説明

プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法

天然ガスなどの含炭素原料から合成ガスを製造し、触媒の存在下、得られた合成ガスと二酸化炭素とを含む原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とするLPGを製造することにより、より容易に、より経済的にLPGを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガスから、主成分がプロパンまたはブタンである液化石油ガスを製造する方法に関する。また、本発明は、天然ガス等の含炭素原料から、主成分がプロパンまたはブタンである液化石油ガスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化石油ガス(LPG)は、常温常圧下ではガス状を呈する石油系もしくは天然ガス系炭化水素を圧縮し、あるいは同時に冷却して液状にしたものをいい、その主成分はプロパンまたはブタンである。液体の状態で貯蔵および輸送が可能なLPGは可搬性に優れ、供給にパイプラインを必要とする天然ガスとは違い、ボンベに充填した状態でどのような場所にでも供給することができるという特徴がある。そのため、プロパンを主成分とするLPG、すなわちプロパンガスが、家庭用・業務用の燃料として広く用いられている。現在、日本国内においても、プロパンガスは約2,500万世帯(全世帯の50%以上)に供給されている。また、LPGは、家庭用・業務用燃料以外にも、カセットコンロ、使い捨てライター等の移動体用の燃料(主に、ブタンガス)、工業用燃料、自動車用燃料としても使用されている。
【0003】
従来、LPGは、1)湿性天然ガスから回収する方法、2)原油のスタビライズ(蒸気圧調整)工程から回収する方法、3)石油精製工程などで生成されるものを分離・抽出する方法などにより生産されている。
【0004】
LPG、特に家庭用・業務用の燃料として用いられるプロパンガスは将来的にも需要が見込め、工業的に実施可能な、新規な製造方法を確立できれば非常に有用である。
【0005】
LPGの製造方法として、特許文献1には、Cu−Zn系、Cr−Zn系、Pd系等のメタノール合成触媒、具体的には、CuO−ZnO−Al触媒、Pd/SiO触媒と、平均孔径が略10Å(1nm)以上のゼオライト、具体的にはY型ゼオライトよりなるメタノール転化触媒とを物理的に混合した混合触媒の存在下で、水素および一酸化炭素よりなる合成ガスを反応させて、液化石油ガス、あるいは、これに近い組成の炭化水素混合物を製造する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の方法により得られる生成物中の二酸化炭素の含有量は十分に低いとは言い難い。炭化水素の収率が最も高い36.0%の時の二酸化炭素の収率は33.9%である。炭化水素の収率が35.7%の時の二酸化炭素の収率は30.7%である。二酸化炭素は利用価値が低く、また、その再利用も困難であるため、二酸化炭素が多量に副生することは経済的に好ましくない。
【0007】
上記の特許文献1に記載の実施例では、液化石油ガス(LPG)合成の原料ガスとして、H/COのモル比が2/1である合成ガスを用いている。そして、特許文献1には、本実施例ではいずれの触媒系を用いても炭化水素に匹敵する量の二酸化炭素を生成するが、これは炭化水素に伴って生成した水が未反応の一酸化炭素とCOシフト反応をするためであり(CO+HO→CO+H)、予め適当量のCOを合成ガス中に共存させておけばその副生を制御できると記載されている。しかしながら、特許文献1には、合成ガス中に共存させておくCOに関し、その量を含めて何ら具体的に記載されていない。
【0008】
また、LPGの製造方法として、非特許文献1には、メタノール合成用触媒である4wt%Pd/SiO、Cu−Zn−Al混合酸化物[Cu:Zn:Al=40:23:37(原子比)]またはCu系低圧メタノール合成用触媒(商品名:BASF S3−85)と、450℃で1時間水蒸気処理した、SiO/Al=7.6の高シリカY型ゼオライトとから成るハイブリッド触媒を用い、合成ガスからメタノール、ジメチルエーテルを経由してC2〜C4のパラフィンを選択率69〜85%で製造する方法が開示されている。しかしながら、この非特許文献1に記載の方法は、上記の特許文献1に記載の方法と同様、得られる生成物中の二酸化炭素の含有量が十分に低いとは言い難い。
【0009】
このように、合成ガスからLPGを製造するプロセス、さらには、天然ガス等の含炭素原料からLPGを製造するプロセスの実用化のためには、経済性の向上、より具体的には、LPG合成における二酸化炭素の副生を抑制することが望まれている。
【特許文献1】特開昭61−23688号公報
【非特許文献1】“Selective Synthesis of LPG from Synthesis Gas”,Kaoru Fujimoto et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,58,p.3059−3060(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、合成ガスから、プロパンおよび/またはブタンの濃度が高いLPGを、より容易に、より経済的に製造することができる方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、天然ガスなどの含炭素原料から、プロパンおよび/またはブタンの濃度が高いLPGを、より容易に、より経済的に製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
(i)含炭素原料から合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
(ii)触媒の存在下、合成ガス製造工程において得られた合成ガスと二酸化炭素とを含み、二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、5〜35モル%である原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する液化石油ガス製造工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法(第1−1のLPGの製造方法)が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である上記の第1−1のLPGの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、
(i)含炭素原料から合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
(ii)触媒の存在下、合成ガス製造工程において得られた合成ガスと二酸化炭素とを含み、二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素1モルに対して、0.2〜1モルである原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する液化石油ガス製造工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法(第1−2のLPGの製造方法)が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である上記の第1−2のLPGの製造方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、
(i)含炭素原料から合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
(ii)触媒の存在下、合成ガス製造工程において得られた合成ガスと、分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離され、リサイクル工程において低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルされた二酸化炭素含有ガスとを含む原料ガスから、二酸化炭素を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造する低級パラフィン製造工程と、
(iii)低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスから二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガスを分離し、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを得る分離工程と、
(iv)分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスの一部または全部を、低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルするリサイクル工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法(第2のLPGの製造方法)が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、低級パラフィン製造工程において、
原料ガス中の二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、5〜35モル%である上記の第2のLPGの製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素1モルに対して、0.2〜1モルである上記の第2のLPGの製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、低級パラフィン製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である上記の第2のLPGの製造方法が提供される。
【0020】
さらに、本発明によれば、
(i)触媒の存在下、一酸化炭素と水素と二酸化炭素とを含み、二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、5〜35モル%である原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する液化石油ガス製造工程
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法(第3−1のLPGの製造方法)が提供される。
【0021】
また、本発明によれば、液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である上記の第3−1のLPGの製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明によれば、
(i)触媒の存在下、一酸化炭素と水素と二酸化炭素とを含み、二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素1モルに対して、0.2〜1モルである原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する液化石油ガス製造工程
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法(第3−2のLPGの製造方法)が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である上記の第3−2のLPGの製造方法が提供される。
【0024】
ここで、合成ガスとは、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスを指し、水素および一酸化炭素からなる混合ガスに限られない。合成ガスは、例えば、二酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレンなどを含む混合ガスであってもよい。天然ガスを改質して得られる合成ガスは、通常、水素と一酸化炭素とに加えて二酸化炭素や水蒸気を含む。また、合成ガスは、石炭コークスから製造される水性ガスであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
一酸化炭素と水素とを反応させてプロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する場合、まず、下記式(1)に従って一酸化炭素と水素とからメタノールが合成され、次に、下記式(2)に従ってメタノールの脱水によりカルベン(HC:)が生成し、このカルベンの重合によって低級オレフィンが生成し、さらに生成した低級オレフィンが水素化されて低級パラフィン(LPG)になると考えられる。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

また、この時、メタノールの脱水2量化により、ジメチルエーテルも生成する。
【0028】
従来、フィッシャー・トロプシュ合成(FT合成)やメタノール合成においては、原料ガスとして、一酸化炭素と水素とをCO:H=1:1.8〜1:2.5(モル比)で含む合成ガスがよく使用されている。
【0029】
それに対し、本発明では、合成ガスに二酸化炭素を添加し、これを原料ガスとして使用する。原料ガス中の二酸化炭素の含有量は、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、5〜35モル%とすることが好ましく、7〜17モル%とすることが特に好ましい。また、原料ガス中の二酸化炭素の含有量は、一酸化炭素1モルに対して、0.2〜1モルとすることが好ましく、0.3〜0.7モルとすることが特に好ましい。
【0030】
原料ガスの組成を上記の範囲にすることによって、より容易に、より経済的にLPGを製造することができる。具体的には、炭化水素の収率、プロパンおよびブタンの収率を大きく低下させることなく、二酸化炭素の生成を大幅に抑制することができる。
【0031】
その理由は、以下のように考えられる。
【0032】
下記式(3)のように、プロパン製造のための化学量論から言えば、合成ガスの組成はH/CO(モル比)=7/3≒2.33が好ましい。また、下記式(4)のように、ブタン製造のための化学量論から言えば、合成ガスの組成はH/CO(モル比)=9/4=2.25が好ましい。一方、合成ガスからLPGへの転換反応においては、下記式(3)、(4)に示されるように、水が副生する。この副生する水は、下記式(5)のように、一酸化炭素と反応し、水素が生成すると考えられる。下記式(5)に示される反応は、シフト反応と言われるものである。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

上記式(5)に示される反応は平衡反応であるから、合成ガスに二酸化炭素を添加してLPG合成の原料ガスとすることにより、二酸化炭素の副生が抑制される。さらには、合成ガス、特に、天然ガス(メタン)の水蒸気改質法、複合改質法あるいは自己熱改質法により製造される合成ガスに好ましくは上記の範囲の量の二酸化炭素を添加して原料ガスとすることにより、LPGへの転換反応において副生する水と反応して一酸化炭素が減少し、水素が増加するのが抑制され、LPG(プロパンおよび/またはブタン)の合成に最適な原料ガス組成が得られ、その結果、目的生成物であるプロパンおよびブタンの収率を十分に高く維持しつつ、二酸化炭素の副生量を大幅に減少させることができると考えられる。
【0036】
原料ガス中の二酸化炭素の含有量が上記の範囲よりも少ない場合、上記の合成ガスに二酸化炭素を添加する効果が十分には得られない。一方、原料ガス中の二酸化炭素の含有量が上記の範囲よりも多い場合、反応生成ガスに含まれる二酸化炭素の量が多くなってくるのに加えて、目的生成物であるプロパンおよびブタンの収率も低下してくる傾向がある。
【0037】
また、LPG合成反応により製造される低級パラフィン含有ガスは、通常、副生物である二酸化炭素を含む。本発明の第2のLPGの製造方法のように、このような二酸化炭素を低級パラフィン含有ガスから分離し、合成ガスに添加する二酸化炭素として使用することにより、より経済的にLPGを製造することができる。すなわち、前述の通り、原料ガス中の二酸化炭素の含有量を上記の範囲にすることによって、目的生成物であるプロパンおよびブタンの収率を十分に高く維持しつつ、二酸化炭素の副生量を大幅に減少させることができる。一方、原料ガスに添加する二酸化炭素はLPG合成反応において副生するものである。従って、本プロセスにおいて生成する二酸化炭素の量、すなわち系外に排出される二酸化炭素の量は大幅に減少する。そのため、本発明の第2のLPGの製造方法によれば、さらに経済的にLPGを製造することができる。また、環境の面からも、本発明の第2のLPGの製造方法はより好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の第1−1のLPGの製造方法あるいは第1−2のLPGの製造方法を実施するのに好適なLPG製造装置の一例について、主要な構成を示すプロセスフロー図である。
【図2】図2は、本発明の第2のLPGの製造方法を実施するのに好適なLPG製造装置の一例について、主要な構成を示すプロセスフロー図である。
【図3】図3は、実施例3における、炭化水素および二酸化炭素の収率と生成した炭化水素の組成分布の経時変化を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例4における、炭化水素および二酸化炭素の収率と生成した炭化水素の組成分布の経時変化を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例5における、炭化水素および二酸化炭素の収率と生成した炭化水素の組成分布の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
11 改質器
11a 改質触媒(合成ガス製造用触媒)
12 反応器
12a 低級パラフィン製造用触媒
13、14、15、16、17 ライン
21 改質器
21a 改質触媒(合成ガス製造用触媒)
22 反応器
22a 低級パラフィン製造用触媒
23 分離器
24、25、26、27、28 ライン
29 リサイクルライン
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
〔合成ガス製造工程〕
合成ガス製造工程では、含炭素原料から合成ガスを製造する。通常、合成ガス製造工程では、含炭素原料と、HO、OおよびCOからなる群より選択される少なくとも一種とから、合成ガスを製造する。
【0041】
含炭素原料としては、炭素を含む物質であって、HO、OおよびCOからなる群より選択される少なくとも一種と反応してHおよびCOを生成可能なものを用いることができる。含炭素原料としては、合成ガスの原料として公知のものを用いることができ、例えば、メタンやエタン等の低級炭化水素など、また、天然ガス、ナフサ、石炭などを用いることができる。
【0042】
本発明では、通常、合成ガス製造工程、および、液化石油ガス製造工程あるいは低級パラフィン製造工程において触媒を用いるため、含炭素原料(天然ガス、ナフサ、石炭など)としては、硫黄や硫黄化合物などの触媒被毒物質の含有量が少ないものが好ましい。また、含炭素原料に触媒被毒物質が含まれる場合には、必要に応じて、合成ガス製造工程に先立ち脱硫など、触媒被毒物質を除去する工程を行うことができる。
【0043】
合成ガスは、合成ガス製造用触媒(改質触媒)の存在下で、上記のような含炭素原料と、HO、OおよびCOからなる群より選択される少なくとも一種とを反応させることにより製造される。合成ガスは、公知の方法、例えば、天然ガス(メタン)の水蒸気改質法、複合改質法あるいは自己熱改質法により製造される。
【0044】
合成ガス製造工程において製造される合成ガス中の一酸化炭素に対する水素の含有比率(モル基準)は、1.5[H/CO]以上が好ましく、1.8[H/CO]以上がより好ましい。また、製造される合成ガス中の一酸化炭素に対する水素の含有比率(モル基準)は、3[H/CO]以下が好ましく、2.3[H/CO]以下がより好ましい。
【0045】
また、合成ガス製造工程において製造される合成ガス中の一酸化炭素の含有量は、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、製造される合成ガス中の一酸化炭素の含有量は、40モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましい。
【0046】
合成ガスの組成を上記の範囲にすることにより、次の液化石油ガス製造工程または低級パラフィン製造工程において、得られた合成ガスと二酸化炭素(あるいは二酸化炭素含有ガス)とを混合して原料ガスを調製した場合、好適な組成の原料ガスが得られ、その結果、より容易に、より経済的にLPGを製造することができる。
【0047】
なお、上記のような組成の合成ガスは広く製造されており、例えば、メタノール合成の原料ガスとして使用されている。
【0048】
また、例えば、上記のような原料から合成ガスを製造する反応器である改質器の下流にシフト反応器を設け、シフト反応(CO+HO→CO+H)によって合成ガスの組成を上記の範囲に調整することもできる。
【0049】
組成が上記の範囲である合成ガスを製造するためには、含炭素原料と水(スチーム)、酸素および二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも一種との供給量比、用いる合成ガス製造用触媒の種類や、その他の反応条件を適宜選択すればよい。
【0050】
組成が上記の範囲である合成ガスは、例えば、次のような方法によって製造することができる。
【0051】
下記式(I)で表される組成を有する複合酸化物からなる改質触媒の存在下、含炭素原料(特に、天然ガス、メタン)と酸素と二酸化炭素とスチーム(水蒸気)とを、反応器に導入する原料ガス中の(二酸化炭素+スチーム)/カーボン比を0.5〜3、酸素/カーボン比を0.2〜1とし、かつ、反応器出口での温度を900〜1100℃、圧力を5〜60kg/cmとして反応させることにより、本発明において用いられる合成ガスを製造することができる。
【0052】
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO (I)
(式中、Mは第6A族元素、第7A族元素、CoおよびNiを除く第8族遷移元素、第1B族元素、第2B族元素、第4B族元素およびランタノイド元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。a,b,c,dおよびeは各元素の原子比率を表し、a+b+c+d+e=1のとき、0≦a≦0.1、0.001≦(b+c)≦0.3、0≦b≦0.3、0≦c≦0.3、0.6≦(d+e)≦0.999、0<d≦0.999、0≦e≦0.999であり、fは各元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。)
反応器に導入する原料ガス中の(二酸化炭素+スチーム)/カーボン比は、0.5〜2程度が好ましい。また、反応器の出口の温度は、950〜1050℃が好ましい。反応器の出口の圧力は、15〜20kg/cmが好ましい。
【0053】
原料ガスの空間速度は、通常、500〜200000hr−1であり、1000〜100000hr−1が好ましく、1000〜70000hr−1がより好ましい。
【0054】
上記式(I)で表される組成を有する複合酸化物は、MgO、CaOが岩塩型結晶構造をとり、その格子に位置するMgまたはCa原子の一部がCo、NiあるいはMに置換した一種の固溶体であって、単相をなすものである。
【0055】
上記式(I)中、Mは、マンガン、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、銅、銀、亜鉛、錫、鉛、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。
【0056】
Mの含有量(a)は0≦a≦0.1であり、0≦a≦0.05であることが好ましく、0≦a≦0.03であることがより好ましい。Mの含有量(a)が0.1を超えると、リフォーミング反応の活性が低下してくる。
【0057】
コバルト含有量(b)は0≦b≦0.3であり、0≦b≦0.25であることが好ましく、0≦b≦0.2であることがより好ましい。コバルト含有量(b)が0.3を超えると、炭素質析出防止効果が十分には得られにくくなる。
【0058】
ニッケル含有量(c)は0≦c≦0.3であり、0≦c≦0.25であることが好ましく、0≦c≦0.2であることがより好ましい。ニッケル含有量(c)が0.3を超えると、炭素質析出防止効果が十分には得られにくくなる。
【0059】
また、コバルト含有量(b)とニッケル含有量(c)との合計量(b+c)は0.001≦(b+c)≦0.3であり、0.001≦(b+c)≦0.25であることが好ましく、0.001≦(b+c)≦0.2であることがより好ましい。合計含有量(b+c)が0.3を超えると、炭素質析出防止効果が十分には得られにくくなる。一方、合計含有量(b+c)が0.001未満では、反応活性が低下してくる。
【0060】
マグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)との合計量(d+e)は0.6≦(d+e)≦0.9998であり、0.7≦(d+e)≦0.9998であることが好ましく、0.77≦(d+e)≦0.9998であることがより好ましい。
【0061】
このうち、マグネシウム含有量(d)は0<d≦0.999であり、0.2≦d≦0.9998であることが好ましく、0.37≦d≦0.9998であることがより好ましい。また、カルシウム含有量(e)は0≦e<0.999であり、0≦e≦0.5であることが好ましく、0≦e≦0.3であることがより好ましい。この触媒は、カルシウムを含有しないものであってもよい。
【0062】
マグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)との合計量(d+e)は、M含有量(a)、コバルト含有量(b)およびニッケル含有量(c)とのバランスで決められる。(d+e)は上記範囲内であればいかなる割合でもリフォーミング反応に優れた効果を発揮するが、カルシウム(e)とM(a)の含有量が多いと、炭素質析出の抑制に高い効果があるものの、マグネシウム(d)が多い場合に比べて触媒活性が低くなる傾向がある。活性の点からは、カルシウム含有量(e)が0.5以下であり、M含有量(a)が0.1以下であることが好ましい。
【0063】
用いる改質触媒は、M、CoおよびNiの少なくとも1種が複合酸化物中で高分散化されていることが好ましい。ここで、分散とは、担持された金属の全原子数に対する触媒表面に露出している原子数の比として定められるものである。すなわち、Co、NiあるいはMの金属元素またはその化合物の原子数をAとし、これらの原子のうち粒子表面に露出している原子の数をBとすると、B/Aが分散度となる。M、CoおよびNiの少なくとも1種が複合酸化物中で高分散化されている改質触媒を用いることにより、さらに高活性となって反応が化学量論的に進行し、炭素質(カーボン)の析出がより効果的に防止される。
【0064】
このような改質触媒を製造する方法としては、例えば、含浸担持法、共沈法、ゾル−ゲル法(加水分解法)、均一沈澱法などが挙げられる。
【0065】
上記の改質触媒は、通常、合成ガスの製造に使用する前に、活性化処理を行う。活性化処理は、水素ガスなどの還元性気体の存在下、500〜1000℃、好ましくは600〜1000℃、より好ましくは650〜1000℃の温度範囲で0.5〜30時間程度、触媒を加熱することにより行う。還元性気体は、窒素ガスなどの不活性ガスで希釈されていてもよい。この活性化処理は、リフォーミング反応を行う反応器内で行うこともできる。この活性化処理により、触媒活性が発現する。
【0066】
本発明において用いられる合成ガスを製造する他の方法としては、含炭素原料(特に、天然ガス、メタン)を部分酸化して、未反応の含炭素原料を含む少なくとも600℃の温度を有する混合ガスを生成させ、次いで、この高温の混合ガス中に含まれる未反応の含炭素原料に、金属イオンの電気陰性度が13以下である金属酸化物からなる担体にロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(触媒金属)を担持させた、比表面積25m/g以下、触媒金属の担持量が金属換算量で担体金属酸化物に対して0.0005〜0.1モル%の触媒の存在下において、加圧条件下で炭酸ガスおよび/またはスチームを反応させて合成ガスを製造する方法が挙げられる。また、含炭素原料(特に、天然ガス、メタン)と、酸素含有ガス(空気、酸素など)と、炭酸ガスおよび/またはスチームとからなる混合ガスを用い、金属イオンの電気陰性度が13以下である金属酸化物からなる担体にロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属(触媒金属)を担持させた、比表面積25m/g以下、触媒金属の担持量が金属換算量で担体金属酸化物に対して0.0005〜0.1モル%の触媒の存在下において、該混合ガス中の含炭素原料を部分酸化して、未反応の含炭素原料を含む少なくとも600℃の温度を有する混合ガスを生成させるとともに、この未反応の含炭素原料に加圧条件下で炭酸ガスおよび/またはスチームを反応させて合成ガスを製造する方法が挙げられる。
【0067】
ここで、触媒金属は、金属状態で担持されていてもよいし、酸化物などの金属化合物の状態で担持されていてもよい。また、担体として用いる金属酸化物は、単一金属酸化物であってもよいし、複合金属酸化物であってもよい。
【0068】
担体用金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度は13以下であり、12以下が好ましく、10以下がより好ましい。金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度が13を超えると、その触媒の使用に際して炭素析出が著しくなってくる。また、担体用金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度の下限値は、通常、4程度である。
【0069】
なお、金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度は、次式により定義されるものである。
【0070】
Xi=(1+2i)Xo
Xi:金属イオンの電気陰性度、
Xo:金属の電気陰性度、
i:金属イオンの荷電子数。
【0071】
金属酸化物が複合金属酸化物である場合は、平均の金属イオン電気陰性度を用い、その値は、複合金属酸化物中に含まれる各金属イオンの電気陰性度に複合酸化物中の各酸化物のモル分率を掛けた値の合計値とする。
【0072】
金属の電気陰性度(Xo)はPaulingの電気陰性度を用いる。Paulingの電気陰性度は、「藤代亮一訳、ムーア物理化学(下)(第4版)、東京化学同人,p.707(1974)」の表15.4に記載されている。金属酸化物中の金属イオンの電気陰性度(Xi)については、例えば、「触媒学会編、触媒講座、第2巻、p.145(1985)」に詳述されている。
【0073】
このような金属酸化物としては、Mg、Ca、Ba、Zn、Al、Zr、La等の金属を1種以上含む金属酸化物が挙げられる。このような金属酸化物として、具体的には、マグネシア(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、酸化ランタン(La)等の単一金属酸化物や、MgO/CaO、MgO/BaO、MgO/ZnO、MgO/Al、MgO/ZrO、CaO/BaO、CaO/ZnO、CaO/Al、CaO/ZrO、BaO/ZnO、BaO/Al、BaO/ZrO、ZnO/Al、ZnO/ZrO、Al/ZrO、La/MgO、La/Al、La/CaO等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0074】
用いる触媒の比表面積は25m/g以下であり、20m/g以下が好ましく、15m/g以下がより好ましく、10m/g以下が特に好ましい。また、用いる触媒の比表面積の下限値は、通常、0.01m/g程度である。触媒の比表面積を上記の範囲にすることにより、触媒の炭素析出活性をより十分に抑制することができる。
【0075】
ここで用いる触媒において、触媒の比表面積と担体である金属酸化物の比表面積とは実質的にほぼ同じである。したがって、担体である金属酸化物の比表面積は25m/g以下であり、20m/g以下が好ましく、15m/g以下がより好ましく、10m/g以下が特に好ましい。また、担体である金属酸化物の比表面積の下限値は、通常、0.01m/g程度である。
【0076】
なお、ここで、触媒または担体である金属酸化物の比表面積は、BET法により、温度15℃で測定されたものである。
【0077】
比表面積が25m/g以下の触媒は、触媒金属の担持前に担体である金属酸化物を300〜1300℃、好ましくは650〜1200℃で焼成し、触媒金属担持後、得られた触媒金属担持物をさらに600〜1300℃、好ましくは650〜1200℃で焼成することによって得ることができる。また、担体である金属酸化物に触媒金属を担持後、得られた触媒金属担持物を600〜1300℃、好ましくは650℃〜1200℃で焼成することによっても得ることができる。焼成温度と焼成時間とを制御することによって、得られる触媒または担体である金属酸化物の比表面積を制御することができる。
【0078】
担体である金属酸化物に対する触媒金属の担持量は、金属換算量で、0.0005〜0.1モル%である。担体である金属酸化物に対する触媒金属の担持量は、金属換算量で、0.001モル%以上が好ましく、0.002モル%以上がより好ましい。また、担体である金属酸化物に対する触媒金属の担持量は、金属換算量で、0.09モル%以下が好ましい。
【0079】
上記のような触媒は、触媒の比表面積が小さく、かつ、触媒金属の担持量が非常に少量であるため、含炭素原料に対する十分な合成ガス化活性を有すると共に、炭素析出活性が著しく抑制されたものである。
【0080】
このような触媒は、公知の方法に従って調製することができる。触媒を製造する方法としては、例えば、担体である金属酸化物を水中に分散させ、触媒金属塩またはその水溶液を添加、混合した後、触媒金属が担持された金属酸化物を水溶液から分離し、乾燥、焼成する方法(含浸法)や、担体である金属酸化物を排気後、細孔容積分の金属塩溶液を少量ずつ加え、担体表面を均一に濡れた状態にした後、乾燥、焼成する方法(incipient−wetness法)などが挙げられる。
【0081】
上記のような触媒の存在下、含炭素原料(特に、天然ガス、メタン)とスチーム(水蒸気)および/または二酸化炭素とを反応させることにより、本発明において用いられる合成ガスを製造することができる。
【0082】
含炭素原料と二酸化炭素とを反応させる方法(COリフォーミング)の場合、反応温度は500〜1200℃であり、600〜1000℃が好ましい。反応圧力は5〜40kg/cmGであり、5〜30kg/cmGが好ましい。また、この反応を固定床方式で行う場合、ガス空間速度(GHSV)は1,000〜10,000hr−1であり、2,000〜8,000hr−1が好ましい。反応器に導入する原料ガス中のCOの含有量は、含炭素原料中の炭素1モル当たり、CO20〜0.5モルであり、10〜1モルが好ましい。
【0083】
含炭素原料とスチームとを反応させる方法(スチームリフォーミング)の場合、反応温度は600〜1200℃であり、600〜1000℃が好ましい。反応圧力は1〜40kg/cmGであり、5〜30kg/cmGが好ましい。また、この反応を固定床方式で行う場合、ガス空間速度(GHSV)は1,000〜10,000hr−1であり、2,000〜8,000hr−1が好ましい。反応器に導入する原料ガス中のスチームの含有量は、含炭素原料中の炭素1モル当たり、スチーム(HO)20〜0.5モルであり、10〜1モルが好ましく、1.5〜1モルがより好ましい。
【0084】
スチームとCOの混合物を含炭素原料に反応させて合成ガスを製造する場合、スチームとCOとの混合割合は特に限定されないが、通常、HO/CO(モル比)は0.1〜10である。
【0085】
この合成ガスの製造方法においては、上記リフォーミング反応に必要とされるエネルギーは、リフォーミングの反応原料である含炭素原料の一部を部分酸化(部分燃焼)させ、その際に生じる燃焼熱により補給される。
【0086】
含炭素原料の部分酸化反応は、600〜1500℃、好ましくは700〜1300℃の温度および5〜50kg/cmG、好ましくは10〜40kg/cmGの圧力の条件下で実施される。含炭素原料を部分酸化させるための酸化剤としては酸素が用いられるが、この酸素源としては、純酸素の他に、空気、富酸素化空気などの酸素含有ガスが用いられる。反応器に導入する原料ガス中の酸素の含有量は、含炭素原料中の炭素に対する酸素の原子比(O/C)で、0.1〜4であり、0.5〜2が好ましい。
【0087】
この含炭素原料の部分酸化により、未反応の含炭素原料を含む、少なくとも600℃、好ましくは700〜1300℃の高温の混合ガスが得られる。この混合ガス中の未反応の含炭素原料に対して、上記の条件で二酸化炭素および/またはスチームを反応させることにより、合成ガスを製造することができる。二酸化炭素および/またはスチームは、含炭素原料の部分酸化により得られた混合ガスに添加して反応させてもよく、また、部分酸化反応に供する含炭素原料にあらかじめ添加・混合しておいてもよい。後者の場合には、含炭素原料の部分酸化とリフォーミング反応とを同時に行うことが可能となる。
【0088】
含炭素原料のリフォーミング反応は、各種の反応器形式で実施することができるが、通常、固定床方式、流動床方式で実施することが好ましい。
【0089】
〔液化石油ガス製造工程、低級パラフィン製造工程〕
第1−1のLPGの製造方法および第1−2のLPGの製造方法(両者を併せて第1のLPGの製造方法とも言う。)の液化石油ガス製造工程では、触媒(低級パラフィン製造用触媒)の存在下、上記の合成ガス製造工程において得られた合成ガスと二酸化炭素とを含む原料ガスから、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造し、必要に応じて水分や、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である低沸点成分、ブタンの沸点より高い沸点を持つ物質である高沸点成分などを分離して、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する。
【0090】
第2のLPGの製造方法の低級パラフィン製造工程では、触媒(低級パラフィン製造用触媒)の存在下、上記の合成ガス製造工程において得られた合成ガスと、後述の分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスとを含む原料ガスから、二酸化炭素を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造する。なお、必要に応じて、原料ガスにさらに二酸化炭素を混合することもできる。
【0091】
ここで、分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスは、全部を低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルしてもよいし、また、一部を系外に抜き出し、残りを低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルしてもよい。また、分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスは、一部を合成ガス製造工程にリサイクルすることもできる。
【0092】
また、二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素以外に、例えば、水素、一酸化炭素、エタン、エチレン、メタンなどを含むものであってもよい。
【0093】
分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離した二酸化炭素含有ガスから、二酸化炭素以外の成分を分離した後、低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルすることもできる。
【0094】
低級パラフィン製造用触媒としては、例えば、1種以上のメタノール合成触媒成分と1種以上のゼオライト触媒成分とを含有する触媒が挙げられる。
【0095】
ここで、メタノール合成触媒成分とは、CO+2H→CHOHの反応において触媒作用を示すものを指す。また、ゼオライト触媒成分とは、メタノールの炭化水素への縮合反応および/またはジメチルエーテルの炭化水素への縮合反応において触媒作用を示すゼオライトを指す。
【0096】
この低級パラフィン製造用触媒の存在下で一酸化炭素と水素とを反応させると、下記式(6)で示されるような反応が起こり、主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類を製造することができる。
【0097】
【化6】

まず、メタノール合成触媒成分上で一酸化炭素と水素とからメタノールが合成される。この時、メタノールの脱水2量化により、ジメチルエーテルも生成する。次いで、合成されたメタノールはゼオライト触媒成分の細孔内の活性点にて主成分がプロピレンまたはブテンである低級オレフィン炭化水素に転換される。この反応では、メタノールの脱水によってカルベン(HC:)が生成し、このカルベンの重合によって低級オレフィンが生成すると考えられる。そして、生成した低級オレフィンはゼオライト触媒成分の細孔内から抜け出し、メタノール合成触媒成分上で速やかに水素化されて主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類となる。
【0098】
ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分;質量基準)は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.8以上であることが特に好ましい。また、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分;質量基準)は、3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることが特に好ましい。ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率を上記の範囲にすることにより、より高選択率、高収率でプロパンおよび/またはブタンを製造することができる。
【0099】
メタノール合成触媒成分は、メタノール合成触媒としての機能と、オレフィンの水素添加触媒としての機能とを有する。また、ゼオライト触媒成分は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの炭化水素への縮合反応に対して酸性が調整された固体酸ゼオライト触媒としての機能を有する。そのため、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率は、触媒の持つメタノール合成機能およびオレフィンの水素添加機能とメタノールからの炭化水素生成機能との相対比に反映される。本発明において一酸化炭素と水素とを反応させて主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類を製造するにあたり、一酸化炭素と水素とをメタノール合成触媒成分によって十分にメタノールに転化しなければならず、かつ、生成したメタノールをゼオライト触媒成分によって十分に主成分がプロピレンまたはブテンであるオレフィンに転化し、それをメタノール合成触媒成分によって主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類に転化しなければならない。
【0100】
ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分;質量基準)を0.1以上、より好ましくは0.5以上にすることにより、一酸化炭素と水素とをより高転化率でメタノールに転化させることができる。また、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分;質量基準)を0.8以上にすることにより、生成したメタノールをより選択的にプロパンまたはブタンを主成分とするパラフィン類に転化させることができる。
【0101】
一方、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率(メタノール合成触媒成分/ゼオライト触媒成分;質量基準)を3以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2以下にすることにより、生成したメタノールをより高転化率で主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類に転化させることができる。
【0102】
なお、ゼオライト触媒成分に対するメタノール合成触媒成分の含有比率は、上記の範囲に限定されるものではなく、使用するメタノール合成触媒成分およびゼオライト触媒成分の種類などに応じて適宜決めることができる。
【0103】
メタノール合成触媒成分としては、CO+2H→CHOHの反応において触媒作用を示すものであれば特に限定されず、公知のメタノール合成触媒を使用することができる。
【0104】
メタノール合成触媒成分として、具体的には、Cu−Zn系、Cu−Zn−Cr系、Cu−Zn−Al系、Cu−Zn−Ag系、Cu−Zn−Mn−V系、Cu−Zn−Mn−Cr系、Cu−Zn−Mn−Al−Cr系などのCu−Zn系およびそれに第三成分が加わったもの、あるいは、Ni−Zn系のもの、Mo系のもの、Ni−炭素系のもの、さらにはPdなど貴金属系のものなどが挙げられる。また、メタノール合成触媒として市販されているものを使用することもできる。
【0105】
好ましいメタノール合成触媒成分としては、酸化銅−酸化亜鉛、酸化銅−酸化亜鉛−酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化銅−酸化亜鉛−酸化クロムなどのCu−Zn系メタノール合成触媒が挙げられる。
【0106】
他の好ましいメタノール合成触媒成分としては、Pd系メタノール合成触媒が挙げられる。Pd系メタノール合成触媒としては、中でも、シリカ等の担体にPdを0.1〜10重量%担持したもの、シリカ等の担体にPdを0.1〜10重量%、Ca等のアルカリ金属、アルカリ土類金属およびランタノイド金属からなる群より選択される少なくとも一種を5重量%以下(0重量%を除く)担持したものが好ましい。
【0107】
なお、Pdは金属の形で含まれていなくてもよく、例えば、酸化物、硝酸塩、塩化物などの形で含まれていてもよい。その場合、より高い触媒活性が得られる点から、反応前に、例えば、水素還元処理などをすることによって、Pd系メタノール合成触媒成分中のPdを金属パラジウムに転化させることが好ましい。
【0108】
他の好ましいメタノール合成触媒成分としては、Fe,Co,Ni,Cu,Ru,Rh,Pd,Ir,Pt等のオレフィン水素化触媒成分をZn−Cr系メタノール合成触媒に担持したものが挙げられる。ここで、オレフィン水素化触媒成分とは、オレフィンのパラフィンへの水素化反応において触媒作用を示すものを指す。オレフィン水素化触媒成分をZn−Cr系メタノール合成触媒に担持したものとしては、中でも、Pdおよび/またはPt、より好ましくはPdを0.005〜5重量%Zn−Cr系メタノール合成触媒に担持したものが好ましい。なお、Zn−Cr系メタノール合成触媒は、通常、ZnおよびCrを含む複合酸化物であり、この複合酸化物は、Zn、CrおよびO以外の元素、例えば、Si,Al等を含んでいてもよい。
【0109】
なお、Pd,Ptは金属の形で含まれていなくてもよく、例えば、酸化物、硝酸塩、塩化物などの形で含まれていてもよい。その場合、より高い触媒活性が得られる点から、反応前に、例えば、水素還元処理などをすることによって、Pd,Ptを金属パラジウム、金属白金に転化させることが好ましい。
【0110】
ゼオライト触媒成分としては、メタノールの炭化水素への縮合反応および/またはジメチルエーテルの炭化水素への縮合反応において触媒作用を示すゼオライトであれば特に限定されず、いずれも使用することができ、また、市販されているものを使用することもできる。
【0111】
ゼオライト触媒成分としては、反応分子の拡散が可能な細孔の広がりが3次元である中細孔ゼオライトまたは大細孔ゼオライトが好ましい。このようなものとしては、例えば、ZSM−5、MCM−22や、ベータ、Y型などが挙げられる。本発明においては、一般にメタノールおよび/またはジメチルエーテルから低級オレフィン炭化水素への縮合反応に高い選択性を示すSAPO−34などの小細孔ゼオライトあるいはモルデナイトなどの細孔内での反応分子の拡散が3次元でないゼオライトよりも、一般にメタノールおよび/またはジメチルエーテルからアルキル置換芳香族炭化水素への縮合反応に高い選択性を示すZSM−5、MCM−22などの中細孔ゼオライトあるいはベータ、Y型などの大細孔ゼオライトなどの細孔内での反応分子の拡散が3次元であるゼオライトが好ましい。中細孔ゼオライトあるいは大細孔ゼオライトなどの細孔内での反応分子の拡散が3次元であるゼオライトを用いることにより、生成したメタノールをより選択的にプロピレンまたはブテンを主成分とするオレフィン、さらにはプロパンまたはブタンを主成分とするパラフィン類に転化させることができる。
【0112】
ここで、中細孔ゼオライトは、細孔径が主に10員環によって形成される0.44〜0.65nmのゼオライトをいい、また、大細孔ゼオライトは、細孔径が主に12員環によって形成される0.66〜0.76nmのゼオライトをいう。ゼオライト触媒成分の細孔径は、ガス状生成物内のC3成分およびC4成分選択性の点から、0.5nm以上がより好ましい。また、ゼオライト触媒成分の骨格細孔径は、ベンゼン等の芳香族化合物やC5成分等のガソリン成分などの液状生成物の生成抑制の点から、0.76nm以下がより好ましい。
【0113】
また、ゼオライト触媒成分としては、いわゆる高シリカゼオライト、具体的にはSiO/Alモル比が10〜150のゼオライトが好ましい。SiO/Alモル比が10〜150の高シリカゼオライトを用いることにより、生成したメタノールをより選択的にプロピレンまたはブテンを主成分とするオレフィン、さらにはプロパンまたはブタンを主成分とするパラフィン類に転化させることができる。ゼオライトのSiO/Alモル比は、20以上がより好ましく、30以上が特に好ましい。また、ゼオライトのSiO/Alモル比は、100以下がより好ましく、50以下が特に好ましい。
【0114】
ゼオライト触媒成分としては、SiO/Alモル比が10〜150で、反応分子の拡散が可能な細孔の広がりが3次元である中細孔ゼオライトまたは大細孔ゼオライトが特に好ましい。そのようなものとしては、例えば、USYや高シリカタイプのベータなどの固体酸ゼオライトが挙げられる。
【0115】
ゼオライト触媒成分としては、イオン交換などによって酸性を調整した上記のような固体酸ゼオライトを用いる。
【0116】
ゼオライト触媒成分としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属を含有するゼオライト、これらの金属等でイオン交換したゼオライト、あるいは、これらの金属等を担持したゼオライトなども挙げられるが、プロトン型のゼオライトが好ましい。適当な酸強度、酸量(酸濃度)を有するプロトン型のゼオライトを用いることにより、触媒活性がさらに高くなり、高転化率、高選択率でプロパンおよび/またはブタンを合成することができる。
【0117】
好ましいゼオライト触媒成分は、組み合わせるメタノール合成触媒成分によって異なる。
【0118】
Cu−Zn系メタノール合成触媒と組み合わせて用いる場合、ゼオライト触媒成分としてはUSYゼオライトが好ましく、SiO/Alモル比が10〜150のUSYゼオライトが特に好ましく、SiO/Alモル比が10〜50のUSYゼオライトがさらに好ましい。
【0119】
Pd系メタノール合成触媒と組み合わせて用いる場合、ゼオライト触媒成分としては、β−ゼオライトが好ましく、SiO/Alモル比が10〜150のプロトン型β−ゼオライトが特に好ましく、SiO/Alモル比が30〜50のプロトン型β−ゼオライトがさらに好ましい。
【0120】
オレフィン水素化触媒成分をZn−Cr系メタノール合成触媒に担持したものと組み合わせて用いる場合、好ましいゼオライト触媒成分としては、β−ゼオライト、特に好ましくはSiO/Alモル比が10〜150のプロトン型β−ゼオライト、より好ましくはSiO/Alモル比が30〜50のプロトン型β−ゼオライトが挙げられる。
【0121】
低級パラフィン製造用触媒としては、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを別途に調製し、これらを混合したものが好ましい。メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを別途に調製することにより、各々の機能に対して、それぞれの組成、構造、物性を最適に設計することが容易にできる。
【0122】
なお、メタノール合成触媒には、使用前に還元処理をして活性化することが必要なものもある。本発明においては、メタノール合成触媒成分を予め還元処理して活性化する必要は必ずしもなく、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを混合・成形して低級パラフィン製造用触媒を製造した後に、反応を開始するに先立ち還元処理をしてメタノール合成触媒成分を活性化することができる。この還元処理の処理条件は、メタノール合成触媒成分の種類などに応じて適宜決めることができる。
【0123】
低級パラフィン製造用触媒は、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを均一に混合した後、必要に応じて成形して製造される。両触媒成分の混合・成形の方法としては特に限定されないが、乾式の方法が好ましい。湿式で両触媒成分の混合・成形を行った場合、両触媒成分間での化合物の移動、例えばメタノール合成触媒成分中の塩基性成分のゼオライト触媒成分中の酸点への移動・中和が生じることによって、両触媒成分の各々の機能に対して最適化された物性等が変化することがある。触媒の成形方法としては、押出成形法、打錠成形法などが挙げられる。
【0124】
本発明において、混合するメタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とは、粒径がある程度大きい方が好ましく、粉末状ではなく、顆粒状であることが好ましい。
【0125】
ここで、粉末とは、平均粒径が10μm以下のものをいい、顆粒とは、平均粒径が100μm以上のものをいう。
【0126】
顆粒状、すなわち平均粒径が100μm以上のメタノール合成触媒成分と、同じく顆粒状、すなわち平均粒径が100μm以上のゼオライト触媒成分とを混合し、必要に応じて成形して低級パラフィン製造用触媒を製造することにより、触媒寿命がさらに長く、劣化がさらに少ない触媒を得ることができる。混合するメタノール合成触媒成分の平均粒径およびゼオライト触媒成分の平均粒径は、200μm以上がより好ましく、500μm以上が特に好ましい。
【0127】
一方、この混合触媒の優れた性能を保つ点から、混合するメタノール合成触媒成分の平均粒径およびゼオライト触媒成分の平均粒径は、5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。
【0128】
混合するメタノール合成触媒成分の平均粒径とゼオライト触媒成分の平均粒径とは、同じである方が好ましい。
【0129】
混合触媒を製造する場合、通常、それぞれの触媒成分を必要に応じて機械的に粉砕し、平均粒径を例えば0.5〜2μm程度に揃えた後、均一に混合し、必要に応じて成形する。あるいは、所望の触媒成分すべてを加え、機械的に粉砕しながら均一になるまで混合し、平均粒径を例えば0.5〜2μm程度に揃え、必要に応じて成形する。
【0130】
それに対して、顆粒状のメタノール合成触媒成分と顆粒状のゼオライト触媒成分とを混合して低級パラフィン製造用触媒を製造する場合、通常、それぞれの触媒成分を予め打錠成形法、押出成形法などの公知の成形方法により成形し、それを必要に応じて機械的に粉砕し、平均粒径を好ましくは100μm〜5mm程度に揃えた後、両者を均一に混合する。そして、この混合物を必要に応じて再度成形し、低級パラフィン製造用触媒を製造する。
【0131】
低級パラフィン製造用触媒は、その所望の効果を損なわない範囲内で必要により他の添加成分を含有していてもよい。
【0132】
第1のLPGの製造方法の液化石油ガス製造工程、あるいは、第2のLPGの製造方法の低級パラフィン製造工程では、上記のような触媒の存在下、一酸化炭素と水素とを反応させ、主成分がプロパンまたはブタンであるパラフィン類、好ましくは主成分がプロパンであるパラフィン類を製造する。
【0133】
反応器に送入されるガス、すなわち原料ガスは、上記の合成ガス製造工程において得られた合成ガスと二酸化炭素、あるいは、後述の分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスとを含む。
【0134】
反応器に送入されるガス中の一酸化炭素の含有量は、反応に好適な一酸化炭素の圧力(分圧)の確保と、原料原単位向上との点から、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3モル%以上が好ましく、3.3モル%以上がより好ましい。また、反応器に送入されるガス中の一酸化炭素の含有量は、一酸化炭素の転化率がより十分に高くなる点から、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、30モル%以下が好ましく、28モル%以下がより好ましい。
【0135】
反応器に送入されるガス中の二酸化炭素の含有量は、CO原料原単位向上の点から、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、5モル%以上が好ましく、7モル%以上がより好ましく、8モル%以上が特に好ましい。また、反応器に送入されるガス中の二酸化炭素の含有量は、CO発生量低減の点から、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、35モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、17モル%以下が特に好ましい。
【0136】
また、反応器に送入されるガス中の二酸化炭素の含有量は、二酸化炭素の生成量を抑える点から、一酸化炭素1モルに対して、0.2モル以上が好ましく、0.3モル以上がより好ましい。また、反応器に送入されるガス中の二酸化炭素の含有量は、生産性の点から、一酸化炭素1モルに対して、1モル以下が好ましく、0.7モル以下がより好ましい。
【0137】
反応器に送入されるガス中の二酸化炭素の含有量が多くなると、副生する二酸化炭素の量が減少する。一方で、反応器に送入されるガス中の二酸化炭素の含有量があまりに多くなると、不要なガスの流通(循環)量が増大する。
【0138】
反応器に送入されるガス中の水素の含有量は、一酸化炭素がより十分に反応する点から、一酸化炭素1モルに対して1.2モル以上が好ましく、1.5モル以上がより好ましい。また、反応器に送入されるガス中の水素の含有量は、経済性の点から、一酸化炭素1モルに対して3.5モル以下が好ましく、3モル以下がより好ましい。
【0139】
第2のLPGの製造方法において、反応器に送入されるガス中の二酸化炭素含有ガスの含有量は、反応器に送入されるガスの組成が好ましくは上記の範囲内になるように適宜決めることができる。
【0140】
なお、反応器に送入されるガスは、一酸化炭素、水素および二酸化炭素以外に、例えば、水、メタン、エタン、エチレン、不活性ガスなどを含むものであってもよい。反応器に送入されるガスは、上記の合成ガス製造工程において得られた合成ガスと二酸化炭素、あるいは、後述の分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスに、必要に応じて、その他の成分を加えたものであってもよい。また、反応器に送入されるガスは、上記の合成ガス製造工程において得られた合成ガス、後述の分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスから、必要に応じて、所定の成分を分離したものであってもよい。
【0141】
反応温度は、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とが、それぞれ、より十分に高い活性を示す点から、270℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましい。また、反応温度は、触媒の使用制限温度の点と、反応熱の除去・回収が容易である点とから、420℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。
【0142】
また、反応温度を高温にすることで、二酸化炭素と水素とを反応させ、パラフィン類を製造することも可能である。その場合、反応温度は310℃以上が好ましく、330℃以上がより好ましい。この場合も、反応温度は、420℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。
【0143】
好適な反応温度は、用いる触媒の種類によって異なる。メタノール合成触媒成分としてCu−Zn系メタノール合成触媒を使用する場合、反応温度はあまり高くない方が好ましく、具体的には、340℃以下が好ましい。一方、メタノール合成触媒成分としてPd系メタノール合成触媒や、オレフィン水素化触媒成分をZn−Cr系メタノール合成触媒に担持したものを使用する場合、反応温度は340℃以上が特に好ましい。
【0144】
反応圧力は、メタノール合成触媒成分がより十分に高い活性を示す点から、1MPa以上が好ましく、2MPa以上がより好ましい。また、反応圧力は、経済性の点から、10MPa以下が好ましく、7MPa以下がより好ましい。
【0145】
ガス空間速度は、経済性の点から、500hr−1以上が好ましく、2000hr−1以上がより好ましい。また、ガス空間速度は、メタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とが、それぞれ、より十分に高い転化率を示す接触時間を与える点から、10000hr−1以下が好ましく、5000hr−1以下がより好ましい。
【0146】
反応器に送入されるガスは、分割して反応器に送入し、それにより反応温度を制御することもできる。
【0147】
反応は固定床、流動床、移動床などで行うことができるが、反応温度の制御と触媒の再生方法との両面から選定することが好ましい。例えば、固定床としては、内部多段クエンチ方式などのクエンチ型反応器、多管型反応器、複数の熱交換器を内包するなどの多段型反応器、多段冷却ラジアルフロー方式や二重管熱交換方式や冷却コイル内蔵式や混合流方式などその他の反応器などを用いることができる。
【0148】
低級パラフィン製造用触媒は、温度制御を目的として、シリカ、アルミナなど、あるいは、不活性で安定な熱伝導体で希釈して用いることもできる。また、低級パラフィン製造用触媒は、温度制御を目的として、熱交換器表面に塗布して用いることもできる。
【0149】
この液化石油ガス製造工程において得られる液化石油ガス、および水分などを分離する前の低級パラフィン含有ガス、あるいは、低級パラフィン製造工程において得られる低級パラフィン含有ガスは、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである。液化特性の点から、液化石油ガスまたは低級パラフィン含有ガス中のプロパンおよびブタンの合計含有量は多いほど好ましい。本発明では、プロパンおよびブタンの合計含有量が、炭素基準で75%以上、さらには80%以上(100%も含む)である液化石油ガスまたは低級パラフィン含有ガスを得ることができる。
【0150】
さらに、液化石油ガス製造工程において得られる液化石油ガス、および水分などを分離する前の低級パラフィン含有ガス、あるいは、低級パラフィン製造工程において得られる低級パラフィン含有ガスは、燃焼性および蒸気圧特性の点から、ブタンよりプロパンが多いことが好ましい。本発明では、プロパンの含有量が、炭素基準で57%以上、さらには62%以上(100%も含む)である液化石油ガスまたは低級パラフィン含有ガスを得ることができる。
【0151】
第1のLPGの製造方法では、以上のようにして、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造し、必要に応じて水分や、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質である低沸点成分、ブタンの沸点より高い沸点を持つ物質である高沸点成分などを分離して、液化石油ガス(LPG)を製造する。水分、低沸点成分および高沸点成分の分離は、公知の方法によって行うことができる。また、液化石油ガスを得るために、必要に応じて加圧および/または冷却を行ってもよい。
【0152】
民生用としては、使用時の安全性の点から、例えば、分離によってLPG中の低沸点成分の含有量を5モル%以下(0モル%も含む)とすることが好ましい。
【0153】
このようにして製造されるLPG中のプロパンおよびブタンの合計含有量は、95モル%以上、さらには98モル%以上(100モル%も含む)とすることができる。また、製造されるLPG中のプロパンの含有量は、60モル%以上、さらには65モル%以上(100モル%も含む)とすることができる。
【0154】
本発明の第1のLPGの製造方法によれば、家庭用・業務用の燃料として広く用いられているプロパンガスに適した組成を有するLPGを製造することができる。
【0155】
〔分離工程〕
第2のLPGの製造方法の分離工程では、上記の低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスから、必要に応じて水分などを分離した後、二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガスを分離し、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)を得る。液化石油ガスを得るために、必要に応じて加圧および/または冷却を行ってもよい。
【0156】
低級パラフィン製造工程において得られる低級パラフィン含有ガスには、二酸化炭素以外に、未反応の原料である水素および一酸化炭素、副生物であるエタン、メタン、エチレンなど、プロパンの沸点より低い沸点または昇華点を有する低沸点成分が含まれる。これらの低沸点成分も、同時に、二酸化炭素含有ガスとして分離してもよい。
【0157】
二酸化炭素含有ガスの分離は、例えば、気液分離、吸収分離、蒸留など公知の方法によって行うことができる。より具体的には、加圧常温での気液分離や吸収分離、冷却しての気液分離や吸収分離、あるいは、その組み合わせによって行うことができる。また、膜分離や吸着分離によって行うこともでき、これらと気液分離、吸収分離、蒸留との組み合わせによって行うこともできる。
【0158】
低級パラフィン含有ガスから分離した二酸化炭素含有ガスから、必要に応じて二酸化炭素以外の成分、例えば上記の低沸点成分を分離することもできる。低沸点成分などの分離は、公知の方法によって行うことができる。
【0159】
また、二酸化炭素含有ガスを分離する前、あるいは、二酸化炭素含有ガスを分離した後に、低級パラフィン含有ガスから、ブタンの沸点より高い沸点を持つ物質である高沸点成分、例えば高沸点パラフィンガスなどを分離してもよい。高沸点成分の分離は、気液分離、吸収分離、蒸留など、公知の方法によって行うことができる。
【0160】
民生用としては、使用時の安全性の点から、例えば、分離によってLPG中の低沸点成分の含有量を5モル%以下(0モル%も含む)とすることが好ましい。
【0161】
このようにして製造されるLPG中のプロパンおよびブタンの合計含有量は、95モル%以上、さらには98モル%以上(100モル%も含む)とすることができる。また、製造されるLPG中のプロパンの含有量は、60モル%以上、さらには65モル%以上(100モル%も含む)とすることができる。
【0162】
本発明の第2のLPGの製造方法によれば、家庭用・業務用の燃料として広く用いられているプロパンガスに適した組成を有するLPGを製造することができる。
【0163】
〔リサイクル工程〕
第2のLPGの製造方法のリサイクル工程では、上記の分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスを、低級パラフィン製造工程にリサイクルする。
【0164】
低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスは、すべて低級パラフィン製造工程にリサイクルしてもよいし、また、一部を系外に抜き出し、あるいは、合成ガス製造工程にリサイクルし、残りを低級パラフィン製造工程にリサイクルしてもよい。二酸化炭素含有ガスは、所望の成分、すなわち二酸化炭素のみを分離して低級パラフィン製造工程にリサイクルすることもできる。
【0165】
二酸化炭素含有ガスをリサイクルするためには、適宜リサイクルラインに昇圧手段を設ける等、公知の技術を採用することができる。
【0166】
〔LPGの製造方法〕
次に、図面を参照しながら、本発明のLPGの製造方法の一実施形態について説明する。
【0167】
図1に、本発明の第1のLPGの製造方法を実施するのに好適なLPG製造装置の一例を示す。
【0168】
まず、含炭素原料としてメタンが、ライン13を経て、改質器11に供給される。また、水蒸気改質を行うため、図示しないが水蒸気がライン13に供給される。改質器11内には、改質触媒11aが備えられている。また、改質器11は、改質のために必要な熱を供給するための加熱手段(不図示)を備える。この改質器11内において、改質触媒11aの存在下、メタンが改質され、水素、一酸化炭素、二酸化炭素および水蒸気を含む合成ガスが得られる。
【0169】
このようにして得られた合成ガスは、ライン14および15を経て、反応器12に供給される。また、二酸化炭素が、ライン16を経て、ライン15に供給される。反応器12内には、低級パラフィン製造用触媒12aが備えられている。この反応器12内において、低級パラフィン製造用触媒12aの存在下、合成ガスと二酸化炭素とを含む原料ガスからプロパン、ブタンを含む低級パラフィン含有ガスが合成される。
【0170】
合成された低級パラフィン含有ガスは、必要に応じて水分等を除去した後、加圧・冷却され、ライン17から製品となるLPGが得られる。LPGは、気液分離などにより水素等を除去してもよい。
【0171】
なお、図示しないが、LPG製造装置には、昇圧機、熱交換器、バルブ、計装制御装置などが必要に応じて設けられる。
【0172】
図2に、本発明の第2のLPGの製造方法を実施するのに好適なLPG製造装置の一例を示す。
【0173】
まず、含炭素原料としてメタンが、ライン24を経て、改質器21に供給される。また、水蒸気改質を行うため、図示しないが水蒸気がライン24に供給される。改質器21内には、改質触媒21aが備えられている。また、改質器21は、改質のために必要な熱を供給するための加熱手段(不図示)を備える。この改質器21内において、改質触媒21aの存在下、メタンが改質され、水素、一酸化炭素、二酸化炭素および水蒸気を含む合成ガスが得られる。
【0174】
このようにして得られた合成ガスは、ライン25および26を経て、反応器22に供給される。また、二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガスが、分離器23からリサイクルライン29を経て、ライン26に供給される。反応器22内には、低級パラフィン製造用触媒22aが備えられている。この反応器22内において、低級パラフィン製造用触媒22aの存在下、合成ガスと二酸化炭素とを含む原料ガスからプロパン、ブタンを含む低級パラフィン含有ガスが合成される。
【0175】
合成された低級パラフィン含有ガスは、必要に応じて水分等を除去した後、ライン27を経て、蒸留塔である分離器23に供給される。そして、常温加圧蒸留により、塔底からプロパンの沸点以上の沸点を持つ物質、すなわち製品となるLPGが得られ、塔頂からプロパンの沸点より低い沸点または昇華点を持つ物質、すなわち低沸点成分が残ガスとして得られる。こうしてライン28から製品となるLPGが得られる。一方、塔頂から得られる残ガス(低沸点成分)は、二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガスとして、リサイクルライン29により、反応器22にリサイクルされる。
【0176】
なお、図示しないが、LPG製造装置には、昇圧機、熱交換器、バルブ、計装制御装置などが必要に応じて設けられる。
【実施例】
【0177】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0178】
〔実施例1〕
図1に示すLPG製造装置を用いてLPGを製造した。改質触媒(合成ガス製造用触媒)および低級パラフィン製造用触媒は、以下のようにして調製したものを用いた。
【0179】
(改質触媒の調製)
空気中、920℃で2時間焼成した酸化マグネシウムを0.27〜0.75mmに整粒した後、含浸法でRuを担持した。このRu含浸体は、ルテニウム(III)クロライド水和物の水溶液(Ru含有量:1.0重量%)を焼成MgOに極めて少量ずつ滴下し、混振することを繰り返して得た。そして、このRu含浸体を空気中、120℃で2.5時間乾燥した後、空気中、920℃で2時間焼成し、改質触媒(Ru担持MgO触媒)を得た。得られたRu担持MgO触媒は、Ruの担持量がMgO1gに対して1.5×10−3g、mol換算で0.06mol%であり、表面積が9.6m/gであった。
【0180】
(低級パラフィン製造用触媒の調製)
メタノール合成触媒成分としては、市販のCu−Zn系メタノール合成触媒(日本ズードヘミー社製)を機械的に粉末にしたものを用いた。ゼオライト触媒成分としては、別途調製したSiO/Alモル比が14.5のプロトン型ZSM−5ゼオライト(細孔径:短径0.53nm、長径0.56nm)粉末を用いた。
【0181】
このメタノール合成触媒成分と同じ重量のゼオライト触媒成分とを均一に混合して加圧成型・整粒した後、水素気流中、300℃で3時間、還元処理して低級パラフィン製造用触媒を得た。
【0182】
(合成ガス製造工程)
前記の改質触媒を外熱式反応管型の装置に充填した後、反応に先立ち、触媒を水素気流中、900℃で1時間、還元処理した。
【0183】
天然ガス46.5モル%、スチーム47.3モル%、二酸化炭素6.2モル%からなる原料ガスを、改質触媒層に流通させた。反応条件は、反応温度870℃、反応圧力2.1MPa、GHSV(ガス空間速度)2000hr−1とした。
【0184】
生成物(合成ガス)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、その組成は、水素61モル%、一酸化炭素30モル%、二酸化炭素2モル%、メタン7モル%であった。
【0185】
(液化石油ガス製造工程)
合成ガス製造工程において得られた合成ガスに対して18/100容量倍の二酸化炭素ガスを添加し、この水素52.6モル%、一酸化炭素25.9モル%、二酸化炭素15.5モル%、メタン6.0モル%からなるガスを、低級パラフィン製造用触媒層に流通させた。反応条件は、反応温度325℃、反応圧力2.0MPa、GHSV3000hr−1とした。
【0186】
生成物(低級パラフィン含有ガス)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、一酸化炭素の炭化水素への転化率は50%であり、一酸化炭素の二酸化炭素へのシフト反応転化率は0%であった。また、生成した炭化水素は、炭素基準で75%がプロパンおよびブタンであり、そのプロパンおよびブタンの内訳は炭素基準でプロパンが56%、ブタンが44%であった。
【0187】
得られた低級パラフィン含有ガスを気液分離した後、モレキュラーシーブで乾燥し、0℃付近に保持されたオクタン溶液にバブルさせる方法により、低級パラフィン含有ガスから、メタン12.8モル%、エタンおよびエチレン2.2モル%、二酸化炭素25.9モル%、未反応の一酸化炭素21.9モル%および水素37.3モル%からなるガスを低沸点成分として分離し、LPGを製造した。
【0188】
〔比較例1〕
ライン16から二酸化炭素を供給せずに低級パラフィン含有ガスを製造した以外は実施例1と同様にしてLPGを製造した。
【0189】
その結果、低沸点成分を分離する前の低級パラフィン含有ガスをガスクロマトグラフィーにより分析したところ、一酸化炭素の転化率は70%であり、一酸化炭素の二酸化炭素へのシフト反応転化率は35%、炭化水素への転化率は35%であった。また、生成した炭化水素は、炭素基準で76%がプロパンおよびブタンであり、そのプロパンおよびブタンの内訳は炭素基準でプロパンが55%、ブタンが45%であった。
【0190】
比較例1は、実施例1と比べて、合成ガスから製造される低級パラフィン含有ガスに含まれるプロパンおよびブタンの量が少なかった。
【0191】
〔実施例2〕
図2に示すLPG製造装置を用いてLPGを製造した。改質触媒(合成ガス製造用触媒)および低級パラフィン製造用触媒は、実施例1と同様にして調製したものを用いた。
【0192】
(合成ガス製造工程)
前記の改質触媒を外熱式反応管型の装置に充填した後、反応に先立ち、触媒を水素気流中、900℃で1時間、還元処理した。
【0193】
天然ガス45モル%、スチーム45モル%、二酸化炭素10モル%からなる原料ガスを、改質触媒層に流通させた。反応条件は、反応温度870℃、反応圧力2.1MPa、GHSV(ガス空間速度)2000hr−1とした。
【0194】
生成物(合成ガス)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、その組成は、水素62モル%、一酸化炭素31モル%、二酸化炭素4.8モル%、メタン2.2モル%であった。
【0195】
(低級パラフィン製造工程)
合成ガス製造工程において得られた合成ガスに対して8/10容量倍の低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルされた二酸化炭素含有ガスを添加し、この水素51.0モル%、一酸化炭素26.9モル%、二酸化炭素14.2モル%、メタン6.9モル%、その他1.0モル%からなるガスを、低級パラフィン製造用触媒層に流通させた。反応条件は、反応温度325℃、反応圧力2.0MPa、GHSV3000hr−1とした。
【0196】
生成物(低級パラフィン含有ガス)をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、一酸化炭素の炭化水素への転化率は50%であり、一酸化炭素の二酸化炭素へのシフト反応転化率は0%であった。また、生成した炭化水素は、炭素基準で75%がプロパンおよびブタンであり、そのプロパンおよびブタンの内訳は炭素基準でプロパンが56%、ブタンが44%であった。
【0197】
(分離・リサイクル工程)
低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスを気液分離した後、モレキュラーシーブで乾燥し、0℃付近に保持されたオクタン溶液にバブルさせる方法により、低級パラフィン含有ガスから、メタン12.8モル%、エタンおよびエチレン2.2モル%、二酸化炭素25.9モル%、未反応の一酸化炭素21.9モル%および水素37.3モル%からなるガスを二酸化炭素含有ガス(低沸点成分)として分離し、LPGを製造した。
【0198】
分離された二酸化炭素含有ガスは、圧縮機にて2.5MPaまで昇圧した後、低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルした。
【0199】
〔比較例2〕
低級パラフィン含有ガスから分離した二酸化炭素含有ガスを、リサイクルライン29により、反応器22にリサイクルせずに低級パラフィン含有ガスを製造した以外は実施例2と同様にしてLPGを製造した。
【0200】
その結果、二酸化炭素含有ガスを分離する前の低級パラフィン含有ガスをガスクロマトグラフィーにより分析したところ、一酸化炭素の転化率は53%であり、一酸化炭素の二酸化炭素へのシフト反応転化率は10%、炭化水素への転化率は43%であった。また、生成した炭化水素は、炭素基準で72%がプロパンおよびブタンであり、そのプロパンおよびブタンの内訳は炭素基準でプロパンが54%、ブタンが46%であった。
【0201】
また、分離・リサイクル工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスの組成は、メタン10.3モル%、エタンおよびエチレン1.9モル%、二酸化炭素28.0モル%、未反応の一酸化炭素21.3モル%および水素38.5モル%であった。
【0202】
比較例2は、実施例2と比べて、合成ガスから製造される低級パラフィン含有ガスに含まれるプロパンおよびブタンの量が少なかった。
【0203】
〔実施例3〕
(触媒の製造)
メタノール合成触媒成分としては、以下のようにして調製した、Zn−Cr系メタノール合成触媒に1重量%のPdを担持した触媒(「Pd/Zn−Cr」ともいう。)を機械的に粉末にしたもの(平均粒径:0.7μm)を用いた。
【0204】
Zn−Cr系メタノール合成触媒としては、ズードケミー触媒株式会社製、商品名:KMA(平均粒径:約1mm)を用いた。このZn−Cr系メタノール合成触媒の組成は、Zn/Cr=2(原子比)である。
【0205】
まず、Pd(NH(NO水溶液(Pd含有量:4.558重量%)4.4mlにイオン交換水1mlを加えて、Pd含有溶液を調製した。調製したPd含有溶液にZn−Cr系メタノール合成触媒20gを投入し、Pd含有溶液を含浸させた。そして、このPd含有溶液を含浸させたZn−Cr系メタノール合成触媒を120℃の乾燥機中で12時間乾燥した後、さらに450℃で2時間空気焼成し、これを機械的に粉砕して、メタノール合成触媒成分とした。
【0206】
ゼオライト触媒成分としては、市販のSiO/Alモル比が37.1のプロトン型β−ゼオライト(東ソー株式会社製)を機械的に粉末にしたもの(平均粒径:0.7μm)を用いた。
【0207】
調製したメタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを、Pd/Zn−Cr:β−ゼオライト=2:1(重量比)で、均一に混合した。そして、これを打錠成形・整粒して、平均粒径1mmの粒状の成形触媒を得た。
【0208】
(LPGの製造)
調製した触媒1gを内径6mmの反応管に充填した後、反応に先立ち、触媒を水素気流中、400℃で3時間還元処理した。
【0209】
触媒を還元処理した後、水素66.7モル%および一酸化炭素33.3モル%からなる原料ガス(H/CO=2(モル基準))を反応温度375℃、反応圧力5.1MPa、ガス空間速度2000hr−1(W/F=9.0g・h/mol)で触媒層に流通させ、LPG合成反応を行なった。
【0210】
反応開始から3時間後、原料ガス(H/CO=2(モル基準))に二酸化炭素含有ガス(H/CO=2(モル基準))を原料ガス:二酸化炭素含有ガス=3:1(流量比)で添加して、引続きLPG合成反応を行なった。触媒層に流通させたガス組成は、水素66.7モル%、一酸化炭素25.0モル%および二酸化炭素8.3モル%(H/CO/CO=8/3/1(モル基準))である。
【0211】
その結果(炭化水素および二酸化炭素の収率と生成した炭化水素の組成分布の経時変化)を図3に示す。なお、生成物の分析はガスクロマトグラフィーにより行なった。
【0212】
図3から明らかなように、原料ガスに二酸化炭素を加えることにより、炭化水素の収率、プロパンおよびブタンの収率をあまり低下させることなく、二酸化炭素の生成を大幅に抑制することができた。
【0213】
〔実施例4〕
(LPGの製造)
反応温度を400℃とした以外は実施例3と同様にしてLPG合成反応を行なった。
【0214】
その結果(炭化水素および二酸化炭素の収率と生成した炭化水素の組成分布の経時変化)を図4に示す。
【0215】
図4から明らかなように、実施例3と同様、原料ガスに二酸化炭素を加えることにより、炭化水素の収率、プロパンおよびブタンの収率をあまり低下させることなく、二酸化炭素の生成を大幅に抑制することができた。
【0216】
〔実施例5〕
(触媒の製造)
メタノール合成触媒成分としては、以下のようにして調製した、Zn−Cr系メタノール合成触媒に1重量%のPdを担持した触媒(「Pd/Zn−Cr」ともいう。)を機械的に粉末にしたもの(平均粒径:0.7μm)を用いた。
【0217】
Zn−Cr系メタノール合成触媒としては、ズードケミー触媒株式会社製、商品名:KMA(平均粒径:約1mm)を用いた。このZn−Cr系メタノール合成触媒の組成は、Zn/Cr=2(原子比)である。
【0218】
まず、Pd(NH(NO水溶液(Pd含有量:4.558重量%)4.4mlにイオン交換水1mlを加えて、Pd含有溶液を調製した。調製したPd含有溶液にZn−Cr系メタノール合成触媒20gを投入し、Pd含有溶液を含浸させた。そして、このPd含有溶液を含浸させたZn−Cr系メタノール合成触媒を120℃の乾燥機中で12時間乾燥した後、さらに450℃で2時間空気焼成し、これを機械的に粉砕して、メタノール合成触媒成分とした。
【0219】
ゼオライト触媒成分としては、市販のSiO/Alモル比が37.1のプロトン型β−ゼオライト(東ソー株式会社製)に1重量%のPdを担持したものを機械的に粉末にしたもの(平均粒径:0.7μm)を用いた。
【0220】
Pdは以下のようにしてβ−ゼオライトに担持させた。
【0221】
0.0825gのPdCl(純度>99wt%)を、40〜50℃で12.5wt%アンモニア水溶液10mlに溶解させた。さらにこの溶液にイオン交換水を150ml加えてイオン交換に用いる溶液を調製した。
【0222】
イオン交換は、10gのβ−ゼオライトを用い、60〜70℃で6時間加熱・攪拌して行った。イオン交換した試料は、塩素イオンがろ液中に観察されなくなるまでろ過、イオン交換水による水洗を繰り返した後、120℃で12時間乾燥、500℃で2時間空気焼成した。
【0223】
調製したメタノール合成触媒成分とゼオライト触媒成分とを、Pd/Zn−Cr:β−ゼオライト=2:1(重量比)で、均一に混合した。そして、これを打錠成形・整粒して、平均粒径1mmの粒状の成形触媒を得た。
【0224】
(LPGの製造)
調製した触媒1gを内径6mmの反応管に充填した後、反応に先立ち、触媒を水素気流中、400℃で3時間還元処理した。
【0225】
触媒を還元処理した後、水素、一酸化炭素および二酸化炭素からなる原料ガスを反応温度400℃、反応圧力5.1MPaで触媒層に流通させ、LPG合成反応を行なった。原料ガスの組成およびW/Fは、反応中、以下のように変化させた。
【0226】
(原料ガス組成およびW/F)
反応開始から2時間まで:
原料ガス組成:H/CO/CO=8/3/1(モル基準);W/F=6.7g・h/mol、
2時間後から4時間まで:
原料ガス組成:H/CO/CO=6/2/1(モル基準);W/F=5.9g・h/mol、
4時間後から反応終了まで:
原料ガス組成:H/CO/CO=10/3/2(モル基準);W/F=5.3g・h/mol。
【0227】
その結果(炭化水素および二酸化炭素の収率と生成した炭化水素の組成分布の経時変化)を図5に示す。
【0228】
図5から明らかなように、原料ガス中の二酸化炭素の含有量が多くなると、副生する二酸化炭素の量が減少する一方で、炭化水素の収率、さらにはプロパンおよびブタンの収率が低下してくる傾向がある。
【産業上の利用可能性】
【0229】
以上のように、本発明によれば、天然ガスなどの含炭素原料あるいは合成ガスから、プロパンおよび/またはブタンの濃度が高いLPGを、より容易に、より経済的に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)含炭素原料から合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
(ii)触媒の存在下、合成ガス製造工程において得られた合成ガスと二酸化炭素とを含み、二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、5〜35モル%である原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する液化石油ガス製造工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法。
【請求項2】
液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である請求項1に記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項3】
(i)含炭素原料から合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
(ii)触媒の存在下、合成ガス製造工程において得られた合成ガスと二酸化炭素とを含み、二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素1モルに対して、0.2〜1モルである原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する液化石油ガス製造工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法。
【請求項4】
液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である請求項3に記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項5】
(i)含炭素原料から合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
(ii)触媒の存在下、合成ガス製造工程において得られた合成ガスと、分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離され、リサイクル工程において低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルされた二酸化炭素含有ガスとを含む原料ガスから、二酸化炭素を含み、含まれる炭化水素の主成分がプロパンまたはブタンである低級パラフィン含有ガスを製造する低級パラフィン製造工程と、
(iii)低級パラフィン製造工程において得られた低級パラフィン含有ガスから二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガスを分離し、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを得る分離工程と、
(iv)分離工程において低級パラフィン含有ガスから分離された二酸化炭素含有ガスの一部または全部を、低級パラフィン製造工程の原料としてリサイクルするリサイクル工程と
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法。
【請求項6】
低級パラフィン製造工程において、
原料ガス中の二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、5〜35モル%である請求項5に記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項7】
低級パラフィン製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である請求項6に記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項8】
液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素1モルに対して、0.2〜1モルである請求項5に記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項9】
低級パラフィン製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である請求項8に記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項10】
(i)触媒の存在下、一酸化炭素と水素と二酸化炭素とを含み、二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、5〜35モル%である原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する液化石油ガス製造工程
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法。
【請求項11】
液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である請求項10に記載の液化石油ガスの製造方法。
【請求項12】
(i)触媒の存在下、一酸化炭素と水素と二酸化炭素とを含み、二酸化炭素の含有量が、一酸化炭素1モルに対して、0.2〜1モルである原料ガスから、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスを製造する液化石油ガス製造工程
を有することを特徴とする、プロパンまたはブタンを主成分とする液化石油ガスの製造方法。
【請求項13】
液化石油ガス製造工程において、
原料ガス中の一酸化炭素の含有量が、一酸化炭素と二酸化炭素と水素との合計量に対して、3〜30モル%である請求項12に記載の液化石油ガスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/037962
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514781(P2005−514781)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015215
【国際出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(503065494)日本ガス合成株式会社 (18)