説明

プロペンアミド誘導体の重合物からなる癌転移抑制剤

【構成】 下記一般式(I)で表されるプロペンアミド誘導体の重合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有してなる癌転移抑制剤。
一般式(I)
H2C=CR1-CO-[NH-R2-CO]-([X]- Arg-Gly-Asp-[Y])n -Z式中、R1は水素原子、メチル基、エチル基を表し、R2は炭素数が1〜11の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の炭素原子は−O−を介して連結していてもよい。X,YはSer,Gly,Val,Thr,Pro及びGlnから選択されるアミノ酸残基またはこれらのアミノ酸残基から構成されるペプチド残基を表し、Zは−OH,−OR3,−NR45を表し、R3,4,5は水素原子、メチル、エチル基の中から選択される。nは1〜3の整数を表す。また、式中の[ ]は[ ]内の残基が存在してもしなくてもよいことを示す。
【効果】 本発明のプロペンアミド誘導体重合物は、細胞接着性蛋白質のコア配列に比べて細胞接着性が大きく、癌転移抑制作用等の種々の生物活性を有し、毒性の問題も殆どない。また、その構造も単純であり合成も容易であり、医薬としての価値は高いものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Arg-Gly-Aspのトリペプチドを必須単位として有するプロペンアミド誘導体の重合物またはその薬理学的に許容される塩の癌転移抑制剤としての用途に関する。
【0002】
【従来の技術】フィブロネクチンは細胞−細胞外基質の接着に関与する蛋白質であり、血小板凝集や癌転移にも関与していると考えられている。これらの相互作用は一連の細胞表面のレセプターにより仲介され、フィブロネクチンは分子量約25万の巨大分子であるにもかかわらず、これらのレセプターはその中のArg-Gly-Asp配列を特異的に認識することが明らかにされ、レセプターとの相互作用に重要なものであることが報告されている(ネイチャー(Nature)、第309巻、30頁、1984年)。このArg-Gly-Asp配列はビトロネクチン等の他の接着性蛋白質にも存在しており、フィブロネクチンは上記コア配列を介して、被接着細胞のレセプターと接合し、その情報を接着細胞に伝達する。また、ヘパリン、コラーゲン、フィブリン等の生体高分子との結合能も有し、細胞と間質結合組織との接着、細胞の分化、増殖に関与しているとも考えられている。この様に、細胞接着活性蛋白質は、種々の生物活性を有するため、医薬、医用材料への応用が検討されている。
【0003】例えば、Arg-Gly-Asp 配列を有する種々の鎖状および環状のオリゴペプチドを用いて血小板凝集を阻害する方法(高分子学会予稿集(Polymer Preprints, Japan)、第38巻、3149頁、1989年、特開平2-174797号)、Arg-Gly-Asp 配列を有するペプチドを細胞移動抑制剤として用いる方法(特開平2-4716号)、Arg-Gly-Aspを固定化したPMMA膜を細胞接着膜として用いる方法(高分子学会予稿集(Polymer Preprints,Japan)、第37巻、705頁、1988年)が報告されている。また、ポリマーにArg-Gly-Aspを必須構成単位とするペプチドを共有結合させ、動物細胞培養基体、生体複合人工臓器用基体として用いる方法(特開平1-309682号、特開平1-305960号)、Arg-Gly-Asp-Ser配列を有するポリペプチドを体外血液用血小板保護剤として用いる方法(特開昭64-6217号)等も開示されている。
【0004】さらに近年、細胞接着活性蛋白質は、癌転移に関係する物質としても注目されてきている。癌転移の一連の段階において、癌細胞は種々の宿主細胞や生体高分子と接触する。このときフィブロネクチンのような細胞接着分子が存在すると、該細胞は多細胞塊を形成し、癌細胞の増殖や生存をより容易にする。ところがこの際、フィブロネクチンの接着コアであるトリペプチドArg-Gly-Aspが共存すると、競争的に癌細胞上のレセプターと接合することにより癌転移阻害活性を示すことが報告されている(サイエンス、第238巻、467ページ、1986年)。更に、効果の増強をはかる目的で、この配列を有するオリゴペプチド、環状オリゴペプチド、あるいはその繰り返し構造を有するポリペプチドを用いた癌転移抑制方法も開示されている((Int.J.Biol.Macromol.)、第11巻23頁1989年、同誌、第11巻226頁1989年、(Jpn.J.Cancer Res.)第60巻722頁1989年、特開平2-174797号)。
【0005】上述のように、フィブロネクチン等の細胞接着活性蛋白質あるいはそのペプチド断片は様々な生物活性を有しておりその関連物質を医薬品として応用する技術の開発が望まれていた。特に、接着コア配列の癌転移抑制作用は医薬品として応用価値が高い物と考えられる。そこで、本発明者らは高分子物質が多様な性状、機能を有し生体との間で示される相互作用も低分子の場合と非常に異なっていることに着目し、接着コア配列の持つ生物活性を充分に保持し、血流中でより安定で、重大な副作用も示さず且つ合成も容易な新規な化合物を求めて鋭意研究を行なった結果、Arg-Gly-Aspのトリペプチドを必須単位として有する新規な水溶性プロペンアミド誘導体重合物とその薬理学的に許容される塩を見出し本研究を完成したのである。
【0006】尚、細胞接着分子の不溶性高分子基体への連結という観点でArg-Gly-Aspを必須単位とするオリゴペプチドを高分子担体に導入した例は見られるが、活性増強や安定性向上を目的として、Arg-Gly-Aspを必須単位とするオリゴペプチドを側鎖に有する水溶性のプロペンアミド誘導体重合物を癌転移抑制剤へ応用する例は知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、レセプターの結合能の増強および血液中での安定化が図られ、かつより簡便な手法で生産可能なArg-Gly-Aspのトリペプチドを必須単位として有する新規なプロペンアミド誘導体の重合物とその薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】従って本発明は、下記一般式(I)で表されるプロペンアミド誘導体の重合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有してなる癌転移抑制剤である。
一般式(I)
H2C=CR1-CO-[NH-R2-CO]-([X]- Arg-Gly-Asp-[Y])n -Z
【0009】式中、R1は水素原子、メチル基、エチル基を表し、R2は炭素数が1〜11の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の炭素原子は−O−を介して連結していてもよい。X,YはSer,Gly,Val,Thr,Pro及びGlnから選択されるアミノ酸残基またはこれらのアミノ酸残基から構成されるペプチド残基を表し、Zは−OH,−OR3,−NR45を表し、R3,4,5は水素原子、メチル、エチル基の中から選択される。nは1〜3の整数を表す。また、式中の[ ]は[ ]内の残基が存在してもしなくてもよいことを示す。
【0010】プロペンアミド誘導体の重合物またはその塩の平均分子量は、好ましくは10万以下、特に好ましくは5000〜5万の範囲で、室温で水溶性であることが好ましい。本発明のプロペンアミド誘導体重合物に含まれる接着性ペプチドに用いられるアミノ酸はL体、D体どちらでもよいが、好ましくはL体である。
【0011】本発明のプロペンアミド誘導体重合物の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩等の無機酸との塩や、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の有機酸との塩が挙げられ、そのような塩への変換は慣用手段で行なうことができる。
【0012】ペプチド合成方法は特に限定されないが、液相法、固相法、および自動合成装置による合成方法が挙げられる。これらの合成方法の詳細については、生化学実験講座「タンパク質の化学IV」p207−495(日本生化学会編、東京化学同人)、「続生化学実験講座タンパク質の化学(下)」(日本生化学会編、東京化学同人)、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋等編、丸善)に記載されている。また、市販されている合成ペプチドを利用することも可能である。
【0013】プロペン酸誘導体と細胞接着性ペプチドとの結合方法としては、活性エステル法、混合酸無水物法、アジド法、酸塩化物法、対称酸無水物法、DCC法、DCC−添加物法、カルボニルジイミダゾール法等を利用したアミド結合合成方法が挙げられる。さらに、プロペンアミド誘導体の重合物は一般のラジカル重合法、イオン重合法により得られる。重合物はゲル濾過法、透析法、その他既知の方法により特定の分子量分画を行なうことができる。
【0014】本発明のプロペンアミド誘導体の重合物またはその塩は、細胞接着性蛋白質のコア配列Arg-Gly-Aspを有し、該コア配列を介して細胞接着性蛋白質と同様の機序で細胞に接着する。そのため、細胞接着性蛋白のアゴニストまたはアンタゴニストとして種々の生理活性を示し、免疫調整作用、創傷治癒作用、毛細血管中で起こる癌細胞による血小板凝集抑制作用、神経疾患治癒作用などの広範な生物活性が認められている。従って、本発明のプロペンアミド誘導体の重合物またはその塩は、その少なくとも一種を、場合により慣用の担体または医薬用助剤とともに、癌転移抑制剤、創傷治癒剤、免疫調整剤、血小板凝集粘着抑制剤として患者に投与することが可能である。その投与量は、非経口投与の場合、0.2μg/kg(体重)〜400mg/kg(体重)の範囲、経口投与の場合、0.6μg/kg(体重)〜1.2g/kg(体重)の範囲で、症状、年齢、体重等に基づいて決定される。
【0015】本発明のプロペンアミド誘導体の重合物またはその塩は、非経口、経口のいずれの経路によっても投与可能であるが、ペプチド系医薬に一般に使用されている投与方法、即ち、非経口投与方法、例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与等によって投与するのが好ましい。そのような投与方法に用いられる注射用製剤を製造する場合、本発明のプロペンアミド誘導体の重合物またはその塩を、例えば、後記実施例で示すようにPBSまたは生理食塩水に溶解して注射用製剤としてもよく、あるいは0.1N程度の酢酸水等に溶解した後、凍結乾燥製剤としてもよい。このような製剤には、グリシンやアルブミン等の慣用の安定剤を添加してもよい。さらに、本発明のプロペンアミド誘導体の重合物またはその塩は、例えばリポソーム中に包容したマイクロカプセル剤あるいはミクロスフェア状、ハイドロゲル状とすれば、経口投与することも可能であり、座剤、舌下錠、点鼻スプレー剤等の形にすれば、消化菅以外の粘膜からも吸収させることも可能である。
【0016】
【実施例】以下実施例により本発明を詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】製造例1 モノマー1の合成β−アラニン17.8g(0.2mol)の水酸化ナトリウム水溶液にメタクリル酸クロリド20.9g(0.2mol)を氷冷下滴下し、4時間撹拌後塩酸により中和した。減圧濃縮により濃縮し沈殿した塩化ナトリウムをろ別した。濃縮液をクロロホルムで抽出し、乾燥後減圧濃縮してクロロホルムを留去した。濃縮物をエーテルで洗浄しモノマー1を白色固体として17.6g得た(収率56%)。
【0018】モノマー1CH2=CCH3−CONHCH2CH2−COOH
【0019】製造例2〜10 モノマー2〜10の合成製造例1と同様の方法によりアクリル酸クロリドと4−アミノ酪酸、エタクリル酸クロリドと5−アミノ吉草酸、メタクリル酸と6−アミノカプロン酸、アクリル酸と12−アミノラウリン酸、アクリル酸とロイシン、メタクリル酸とグルタミン、アクリル酸と2(2−アミノエトキシ)プロピオン酸、メタクリル酸と2(2−アミノエトキシ)酢酸、メタクリル酸とグリシルグリシンとの反応により以下のプロペン酸誘導体を製造した。
【0020】モノマー2CH2=CHCONHCH2CH2CH2−COOH収率 52%
【0021】モノマー3CH2=CC25CONHCH2CH2CH2CH2−COOH収率 61%
【0022】モノマー4CH2=CCH3CONHCH2CH2CH2CH2CH2COOH収率 69%
【0023】モノマー5CH2=CHCONH−(CH211−COOH収率 71%
【0024】モノマー6CH2=CHCONH−CH(iso-C49)−COOH収率 64%
【0025】モノマー7CH2=CCH3CONHCH(COOH)−CH2CH2CONH2収率 59%
【0026】モノマー8CH2=CHCONH−CH2CH2−0−CH2CH2−COOH収率 68%
【0027】モノマー9CH2=CCH3CONH−CH2CH2−O−CH2−COOH収率 74%
【0028】モノマー10CH2=CCH3CONH−CH2CONHCH2COOH収率 70%
【0029】製造例11 ポリマー11の合成製造例1で合成したカルボキシエチルメタクリルアミドをラジカル重合により重合した。カルボキシエチルメタクリルアミド2gを20mlのDMFに溶解し、和光純薬製のラジカル開始剤V65(2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))10mgを加え窒素気流下65℃で4時間重合した。重合物は酢酸エチルで沈殿させた後、スペクトラポア7(分子分画量 3000)を用い純水に対して透析し低分子量画分を除いた後凍結乾燥した。収量は1.24gであった。
【0030】ポリマー11H−(CH2−CHCH3(CONHCH2CH2COOH))n分子量は東ソー(株)製TSKgel G3000SWカラムを用い、移動相は0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)とし、流速1.0ml/minで測定した。PEG換算分子量は約30000であった。
【0031】製造例12〜27 ペプチドモノマー12〜21、23〜27及び29の合成上記で製造したプロペンアミド酸誘導体に細胞接着性ペプチドを結合したペプチドモノマーに使用する細胞接着性ペプチドは、固相法、液相法いずれの方法でも得ることができるが、下記のようにして固相法により製造した接着性ペプチドを使用してペプチドモノマー12〜21、23〜27及び29を製造した。以下に各ペプチドモノマーの収率、アミノ酸分析及び質量スペクトルを示す。
【0032】接着性ペプチドの固相法よる合成Merrifield方式によるペプチド合成装置を用いて合成を行なった。α−アミノ酸の保護には、Boc基を用いArg-Gly-Aspを必須単位として含むオリゴペプチドを合成しその末端に製造例1〜10に示したプロペン酸誘導体およびアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸を縮合させた。トリフルオロメタンスルホン酸を用いて樹脂からの切断及び側鎖保護基の除去を行ない、分取用HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で精製し、単一ピークを示すプロペンアミド誘導体を得た。これを、陰イオン交換樹脂カラム(アンバーライトIRA−400;Cl型)を通し塩酸塩とした。
【0033】以下、アミノ酸残基、保護基、試薬について以下の略号を使用する。
【0034】
Boc :t−ブトキシカルボニルOBzl :ベンジルエステルHOBt :ヒドロキシベンゾトリアゾールOSu :N−ヒドロキシスクシンイミドONb :ニトロベンジルエステルTFA :トリフルオロ酢酸DCC :ジシクロヘキシルカルボジイミドDCウレア :シクロヘキシルウレアMts :メシチレンスルホニルDMF :ジメチルホルムアミドT :Thr スレオニンR :Arg アルギニンG :Gly グリシンD :Asp アスパラギン酸S :Ser セリンP :Pro プロリンV :Val バリンQ :Gln グルタミン
【0035】ペプチドモノマー12CH2=CHCONHCH2CH2CH2CO−RGD収率35%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9982G:1.0319D:0.99714−アミノ酪酸:1.024マススペクトル M+: 486
【0036】ペプチドモノマー13CH2=CCH3CONHCH2CH2CO−(RGD)2収率24%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:1.9568G:2.1004D:1.9673β−アラニン:1.0257マススペクトル M+: 815
【0037】ペプチドモノマー14CH2=CCH3CONHCH2CH2CO−(RGD)3収率17%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:2.8382G:3.1121D:2.9451β−アラニン:1.0287マススペクトル M+: 1144
【0038】ペプチドモノマー15CH2=CCH3CONHCH2CH2CO−GRGDS収率10%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:1.0484G:2.1965D:1.0333S:1.1032β−アラニン:1.0449マススペクトル M+: 630
【0039】ペプチドモノマー16CH2=CCH3CONHCH2CH2CO−RGDS収率 33%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9989G:1.1008D:0.9596S:0.8991β−アラニン:1.0054マススペクトル M+: 573
【0040】ペプチドモノマー17CH2=CC25CONHCH2CH2CH2CH2CO−RGDS収率 31%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9874G:0.9927D:0.9935S:0.88694−アミノ酪酸:0.741マススペクトル M+: 615
【0041】ペプチドモノマー18CH2=CCH3CONH−(CH25−CO−RGDS収率 30%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9755G:1.0361D:0.9671S:0.8943マススペクトル M+: 615
【0042】ペプチドモノマー19CH2=CHCONH−(CH211−CO−RGDS収率 27%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9647G:1.0570D:0.9884S:0.8603マススペクトル M+: 686
【0043】ペプチドモノマー20CH2=CHCONHCH(isoC49)CO−RGDS収率 31%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9814G:1.0519D:0.9731S:0.8989ロイシン:0.9853マススペクトル M+: 601
【0044】ペプチドモノマー21CH2=CCH3CONHCH(CO−RGDS)CH2CH2CONH2収率 33%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9771G:1.0501D:0.9651S:0.8969グルタミン酸:0.9587マススペクトル M+: 630
【0045】ペプチドモノマー23CH2=CC25CONH−(CH24−CO−GRGDS収率 35%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9582G:2.0371D:0.9874S:0.8733マススペクトル M+: 672
【0046】ペプチドモノマー24CH2=CCH3CO−GRGDSP収率 26%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9669G:2.0552D:0.9809S:0.8677P:0.9546マススペクトル M+: 656
【0047】ペプチドモノマー25CH2=CCH3CO−GGGRGDS収率 30%アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9554G:4.0011D:0.9380S:0.8518マススペクトル M+: 659
【0048】ペプチドモノマー26CH2=CCH3CONHCH2CH2−O−CH2CO−GRGDS収率 24%アミノ酸分析(nmol/50μl)R: 1.0480G: 2.1073D: 0.9884S: 0.9005マススペクトル M+ : 659
【0049】ペプチドモノマー27CH2=CCH3CONHCH2CH2CO−RGDT収率 30%アミノ酸分析(nmol/50μl)R: 1.0612G: 0.9879D: 1.0265T: 0.8996β−アラニン : 0.9973マススペクトル M+ : 586
【0050】ペプチドモノマー29CH2=CCH3CO−VVVRGDS収率 19%アミノ酸分析(nmol/50μl)R :0.9647G :1.0518D :0.9896S :1.0391V :3.0996マススペクトル M+ :784
【0051】製造例28 ペプチドモノマー30の合成(液相法)
ペプチドモノマー30CH2=CCH3CONHCH2CH2CO−RGDS上記ペプチドモノマー30を逐次延長法により以下に記す経路で液相法で合成したペプチドを使用して製造した。
(A)Boc Ser(Bzl)OBzlの合成BocSer(Bzl)60g(0.2mol)を400mlの酢酸エチルに加え、さらにトリエチルアミン21g(0.2mol)臭化ベンジル35.4g(0.2mol)を加えて還流下4時間反応した。冷却後塩を濾別した後NaHCO3水溶液、NaCl水溶液で洗浄した。これをNa2SO4で乾燥した後減圧乾固し、白色粉末54g(収率68%)を得た。
【0052】(B)BocAsp(OBzl)Ser(Bzl)OBzlの合成BocSer(Bzl)OBzl 30g(78mmol)にTFA/CH2Cl2=1/1 200mlを加え室温で1時間撹拌した後、TFAとCH2Cl2を減圧濃縮した。これを酢酸エチルに溶解しNaHCO3水溶液で中和した後NaCl水溶液で洗浄した。Na2SO4で乾燥してから酢酸エチルを減圧留去した。
【0053】この化合物と、BocAsp(OBzl)OSu 32.8g(78 mmol)をCH2Cl2500mlに溶解し終夜撹拌した。減圧下CH2Cl2を留去してから酢酸エチルに溶解した。NaHCO3水溶液、1Mクエン酸水溶液、NaCl水溶液の順に洗浄し、Na2SO4で乾燥してから減圧乾固して白色粉末を41g(収率89%)得た。
【0054】(C)BocGlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)OBzlの合成BocAsp(OBzl)Ser(Bzl)OBzl35g(59mmol)にTFA:CH2Cl2=1:1を200mlを加えて室温で1時間撹拌した後、TFAとCH2Cl2を減圧濃縮した。これを酢酸エチルに溶解しNaHCO3水溶液で中和した後NaCl水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥してから酢酸エチルを減圧留去した。
【0055】この化合物とBocGlyの9.8g(59mmol)をCH2Cl2に溶解し、DCC12.2g(59mmol)を氷冷下加え3時間撹拌してから、さらに室温で終夜撹拌した。DCウレアをろ別してから減圧濃縮し酢酸エチルに溶解した。NaHCO3水溶液、1Mクエン酸水溶液、NaCl水溶液の順に洗浄し、Na2SO4で乾燥してから減圧乾固して白色粉末を30.5g(収率75%)得た。
【0056】(D)BocArg(Mts)GlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)OBzlの合成BocGlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)OBzlの25g(39mmol)にTFA:CH2Cl2=1:1の200mlを加えて室温で1時間撹拌した後、TFAとCH2Cl2 を減圧濃縮した。これを酢酸エチルに溶解しNaHCO3水溶液で中和した後NaCl水溶液で洗浄した。Na2SO4で乾燥してから酢酸エチルを減圧留去した。
【0057】この化合物とBocArg(Mts)17.8g(39mmol)をDMF400mlに溶解し、DCCの8.0g(39mmol)、HOBtの6.8g(45mmol)を氷冷下加え3時間撹拌してから、さらに室温で終夜撹拌した。DCウレアを濾別してから減圧濃縮し酢酸エチルに溶解した。NaHCO3水溶液、1Mクエン酸水溶液、NaCl水溶液の順に洗浄し、Na2SO4で乾燥してから減圧乾固して白色粉末を19.5g(収率50%)得た。
【0058】(E)ペプチドモノマー30の合成BocArg(Mts)GlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)OBzlの15.0g(15mmol)にTFA:CH2Cl2=1:1 100ml加えて室温で1時間撹拌した後、TFAとCH2Cl2 を減圧濃縮した。これを酢酸エチルに溶解しNaHCO3水溶液で中和した後NaCl水溶液で洗浄した。Na2SO4で乾燥してから酢酸エチルを減圧留去した。
【0059】この化合物とカルボキシエチルメタクリルアミド2.4g(15mmol)をCH2Cl2 200mlに溶解しDCC3.1g(15mmol)を氷冷下加え3時間撹拌してから、さらに室温で終夜撹拌した。減圧濃縮してからアセトンを加え生じたDCウレアをろ別した。減圧濃縮後、酢酸エチルに続いてエーテルで洗浄し、減圧乾燥して白色粉末を10.0g(収率65%)得た。
【0060】この化合物10g(9.8mmol)のTFA溶液に、1Mートリフルオロメタンスルホン酸−チオアニソール−m−クレゾールのTFA溶液を氷冷下加えて1時間反応させ、ペプチド側鎖および末端の保護基の脱保護を行なった。反応液をエーテル中に投入しオイル状の沈殿物を蒸留水に溶解し酢酸エチルで洗浄した後、陰イオン交換樹脂カラム(アンバーライトIRA−400;Cl型)に通して塩酸塩とし凍結乾燥した。白色固体としてペプチドモノマー30が4.8g(収率80%)得られた。以下にアミノ酸分析と質量スペクトルを示す。
アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9877G:0.9916D:0.9899S:0.8891β−アラニン:1.0115マススペクトル M+: 573
【0061】製造例29 ペプチドモノマー31の合成ペプチドモノマー31CH2=CCH3CONHCH2CH2CO−RGDSG−NH2製造例28と同様な方法でペプチドモノマー31を製造した。以下に製造に使用した試薬及び各収量、並びにペプチドモノマー31のアミノ酸分析と質量スペクトルを示す。
(A)BocSer(Bzl)GlyNH2の合成 BocSer(Bzl) : 59g(0.2mol)
GlyNH2・HCl : 22.1g(0.2mol)
N−メチルモルホリン : 20.2g(0.2mol)
CH2Cl2 : 800ml DCC :41.2g(0.2mol)
(A)の収量 58.3g(収率83%)
【0062】
(B)BocAsp(OBzl)Ser(Bzl)GlyNH2の合成 (1)の生成物 :56.2g(0.16mol)
TFA/CH2Cl2 :200ml/200ml BocAsp(OBzl) :51.7g(0.16mol)
CH2Cl2 :800ml DCC :33g(0.16mol)
(B)の収量 71.2g(収率 80%)
【0063】
(C)BocGlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)GlyNH2の合成 (B)の生成物 :66.7g(0.12mol)
TFA/CH2Cl2 :200ml/200ml BocGly :51.7g(0.12mol)
CH2Cl2 :700ml DCC :24.7(0.12mol)
(C)の収量 61.8g(収率 84%)
【0064】
(D)BocArg(Mts)GlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)GlyNH2 の合成 (C)の生成物 :61.3g(0.1mol TFA/CH2Cl2 :200ml/200ml BocArg(Mts) :45.6g(0.1mol)
DMF :800ml DCC :22.5(0.1mol)
HOBt :14g(0.1mol)
(D)の収量 42.8g(収率 45%)
【0065】
(E)ペプチドモノマー31の合成 (D)の生成物 :5.0g(5.3mmol)
TFA/CH2Cl2 :50ml/50ml カルボキシエチルメタクリルアミド :0.83g(5.3mmol)
DMF :50ml DCC :1.1g(5.3mmol)
HOBt :0.72g(5.3mmol)
1M−トリフルオロメタンスルホン酸−チオアニソール− m−クレゾールのTFA溶液: 250ml アンバーライトIRA−400;Cl型処理ペプチドモノマー31の収量 2.29g(収率 65%)
アミノ酸分析(nmol/50μl)R:0.9517G:2.1004D:0.9753S:0.8926β−アラニン:1.0143マススペクトル M+: 629
【0066】製造例30 ペプチドモノマー22の合成ペプチドモノマー22CH2=CHCO−GGRGDS−NH2 製造例29と同様な方法で上記ペプチドモノマー22を製造した。以下に製造に使用した試薬及び各収量並びにペプチドモノマー22のアミノ酸分析と質量スペクトルを示す。
(A) BocAsp(OBzl)Ser(Bzl)NH2の合成BocAsp(OBzl) : 32.3 g (0.1 mol)Ser(Bzl)NH2 HCl : 23.0 g (0.1 mol)N-メチルモルフォリン : 10.1 g (0.1 mol)CH2Cl2 : 500 mlDCC : 20.6 g (0.1 mol)(A)の収量 44.2 g (収率 88 %)
【0067】(B)BocGlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)NH2 の合成(A)の生成物 :25.0 g (0.05 mol)TFA/CH2Cl2 :150 ml/150 mlBocGly : 8.75 g (0.01 mol)CH2Cl2 : 300 mlDCC :10.3 g (0.05 mol)(B)の収量 26.1 g (収率 91 %)
【0068】(C)BocArg(Mts)GlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)NH2 の合成(B)の生成物 : 17.3 g (0.03 mol)TFA/CH2Cl2 : 100 ml/100mlBocArg(Mts) :13.7 g (0.03mol)DMF :250 mlDCC :6.18 g (0.03 mol)HOBt :4.0 g (0.03mol)(c)の収量 17.5 g (収率 63 %)
【0069】(D)BocGlyArg(Mts)GlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)NH2の合成(C)の生成物 :9.3 g (0.01 mol)TFA/CH2Cl2 : 100 ml/100mlBocGly : 1.75 g (0.01 mol)DMF : 80 mlDCC : 2.06 g (0.01 mol)HOBt : 1.36 g (0.01mol)(D)の収量 6.53 g (収率 65 %)
【0070】(E)BocGlyGlyArg(Mts)GlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)NH2 の合成(D) の生成物 : 5.02 g (0.005 mol)TFA/CH2Cl2 : 50 ml/50 mlBocGly : 0.88 g (0.005 mol)DMF : 200 mlDCC : 1.03 g (0.005 mol)HOBt : 0.68 g (0.005 mol)(e)の収量 3.84 g (収率 70 %)
【0071】(F) ペプチドモノマー22の合成(E) の生成物 : 3.23 g (0.003 mol)TFA/CH2Cl2 : 40 ml/40 mlメタクリル酸 :0.22 g (0.003 mol)DMF : 60 mlDCC : 0.62 g (0.003 mol)HOBt : 0.41 g (0.003 mol)1M−トリフルオロメタンスルホン酸−チオアニソール−m-クレゾールのTFA溶液: 25 mlアンバーライトIRA-400;Cl型処理ペプチドモノマー22の収量 2.6 gアミノ酸分析(nmol/50μl)R: 0.9845G: 3.1361D: 0.9554S: 0.8879マススペクトル M+ : 600
【0072】製造例31 ペプチドモノマー28の合成ペプチドモノマー28CH2=CHCONHCH2CH2CO−RGDSP−N(CH32製造例30と同様の方法でペプチドモノマー28を製造した。以下に製造に使用した試薬及び各収量、並びにペプチドモノマー28のアミノ酸分析と質量スペクトルを示す。
【0073】(A)BocSer(Bzl)ProN(CH3)2の合成BocSer(Bzl) :29.5 g (0.1mol)ProN(CH3)2 HCl :17.8 g (0.1 mol)N−メチルモルホリン :10.1 g (0.1 mol)CH2Cl2 :500 mlDCC :20.6 g (0.1 mol)(A)の収量 31.6 g (収率 45 %)
【0074】(B) BocAsp(OBzl)Ser(Bzl)ProN(CH3)2の合成(A)の生成物 : 22.8 g (0.05 mol)TFA/CH2Cl2 : 150 ml/ 150 mlBocAsp(OBzl) : 16.2 g (0.05 mol)CH2Cl2 :500 mlDCC : 10.3 g (0.05mol)(B)の収量 24.8 g (収率 79 %)
【0075】(C)BocGlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)ProN(CH3)2 の合成(B) の生成物 : 12.5 g (0.02 mol)TFA/CH2Cl2 : 150 ml/150 mlBocGly : 3.5 g (0.02mol)CH2Cl2 : 350 mlDCC : 4.1 g (0.02 mol)(C)の収量 10.2 g (収率 75 %)
【0076】(D)BocArg(Mts)GlyAsp(OBzl)Ser(Bzl)ProN(CH3)2 の合成(C) の生成物 : 6.8 g (0.01 mol)TFA/CH2Cl2 :100 ml/100mlBocArg(Mts) :4.6 g (0.01 mol)DMF :150 mlDCC :2.06 g (0.01mol)HOBt :1.36 g (0.01mol)(D)の収量 5.8 g (収率 57 %)
【0077】(E) ペプチドモノマー28の合成(D) の生成物 : 1.02 g (0.001 mol)TFA/CH2Cl2 : 100 ml/100 mlカルボキシエチルメタクリルアミド: 0.143 g (0.001 mol)DMF : 100 mlDCC : 0.206 g (0.001 mol)HOBt : 0.13 g (0.00mol)1M−トリフルオロメタンスルホン酸−チオアニソール−m-クレゾールのTFA溶液 : 50 mlペプチドモノマー28の収量 0.6 gアミノ酸分析(nmol/50μl)R : 1.0761G : 1.0049D : 0.9959P : 1.0834マススペクトル M+ : 611
【0078】製造例32 目的物(本発明のプロペンアミド誘導体重合物)32の合成ペプチドモノマー15の500mgを水5mlに溶解し、1N NaOHでpH7.4に調整した後、開始剤として過硫酸カリウム2.5mgと亜硫酸水素ナトリウム1.0mgを加え窒素気流下20℃で20時間重合し目的物32を得た。
【0079】スペクトラポア7分子分画量3000を用いて純水に対して透析し低分子量分を除いた後凍結乾燥させた(収量240mg)。ゲルクロマトグラフィーにより目的物32の分子量分画を行なった。分子量は製造例11と同様の方法で測定した。
画分1 分子量約 48000 (目的物32−1)
画分2 分子量約 21000 (目的物32−2)
画分3 分子量約 12000 (目的物32−3)
【0080】製造例33 目的物32−4の合成(開始剤量の変更)
上記製造例32において開始剤を下記のものに変更してペプチドモノマー15の重合を行い、目的物34−4を製造した。下記に収量と分子量を示す。
開始剤 過硫酸カリウム10mg亜硫酸水素ナトリウム4mg収量 180mg(目的物32−4)
分子量 約5000
【0081】製造例34〜52 目的物33〜51の合成製造例32及び33と同様の方法でペプチドモノマー12〜14及び16〜31の重合を行ない、目的物33〜51を製造した。各ポリマーの収量及び分子量を以下に示す。
──────────────────────────────── 目的物No. モノマーNo. ポリマー収量(mg) 分子量 ──────────────────────────────── 33 12 230 15000 34 13 180 13000 35 14 190 15000 36 16 150 11000 37 17 240 16000 38 18 120 8000 39 19 170 10000 40 20 140 9000 41 21 170 11000 42 22 130 12000 43 23 150 9000 44 24 140 8000 45 25 130 8000 46 26 170 10000 47 27 200 15000 48 28 190 13000 49 29 150 10000 50 30 120 15000 51 31 180 7500 ────────────────────────────────
【0082】試験例1(実験的肺転移)
以下のような試験を行い、本発明の化合物の癌転移阻止作用について検討した。目的物32−3、目的物32−4、目的物35、目的物37、目的物39、目的物40、目的物44、目的物46、目的物49、目的物50を各々1000μgと、非常に転移性の強い癌細胞であるB16-BL6 メラノーマ細胞を各々PBS中で混合後、その0.2mlを1群5匹のC57BL/6の雄マウスに静脈注射した。注射された混合物0.2 ml中にはB16-BL6 細胞が5×104 個含まれていた。投与14日後にマウスの肺における癌細胞コロニー数を数えて対照のPBS投与群と比較した(実験1)。その結果を表1に示す。この結果から明らかな通り、目的物32、35、39、40、44、46、49あるいは50の投与により肺への癌転移は顕著に抑制された。これに対して、Arg-Gly-Asp 及び接着性ペプチドを含まないポリマー11の投与ではそのような転移の抑制は見られなかった。同表に示すように,本発明の化合物中の活性ペプチドArg-Gly-Aspや Arg-Gly-Asp-Ser 等の含量が400〜900μg/1000μgであることを考慮すると、少ない量で高い効果を発現していることがわかる。
【0083】更に、目的物32、35、37、47、50の投与量をそれぞれ500μgに減じて上記実験1と同様の方法でマウスに投与したときの効果を検討した(実験2)。表1に示す結果によれば、本発明の化合物はいずれも、対照のPBS投与群に比べて顕著な転移抑制効果を示した。また、本発明の化合物群をB16-BL 6細胞と混合せずにB16-BL 6細胞を投与した5分後にマウスに静脈投与しても、やはり高い転移抑制効果が得られた。この結果は、本発明の化合物を静脈注射等の適当な方法で投与して、癌の転移抑制効果が得られることを示している。
【0084】
表1 B16-BL6メラノーマ細胞の注射で誘発された癌の実験的肺転移に対するポ リペプチドの効果────────────────────────────────────投与化合物 投与時** 投与量 肺への転移数 有効ペプチド含量 (μg) 平均±SD(範囲) (μg/投与量)
────────────────────────────────────実験1PBS(未処理)同時 −−−− 85±20 (53-101) 目的物32−3 同時 1000 14±3 (11-18)* 676目的物32−4 同時 1000 16±13 (2-33)* 676 目的物 35 同時 1000 20±7 (6-12)* 910 目的物 37 同時 1000 16±6 (8-14)* 706 目的物 39 同時 1000 18±8 (8-13)* 619 目的物 40 同時 1000 25±9 (12-25)* 738 目的物 44 同時 1000 21±10 (10-22)* 894 目的物 46 同時 1000 12±9 (4-19)* 652 目的物 49 同時 1000 22±10 (6-29)* 552 目的物 50 同時 1000 8±5 (2-12)* 753 RGD 同時 1000 66±16 (13-20) RGDS 同時 1000 42±18 (14-60)* GRGDS 同時 1000 40±15 (26-59) GGRGDSP 同時 1000 45±20 (28-70) ポリマー11 同時 1000 74±14 (57-89)
【0085】
実験2PBS(未処理)同時 −−−− 64±11 (48-85) 目的物32−3 同時 500 21±8 (12-24)* 別個 500 30±9 (18-27)* 目的物 35 同時 500 16±13 (2-33) 別個 500 19±8 (13-29)* 目的物 37 同時 500 20±6 (13-28) 目的物 47 同時 500 14±5 (8-18)* 目的物 50 同時 500 13±4 (8-18)* ──────────────────────────────────── * t検定で未処理対照と比較して p<0.001** 「同時」は投与化合物と癌細胞を同時に注射したことを示し、「別個」は投与化合物と癌細胞を別々に注射したことを示す。
【0086】試験例2 自然転移モデルによる癌転移抑制効果さらに本発明の化合物群が癌の転移を抑制することを自然転移モデルによって確認した。即ち、B16-BL6細胞を1群5匹のC57BL/マウスの足踵に移植し、移植後一定期間内に本発明の化合物群を50μgまたは100μgを移植癌部に直接単回あるいは複数回局所投与した。移植後21日目に癌部を切除し、その2週間後にマウスを解剖し肺への癌の転移を調べた。その結果を表2に示す。癌移植後7日目に本発明の化合物群を100μgを単回投与しその後2日毎に複数回投与することにより、または7、10、13、及び16日目に50μgずつ複数回投与することにより、移植癌自体の増殖は抑制されなかったものの、肺への癌の転移は顕著に抑制された。
【0087】
表2 足踵に投与したB16−BL6メラノーマ細胞の自然肺転移モデルにおけ るプロペンアミド誘導体重合物の抑制効果────────────────────────────────────投与化合物 投与量 投与日 21日目における (μg/マウス) 移植癌の大き 肺への転移数 さ(mm±SD) 平均±SD(範囲)
────────────────────────────────────未処理(PBS) 12±2 50±20(2886) 目的物32-3 100x7 7,9,11,13,15,17,19 12±2 24±12(5-36)目的物32-4 同上 同上 11±1 19±10(936)目的物35 同上 同上 12±2 20±8(1031)目的物36 同上 同上 11±2 26±8(1943)目的物37 50X4 7,10,13,16 11±2 18±9(8-31) 目的物39 100x7 7,9,11,13,15,17,19 13±3 20±6(15-27)目的物42 同上 同上 12±2 9±5(116) 目的物44 同上 同上 13±3 12±6(722) 目的物49 同上 同上 13±3 17±7(728) 目的物50 同上 同上 13±3 7±3(310) RGDS 同上 同上 12±2 62±13(4177) GGRGDSP 同上 同上 12±2 45±17(2664) ──────────────────────────────────── * スチューデントのt検定で未処理群に対して p<0.001
【0088】試験例3 毒性上記の試験において、本発明の化合物群は、宿主マウスの赤血球細胞や脾臓及び胸腺細胞に対する細胞毒性や血清蛋白質に対する好ましくない凝集作用を有しないことが確認された。
【0089】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明のプロペンアミド誘導体重合物は、細胞接着性蛋白質のコア配列に比べて細胞接着性が大きく、癌転移抑制作用等の種々の生物活性を有し、毒性の問題も殆どない。また、その構造も単純であり合成も容易であり、医薬としての価値は高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(I)で表されるプロペンアミド誘導体の重合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有してなる癌転移抑制剤。
一般式(I)
H2C=CR1-CO-[NH-R2-CO]-([X]- Arg-Gly-Asp-[Y])n -Z(式中、R1は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R2は炭素数が1〜11の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の炭素原子は−O−を介して連結していてもよい。X,YはSer,Gly,Val,Thr,Pro及びGlnから選択されるアミノ酸残基またはこれらのアミノ酸残基から構成されるペプチド残基を表し、Zは−OH,−OR3または−NR45を表し、R3,4,5は水素原子、メチル、エチル基の中から選択される。nは1〜3の整数を表す。また、式中の[ ]は[ ]内の残基が存在してもしなくてもよいことを示す。)