説明

プログラム式表示装置用の操作画面データ転送方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、工業用あるいは家庭用など各種制御手段における操作および表示用として使用する操作画面を実現するデータの転送方法であって、特に更新したデータのみを自動転送するものに関する。
【0002】
【従来の技術】本出願人は以前、予めデータ登録しておいた部品図形データを利用し、部品図形の選択および配置を作画面上で行うことにより、プログラム式表示装置に使用する操作画面を実現するためのデータが容易に作成できる装置を提案した(例えば、特開平7−225789号公報参照)。更に、作成したデータを全体として更新するのに加えて、指定した画面を単位としたデータの更新を行うことも行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記したデータを全体として更新する方法は、1台のプログラム式表示装置で使用されるデータ量が増大するにつれて更新に要する時間も増大する結果、迅速なデータ転送動作は難しい。一方、画面単位でデータ更新する方法は転送時間の短縮が可能であるが、ともすると必要なデータの転送を忘れる不都合があった。
【0004】本発明はかかる不都合に鑑みてなされたものであって、更新されたデータのみを確実に転送可能とすることにより、データ転送時間の短縮化を可能とするデータ転送方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明が転送対象とするデータは、実行すべき単位動作の内容を特定する情報rを含む処理指示語Wを設定するとともに、制御すべき一連の動作内容に対応した数の処理指示語Wを画面上に対応して配設する一方、配設された処理指示語Wを順次解読しながら各処理指示語Wで参照される情報rに基づいたデータ処理動作を行うプログラム式表示装置に使用する操作画面データである。
【0006】更にこの操作画面データは、1つのベース画面上に配設される処理指示語群からなる単位画面ファイルを、複数のベース画面に対して個別に備えるとともに、プログラム式表示装置内に格納される各単位画面ファイルを特定する第1のデータと単位画面ファイルの更新時期を特定する第2のデータとを備えている。
【0007】そして、プログラム式表示装置に対する操作画面データの転送時に、上記した第1のデータは一致するが、第2のデータは異なる単位画面ファイルのみを選択的に転送することを特徴とする。
【0008】上記した操作画面データは、そのデータ全体を特定する第3のデータと、ランダムな文字列を含む第4のデータとを更に備え、プログラム式表示装置内に格納されている操作画面データと、更新を予定する操作画面データにおける第3および第4のデータが共に一致する場合にのみ、上記した単位画面ファイルの転送動作が行われる様に構成することが好ましい。また、上記した単位画面ファイルの転送時には、その単位画面ファイルを構成する各処理指示語から参照される図形ファイルも自動的に選択されて転送される。
【0009】
【発明の効果】本発明は上記のごとく、操作画面データを複数の単位画面ファイルで構成するとともに、各単位画面ファイルを特定する第1のデータに加えて、更新時期を特定する第2のデータを比較することにより、変更処理が加えられたデータファイルのみが選択的にデータ転送され、転送に要する時間の大幅な削減が可能となるとともに、更新されたファイルの転送忘れが未然に防止される。
【0010】更に自動転送動作を行うに先だって、データ全体を特定する第3のデータとランダムな文字列からなる第4のデータを比較することにより、転送すべきファイル全体の同一性が確実に判定され、類似する内容のプロジェクトを並行して開発する場合にあっても、データの転送ミスが確実に防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明を、図2および図3で示す操作画面の作成装置10、およびそこで作成された操作画面を利用し外部装置の操作盤として使用するプログラム式表示装置11の構成に基づいて具体的に説明する。なお、プログラム式表示装置11に接続する外部装置としてターゲットシステムを制御するためのシーケンサである工業用のPLC(プログラム・ロジック・コントローラ)を使用した例に基づいて具体的な説明を行うが、外部装置として汎用あるいは専用のコンピュータあるいはその他の制御装置を使用したもの、あるいはまた家庭内における各種電気製品の動作を制御する装置にあっても、略同様に実施できることは勿論である。更にプログラム式表示装置11の構成も一例であって、その構成が限定されるものではない。
【0012】PLC12は、CPUユニットやメモリユニットなどの必要とする個別の機能毎に回路がユニット化され、各ユニットを必要に応じてバスラインを介して適宜追加可能に並列接続することにより、PLC全体として達成される機能を増減可能とする、従来と略同様な構成のものである。
【0013】
【プログラム式表示装置の構成】プログラム式表示装置11は、PLC12とともにターゲットシステム13の操作卓などに一体に組み込み、あるいはそれ自身が独立して配備され、ターゲットシステム13に対する操作および表示盤として使用されるものであって、後述する処理指示語Wを用いて各種のデータ処理動作を行なわせる。
【0014】図2に例示する如く、本体ケース14の正面中央位置に大きく設けた開口15を閉じる様にCRT、EL、プラズマあるいは液晶などの各種表示手段から選択されるディスプレイ16を配置する一方、ディスプレイ16の下方位置に、キーボードが着脱自在に接続されるソケット17と、ICカードを介したデータの入出力動作を行うためのリーダ/ライタ用のソケット18とが配置されている。
【0015】本体ケース14の内部には、図3に示す表示制御回路19を収納する一方、上記したディスプレイ16における画面の略全面を透明なタッチパネル20により密着状態で覆っている。タッチパネル20は、図2において破線で示す如く、電気的に複数に分割されて入力区画が形成されるとともに、この各入力区画に対する押圧操作による指示は、タッチパネルコントローラ21を介して取り込まれてその入力区画の座標が解析され、テスト時、システム全体としての運転開始前における初期設定時あるいは運転中における指先による各種手動操作を可能とする。
【0016】表示制御回路19の基本的な構成は一般的なパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略す)と略同一であって、バスライン22を介してCPU23、ROM24、RAM25をはじめとする各種メモリ26・27、あるいはグラフィックコントローラ28が接続され、ROM24内に格納されたシステムプログラムに従ってCPU23が所定の演算動作を行う一方、RAM25に適宜格納される各種の演算結果は、後で詳述する図形データを用いてグラフィックコントローラ28によりビデオRAM29上へビットイメージとして展開され、ビデオRAM29内への書き込み内容に対応した表示をディスプレイ16上で行う。
【0017】更に、PLC12の回路構成に特化したアルゴリズムあるいは汎用の通信プログラムで作動する通信コントローラ30を介し、PLC12側の計算機リンクユニットとシリアルあるいはパラレルの通信路を通じて、PLC12内部のメモリユニットとプログラム式表示装置11内部のRAM25上に設定された状態データ用メモリとの間で互いにデータの受け渡しを可能とすることにより、PLC12とプログラム式表示装置11とが最小限の時間遅れをもって、PLC12側に設定されたビットデバイスあるいはワードデバイスを含む略同一内容の状態データを互いに保持する様にしている。
【0018】また、プログラム式表示装置11内で実行すべき処理内容に対応した処理指示語群を格納する事象データ用メモリ26と、各処理指示語内から参照する図形データを格納するグラフィック用メモリ27の全部あるいはその一部を、フラッシュメモリの様に複数回の書き換えが可能で且つ電源を用いたバックアップを必要とすることがないメモリ手段を使用するとともに、プログラム式表示装置11としての使用に先だってあるいは使用中においてさえも、その動作に必要とするプログラムを含めた各種データを操作画面作成装置10側からI/Oコントローラ32を介してダウンロード可能とすることにより、プログラム式表示装置11内で実行すべき内容を適宜変更可能としている。
【0019】
【処理指示語の構成】ここでプログラム式表示装置11においては、図4(a)に例示する銘板の様な表示内容に変更を要しない静止図形33、あるいは形状変化や点滅あるいは色変化させるスイッチ図形のような部品図形34をベース画面35上に1または複数備えて構成された画面を単位画面36とする。更に、1台のプログラム式表示装置11内には複数の単位画面36をそのデータ処理用として備えるとともに、各単位画面36毎に異なったファイル番号Fを指定することにより、単位画面36を切り換えるだけで必要な操作内容を表示した画面が得られるようにしている。
【0020】更に、1つの単位画面36が選択されると、事象データ用メモリ26上に予め格納しておいた図5R>5(a)で例示する選択された単位画面36に関係する処理指示語Wを微小時間毎に間欠的に読み出し、各処理指示語Wの事象名Nで特定される内容の動作をPLC12側から取り出されたデータを参照しながら順次に実行することにより、PLC12側のビットデバイスあるいはワードデバイスの内容変化に即応して部品図形34が変化する表示動作がベース画面35上で行われる。
【0021】すなわち処理指示語Wの基本的な構成はすべて略同一であって、表示制御動作を実行すべきベース画面35のファイル番号Fと、該ベース画面35上で実行すべき動作内容を特定する事象名Nと、ベース画面35上における座標情報r1と、各実行事象毎に参照される1又は複数のデータからなる参照情報r2とを1組として備えている。
【0022】例えば、図5(b)に示す処理指示語WTは、タッチパネル20に対する押圧操作と連動して、状態データ用メモリ31内の所定アドレス位置に設定したビットデバイスを反転可能とするものである。すなわち、単位画面36のファイル番号F1、タッチパネル20の操作を特定する例えば「T」から始まる事象名N1、タッチパネル20からの入力操作を有効とする入力座標範囲X1・X2、タッチパネル20の押し操作と連動してデータを書き換えるべきアドレスA1とから構成される。
【0023】更に図5(c)に示す処理指示語WLは、上記したタッチパネル20の操作と連動して、ベース画面35上における対応位置に所定の図形を表示可能とするものである。すなわち、RAM25上に展開した状態データ用メモリ31内の所定アドレスの変化に対応して、ベース画面35上の所定位置に所定の部品図形34を表示可能とするものであって、ベース画面35のファイル番号F1、部品図形34の表示を特定する例えば「L」から始まる事象名N2、部品図形34の表示座標範囲X1・X2、呼び出す部品図形34を特定するファイル番号F2、部品図形34を表示時に参照するアドレスA1とから構成される。
【0024】そこで図4(a)の様に、座標範囲と参照アドレスとを共に一致させた2つの処理指示語WL1・WT1を事象データ用メモリ26に設定しておく。また、状態データ用メモリ31のアドレスA1における所定ビット位置のビットデバイスが「0」の場合、それをスイッチのオフ状態に予め対応させておくと、PLC12では制御すべき実際のスイッチ接点に対してオフ動作を行う。それと同時に、スイッチのオフ状態に対応する部品図形34のデータF2をグラフィック用メモリ27から読み出し、該当するベース画面35上の指定座標範囲X1・X2に展開して表示する。
【0025】ここでタッチパネル20におけるスイッチ形状の部品図形34の表示場所を押すと、タッチパネル用の処理指示語WTを検索し、タッチパネル20を介してなされた指示座標から該当の座標を含む範囲を座標情報r1として有する処理指示語WTの有無を判定する。
【0026】例えば、座標範囲X1・X2の内の一点が押された場合、上記の様にして構成された処理指示語WT1に対応するので、図4(b)に示す如く、該当のアドレスA1におけるデータ値を「0」から「1」に反転し、PLC12により該当のスイッチ接点をオンする制御をさせる。それと同時に、処理指示語WL1は参照アドレスA1が「1」に変化したことを判断し、スイッチのオン状態に対応する図形のデータF2’をグラフィック用メモリ27から読み出して該当の座標範囲X1・X2上に表示することにより、ベース画面35上に表示されたスイッチ形状の部品図形34も、オフ状態からオン状態へと変更されるのである。
【0027】
【操作画面作成装置の構成】操作画面作成装置10は、上記したプログラム式表示装置11で使用する単位画面データを作成するためのものであって、図2に例示するごとく、キーボード37とディスプレイ38とが一体となるとともに、マウス39をディスプレイ38上における指示入力手段として使用した汎用的なパソコンが使用され、所定のプログラムを用いて図6に例示する各種の機能を実現する様にしている。
【0028】すなわち、ディスプレイ38の画面上における必要な表示動作を処理する表示部40と、各種図形データの作成部41と、単位画面36を作成するための基本となる部品データの格納部42と、該格納部42の部品データを用いたベース画面35上おける部品図形の配置部43と、各種データの手動による入力部44と、ベース画面35上に配置された部品図形34あるいはデータ入力部44から入力されたデータに対応する処理指示語の合成部45と、作成された各種データの記憶部46と、記憶されたデータをプログラム式表示装置11側にダウンロードするデータ通信部47を基本的に備える。
【0029】表示部40は、図2に示す如く、ディスプレイ38の画面における左側約4分の1を使用して、各種の選択動作を行う為の指示入力画面48を備える一方、画面の右側約4分の3を使用して、プログラム式表示装置11側の画面を縮小して示した作画面49を設けている。更にその作画面49の上方には、マウス39の指示座標やデータ記憶部46におけるメモリの使用状況の様な動作情報を表示する欄50を設け、作画面49の下方には、編集中のベース画面35の名前や使用するPLC12の種類の様な既定情報を表示する欄51を設けている。
【0030】図形データ作成部41は、従来の作図装置と略同様に、直線や曲線を主体とする線画あるいはその内部を所定の色や模様で塗りつぶすことにより、任意の静止図形33、あるいは表示内容が変化するスイッチの様な部品図形34を、表示部40における作画面49上で作成できる様にしている。
【0031】部品データ格納部42に設定される部品データは、予め決定した仕様に基づいてシステム側が固定データとして提供するもの、あるいは操作者が予め仕様に従って形成しておいたものであって、上記したベース画面35上での使用を可能とする部品機能の選択データと、各部品機能毎に使用される処理指示語群データと、各部品の形状を示す部品図形データとからなる。
【0032】本実施例にあっては、作画面49上で使用し得る部品図形34として、スイッチ、ランプおよび表示器の様な具体的な部品図形に加えて、十字マークの様な単にベース画面35上における座標位置のみを特定する位置指示用の部品図形が用意されている例を示すが、使用可能な部品図形34の種類およびその機能については任意に増減できるものである。
【0033】ここでスイッチの発揮し得る具体的な機能としては、スイッチの所定操作と連動してPLC12内における指定のビットデバイスをオンまたはオフさせるもの、あるいは所定操作に対応してオンオフが反転するものの様に、通常のスイッチを用いて実現できる複数の機能を予め設定しておき、操作者が適宜選択できる様にしている。
【0034】ランプの機能は、指定のビットデバイスのオンまたはオフ、あるいは指定アドレスの数値の変化に対応して、表示色や表示文字の様なランプ形状に形成した部品図形34の表示状態が複数段階に変化するものである。
【0035】表示器の機能としては、PLC12側の指定ワードデバイスにおける内容変化に対応して、ベース画面35上の任意座標位置に数値表示、文字表示あるいは数値の変化をモノグラムによる部品図形34の変化として表示するものが設定されている。
【0036】一方、各機能毎に設定される処理指示語群データは、スイッチの様な部品図形34の機能毎に使用することを必要とする処理指示語Wが定型的に特定できることを利用し、具体的な数値を未定あるいは既定値とした1または複数の処理指示語を、各部品図形34の機能毎に設定したものである。
【0037】例えば、タッチパネル20の押圧操作と連動して所定ビットをオンさせるスイッチ部品に対応する処理指示語群データとしては、スイッチ形状を所定ビットのオンオフ変化に対応させて表示変化させる処理指示語WL、タッチパネル20のオン時を検出して所定ビットをオンさせる処理指示語WTとから構成され、スイッチにおける該当の機能を選択すると、かかる処理指示語群WL・WTにおける未定入力項目が、データ入力部44におけるテンプレートとして自動的に選択使用され、操作者に対して具体的な数値あるいは文字などのデータ入力を促す。
【0038】部品図形データは、各部品図形34毎に、ベース画面35上における具体的な表示をさせるためのものであって、1つの部品図形34についてオンおよびオフ状態あるいはスイッチの各変更内容を表わす図形を1組とし、部品図形配置部43においてその内の1つが具体的に選択されて作画面49上に取り出される。例えばスイッチの部品形状にあっては、オンオフ式、スナップ式あるいはスライド式など、一般に使用されている具体的なスイッチの形状が設定される。
【0039】部品図形配置部43は、部品データ格納部42から取り出された部品図形34を作画面49上における任意位置に配設するとともに、その大きさを作画面49上で確認しながら任意に設定可能とするものであって、かかる部品図形34の配置を確定することにより、確定された図形の配設位置および範囲に関するデータは、処理指示語合成部45に送られる。
【0040】なお、単にベース画面35上における座標位置のみを特定するような具体的な形状表示を伴わない部品図形34にあっては、部品の配置位置を特定すると、発揮すべき機能を特定するためのメニューが表示されたあと、その選択した機能に対応した処理指示語が選択され、アドレスの様な必要なデータ入力がデータ入力部44を通じて要求される。
【0041】処理指示語合成部45は、部品データ格納部42から送られる部品図形データと処理指示語群に対して、データ入力部44により手動入力された参照情報r2と、部品図形配置部43から送られる座標情報r1とを自動的に合成して、各部品図形34が作画面49上で確定される毎に具体的な数値が特定された処理指示語群を含む単位画面データ52および図形データ53を作成するものである。
【0042】上記の様に形成された図形データ53および単位画面データ52は、1枚の単位画面36が形成される毎にデータ記憶部46内に順次に格納される。かかる各部品の確定状態は未確定の状態に戻して再編集することが可能で、部品図形配置部43とデータ入力部44にデータ記憶部46内の図形データ53および単位画面36データは適宜時期に取り出され、表示部40上で設定内容を変更したのち、データ記憶部46における記憶内容の更新処理が行われる。また、作画面49上における特定部品図形34のコピーを行って任意座標位置に配置することにより、部品番号と配設座標範囲のみが互いに異なる部品図形34と処理指示語群とが同時に作成される。
【0043】ところで、上記したプログラム式表示装置11用のプログラムは、複数の単位画面データ52と各単位画面36から呼び出す図形データ53とを1組として備え、オペレーション中にその単位画面36を切り換えながら使用するものであるが、類似したシステムにあっては作業工程が一致することが多い。従って、特定のプログラム式表示装置11で使用するために開発された特別のプログラムにあっても、他のプログラム式表示装置11の為に単位画面36の全体あるいはその一部を共通に使用することができれば、プログラムの作成効率を向上させる上で好ましい。
【0044】そこで本実施例にあっては、(A)参照情報r2中におけるアドレスをシンボル化可能とすることにより、作成される処理指示語それ自体の汎用化を図る、(B)単位画面データ52中における部分画面データをライブラリ化可能とすることにより、部分画面の汎用化を図る、(C)操作画面作成装置10側からプログラム式表示装置11側に対するプログラムのダウンロード時に、変更されたデータのみを選択的に自動転送可能とすることにより、プログラム転送時間の短縮を図り、もってプログラム作成効率の向上を図っている。以下において、かかる構成を更に具体的に説明する。
【0045】
【アドレス情報のシンボル化】まずアドレス情報のシンボル化については、上記したデータの手動入力時において指定できるアドレスを、従来におけるPLC12側の機種に依存した絶対番地に加え、「スイッチ1」という様な数字や漢字を含めた任意の文字列からなるシンボルによる番地指定を可能としている。
【0046】一方装置10内には、使用するPLC12毎に予め設定されている絶対番地のアドレス一覧テーブルが予め配設されており、図7(a)のステップST11で装置側からのアドレス入力要求に対して必要なアドレスを入力すると、ステップST12でその入力データはアドレス一覧テーブルと比較される。
【0047】このとき、入力されたアドレスがアドレス一覧テーブルに記載されたアドレスと一致する場合は、ステップST13でそれを実アドレスと判定し、一致しない場合にはステップST15でそれをシンボルと判定したのち、その判定結果を画面上に表示して操作者に対して注意を促す。ステップST13における実アドレスとの判定が正当と考える場合には、ステップST14において従来と略同様な処理が行われるが、不当と判断される場合にはステップST11に戻り、データ入力を繰り返す。
【0048】一方、ステップST15におけるシンボルであるとの判定結果が正当と考える場合、入力データの確定操作をすると、ステップST16で処理指示語のアドレス指定欄にそのシンボルがそのままデータとして入力されると同時に、別に備えたシンボルテーブルに該当のシンボルが追加される。しかし予期した結果でない場合は、ステップST11に戻って入力しているアドレスを変更したのち上記操作を繰り返すことにより、アドレスとして使用できる文字列が限定されることなく、しかもアドレスの指定間違いを未然に防止できるようにしている。
【0049】上記のようにしてシンボルによってアドレス指定した処理指示語にあっても、操作画面作成装置10内で作成プログラムのデバックをする限りにおいては、そのままプログラム式表示装置11内での動作がエミュレートされる。しかしながら、実際にプログラム式表示装置11にプログラムを組み込んで使用する場合には、上記したシンボルをPLC12側の実アドレスに対応した置き換えが必要となる。
【0050】そこで本実施例にあっては、操作画面作成装置10において作成された各種データをプログラム式表示装置11側にダウンロードするのに先だつ図7(b)のステップST21において、上記のようにして指定されたシンボルテーブルが一覧形式で読み出され、ステップST22で各シンボルに対応する具体的なPLC12側のアドレス指定が要求される。かかる一覧表はテキストファイル形式で形成されており、装置が予め用意したシンボルエディタ、あるいは汎用のテキストエディタを用いてその内容は編集できるようにしている。
【0051】かかるアドレスの指定が確定処理されると、指定されたアドレスはステップST23で上記したアドレス一覧テーブルと比較され、テーブルで指定されていないアドレスが記入されているとステップST24でその旨を表示したのち、ステップST22に戻ってシンボルエディタが起動し、該当のシンボルに対するアドレスデータの再入力を促す。しかしアドレスとして正しい表記である場合には、ステップST25でシンボルテーブルに記入された実アドレスが処理指示語内のシンボルと置き換えられるとともに、プログラム式表示装置11側で実行可能なファイル形式に自動変換される。
【0052】
【部分画面のライブラリ化】部分画面のライブラリ化は、全ての処理指示語が図5(a)のように座標情報r1を有していることを利用している。すなわち、上記したスイッチやランプの様な部品機能にあっては、ベース画面35上に該当の機能を象徴する図形が表示されるとともに、それに関連する処理指示語が同一または類似の座標情報r1を伴って形成される。
【0053】一方、装置内で所定のイベントが発生するのと連動してデータを書き換えるなど、内部で所定のデータ処理のみを行わせるような表示を伴わない処理指示語にあっては、ベース画面35上には具体的な表示を一切伴わない。そこでその様な処理指示語を設定する場合にあっては、ベース画面35上における図形表示が何らなされていない空間で且つ予め設定した特定座標位置、あるいは関連する図形が表示されている座標位置を指定するとともに、その座標位置に対応させて集合管理すべき処理指示語を設定することにより、単位画面36を形成する。
【0054】かかる単位画面36が形成されたのち、処理指示語のライブラリ化を選択すると、図8(a)のステップST31においてベース画面35上におけるライブラリ化すべき範囲の指定が要求されるので、この指定要求に対してマウス39の様なポインティングデバイスで範囲指定を行うと、更にステップST32でライブラリの名称入力が要求される。ここでパッケージ化した機能を特定する名称あるいは説明を入力して確定すると、ステップST33で該当の内容に対するライブラリ化が自動的に行われる。
【0055】このライブラリ化にあたっては、データの汎用性を増すため、1まとめに結合した複数の処理指示語におけるベース画面35のファイル番号Fに代えて、図8(b)の如く同一のライブラリ番号Rを指定する。更に、座標位置情報r1をベース画面35上における絶対座標に代えて、選択範囲内の1点を基準とした相対座標からなる座標位置情報r11に自動変換している。更にまた、同一ライブラリ番号Rの処理指示語と、各処理指示語から呼び出される図形データ53とが互いに関連付けられて1組として登録されており、特定のライブラリ番号Rを共通単位として任意のベース画面35上へ指定のデータの呼び出し、データの更新あるいはデータ転送などのデータ処理を可能とする。
【0056】たとえば作画面49上への呼出しは、ライブラリの選択画面を指定すると、図8(c)のステップST41でライブラリ名の一覧が表示される。ここで一覧中における特定のライブラリ名をステップST42で指定すると、該当のライブラリの処理内容に対応する図形がステップST43で呼び出される。そこで、ステップST44でその図形を編集中のベース画面35上で移行させて座標および表示範囲を決定すると、ライブラリ中において相対化されていた座標情報r11は、ステップST45でそのライブラリデータが配置されたベース画面35上における絶対座標に自動変換されるとともに、事象名Nとして重複しない名称が選択されて指定され、更にライブラリ番号Rに代えて図形が表示されたベース画面35のファイル番号Fが指定されるのである。
【0057】
【操作画面の転送】上記の様にしてベース画面35上に部品図形34あるいはライブラリを用いて作成した単位画面データ52は、プログラム式表示装置11側で実行可能なデータ形式に変更されたあと、所定の通信路を介して直接的に、あるいはICカードの様な記録媒体を介して間接的にプログラム式表示装置11側へ送られたのち実行される。
【0058】ところで、上記の様にして作成されたプログラムの完成度が高い場合にあっては、操作画面作成装置10で作成されたプログラムを全体として1度だけ送ることにより、データ転送は完了する。しかしながら実際のプログラム作成工程にあっては、操作画面作成装置10上でプログラムのデバッグを行ったとしても、実際にプログラム式表示装置11側で発生する状態をすべてエミュレートすることは難しく、問題点が見つかる毎にプログラムの手直しを行ったのち、再度プログラム式表示装置11側のプログラムを更新する操作が繰り返されるのが現状である。
【0059】そこで本実施例にあっては、特定のプログラム式表示装置11において必要とする単位画面データ52および図形データ53を一括して転送する方法と、指定した単位画面36毎にデータ転送する方法に加えて、更新されたデータのみを選択的に自動転送できる方法とが、作成データのダウンロード時に手動で選択できる様にしている。
【0060】すなわち、操作画面作成装置10からプログラム式表示装置11側に最初にデータ転送する際、図9R>9でその全体的な構成を概略的に例示するプロジェクトファイルは、そのプログラム式表示装置11で使用される全データを総括する具体的な開発プロジェクトを特定するファイル名に加えて、図示しない所定桁数のランダム数値の様なランダムな文字列を付加することにより「プロジェクトファイル名」としている。更にプロジェクトファイルは、1または複数の単位画面ファイルで構成され、各単位画面ファイルは、互いに重複しない画面番号と更新日付とをセットにして管理するようにしている。また各単位画面36から参照される図形データ53が各単位画面ファイル毎に特定され、任意の単位画面ファイルを指定すると、対応する図形ファイルが同時に取り出される様にデータ構成をしている。
【0061】またプログラム式表示装置11側に送られるデータ中には、プログラム式表示装置11が解読可能なデータ形式のファイルに加えて、操作画面作成装置10によって作成された所定の変換を施す前のデータが圧縮された状態で同時に転送できる様にしている。なおこの圧縮データの転送はプログラム式表示装置11側のメモリを消費するため、転送の有無が選択できる。
【0062】かかるデータ形式を採用することにより、現在プログラム式表示装置11上で稼動中のプログラムを変更処理する場合には、プログラム式表示装置11側から圧縮データを操作画面作成装置10側に読み出すだけでプログラムの変更動作が行われる。更に、この読み込まれたファイルにおける画面番号と更新前の日付とは、操作画面作成装置10内においてデータテーブルとして保存される。
【0063】この様にして変更を加えられたプロジェクトファイルを更新する場合には、図1のステップST51において先ず最初に、プログラム式表示装置11内に格納されたプロジェクトファイル名と現在編集中のプロジェクトファイル名とを比較し、異なることが判定されるとステップST52に移ってエラー表示を行ったのち終了する。逆に同一であることが判定されると、ステップST53に移ってデータに対する実際の転送処理工程に入る。
【0064】ステップST54で一括転送が選択されたことが判定されると、ステップST55に移って全データを転送する。一方、ステップST56で単位画面転送が選択されたことが判定された場合には、ステップST57で更に転送画面の選択要求が出されたあと、ステップST58で選択された画面データの転送が実行される。
【0065】一方、ステップST56でデータの自動転送を選択していることが判定された場合にあっては、更にステップST59でテーブル内の対応する画面番号毎に更新日付を比較し、プログラム式表示装置11内における更新日付より操作画面作成装置10内におけるファイルの日時の方が新しい画面番号のファイルを検索し、ステップST60において更新されている単位画面ファイルとそのファイルから呼び出される図形ファイルとを一体にしてプログラム式表示装置11側に転送することにより、データの更新処理が終了するのである。
【0066】なお、プログラム式表示装置11側に圧縮ファイルが存在しない場合には、予め別に保存してあるファイルを利用してプログラムの変更動作が行われる。更にこのファイルを使用して更新処理する場合は、自動転送モードを選択すると、プログラム式表示装置11側から最初にプロジェクトファイル名を読み出し、編集中のプロジェクトファイル名と比較する。かかる比較で同一名のファイルであることが確認されると、更に画面番号と更新日付とが読み込まれてテーブルとして保持されあと、上記したステップST59からの比較転送動作が行われる。
【0067】また、上記した実施例にあってはデータを転送するための最小単位を単位画面としたが、分離して更新できるものであれば、データの更新単位は任意に変更することも可能である。更にデータの同一性あるいは更新の有無を判定するための付加データも、適宜変更して実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】操作画面作成装置からプログラム式表示装置に対するプログラムの転送手順を説明する流れ図である。
【図2】操作画面作成装置とプログラム式表示装置の具体的な外観形状を示す一部を破断した斜視図である。
【図3】プログラム式表示装置の一例を示すブロック図である。
【図4】 プログラム式表示装置における処理指示語を用いた動作手順を示す説明図であって、(a)はスイッチのオフ状態を、(b)はスイッチのオン状態を各々示す。
【図5】 プログラム式表示装置で使用する処理指示語の構成を示す説明図であって、(a)は処理指示語の基本的な構成、(b)はタッチパネルを用いたデータ入力用の処理指示語の構成、(c)は図形表示用の処理指示語の構成を各々示す。
【図6】操作画面作成装置が達成する機能の一部を示す説明図である。
【図7】操作画面作成装置におけるデータ処理手順を説明する流れ図であって、(a)はアドレスのシンボル化工程を、(b)はアドレスの確定工程を各々示す。
【図8】 操作画面作成装置内で行われる部分画面のライブラリ化を説明するための図であって、(a)はライブラリ化の流れ図を、(b)はライブラリ化した処理指示語の構成を、(c)はライブラリの選択工程の流れ図を各々示す。
【図9】操作画面作成装置からプログラム式表示装置に送られるファイルの構成例を示す説明図である。
【符号の説明】
10 操作画面作成装置
11 プログラム式表示装置
12 PLC
13 ターゲットシステム
19 表示制御回路
20 タッチパネル
25 RAM
26 事象データ用メモリ
27 グラフィック用メモリ
30 通信コントローラ
31 状態データ用メモリ
33 静止図形
34 部品図形
35 ベース画面
36 単位画面
38 ディスプレイ
39 マウス
40 表示部
41 図形データ作成部
42 部品データ格納部
43 部品図形配置部
44 データ入力部
45 処理指示語合成部
46 データ記憶部
47 データ通信部
48 指示入力画面
49 作画面
50 動作情報表示欄
51 既定情報表示欄
52 単位画面データ
53 図形データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 実行すべき単位動作の内容を特定する情報rを含む処理指示語Wを予め設定するとともに、該処理指示語を複数備えた操作画面ータを操作画面作成装置(10)内で作成る一方、作成された操作画面ータ中の処理指示語Wをプログラム式表示装置(11)内で順次解読しながら各処理指示語Wで参照される情報rに基づいたデータ処理動作を行うためのプログラム式表示装置用の操作画面データを、操作画面作成装置(10)からプログラム式表示装置(11)に転送する方法であって、前記操作画面データは、1つのベース画面に対応して設定される処理指示語群からなる1つの単位画面ファイルを、複数のベース画面に対して個別に備えた複数の単位画面ファイルと、該複数の単位画面ファイル中における各単位画面ファイルを特定する第1のデータと、該単位画面ファイルのデータ更新時期を特定する第2のデータと、転送対象となっているデータ全体を特定する第3のデータと、ランダムな文字列を含む第4のデータとを備え、操作画面作成装置(10)からプログラム式表示装置(11)に対する前記操作画面データの転送時に、プログラム式表示装置(11)内に格納されている操作画面データと、更新を予定する操作画面データにおける第3および第4のデータが共に一致することが判定されることを条件に、前記第1のデータは一致するが、第2のデータは異なる単位画面ファイルのみを選択的に転送することを特徴とするプログラム式表示装置用の操作画面データ転送方法。
【請求項2】 前記単位画面ファイルの転送時には、該単位画面ファイルを構成する各処理指示語から参照される図形ファイルも選択的に転送される請求項1記載の操作画面データ転送方法。
【請求項3】 前記操作画面作成装置(10)からプログラム式表示装置(11)に転送される操作画面データは、操作画面作成装置(10)上で動作するデータ形式からプログラム式表示装置(11)で動作するデータ形式に変換されたのちに転送されるものであって、該変換後の操作画面データとともに、変換前の操作画面データが同時に転送される請求項1記載の操作画面データ転送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【特許番号】特許第3449872号(P3449872)
【登録日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【発行日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−280323
【出願日】平成8年9月30日(1996.9.30)
【公開番号】特開平10−105147
【公開日】平成10年4月24日(1998.4.24)
【審査請求日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)
【参考文献】
【文献】特開 平7−225789(JP,A)
【文献】特開 平2−226453(JP,A)
【文献】特開 平3−244030(JP,A)
【文献】特開 平8−153054(JP,A)
【文献】特開 平2−61750(JP,A)