説明

プロピレン系重合体

【課題】 溶融張力や一軸伸長粘度、二軸伸長粘度におけるひずみ硬化性が十分大きく、成形性に優れるとともに独立気泡率が高く良好な外観を示す成形品が得られる新規プロピレン系重合体を提供する。
【解決手段】本発明にかかる新規なプロピレン系重合体は次の特性を有することを特徴とする。すなわち、以下の式で表される二軸伸長粘度の非線形性のつよさを表すλB値が、0.15以上1.3未満であり、流動の活性化エネルギーを示すEvが40KJ/mol以上90KJ/mol未満である。
λB=(log(ηB2)−log(ηB1))/(ε2−ε1
(ここで、ηB2は二軸伸長ひずみε2が1.2のときの二軸伸長粘度、ηB1は二軸伸長粘度が線形領域から非線形領域に移るときの臨界ひずみε1における二軸伸長粘度である。)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶融張力に優れ、伸長粘度の非線形性が大きい新規プロピレン系重合体(ここでプロピレン系重合体はプロピレン系共重合体を含む)に関する。さらに詳しくは、従来のポリプロピレンの溶融特性が改善されており、成形樹脂の肉厚均一性および形状安定性に優れるとともに、発泡体の場合に独立気泡率が高く成形品の外観が良好なプロピレン系重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来からポリプロピレンの溶融張力を高める目的で、溶融状態下でポリプロピレンに有機過酸化物と架橋助剤を反応させる方法(特開昭59−93711号公報、特開昭61−152754号公報等)や、半結晶性ポリプロピレンに低分解温度過酸化物を酸素存在下で反応させて自由端長鎖分岐を有しゲルを含まないポリプロピレンを製造する方法(特開平2−298536号公報)などが知られている。さらには、メタロセン化合物を用いてプロピレンと少量の多価エンを共重合させる方法(特開平8−92317号公報)や、プロピレンの多段重合による方法(特開平7−252318号公報)も知られている。
【0003】しかしながら従来の方法により得られるポリプロピレン等については溶融張力のある程度の向上は認められるもののいまだ十分なものではない。例えば、有機過酸化物を用いる方法、多価エンをプロピレンと共重合させる重合法においては、得られる重合体に臭気が残留したり、熱安定性が劣るという問題がある。また、通常のプロピレンの(共)重合行程の中に、高分子量のポリオレフィンの製造工程を組み込む多段重合法においては、その高分子量のポリオレフィンを微量生成させるための重合量のコントロールが難しいこと、また分子量の十分に大きいポリオレフィンを生成させるために低い重合温度が必要なこともあり、プロセスの改造を必要とするという問題がある。
【0004】また、二軸伸長粘度を測定する際に潤滑剤が使用されるが、この潤滑剤の粘度が低すぎると溶融体の潤滑不良により、特に大変形下で見かけ上ひずみ硬化のような粘度上昇が起こり、これによって真の二軸伸長粘度値よりも過大に検出されてしまう恐れがある。前記従来技術においては、通常使用されている潤滑剤よりも、粘度が極めて低いシリコンオイルを使用しているため、正しい二軸伸張粘度値についての議論はなされていないというべきである。
【0005】かかる問題点により、従来技術では十分な溶融張力と二軸伸長粘度を有するポリオレフィンを得ることができず、例えば独立気泡率が高く優れた外観を有する成形品を得ることが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術による問題点のない、溶融張力や一軸伸長粘度、二軸伸長粘度におけるひずみ硬化性が十分大きく、成形性に優れるとともに独立気泡率が高く良好な外観を示す成形品が得られる新規プロピレン系重合体を提供することを目的とする。また、本発明ではその製造方法を提供することをも目的とする。ここで、プラスチック溶融体の二軸伸長変形は発泡成形における独立気泡の成長やブロー成形、フィルムブロー成形等のプローアップ時に支配的な変形であり、成形品の肉厚均一性や形状安定性にかかわるため二軸伸長粘度は成形加工性において重要なパラメーターである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、溶融張力や一軸伸長粘度、二軸伸長粘度におけるひずみ硬化性が十分大きく、成形性に優れるとともに独立気泡率が高く良好な外観を示す成形品が得られる新規プロピレン系重合体を得るべく鋭意研究し、以下の特徴を有するプロピレン系重合体がかかるすべての性能を十分有することを見いだし本発明を完成した。ここで、本発明のプロピレン系重合体にはプロピレン系共重合体をも含まれる。本発明にかかる新規なプロピレン系重合体は次の特性を有することを特徴とする。すなわち、以下の式で表される二軸伸長粘度の非線形性の強さを表すλB値が、0.15以上1.3未満であり、流動の活性化エネルギーを示すEvが40KJ/mol以上90KJ/mol未満である。
λB=(log(ηB2)−log(ηB1))/(ε2−ε1
(ここで、ηB2は二軸伸長ひずみε2が1.2のときの二軸伸長粘度、ηB1は二軸伸長粘度が線形領域から非線形領域に移るときの臨界ひずみε1における二軸伸長粘度である。)
【0008】さらに、本発明にかかる新規なプロピレン系重合体は次の特性を有することを特徴とする。すなわち、せん断ひずみγが0.3の条件におけるt=1(sec)の緩和弾性率をG0とし、せん断ひずみγが6の条件におけるt=1(sec)の緩和弾性率をGとするときに、h=log[G(t=1sec)/G0(t=1sec)]
で表されるh値が、好ましくは−0.7以上−0.03未満である。本発明において、せん断ひずみγは、日本レオロジー学会編「講座・レオロジー」第1版第3刷、1996年、(株)高分子刊行会発行のp.12-13を参照することができる。
【0009】また、本発明にかかる新規なプロピレン系重合体は次の特性を有することを特徴とする。すなわち、以下の式で表される一軸伸長粘度の非線形性のつよさを表すλe値が好ましくは0.15以上1.5未満である。
λe=log(ηe2)−log(ηe1)(ここで、一軸伸長ひずみ速度0.1(sec-1)において、ηe2は一軸伸長ひずみが3のときの一軸伸長粘度、ηe1は一軸伸長ひずみが2のときの一軸伸長粘度を示す。)
【0010】また、本発明にかかる新規なプロピレン系重合体は次の特性を有することを特徴とする。すなわち、動的粘弾性測定において、次式で与えられるα値が0.05以上1.0未満である。
α=log(η*2)−log(η*1)(ここで、η*2は角周波数ω=0.01(rad/s)における複素粘度、η*1は角周波数ω=0.1(rad/s)における複素粘度を示す。)
さらには、本発明にかかる新規なプロピレン系重合体は次の化学的構造を有することを特徴とする。すなわち、プロピレンと少なくとも1つ以上のプロピレン以外の他のオレフィン、および/または、少なくとも1つ以上のα,ω−ジエンとの共重合体である。本発明にはさらに、かかる化学構造を有し、かつ上で説明した特性を有する新規なプロピレン系重合体の製造方法をも含むものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について実施の形態に即して詳細に説明する。
(本発明のプロピレン系重合体の特性)本発明のプロピレン系重合体は、二軸伸長粘度の非線形性のつよさを表すλB値が好ましくは0.15以上1.3未満、より好ましくは0.25以上1.15未満、特に好ましくは0.35以上0.85未満、流動の活性化エネルギーEvが40KJ/mol以上90KJ/mol未満、好ましくは、50KJ/mol以上80KJ/mol未満、特に好ましくは、55KJ/mol以上70KJ/mol未満、である。
【0012】ここで、二軸伸長硬化率λBは、長時間緩和成分が存在することにより発現する二軸伸長粘度の非線形性の強さの指標であり、線形粘度に対する非線形粘度の比から次式のように表されるものである。
λB=(log(ηB2)−log(ηB1))/(ε2−ε1
(式中ηB2は二軸伸長ひずみε2が1.2のときの二軸伸長粘度、ηB1は二軸伸長粘度が線形領域から非線形領域に移るときの臨界ひずみε1における二軸伸長粘度である。)
【0013】長鎖分岐の存在は、流動の活性化エネルギーEv値によって確認することができる。動的粘弾性測定の温度依存性から得られる移動因子の温度に対するアレニウス型プロットからEvが求められ、このEv値は長鎖分岐の存在によって直鎖状の重合体組成物のそれより大きくなる(S.Kurzbeck et.al,Journal of Rheology,Vol.43,359(1999)を参照)。
【0014】一般に、単分散線状高分子ではせん断を与えたとき、小さなせん断ひずみγに対する緩和弾性率G(t)は時間のみの関数として表され、大きなせん断ひずみγではこの線形領域に対してレベルは低下し時間とひずみの関数としてG(t、γ)と表される。せん断ひずみγ量を変えて測定されるlog(G(t,γ))vs.log(t)曲線は、縦軸方向に移動させることにより互いに重ね合わせることができる。h値は分子の形態に強く影響される(Osaki, Rheologica Acta, 32, 429(1993)参照)。本発明のプロピレン系重合体は、せん断ひずみγが0.3の条件におけるt=1(sec)の緩和弾性率をG0とし、せん断ひずみγが6の条件におけるt=1(sec)の緩和弾性率をGとするときに、h=log[G(t=1sec)/G0(t=1sec)]
で表されるh値が−0.7以上−0.03未満、より好ましくは−0.6以上−0.1未満、特に好ましくは−0.5以上−0.15未満である関係を有する、と表すことができる。h値が−0.7より小さいと分子鎖のからみ合いが不十分であり成形加工時の均肉性や耐ドローダウン性に劣り、−0.03を越えるとゲルの発生が顕著となる。
【0015】λe値はプロピレン系重合体組成物が一軸方向に伸長変形されたときに、分子鎖のからみ合いによって生じるひずみ硬化性の強さを表す指標であり以下の式で表される。
λe=log(ηe2)−log(ηe1)(すべて180℃の条件で一軸伸長ひずみ速度0.1(sec-1)において、ηe2は一軸伸長ひずみが3のときの一軸伸長粘度、ηe1は一軸伸長ひずみが2のときの一軸伸長粘度を示す。)
λeが0.15未満であると十分なひずみ硬化性が発現しないために成形樹脂の均肉性および形状安定性に劣り、また1.5以上であるとゲルの発生が顕著になり成形品の外観が劣る。
【0016】本発明のプロピレン系重合体は、動的粘弾性測定において、α値が0.05以上1.0未満、好ましくは、0.1以上、0.8未満、さらに好ましくは、0.15以上0.5未満である。ここで、αは、長時間の緩和成分を示す指標であり、以下の式で表される。
α=log(η*2)−log(η*1)(η*2は角周波数ω=0.01(rad/s)における複素粘度、η*1は角周波数ω=0.1(rad/s)における複素粘度を示す。)
上記においてαが、0.05未満であると、ひずみ硬化性が弱く成形品の形状保持性の面で好ましくなく、1.0以上であるとゲルの発生などの面で好ましくない。また、本発明のプロピレン系重合体の固有粘度〔η〕の値は、好ましくは、0.2〜10dl/g、より好ましくは、0.5〜5dl/g、さらに好ましくは、0.7〜3dl/g、特に好ましくは、1〜3dl/gである。
【0017】さらには、本発明のプロピレン系重合体は、JIS K7210の表1の条件14に準拠して230℃で測定したMFR(単位:g/10分)が、好ましくは、0.001〜10,000、より好ましくは、0.1〜2,000、さらに好ましくは、0.5〜500、特に好ましくは、0.5〜100である。
【0018】(本発明のプロピレン系重合体の構造)本発明のプロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体もしくはプロピレン単位を50重量%以上、好ましくは、60重量%以上、さらに好ましくは、70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは、90重量%含有するプロピレン系共重合体である。
【0019】さらに、本発明のプロピレン系共重合体は、プロピレンと少なくとも1つ以上のプロピレン以外の他のオレフィン、および/または、少なくとも1つ以上のα,ω−ジエンとの共重合体である。ここで、プロピレン以外の他のオレフィンとは、炭素数2〜20のオレフィン、より具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンである。
【0020】また、α,ω−ジエンは、α位とω位にビニル基を有するジエン化合物であり、直鎖構造でも分岐した構造でもよく、酸素、硫黄、硼素等のヘテロ原子や原子団を含んでいてもよい。具体的には、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、ジビニルベンゼン等が例示され、好ましくは、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、最も好ましくは1,9−デカジエンが用いられる。本発明のプロピレン系共重合体は、好ましくは、α,ω−ジエンを0.00001重量%〜2重量%であり、より好ましくは、0.001重量%〜0.5重量%、さらに好ましくは、0.001重量%〜0.1重量%、特に好ましくは、0.001〜0.05重量%である。
【0021】ここで本発明のプロピレン系重合体中のα,ω−ジエンの含有量は、13C−NMR測定や、重合時に供給したジエンモノマーの量と重合終了後に回収した未反応のジエンモノマーの量との差から計算によって容易に求めることができる(特開平7−138327号公報および特開平8−92317号公報)。
【0022】(本発明のプロピレン系重合体の製造)本発明のプロピレン系重合体の製造に用いる触媒は、特に限定されないが、好ましくは、下記(1)〜(3)のいずれかに記載のメタロセン触媒系が用いられる。
【0023】(1)メタロセン化合物(以降、「(A)成分」と言う場合がある)および活性化化合物(以降、「(B)成分」と言う場合がある)、および所望により使用する有機アルミニウム化合物(以降、「(D)成分」と言う場合がある)とからなるオレフィン重合用触媒(以降、「メタロセン均一系触媒」と言う場合がある)。
【0024】(2)(A)成分、(B)成分、微粒子状担体(以降、「(C)成分」という場合がある)、および所望により使用する(D)成分、を用いて製造されることを特徴とするメタロセン担持型触媒(以降、「メタロセン担持型触媒I」と言う場合がある。)と、有機アルミニウム化合物(以降、(D1)成分と言う場合がある)からなるオレフィン重合用触媒。
【0025】(3)(A)成分、特定のイオン交換性層状化合物または無機珪酸塩(以降、(E)成分と言う場合がある)、および、所望により使用する(D)成分、を用いて製造されることを特徴とするメタロセン担持型触媒(以降、「メタロセン担持型触媒II」と言う場合がある)と、(D1)成分からなるオレフィン重合用触媒。
【0026】上記の(A)成分は、下記一般式(A−1)、もしくは、(A−2)で表されるメタロセン化合物である。
Q(C54-m1m)(C54-n2n)MXY (A−1)
尚、式(A−1)中、(C54-m1m)および(C54-n2n)はシクロペンタジエニル基を示し、C54-m及びC54-nは、シクロペンタジエニル環を示す。mは1〜3の整数を示すが、好ましいのは3の整数である。nは、mとは独立して、2もしくは3の整数を示すが、好ましいのは3の整数である。
【0027】R1およびR2は、それぞれ、C54-mおよびC54-nに結合する結合基であり、互いに独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、もしくはヘテロ芳香族基を示す。R1mのそれぞれ、及びR2nのそれぞれは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0028】炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、およびフェニル基が例示でき、好ましいのは、メチル基、t−ブチル基、フェニル基である。
【0029】炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基としては、トリメチルシリル基が好ましく例示できる。
【0030】ヘテロ芳香族基は、ヘテロ芳香族環と、所望により、該環に結合する少なくとも1つの結合基を有している。
【0031】ヘテロ芳香族環は、単環もしくは多環構造を有するものが使用できるが、好ましくは単環もしくは2環のヘテロ芳香族環であり、特に好ましくは単環のヘテロ芳香族環である。
【0032】また、ヘテロ芳香族環が有するヘテロ原子は特に限定されない。好ましいのは、ヘテロ原子として、酸素原子もしくはイオウ原子を含むヘテロ芳香族環であり、酸素原子を含むヘテロ芳香族環が特に好ましい。具体的に好ましい芳香族環は、フリル環、チエニル環、ベンゾフリル環もしくはベンゾチエニル環であり、更に好ましいのは、2−フリル環、2−チエニル環、2−ベンゾフリル環もしくは2−ベンゾチエニル環であり、特に好ましいのは、2−フリル環である。
【0033】所望により、ヘテロ芳香族環に結合してもよい結合基は、炭素数1〜20の炭化水素基もしくはケイ素含有炭化水素基である。炭素数1〜20の炭化水素基及びケイ素含有炭化水素基としては、C54-mおよびC54-nに結合する結合基として前記したものと同じ炭化水素基及びケイ素含有炭化水素基を挙げることができる。
【0034】ヘテロ芳香族基は、ヘテロ芳香族環と、該環に結合する少なくとも1つの結合基を有するのが好ましい。具体的には、ヘテロ芳香族環が、フリル環、チエニル環、ベンゾフリル環もしくはベンゾチエニル環であり、該環に結合する少なくとも1つの結合基が、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基もしくはトリメチルシリル基であるヘテロ芳香族基を例示できる。更に、好ましいのは、ヘテロ芳香族環が、2−フリル環、2−チエニル環、2−ベンゾフリル環もしくは2−ベンゾチエニル環であり、該環に結合する少なくとも1つの結合基が、メチル基、t−ブチル基、フェニル基もしくはトリメチルシリル基であるヘテロ芳香族基である。具体的には、2−(5−メチル)−フリル基、2−(5−t−ブチル)−フリル基、2−(5−トリメチルシリル)−フリル基、2−(5−メチル)−チエニル基、2−(5−t−ブチル)−チエニル基、2−(5−トリメチルシリル)−チエニル基、2−(4,5−ジメチル)−フリル基、2−(4,5−ジメチル)−チエニル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基を例示することができる。
【0035】R2nのうち一対のR2は互いに結合し、単環もしくは多環を形成している。環の数は特に制限されないが、好ましくは1〜5であり、特に好ましくは1もしくは2である。該1対のR2が互いに結合して形成する少なくとも1つの環(すなわち単環もしくは多環)がシクロペンタジエニル環C54-nと共に構成する環構造として好ましいのは、インデニル環、テトラヒドロインデニル環、ベンゾインデニル環、フルオレニル環、ジヒドロアズレニル環もしくはシクロペンタフェナンスレン環であり、更に好ましいのは、インデニル環、ベンゾインデニル環、ジヒドロアズレニル環である。
【0036】mが2もしくは3である場合、R1mのうち1対のR1は互いに結合し、前記一対のR2が形成する環とは独立して、少なくとも1つの環(すなわち単環もしくは多環)を形成していてもよい。該1対のR1が互いに結合して形成する少なくとも1つの環がシクロペンタジエニル環C54-mと共に構成する環構造として好ましいのは、インデニル環、テトラヒドロインデニル環、ベンゾインデニル環、フルオレニル環、ジヒドロアズレニル環もしくはシクロペンタフェナンスレン環であり、更に好ましいのは、インデニル環、ベンゾインデニル環、ジヒドロアズレニル環である。
【0037】前記一対のR1が形成する少なくとも1つの環及び前記一対のR2が形成する少なくとも1つの環は、同一でも異なっていてもよい。一対のR1が形成する少なくとも1つの環とC54-mとで構成される環構造が、インデニル環、ベンゾインデニル環、もしくはジヒドロアズレニル環であり、一対のR2が形成する少なくとも1つの環とC54-nとで構成される環構造が、インデニル環、ベンゾインデニル環、もしくはジヒドロアズレニル環であるのが好ましい。更に好ましいのは、一対のR1が形成する少なくとも1つの環とC54-mとで構成される環構造、及び、一対のR2が形成する少なくとも1つの環とC54-nとで構成される環構造が、共に、インデニル環、ベンゾインデニル環、もしくはジヒドロアズレニル環であるメタロセン化合物である。
【0038】前記一対のR1が形成する少なくとも1つの環及び前記一対のR2が形成する少なくとも1つの環は、独立して、それぞれの環に結合する少なくとも1つの結合基を有していても良い。それぞれの環に結合する少なくとも1つの結合基は、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基もしくはヘテロ芳香族基である。
【0039】炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、およびフェニル基が例示でき、好ましいのは、メチル基、t−ブチル基、およびフェニル基である。
【0040】炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基としては、トリメチルシリル基が好ましく例示できる。
【0041】ヘテロ芳香族基は、ヘテロ芳香族環と、所望により、該環に結合する少なくとも1つの結合基を有している。
【0042】ヘテロ芳香族環は、単環もしくは多環構造を有するものが使用できるが、好ましくは単環もしくは2環のヘテロ芳香族環であり、特に好ましくは単環のヘテロ芳香族環である。
【0043】また、ヘテロ芳香族環が有するヘテロ原子は特に限定されない。好ましいのは、ヘテロ原子として、酸素原子もしくはイオウ原子を含むヘテロ芳香族環である。特に好ましいのは、ヘテロ原子として酸素原子を含むヘテロ芳香族環である。より具体的には、好ましいヘテロ芳香族環として、フリル環、チエニル環、ベンゾフリル環もしくはベンゾチエニル環が例示でき、更に好ましいのは、2−フリル環、2−チエニル環、2−ベンゾフリル環もしくは2−ベンゾチエニル環であり、特に好ましいのは、2−フリル環である。
【0044】所望により、ヘテロ芳香族環に結合してもよい結合基は、炭素数1〜20の炭化水素基もしくはケイ素含有炭化水素基である。炭素数1〜20の炭化水素基及びケイ素含有炭化水素基としては、C54-mおよびC54-nに結合する結合基として前に例示したものと同じものを挙げることができる。
【0045】ヘテロ芳香族基は、ヘテロ芳香族環と、該環に結合する少なくとも1つの結合基を有するのが好ましい。具体的には、ヘテロ芳香族環が、フリル環、チエニル環、ベンゾフリル環もしくはベンゾチエニル環であり、該環に結合する少なくとも1つの結合基が、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基もしくはトリメチルシリル基であるヘテロ芳香族基を例示できる。更に、好ましいのは、ヘテロ芳香族環が、2−フリル環、2−チエニル環、2−ベンゾフリル環もしくは2−ベンゾチエニル環であり、該環に結合する少なくとも1つの結合基が、メチル基、t−ブチル基、フェニル基もしくはトリメチルシリル基であるヘテロ芳香族基であり、具体的には、2−(5−メチル)−フリル基、2−(5−t−ブチル)−フリル基、2−(5−トリメチルシリル)−フリル基、2−(5−メチル)−チエニル基、2−(5−t−ブチル)−チエニル基、2−(5−トリメチルシリル)−チエニル基、2−(4,5−ジメチル)−フリル基、2−(4,5−ジメチル)−チエニル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基を例示することができる。
【0046】前記したメタロセン化合物は、R1m及びR2nで示される結合基群、ならびに、前記一対のR1が形成する少なくとも1つの環および前記一対のR2が形成する少なくとも1つの環に結合する結合基もしくは結合基群のうち少なくとも1つの結合基が、ヘテロ芳香族環と、該環に結合する少なくとも1つの結合基を有する前述したヘテロ芳香族基である。
【0047】Qは、(C54-m1m)と(C54-n2n)を架橋するいずれも2価の、炭化水素基、非置換シリレン基、または炭化水素置換シリレン基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基を例示できるが、好ましくはジメチルシリレン基である。
【0048】Mはチタン原子、ジルコニウム原子もしくはハフニウム原子を示す。
【0049】XおよびYは、独立して、水素原子、ハロゲン原子もしくは炭化水素基を示す。
【0050】前記したメタロンセン化合物は、nが3の整数であり、C54-n2nにおいて、1対のR2が互いに結合して少なくとも1つの環(単環もしくは多環)を形成しており、該1対のR2以外のR2が、ヘテロ芳香族環と該環に結合する少なくとも1つの結合基を有する前述したヘテロ芳香族基であるのが好ましい。一対のR2が形成する少なくとも1つの環とC54-nとで構成される環構造として好ましいのは、インデニル環、テトラヒドロインデニル環、ベンゾインデニル環、ジヒドロアズレニル環もしくはシクロペンタフェナンスレン環であり、更に好ましいのは、インデニル環、ベンゾインデニル環、ジヒドロアズレニル環である。
【0051】また、前記したメタロセン化合物は、nが3の整数であり、C54-n2nにおいて、1対のR2が互いに結合して少なくとも1つの環を形成しており、該1対のR2以外のR2が、シクロペンタジエニル環C54-nの2−位の位置に結合しているのが好ましい。一対のR2が形成する少なくとも1つの環とC54-nとで構成される環構造として好ましいのは、インデニル環、テトラヒドロインデニル環、ベンゾインデニル環、ジヒドロアズレニル環もしくはシクロペンタフェナンスレン環であり、更に好ましいのは、インデニル環、ベンゾインデニル環、ジヒドロアズレニル環である。
【0052】該1対のR2以外のR2は、ヘテロ芳香族環と該環に結合する少なくとも1つの結合基を有する前述のヘテロ芳香族基であるのが好ましい。
【0053】また、前記したメタロセン化合物は、更に、R1およびR2の相違、及びシクロペンタジエニル環へのそれらの結合位置の相違のうち、少なくともいずれかによって、Mを含む対称面が存在しない構造を形成していることが好ましい。
【0054】また、前記したメタロセン化合物は、更に、R1m及びR2nで示される結合基群、ならびに、前記一対のR1が形成する環および前記一対のR2が形成する環に結合する結合基または結合基群のうち少なくとも1つの結合基が、ヘテロ芳香族環と、該ヘテロ芳香族環に結合する炭素数1〜20の炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を有するヘテロ芳香族基であって、該ヘテロ芳香族環が、2?フリル環、2−チエニル環、2−ベンゾフリル環、または、2−ベンゾチエニル環であるメタロセン化合物が好ましい。
【0055】また、前記したメタロセン化合物は、更に、R1m及びR2nで示される結合基群、ならびに、前記一対のR1が形成する環および前記一対のR2が形成する環に結合する結合基または結合基群のうち、少なくとも1つの結合基が、2−(5−メチル)−フリル基、2−(5−t−ブチル)−フリル基、2−(5−トリメチルシリル)−フリル基、2−(5−メチル)−チエニル基、2−(5−t−ブチル)−チエニル基、2−(5−トリメチルシリル)−チエニル基、2−(4,5−ジメチル)−フリル基、2−(4,5−ジメチル)−チエニル基、2−ベンゾフリル基、または、2−ベンゾチエニル基であるメタロセン化合物が好ましい。
【0056】前記したメタロセン化合物の、非限定的な例としては、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、
【0057】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−チエニル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−チエニル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−チエニル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−チエニル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、
【0058】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−フリル)−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、
【0059】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−チエニル)−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−チエニル)−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−チエニル)−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−チエニル)−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、
【0060】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、
【0061】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−チエニル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−チエニル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−チエニル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−チエニル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、
【0062】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−フリル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、
【0063】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−チエニル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−チエニル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−チエニル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−チエニル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド等が例示できる。
【0064】このうち、更に好ましいメタロセン化合物は、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−チエニル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−チエニル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−チエニル)−インデニル)ジルコニウムジクロライド、
【0065】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−チエニル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−チエニル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−チエニル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、
【0066】ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−チエニル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−チエニル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライド、または、ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−チエニル)−4−フェニル−ジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロライドである。
【0067】次ぎに、本発明のプロピレン系重合体を好適に製造可能なオレフィン重合用触媒を構成するメタロセン化合物(A−2)について説明する。メタロセン化合物(A−2)は、下記のような一般式で表される。
【0068】次に、本発明のプロピレン系重合体を好適に製造可能なオレフィン重合用触媒を構成するメタロセン化合物(A−2)について説明する。メタロセン化合物(A−2)は、下記のような一般式で表される。
Q(C54-m1m)(C54-n2n)MXY (A−2)
【0069】(式中、(C54-m1m)および(C54-n2n)は、置換シクロペンタジエニル基を示し、mおよびnは1〜3の整数である。R1およびR2は、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、またはシクロペンタジエニル環上の2個の炭素原子と結合して、炭化水素で置換されていてもよい1つ以上の炭化水素環を形成している炭化水素基であって、同一または異なっていてもよいが、シクロペンタジエニル環上におけるR1およびR2の位置および種類は、Mを含む対称面が存在しない位置をとるものとする。また、少なくとも片方のシクロペンタジエニル環にはQに結合している炭素に隣接する炭素の少なくとも片方にはR1若しくはR2が存在するものとする。Qは(C54-m1m)および(C54-n2n)を架橋するいずれも2価の、炭化水素基、非置換シリレン基、または炭化水素置換シリレン基である。Mはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムである遷移金属を示し、XおよびYは同一または異なっていてもよく水素、ハロゲンまたは炭化水素基を示す)。
【0070】上記一般式(A−2)で表される架橋メタロセン化合物の具体的な例としては、たとえば、ジメチルシリレン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、rac−エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、rac−エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、
【0071】rac−ジメチルシリレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、
【0072】rac−エチレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ハフニウムジクロリド、
【0073】rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ハフニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ハフニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0074】rac−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、
【0075】ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルゲルミル(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミル(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、
【0076】ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルゲルミル(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミル(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、
【0077】ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
【0078】上記の架橋メタロセン化合物のうち、特に好ましい化合物は、ジメチルシリレン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0079】rac−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルゲルミルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルゲルミル(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミル(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
【0080】ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルゲルミル(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミル(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、
【0081】ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルジヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドである。
【0082】また、最も好ましい架橋メタロセン化合物は、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミル(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ならびにrac−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドである。なお、上記のラセミ化合物に対応したメソ化合物も5モル%以下の少量であれば含有していてもよい。
【0083】上記の、(B)成分としては、有機アルミニウムオキシ化合物、もしくは(A)成分と反応してイオン対を形成する化合物が用いられる。
【0084】該有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記の一般式(2)もしくは(3)で表されるアルミノキサンが用いられる。
【0085】
【化1】


【0086】
【化2】


【0087】式中、R3は炭素数が1〜6の炭化水素基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、アリル基、2−メチルアリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、およびアリール基等が挙げられる。これらのうち、炭素数が1〜4の炭化水素基が好ましく。特に好ましいのは炭化水素基がアルキル基である場合である。各R3は同一でも異なっていてもよい。qは4〜30の整数であり、好ましくは6〜30、特に好ましくは8〜30の整数である。
【0088】上記のアルミノキサンは公知の様々な条件下に調製することが可能である。具体的には、以下の方法を例示できる。すなわち、・トルエン、エーテル等の有機溶剤中で、トリアルキルアルミニウムと水とを直接反応させる方法、・トリアルキルアルミニウムと、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等の結晶水を有する塩類とを反応させる方法、・トリアルキルアルミニウムと、シリカゲル等に含浸させた水分とを反応させる方法、・トルエン、エーテル等の有機溶剤中で、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとの混合物を、水と直接反応させる方法、・トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとの混合物を、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等の結晶水を有する塩類と反応させる方法、・シリカゲル等含浸させた水分と、トリイソブチルアルミニウムとを反応させた後、トリメチルアルミニウムを更に反応させる方法、を例示できる。
【0089】(A)成分と反応してイオン対を形成する化合物としては、特表平1−501950号公報、特表平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207704号公報、US547718号公報、などに記載されたルイス酸、イオン性化合物およびボラン化合物、カルボラン化合物を挙げることができる。
【0090】ルイス酸としては、ホウ素原子を含有するルイス酸が好適で、非限定的な具体例としては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−フルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン等が挙げられる。これらのうちではトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンが特に好ましい。
【0091】イオン性化合物は、カチオン性化合物とアニオン性化合物とからなる塩である。アニオン性化合物はメタロセン化合物と反応することに該メタロセン化合物をカチオン化し、イオン対を形成することにより遷移金属カチオン種を安定化させる働きがある。そのようなアニオン性化合物としては、有機ホウ素化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオンなどがあり、比較的嵩高で、遷移金属カチオンを安定化させるものが好ましい。カチオン性化合物としては、金属カチオン、有機金属カチオン、カルボニウムカチオン、トリピウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが挙げられる。具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアンモニウムカチオン、フェロセニウムカチオンなどである。
【0092】これらのうち、アニオン性化合物としてホウ素化合物を含有するイオン性化合物が好ましい。具体的には、トリアルキル置換アンモニウム塩として、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウム(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウム(o−トリル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0093】N,N−ジアルキルアニリニウム塩として、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム(フェニル)ホウ素などが挙げられ、ジアルキルアンモニウム塩としては、例えば、ジ(n−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが挙げられ、トリアリールホスフォニウム塩、例えば、トリメチルホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0094】本発明では、ホウ素原子を含有するイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートも挙げることができる。
【0095】上記の活性化化合物の中でも、特に、アルミノキサンが好ましく用いられる。
【0096】また、上記のメタロセン均一系触媒Iに所望により用いられる(D)成分は、一般式 AlR4s5t3-(s+t)で表される化合物である。
【0097】式中、R4およびR5は、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基等の炭化水素基、アルコキシ基、フッ素原子、メチル基、トリフルオロフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、sおよびtは、0<s+t≦3を満たす任意の整数を示す。
【0098】上記一般式で表される(D)成分として、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミノウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド等およびそれらの2種以上の混合物が挙げられる。好ましいのは、トリアルキルアルミニウムである。
【0099】また、本発明のメタロセン担持型触媒Iの製造に用いられる(C)成分としては、無機担体あるいは有機担体であって、粒子径が1〜500μm、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは、10〜150μmの顆粒状ないしは球状の微粒子固体状の無機微粒子担体もしくは有機微粒子担体が使用される。
【0100】これらの無機微粒子担体は、比表面積が50〜1,000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜2.5m3/gの範囲にあることが好ましい。
【0101】該無機微粒子担体としては、金属酸化物、たとえばSiO2、Al23、MgO、TiO2、ZnO、それらの混合物またはそれらの複合酸化物が好ましく、主成分としてSiO2もしくはAl23を含有する担体が特に好ましい。より具体的な無機化合物として、SiO2、Al23、MgO、SiO2−Al23、SiO2−MgO、SiO2−TiO2、SiO2−Al23−MgO等が挙げられ、特にSiO2が好ましい。
【0102】上記無機微粒子担体は、使用に先立って、通常、100〜1,000℃、好ましくは300〜900℃、特に好ましくは400〜900℃で焼成したものを使用する。焼成後の無機微粒子担体の表面吸着水量は0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であり、また表面水酸基含量は1.0重量%以上、好ましくは1.5〜4.0重量%、さらに好ましくは2.0〜3.5重量%の範囲である。また、これらの無機微粒子担体は、使用に先だって、予め有機アルミニウム化合物および/またはハロゲン含有ケイ素化合物との接触処理が施されていてもよい。
【0103】さらに微粒子有機担体としては、微粒子有機重合体、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィンの微粒子重合体、ポリスチレンなどの微粒子重合体などを例示することができる。
【0104】前記メタロセン担持型触媒IIの製造に用いられる(E)成分としては、珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物(単にイオン交換性層状化合物と略記する)又は無機珪酸塩が例示できる。
【0105】上記のイオン交換性層状化合物としては、六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物が挙げられ、その具体例としては、α−Zr(HAsO4)22O、α−Zr(HPO4)2、α−Zr(KPO4)23H2O、α−Ti(HPO4)2、α−Ti(HAsO4)22O、α−Sn(HPO4)22O、γ−Zr(HPO4)2、γ−Ti(HPO4)2、γ−Ti(NH4PO4)22O等の多価金属の結晶性酸性塩が挙げられる。
【0106】上記のイオン交換性層状化合物は、必要に応じて塩類処理および/または酸処理を行って使用してもよい。塩類処理も酸処理も施されていない状態の、珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、含有するイオンの交換が可能である。
【0107】上記の無機珪酸塩としては、粘土、粘土鉱物、ゼオライト、珪藻土などが挙げられる。これらは、合成品を使用してもよいし、天然に産出する鉱物を使用してもよい。粘土および粘土鉱物の具体例としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ソーコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群などが挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。また、人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。
【0108】上記の無機珪酸塩の中では、カオリン族、ハロサイト族、蛇紋石族、スメクタイト、バーミキュライト鉱物、雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが好ましく、スメクタイト、バーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが更に好ましい。これらは、特に処理を行うことなくそのまま使用してもよいし、ボールミル、篩い分け等の処理を行った後に使用してもよい。また、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0109】上記の無機珪酸塩は、必要に応じ、塩類処理および/または酸処理により、固体の酸強度を変えることが出来る。また、塩類処理においては、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成することにより、表面積や層間距離を変えることが出来る。すなわち、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと置換することにより、層間が拡大した状態の層状物質を得ることが出来る。
【0110】(E)成分は、未処理のまま使用してもよいが、含有される交換可能な金属陽イオンを次に示す塩類および/または酸より解離した陽イオンとイオン交換することが好ましい。
【0111】上記のイオン交換に使用する塩類は、1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンを含有する化合物であり、好ましくは、1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸および有機酸から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子または原子団よりより誘導される陰イオンとから成る化合物であり、更に好ましくは、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、Cl、Br、I、F、PO4、SO4、NO3、CO3、C24、ClO3、ClO4、OOCCH3、CH3COCHCOCH3、OCl2、O(NO3)2、O(ClO42、O(SO4)、OH、O2Cl2、OCl3、OOCH、OOCCH2CH3、C244、C657から成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物である。また、これら塩類は2種以上を同時に使用してもよい。
【0112】上記のイオン交換に使用する酸は、好ましくは、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸から選択され、これらは、2種以上を同時に使用してもよい。塩類処理と酸処理を組み合わせる方法としては、塩類処理を行った後に酸処理を行う方法、酸処理を行った後に塩類処理を行う方法、塩類処理と酸処理を同時に行う方法、塩類処理を行った後に塩類処理と酸処理を同時に行う方法などがある。なお、酸処理は、イオン交換や表面の不純物を取り除く効果の他、結晶構造のAl、Fe、Mg、Li等の陽イオンの一部を溶出させる効果がある。
【0113】塩類および酸による処理条件は特に制限されない。しかしながら、通常、塩類および酸濃度は0.1〜30重量%、処理温度は室温から使用溶媒の沸点までの温度範囲、処理時間は5分から24時間の条件を選択し、被処理化合物の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は一般的には水溶液で使用される。
【0114】上記の塩類処理および/または酸処理を行う場合、処理前、処理間、処理後に粉砕や造粒などで形状制御を行ってもよい。また、アルカリ処理、有機化合物処理、有機金属処理などの他の化学処理を併用してもよい。この様にして得られる(E)成分としては、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上、特には0.3〜5cc/gであることが好ましい。斯かる(E)成分は、水溶液中で処理した場合、吸着水および層間水を含む。ここで、吸着水とは、イオン交換性層状化合物または無機珪酸塩の表面あるいは結晶破面に吸着された水であり、層間水とは、結晶の層間に存在する水である。
【0115】(E)成分は、上記の様な吸着水および層間水を除去してから使用することが好ましい。脱水方法は、特に制限されないが、加熱脱水、気体流通下の加熱脱水、減圧下の加熱脱水および有機溶媒との共沸脱水などの方法が使用される。加熱温度は、吸着水および層間水が残存しない様な温度範囲とされ、通常100℃以上、好ましくは150℃以上とされるが、構造破壊を生じる様な高温条件は好ましくない。加熱時間は、0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、脱水乾燥した後の(E)成分の重量減量は、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間吸引した場合の値として3重量%以下であることが好ましい。本発明においては、重量減量が3重量%以下に調整された(E)成分を使用する場合、(A)成分及び(D)成分と接触する際にも、同様の重量減量の状態が保持される様に取り扱うことが好ましい。
【0116】次に、メタロセン担持型触媒IおよびIIの製造方法について説明する。
【0117】メタロセン担持型触媒Iは、(C)成分の存在のもとに、(A)成分と(B)成分、および所望により使用する(D)成分を反応させることによって得られる。(A)成分と(B)成分を(C)成分に加える順序は任意に変えることができる。例えば、適当な炭化水素溶媒に溶解させた(A)成分を最初に(C)成分に加え、その後で(B)成分を加えることができる。また、(B)成分と(A)成分を予め反応させたものを同時に(C)成分に加えることができる。そして、(B)成分を最初に(C)成分に加え、その後で(A)成分を加えることもできる。反応の際の温度は、通常−20ないし100℃、好ましくは0ないし100℃であり、反応に要する時間は、通常0.1分以上、好ましくは1分ないし200分の範囲である。
【0118】また、上記のようにして得られたメタロセン担持触媒は、必要により少量のオレフィンで予備重合してから使用できる。予備重合に用いるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これら2種以上のオレフィンの混合物であってもよい。
【0119】本発明のプロピレン系重合体の製造に好適に用いられるメタロセン担持型触媒Iとしては、下記の(a)工程〜(c)工程を順次実施して調製されるメタロセン担持型触媒もしくは下記(a)工程〜(d)工程を順次実施して得られる予備活性化メタロセン担持型触媒を挙げることができる。
(a) メタロセン化合物(A)とアルミノキサンとを不活性溶媒中で反応させてメタロセン触媒を得る工程、(b) 上記(a)工程で得たメタロセン触媒と無機微粒子担体とを、不活性溶媒の存在下、85〜150℃の温度で接触させてメタロセン触媒を無機微粒子担体に担持させ、粗製メタロセン担持型触媒を得る工程、(c) 上記(b)工程で得た粗製メタロセン担持型触媒を含むスラリーを−50〜50℃の温度で脂肪族炭化水素を用いて少なくとも2回洗浄して精製したメタロセン担持型触媒を得る工程、(d) 上記(c)工程で得たメタロセン担持型触媒とオレフィンとを接触させてオレフィンを予備重合させ、該メタロセン担持型触媒1kg当たり0.01〜100kgのオレフィン予備重合体をさらに該メタロセン担持型触媒に担持させて予備活性化メタロセン担持型触媒を得る工程。
【0120】(a)工程において、前記メタロセン化合物(A)1モルに対してアルミニウム原子として10〜1,000モル、好ましくは20〜500モルのアルミノキサンを、不活性溶媒中において−50〜100℃、好ましくは0〜50℃の温度条件下に、1分〜10時間、好ましくは3分〜5時間反応させ、メタロセン化合物(A)とアルミノキサンとを反応させて、メタロセン触媒を生成させる。
【0121】不活性溶媒の使用は、反応を均一かつ効率的に進める上で好ましい。該不活性溶媒の使用量には特に制限はないが、通常、メタロセン化合物(A)1モルに対して、10〜10,000リットル、好ましくは10〜1,000リットル程度である。
【0122】上記の反応に用いる不活性溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素、ブタン、テトラメチルブタン、ペンタン、エチルペンタン、トリメチルペンタン、ヘキサン、メチルヘキサン、エチルヘキサン、ジメチルヘキサン、ヘプタン、メチルヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素、上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素をハロゲンで置換したハロゲン化炭化水素およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0123】また、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類を使用することもできる。好ましい不活性溶媒は芳香族炭化水素であり、また、市販のアルミノキサン溶液の溶媒をそのまま、もしくはそれにさらにその他の芳香族炭化水素などを追加して反応に使用してもよい。
【0124】上記(a)工程に続く(b)工程において、(a)工程で得られたメタロセン触媒と無機微粒子担体とを、(a)工程において反応溶媒として使用した不活性溶媒の存在下に85〜150℃の温度で接触させることにより、前記メタロセン触媒が無機微粒子担体上に担持された固体生成物としての粗製メタロセン担持型触媒が得られる。この接触反応においては、必要に応じて不活性溶媒を追加使用することができる。
【0125】粗製メタロセン担持型触媒中の、メタロセン触媒と、無機微粒子担体との比率は、メタロセン触媒としてのメタロセン化合物(A)とアルミノキサンとの反応生成物に含まれるメタロセン化合物(A)由来の遷移金属原子1モルに対して、無機微粒子状担体が1〜1,000kg、好ましくは5〜500kgの割合である。(b)工程で使用する不活性溶媒の使用量は、メタロセン触媒としてのメタロセン化合物(A)とアルミノキサンとの反応生成物に含まれるメタロセン化合物(A)由来の遷移金属原子1モルに対して、10〜10,000リットル、好ましくは10〜1,000リットルの割合である。
【0126】該メタロセン触媒と該無機微粒子担体との接触は、85〜150℃、好ましくは90〜130℃、特に好ましくは95〜120℃の温度条件下に、5分間〜100時間、好ましくは10分間〜50時間行われる。特に温度条件は重要な因子であり、上記温度範囲内で接触させることにより、得られるメタロセン担持型触媒は高い重合活性を有し、この触媒をオレフィン重合に使用すると、得られるオレフィン重合体は高い嵩比重と良好な粒子性状を有する重合体になる。
【0127】続く(c)工程においては、(b)工程で得られた不活性溶媒を含む粗製メタロセン担持型触媒を、−50〜50℃の温度で脂肪族炭化水素を用いて少なくとも2回洗浄することにより、前記精製されたメタロセン担持型触媒が得られる。
【0128】洗浄に用いる脂肪族炭化水素として、前記不活性溶媒として例示した脂肪族炭化水素およびそれらの混合液が挙げられる。好ましくは、n−ヘキサン、イソペンタンまたはそれらの混合物である。
【0129】(c)工程での洗浄方法として、たとえば、(b)工程の終了後、不活性溶媒と粗製メタロセン担持型触媒とからなるスラリーから不活性溶媒を、濾過、遠心分離またはデカンテーション等により分離したのち、脂肪族炭化水素を用いて該粗製メタロセン担持型触媒を洗浄する方法を採用することができる。また、(b)工程の終了後、不活性溶媒と粗製メタロセン触媒とからなるスラリーから不活性溶媒を分離することなく脂肪族炭化水素を添加し、不活性溶媒および脂肪族炭化水素の混合溶媒を上記と同様の手段で分離したのち、脂肪族炭化水素を用いて粗製メタロセン担持型触媒を洗浄する方法を採用することもできる。(c)工程で行う洗浄方法としては、特に後者の方法がより好ましい。
【0130】該洗浄は、1回の洗浄につき、(b)工程で使用した無機微粒子担体1kgに対し、脂肪族炭化水素1〜500リットル、好ましくは10〜100リットルを使用して、−50〜50℃、好ましくは−30〜40℃、特に好ましくは−30〜30℃の温度条件下に、洗浄後の脂肪族炭化水素中にメタロセン触媒が溶出しなくなるまで繰り返し行なわれる。少なくとも2回、通常は4回以上洗浄すれば充分であるが、これに限定されない。
【0131】洗浄温度条件は重要な因子であり、上記温度範囲内で洗浄することにより、得られるメタロセン担持型触媒は高い重合活性を有し、この触媒を用いてオレフィン重合を行うと、得られるオレフィン重合体は特に高い嵩比重と良好な粒子性状を有する。
【0132】本発明で用いる予備活性化メタロセン担持型触媒は、前述したように、(d)工程として、前記(c)工程で得られたメタロセン担持型触媒とオレフィンとを接触させてオレフィンを予備重合させ、メタロセン担持型触媒1kg当たり0.01〜100kgのオレフィン予備重合体を、さらにメタロセン担持型触媒に担持させることにより得られる。
【0133】予備活性化メタロセン担持型触媒に担持されるオレフィン予備重合体としては、炭素数2〜20のオレフィン、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等の単独重合体およびそれらの2種以上の組み合わせからなる共重合体が挙げられ、特にエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレンを主体とするエチレンとエチレン以外のオレフィンとのエチレン/オレフィン共重合体、もしくはプロピレンを主体とするプロピレンとプロピレン以外のオレフィンとのプロピレン/オレフィン共重合体が好適である。また、これらのオレフィン予備重合体は135℃のデカリン中で測定した固有粘度[η]が0.1〜10dl/g、好ましくは0.2〜7dl/gの範囲にあることが好ましい。
【0134】好ましいオレフィンの予備重合方法は、(c)工程で得られたメタロセン担持型触媒を脂肪族炭化水素に分散したスラリー中にオレフィンを導入することにより、該オレフィンをメタロセン担持型触媒と接触させ、オレフィンを予備重合させる方法である。メタロセン担持型触媒を脂肪族炭化水素に分散したスラリーとして、(c)工程の最終段階の洗浄で得られた該触媒を、該脂肪族炭化水素から分離することなく使用してもよく、また、分離後、それを改めて同様の脂肪族炭化水素に再分散して使用してもよい。
【0135】該オレフィンの予備重合は、重合させるオレフィン自身を溶媒とした液相中や溶媒を使用せずに気相中で行うことも可能であるが、少量のオレフィンの重合を制御し、かつ予備重合を均一に進める上で脂肪族炭化水素の存在下で実施することが好ましい。
【0136】脂肪族炭化水素中で行うオレフィンの予備重合は、メタロセン担持型触媒1kgに対して、脂肪族炭化水素0.005〜5m3、好ましくは0.01〜1m3からなるスラリー中に、オレフィンを0.01〜1,000kg、好ましくは0.1〜500kg導入して、−50〜100℃、好ましくは0〜50℃の温度条件下に、1分間〜50時間、好ましくは3分間〜20時間、オレフィンを接触させることによって行う
【0137】上記のオレフィンの予備重合において、メタロセン担持型触媒にはメタロセン化合物(A)と、活性化化合物(B)として好適にはアルミノキサンとの反応生成物が担持されているので、新たにトリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物やアルミノキサンに代表される助触媒を添加する必要は特にないが、所望により添加することもできる。これらの助触媒の添加量は、該メタロセン担持型触媒中のメタロセン化合物(A)由来の遷移金属原子1モル当たり、アルミニウム原子として1,000モル以下、好ましくは500モル以下の範囲に留めるのが好ましい。
【0138】本発明において、上記オレフィンの予備重合を水素の存在下に行い、生成するオレフィン予備重合体の重量平均分子量(Mw)を100,000〜500,000g/molの範囲となるように制御することが望ましい。
【0139】本発明で用いられるメタロセン担持型触媒IIは、(A)、(E)及び(D)成分とを接触させることにより調製される。接触方法は、特に限定されないが、次の様な方法を例示することができる。(1)(A)と(E)成分を接触させる。(2)(A)と(E)成分を接触させた後に(D)成分を添加する。(3)(A)と(D)成分を接触させた後に(E)成分を添加する。(4)(E)と(D)成分を接触させた後に(A)成分を添加する。(5)(A)、(E)、(D)成分を同時に接触させる。
【0140】なお、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンの予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。また、上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、アルミナ等の無機酸化物の固体を、各成分と共存させるか、または、各成分に接触させてもよい。上記の各成分の接触は、窒素などの不活性ガス中、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。接触は、−20℃を下限とし、溶媒の沸点を上限とする温度範囲で行い、特に室温を下限とし、溶媒の沸点を上限とする温度範囲で行うのが好ましい。
【0141】上記の各成分の使用量は次の通りである。すなわち、(E)成分の1g当たり、(A)成分は、通常10-4〜10mmol、好ましくは10-3〜5mmolであり、(D)成分は、通常0.01〜104mmol、好ましくは0.1〜100mmolである。また、(A)成分中の遷移金属と(D)成分中のアルミニウムの原子比は、通常1:0.01〜106、好ましくは1:0.1〜105である。この様にして調製された触媒は、調製後に洗浄せずに使用してもよく、また、洗浄した後に使用してもよい。
【0142】また、必要に応じて(D)成分を追加使用してもよい。すなわち、(A)成分及び/又は(E)成分と(D)成分とを使用して触媒調製を行った場合は、この触媒調製とは別途に更に(D)成分を反応系に追加添加してもよい。この際、使用される(D)成分の量は、(A)成分中のメタロセン化合物(a)由来の遷移金属原子に対する(D)成分中のアルミニウム原子の原子比として、通常1:0〜104、好ましくは1:1〜103なる様に選ばれる。
【0143】また、上記のようにして調製されたメタロセン担持型触媒IIの場合も、前記メタロセン担持型触媒Iの場合と同様に、オレフィンを予備重合し、該担持型触媒にオレフィン予備重合体を更に担持したのち、これを本発明のプロピレン系重合体の製造に用いることもできる。
【0144】上記で得られたメタロセン担持型触媒IまたはIIは、更に、有機アルミニウム化合物((D′)成分)と組み合わせて得られるオレフィン重合用触媒として、本発明のオレフィン重合体の製造に好適に使用される。
【0145】オレフィン重合体の製造において、メタロセン担持型触媒IもしくはIIと組み合わせて用いられる(D′)成分は、前記メタロセン担持型触媒IもしくはIIの製造に用いられる有機アルミニウム化合物として前述したものから選ばれるが、前記メタロセン担持型触媒IもしくはIIの製造に用いられる有機アルミニウム化合物と同じものであってもよいし、別の有機アルミニウム化合物であっても良い。
【0146】該オレフィン重合体の製造に使用される(D′)成分の量は、メタロセン担持型触媒もしくは予備活性化メタロセン担持型触媒中のメタロセン化合物(a)由来の遷移金属原子1モルに対し、(D′)成分中のAl原子として1〜5,000モル、好ましくは5〜3,000モル、特に好ましくは10〜1,000モルの割合である。
【0147】メタロセン担持型触媒もしくは予備活性化メタロセン担持型触媒の使用量は、重合容積1リットルあたり、該触媒中のメタロセン化合物(a)由来の遷移金属原子に換算して、1×10-10〜1×10-3モル、好ましくは1×10-9〜1×10-4モルである。触媒の使用量を上記範囲とすることにより、オレフィンの効率的かつ制御された重合反応速度を維持することができる。
【0148】なお、「重合容積」の用語は、液相重合の場合は重合器内の重合器内の液相部分の容積を、気相重合の場合は重合器内の気相部分の容積を意味する。本発明のプロピレン系重合体を製造するプロセスとしては、公知のオレフィン重合プロセスが使用可能であり、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ガソリン留分や水素化ジーゼル油留分等の不活性溶媒中でオレフィン類を重合させるスラリー重合法を採用することができる。また、オレフィン類自身を溶媒として用いるバルク重合法、オレフィン類の重合を気相中で実施する気相重合法を採用することもできる。そして、これらのプロセスの2種以上を組み合わせた重合プロセスを採用することもできる。この重合プロセスの組み合わせとしては、第1ステージをバルク重合法で行い、引き続く第2ステージを気相重合法で行う組み合わせが最も好ましい。また、更には、溶液重合プロセスを用いることもできる。
【0149】本発明のプロピレン系重合体の製造は、重合温度が−50〜150℃、好ましくは20〜120℃、さらに好ましくは40〜100℃、重合圧力が大気圧〜9.9MPa(ゲ−ジ圧)、好ましくは0.4〜5.0MPa(ゲ−ジ圧)の条件下で行なわれる。また、必要に応じて水素のような連鎖移動剤を導入して得られるプロピレン系重合体の分子量を調節しても良い。
【0150】重合反応終了後、重合系から未反応単量体及び水素を分離し、触媒失活処理等を行って、パウダー状のプロピレン系重合体を得る。
【0151】本発明の製造方法で得られるプロピレン系重合体は、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、着色剤、無機質または有機質の充填剤等の各種添加剤、更には種々の合成樹脂を配合した後、通常、溶融混練機を用いて190〜350℃の温度で20秒〜30分間程度加熱溶融混練し、必要に応じてストランド状に押し出した後に、更に細断して粒状体、すなわちペレットの形態で各種成形品の製造に供される。
【0152】また、本発明のプロピレン系重合体は、所望により、前記のパウダー状のプロピレン系重合体を用いて、電子線照射や有機過酸化物による処理などを施して、長鎖分岐をポリマー中に導入しても良い。
【0153】本発明のプロピレン系重合体は、特に、発泡体として使用する事が望ましく、その場合の、発泡体の密度の範囲については特に制限されないが、好ましくは、0.005〜0.7g/cm3、最も好ましくは0.03〜0.3g/cm3であり、また、独立気泡率は、好ましくは、40%以上100%未満、最も好ましくは50%以上90%未満である。
【0154】
【実施例】以下に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明する。実施例および比較例において使用する用語の定義および物性の測定方法は以下の通りである。
【0155】(1)メルトフロ−レ−ト(MFR):JIS K7210 表1の条件14に準じて230℃で測定した(単位:g/10分)。
【0156】(2)二軸伸長粘度測定:潤滑スクイージング法二軸伸長粘度測定装置(岩本製作所製、二軸伸長粘度測定装置BE−100型)を使用した。ペレット状試料を、気泡が入らないように熱プレスして得た、厚さ5mm±0.5mm、半径20mm±0.5mmの円柱状試験片を180℃±1℃に温度調整された装置にセットし15分間溶融させた後、二軸伸長ひずみ速度が0.15sec-1で測定した。試料片と測定用プレートに介在させる潤滑剤には、シリコンオイル(信越化学製KF−96シリーズ、25℃における粘度は5×104センチストークス[cSt])を用いた。
【0157】(3)流動の活性化エネルギー(Ev):試料を、温度230℃の熱プレスにより成形した、厚さ約1mm、直径25mmの試験片を、180℃に保ったレオメトリックス製ARESの直径25mmのパラレルプレートにセットし、温度180〜220℃、0.01〜100[rad/s]の角周波数範囲で、線形範囲内のひずみで動的粘弾性測定を行い、測定温度変化に対する移動因子からEvを求めた。
【0158】(4)応力緩和測定:直径25mmのパラレルプレートを装着したレオメトリックス社製のARESを用い、測定温度180℃で、せん断ひずみγを0.3および6の2条件に設定し、それぞれ(t=1sec)における緩和弾性率を測定した。パラレルプレートを用いるとコーン&プレートよりも試料と円盤とのスリップなしに大きなひずみまで測定することが可能であるが、ジグの中心と外側では真のひずみ量が異なるためこれを補正した。これは、Soskey and Winter、Journalof Rheology、28、625(1984)を参照することができる。
【0159】(5)一軸伸長粘度測定:ペレット状試料を東洋精機(株)メルトテンションテスター(オリフィス径3mm)で温度210℃、押出スピード5mm/min、押出までの予熱時間5分の条件で、均一な直径を持つストランドを作製した。一軸伸長粘度測定には、東洋精機(株)メルテンレオメーターを用い、あらかじめ180℃に保持したシリコンオイル中に直径が均一なストランドを10分間予熱し、一定ひずみ速度(0.1sec-1)で延伸することにより粘度を求めた。ストランドは、測定中のストランド径変化をCCDカメラで観察することにより、均一変形していることが確認された。
【0160】(6)動的粘弾性測定:ペレット状試料は、温度200℃で厚さ約1mm、直径25mmに熱プレスすることによって成形した。測定用サンプルを180℃に保った直径25mmのパラレルプレートにセットし、レオメトリック社製ひずみ制御式レオメーターを用いて温度180℃、0.01〜100[rad/s]の角周波数範囲で線形範囲内のひずみで動的粘弾性測定を行った。
【0161】(7)独立気泡率:ASTM D−2856に記載の方法に準じエアピクノメーターにより測定した。
【0162】(実施例1)
〔メタロセン担持型触媒の調製〕十分に乾燥され、窒素置換された5リットルのフラスコに、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド6.1g(14.1mmol)、およびメチルアルミノキサンのトルエン希釈品をAl換算で4,160mmol仕込み、10分間撹拌保持し、反応させてメタロセン触媒を得た。次いで、該反応生成物であるメタロセン触媒を含む溶液に、800℃で8時間焼成したシリカ(グレース・デビソン社製)100gを添加し、100℃で1時間攪拌保持して接触させ、粗製メタロセン担持型触媒である固体生成物−bを含むスラリーを生成させた。
【0163】前記粗製メタロセン担持型触媒である固体生成物−bを含むスラリーを10分間かけて0℃に冷却し、n−ヘキサンを2,800ml添加して10分間撹拌保持して洗浄した後、静置して分離した上澄み液(溶媒)をデカンテーションにより除去した。同様の洗浄、および溶媒分離操作を3回繰り返した後、n−ヘキサンを2,800ml添加して、精製メタロセン担持型触媒の微粒子がn−ヘキサンに分散されたスラリーを得た。
【0164】〔予備活性化〕上記で得られたメタロセン担持型触媒微粒子/n−ヘキサンスラリーに、0℃において、プロピレンを4,500ml/minの流量で50分間連続的に加えて予備重合することにより、予備活性化した。静置後上澄み液(溶媒)をデカンテーションにより除去し、さらに2,800mlのn−ヘキサンで洗浄し、溶媒を分離する操作を5回繰り返し、室温下で2時間真空乾燥して360gの予備活性化メタロセン担持型触媒を得た。該触媒の組成を分析した結果、得られた予備活性化メタロセン担持型触媒中にはZrが0.22重量%存在していた。
【0165】〔プロピレン/1,9−デカジエン共重合体の製造〕十分に窒素置換された内容積150リットルのオートクレーブ反応器に、n−ヘキサン80リットル、トリエチルアルミニウム50mmol、1,9−デカジエン250mmolを順次加え、5分間攪拌した。その後、攪拌を続けながら、反応器内の温度を50℃に調整しながら、反応器内にプロピレンモノマーを導入し、反応器内の圧力が1.0MPa(ゲージ圧)になるように調整した。その後、反応器内に上記のようにして調製した予備活性化メタロセン担持型触媒10.8gを含むn−ヘキサンスラリーを高圧窒素で圧入することにより重合を開始し、50℃、1.0MPa(ゲージ圧)の一定条件を保つように2時間重合を行った。反応時間終了後、メタノール1リットルを投入して反応を停止させ、未反応のプロピレンを除去し、ヘキサンスラリーを濾過することにより、プロピレン/1,9−デカジエン共重合体が得られた。得られたパウダーを60℃で8時間乾燥して、プロピレン/1,9−デカジエン共重合体23.93kgを得た。分析の結果、MFR2.6g/10min、1,9−デカジエンの含有量0.03重量%であった。
【0166】〔ペレット状プロピレン系重合体組成物の製造〕プロピレン/1,9−デカジエン共重合体100重量部に対し、テトラキス〔メチレン−3−(3′−5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.3重量部、1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキスフェニル)ブタンを0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを0.01重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部、グリセリンモノステアレートを0.2重量部の割合で混合し、次いで、押出温度を230℃に設定したスクリュ−径40mmの単軸押出造粒機を使用してペレット状のプロピレン/1,9−デカジエン共重合体を得た。得られたペレットを分析した結果、MFR4.3g/10min、融点157℃であった。また、このペレットを用いて、諸物性を測定した結果を表1に示した。
【0167】〔発泡体の製造および評価〕バレルの途中に揮発性液体注入用のバレル孔を有する単軸押出機(スクリュー径40mm、L/D比32mm)と、単軸押出機(スクリュー径50mm、L/D比26)とを連結した発泡用押出設備を用い、ペレット上のプロピレン/1,9−デカジエン共重合体100重量部に対して、発泡核剤としてタルク(平均粒径8μm)を0.7重量部の割合で含有する発泡成形用樹脂組成物を、上記バレル孔を有する1段目の40mm押出機に15kg/時で供給し、溶融混練したあと、揮発性液体のn−ブタンを600g/時でバレル孔から圧入して該揮発性物質を分散させ、ついで、2段目のスクリューに供給し、リップ径40mm、リップ間隔0.4mmのサーキュラー状ダイスよりチューブ状の発泡体を押し出した。このチューブ状の発泡体の内側および外側に空気吹きつけ用リングから空気を吹き付け、さらにチューブ状発泡体の内側が冷却用マンドレル(径110mm)に接するように2.0m/分で引き取り、このチューブを切り開いて板状の発泡体を得た。なお、バレル孔を有する押出機の温度は第1ゾーン235℃、第2ゾーン205℃、第3ゾーン185℃、第4ゾーン185℃であり、50mm押出機の温度は第1ゾーン168℃、第2ゾーン165℃、第3〜第5ゾーン160℃、ダイス温度は163℃、押出樹脂温度(押出樹脂温度は50mm押出機のサーキュラーダイスに設けたブレーカープレート部で測定した。)は163℃である。得られた板状の発泡体は、厚み2.5mm、密度0.04g/cm3、平均セル径0.4mm、独立気泡率75%の独立気泡構造を持つ良好な板状発泡体であった。このような均一で緻密な独立気泡および高い発泡倍率を持つ発泡体は熱成形すると、均一で緻密な発泡セル(気泡)および高い発泡倍率をもつ好外観の発泡成形体が得られる。
【0168】(実施例2)
〔プロピレン/1,9−デカジエン共重合体の製造〕1,9−デカジエンの添加量を320mlとした以外は実施例1と同様にして、25kgのプロピレン/1,9−デカジエン共重合体が得られた。分析の結果、MFR1.8g/10min、1,9−デカジエン含有量が0.04重量%であった。
【0169】〔ペレット状プロピレン系重合体組成物の製造〕上記にて得られたプロピレン/1,9−デカジエン共重合体を用いる事以外は、実施例1と同様にしてプロピレン系重合体組成物ペレットを製造した。得られたペレットを分析した結果、MFR7.9g/10min、融点157℃であった。このペレットを用いて諸物性を分析した結果を表1に示した。
【0170】〔発泡体の製造および評価〕上記ポリプロピレン組成物を用い、揮発性液体のn−ブタンを400g/時でバレル孔から40mm押出機に圧入して該揮発性物質を分散させ、50mm押出機の温度が第1ゾーン170℃、第2ゾーン167℃、第3〜第5ゾーン165℃、ダイス温度を167℃、押出樹脂温度168℃であること以外は実施例1の条件に準拠して、発泡体の製造・評価を行った。得られた板状発泡体は厚み1.2mm、密度0.07g/cm3、平均セル径0.3mm、独立気泡率75%の独立気泡構造を持つ良好な板状発泡体であった。このような均一で緻密な独立気泡および高い発泡倍率を持つ発泡体は熱成形すると、均一で緻密な発泡セル(気泡)および高い発泡倍率をもつ好外観の発泡成形体が得られる。
【0171】(比較例1)
〔メタロセン担持型触媒の調製〕ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの代わりに、同モル量のrac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロリドを用いる以外は実施例1と同様にして予備活性化メタロセン担持型触媒を製造した。
【0172】〔プロピレン単独重合体の製造〕十分に窒素置換された内容積150リットルのオートクレーブ反応器に、n−ヘキサン80リットル、トリエチルアルミニウム250mmolを順次加え、5分間攪拌した。その後、攪拌を続けながら、反応器内の温度を50℃に調整しながら、反応器内にプロピレンモノマーを導入し、反応器内の圧力が1.0MPa(ゲージ圧)になるように調整した。その後、反応器内に上記のようにして調製した予備活性化メタロセン担持型触媒9.0gを含むn−ヘキサンスラリーを高圧窒素で圧入することにより重合を開始し、50℃、1.0MPa(ゲージ圧)の一定条件を保つように2時間重合を行った。反応時間終了後、メタノール1リットルを投入して反応を停止させ、未反応のプロピレンを除去し、ヘキサンスラリーを濾過することにより、プロピレン単独重合体が得られた。得られたパウダーを60℃で8時間乾燥して、プロピレン単独共重合体19.0kgを得た。分析の結果、MFR1.8g/10minであった。
【0173】〔ペレット状プロピレン単独重合体の製造〕上記にて得られたプロピレン単独重合体100重量部に対し、テトラキス〔メチレン−3−(3′−5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.3重量部、1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキスフェニル)ブタンを0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを0.01重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部、グリセリンモノステアレートを0.2重量部の割合で混合し、次いで、押出温度を230℃に設定したスクリュ−径40mmの単軸押出造粒機を使用してペレット状のプロピレン単独重合体を得た。得られたペレットを分析した結果、MFR1.6g/10min、融点149℃であった。また、このペレットを用いて、諸物性を測定した結果を表1に示した。
【0174】
【表1】


【0175】〔発泡体の製造および評価〕上記ポリプロピレン組成物を用い、50mm押出機の温度が第1ゾーン160℃、第2ゾーン157℃、第3〜第5ゾーン153℃、ダイス温度を155℃、押出樹脂温度157℃であること以外は実施例1の条件に準拠して、発泡体の製造・評価を行った。得られた板状発泡体は厚み1.4mm、密度0.11g/cm3、平均セル径2.3mm、独立気泡率10%であるような気泡構造が粗く不均一な板状発泡体であった。このような連続気泡構造をもつ発泡体を熱成形すると気泡がつぶれて所望の肉厚が得られないばかりか、偏肉や外観の悪化がみられる。
【0176】
【発明の効果】本発明によれば、溶融張力に優れ、伸長粘度の非線形性が大きいプロピレン系重合体が得られる。さらに詳しくは、従来のポリプロピレンの溶融特性が改善されており、成形樹脂の肉厚均一性および形状安定性に優れるとともに、発泡体の場合に独立気泡率が高く成形品の外観が良好なプロピレン系重合体が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 以下の式で表される二軸伸長粘度の非線形性の強さを表すλB値が0.15以上1.3未満、流動の活性化エネルギーを表すEvが40KJ/mol以上90KJ/mol未満であることを特徴とするプロピレン系重合体。
λB=(log(ηB2)−log(ηB1))/(ε2−ε1
(ここで、ηB2は二軸伸長ひずみε2が1.2のときの二軸伸長粘度であり、ηB1は二軸伸長粘度が線形領域から非線形領域に移るときの臨界ひずみε1における二軸伸長粘度である。)
【請求項2】 せん断ひずみγが0.3の条件におけるt=1(sec)の緩和弾性率をG0とし、せん断ひずみγが6の条件におけるt=1(sec)の緩和弾性率をGとするときに、h=log[G(t=1sec)/G0(t=1sec)]
で表されるh値が好ましくは−0.7以上−0.03未満であることを特徴とする、請求項1記載のプロピレン系重合体。
【請求項3】 以下の式で表される一軸伸長粘度の非線形性のつよさを表すλe値が好ましくは0.15以上1.5未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロピレン系重合体。
λe=log(ηe2)−log(ηe1)(ここで、一軸伸長ひずみ速度が0.1(sec-1)において、ηe2は一軸伸長ひずみが3のときの一軸伸長粘度を示し、ηe1は一軸伸長ひずみが2のときの一軸伸長粘度を示す。)
【請求項4】 動的粘弾性測定において、次式で与えられるα値が0.05以上1.0未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体。
α=log(η*2)−log(η*1)(ここで、η*2は角周波数ω=0.01(rad/s)における複素粘度、η*1は角周波数ω=0.1(rad/s)における複素粘度を示す。)

【公開番号】特開2003−55407(P2003−55407A)
【公開日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−247634(P2001−247634)
【出願日】平成13年8月17日(2001.8.17)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】