを最適化した、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図7】aは電気的に焼結可能なインクを使って一部分のみを印刷した本発明の一実施形態による略上面図であり、bは図7aの構成の実用例を示したものである。
【図8】コード線よりも大きな接触パッドによってコード線への接触を行うことのできる、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図9】電気的に焼結可能なコードビットの表面積が変化する、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図10】DCプログラマ回路用の、本発明の一実施形態による概略図である。
【図11】コード線の調整によって共振読み出しを容易にする、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図12】ビット部が異なる抵抗率を有し、ビット部の抵抗が本質的に同じとなるように幅を変化させた、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図13】コード線の一部が垂直方向のオフセットを有する、本発明の一実施形態による略斜視図である。
【図14】メモリビット部が2つの連続するコード線を接続させている、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図15】本発明による測定装置を示す図である。
【図16】本発明による測定対象物を示す図である。
【図17】aは電極間に読み取るコードがない場合の、本発明による測定装置の電極間の等価回路を示す図であり、bは電極間に読み取るコードがある場合の、本発明による測定装置の電極間の等価回路を示す図である。
【図18】コード抵抗の増加に伴って読み取られるマーキングの実部および虚部の挙動を、本発明による測定装置の観点からグラフで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
電気焼結は、ナノ粒子ベースの印刷インクの乾燥層などの蒸着(印刷、分配、スピンコート)材料層のインピーダンスまたは表面インピーダンスを変更するために利用される。インピーダンスは通常、実部と虚部の両方を有する複素変数である。インピーダンス部(実部または虚部)の何れか一つまたは両方を読み出しに使用することができる。しかしながらリーダーの面接触が容量性である場合、より信頼できる読み取りがインピーダンスの実部を使って達成される。以下、電気コードはこの制御されたインピーダンス構造体のことを示す。
【0025】
電気コードは種々の電気抵抗率を有する線から成るバーコード状のものとすることができる。バーコードは、抵抗率が電気焼結技術を使用して後で調整することのできるインクを使って、全体的または部分的に生成される。このようなインクの例として、Advanced Nano Products社のシルバーナノ粒子インクがある。コードの調整可能な抵抗線は、このようなインクを使って全体的または部分的に生成することができる。プログラミング装置は、コード構造体と電気的にDC接触またはAC接触して、コード線の全体または一部に電気焼結を与える。
【0026】
あるいは、印刷構造体は、その表面の焼結部によってコードが書き込まれた、ナノ粒子インクで覆われた領域であってもよい。
【0027】
下記の図は本発明の特定の態様を概略的に示したものである。コードは、例えば、後に記載するリーダーを使って読み取ることができる。下記の図にはコード用のパフォーム(perform)200が示されており、これは電気的に固有のコードに変更される。本図にはコードが示されており、インクの非焼結および焼結状態がコード線の2つの導電状態として使用されている。電気焼結を使うと、コンダクタンスを2つの両極端部間において有限のステップで変化させることもでき、マルチレベルの電気コードが可能となる。さらに、焼結電圧(電流、電力)よりも十分に高い電圧(電流、電力)を使うことによって、導体が壊れ(ヒューズモード操作)、非焼結(低導電率)状態および焼結(高導電率)状態に加えて、コード線の第3の状態が可能となる。
【0028】
図15はプログラム可能なバーコード101を示しており、これは実際にはプログラミングステージ前のコードのパフォーム200である。本図は、プログラミング装置103およびガルバニックコード−デバイス接点102も示している。プログラミングにおいて、プログラミング装置103は、コード線の全てまたは一部にDCまたはAC電圧を印加し、これらを導電状態に焼結する。つまり、プログラミング装置103は対応する構成要素101のためにコンダクタンス値を変更するために、構成要素101の内の何れかを選択することができる。接点102は、例えば十分な大きさの接触パッドを有することのできる、コード線101の端部に接触する直流ガルバニックコードであってもよい。接触パッドは、図22に示すようなコード線と電気接触するコードから離して設置することもできる。これらの線は、シルバーナノ粒子インクなどの電気的に焼結可能なインクを使って全体的または部分的に印刷される(焼結可能なインクで一部のみを印刷したコード線に関しては、図19、図20、図21、図23、図25および図26を参照のこと)。
【0029】
図16は、コード線の反対側を電気接点104として、プログラミング装置への電気接点の数を制限していることを示している。
【0030】
図17は、コードのプログラミングを、基板105に印刷されたコード線に接触させて、またはコード線に近い距離で、AC焼結装置106をコード線101上にスイープさせることによって行うことのできる解決策を示している。
【0031】
図18では、印刷インク層が連続する領域107であり、その局所表面インピーダンスをAC焼結装置106を使って変更する解決策を示している。
【0032】
図19は、コード線101が、電気焼結による影響を受けない固定抵抗率の導電性の良い部分と焼結で抵抗が変化する部分とから成る解決策を示している。この解決策では、コードの導電性の良い部分とリーダーとの間の容量性カップリングを利用して、相互接続部109の焼結によって導電部108を接続することにより、導電構造体の物理的な表面積を増大させる。記載した構成の主な利点には、(i)108に低コストの導電性インクを使用し、109のみにシルバーナノ粒子インクが使用できること、(ii)小さなサイズ(長さ)のビット部109により、コード線全体の焼結と比較して、低電力または低電圧レベルでのプログラミングが可能となることがある。
【0033】
図20によれば、図19の考えを拡大して、非書き込みおよび書き込みインピーダンスレベルを最適化することができる。
【0034】
図21aは、電気的に焼結可能なインク109を使って一部のみが印刷されたコード線を利用する別の例を示している。ここでは共通電極104が使用されており、焼結可能部109は、共通電極104と各コード線101との間に位置している。焼結部109は導電構造体の物理的なサイズを増大させ、これは、図15と関連して記載するリーダーなどの容量性リーダーの読み出しに影響を与える。
【0035】
図7bは図7aの構成の実用例を示している。コード情報は、図15に記載されたリーダーをコード上でスイープすることによって読み取る。コード線101にはアルファベットA〜Fが指定されている。スイープ1は初期状態に対応し、この場合コード線A,C,E,Fは非焼結ビット109によって共通電極104から離されている。非焼結ビット(状態1)を有するこれらのコード線は、リーダーの高い出力振幅を提供する。スイープ2では、コード線A,E,Fは焼結されている(状態2)。この推移はリーダーの高出力振幅から低出力振幅への変化として検出される。第3推移状態(状態3)は燃焼ビット109に対応する。これはスイープ3のコード線Eで実証される。従って、コード線Eのリーダー出力は、低振幅から高振幅へと戻される。焼結可能部分109は、コード線Cで示されるように、状態1(非焼結)から状態3(燃焼開放)へと直接プログラムすることができる。基準コード線BおよびDは、全てのスイープの間、閉ビット130によって共通電極104に接続されたままである。
【0036】
図22によれば、コード線101への接触は、コード線101よりも大きな接触パッド102を通して行うことができる。
【0037】
図23によれば、電気的に焼結可能なコードビット115〜117の表面積は異なっている。この特殊な配置において、各ビットの抵抗は材料層の矩形抵抗RDに等しい。従って、印加される電圧Yはビットに均一に分けられ、電流密度は表面積115の一番小さなビットが大きい。従って、コードは、焼結電圧(または焼結時間)を変化させて、最小ビット115のみが小さな電圧で焼結され、大きな電圧(または長い焼結時間)を印加して、例えばビット115および116を焼結するようにプログラムすることができる。プログラムされたビットは、全体の抵抗が3RD→2RD→RD→ショートへと変化するプログラミング手順中に検証することができる。
【0038】
図24は、DCプログラム回路の一つの可能な実施形態の概略図である。制御論理回路114は、電圧源110、電流制限レジスタ111および113に含まれるバーコードの種々の線を指定するスイッチ112を制御する。
【0039】
図25は図5と同様の解決策を示しているが、コード線の長さ101を調整して、線の長さに依存する周波数で発生する共振に基づく読み出しを容易にするものである。
【0040】
図26は図23による解決策を示しているが、ビット部119,120,121は、ビット部119,120,121の抵抗が本質的に同じとなるように変化する、異なる抵抗率および幅を有している。
【0041】
図27は、図22による解決策を示しているが、コード線108の部分は横方向のオフセットを有している。
【0042】
図28は、メモリビット部109が2つの連続するコード線108を接続する解決策を示している。
【0043】
以下に本発明のコード構成要素の典型的なサイズを示す:
典型的な範囲 典型的な値
コード構成要素101の幅: 20μm〜1mm
コード構成要素101の長さ: 500μm〜10mm
編集可能部分109の面積: 50μm×50μm〜200μm×1500μm
編集可能部分109の矩形導電率
非焼結時: 1kΩ〜100kΩ
焼結時: 50mΩ〜1Ω
編集可能領域109の厚さ 1μm
【0044】
編集可能領域の典型的な材料は、ANP DGH−55HTGなどのシルバーナノ粒子インクである。また、その他の電気的にプログラム可能な材料も使用することができる。
【0045】
図15は、図1〜図14に示す上述のコードの読み取りに適切な測定装置を示している。この装置では、振動子2によって通電される2つの送電電極4が電流を流し、電流は測定される表面と、そして表面下の導電構造体を流れる。図による配置では、中央の電極5が信号の測定に使用されている。配線および増幅器6のキャパシタンス(CMOSまたはJFET)は通常非常に大きく、読み取り電極5のインピーダンスは容量性短絡を表している。そうでない場合、電流フィードバックを増幅器6に行うことができ、これによって増幅器の入力は極めて低いインピーダンスとなる。信号は位相敏感検出器7を使って検出され、これは、対象物と同位相で接続された交流電流と信号との混合に基づいて行われ、該信号は90度位相が変位する。測定が差動的でない場合、導体間の容量接続はブリッジを平衡するために逆位相信号で取り消される。図15の配置による回路によって、表面のアドミタンスの虚部9および実部8を測定する。
【0046】
図16は、基板10に導電(非透明)コード11が形成された状況を示している。基板10は、紙、ボード、プラスチックまたはその他の同様な、典型的には非導電面とすることができる。図16では、コード11の幅が一定で、コード間の距離が調整されるようにコーディングが行われている。従ってコードにおいて、導電構造体の間に短い溝12と長い溝13がある。ある状況においては、コード11上に薄いプラスチック膜を設け、これによって対象物との容量性接続が低減される。
【0047】
図16によるコードが図1の配置でスキャンされる場合、アドミタンスは原則として2つの値の間で変化する。図17aの電気回路では測定対象物が純粋に紙であり、これに対して図17bは、基板10上に導電層がある状況を示している。場が分けられるので、精密なモデルでは、いくつかのコンデンサとレジスタを使用した状況を示さなくてはならない。スキャンの行われる表面にいくつかの導電構造体がある場合、アドミタンス調整回路を作成する。この場合、単一の周波数で測定すると、インピーダンス測定によって、対象物のアドミタンスの虚部および実部が生成される。測定に関する重要な問題は、コードが実部と虚部で変化する状況と比較した場合のアドミタンスの虚部と実部の変動である。本発明の中心思想は、測定のS/N比を最大にするためにどのように測定を行うかである。
【0048】
対象物の電気抵抗のノイズが大きくないと仮定して、電子機器に関して、実部または虚部の電流を最大化するための試みを行う。これは、広い電極と広いコードを作成することによって対象物の容量性接続を最大化し、測定電極からコードまでの距離を最小化することによって達成される。しかしながら、高周波数では、対象物のノイズはたいていS/N比を決定し、電子機器のノイズを全く決定しない。ノイズはたいていリーダーの「ハンチング」およびチルティングならびに紙(対象物)の粗さから発生する。ほとんどの基板は導通性がないので、問題によってノイズは主にアドミタンスの虚部のみに発生する。表面はある程度の損失があるが、実部のノイズは虚部のノイズよりも常に小さい。ノイズはコード上にも発生することがある。とりわけ紙の粗さのためにコードの導電性が高く、しかもインクが「斑点状」である場合、問題はコード上において虚部にも実部にもノイズがあるとうことである。電流は入力電極から測定電極まで導電性の良いブリッジを渡ってのみ流れるので、実部も非常に小さなままとすることができる。
【0049】
対象物の単純な等価回路を考えると、読み取りヘッドがコード上にある状況において、コンデンサと抵抗の直列接続はインピーダンスを描いている。コードの外において、対象物はほぼ全体的に損失がないので、コンデンサのみによって描くことができる。電子機器によって受け取られる電流は、下記の方程式によって得ることができる。
【数1】
【0050】
先ず、電流はできるだけ高い周波数を使用し、大きなコンデンサを生成することによってできるだけ近くから導電コードを測定しようと試みることによって最大化することができることに留意されたい。
【0051】
図18は、抵抗が増えた場合の測定アドミタンスの実部および虚部の挙動を曲線40で示している。図18は標準的な表示であり、測定距離は一定であるため、コンデンサは一定の振幅を有している。さらに、コードのないアドミタンスを描いた楕円43が図内に描かれている。実部の調整は、ポイント44においてr=1の場合、つまり、測定アドミタンスの虚部と実部が等しい振幅の場合に最大化され、この場合、測定インピーダンスの実部も虚部も当然等しい振幅である。質の良い導電面が測定される虚の状況(黒い楕円42)も図に描かれている。円41は「穴開き(holely)」コードを測定する状況を示している。この場合、実部と虚部の変化は非常に大きい。絶縁基板を使用すると、実部の値およびその変動は小さいので、r=1となるようにインクの距離と導電率を選択することが最善であり、そうすることによってアドミタンスの実部におけるS/N比を最大化する。抵抗が無限に増える場合、曲線は楕円43に近づく。
【0052】
本方法は、本質的には、対象物のアドミタンスの実部と虚部の相互分離に基づくものである。高周波数で、特に矩形波を使用する場合において、いわゆる角度誤差と呼ばれるものに関する正確な情報はない。高調波を含む矩形波では、実部と虚部の全体的なコンセプトは多少異なるものとなる。本発明の一実施形態によれば、重要な事実は、下記の角度補正方程式が測定された実部と虚部に関するものであるということである。
【数2】
【0053】
下付き文字uは角度補正アドミタンスに関するものである。補正角度はαで示されている。本方法の基本的な考えは、測定装置がコードのないポイントで紙(プラスチック)の表面をスキャンする際に、実部の変化が最小となるように補正角度を選ぶことである。校正は、紙の表面に圧痕を意図的に作成する、または、紙の表面からの距離が変化するように測定ポイント(ペン)を揺らすことによって改善することができる。本実施形態で使用する表面に校正を行うことは好適である。代替案として、コードのない領域においてコードをスキャンする際の角度校正がある。このようなコードのない、無損失の表面が測定ポイントによってスキャンされると、原則として無損失の測定コンポーネントのみが変化する。つまり、アドミタンスの実部の変化が最小となるような角度を見つけることができる。ポイントの紙への設置が角度の実部に影響を与えないように角度が選択される場合、実部のノイズも最小となる。実際、読み取り頻度が変わらない場合、角度の校正が行われるのは一度のみでなければならない。各測定ポイントに対して別個に校正を行わなければならないか否かは、電子機器の製造の変化に依存する。
【0054】
角度補正の目的は、このように、紙の特性とポイントの位置の変化による差異を測定信号から除去し、コードの特性のみに依存して行うことである。背景ノイズは除去される。
【0055】
角度補正において、座標設定の回転角度は、対象物内における無損失の誘電体の変化が角度補正されたRe信号に現れないように選択される。
【0056】
この目的は、例えば紙上にポイントを下げることによって、無損失誘電率のみにおいて測定ポイントに変化を生成することによって達成される。この後、角度補正信号ReおよびImを検討する。角度αは、調節によって生じた変化がIm信号のみに現れるまで、またはRe信号の最小値に到達するまで調節される。補正後、Re信号が測定される。その場合、変化はコードのみに現れる。
【0057】
本方法の中心的な考えは、ペンが実部と虚部とを相互に区別するように、測定ヘッドとして機能するペンを校正することである。これは、ペンが無損失の誘電性の表面に置かれた場合に、ペンが実部において変化を生じないように補正角度を調節することによって行うことができる。別の方法は誘電面を傷つけて、表面のスキャンを行う際に実部において変動が確実に起こらないようにするものである。実際の測定状況では、実部は紙の表面でリセットされ、トリガレベルが前もって設定されるか、または信号強度に基づいてアルゴリズムで適切なトリガレベルを求める。実部のノイズは小さいので、トリガレベルをゼロに大変近く設定することができる。コードの導電率が誤って示されている場合、またはコードが「斑点状」の場合のみ、実部の調整の代わりにベクトルの縦方向の調整を使用する価値がある。原則として、コードは、S/N比が最適化されるように、実部および虚部の長さを相互に適切な比率で加重することによって検出することができる。
【0058】
原則として、アドミタンスの実部および虚部からコードの正しい導電率を測定することができる。描写は数学的に大変難しい、とうのも場が分割されるからである。描写はペンの平均距離、電極の幅と比較したコードの幅などによる。しかしながら、ペンを特定の用途のために校正する場合、実験的に(またはFEM計算を使って数値的に)下記の式を求め、コードの上面および外側の変数rが距離の小さな変動と無関係であるようにする。
【数3】
これは単に両方の条件が距離に比例するので、両方の変数を使うことによって距離の変化をなくすことができるというものである。当該方法はコードの絶対抵抗率を測定するものではなく、コードと紙の抵抗率の差に比例するものであることに留意されたい。センサ情報を測定する場合、このような導電率のより正確な測定は重要である。しかしながら、測定線に加えて、導電率のわかっている基準線をコードに設けるのであれば、またはその値がコード情報と関連して与えられるのであれば、センサ情報の測定を実部の測定に戻すことができる。この場合、アドミタンスYの実部と虚部の方程式からセンサの抵抗率の抵抗値rを計算することができる。
【数4】
【0059】
上記方程式において、下付き文字refは基準コードの測定を指し、下付き文字aはセンサの測定を指す。もちろんこの方程式は、基準コードがセンサのジオメトリに等しいジオメトリを有するのであれば、確実に使用することができる。実部または虚部の何れかがアドミタンスを支配する場合、方程式はもちろん簡素化される。一方で、虚部は基準コードおよびセンサ上においてほぼ同じであることがよくあり、このため、センサのおおまかな導電率はたいてい簡単な計算で得ることができる。方程式4において、アドミタンスYは角度の補正されたアドミタンスを示している。
【0060】
コードはいくつかの異なる方法で作成することができる。一つには、バーコードで使用されている方法の「コピー」がある。しかしここではある方法を紹介する。この方法は、ペンまたはマウスを使ったスキャンにおいて発生する速度の変化を自然になくすものである。さらに、説明する方法は、紙のインピーダンスに近いように設定されるトリガレベルに基づいており、従ってコードを「ゼロ基準」として使用しない。図2のコードにおいて、情報は線の幅調整に記憶されており、導電線の幅は一定している。コード(非導電体)の読み取り中に蓄積されたサンプル数を分ける場合、これをサンプルの数に近い導電コードの最大数か、または近くの導電領域からの蓄積サンプルの数で割ることによって、標準化されたコードの情報を取得する。この情報は、2つの線の相互間の距離から隣接する線の幅までを示したものである。この数は速度とは無関係である。一方で、既知のコードおよび固定されたトリガレベルを使用すると、長いコードと短いコードとの間の比率は一定し、これによって誤った読み取りの検出が可能となる。このようなタイプのコーディングは、線の幅が最小化される場合、読み取られる表面にコードよりも多くの純粋な紙があり、コードをより見えないように保つことができるという利点がある。長時間にわたり、良い材料を使って、おそらく40μm幅の線を達成することもできる。この場合、コードの可視性はさらに低減される。適切な短いコードの幅は導電領域の幅と同等であり、これに応じて溝の幅は、読み取りのS/N比および選択されたエラー補正アルゴリズムに基づき、1.5〜3倍広くすることができる。係数が1.5のみの場合、移動単位毎に1/2.25ビットの情報密度を取得する。例えば、40μmの線は1/90ビット/μm導電する、すなわち96ビットEPCコードは約9mmのコードを必要とする。実際、ペン状のポイントを有する好適なスキャンの長さは3〜5cmなので、EPCコードは少なくとも250μmのコード幅を必要とする。より長い距離もペンでスキャンすることができ、特にマウスタイプのインターフェースを使用すると、距離を簡単に5cm〜10cmとすることができる。つまり、大きな数のビットでも電気的にコーディングすることができる。さらに2Dコードを対応する方法から生成する場合、情報量はこの何倍にもすることができる。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、コードの読み取りを下記のように最適化することができる。電極構造、コードからの距離および読み取り頻度が決まると、キャパシタンスのリアクタンスが導電性インクの抵抗と同程度となるように、インクの導電率が最適化される。測定電子機器を使って、実部が損失のみを測定するように、アドミタンスの測定した実部および虚部を角度補正によって補正する。これはポイントを非導電の誘電面に近づけることによって簡単に見ることができる。補正は容量性ブリッジと関連させて、または混合した後でアナログ的に行うことができる。補正はまた、AD補正後にデジタル的にも行うこともできる。角度補正後、コードの解釈は主に実部から行われる。例えば、インクの出所の調査のためには、導電率に関するより良い情報が必要であり、アドミタンスの助けを借りて、インピーダンスの実部を計算し、これからコードの導電率を決定することができる。
【0062】
本発明は下記のようにも説明することができる。測定される誘電体(紙、ボード、プラスチック)の誘電率は、損失の多いコンポーネントおよび無損失のコンポーネントを含む複合的なものである。本発明によるリーダーはこのどちらも測定する。無損失のコンポーネントは分極を形成する。損失の多いコンポーネントは、分極に関する損失か、または導電率の損失の何れかを形成する。クリーンな紙の誘電率はほぼ全体的に無損失である。
【0063】
例えば図3aおよび3bの電極5および4によって表されているリーダーのポイントを、コードのない所で測定される対象物(紙、ボード、プラスチック)の表面で動かす場合、リーダーのポイントによって測定される無損失の誘電率に比例する信号は、下記の理由によって変化する:
1.紙の繊維性により、誘電率は種々のポイントで変化する;
2.紙が吸収した水分によって、誘導率は種々の場所で異なる方法によって変化する;
3.ポイントが傾くと、ポイントから紙への接続が変化し、信号に影響を与える。
【0064】
損失の多い誘電率に比例する信号は全く無い。
【0065】
この無損失誘電率に比例する信号は、両方の角度補正信号(Re_origおよびIm_orig)に現れる。これは変調と復調の間の位相差によるものである。補正角度αを変えることにより、この位相差を変えることができる(座標の回転とも呼ばれる)。角度を変えることによって、新しい信号ReおよびImを形成することができる。適切な角度の手段により、無損失誘電率の変化によって生じた信号は、Imコンポーネントのみに現れる。同時に、該信号はRe信号から完全に消える。
【0066】
従って、実際に角度補正は、動きによって生じた変化が虚部のみに現れるまでリーダーをクリーンな紙上で動かして角度αを調整することによって行われる。または実部に変化が現れた場合、それは最小限のものであって非常に小さい。従ってこの場合、実部は損失の多い、インピーダンスの抵抗コンポーネントのみを測定する。
【0067】
従って、コードには損失の多い誘電率のみがあるので、Re信号はコードのみで変化する。
【0068】
上述の角度補正操作は典型的には一度限りの性質のものであり、一度のみ行われなければならない、または比較的低頻度(一ヶ月に一度から一年に一度)で繰り返されなければならない。
【0069】
本発明は電圧または電流入力を使って実行することができ、その場合、電圧入力は測定電極間の電流を測定するために使用され、電流入力は測定電極間の電圧を測定するために使用される。測定変数(電流または電圧)はより一般的には測定信号と称することができる。
【0070】
以下に本発明による代替案を示す。
・RFID:チップIDプログラミング;
・従来のヒューズ操作もメモリビットに利用して、ビットが書き込みで焼結されず、十分に高い電圧または電流で焼損するようにする;
・容量性のスイープ読み出しに加え、十分に高い周波数または十分に大きなコード構造体を使用して読み出しを行い、ビットが焼結されたときにコード線が共振し(コード線の長さは、例えば、波長の半分である)、ビットが焼結されていない場合(低コンダクタンスまたは非導電状態)には共振しないようにすることができる。コード線の共振は、コード線を特定の周波数で照明し、後方散乱信号を測定することによって検出することができる。異なるコード線の分解は、近接場スイープオーバー励起および検出または狭ビームスキャンを使って照明場をコード線の局所領域に合わせることによって行うことができる。あるいは、種々のコード線の長さを図25に示すように変化させて、異なる周波数で共振させ、周波数での線の分解を可能にすることができる。この後者の手法は、その場でスキャンをすることなく、離れた場所での非近接場の読み取りを可能にする。また、共振技術を使ったコードの書き取りは、十分に高い電圧を初期に非導電であるビットに誘導することができるのであれば可能である。初期に導電しているヒューズモードビットの書き取りは、焼結よりも高い場を必要とする。より良い周波数解像度を目標とする本手法のさらなる実施形態は、例えば、アンテナ構造体のような別個の共振器に容量的に接続された共振構造体を有している。
・異なる電圧または焼結時間での焼結をもたらす異なるサイズのメモリビット部を有する図23による解決策は、図26に示すように、メモリビット部のサイズの変化と種々の焼結温度、電圧または時間のインクとを組み合わせて使用することによっても実現することができる。
・例えば図19に示すような、メモリ部によって接続される、相対する方向から接近するコード線の部分もまた水平のオフセットを有することができ、図27に示すように、メモリ部が設置されている短い距離に並べて設けることができる。これによって各コード線の2つ以上の部分の整列要件を緩和することができる。
・図28はさらなる特別なコード構造体を示している。ここではメモリビット部が連続するコード線を接続している。
・シルバーナノ粒子インクの代わりに、銅ナノ粒子インクなどの他の金属ナノ粒子インクも本発明に関連して使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による、プログラム可能な印刷電気コードに関するものである。
【0002】
本発明はまた、印刷コードの製造方法およびプログラミング装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来技術によれば、光学的に読み取り可能なバーコードおよび遠隔的に読み取り可能なRFID識別子の両方が貨物運送で使用されてきた。
【0004】
バーコードは標準化テクノロジーの利点を持っているが、このテクノロジーは可視的なマークと、少なくとも見通し距離における読み取り技術とを必要とし、これによって用途の使用が制限されてしまう。可視マークによってこの技術は乱用されやすくなる。
【0005】
RFIDテクノロジーには上述のバーコードテクノロジーよりも優れた多くの利点があり、これらの利点には、遠隔可読性およびコード全体を製品に隠す可能性が含まれており、このテクノロジーはコードの偽造を防止するために使用することができる。しかしながら、このテクノロジーで使用されている識別子は、バーコードテクノロジーよりも明らかに高価でありえる。
【0006】
米国特許第5818019号明細書は、金銭価値の割り当てられた容量的な検証抵抗マーキングの測定に読み取り装置を使用する解決策を開示している。この機械では、短距離での非接触による測定が可能である。測定において、いくつか(例えば8つのアイテム)の抵抗の大きさを、同時測定によって、各抵抗の抵抗値が所定の限界値内となるように決定する。従って問題は「デジタル技術」を使って宝くじの電気的な正当性を判断するということである。全ての抵抗が所定の範囲内であればチケットは合格となるが、一つでも範囲外であると不合格となる。
【0007】
電気的に読み取り可能なコードもあり、これらのコードは、例えばコード上を読み取り装置でスイープすることによって近距離から読み取られる。このような種類のコードはそれらの最終的な固有の値に印刷される。このテクノロジーは柔軟性がなく、非常に時間がかかる、というのも、各々のコードは、固有のコード値を得るために個々に生成されなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
米国特許第5818019号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の最先端技術の欠点を取り除くことを目的とし、この目的のために全く新しいタイプの電気コード、該電気コードの製造方法および該電気コードのプログラミング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、印刷後に変更することのできる少なくとも一つの領域を含む、いくつかの導電線からのコードの形成に基づくものである。
【0011】
本発明の一つの好適な実施形態によれば、変更可能領域は電気焼結によって変更できるものである。
【0012】
より具体的には、本発明によるコードは、請求項1における特徴の部分の記載によって特徴付けられる。
【0013】
一方で、本発明による方法は、請求項10における特徴部分の記載によって特徴付けられる。
【0014】
さらに、本発明によるコーディング装置は、請求項16における特徴部分の記載によって特徴付けられる。
【0015】
本発明を用いて大きな利点を得ることができる。
【0016】
本発明は、コード構造体の作成後にその内容の電気的な書き込みまたはプログラムを行うことができる電気印刷コードを提供する。同一のコード構造体を作成することができ、これは大量生産にとって望ましいことである。コード固有の内容は、おそらくそれらのコードを作成するサプライチェーンと同じ団体によるものではない専用装置によって、後で書き込まれる。従って本発明は、作成工程および製品の価値連鎖のどちらも最適化することができる。一つの好適な製品の例として、セキュリティコードがある。
【0017】
本発明の一つの好適な用途分野として、製品のオリジナリティ、認証または消費者製品(薬のパッケージ、高価な製品)およびチケットなどの文書のセキュリティコードもしくはマーキングがある。固有の電気製品またはセキュリティコードの大量印刷は、コードが同一のものでない場合には問題となる。これはグラビア印刷などの高速大量印刷法が、大量で同一の構造体を生産する場合のみに適しているからである。インクジェット印刷はアイテムレベルでの特注生産を行うことができるが、インクジェットは一般に、大量生産を行うには遅すぎる。本発明は、電気焼結技術を用いてコードの特注生産を行うことによって、問題を解決するものである。
【0018】
本発明は、バーコードを不可視にする可能性のお陰で、バーコードに関連する明確な利点を提供する。この不可視コードは、偽造品の簡単でコスト効率の良い確認のために使用することができる。
【0019】
実際、本発明の用途は、RFIDテクノロジーおよびバーコードテクノロジーの用途と類似している。本発明によるコードは、可視的なものか、不透明な保護膜の下に隠すものかの何れかとすることができる。本発明によるコードは、例えば、アクセスコントロール用途、製品データコーディング、認証および製品の出所の検証に使用することができる。
【0020】
電気的に読み取り可能なRFIDタグに関して、本発明は大きなコスト優位性を提供する、というのもコードは印刷技術を使って製造できるからである。
【0021】
マーキングの電気的特性を最適化するので、測定電子機器をより安価なコンポーネントで製造することができる。
【0022】
以下、例を用い、また添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるプログラム可能コードの上面図である。
【図2】本発明による他のプログラム可能コードの上面図である。
【図3】コードのプログラミングをAC焼結をスイープすることによって行うことができる、本発明の一実施形態による略斜視図である。
【図4】印刷インク層が連続する領域であり、その領域の局所表面インピーダンスが本発明によるAC焼結装置を用いて変更される、本発明の一実施形態による略斜視図である。
【図5】電気焼結による影響を受けない固定抵抗率の導電性の良い部分と、焼結で抵抗が変化する部分とから成る、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図6】図19の考えを拡大して、非書き込みおよび書き込みインピーダンスレベルを最適化した、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図7】aは電気的に焼結可能なインクを使って一部分のみを印刷した本発明の一実施形態による略上面図であり、bは図7aの構成の実用例を示したものである。
【図8】コード線よりも大きな接触パッドによってコード線への接触を行うことのできる、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図9】電気的に焼結可能なコードビットの表面積が変化する、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図10】DCプログラマ回路用の、本発明の一実施形態による概略図である。
【図11】コード線の調整によって共振読み出しを容易にする、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図12】ビット部が異なる抵抗率を有し、ビット部の抵抗が本質的に同じとなるように幅を変化させた、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図13】コード線の一部が垂直方向のオフセットを有する、本発明の一実施形態による略斜視図である。
【図14】メモリビット部が2つの連続するコード線を接続させている、本発明の一実施形態による略上面図である。
【図15】本発明による測定装置を示す図である。
【図16】本発明による測定対象物を示す図である。
【図17】aは電極間に読み取るコードがない場合の、本発明による測定装置の電極間の等価回路を示す図であり、bは電極間に読み取るコードがある場合の、本発明による測定装置の電極間の等価回路を示す図である。
【図18】コード抵抗の増加に伴って読み取られるマーキングの実部および虚部の挙動を、本発明による測定装置の観点からグラフで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
電気焼結は、ナノ粒子ベースの印刷インクの乾燥層などの蒸着(印刷、分配、スピンコート)材料層のインピーダンスまたは表面インピーダンスを変更するために利用される。インピーダンスは通常、実部と虚部の両方を有する複素変数である。インピーダンス部(実部または虚部)の何れか一つまたは両方を読み出しに使用することができる。しかしながらリーダーの面接触が容量性である場合、より信頼できる読み取りがインピーダンスの実部を使って達成される。以下、電気コードはこの制御されたインピーダンス構造体のことを示す。
【0025】
電気コードは種々の電気抵抗率を有する線から成るバーコード状のものとすることができる。バーコードは、抵抗率が電気焼結技術を使用して後で調整することのできるインクを使って、全体的または部分的に生成される。このようなインクの例として、Advanced Nano Products社のシルバーナノ粒子インクがある。コードの調整可能な抵抗線は、このようなインクを使って全体的または部分的に生成することができる。プログラミング装置は、コード構造体と電気的にDC接触またはAC接触して、コード線の全体または一部に電気焼結を与える。
【0026】
あるいは、印刷構造体は、その表面の焼結部によってコードが書き込まれた、ナノ粒子インクで覆われた領域であってもよい。
【0027】
下記の図は本発明の特定の態様を概略的に示したものである。コードは、例えば、後に記載するリーダーを使って読み取ることができる。下記の図にはコード用のパフォーム(perform)200が示されており、これは電気的に固有のコードに変更される。本図にはコードが示されており、インクの非焼結および焼結状態がコード線の2つの導電状態として使用されている。電気焼結を使うと、コンダクタンスを2つの両極端部間において有限のステップで変化させることもでき、マルチレベルの電気コードが可能となる。さらに、焼結電圧(電流、電力)よりも十分に高い電圧(電流、電力)を使うことによって、導体が壊れ(ヒューズモード操作)、非焼結(低導電率)状態および焼結(高導電率)状態に加えて、コード線の第3の状態が可能となる。
【0028】
図15はプログラム可能なバーコード101を示しており、これは実際にはプログラミングステージ前のコードのパフォーム200である。本図は、プログラミング装置103およびガルバニックコード−デバイス接点102も示している。プログラミングにおいて、プログラミング装置103は、コード線の全てまたは一部にDCまたはAC電圧を印加し、これらを導電状態に焼結する。つまり、プログラミング装置103は対応する構成要素101のためにコンダクタンス値を変更するために、構成要素101の内の何れかを選択することができる。接点102は、例えば十分な大きさの接触パッドを有することのできる、コード線101の端部に接触する直流ガルバニックコードであってもよい。接触パッドは、図22に示すようなコード線と電気接触するコードから離して設置することもできる。これらの線は、シルバーナノ粒子インクなどの電気的に焼結可能なインクを使って全体的または部分的に印刷される(焼結可能なインクで一部のみを印刷したコード線に関しては、図19、図20、図21、図23、図25および図26を参照のこと)。
【0029】
図16は、コード線の反対側を電気接点104として、プログラミング装置への電気接点の数を制限していることを示している。
【0030】
図17は、コードのプログラミングを、基板105に印刷されたコード線に接触させて、またはコード線に近い距離で、AC焼結装置106をコード線101上にスイープさせることによって行うことのできる解決策を示している。
【0031】
図18では、印刷インク層が連続する領域107であり、その局所表面インピーダンスをAC焼結装置106を使って変更する解決策を示している。
【0032】
図19は、コード線101が、電気焼結による影響を受けない固定抵抗率の導電性の良い部分と焼結で抵抗が変化する部分とから成る解決策を示している。この解決策では、コードの導電性の良い部分とリーダーとの間の容量性カップリングを利用して、相互接続部109の焼結によって導電部108を接続することにより、導電構造体の物理的な表面積を増大させる。記載した構成の主な利点には、(i)108に低コストの導電性インクを使用し、109のみにシルバーナノ粒子インクが使用できること、(ii)小さなサイズ(長さ)のビット部109により、コード線全体の焼結と比較して、低電力または低電圧レベルでのプログラミングが可能となることがある。
【0033】
図20によれば、図19の考えを拡大して、非書き込みおよび書き込みインピーダンスレベルを最適化することができる。
【0034】
図21aは、電気的に焼結可能なインク109を使って一部のみが印刷されたコード線を利用する別の例を示している。ここでは共通電極104が使用されており、焼結可能部109は、共通電極104と各コード線101との間に位置している。焼結部109は導電構造体の物理的なサイズを増大させ、これは、図15と関連して記載するリーダーなどの容量性リーダーの読み出しに影響を与える。
【0035】
図7bは図7aの構成の実用例を示している。コード情報は、図15に記載されたリーダーをコード上でスイープすることによって読み取る。コード線101にはアルファベットA〜Fが指定されている。スイープ1は初期状態に対応し、この場合コード線A,C,E,Fは非焼結ビット109によって共通電極104から離されている。非焼結ビット(状態1)を有するこれらのコード線は、リーダーの高い出力振幅を提供する。スイープ2では、コード線A,E,Fは焼結されている(状態2)。この推移はリーダーの高出力振幅から低出力振幅への変化として検出される。第3推移状態(状態3)は燃焼ビット109に対応する。これはスイープ3のコード線Eで実証される。従って、コード線Eのリーダー出力は、低振幅から高振幅へと戻される。焼結可能部分109は、コード線Cで示されるように、状態1(非焼結)から状態3(燃焼開放)へと直接プログラムすることができる。基準コード線BおよびDは、全てのスイープの間、閉ビット130によって共通電極104に接続されたままである。
【0036】
図22によれば、コード線101への接触は、コード線101よりも大きな接触パッド102を通して行うことができる。
【0037】
図23によれば、電気的に焼結可能なコードビット115〜117の表面積は異なっている。この特殊な配置において、各ビットの抵抗は材料層の矩形抵抗RDに等しい。従って、印加される電圧Yはビットに均一に分けられ、電流密度は表面積115の一番小さなビットが大きい。従って、コードは、焼結電圧(または焼結時間)を変化させて、最小ビット115のみが小さな電圧で焼結され、大きな電圧(または長い焼結時間)を印加して、例えばビット115および116を焼結するようにプログラムすることができる。プログラムされたビットは、全体の抵抗が3RD→2RD→RD→ショートへと変化するプログラミング手順中に検証することができる。
【0038】
図24は、DCプログラム回路の一つの可能な実施形態の概略図である。制御論理回路114は、電圧源110、電流制限レジスタ111および113に含まれるバーコードの種々の線を指定するスイッチ112を制御する。
【0039】
図25は図5と同様の解決策を示しているが、コード線の長さ101を調整して、線の長さに依存する周波数で発生する共振に基づく読み出しを容易にするものである。
【0040】
図26は図23による解決策を示しているが、ビット部119,120,121は、ビット部119,120,121の抵抗が本質的に同じとなるように変化する、異なる抵抗率および幅を有している。
【0041】
図27は、図22による解決策を示しているが、コード線108の部分は横方向のオフセットを有している。
【0042】
図28は、メモリビット部109が2つの連続するコード線108を接続する解決策を示している。
【0043】
以下に本発明のコード構成要素の典型的なサイズを示す:
典型的な範囲 典型的な値
コード構成要素101の幅: 20μm〜1mm
コード構成要素101の長さ: 500μm〜10mm
編集可能部分109の面積: 50μm×50μm〜200μm×1500μm
編集可能部分109の矩形導電率
非焼結時: 1kΩ〜100kΩ
焼結時: 50mΩ〜1Ω
編集可能領域109の厚さ 1μm
【0044】
編集可能領域の典型的な材料は、ANP DGH−55HTGなどのシルバーナノ粒子インクである。また、その他の電気的にプログラム可能な材料も使用することができる。
【0045】
図15は、図1〜図14に示す上述のコードの読み取りに適切な測定装置を示している。この装置では、振動子2によって通電される2つの送電電極4が電流を流し、電流は測定される表面と、そして表面下の導電構造体を流れる。図による配置では、中央の電極5が信号の測定に使用されている。配線および増幅器6のキャパシタンス(CMOSまたはJFET)は通常非常に大きく、読み取り電極5のインピーダンスは容量性短絡を表している。そうでない場合、電流フィードバックを増幅器6に行うことができ、これによって増幅器の入力は極めて低いインピーダンスとなる。信号は位相敏感検出器7を使って検出され、これは、対象物と同位相で接続された交流電流と信号との混合に基づいて行われ、該信号は90度位相が変位する。測定が差動的でない場合、導体間の容量接続はブリッジを平衡するために逆位相信号で取り消される。図15の配置による回路によって、表面のアドミタンスの虚部9および実部8を測定する。
【0046】
図16は、基板10に導電(非透明)コード11が形成された状況を示している。基板10は、紙、ボード、プラスチックまたはその他の同様な、典型的には非導電面とすることができる。図16では、コード11の幅が一定で、コード間の距離が調整されるようにコーディングが行われている。従ってコードにおいて、導電構造体の間に短い溝12と長い溝13がある。ある状況においては、コード11上に薄いプラスチック膜を設け、これによって対象物との容量性接続が低減される。
【0047】
図16によるコードが図1の配置でスキャンされる場合、アドミタンスは原則として2つの値の間で変化する。図17aの電気回路では測定対象物が純粋に紙であり、これに対して図17bは、基板10上に導電層がある状況を示している。場が分けられるので、精密なモデルでは、いくつかのコンデンサとレジスタを使用した状況を示さなくてはならない。スキャンの行われる表面にいくつかの導電構造体がある場合、アドミタンス調整回路を作成する。この場合、単一の周波数で測定すると、インピーダンス測定によって、対象物のアドミタンスの虚部および実部が生成される。測定に関する重要な問題は、コードが実部と虚部で変化する状況と比較した場合のアドミタンスの虚部と実部の変動である。本発明の中心思想は、測定のS/N比を最大にするためにどのように測定を行うかである。
【0048】
対象物の電気抵抗のノイズが大きくないと仮定して、電子機器に関して、実部または虚部の電流を最大化するための試みを行う。これは、広い電極と広いコードを作成することによって対象物の容量性接続を最大化し、測定電極からコードまでの距離を最小化することによって達成される。しかしながら、高周波数では、対象物のノイズはたいていS/N比を決定し、電子機器のノイズを全く決定しない。ノイズはたいていリーダーの「ハンチング」およびチルティングならびに紙(対象物)の粗さから発生する。ほとんどの基板は導通性がないので、問題によってノイズは主にアドミタンスの虚部のみに発生する。表面はある程度の損失があるが、実部のノイズは虚部のノイズよりも常に小さい。ノイズはコード上にも発生することがある。とりわけ紙の粗さのためにコードの導電性が高く、しかもインクが「斑点状」である場合、問題はコード上において虚部にも実部にもノイズがあるとうことである。電流は入力電極から測定電極まで導電性の良いブリッジを渡ってのみ流れるので、実部も非常に小さなままとすることができる。
【0049】
対象物の単純な等価回路を考えると、読み取りヘッドがコード上にある状況において、コンデンサと抵抗の直列接続はインピーダンスを描いている。コードの外において、対象物はほぼ全体的に損失がないので、コンデンサのみによって描くことができる。電子機器によって受け取られる電流は、下記の方程式によって得ることができる。
【数1】
【0050】
先ず、電流はできるだけ高い周波数を使用し、大きなコンデンサを生成することによってできるだけ近くから導電コードを測定しようと試みることによって最大化することができることに留意されたい。
【0051】
図18は、抵抗が増えた場合の測定アドミタンスの実部および虚部の挙動を曲線40で示している。図18は標準的な表示であり、測定距離は一定であるため、コンデンサは一定の振幅を有している。さらに、コードのないアドミタンスを描いた楕円43が図内に描かれている。実部の調整は、ポイント44においてr=1の場合、つまり、測定アドミタンスの虚部と実部が等しい振幅の場合に最大化され、この場合、測定インピーダンスの実部も虚部も当然等しい振幅である。質の良い導電面が測定される虚の状況(黒い楕円42)も図に描かれている。円41は「穴開き(holely)」コードを測定する状況を示している。この場合、実部と虚部の変化は非常に大きい。絶縁基板を使用すると、実部の値およびその変動は小さいので、r=1となるようにインクの距離と導電率を選択することが最善であり、そうすることによってアドミタンスの実部におけるS/N比を最大化する。抵抗が無限に増える場合、曲線は楕円43に近づく。
【0052】
本方法は、本質的には、対象物のアドミタンスの実部と虚部の相互分離に基づくものである。高周波数で、特に矩形波を使用する場合において、いわゆる角度誤差と呼ばれるものに関する正確な情報はない。高調波を含む矩形波では、実部と虚部の全体的なコンセプトは多少異なるものとなる。本発明の一実施形態によれば、重要な事実は、下記の角度補正方程式が測定された実部と虚部に関するものであるということである。
【数2】
【0053】
下付き文字uは角度補正アドミタンスに関するものである。補正角度はαで示されている。本方法の基本的な考えは、測定装置がコードのないポイントで紙(プラスチック)の表面をスキャンする際に、実部の変化が最小となるように補正角度を選ぶことである。校正は、紙の表面に圧痕を意図的に作成する、または、紙の表面からの距離が変化するように測定ポイント(ペン)を揺らすことによって改善することができる。本実施形態で使用する表面に校正を行うことは好適である。代替案として、コードのない領域においてコードをスキャンする際の角度校正がある。このようなコードのない、無損失の表面が測定ポイントによってスキャンされると、原則として無損失の測定コンポーネントのみが変化する。つまり、アドミタンスの実部の変化が最小となるような角度を見つけることができる。ポイントの紙への設置が角度の実部に影響を与えないように角度が選択される場合、実部のノイズも最小となる。実際、読み取り頻度が変わらない場合、角度の校正が行われるのは一度のみでなければならない。各測定ポイントに対して別個に校正を行わなければならないか否かは、電子機器の製造の変化に依存する。
【0054】
角度補正の目的は、このように、紙の特性とポイントの位置の変化による差異を測定信号から除去し、コードの特性のみに依存して行うことである。背景ノイズは除去される。
【0055】
角度補正において、座標設定の回転角度は、対象物内における無損失の誘電体の変化が角度補正されたRe信号に現れないように選択される。
【0056】
この目的は、例えば紙上にポイントを下げることによって、無損失誘電率のみにおいて測定ポイントに変化を生成することによって達成される。この後、角度補正信号ReおよびImを検討する。角度αは、調節によって生じた変化がIm信号のみに現れるまで、またはRe信号の最小値に到達するまで調節される。補正後、Re信号が測定される。その場合、変化はコードのみに現れる。
【0057】
本方法の中心的な考えは、ペンが実部と虚部とを相互に区別するように、測定ヘッドとして機能するペンを校正することである。これは、ペンが無損失の誘電性の表面に置かれた場合に、ペンが実部において変化を生じないように補正角度を調節することによって行うことができる。別の方法は誘電面を傷つけて、表面のスキャンを行う際に実部において変動が確実に起こらないようにするものである。実際の測定状況では、実部は紙の表面でリセットされ、トリガレベルが前もって設定されるか、または信号強度に基づいてアルゴリズムで適切なトリガレベルを求める。実部のノイズは小さいので、トリガレベルをゼロに大変近く設定することができる。コードの導電率が誤って示されている場合、またはコードが「斑点状」の場合のみ、実部の調整の代わりにベクトルの縦方向の調整を使用する価値がある。原則として、コードは、S/N比が最適化されるように、実部および虚部の長さを相互に適切な比率で加重することによって検出することができる。
【0058】
原則として、アドミタンスの実部および虚部からコードの正しい導電率を測定することができる。描写は数学的に大変難しい、とうのも場が分割されるからである。描写はペンの平均距離、電極の幅と比較したコードの幅などによる。しかしながら、ペンを特定の用途のために校正する場合、実験的に(またはFEM計算を使って数値的に)下記の式を求め、コードの上面および外側の変数rが距離の小さな変動と無関係であるようにする。
【数3】
これは単に両方の条件が距離に比例するので、両方の変数を使うことによって距離の変化をなくすことができるというものである。当該方法はコードの絶対抵抗率を測定するものではなく、コードと紙の抵抗率の差に比例するものであることに留意されたい。センサ情報を測定する場合、このような導電率のより正確な測定は重要である。しかしながら、測定線に加えて、導電率のわかっている基準線をコードに設けるのであれば、またはその値がコード情報と関連して与えられるのであれば、センサ情報の測定を実部の測定に戻すことができる。この場合、アドミタンスYの実部と虚部の方程式からセンサの抵抗率の抵抗値rを計算することができる。
【数4】
【0059】
上記方程式において、下付き文字refは基準コードの測定を指し、下付き文字aはセンサの測定を指す。もちろんこの方程式は、基準コードがセンサのジオメトリに等しいジオメトリを有するのであれば、確実に使用することができる。実部または虚部の何れかがアドミタンスを支配する場合、方程式はもちろん簡素化される。一方で、虚部は基準コードおよびセンサ上においてほぼ同じであることがよくあり、このため、センサのおおまかな導電率はたいてい簡単な計算で得ることができる。方程式4において、アドミタンスYは角度の補正されたアドミタンスを示している。
【0060】
コードはいくつかの異なる方法で作成することができる。一つには、バーコードで使用されている方法の「コピー」がある。しかしここではある方法を紹介する。この方法は、ペンまたはマウスを使ったスキャンにおいて発生する速度の変化を自然になくすものである。さらに、説明する方法は、紙のインピーダンスに近いように設定されるトリガレベルに基づいており、従ってコードを「ゼロ基準」として使用しない。図2のコードにおいて、情報は線の幅調整に記憶されており、導電線の幅は一定している。コード(非導電体)の読み取り中に蓄積されたサンプル数を分ける場合、これをサンプルの数に近い導電コードの最大数か、または近くの導電領域からの蓄積サンプルの数で割ることによって、標準化されたコードの情報を取得する。この情報は、2つの線の相互間の距離から隣接する線の幅までを示したものである。この数は速度とは無関係である。一方で、既知のコードおよび固定されたトリガレベルを使用すると、長いコードと短いコードとの間の比率は一定し、これによって誤った読み取りの検出が可能となる。このようなタイプのコーディングは、線の幅が最小化される場合、読み取られる表面にコードよりも多くの純粋な紙があり、コードをより見えないように保つことができるという利点がある。長時間にわたり、良い材料を使って、おそらく40μm幅の線を達成することもできる。この場合、コードの可視性はさらに低減される。適切な短いコードの幅は導電領域の幅と同等であり、これに応じて溝の幅は、読み取りのS/N比および選択されたエラー補正アルゴリズムに基づき、1.5〜3倍広くすることができる。係数が1.5のみの場合、移動単位毎に1/2.25ビットの情報密度を取得する。例えば、40μmの線は1/90ビット/μm導電する、すなわち96ビットEPCコードは約9mmのコードを必要とする。実際、ペン状のポイントを有する好適なスキャンの長さは3〜5cmなので、EPCコードは少なくとも250μmのコード幅を必要とする。より長い距離もペンでスキャンすることができ、特にマウスタイプのインターフェースを使用すると、距離を簡単に5cm〜10cmとすることができる。つまり、大きな数のビットでも電気的にコーディングすることができる。さらに2Dコードを対応する方法から生成する場合、情報量はこの何倍にもすることができる。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、コードの読み取りを下記のように最適化することができる。電極構造、コードからの距離および読み取り頻度が決まると、キャパシタンスのリアクタンスが導電性インクの抵抗と同程度となるように、インクの導電率が最適化される。測定電子機器を使って、実部が損失のみを測定するように、アドミタンスの測定した実部および虚部を角度補正によって補正する。これはポイントを非導電の誘電面に近づけることによって簡単に見ることができる。補正は容量性ブリッジと関連させて、または混合した後でアナログ的に行うことができる。補正はまた、AD補正後にデジタル的にも行うこともできる。角度補正後、コードの解釈は主に実部から行われる。例えば、インクの出所の調査のためには、導電率に関するより良い情報が必要であり、アドミタンスの助けを借りて、インピーダンスの実部を計算し、これからコードの導電率を決定することができる。
【0062】
本発明は下記のようにも説明することができる。測定される誘電体(紙、ボード、プラスチック)の誘電率は、損失の多いコンポーネントおよび無損失のコンポーネントを含む複合的なものである。本発明によるリーダーはこのどちらも測定する。無損失のコンポーネントは分極を形成する。損失の多いコンポーネントは、分極に関する損失か、または導電率の損失の何れかを形成する。クリーンな紙の誘電率はほぼ全体的に無損失である。
【0063】
例えば図3aおよび3bの電極5および4によって表されているリーダーのポイントを、コードのない所で測定される対象物(紙、ボード、プラスチック)の表面で動かす場合、リーダーのポイントによって測定される無損失の誘電率に比例する信号は、下記の理由によって変化する:
1.紙の繊維性により、誘電率は種々のポイントで変化する;
2.紙が吸収した水分によって、誘導率は種々の場所で異なる方法によって変化する;
3.ポイントが傾くと、ポイントから紙への接続が変化し、信号に影響を与える。
【0064】
損失の多い誘電率に比例する信号は全く無い。
【0065】
この無損失誘電率に比例する信号は、両方の角度補正信号(Re_origおよびIm_orig)に現れる。これは変調と復調の間の位相差によるものである。補正角度αを変えることにより、この位相差を変えることができる(座標の回転とも呼ばれる)。角度を変えることによって、新しい信号ReおよびImを形成することができる。適切な角度の手段により、無損失誘電率の変化によって生じた信号は、Imコンポーネントのみに現れる。同時に、該信号はRe信号から完全に消える。
【0066】
従って、実際に角度補正は、動きによって生じた変化が虚部のみに現れるまでリーダーをクリーンな紙上で動かして角度αを調整することによって行われる。または実部に変化が現れた場合、それは最小限のものであって非常に小さい。従ってこの場合、実部は損失の多い、インピーダンスの抵抗コンポーネントのみを測定する。
【0067】
従って、コードには損失の多い誘電率のみがあるので、Re信号はコードのみで変化する。
【0068】
上述の角度補正操作は典型的には一度限りの性質のものであり、一度のみ行われなければならない、または比較的低頻度(一ヶ月に一度から一年に一度)で繰り返されなければならない。
【0069】
本発明は電圧または電流入力を使って実行することができ、その場合、電圧入力は測定電極間の電流を測定するために使用され、電流入力は測定電極間の電圧を測定するために使用される。測定変数(電流または電圧)はより一般的には測定信号と称することができる。
【0070】
以下に本発明による代替案を示す。
・RFID:チップIDプログラミング;
・従来のヒューズ操作もメモリビットに利用して、ビットが書き込みで焼結されず、十分に高い電圧または電流で焼損するようにする;
・容量性のスイープ読み出しに加え、十分に高い周波数または十分に大きなコード構造体を使用して読み出しを行い、ビットが焼結されたときにコード線が共振し(コード線の長さは、例えば、波長の半分である)、ビットが焼結されていない場合(低コンダクタンスまたは非導電状態)には共振しないようにすることができる。コード線の共振は、コード線を特定の周波数で照明し、後方散乱信号を測定することによって検出することができる。異なるコード線の分解は、近接場スイープオーバー励起および検出または狭ビームスキャンを使って照明場をコード線の局所領域に合わせることによって行うことができる。あるいは、種々のコード線の長さを図25に示すように変化させて、異なる周波数で共振させ、周波数での線の分解を可能にすることができる。この後者の手法は、その場でスキャンをすることなく、離れた場所での非近接場の読み取りを可能にする。また、共振技術を使ったコードの書き取りは、十分に高い電圧を初期に非導電であるビットに誘導することができるのであれば可能である。初期に導電しているヒューズモードビットの書き取りは、焼結よりも高い場を必要とする。より良い周波数解像度を目標とする本手法のさらなる実施形態は、例えば、アンテナ構造体のような別個の共振器に容量的に接続された共振構造体を有している。
・異なる電圧または焼結時間での焼結をもたらす異なるサイズのメモリビット部を有する図23による解決策は、図26に示すように、メモリビット部のサイズの変化と種々の焼結温度、電圧または時間のインクとを組み合わせて使用することによっても実現することができる。
・例えば図19に示すような、メモリ部によって接続される、相対する方向から接近するコード線の部分もまた水平のオフセットを有することができ、図27に示すように、メモリ部が設置されている短い距離に並べて設けることができる。これによって各コード線の2つ以上の部分の整列要件を緩和することができる。
・図28はさらなる特別なコード構造体を示している。ここではメモリビット部が連続するコード線を接続している。
・シルバーナノ粒子インクの代わりに、銅ナノ粒子インクなどの他の金属ナノ粒子インクも本発明に関連して使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子コードであって、
本質的に電気的非導電体の基板(105、10)と、
前記基板上に形成されたいくつかの電気的導電コードエレメント(108)と
を備え、少なくとも一つのコードエレメント(101、108)が、コンダクタンスを電気的に変更できる編集可能領域(109)を有することを特徴とする電子コード。
【請求項2】
全てのコードエレメント(101)が編集可能であることを特徴とする請求項1に記載のコード。
【請求項3】
コードエレメント(101)が少なくとも一つの編集可能な領域(109)を含むことを特徴とする請求項1に記載のコード。
【請求項4】
編集可能な領域(109)がコード線(101)同士の間にあることを特徴とする請求項1に記載のコード。
【請求項5】
コードエレメント(101)が導電線であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のコード。
【請求項6】
材料であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のコード。
【請求項7】
編集可能な領域(109)がシルバーナノ粒子インクであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のコード。
【請求項8】
測定状況において、測定結果の実部(8)はコーディングされていない材料(8)の表面にリセットされ、測定を開始する電子機器(1)のトリガレベルが、前記リセットされた実部(8)に基づいて予め設定されることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のコード。
【請求項9】
測定状況において、アルゴリズムは信号の強度に基づいて測定を開始する適切なトリガレベルを求めることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のコード。
【請求項10】
電気的に読み取り可能なコードを形成する方法であって、
・同一のコードパフォーム(200)が第一者によって製造され、
・前記パフォーム(200)は第二者によって電気的に固有のコード(108)に編集されることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記パフォーム(200)が焼結によって編集されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記パフォーム(200)の一部のみが選択された部分(109)から編集されることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記パフォーム(200)がガルバニック接触によって編集されることを特徴とする請求項10〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記パフォーム(200)が容量性接触によって編集されることを特徴とする請求項10〜12に記載の方法。
【請求項15】
前記パフォーム(200)がRF場によって編集されることを特徴とする請求項10〜12に記載の方法。
【請求項16】
電子コード(200)を編集する装置であって、該装置が、編集されるコード(200、11)に電気信号を印加する手段を備えていることを特徴とする装置。
【請求項17】
前記装置が、編集されるコード(200、11)に電気信号をガルバニック的に印加する手段を備えていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、編集されるコード(200、11)に電気信号を容量的に印加する手段を備えていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記装置が、編集されるコード(200、11)に電気RF信号を印加する手段を備えていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項1】
電子コードであって、
本質的に電気的非導電体の基板(105、10)と、
前記基板上に形成されたいくつかの電気的導電コードエレメント(108)と
を備え、少なくとも一つのコードエレメント(101、108)が、コンダクタンスを電気的に変更できる編集可能領域(109)を有することを特徴とする電子コード。
【請求項2】
全てのコードエレメント(101)が編集可能であることを特徴とする請求項1に記載のコード。
【請求項3】
コードエレメント(101)が少なくとも一つの編集可能な領域(109)を含むことを特徴とする請求項1に記載のコード。
【請求項4】
編集可能な領域(109)がコード線(101)同士の間にあることを特徴とする請求項1に記載のコード。
【請求項5】
コードエレメント(101)が導電線であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のコード。
【請求項6】
材料であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のコード。
【請求項7】
編集可能な領域(109)がシルバーナノ粒子インクであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のコード。
【請求項8】
測定状況において、測定結果の実部(8)はコーディングされていない材料(8)の表面にリセットされ、測定を開始する電子機器(1)のトリガレベルが、前記リセットされた実部(8)に基づいて予め設定されることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のコード。
【請求項9】
測定状況において、アルゴリズムは信号の強度に基づいて測定を開始する適切なトリガレベルを求めることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のコード。
【請求項10】
電気的に読み取り可能なコードを形成する方法であって、
・同一のコードパフォーム(200)が第一者によって製造され、
・前記パフォーム(200)は第二者によって電気的に固有のコード(108)に編集されることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記パフォーム(200)が焼結によって編集されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記パフォーム(200)の一部のみが選択された部分(109)から編集されることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記パフォーム(200)がガルバニック接触によって編集されることを特徴とする請求項10〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記パフォーム(200)が容量性接触によって編集されることを特徴とする請求項10〜12に記載の方法。
【請求項15】
前記パフォーム(200)がRF場によって編集されることを特徴とする請求項10〜12に記載の方法。
【請求項16】
電子コード(200)を編集する装置であって、該装置が、編集されるコード(200、11)に電気信号を印加する手段を備えていることを特徴とする装置。
【請求項17】
前記装置が、編集されるコード(200、11)に電気信号をガルバニック的に印加する手段を備えていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、編集されるコード(200、11)に電気信号を容量的に印加する手段を備えていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記装置が、編集されるコード(200、11)に電気RF信号を印加する手段を備えていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7b】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7b】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2013−514574(P2013−514574A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543854(P2012−543854)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/FI2010/051017
【国際公開番号】WO2011/073509
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511215207)テクノロジアン テュトキムスケスクス ヴェーテーテー (11)
【氏名又は名称原語表記】Teknologian tutkimuskeskus VTT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/FI2010/051017
【国際公開番号】WO2011/073509
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511215207)テクノロジアン テュトキムスケスクス ヴェーテーテー (11)
【氏名又は名称原語表記】Teknologian tutkimuskeskus VTT
【Fターム(参考)】
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