説明

ヘアアレンジ器具

【課題】ヘアアレンジ器具を提供する。
【解決手段】櫛形に構成されたアレンジ作業部分2を含むヘアアレンジ器具であって、前記アレンジ作業部分2が2つの櫛歯列Z、Zを備え、前記櫛歯列Z、Zの一方が他方に対して変位可能であり、それぞれ一方の櫛歯列Zの1つの櫛歯Z1.1〜Z1.xと他方の櫛歯列Zの1つの櫛歯Z2.1〜Z2.xとの間の毛髪受取隙間Hを開閉するヘアアレンジ器具が、1つの毛髪受取隙間Hを取り囲む2つの櫛歯の一方Z2.1〜Z2.xが、前記毛髪受取隙間Hが閉止位置にあるときに相補的な櫛歯Z1.1〜Z1.xの根元と反対向きの表面に被さる髪分け延在部を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛形に構成されたアレンジ作業部分を含むヘアアレンジ器具であって、アレンジ作業部分が2つの櫛歯列を備え、櫛歯列の一方が他方に対して変位可能であり、それぞれ一方の櫛歯列の1つの櫛歯と他方の櫛歯列の1つの櫛歯との間の毛髪受取隙間を開閉するヘアアレンジ器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアアレンジ器具、例えばいわゆるストレートヘアアイロンは、ストレートヘアアイロンにおいては櫛形に構成されたアレンジ作業部分を具備することができる。この種のヘアアレンジ器具のアレンジ作業部分は、互いに離隔した櫛歯から構成された櫛列を含み、隣接して互いに間隔を空けて配置されたそれぞれ2つの櫛歯が、1つの毛髪受取隙間を取り囲む。ヘアアイロンを当てるプロセスのために、各毛髪受取部、または各毛髪受取部を取り囲む2つの櫛歯の少なくとも一方が、第1の成形部品を備える。この成形部品は、毛髪受取隙間を取り囲む他方の櫛歯に対して移動可能に取り付けられる。ヘアアレンジのプロセスのために予張力の下で互いに作用する2つの成形部品の間に毛髪受取隙間があり、その毛髪受取隙間に、アイロンを当てようとしている毛束が挿入される。そのようなアイロン当て自体は、アイロンを当てる髪の部分の毛根側の端部にヘアアレンジ器具を当てがい、毛髪受取部またはアレンジ作業部分の毛髪受取隙間内に毛束を挿入し、毛髪受取隙間によって捕捉された毛束をアレンジ作業部分を通して進めることによって行われる。これは、典型的には、髪をアレンジする人の頭に対してヘアアレンジ器具を適切に移動させることによって行われる。
【0003】
既知のヘアアレンジ器具によれば、移動可能に取り付けられた第1の成形部品は、それぞれ個々に1つの櫛歯にばねで取り付けられる。そのようなヘアアレンジ器具では、毛髪受取隙間への毛束の挿入は、第1の成形部品に及ぼされるばね要素の力に反して行われる。複数の毛髪受取隙間に毛髪または一束一束の毛束があるとき、アイロン当て移動が行われる。その際、個々の第1の成形部品に及ぼされるばね力が、アイロンを当てるプロセス中に毛髪に及ぼされる力を決定する。したがって、第2の成形部品は当接部材である。ヘアアイロンを当てるプロセスに必要な熱を供給するために、この既知のヘアアレンジ器具は、温風送風機を備え、その温風の流れがアレンジ作業部分内に送入される。アレンジ作業部分自体は、出ていく温風の流れがアレンジする髪に達するように、固定櫛歯の根元部分の領域内に空気出口開口を備える。
【0004】
特許文献1には、この種のさらなるヘアアレンジ器具が既知である。このヘアアレンジ器具は、前述したものと以下の点で異なる。すなわち、第1の成形部品がウェブによって互いに接続され、これらの成形部品は、全体として成形部品ユニットとして、復元ばねの力に反して固定櫛歯に対して移動させることができる。その際、調節要素によって、毛髪受取隙間が開かれる位置に成形部品ユニットを導くことができるように成されている。この利点は、それぞれの毛髪受取隙間内に挿入すべき毛束の導入を容易にすることができることである。さらに、この形態では、復元力、さらにはヘアアイロンを当てるプロセス中に毛髪に及ぼされる力を調節することもできる。この既知のヘアアレンジ器具も、ヘアアレンジに必要な熱を供給するために温風送風機を備える。
【0005】
櫛形に構成されたアレンジ作業部分を備える上記の種類のヘアアレンジ器具では、ヘアアレンジのプロセスで、毛束またはその一部がたびたび毛髪受取隙間から抜け出て、したがって、全くアイロンが当てられていない、または少なくとも十分にはアイロンが当てられていないことが指摘されている。この結果、望みのすべての髪にアイロンを当てるために、アイロン当て作業を何度も繰り返さなければならない。
【0006】
この問題に対処するために、特許文献2では、少なくとも櫛歯が互いに対してヘアアレンジ位置にあるときに、櫛歯間の毛髪受取隙間を櫛歯の根元の方向でアンダーカットすることが提案されている。それにより、狭窄位置の後に、そのような導入すべき毛髪の根元に向かう方向で毛髪受取隙間を拡大することができる。それにより、ヘアアイロンを当てるプロセスにおいて、ヘアアレンジプロセスのために、狭窄位置で2つの成形部品が部分的に接触することによって、2つの櫛歯間の毛髪受取隙間が閉じられる。したがって、ヘアアレンジプロセスの過程で、毛髪受取隙間内に受け入れられる毛束が多すぎる場合には、毛髪受取隙間の閉止を妨げている毛髪が毛髪受取隙間から抜け出る。それにより、2つの櫛歯間の毛髪受取隙間内で、アイロン当ての作業中に残っている毛束が多くなりすぎないことを保証する。
【0007】
特許文献2に既知のこのヘアアレンジ器具によって、アイロンを当てた際に満足の行く仕上がりが達成される。しかしながら、アイロン当ての作業中に2つの櫛歯が互いに接触し、それにより櫛歯の上面に向かう方向で毛髪受取隙間が制限される狭窄位置の内部にある1本1本の毛髪は、短時間であるにせよ、毛髪受取隙間または狭窄位置の幾何形状により、アイロン当て作業の過程でそこから引張り出されることがありえる。しかし、1本1本の毛髪に加わるそのような引張りは、ヘアアレンジのプロセス中に完全に避けることができることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1721539A1号
【特許文献2】ドイツ実用新案第20 2009 011 098 U1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた種類のヘアアレンジ器具を、ヘアアレンジのプロセス中に1本1本の毛髪が引張られる不快感がないように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、冒頭に挙げたこの種のヘアアレンジ器具であって、それぞれ、1つの毛髪受取隙間を取り囲む2つの櫛歯の一方が、毛髪受取隙間が閉止位置にあるときに相補的な櫛歯の根元と反対向きの表面に被さる髪分け延在部を有するヘアアレンジ器具によって解決される。
【0011】
このヘアアレンジ器具では、1つの毛髪受取隙間を取り囲む櫛歯対のそれぞれ一方の櫛歯が、髪分け延在部を備える。この髪分け延在部は、その髪分け延在部を支持する櫛歯と共に毛髪受取隙間を取り囲む他方の櫛歯の成形表面の上にある。髪分け延在部は、他方の櫛歯の根元と反対向きの表面に被さる。典型的には、この表面は、他方の櫛歯の上側終端部(上面)である。このように、毛髪受取隙間を閉止する過程において一方の櫛歯の髪分け延在部が他方の櫛歯の上へ被さることにより、固定櫛歯列に対する可動櫛歯列の摺動方向で髪分けが行われ、髪分け延在部はストッパに対して作用しない。したがって、このヘアアレンジ器具において、一形態では、毛髪受取隙間内に嵌まっていない毛髪が毛髪受取隙間から抜き出される。基本的には、表面、特に他方の櫛歯の上面に被さる髪分け延在部は、ほぼ隙間なく他方の櫛歯に被さることができる。しかし、公差のため、髪分け延在部の被さる部分と相補的な櫛歯の上面との間に移動隙間が残っていることが好ましく、この移動隙間は、ヘアアレンジ器具によってアレンジする髪の直径の少なくとも3倍〜6倍に相当する。それにより、図らずも髪分け延在部と他方の櫛歯との間に1本1本の毛髪が引っ掛かることはありえなくなる。
【0012】
髪分け延在部が相補的な櫛歯の上面の上に張り出すことにより、毛髪受取隙間内に導入すべき毛束の量を制限するための有効な髪分けが行われるだけでなく、同時に、ラビリンス構造により、アイロン当て作業中の毛髪のこぼれ落ちも避けられる。
【0013】
一方の櫛歯列の櫛歯にある髪分け延在部が上に張り出すという着想により、髪分け延在部は、髪を分けるために相補的に働く他方の櫛歯列の櫛歯の上面の上に張り出す。
【0014】
実際の髪分け延在部から櫛歯の上側頂点の方向に先細りしているような髪分け延在部を支持する櫛歯の形態が好ましい。
【0015】
典型的には、そのような髪分け延在部は、変位可能な櫛歯列の櫛歯に設けられる。それにもかかわらず、基本的には、移動される櫛歯に対する固定櫛歯も、そのような髪分け延在部を備えることができる。
【0016】
1つの好ましい例示的実施形態によれば、毛髪受取隙間を閉じるために変位可能な櫛歯列の櫛歯が他方の櫛歯列の櫛歯に対して移動される移動量は、ストッパによって制限され、すなわち、1つの毛髪受取隙間を取り囲む2つの櫛歯の成形表面が互いに接触せず、したがって2つの成形表面の間に隙間が残るように構成される。この隙間は、比較的小さい幅であるが、ヘアアレンジ器具によってアレンジする髪の直径の数倍大きい。したがって、アイロンを当てるプロセス中、アレンジする髪に加わる圧力はより小さいが、これにより、意外にも、アイロンを当てた仕上がりがより均一になり、またこのヘアアレンジ器具によってアレンジした髪の艶がより良くなる。
【0017】
この形態の変形形態では、毛髪受取隙間の閉止位置での他方の櫛歯列に対する変位可能な櫛歯列のストッパ構成を装備することができるようにされる。このような装備をできることは、アレンジ作業部分の閉止位置に残る隙間を、その幅に関して、典型的にはアイロンを当てる髪の太さに合わせて調節することができるようにするという目的に役立つ。この残余隙間の内幅は、大きすぎてはならず、好ましくは、アイロンを当てる髪の直径の5倍以下でなければならない。それにもかかわらず、隙間の内幅は、毛髪が引っ掛からないように、アイロンを当てる髪の直径よりも大きくすべきである。アイロンを当てる髪のタイプに応じて、髪の直径は様々である。したがって、上述した調節可能性によって、アイロンを当てる髪に残余隙間を適合させることができるようにする。
【0018】
髪分けをサポートするために、ヘアアレンジ器具は、固定櫛歯の上方に延びる櫛歯弓状部を備えることができる。櫛歯弓状部の幅は、好ましくは、毛髪受取隙間が開いているときにそのような櫛歯弓状部の下に少なくともほぼ1つの固定櫛歯と可動櫛歯が配置されるように設計される。櫛歯弓状部により、アレンジする髪が毛髪束に分けられ、これらが、櫛歯弓状部の下に配置された毛髪受取隙間に供給されることになる。移動される櫛歯列の櫛歯の他方の櫛歯に対するその後の閉止移動により、それぞれの相補的な櫛歯を越える髪分け延在部の移動によって、余剰の毛髪は毛髪受取隙間から除かれる。
【0019】
本発明のさらなる利点および形態は、添付図面を参照する以下の例示的実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ヘアアレンジ器具としての、櫛形に構成されたアイロン部分を有するヘアアイロン器具の側面図である。
【図2】ヘアアイロン器具の図1に示される部分を通る長手方向断面図である。
【図3】図1のヘアアイロン器具の一部の上面図である。
【図4】アイロン部分が開放位置にある状態での図2のヘアアイロン器具の図からの拡大部分図である。
【図5】アイロン部分が閉止位置にある状態での図4のヘアアイロン器具に対応する図である。
【図6】図5に示されるのと同様の、アイロン部分が閉止位置にある状態での図2のヘアアイロン器具に対応する長手方向断面図である。
【図7】アイロン部分が閉止位置にある状態でのヘアアイロン器具の図1に示される部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、ヘアアレンジ器具の例示的実施形態としてヘアアイロン器具1を部分図で示す。ヘアアイロン器具1は、アレンジ作業部分として、櫛形に構成されたアイロン部分2を有する。アイロン部分2に把持部3(一部のみ示す)がつながっている。把持部3の一部は、アイロン部分2を作動させるための作動要素である。図1は、ヘアアイロン器具1を下から閉じる第2の筐体半体なしで、アイロン部分2を含むヘアアイロン器具1の前部を示す。図1で見ることができる筐体半体5は1列の櫛歯弓状部6を含み、図2で見ることができるように、実質的なアイロン部分は、櫛歯弓状部6の下に配置される。それにもかかわらず、それらの櫛歯弓状部6によって、アイロンを当てる髪が一束一束の毛束に分けられるので、櫛歯弓状部6もアイロン部分2の一部とみなす。したがって、ヘアアイロン器具1は、櫛形に構成された器具である。櫛歯弓状部6は、ヘアアイロン器具1の長手軸方向で互いに間隔を空けられている。
【0022】
図2で見ることができるように、櫛歯弓状部6の下に、相互変位可能な2つの櫛歯列Z、Zがあり、図示する例示的実施形態では、櫛歯列Zが他方の固定櫛歯列Zに対して並進で変位可能である。櫛歯列Z、Zはそれぞれ櫛歯ユニットの一部であり、櫛歯ユニットは、熱伝導性の高い材料、例えばアルミニウムから、例えばアルミニウムダイカストによって一部片で作製される。櫛歯列Z、Zは、例えば特許文献2に記載されているものと同様に、相対移動可能である。この文献に対するここでの明示的な参照により、特許文献2における関連の実施形態も本実施形態の一部とみなす。
【0023】
櫛歯列Zの櫛歯Z2.1〜Z2.xは、それらの根元から、櫛歯列Zの櫛歯Z1.1〜Z1.xよりも高く延びる。櫛歯Z1.1〜Z1.xに対する櫛歯Z2.1〜Z2.xの構成は、図4および図5を参照して後で詳細に説明する。
【0024】
図1〜図4における図では、櫛歯列Zを有する櫛歯ユニットは、櫛歯列Zを支持する櫛歯ユニットに対するそれらの位置が開放位置であり、すなわちそれぞれ1つの櫛歯対Z1.1、Z2.1〜Z1.x、Z2.xの間の毛髪受取隙間Hが開いた位置にある。2つの櫛歯ユニットがこの相互位置にあるとき、毛髪を毛髪受取隙間H内に挿入することができる。図2に示されるように2つの櫛歯ユニットがこの相互位置にあるとき、櫛歯列Zを支持する櫛歯ユニットは、圧縮ばね7によって保定される。詳細には図示しない形態では、櫛歯列Zを有する櫛歯ユニットは、シーソーのように取り付けられた作動要素4に接続されて、櫛歯列Zを支持する櫛歯ユニットに対して変位する。
【0025】
図3は、アイロン部分2を有するヘアアイロン器具1の前部の上面図を示す。
【0026】
櫛歯Z1.1〜Z1.xと他方の櫛歯ユニットの櫛歯Z2.1〜Z2.xの構成は、図4の拡大図で見ることができる。この図では、櫛歯ユニットは、図2に示される相互の位置にある。したがって毛髪受取隙間Hは開いている。2つの櫛歯ユニットがこの相互位置にあるとき、櫛歯弓状部6の下に、それぞれ櫛歯列Zの1つの櫛歯Z1.1〜Z1.xと櫛歯列Zの1つの櫛歯Z2.1〜Z2.xがある。
【0027】
以下、1つの毛髪受取隙間Hを取り囲む櫛歯対Z1.1、Z2.1をより詳細に説明する。1つの毛髪受取隙間Hを取り囲む別の櫛歯対にも同じことが当てはまる。櫛歯列Zの櫛歯Z1.1は、相補的な櫛歯Z2.1に向いた成形表面8を有する。この成形表面8は、図示した例示的実施形態では平坦に設計されている。同様に、櫛歯Z2.1は、櫛歯Z1.1に向いた側に、相補的な成形表面8.1を備える。櫛歯Z2.1は、櫛歯Z1.1よりも高く延出し、櫛歯Z1.1よりも高く延出した部分に髪分け延在部9を支持する。髪分け延在部9は、成形表面8.1を越えて突き出た延在部として設計されており、2つの櫛歯ユニットが互いに対して閉止位置にあるときには、櫛歯Z1.1の上面10の上に張り出している。髪分け延在部9は、ほぼ矩形状に成形表面8.1から突き出た下面11を備え、この下面11が前側の髪分け縁部12につながる。髪分け縁部12から、櫛歯Z2.1は、開放位置で櫛歯Z2.1を取り囲む櫛歯弓状部6の頂点の方向へ先細りしている。この傾斜は参照符号13で示されている。
【0028】
毛髪受取隙間H内に導入された毛髪をアレンジするために、作動要素4が作動され、この作動によって、毛髪受取隙間Hを閉じるように櫛歯列Zが櫛歯列Zに対して移動される。櫛歯列Zを支持する櫛歯ユニットの変位は、圧縮ばね7の復元力に反して行われる。図5は、閉止位置での2つの櫛歯列Z、Zの配置を示している。この位置では、髪分け延在部9が、その髪分け縁部12と下面11の一部とで、櫛歯Z1.1の上面10の上に張り出している。櫛歯Z2.1の髪分け延在部9の下面11と、相補的な櫛歯Z1.1の上面10との間に隙間があり、その内幅は、ヘアアイロン器具1によってアイロンを当てる髪の平均の毛髪太さの数倍に相当する。この隙間は、例えば0.5〜0.6mmにすることができる。櫛歯列Zが櫛歯列Zに対して並進で閉止移動し、櫛歯列Zの櫛歯Z2.1〜Z2.xの髪分け延在部9が櫛歯列Zの櫛歯のそれぞれの上面10の上を進むとき、毛髪受取隙間H内に嵌まっていない毛髪は、毛髪受取隙間H内に残る毛髪から分けられて押し出される。この毛髪は、傾斜13により、櫛歯弓状部6間の間隙にゆっくりと押し出される。それにより、有効で効果的な髪分けが櫛歯弓状部の間隙内で行われ、その際、成形表面8、8.1の間の毛髪隙間H内には、ヘアアイロン当てプロセスを規定の通りに行うことができる毛髪量だけが残る。このとき、互いに平行に配置された成形表面8、8.1の間で毛髪が均等に分散するようにされていることが利用される。これにより、髪分け要素9が余剰の毛髪を櫛歯弓状部間隙から押し出すことができるようにすることが可能になる。櫛歯列Zの櫛歯の閉止位置では、髪分け延在部9が、相補的な櫛歯Zを取り囲む櫛歯弓状部6の下に係合する。
【0029】
ヘアアイロン器具1を通してアイロンを当てる髪を進めるプロセスにおいて、ヘアアイロン器具を通して毛髪を進める間に、毛髪受取隙間H内にある毛髪が、移動方向に対して横方向でヘアアイロン器具1から抜け出ないように、髪分け延在部9は、さらに、毛髪受取隙間Hの上側を閉じるための有効な要素として機能する。これに関して、相補的な櫛歯Z1.1、Z2.1;…;Z1.x、Z2.xの間にある隙間と、固定櫛歯Z1.1を取り囲む櫛歯弓状部6の下への髪分け延在部9の係合とが、ラビリンス構造を構成する。
【0030】
図5に示されるようにアイロン部分2が閉止位置にあるとき、櫛歯Zを支持する櫛歯ユニットが、ストッパ14(図6参照)に突き当たって止められる。ストッパ14は、櫛歯列Zを支持する櫛歯ユニットの移動可能量に関して、成形表面8、8.1が互いに接触しないように設計される。これは、従来のヘアアイロン器具で通例である。隙間15が残り、その内幅は、ヘアアイロン器具1によってアレンジする髪の太さよりも数倍大きい。典型的には、この隙間の内幅は、ヘアアイロン器具1によってアレンジする髪の太さの直径の2倍〜5倍に相当する。成形表面8、8.1の間に残るこの残余隙間は、例えば0.3〜0.4mmの内幅を有することができる。典型的には、この残余隙間の内幅は、髪分け延在部9の下面11と相補的な櫛歯の上面10との間の隙間よりも少し小さい。櫛歯Zを支持する櫛歯ユニットを他方の櫛歯ユニットに対して作動させることは、上述したように手動で行われる。ヘアアイロン器具1を通してアイロンを当てる髪を進めるとき、作動要素4に及ぼされる作動力とは無関係に、ヘアアイロン当てプロセスは、同じアイロン当て圧力によって行われる。櫛歯列Zを支持する櫛歯ユニットの変位移動は、最終的にはストッパで制限される。この着想では、毛髪受取隙間Hまたは残っている隙間15内にある髪に加わる圧力は、毛髪受取隙間内にある毛髪量によって定義される。この毛髪量はまた、ばらつきが小さい上述した髪分けによって予め与えられ、したがって、再現性があり、すべての毛髪受取隙間内に非常に均等な毛髪量が受け取られ、これによりさらに、アイロンを当てた仕上がりを均一にすることができる。作動要素4を作動させながら毛髪にアイロンを当てるためにヘアアイロン器具1を通して毛髪を進める場合、その後、圧縮ばね7に溜まったエネルギーによって櫛歯Zを支持する櫛歯ユニットが再び図1〜図4に示した位置に戻されるように作動要素4を解放することができる。ヘアアイロン当てプロセスは、同じ位置、あるいはまた別の位置で繰り返すことができる。
【0031】
図示した例示的実施形態では、櫛歯Zを支持する櫛歯列がPTC加熱要素によって加熱される。櫛歯Z2.1〜Z2.xが図1〜図4に示した開放位置にあるときには、このPCT加熱要素によって櫛歯Z2.1〜Z2.xも加熱される。
【0032】
図7は、毛髪受取隙間が閉じられた状態、すなわち使用位置でのヘアアイロン器具1の上記の部分を側面図で示す。櫛歯列Zの櫛歯の髪分け延在部9が、櫛歯列Zの櫛歯を取り囲む櫛歯弓状部6の下に係合する様子を明瞭に見て取ることができる。
【0033】
本発明を例示的実施形態に基づいて説明した。特許請求の範囲の効力範囲から逸脱することなく、本発明を実現することができる多くのさらなる形態が当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0034】
1 ヘアアイロン器具
2 アイロン部分
3 把持部
4 作動要素
5 筐体半体
6 櫛歯弓状部
7 圧縮ばね
8、8.1 成形表面
9 髪分け延在部
10 上面
11 下面
12 髪分け縁部
13 傾斜
14 ストッパ
15 隙間
H 毛髪受取隙間
、Z 櫛歯列
1.1〜Z1.x 櫛歯
2.1〜Z2.x 櫛歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛形に構成されたアレンジ作業部分(2)を含むヘアアレンジ器具であって、前記アレンジ作業部分(2)が2つの櫛歯列(Z、Z)を備え、前記櫛歯列(Z、Z)の一方が他方に対して変位可能であり、それぞれ一方の櫛歯列(Z)の1つの櫛歯(Z1.1〜Z1.x)と他方の櫛歯列(Z)の1つの櫛歯(Z2.1〜Z2.x)との間の毛髪受取隙間(H)を開閉するヘアアレンジ器具において、それぞれ、1つの毛髪受取隙間(H)を取り囲む2つの櫛歯の一方(Z2.1〜Z2.x)が、前記毛髪受取隙間(H)が閉止位置にあるときに相補的な櫛歯(Z1.1〜Z1.x)の根元と反対向きの表面(10)に被さる髪分け延在部(9)を有することを特徴とするヘアアレンジ器具。
【請求項2】
前記髪分け延在部(9)が、他方の櫛歯(Z1.1〜Z1.x)の表面(10)に被さる位置で、前記櫛歯(Z1.1〜Z1.x)の最大高さによって定義される前記櫛歯(Z1.1〜Z1.x)の頂点の上まで被さることを特徴とする請求項1に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項3】
前記髪分け延在部(9)が、他方の櫛歯(Z1.1〜Z1.x)の上面(10)に向いた下面(11)で、被さった櫛歯(Z1.1〜Z1.x)の幾何形状と相補的な幾何形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項4】
前記髪分け延在部(9)が、他方の櫛歯(Z1.1〜Z1.x)の上面(10)に被さる位置で、移動隙間によって前記上面(10)から間隔を空けられ、前記移動隙間が、好ましくは、ヘアアレンジ器具(1)を用いてアレンジする髪の直径の数倍に相当する比較的大きな内幅を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項5】
前記毛髪受取隙間(H)と反対向きの前記髪分け延在部(9)の外面が、前記髪分け延在部(9)を支持する櫛歯(Z2.1〜Z2.x)の上側終端部の方向へ先細りしていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項6】
前記髪分け延在部(9)の下にある、1つの毛髪受取隙間(15)を取り囲む2つの櫛歯(Z1.1〜Z1.x、Z2.1〜Z2.x)の互いに向かい合う成形表面(8、8.1)が互いに平行であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項7】
毛髪受取隙間(H)が開かれたときに、前記櫛歯(Z1.1〜Z1.x、Z2.1〜Z2.x)が、櫛歯弓状部(6)内に少なくとも部分的に受け取られることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項8】
毛髪受取隙間(H)が開かれたときに、それぞれ一方の櫛歯列(Z)の1つの櫛歯(Z1.1〜Z1.x)と他方の櫛歯列(Z)の1つの櫛歯(Z2.1〜Z2.x)とが、共通の櫛歯弓状部(6)の下に配置されることを特徴とする請求項7に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項9】
各櫛歯列(Z、Z)の櫛歯(Z1.1〜Z1.x、Z2.1〜Z2.x)が、一部片で作製された櫛歯ユニットの一部であり、熱伝導性の高い材料から製造され、前記2つの櫛歯ユニットの少なくとも一方に、前記櫛歯ユニットを加熱するための電気的な加熱機構が接続されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項10】
前記毛髪受取隙間(H)を閉じるために前記変位可能な櫛歯列(Z)が前記他方の櫛歯列(Z)に対して移動する移動量がストッパ(14)によって制限され、1つの毛髪受取隙間(H)を取り囲む櫛歯(Z1.1〜Z1.x、Z2.1〜Z2.x)の互いに向かい合う成形表面(8、8.1)の間に、小さい幅であるが、ヘアアレンジ器具(1)によってアレンジする髪の直径の数倍に相当する幅を有する隙間(15)が残るようにすることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項11】
前記隙間(15)の幅が、前記ヘアアレンジ器具(1)によってアレンジする髪の直径の約2倍〜5倍に相当することを特徴とする請求項10に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項12】
前記毛髪受取隙間(H)を閉じるために、前記変位可能な櫛歯列(Z)が少なくとも1つの復元要素(7)の力に反して他方の櫛歯列(Z)に対して移動可能であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項13】
前記毛髪受取隙間(H)を開いておくために前記櫛歯列(Z)が他方の櫛歯列(Z)に対して保定されるように、前記変位可能な櫛歯列(Z)に対して少なくとも1つの復元要素(7)が作用することを特徴とする請求項12に記載のヘアアレンジ器具。
【請求項14】
ヘアアイロン器具として設計されることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項に記載のヘアアレンジ器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−232138(P2012−232138A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105222(P2012−105222)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【出願人】(501173793)ダブリュアイケー ファー イースト エルティーディー. (7)
【Fターム(参考)】