説明

プロモーター配列

本発明は、ポリペプチドまたは核酸、特に糸状菌におけるアンチセンスRNAおよびヘアピンRNAの製造方法に関する。本発明はまた、単離されたペニシリウム(Penicillium)プロモーター配列、ならびにポリペプチドまたは核酸、特にアンチセンスRNAおよびヘアピンRNAをコードする核酸配列に機能的に連結された該プロモーター配列を含む核酸構築物、ベクターおよび宿主細胞に関する。さらに、本発明は、該ペニシリウム(Penicillium)プロモーター配列の使用による小有機化合物の発酵製造に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドまたは核酸、特に糸状真菌におけるアンチセンスRNAおよびヘアピンRNAの製造方法に関する。本発明はまた、単離されたペニシリウム(Penicillium)プロモーター配列、ならびにポリペプチドまたは核酸(特にアンチセンスRNAおよびヘアピンRNA)をコードする核酸配列に機能的に連結された該プロモーター配列を含む核酸構築物、ベクターおよび宿主細胞に関する。さらに、本発明は、小有機化合物の発酵製造のためのペニシリウム(Penicillium)プロモーター配列の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌宿主細胞、特に糸状菌細胞、例えばペニシリウム(Penicillium)における同種タンパク質および異種タンパク質の組換え製造は、商業的に妥当な量でのタンパク質の製造を可能にする。さらに、同種タンパク質および異種タンパク質の過剰発現またはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの発現は、β−ラクタム抗生物質(例えば、ペニシリン)のような小有機化合物の製造を増進し及び望ましくない副生成物を減少させることを可能にする。タンパク質、またはアンチセンスRNAおよびヘアピンRNAのような核酸の組換え製造は、該宿主細胞に適した、調節性遺伝子から切り出されたプロモーターの発現制御下に該タンパク質または該核酸をコードするDNAが配置された発現ベクターを構築することにより達成される。該発現ベクターは、通常はプラスミド媒介形質転換により、該宿主細胞内に導入される。ついで、該発現ベクター内に含有されているプロモーターの適切な機能発現に必要な適当な条件下で該形質転換宿主細胞を培養することにより、該タンパク質または該核酸の製造が達成される。
【0003】
糸状菌ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)およびアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)は、ペニシリンおよびセファロスポリンのような抗生物質を生産する能力を有し、したがってこれらに対する産業上の関心が寄せられている。商業的に使用される生産株の生産性を増加させるために、ここ数年の間に、これらの株の遺伝的操作の技術が開発されている。これらの技術には、フレオマイシン耐性遺伝子(Kolar,M.ら(1988),Gene 62,127−134)のような選択マーカーを含むベクターでのプロトプラストの形質転換が含まれる。関心のある遺伝子の発現の改変、例えば、遺伝子発現を改善するための、他の同種または異種プロモーターによるこれらの遺伝子のプロモーターの置換によるものが示されている。発現が非常に乏しい遺伝子、例えばアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)におけるcefG遺伝子のような遺伝子の場合には特に、構成的に高度に発現される遺伝子のプロモーターの利用はセファロスポリンの発酵力価および副生成物プロファイルに対して正の影響を及ぼすことが報告されている(Gutierrez S.ら(1997)Applied Microbiology and Biotechnology 48(5),606−614)。特定のシグナリングカスケードにおける望ましくない調節経路またはレギュレーターを排除するために、酵素またはレギュレーターの活性を排除または少なくとも下方制御するために、遺伝子発現の不活性化が、それが部分的な場合であってもほぼ完全なものであっても用いられる。ほとんどの場合、遺伝子破壊は適切ではない。なぜなら、倍数性のレベルが問題となったり、あるいは、該破壊が、生存不可能な生物を与えるからである。特に機能喪失変異が成長パラメーターの阻害を示してこの方法を産業目的に適用不可能にする場合の貴重なアプローチとして、遺伝子調節のモジュレーションまたは酵素活性の阻止のためのアンチセンス構築物の使用が、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)およびいくつかの他の糸状菌において示されている(Zadraら(2000),Appl.Environ.Microbiol.66,4810−4816;Bautista,L.F.ら(2000),Appl.Environ.Microbiol.66(10),4579−4581およびWang,T.H.ら(2005),Lett.Appl.Microbiol.40,424−429)。よく知られているアンチセンス技術に加えて、遺伝子発現を改変するための新たな方法であるRNA媒介遺伝子サイレンシングが、植物から動物にわたる種々のモデル生物において詳細に特徴づけられている。最近、この技術は糸状菌においても確立された。RNA媒介遺伝子サイレンシングは、二本鎖RNA(dsRNA)がコグネイトmRNAの分解を配列特異的に誘発する翻訳後遺伝子サイレンシングである(Nakayashiki,H.ら(2005),Fungal Genetics and Biology 42,275−283)。RNA媒介遺伝子サイレンシングは幾つかの真菌種において機能的であることが証明されているにもかかわらず(Nakayashiki,H.ら(2005),Fungal Genetics and Biology 42,275−283;Kadotani,N.ら(2003)Mol.Plant−Microbiol.Interactions 16,769−776 and Mouyna,I.ら(2004),FEMS Microbiol.Lett.237,317−324)、糸状菌に関しては、この技術は端緒についたばかりである。これは主として、利用可能な遺伝的手段が限られているからである。例えば、真菌への適用に適した及び/又は安定な形質転換のためのヘアピン構築物の作製に適した、限られた数のサイレンシングベクターしか利用可能でない。さらに、そのようなベクターにおけるプロモーターおよび内部スペーサー領域の選択は糸状菌におけるRNA媒介遺伝子サイレンシング(RNA干渉とも呼ばれる)に強い影響を及ぼすことが報告されている(Nakayashiki,H.ら(2005),Fungal Genetics and Biology 42,275−283)。しかし、それらのベクターにおける使用に適したそのようなプロモーターは存在しないようである。
【0004】
先行技術においては、種々の糸状菌からの幾つかのハウスキーピング遺伝子のプロモーターの、遺伝子発現の発現または不活性化のための使用を記載した引例が存在する。しかし、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)gpdA遺伝子(グリセルアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼをコードする)またはγ(ガンマ)‐アクチン遺伝子(そのプロモーターは遺伝子発現の過剰発現または不活性化のために頻繁に使用されている)のような幾つかのハウスキーピング遺伝子は、発生的に調節された様態または周期的に調節された様態で発現されることが示されうるであろう(Greene,A.V.ら(2003),Eukaryotic Cell 2(2),231−237およびJeong,H−Y.ら(2001),Gene 262(1−2),215−219)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、糸状菌における遺伝子発現を制御するための新規プロモーター、特に、構成的で安定かつ高い発現を示し更には前記方法における使用(例えば、RNA媒介遺伝子サイレンシングに適したベクターにおける使用)に適した新規プロモーターが当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
したがって、本発明は、真菌宿主細胞におけるポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAを製造するための改良された製造方法、およびそのような製造における新規プロモーターを提供する。本発明の新規プロモーターは、発酵の条件下で構成的で安定で高い転写率を示し、したがって、発酵により入手可能な小有機化合物の製造における使用および/またはそのような真菌宿主細胞の代謝の操作に適している。また、本発明の新規プロモーターは、そのような真菌宿主細胞の成長(増殖)の操作ならびに/または形態学的特徴および/もしくは芽胞形成の調節に関与する経路の操作に適している。さらに、本発明のプロモーターは、RNA媒介遺伝子サイレンシングの本明細書に記載の方法に適している。
【0007】
したがって、本発明は、
(a)ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造に適した培地内で真菌宿主細胞[該真菌宿主細胞は、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1および少なくとも100ヌクレオチドであるこれらの部分配列ならびにこれらの変異体(該変異体は該プロモーター配列のプロモーター活性の少なくとも約20%を有する。)、ハイブリッドおよび縦列プロモーターよりなる群から選ばれるプロモーター配列を含む第2核酸配列に機能的に連結された、該ポリペプチドまたは該核酸、好ましくは該アンチセンスRNAもしくは該ヘアピンRNAをコードする第1核酸配列を含む。]を培養する工程、および
(b)該ポリペプチドを該培地から単離する、または
(c)該ポリペプチドを該真菌宿主細胞から単離する工程
を含んでなる、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造方法に関する。
【0008】
本発明はまた、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1および少なくとも100ヌクレオチドであるこれらの部分配列よりなる群から選ばれる核酸配列を含んでなる単離された核酸配列に関する。
【0009】
本発明はまた、
(a)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列に対して少なくとも80%の相同性を有する核酸配列、
(b)ストリンジェンシー条件(該ストリンジェンシー条件は、6×SSC、0.5% SDSでの室温で15分間の洗浄から開始し次いで2×SSC、0.5% SDSでの45℃で30分間の洗浄を繰返し次いで0.2×SSC、0.5% SDSでの60℃での洗浄を2回繰返す一連の洗浄と定義される。)下で(i)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列、(ii)少なくとも100ヌクレオチドの(i)の部分配列または(iii)(i)もしくは(ii)の相補鎖にハイブリド形成する核酸配列、
(c)1以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含む(a)または(b)の核酸配列、
(d)(a)、(b)または(c)の対立遺伝子変異体、ならびに
(e)(a)、(b)、(c)または(d)の部分配列
よりなる群から選ばれる単離された核酸配列に関する。
【0010】
本発明はまた、前記の核酸配列に機能的に連結された、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列を含んでなる核酸構築物に関する。本発明は更に、該核酸構築物を含んでなる組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞に関する。
【0011】
さらに、本発明は、
(a)真菌宿主細胞[該真菌宿主細胞は、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1および少なくとも100ヌクレオチドであるそれらの部分配列ならびにそれらの変異体(該変異体は該プロモーター配列のプロモーター活性の少なくとも約20%を有する。)、ハイブリッドおよび縦列プロモーターよりなる群から選ばれるプロモーター配列を含む第2核酸配列に機能的に連結された、該ポリペプチドまたは該核酸、好ましくは該アンチセンスRNAもしくは該ヘアピンRNAをコードする第1核酸配列を含む。]を、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNA(これらは、該宿主細胞の代謝経路を調節し、それにより該小有機化合物の産生をもたらすよう意図されたものである。)の製造に適した培地内で培養する工程、
(b)該ポリペプチドまたはアンチセンスもしくはヘアピンRNAを発現させる工程、
(c)該小有機化合物を発酵ブロスから単離する工程
を含んでなる、発酵的製造により入手可能な小有機化合物の発酵的製造のための製造方法
を提供する。
【0012】
また、本発明は、発酵製造による小有機化合物の製造ならびに/または糸状菌宿主細胞の代謝の操作ならびに/もしくはその成長の操作ならびに/もしくは形態学的特徴および/もしくは芽胞形成の調節に関与する経路の操作のための、本発明の核酸配列の使用に関する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、
(a)ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造に適した培地内で真菌宿主細胞[該真菌宿主細胞は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5およびこれらの部分配列ならびにこれらの変異体、ハイブリッドおよび縦列プロモーターよりなる群から選ばれるプロモーター配列を含む第2核酸配列に機能的に連結された、該ポリペプチドまたは該核酸、好ましくは該アンチセンスRNAもしくは該ヘアピンRNAをコードする第1核酸配列を含む。]を培養する工程、および
(b)該ポリペプチドを該培地から単離する、または
(c)該ポリペプチドを該真菌宿主細胞から単離する工程
を含んでなる、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造方法に関する。
【0014】
工程(a)に記載の部分配列は、好ましくは、少なくとも100ヌクレオチドである。工程(a)の変異体プロモーターは、工程(a)に記載のプロモーター配列のプロモーター活性の少なくとも約20%を有しうる。
【0015】
「ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造に適した(すなわち適当な)培地」なる語は、所望のポリペプチドまたは核酸を得るために本明細書に記載の適当な発現ベクター内に含有させることが可能な本発明のプロモーターの適切な機能発現に適した(すなわち適当な)培地を意味すると理解される。
【0016】
好ましくは、工程(a)および/または工程(c)における真菌宿主細胞は糸状菌宿主細胞である。より好ましくは、工程(a)および/または工程(c)における真菌宿主細胞はペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)またはアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)またはアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)またはペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)である。
【0017】
したがって、本発明は、前記の工程(a)および工程(b)を含んでなる、あるいは前記の工程(a)または工程(c)を含んでなる、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造方法であり、工程(a)および/または工程(c)における真菌宿主細胞が糸状菌宿主細胞、好ましくはペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)またはアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)またはアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)またはペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)である製造方法に関する。
【0018】
本発明の製造方法においては、当技術分野で公知の方法を用いて、該ポリペプチドまたは該核酸、好ましくは該アンチセンスRNAもしくは該ヘアピンRNAの製造に適した栄養培地内で該細胞を培養する。例えば、該ポリペプチドまたは該核酸、好ましくは該アンチセンスRNAもしくは該ヘアピンRNAの発現および/または単離を可能にする条件下、適当な培地内で行う実験室用または工業用発酵槽内の振とうフラスコ培養、小規模または大規模発酵(連続的、バッチ、フェッド・バッチまたは固体発酵を含む。)により、該細胞を培養することが可能である。該培養は、当技術分野で公知の方法を用いて、炭素および窒素源ならびに無機塩を含む適当な栄養培地内で行う。適当な培地は商業的供給業者から入手可能である、または公開されている組成(例えば、American Type Culture Collectionのカタログにおけるもの、または例えばGutierrez,S.ら(1999),Microbiology 145,317−324に記載されているもの)に基づいて調製されうる。該ポリペプチドが該栄養培地内に分泌される場合には、該ポリペプチドは該培地から直接的に回収されうる。該ポリペプチドが分泌されない場合には、それは細胞ライセートから回収されうる。得られたポリペプチドは、当技術分野で公知の方法により回収されうる。例えば、該ポリペプチドは、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発または沈殿を含む(これらに限定されるものではない)通常の方法により、該栄養培地から回収されうる。該ポリペプチドは、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、疎水性、クロマトフォーカシングおよびサイズ排除)、電気泳動法(例えば、分取等電点フォーカシング)、溶解度差(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS−PAGEまたは抽出を含む(これらに限定されるものではない)当技術分野で公知の種々の方法により精製されうる(例えば、Protein Purification,J.−C.JansonおよびLars Ryden編,VCH Publishers,New York,1989を参照されたい)。
【0019】
「プロモーター」なる語は、本明細書においては、RNAポリメラーゼに結合し該ポリメラーゼをポリペプチドまたは核酸(例えば、アンチセンスRNAもしくはヘアピンRNA)コード化核酸配列の正しい下流転写開始部位へ導いて転写を開始させるDNA配列と定義される。RNAポリメラーゼは、該コード領域の適当なDNA鎖に相補的なメッセンジャーRNAの構築を効果的に触媒する。「プロモーター」なる語はまた、mRNAへの転写の後の翻訳のための5’非コード領域(プロモーターと翻訳開始部位との間)、シス作用性転写制御要素、例えばエンハンサー、および転写因子と相互作用する他のヌクレオチド配列を含むと理解される。
【0020】
「変異体プロモーター」なる語は、本明細書においては、親プロモーターの1以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含むヌクレオチド配列を有するプロモーターと定義され、ここで、該変異体プロモーターは、対応親プロモーターより高い又は低いプロモーター活性を有する。「変異体プロモーター」なる語はまた、自然変異体、および当技術分野でよく知られた方法(例えば、古典的な突然変異誘発、部位特異的変異誘発およびDNAシャッフリング)を用いて得られるインビトロで作製される変異体を含む。「ハイブリッドプロモーター」なる語は、本明細書においては、コード配列に機能的に連結されmRNAへの該コード配列の転写をもたらす、2以上のプロモーターの融合体である配列を与えるよう互いに融合した2以上のプロモーターの部分と定義される。「縦列プロモーター」なる語は、本明細書においては、それぞれがコード配列に機能的に連結されmRNAへの該コード配列の転写をもたらす、2以上のプロモーター配列と定義される。「機能的に連結」なる語は、本明細書においては、制御配列、例えばプロモーター配列がコード配列に対して適切な位置に配置されていて該制御配列が、該コード配列によりコードされるポリペプチドまたは核酸、例えばアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの産生を導くような配置と定義される。「コード配列」なる語は、本明細書においては、適当な制御配列の制御下、mRNAへ転写されポリペプチドへ翻訳される核酸配列と定義される。コード配列の境界は一般に、mRNAの5’末端においてオープンリーディングフレームの直上流に位置するATG開始コドン、およびmRNAの3’末端においてオープンリーディングフレームの直下流に位置する転写終結配列により決定される。コード配列には、ゲノムDNA,cDNA、半合成、合成および組換え配列が含まれうるが、これらに限定されるものではない。コード配列はまた、例えばアンチセンスRNAまたはヘアピンRNAのような核酸をコードすると理解される。
【0021】
前記のポリペプチドまたは核酸、例えばアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造方法の好ましい実施形態においては、プロモーターは配列番号1の核酸配列またはその部分配列を有する。もう1つの好ましい実施形態においては、プロモーターは配列番号5の核酸配列またはその部分配列を有する。より一層好ましい実施形態においては、プロモーターは配列番号3の核酸配列またはその部分配列を有する。もう1つのより一層好ましい実施形態においては、プロモーターは配列番号2の核酸配列またはその部分配列を有する。もう1つの更に好ましい実施形態においては、プロモーターは配列番号4の核酸配列またはその部分配列を有する。
【0022】
本発明の方法においては、プロモーターはまた、1以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を有する、前記プロモーターの変異体でありうる。変異体プロモーターは1以上の変異を有しうる。各変異は、ヌクレオチドの、独立した置換、欠失および/または挿入である。プロモーター内へのヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入の導入は、当技術分野で公知の方法のいずれか、例えば古典的な突然変異誘発、部位特異的変異誘発またはDNAシャッフリングを用いて達成されうる。
【0023】
本発明の方法においては、プロモーターはまた、本発明の1以上のプロモーターの部分、すなわち、本発明のプロモーターの部分およびもう1つのプロモーターの部分、例えば一方のプロモーターのリーダー配列および他方のプロモーターの転写開始部位、あるいは本発明の1以上のプロモーターの部分および1以上の他のプロモーターの部分を含むハイブリッドプロモーターでありうる。他のプロモーターは、選択された真菌宿主細胞において転写活性を示す任意のプロモーター配列(変異体、トランケート化体およびハイブリッドプロモーターを含む)であることが可能であり、該宿主細胞にとって同種または異種である細胞外または細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から入手可能である。そのような他のプロモーター配列は、該ポリペプチドをコードする核酸配列にとって固有または外来性のものであることが可能であり、該細胞にとって固有または外来性のものであることが可能である。本発明のプロモーターとのハイブリッドプロモーターの構築に有用な他のプロモーターの具体例には、炭水化物、窒素、ホスファート、硫黄などのような細胞培地のいずれかの化合物または当技術分野で公知のいずれかの化学誘導物質により調節(例えば、誘導または抑制)される遺伝子から得られるプロモーターが含まれる。本発明のプロモーターとのハイブリッドプロモーターの構築に有用なプロモーターは、いずれかの物理的条件、例えば温度によっても誘導または抑制されうる。
【0024】
プロモーターはまた、本発明の2以上のプロモーターを含む、あるいは本発明の1以上のプロモーターと1以上の他のプロモーター(例えば、前記で例示されているもの)とを含む縦列プロモーターでありうる。縦列プロモーターの2以上のプロモーター配列は該核酸配列の転写を同時に促進しうる。あるいは、縦列プロモーターのプロモーター配列の1以上は該細胞の成長の異なる段階において核酸配列の転写を促進しうる。
【0025】
本発明の突然変異体、ハイブリッドまたは縦列プロモーターは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のプロモーターのプロモーター活性の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約100%、より一層好ましくは少なくとも約200%、最も好ましくは少なくとも約300%、更に最も好ましくは少なくとも約400%を有する。
【0026】
該核酸配列によりコードされるポリペプチドは、関心のある真菌宿主細胞にとって固有または異種のものでありうる。「ポリペプチド」なる語は、本明細書においては、特定の長さのコード化産物を意味するものではなく、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質を含む。「異種ポリペプチド」なる語は、本明細書においては、該真菌細胞にとって固有(天然)でないポリペプチド、天然配列を改変するために修飾が施された天然ポリペプチド、または組換えDNA技術による該真菌細胞の操作の結果として発現が量的に改変された天然ポリペプチドと定義される。例えば、天然ポリペプチドは、例えば、該ポリペプチドの発現を増強するために、およびシグナル配列の使用により、関心のある天然ポリペプチドの細胞外輸送を促進するために、および該細胞により通常産生されるポリペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させるために、該ポリペプチドをコードする遺伝子を本発明のプロモーターの制御下に配置することにより、組換え的に製造されうる。該真菌細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸配列の1以上のコピーを含有しうる。該天然またはホモログポリペプチドおよび異種ポリペプチドは非分泌性または分泌性ポリペプチドでありうる。
【0027】
好ましくは、該ポリペプチドは天然またはホモログポリペプチドである。好ましい実施形態においては、該ポリペプチドは非分泌性ポリペプチドである。
【0028】
「アンチセンスRNA」なる語は、本明細書においては、関心のある遺伝子(例えば、本明細書に記載の関心のあるポリペプチドをコードするもの)のmRNAに相補的なRNAと定義され、このようなアンチセンスRNAは、例えばCooper G.M.,The Cell.A Molecular Approach,2nd edition,2000(オンライン版)に記載されている。このようなアンチセンスRNAは、例えば、関心のある天然相同ポリペプチドの発現の下方制御を招くアンチセンスRNAを得るために相同ポリペプチドのコード配列の一部または全部が本発明のプロモーターの制御下に逆方向に配置される技術により得られうる。該真菌宿主細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸配列の1以上のコピーを含有しうる。
【0029】
「ヘアピンRNA」なる語は、本明細書においては、例えばAlberts B.ら,Molecular Biology of the Cell,4th Edition,2002(オンライン版)に記載されているようなヘアピン構造を有するRNAと定義される。RNA干渉として文献に記載されている複雑な細胞メカニズムにより関心のある天然相同ポリペプチドの発現を減少させる二本鎖領域を有するヘアピンRNAを得るために、相同ポリペプチドのコード配列の一部または全部が、小さな内部スペーサー領域により隔てられたセンス配向およびアンチセンス配向の両方の本発明のプロモーターの制御下に配置される技術により、そのようなヘアピンRNAが得られうる。該真菌細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸配列1以上のコピーを含有しうる。
【0030】
本発明はまた、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1およびこれらの部分配列よりなる群から選ばれる核酸配列を含む単離された核酸配列に関する。
【0031】
好ましい実施形態においては、単離された核酸配列は配列番号1の核酸配列またはその部分配列を含む。もう1つの好ましい実施形態においては、単離された核酸配列は配列番号5の核酸配列またはその部分配列を含む。より一層好ましい実施形態においては、単離された核酸配列は配列番号3の核酸配列またはその部分配列を含む。もう1つのより一層好ましい実施形態においては、単離された核酸配列は配列番号2の核酸配列またはその部分配列を含む。もう1つの更に好ましい実施形態においては、単離された核酸配列は配列番号4の核酸配列またはその部分配列を含む。
【0032】
本発明はまた、本発明のプロモーターに機能的に連結された、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列と、1以上の制御配列(これは、該制御配列に適した条件下、適当な宿主細胞における該コード配列の発現を導く。)とを含む核酸構築物に関する。核酸構築物がコード配列と、該コード配列の発現に要求される制御配列の全てとを含有する場合、核酸構築物なる語は発現カセットなる語と同義である。本発明の方法においては、該核酸配列は1以上の天然制御配列を含むことが可能であり、あるいは該天然制御配列の1以上は、宿主細胞におけるコード配列の発現を改善するために、該核酸配列にとって外来性である1以上の制御配列で置換されうる。「制御配列」なる語は、本明細書においては、本発明のポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの発現のために必要なまたは有利である全成分を含むものとして定義される。各制御配列は、前記のポリペプチドまたは核酸をコードする核酸配列にとって固有または外来性のものでありうる。そのような制御配列には、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、本発明のプロモーター、シグナルペプチド配列および転写ターミネーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。少なくとも、該制御配列には、本発明のプロモーターならびに転写および翻訳終結シグナルが含まれる。該制御配列は、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列のコード領域との該制御配列の連結を促進する、特定の制限部位を導入するためのリンカーを備えたものでありうる。
【0033】
本発明はまた、本発明のプロモーター、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列と、転写および翻訳終結シグナルとを含んでなる組換え発現ベクターに関する。前記の種々の核酸および制御配列を互いに連結させて、該プロモーターおよび/または該ポリペプチドもしくは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列の、制限部位における挿入または置換を可能にする1以上の簡便な制限部位を含みうる組換え発現ベクターを得ることが可能である。あるいは、該核酸配列は、該核酸配列または該プロモーターおよび/もしくは配列を含む核酸構築物を発現のために適当なベクター内に挿入することにより発現させることが可能である。該発現ベクターを作製する場合、本発明のプロモーターおよび発現のための1以上の適当な制御配列にコード配列が機能的に連結されるよう、該コード配列をベクター内に配置する。組換え発現ベクターは、組換えDNA法に簡便に付され該核酸配列の発現をもたらしうる任意のベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)でありうる。該ベクターの選択は典型的には、該ベクターが導入される宿主細胞との該ベクターの和合性に左右される。該ベクターは直鎖状または閉環状プラスミドでありうる。該ベクターは、自律複製性ベクター、すなわち、染色体外因子として存在し染色体の複製から独立して複製されるベクター、例えば、プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体または人工染色体でありうる。該ベクターは、自己複製を保証するための任意の手段を含有しうる。あるいは、該ベクターは、該宿主細胞内に導入されるとゲノム内に組込まれそれが組込まれた染色体と共に複製されるものでありうる。さらに、単一のベクターまたはプラスミド、あるいは一緒になって、該宿主細胞のゲノム内に導入される全DNAを含有する2以上のベクターまたはプラスミド、あるいはトランスポゾンが使用されうる。該ベクターは、同時形質転換の方法により、1以上の追加的なベクターと組合せて宿主細胞内に導入されうる。本発明のベクターは、好ましくは、形質転換細胞の容易な選択を可能にする1以上の選択マーカーを含有する。選択マーカーは、対応産物が生物致死物質またはウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求体に対する原栄養性などを付与する遺伝子である。糸状菌宿主細胞において使用される適当なマーカーには、ヒグロマイシンまたはフレオマイシンが含まれるが、これらに限定されるものではない。他の適当なマーカーは例えばFinklstein,Ball(編),Applied Molecular Genetics of Filamentous fungi(同誌)Biotechnology of Filamentous fungi,Butterworth−Heinemann,Boston,1992に記載されている。
【0034】
本発明はまた、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列に機能的に連結された本発明のプロモーターを含んでなる、該ポリペプチドまたは該核酸の組換え製造に有利に使用される組換え宿主細胞に関する。ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列に機能的に連結された本発明のプロモーターを含んでなるベクターは、該ベクターが染色体組込み体または前記の自己複製性染色体外ベクターとして維持されるよう、宿主細胞内に導入される。「宿主細胞」なる語は、複製中に生じる突然変異のために親細胞と同一ではない、親細胞の任意の後代を含む。宿主細胞の選択は、該ポリペプチドをコードする遺伝子およびその起源に著しく左右される。あるいは、該宿主細胞の選択は、本明細書に記載のアンチセンスRNAまたはヘアピンRNAのような核酸をコードする核酸配列に左右されうる。該宿主細胞は、本発明の方法において有用な任意の真菌細胞でありうる。好ましい実施形態においては、該真菌宿主細胞は糸状菌細胞である。好ましくは、糸状菌細胞はペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)またはアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)またはアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)またはペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)である。
【0035】
本発明はまた、
(a)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列に対して少なくとも80%の相同性を有する核酸配列、
(b)ストリンジェンシー条件下で(i)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列、(ii)少なくとも100ヌクレオチドの(i)の部分配列、または(iii)(i)もしくは(ii)の相補鎖にハイブリド形成する核酸配列、
(c)1以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含む核酸配列、
(d)(a)、(b)または(c)の対立遺伝子変異体、ならびに
(e)(a)、(b)、(c)または(d)の部分配列
よりなる群から選ばれる単離された核酸配列に関する。
【0036】
(b)のストリンジェンシー条件は、6×SSC、0.5% SDSでの室温で15分間の洗浄から開始し次いで2×SSC、0.5% SDSでの45℃で30分間の洗浄を繰返し次いで0.2×SSC、0.5% SDSでの60℃での洗浄を2回繰返す一連の洗浄と定義されうる。
【0037】
好ましくは、(c)の核酸配列は(a)または(b)の核酸配列である。
【0038】
1つの実施形態においては、本発明は、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列に対して少なくとも80%の相同性を有する単離された核酸配列に関する。
【0039】
好ましくは、相同性の度合は約85%、より好ましくは約90%、より一層好ましくは約95%、最も好ましくは約99%である。
【0040】
本発明の目的においては、配列比較は、Smith−Waterman配列アライメントアルゴリズム(例えば、Waterman,M.S.Introduction to Computational Biology:Maps,sequences and genomes.Chapman & Hall.London:1995.ISBN 0−412−99391−0またはhttp://www−hto.usc.edu/software/seaaln/index.htmlを参照されたい)。ローカルSプログラム・バージョン1.16は以下のパラメーターで使用される:マッチ1、ミスマッチペナルティ:0.33、オープン・ギャップ・ペナルティ:2、伸長ギャップ・ペナルティ:2。
【0041】
部分配列は、5’および/または3’末端からの1以上のヌクレオチドが欠失しているが完全なプロモーター活性の一部を保有している、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に含まれる核酸配列である。あるいは、部分配列は、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる核酸配列より高いプロモーター活性を有しうる。例えば、該5’および/または3’末端から約50または約100ヌクレオチドが欠失していることが可能である。
【0042】
対立遺伝子変異体は、同一染色体遺伝子座を占める遺伝子の2以上の代替形態のいずれかを意味する。対立遺伝子変異は突然変異により天然で生じ、集団内の多型をもたらしうる。
【0043】
もう1つの実施形態においては、本発明は、ストリンジェンシー条件下で(i)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列、(ii)少なくとも100ヌクレオチドの(i)の部分配列、または(iii)(i)もしくは(ii)の相補鎖にハイブリド形成する単離された核酸配列に関する。
【0044】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5の部分配列は少なくとも100ヌクレオチド、または好ましくは少なくとも200ヌクレオチドでありうる。
【0045】
実質的に類似した核酸断片は、当業者に公知のストリンジェンシー条件下で互いにハイブリド形成するそれらの能力により特徴づけられうる(HamesおよびHiggins編,(1985)Nucleic Acid Hybridization,IRL Press,Oxford,UK)。ストリンジェンシー条件は、(密接に)関連した生物からの機能性酵素を複製する遺伝子のような(高度に)類似した断片をスクリーニングするよう調節されうる。ハイブリド形成後の洗浄はストリンジェンシー条件を決定する。「ストリンジェンシー条件」なる語は、本明細書においては、6×SSC、0.5% SDSでの室温で15分間の洗浄から開始し次いで2×SSC、0.5% SDSでの45℃で30分間の洗浄を繰返し次いで0.2×SSC、0.5% SDSでの60℃での洗浄を2回繰返す一連の洗浄と定義される。「高ストリンジェンシー条件」なる語は、本明細書においては、6×SSC、0.5% SDSでの室温で15分間の洗浄から開始し次いで2×SSC、0.5% SDSでの45℃で30分間の洗浄を繰返し次いで0.1×SSC、0.1% SDSでの65℃での洗浄を2回繰返す一連の洗浄と定義される。
【0046】
本発明の目的においては、ハイブリド形成は、核酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5に示す核酸配列、それらの相補鎖またはそれらの部分配列に対応する標識核酸プローブにストリンジェンシー条件下、好ましくは高ストリンジェンシー条件下でハイブリド形成することを意味する。
【0047】
本発明はまた、前記の核酸配列に機能的に連結された、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列を含んでなる核酸構築物に関する。本発明は更に、該核酸構築物を含んでなる組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞に関する。
【0048】
本発明のプロモーターは、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの高い発現を表す構成的で安定で高い転写率を示す。構成的高発現に関しては、本発明のより好ましいプロモーターは、実施例6.1に示すとおり、例えばよく知られた強力なアクチンプロモーターより強力、例えば少なくとも約2〜4倍強力である。
【0049】
もう1つの利点として、本発明のプロモーターの構成的高発現は安定であり、これは、該発現が長期間、例えば数日間、例えば本明細書に記載の発酵製造期間にわたって永久的に高いことを意味すると理解される。この安定な構成的高発現は例えば実施例1.1、2.1、2.1.1、3.1、4.1および5.1において認められうる。前記のとおり例えば発生周期および/または他の例えば概日周期により影響されうる活性を有する公知プロモーターとは対照的に、本発明の新規プロモーターの高発現はいずれかのそのような周期により影響されないようであり、前記の長期間にわたって安定であり及び/又は連続的に高い。
【0050】
もう1つの態様において、本発明は、発酵製造により入手可能な小有機化合物の発酵製造のための製造方法であり、
(a)真菌宿主細胞[該真菌宿主細胞は、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1および少なくとも100ヌクレオチドであるこれらの部分配列ならびにこれらの変異体(該変異体は該プロモーター配列のプロモーター活性の少なくとも約20%を有する。)、ハイブリッドおよび縦列プロモーターよりなる群から選ばれるプロモーター配列を含む第2核酸配列に機能的に連結された、該ポリペプチドまたは該核酸、好ましくは該アンチセンスRNAもしくは該ヘアピンRNAをコードする第1核酸配列を含む。]を、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNA(これらは、該宿主細胞の代謝経路を調節し、それにより該小有機化合物の産生をもたらすよう意図されたものである。)の製造に適した培地内で培養する工程ならびに
(b)該ポリペプチドまたはアンチセンスもしくはヘアピンRNAを発現させる工程、および
(c)該小有機化合物を発酵ブロスから単離する工程
を含んでなる製造方法を提供する。
【0051】
本明細書中で用いる「発酵製造」なる語は、発酵による製造、例えば、本明細書に記載の条件下、栄養培地内で真菌宿主細胞を培養することによる製造を意味すると理解される。
【0052】
工程(a)に記載の、該宿主細胞の代謝経路を調節し、それにより該小有機化合物の産生をもたらすよう意図されたポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAは、好ましくは、該小有機化合物の製造の増進および/または該小有機化合物の望ましくない副生成物の産生の減少をもたらしうる。
【0053】
本明細書に記載の小有機化合物、例えば、発酵により入手可能な小有機化合物は、抗生物質、例えばβ‐ラクタム抗生物質、例えばペニシリンもしくはセファロスポリン、またはHMG−CoAレダクターゼインヒビター、例えばスタチン、例えばロバスタチンなどの群(何らこれらに限定されるものではない)から選ばれうる。該小有機化合物は、それぞれ、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)およびアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)の発酵により入手可能であろう。該小有機化合物は、工程(c)に記載のとおり、培地から単離されうる。あるいは、該小有機化合物は、培養された真菌宿主細胞から単離可能であり、例えば、公知方法に従い発酵の完了後に得られた真菌宿主細胞から抽出されうる。
【0054】
したがって、もう1つの態様において、本発明は、発酵製造による小有機化合物の製造のための、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1およびそれらの部分配列(好ましくは、該部分配列は少なくとも100ヌクレオチドである)よりなる群から選ばれる核酸配列の使用に関する。
【0055】
もう1つの態様において、本発明は、
(a)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列に対して少なくとも80%の相同性を有する核酸配列、
(b)ストリンジェンシー条件(該ストリンジェンシー条件は、6×SSC、0.5% SDSでの室温で15分間の洗浄から開始し次いで2×SSC、0.5% SDSでの45℃で30分間の洗浄を繰返し次いで0.2×SSC、0.5% SDSでの60℃での洗浄を2回繰返す一連の洗浄と定義される。)下で(i)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列、(ii)少なくとも100ヌクレオチドの(i)の部分配列、または(iii)(i)もしくは(ii)の相補鎖にハイブリド形成する核酸配列、
(c)1以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含む、(a)または(b)の核酸配列、
(d)(a)、(b)または(c)の対立遺伝子変異体、ならびに
(e)(a)、(b)、(c)または(d)の部分配列
よりなる群から選ばれる核酸配列の使用に関する。
【0056】
本発明のプロモーターの使用は、該小有機化合物に関して得られる製造力価(生産力価)の増加をもたらすことが可能であり、および/または該小有機化合物の望ましくない副生成物の減少をもたらすことが可能である。
【0057】
本明細書に記載の小有機化合物につながることが可能であり、本発明の方法を適用することによりそれ自体が本発明のプロモーターの制御下となる、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAにより調節されうる代謝経路の具体例を以下に記載する。
【0058】
ペニシリン、セファロスポリンおよび/またはロバスタチンの生合成、すなわち、それらの代謝経路に関与する遺伝子の調節は種々のシス作用性DNA要素および調節因子の制御下にあり、しばしば、発生調節に密接に関連している。例えば、強力なalcAプロモーターにより駆動されるlaeA遺伝子の過剰発現は、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)におけるペニシリンおよび/またはロバスタチンの生合成に関与する遺伝子のアップレギュレーションを招くことが示されている(Bok,J.W.およびKeller,NP.(2004)Eucaryotic Cell 3(2),527−535)。
【0059】
遺伝子発現の過剰発現および/または不活性化は、部分的なものもほぼ完全なものも、laeAのような鍵レギュレーターを操作するために、あるいはβ‐ラクタム抗生物質またはロバスタチンの生合成および輸送に直接的または間接的に関与する代謝経路を操作するために新規方法を明らかにするための貴重な手段であることが示されている(Herrmann,M.ら(2006)Applied and Environmental Microbiology,72(4),2957−2970)。Gutierrezらは、構成的に高度に発現される遺伝子のプロモーターを利用するアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)におけるcefG遺伝子の過剰発現がセファロスポリンの発酵力価の増加および副生成物濃度の減少をもたらすことを示している(Gutierrez S.ら,(1997),Applied Microbiology and Biotechnology 48(5),606−614)。
【0060】
本発明のプロモーターは、例えば前記の代謝経路における使用に適しており、例えば、それに関与している遺伝子の過剰発現をもたらすために使用されうる。
【0061】
したがって、本発明のプロモーターは、例えば本明細書に記載の糸状菌宿主細胞の代謝、例えば代謝状態を操作するために使用されうる。
【0062】
さらに、該プロモーターは、真菌宿主細胞、例えば本明細書に記載の糸状菌宿主の成長の操作ならびに/またはその形態学的特徴および/もしくは芽胞形成の調節に関与する経路の操作のために使用されうる。したがって、本発明の方法に従う本発明のプロモーターの使用は、成長ならびに/または形態学的特徴および/もしくは芽胞形成の調節に関与する経路に関与する1以上のタンパク質および/または核酸、例えばRNAの発現の変化を招きうる。発現におけるそのような変化は、例えば、該タンパク質または核酸の発現の過剰発現または発現減少を招くことが可能であり、ついでこれは、例えば、該真菌細胞の芽胞形成の改善を招きうる。また、1以上のタンパク質および/または核酸、例えばRNAの発現における該変化は、例えば成長の変化、例えば該真菌宿主細胞の成長の改善を招きうる。同様に、該真菌宿主細胞の形態学的特徴は、本発明の方法に従い本発明のプロモーターを適用することにより影響されうる。ついで、真菌宿主細胞の成長のこれらの操作ならびに/または真菌宿主細胞の形態学的特徴および/もしくは芽胞形成の調節に関与する経路のこれらの操作は、代謝産物、例えば本明細書に記載の小有機化合物の製造、例えば発酵製造における変化をもたらすことが可能であり、例えば、該小有機化合物の発酵製造の増進および/または該小有機化合物の望ましくない副生成物の減少をもたらしうる。
【0063】
したがって、本発明はまた、糸状菌宿主細胞の代謝の操作ならびに/または糸状菌宿主細胞の成長の操作ならびに/または糸状菌宿主細胞の形態学的特徴および/もしくは芽胞形成の調節に関与する経路の操作のための、前記の本発明の核酸配列の使用に関する。
【0064】
本発明のプロモーターが構成的で安定で高発現のプロモーターであるという事実は、該プロモーターを、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造方法に有用なものとし、および/または本発明の方法による小有機化合物の発酵製造における使用に有用なものとする。もう1つの利点として、本発明のプロモーターは本明細書に記載のRNA媒介遺伝子サイレンシング法において使用されうる。
【0065】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明を何ら限定するものではない。以下の実施例において用いる「P−Pc X g Y」または「p−Pc X g Y」なる語は「Pc X gプロモーター」を意味すると理解され、それ自体は「Pc X gYプロモーター領域」なる語と同義であると理解される。例えば、実施例1.3において用いる「P−Pc12g09320」なる語は、例えば実施例1.4に記載の「Pc12g09320プロモーター」と同義であり、すなわち、該「Pc12g09320プロモーター」を意味し、実施例1.2に記載の「Pc12g09320プロモーター領域」と同義である、すなわち、該「Pc12g09320プロモーター領域」を意味する。
【0066】
実施例
【実施例1】
【0067】
1.1 ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)のPc12g09320遺伝子の定量的PCR発現分析
新規遺伝子Pc12g09320の発現パターンを証明し、その高発現レベルを定量するために、定量的PCR分析(ABI7900 HT,Applied Biosystems)を行う。種々の条件下、すなわち、製造条件下で成長させ、滅菌布での濾過により集めた、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の菌糸から全RNAを単離する。該湿潤菌糸を液体窒素中で急速冷凍し、乳鉢および乳棒を使用して粉末へと粉砕する。TRIZOL(登録商標)Reagent(Invitrogen)抽出プロトコールを用いて、全RNAを抽出する。すべての操作は該製造業者のプロトコールに従い行う。抽出後、該RNAサンプルをRNeasy(登録商標)カラム(Qiagen)で精製し、RNアーゼ非含有DNアーゼセットキット(RNase−Free DNase Set Kit)(Qiagen)を使用してカラム上でのDNアーゼ消化を行う。RNAをDEPC処理無菌蒸留水に再懸濁させ、分光光度法(Ultrospec 3100 pro,Amersham)によりその濃度を測定する。RNA 6000 Nano Assay(Agilent)を使用するBioanalyzer測定(Agilent)により該RNAの質を調べる。ついで、High Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems)を使用して、逆転写を行う。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、pc12g09320遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。Pc12g09320遺伝子配列のそれぞれ207−224位および306−288位に及ぶフォワードプライマーPc12g09320 U1(5’−CAAGGCCGACCACAGCTT−3’)(配列番号6)およびリバースプライマーPc12g09320 L1(5’−GCCGAGACGGTTGACGAAT−3’)(配列番号7)を設計する。対照として、119bpのアンプリコンを与えるフォワードプライマーPc actA U1(5’−GGTGATGAGGCACAGTCGAAG−3’)(配列番号8)およびリバースプライマーPc actA L1(5’−AGCTCGTTGTAGAAGGTGTGGTG−3’)(配列番号9)の設計のために、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の公知act遺伝子(Ace.No.AF056975)を使用する。PCR反応には、SYBR Green Mastermix(Applied Biosystems)を使用する。該反応は、それぞれ50ngの鋳型cDNAを含有する20μlの反応液を使用して、該製造業者のプロトコールに従い行う。各鋳型に関する試薬中のいずれかの混入物(コンタミ)に関する対照試験のために、鋳型RNAが添加されていない鋳型非含有対照(NTC)を含める。標準曲線により、使用した全てのプライマーセットの良好な効率を実証する。結果は、全ゲノムマイクロアレイ分析によっても検出される非常に強力かつ構成的な遺伝子発現レベルを証明している。特に、この永久的かつ構成的発現レベルは製造条件下で検出される。
【0068】
1.2 Pc12g09320プロモーター領域のクローニングおよび特徴づけ
適当な受容レポーター遺伝子ベクターを作製するために、プラスミドpGen4.5を2工程で作製する。第1工程において、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)γ−アクチン遺伝子(アクセッション番号AF056975)の607bpのターミネーター領域をプルーフリーディングPwo DNAポリメラーゼ(Roche)でのPCRにより増幅し、NotIおよびBamHIで消化し、pBluescript II KS+ベクター(Stratagene)内にクローニングする。次工程において、大腸菌(E.coli)uidA遺伝子のコード領域を含む1812bpの断片をプルーフリーディングPwo DNAポリメラーゼ(Roche)でのPCRにより増幅し、NarIおよびPstIで消化し、該γアクチンターミネーター領域を含有するpBluescript II KS+ベクター(Stratagene)内にクローニングする。ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)ゲノムに基づいて、Pc12g09320の上流の遺伝子Pc12g09310のコード領域がその推定プロモーター領域の範囲を定めると仮定して、遺伝子Pc12g09320の推定プロモーター領域を評価する。以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、Pc12g09320プロモーター領域をクローニングする:Pc12g09320−for(5’−GTCAAAGCTTGTGTACTTACCAATGGC−3’)(配列番号10)およびPc12g09320−rev(5’−AGTCATGCATGCTGAATGAAGGCGGGAGA−3’)(配列番号11)。プルーフリーディングPwo DNAポリメラーゼ(Roche)でのPCRにより得た351bpのDNA断片をHindIIIおよびSphIで消化し、大腸菌(E.coli)uidA遺伝子およびペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)actターミネーター領域を含有する、HindIIIおよびSphIで消化されたプラスミドpGen4.5内にサブクローニングして、プラスミドpGen4.24を得る。大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子をPc12g09320プロモーター領域に翻訳的に融合させる。SphI部位が、uidA遺伝子の開始メチオニンをコードするATG開始コドンの部分となるよう、該SphI部位を設計して、これを行う。増幅されたプロモーター領域、およびp−Pc12g09320とuidA遺伝子との間の融合領域の配列決定は、該プロモーター配列の正確さ、および正しいリーディングフレームでの後者のレポーター遺伝子の正確な配置を証明している。
【0069】
1.3.P−Pc12g09320により駆動されるペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)における大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子の発現
ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株Q176内へのpGen4.24の同時形質転換のために、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)からのイソペニシリン‐N‐シンターゼプロモーターの制御下にTn5−フレオマイシン耐性遺伝子を含有するプラスミドpBC1003を選択マーカーとして使用する(2)。Cantoralら(1)に従い、プロトプラストを形質転換し、窒素および炭素源としてのそれぞれNaNOおよびグルコースならびに30μg/ml フレオマイシン(Sigma)を含有する最少培地内で形質転換体を選択する。窒素および炭素源としてのそれぞれNaNOおよびグルコースならびにUIDAタンパク質の基質としての50μg/mlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸のシクロヘキシルアンモニウム塩(Biosynth)を含有する最少培地上のUIDA−プレートアッセイにより、陽性クローンのスクリーニングを行う。陽性クローンは、25℃で2〜5日間のインキュベーションの後に青色コロニーを生成するそれらの能力により特定されうる。ホモカリオン形質転換体を得るために、単一のホモカリオン芽胞からのコロニーを拾い、該発現構築物のゲノム組込みをサザン分析により確認する。異所性に組込まれたpGen4.24のコピーを含有する4つの独立した形質転換体を成長試験、ノーザンブロットおよびqPCR分析のために選択する。サザン分析はプラスミドpGen4.24の存在を証明している。UIDA転写産物の存在はノーザンブロット分析およびqPCR分析による相対量により判定されうる。UIDA−プレートアッセイならびにノーザンおよびqPCR分析は、該形質転換P−Pc12g09320−uidA構築物が該異種細菌β−グルクロニダーゼ遺伝子を発現することを明らかに示している。
【0070】
1.4.Pc12g09320プロモーターの制御下のペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)におけるuidA遺伝子の発現
大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子を、実施例1の第1.2節に記載されているPc12g09320プロモーターに融合させる。uidA遺伝子の異種発現を定量的PCR(7900HT,Applied Biosystems)により特徴づける。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、uidA遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。56bpの産物を与えるフォワードプライマーEc uidA U1(5’−TTCATGCCAGTCCAGCGTT−3’)(配列番号12)およびリバースプライマーEc uidA L1(5’−CGACCGCAAACCGAAGTC−3’)(配列番号13)。RNAの単離および精製ならびにcDNA合成ならびにそれに続く定量的PCR分析(act遺伝子を対照として使用する)の操作を、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。Pc12g09320プロモーターの制御下にuidA遺伝子を含有する4つの独立したペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株をqPCRにより分析する。これらの株の全てにおいて、非常に高レベルのuidA mRNAが検出される。この結果は、該Pc12g09320−プロモーター−uidA構築物が異種uidA遺伝子および内因性Pc12g09320遺伝子を発現することを証明している。この結果は、発色性プレート培地上で観察される強力なUIDA酵素活性に符合している(実施例1第1.3節を参照されたい)。
【実施例2】
【0071】
2.1.ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)のPc12g10000遺伝子の定量的PCR発現分析
全ゲノムマイクロアレイ分析により検出された新規遺伝子Pc12g09320の高発現レベルを確認し定量するために、定量的PCR分析を行う。qPCR分析は、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。種々の条件下、すなわち、製造条件下で成長させた、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の菌糸から、全RNAを単離する。ついで逆転写を行って、qPCR分析における鋳型として使用するcDNAを得る(実施例1の第1.1節を参照されたい)。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、pc12g10000遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。Pc12g10000遺伝子配列のそれぞれ100−119位および199−180位に及ぶフォワードプライマーPc12g10000 U1(5’−AACAACATTGCGCTCGATGA−3’)(配列番号14)およびリバースプライマーPc12g10000 L1(5’−CCTTGGAAACCGTGTTCGTT−3’)(配列番号15)を設計する。結果は、全ゲノムマイクロアレイ分析によっても検出された非常に強力かつ構成的な遺伝子発現レベルを証明している。該分析は製造条件下のPc12g09320の永久的かつ構成的な発現レベルを証明している。
【0072】
2.1.1.ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)のPc12g10000遺伝子の定量的PCR発現分析
全ゲノムマイクロアレイ分析により検出された新規遺伝子Pc12g10000の高発現レベルを確認し定量するために、定量的PCR分析を行う。qPCR分析は、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。種々の条件下、すなわち、製造条件下で成長させた、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の菌糸から、全RNAを単離する。ついで逆転写を行って、qPCR分析における鋳型として使用するcDNAを得る(実施例1の第1.1節を参照されたい)。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、pc12g10000遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。Pc12g10000遺伝子配列のそれぞれ100−119位および199−180位に及ぶフォワードプライマーPc12g10000 U1(5’−AACAACATTGCGCTCGATGA−3’)(配列番号14)およびリバースプライマーPc12g10000 L1(5’−CCTTGGAAACCGTGTTCGTT−3’)(配列番号15)を設計する。結果は、全ゲノムマイクロアレイ分析によっても検出された非常に強力かつ構成的な遺伝子発現レベルを証明している。該分析は製造条件下のPc12g10000の永久的かつ構成的な発現レベルを証明している。
【0073】
2.2.Pc12g10000プロモーター領域のクローニングおよび特徴づけ
以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、Pc12g10000プロモーター領域をクローニングする:Pc12g10000−for(5’−GTCAAAGCTTCCGGCTCGGATCTCGTC−3’)(配列番号16)およびPc12g10000−rev(5’−GAGGGCATGCTGACTTGTTCACTTCAAGG−3’)(配列番号17)。プルーフリーディングPwo DNAポリメラーゼ(Roche)でのPCRにより得た764bpのDNA断片をHindIIIおよびSphIで消化し、大腸菌(E.coli)uidA遺伝子およびペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)actターミネーター領域を含有する、HindIIIおよびSphIで消化されたプラスミドpGen4.5内にサブクローニングして、プラスミドpGen4.24を得る(実施例1第1.2節を参照されたい)。大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子をPc12g10000プロモーター領域に翻訳的に融合させる。SphI部位が、uidA遺伝子の開始メチオニンをコードするATG開始コドンの部分となるよう、該SphI部位を設計して、これを行う。増幅されたプロモーター領域、およびp−Pc12g10000とuidA遺伝子との間の融合領域の配列決定は、該プロモーター配列の正確さ、および正しいリーディングフレームでの後者のレポーター遺伝子の正確な配置を証明している。
【0074】
2.3.P−Pc12g10000により駆動されるペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)における大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子の発現
実施例1第1.3節に記載されているのと同じ方法により、pGen4.25を形質転換し、形質転換事象を確認する。サザン分析はプラスミドpGen4.24の存在を証明している。UIDA転写産物の存在はノーザンブロット分析およびqPCR分析による相対量により判定されうる。UIDA−プレートアッセイならびにノーザンおよびqPCR分析は、該形質転換P−Pc12g10000−uidA構築物が該異種細菌β−グルクロニダーゼ遺伝子を発現することを明らかに示している。
【0075】
2.4.Pc12g10000プロモーターの制御下のペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)におけるuidA遺伝子の発現
大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子を、実施例2の第2.2節に記載されているPc12g09320プロモーターに融合させる。uidA遺伝子の異種発現を定量的PCR(7900HT,Applied Biosystems)により特徴づける。実施例1の第1.4節に記載されているとおりに、uidA遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。RNAの単離および精製ならびにcDNA合成ならびにそれに続く定量的PCR分析(act遺伝子を対照として使用する)の操作を、実施例1の第1.4節に記載されているとおりに行う。Pc12g10000プロモーターの制御下にuidA遺伝子を含有する3つの独立したペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株をqPCRにより分析する。これらの株の全てにおいて、非常に高レベルのuidA mRNAが検出される。この結果は、該12g10000−プロモーター−uidA構築物が異種uidA遺伝子および内因性Pc12g09320遺伝子を発現することを証明している。この結果は、発色性プレート培地上で観察される強力なUIDA酵素活性に符合している(実施例2第2.3節を参照されたい)。
【0076】
2.4.1 Pc12g10000プロモーターの制御下のペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)におけるuidA遺伝子の発現
大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子を、実施例2の第2.2節に記載されているPc12g10000プロモーターに融合させる。uidA遺伝子の異種発現を定量的PCR(7900HT,Applied Biosystems)により特徴づける。実施例1の第1.4節に記載されているとおりに、uidA遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。RNAの単離および精製ならびにcDNA合成ならびにそれに続く定量的PCR分析(act遺伝子を対照として使用する)の操作を、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。Pc12g10000プロモーターの制御下にuidA遺伝子を含有する3つの独立したペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株をqPCRにより分析する。これらの株の全てにおいて、非常に高レベルのuidA mRNAが検出される。この結果は、該Pc12g10000−プロモーター−uidA構築物が異種uidA遺伝子および内因性Pc12g10000遺伝子を発現することを証明している。この結果は、発色性プレート培地上で観察される強力なUIDA酵素活性に符合している(実施例2第3.3節を参照されたい)。
【実施例3】
【0077】
3.1.ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)のPc16g00660遺伝子の定量的PCR発現分析
全ゲノムマイクロアレイ分析により検出された新規遺伝子Pc16g00660の高発現レベルを確認し定量するために、定量的PCR分析を行う。qPCR分析は、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。種々の条件下、すなわち、製造条件下で成長させた、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の菌糸から、全RNAを単離する。ついで逆転写を行って、qPCR分析における鋳型として使用するcDNAを得る(実施例1の第1.1節を参照されたい)。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、pc16g00660遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。Pc16g00660遺伝子配列のそれぞれ1122−1143位および1221−1201位に及ぶフォワードプライマーPc16g00660 U1(5’−TGAAGTTCGACGAGGACTGATG−3’)(配列番号18)およびリバースプライマーPc16g00660 L1(5’−CGCTTGAGACGTCAGGTTGTT−3’)(配列番号19)を設計する。該qPCR分析は、全ゲノムマイクロアレイ分析によっても検出された非常に強力かつ構成的な遺伝子発現レベルを証明している。該分析は製造条件下のPc16g00660の永久的かつ構成的な発現レベルを証明している。
【0078】
3.2.Pc16g00660プロモーター領域のクローニングおよび特徴づけ
以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、Pc16g00660プロモーター領域をクローニングする:Pc16g00660−for(5’−GTCAAAGCTTGATATGTGGAGCCTGCG−3’)(配列番号20)およびPc16g00660−rev(5’−TCATGCATGCTGGCGGTTCTGGAATCCAG−3’)(配列番号21)。プルーフリーディングPwo DNAポリメラーゼ(Roche)でのPCRにより得た1498bpのDNA断片をHindIIIおよびSphIで消化し、大腸菌(E.coli)uidA遺伝子およびペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)actターミネーター領域を含有する、HindIIIおよびSphIで消化されたプラスミドpGen4.5内にサブクローニングして、プラスミドpGen4.26を得る(実施例1第1.2節を参照されたい)。大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子をPc16g00660プロモーター領域に翻訳的に融合させる。SphI部位が、uidA遺伝子の開始メチオニンをコードするATG開始コドンの部分となるよう、該SphI部位を設計して、これを行う。増幅されたプロモーター領域、およびp−Pc16g00660とuidA遺伝子との間の融合領域の配列決定は、該プロモーター配列の正確さ、および正しいリーディングフレームでの後者のレポーター遺伝子の正確な配置を証明している。
【0079】
3.3.P−Pc16g00660により駆動されるペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)における大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子の発現
実施例1第1.3節に記載されているのと同じ方法により、pGen4.26を形質転換し、形質転換事象を確認する。サザン分析はプラスミドpGen4.26の存在を証明している。UIDA転写産物の存在はノーザンブロット分析およびqPCR分析による相対量により判定されうる。UIDA−プレートアッセイならびにノーザンおよびqPCR分析は、該形質転換P−Pc16g00660−uidA構築物が該異種細菌β−グルクロニダーゼ遺伝子を発現することを明らかに示している。
【0080】
3.4.Pc16g00660プロモーターの制御下のペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)におけるuidA遺伝子の発現
大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子を、実施例3の第3.2節に記載されているPc16g00660プロモーターに融合させる。uidA遺伝子の異種発現を定量的PCR(7900HT,Applied Biosystems)により特徴づける。実施例1の第1.4節に記載されているとおりに、uidA遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。RNAの単離および精製ならびにcDNA合成ならびにそれに続く定量的PCR分析(act遺伝子を対照として使用する)の操作を、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。Pc16g00660プロモーターの制御下にuidA遺伝子を含有する4つの独立したペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株をqPCRにより分析する。これらの株の全てにおいて、非常に高レベルのuidA mRNAが検出される。この結果は、該Pc16g00660−プロモーター−uidA構築物が異種uidA遺伝子および内因性Pc16g00660遺伝子を発現することを証明している。この結果は、発色性プレート培地上で観察される強力なUIDA酵素活性に符合している(実施例3第3.3節を参照されたい)。
【実施例4】
【0081】
4.1.ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)のPc21g04830遺伝子の定量的PCR発現分析
全ゲノムマイクロアレイ分析により検出された新規遺伝子Pc21g04830の高発現レベルを確認し定量するために、定量的PCR分析を行う。qPCR分析は、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。種々の条件下、すなわち、製造条件下で成長させた、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の菌糸から、全RNAを単離する。ついで逆転写を行って、qPCR分析における鋳型として使用するcDNAを得る(実施例1の第1.1節を参照されたい)。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、Pc21g04830遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。Pc21g04830遺伝子配列のそれぞれ490−510位および589−570位に及ぶフォワードプライマーPc21g04830 U1(5’−TTGTCCTGGTCTTTCCCCATT−3’)(配列番号22)およびリバースプライマーPc21g04830 L1(5’−CCAGGCCTACCGTACCATTG−3’)(配列番号23)を設計する。該qPCR分析は、全ゲノムマイクロアレイ分析によっても検出された非常に強力かつ構成的な遺伝子発現レベルを証明している。該分析は製造条件下のPc21g04830の永久的かつ構成的な発現レベルを証明している。
【0082】
4.2.Pc21g004830プロモーター領域のクローニングおよび特徴づけ
以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、Pc21g04830プロモーター領域をクローニングする:Pc21g04830−for(5’−GTCAAAGCTTGAATTCCATCGCCGGGTCGCC−3’)(配列番号24)およびPc21g04830−rev(5’−TCATGCATGCTCGAGGAAGGGAGGAGAGG−3’)(配列番号25)。プルーフリーディングPwo DNAポリメラーゼ(Roche)でのPCRにより得た1363bpのDNA断片をHindIIIおよびSphIで消化し、大腸菌(E.coli)uidA遺伝子およびペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)actターミネーター領域を含有する、HindIIIおよびSphIで消化されたプラスミドpGen4.5内にサブクローニングして、プラスミドpGen4.27を得る(実施例1第1.2節を参照されたい)。大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子をPc21g04830プロモーター領域に翻訳的に融合させる。SphI部位が、uidA遺伝子の開始メチオニンをコードするATG開始コドンの部分となるよう、該SphI部位を設計して、これを行う。増幅されたプロモーター領域、およびp−Pc21g04830とuidA遺伝子との間の融合領域の配列決定は、該プロモーター配列の正確さ、および正しいリーディングフレームでの後者のレポーター遺伝子の正確な配置を証明している。
【0083】
4.3.P−Pc21g04830により駆動されるペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)における大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子の発現
実施例1第1.3節に記載されているのと同じ方法により、pGen4.27を形質転換し、形質転換事象を確認する。サザン分析はプラスミドpGen4.27の存在を証明している。UIDA転写産物の存在はノーザンブロット分析およびqPCR分析による相対量により判定されうる。UIDA−プレートアッセイならびにノーザンおよびqPCR分析は、該形質転換P−Pc21g04830−uidA構築物が該異種細菌β−グルクロニダーゼ遺伝子を発現することを明らかに示している。
【0084】
4.4.Pc21g04830プロモーターの制御下のペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)におけるuidA遺伝子の発現
大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子を、実施例4の第4.2節に記載されているPc21g04830プロモーターに融合させる。uidA遺伝子の異種発現を定量的PCR(7900HT,Applied Biosystems)により特徴づける。実施例1の第1.4節に記載されているとおりに、uidA遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。RNAの単離および精製ならびにcDNA合成ならびにそれに続く定量的PCR分析(act遺伝子を対照として使用する)の操作を、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。Pc21g04830プロモーターの制御下にuidA遺伝子を含有する4つの独立したペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株をqPCRにより分析する。これらの株の全てにおいて、非常に高レベルのuidA mRNAが検出される。この結果は、該Pc21g04830−プロモーター−uidA構築物が異種uidA遺伝子および内因性Pc16g00660遺伝子を発現することを証明している。この結果は、発色性プレート培地上で観察される強力なUIDA酵素活性に符合している(実施例3第3.3節を参照されたい)。
【実施例5】
【0085】
5.1.ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)のPc21g20300遺伝子の定量的PCR発現分析
全ゲノムマイクロアレイ分析により検出された新規遺伝子Pc21g20300の高発現レベルを確認し定量するために、定量的PCR分析を行う。qPCR分析は、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。種々の条件下、すなわち、製造条件下で成長させた、ペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)の菌糸から、全RNAを単離する。ついで逆転写を行って、qPCR分析における鋳型として使用するcDNAを得る(実施例1の第1.1節を参照されたい)。Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、Pc21g04830遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。Pc21g20300遺伝子配列のそれぞれ103−121位および230−208位に及ぶフォワードプライマーPc21g20300 U1(5’−CTGCAGAGCGATGGTTGCT−3’)(配列番号26)およびリバースプライマーPc21g20300 L1(5’−TTGGAGACAGAGACTTGGTCCTT−3’)(配列番号27)を設計する。該qPCR分析は、全ゲノムマイクロアレイ分析によっても検出された非常に強力かつ構成的な遺伝子発現レベルを証明している。該分析は製造条件下のPc21g20300の永久的かつ構成的な発現レベルを証明している。
【0086】
5.2.Pc21g20300プロモーター領域のクローニングおよび特徴づけ
以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、Pc21g20300プロモーター領域をクローニングする:Pc21g20300−for(5’−GTCAGAATTCCCCTTCTGGTGATTG−3’)(配列番号28)およびPc21g20300−rev(5’−GCTGATGCATCTTGATGGATTGACT−3’)(配列番号29)。プルーフリーディングPwo DNAポリメラーゼ(Roche)でのPCRにより得た1359bpのDNA断片をEcoRIおよびNsiIで消化し、大腸菌(E.coli)uidA遺伝子およびペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)actターミネーター領域を含有する、EcoRIおよびNsiIで消化されたプラスミドpGen4.5内にサブクローニングして、プラスミドpGen4.30を得る(実施例1第1.2節を参照されたい)。大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子をPc21g20300プロモーター領域に翻訳的に融合させる。NsiI部位が、uidA遺伝子の開始メチオニンをコードするATG開始コドンの部分となるよう、該NsiI部位を設計して、これを行う。増幅されたプロモーター領域、およびp−Pc21g20300とuidA遺伝子との間の融合領域の配列決定は、該プロモーター配列の正確さ、および正しいリーディングフレームでの後者のレポーター遺伝子の正確な配置を証明している。
【0087】
5.3.P−Pc21g20300により駆動されるペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)における大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子の発現
実施例1第1.3節に記載されているのと同じ方法により、pGen4.30を形質転換し、形質転換事象を確認する。サザン分析はプラスミドpGen4.30の存在を証明している。UIDA転写産物の存在はノーザンブロット分析およびqPCR分析による相対量により判定されうる。UIDA−プレートアッセイならびにノーザンおよびqPCR分析は、該形質転換P−Pc21g20300−uidA構築物が該異種細菌β−グルクロニダーゼ遺伝子を発現することを明らかに示している。
【0088】
5.4.Pc21g20300プロモーターの制御下のペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)におけるuidA遺伝子の発現
大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子を、実施例5の第5.2節に記載されているPc21g20300プロモーターに融合させる。uidA遺伝子の異種発現を定量的PCR(7900HT,Applied Biosystems)により特徴づける。実施例1の第1.4節に記載されているとおりに、uidA遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを設計する。RNAの単離および精製ならびにcDNA合成ならびにそれに続く定量的PCR分析(act遺伝子を対照として使用する)の操作を、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。Pc21g20300プロモーターの制御下にuidA遺伝子を含有する3つの独立したペニシリウム・クリソゲナム(P.chrysogenum)株をqPCRにより分析する。これらの株の全てにおいて、非常に高レベルのuidA mRNAが検出される。この結果は、該Pc21g20300−プロモーター−uidA構築物が異種uidA遺伝子および内因性Pc21g20300遺伝子を発現することを証明している。この結果は、発色性プレート培地上で観察される強力なUIDA酵素活性に符合している(実施例3第5.3節を参照されたい)。
【実施例6】
【0089】
定量的PCR発現分析によるペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)の公知アクチンプロモーターに対する新規プロモーターP−Pc21g04830、P−Pc12g10000およびP−Pc16g00660の発現強度の比較
新規プロモーターP−Pc21g04830(配列番号4)、P−Pc12g10000(配列番号2)およびP−Pc16g00660(配列番号3)に融合したレポーター遺伝子uidAの発現の量を、同様にuidAに融合した(例えば、US 6,300,095 B1に記載されている)良く知られたペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)アクチンプロモーター(Gen Bankアクセッション番号AF056975)の発現レベルと比較するために、比較用の定量的PCR分析を行う。レポーター遺伝子uidAへの新規プロモーターP−Pc21g04830、P−Pc12g10000およびP−Pc16g00660の融合を、それぞれ実施例4の第4.4節、実施例2の第2.4.1節および実施例3の第3.4節に記載されているとおりに行う。発現レベルの比較のために、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)アクチンプロモーター領域(US 6,300,095 B1 ,Gen Bankアクセッション番号AF056975)を大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子に翻訳的に融合する。以下のオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、該アクチンプロモーター領域をクローニングする:acnP−P5B(5’−CACTTAAGCTTCCCGTATTATCCCCATC−3’)(配列番号30)およびacnP−P3B(5’−CCCTATGCATGCGTGACTGATTAAACAAGGG−3’)(配列番号31)。プルーフリーディングPwo DNAポリメラーゼ(Roche)でのPCRにより得た648bpのDNA断片をHindIIIおよびSphIで消化し、大腸菌(E.coli)uidA遺伝子およびペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)actターミネーター領域を含有する、HindIIIおよびSphIで消化されたプラスミドpGen4.5内にサブクローニングして、プラスミドpGen4.3を得る。大腸菌(E.coli)のuidA遺伝子を該アクチンプロモーター領域に翻訳的に融合させる。SphI部位が、uidA遺伝子の開始メチオニンをコードするATG開始コドンの部分となるよう、該SphI部位を設計して、これを行う。増幅されたプロモーター領域、および該アクチンプロモーターとuidA遺伝子との間の融合領域の配列決定は、該プロモーター配列の正確さ、および正しいリーディングフレームでの後者のレポーター遺伝子の正確な配置を証明している。
【0090】
定量的PCR(7900HT,Applied Biosystems)により、uidA遺伝子の異種発現を分析する。したがって、uidA遺伝子に対する特異的オリゴヌクレオチドを、実施例1の第1.4節に記載されているとおりに設計する。RNAの単離および精製ならびにcDNA合成ならびにそれに続く定量的PCR分析(アクチン遺伝子を対照として使用する)の操作を、実施例1の第1.1節に記載されているとおりに行う。結果は、Pc21g04830−プロモーター−uidA構築物、Pc12g10000−プロモーター−uidA構築物およびPc16g00660−プロモーター−uidA構築物が、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)アクチン−プロモーター−uidA構築物より少なくとも2〜4倍強力にuidA遺伝子を発現することを証明している。該データは、P−Pc21g04830、P−Pc12g10000およびP−Pc16g00660が、公知アクチンプロモーターより遥かに強力なプロモーターであることを明らかに証明している。
【0091】
引用文献
【0092】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1はPc12g09320プロモーター配列(配列番号1)を示す。
【図2】図2はPc12g10000プロモーター配列(配列番号2)を示す。
【図3】図3はPc16g00660プロモーター配列(配列番号3)を示す。
【図4】図4はPc21g04830プロモーター配列(配列番号4)を示す。
【図5】図5はPc21g20300プロモーター配列(配列番号5)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造に適した培地内で真菌宿主細胞[該真菌宿主細胞は、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1および少なくとも100ヌクレオチドであるこれらの部分配列ならびにこれらの変異体(該変異体およびハイブリドプロモータは該プロモーター配列のプロモーター活性の少なくとも約20%を有する。)、ハイブリッドおよび縦列プロモーターよりなる群から選ばれるプロモーター配列を含む第2核酸配列に機能的に連結された、該ポリペプチドまたは該核酸、好ましくは該アンチセンスRNAもしくは該ヘアピンRNAをコードする第1核酸配列を含む。]を培養する工程、および
(b)該ポリペプチドを該培地から単離する、または
(c)該ポリペプチドを該真菌宿主細胞から単離する工程
を含んでなる、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAの製造方法。
【請求項2】
工程(a)および/または工程(c)における真菌宿主細胞が糸状菌宿主細胞である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(a)および/または工程(c)における真菌宿主細胞がペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)またはアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)またはアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)またはペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1および少なくとも100ヌクレオチドであるこれらの部分配列よりなる群から選ばれる核酸配列を含んでなる単離された核酸配列。
【請求項5】
(a)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列に対して少なくとも80%の相同性を有する核酸配列、
(b)ストリンジェンシー条件(該ストリンジェンシー条件は、6×SSC、0.5% SDSでの室温で15分間の洗浄から開始し次いで2×SSC、0.5% SDSでの45℃で30分間の洗浄を繰返し次いで0.2×SSC、0.5% SDSでの60℃での洗浄を2回繰返す一連の洗浄と定義される。)下で(i)配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号1よりなる群から選ばれる配列、(ii)少なくとも100ヌクレオチドの(i)の部分配列または(iii)(i)もしくは(ii)の相補鎖にハイブリド形成する核酸配列、
(c)1以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含む(a)または(b)の核酸配列、
(d)(a)、(b)または(c)の対立遺伝子変異体、ならびに
(e)(a)、(b)、(c)または(d)の部分配列
よりなる群から選ばれる単離された核酸配列。
【請求項6】
請求項4または5記載の核酸配列に機能的に連結された、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNAをコードする核酸配列を含んでなる核酸構築物。
【請求項7】
請求項6記載の核酸構築物を含んでなる組換え発現ベクター。
【請求項8】
請求項6記載の核酸構築物を含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項9】
(a)真菌宿主細胞[該真菌宿主細胞は、配列番号4、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号1および少なくとも100ヌクレオチドであるこれらの部分配列ならびにこれらの変異体(該変異体およびハイブリドプロモータは該プロモーター配列のプロモーター活性の少なくとも約20%を有する。)、ハイブリッドおよび縦列プロモーターよりなる群から選ばれるプロモーター配列を含む第2核酸配列に機能的に連結された、該ポリペプチドまたは該核酸、好ましくは該アンチセンスRNAもしくは該ヘアピンRNAをコードする第1核酸配列を含む。]を、ポリペプチドまたは核酸、好ましくはアンチセンスRNAもしくはヘアピンRNA(これらは、該宿主細胞の代謝経路を調節し、それにより該小有機化合物の産生をもたらすよう意図されたものである。)の製造に適した培地内で培養する工程、
(b)該ポリペプチドまたはアンチセンスもしくはヘアピンRNAを発現させる工程、
(c)該小有機化合物を発酵ブロスから単離する工程
を含んでなる、発酵的製造により入手可能な小有機化合物の発酵的製造のための方法。
【請求項10】
発酵的製造による小有機化合物の製造のための、請求項4または5記載の核酸配列の使用。
【請求項11】
真菌宿主細胞の代謝の操作ならびに/もしくはその成長の操作ならびに/もしくは形態学的特徴および/もしくは芽胞形成の調節に関与する経路の操作のための、請求項4または5記載の核酸配列の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−523413(P2009−523413A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546252(P2008−546252)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012319
【国際公開番号】WO2007/071399
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】