説明

ヘアカールおよび/またはヘアスタイリング用の装置

【課題】取り扱いやすく、作業時間を短縮できると同時に、カールヘアの仕上りを向上させ、かつ、その持続時間も延ばすことのできるヘアカールおよび/またはヘアスタイリング用の装置を提供する。
【解決手段】本発明のヘアカールおよび/またはヘアスタイリング用の装置は、把持部2、第1のアーム4および第2のアーム5を備える。第1のアーム4および第2のアーム5は、それぞれの第1端部6,7で把持部2に接続されており、かつ、長手方向の軸心Xにほぼ沿って、互いに平行に並列配置されている。本発明の装置は、さらに、第1のアーム4および第2のアーム5のうちの少なくとも1つを加熱する加熱手段24,25を備え、第1のアーム4は、把持部2に固定された固定半アーム部14と、その固定半アーム部14に弾性支持された可動半アーム部16とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカールおよび/またはヘアスタイリング用の装置に関し、特に、ヘアカールおよび/またはヘアスタイリング用の電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカール用の電気装置は、既知のように広く普及しており、家庭や美容院で使用されている。
【0003】
一般的に、髪(髪の毛)の房にカールおよび/またはスタイリングを施すには、加熱可能な円柱体に髪の毛を巻き付け、そのまま何分間か固定した後、髪の毛を離すという方法が取られる。このように、加熱された円柱体に髪の房を巻き付けて数分間固定することにより、その髪の房はカール状を成すようになる。
【0004】
この種の方法を実行するための装置として、例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3には、表面全体を加熱可能な円柱体と、ユーザ(使用者)が操作可能なレバーに連結した狭持部とを一般的に備える、いわゆるカールアイロン(ヘアアイロン)が開示されている。レバーを押圧することによって狭持部が開き、その狭持部と円柱体との間に髪の房が容易に挿入される。その後、レバーを解放することにより、髪の房を挟むかたちで狭持部が円柱体に再び当接する。狭持部と円柱体との間に髪の房が固定された状態で装置を手またはモータで回転させることにより、挟まれずに残った部分の髪の房を、円柱体を中心としてカールさせることができる。このように、髪の房の全長を加熱された円柱体に巻き付けてその状態を十分保持することにより、髪の毛を所望のスタイルにセットすることができる。以上の作業が終了したならば、レバーを再び押圧して狭持部を開き、髪の毛を離せばよい。
【0005】
しかしながら、このようなカールアイロンには、円柱体に巻き付けられた髪の毛が狭持部にも巻き付くことで、髪の房を離すためのレバーの押圧操作が困難になるという欠点がある。また、狭持部を動かして髪の毛を離すためのレバーが、カールアイロンを回転させた後に、ユーザが簡単に操作できない位置に来ている場合がある。さらに、カールを施すための円柱体に髪の毛を巻き付ける際に、髪の毛を離すレバーが設けられた把持部の部位にも誤って髪の毛を巻き付けてしまうことがある。そのような場合、レバーの押圧はさらに困難になる。
【0006】
このようなカールアイロンの別の欠点として、満足のいく仕上りを得るには、髪の房の保持時間が極めて長くなるだけでなく、カールを施すためのこのような動作を髪の房ごとに繰り返さなければならないことが挙げられる。また、さらなる欠点として、狭持部を押し付ける方向に髪の房が巻き付いてしまうと、見栄えの良くない髪型に仕上がってしまう点が挙げられる。
【0007】
また、近年、いわゆる「プレート」を用いた、第2のカール方法が利用されている。プレートとは、両側から髪の毛を挟み込むように構成された2つの長くて平坦なアームを備え、対向するアーム内面同士は加熱可能であるがアーム外面は加熱可能でない装置のことを指す。プレートは、例えば、特許文献4に記載されている。なお、この種の装置は前述のカールアイロンとは異なり、本来は動かさずに使用されるものであり、さらに、髪の毛をストレートに整えるために用いられる場合が多いので、ヘアストレーナーとも称される。まず、このプレートに髪の房を巻き付けてしっかりと保持し、その巻付け方向に180°または360°回転させる。次に、プレートを持っている方とは反対の手で髪の房をしっかり保持しながら、プレートを上方から下方にスライドさせる。そして、髪の房を離すと、加熱されたプレートに巻き付けられた髪の房はカール状を成すようになる。前述のカールアイロンではこのスライド方法を用いることはできない。なぜなら、髪の房は狭持部によって固定されているので、カールアイロンを下方にスライドさせようとすると、髪の毛の一部が引っ張られてしまうからである。
【0008】
この方法を利用すれば、髪の毛にカールおよび/またはスタイリングを施すのに必要な作業時間を短縮することができるものの、幾つかの欠点も見受けられる。事実、プレートを用いる方法は、カールアイロンを用いる方法よりも短時間で結果を得られるが、髪の毛はアーム間を通過するときしか加熱されないので、施したカールおよび/またはスタイリングが短期間で元の状態に戻ってしまう。また、プレートを用いる方法では、スライド可能な範囲が限られているので、髪の毛の根元に近い部分で一貫した(ばらつきがなく一様な)カールを得ることは極めて困難になる。さらなる欠点として、スライド中はプレートを閉じるために力をかけ続けなければならないので、使用が厄介になる点が挙げられる。
【0009】
基本的に、プレートを用いて得られた仕上りは、カールアイロンを用いて得られた仕上りよりも弱く、かつ、持続時間も短い。
【0010】
特許文献5には、把持部と、2つの半円柱部を形成するように先端部から基部まで開かれた加熱可能な円柱体と、円柱体の内側に挿入されその円柱体の全長にわたって延びるブレードとを備えるヘアカール用の電気装置が記載されている。使用中でない状態のブレードは、2つの半円柱部の内側の面に対して平行なので、髪の毛が挿入しやすくなっている。髪の毛を挿入した後、手でボタンを押すことによってブレードが回転し、ブレードが2つの半円柱部の内側の面に斜め方向に当接することで髪の毛が保持される。
【0011】
このような装置では、レバーおよびレバーで動かされて髪の毛を固定する狭持部を省略することができる。しかしながら、髪の毛を固定するためのブレードやブレードを操作するボタンが存在するため、装置の大きさの問題や取扱い性の問題が依然として残る。さらに、このような装置は髪の毛をブレードで保持するので、上述の第2の方法を利用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1417905号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0022836号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/076032号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0037625号明細書
【特許文献5】米国特許第4479047号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
出願人は、先行技術の装置が取り扱いにくく、一貫した仕上りを得るのに極めて長時間を要することに着目した。
【0014】
さらに、出願人は、先行技術の装置では、十分な保持時間をかけても髪の房に満足のいくカールを形成することができず、特に、髪の毛の根元に近い部分において満足のいく仕上りを得られないことに着目した。
【0015】
これらの点に鑑みて、本願の技術的課題は、取り扱いやすく、作業時間を短縮すると同時に、カールヘアの仕上りを向上させ持続時間も延ばすことのできる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、請求項1に記載の装置に関する。任意の好ましい特性は、従属請求項に記載されている。
【0017】
詳細には、本発明は、ヘアカール用の装置に関するものであり、把持部、第1のアームおよび第2のアームを備え、
前記第1のアームおよび第2のアームは、それぞれの第1端部で前記把持部に接続されており、かつ、長手方向の軸心にほぼ沿って、互いに平行に並列配置されており、
さらに、前記第1のアームおよび第2のアームのうちの少なくとも1つを加熱する加熱手段を備えており、
前記第1のアームが、前記把持部に固定された固定半アーム部と、その固定半アーム部に弾性支持された可動半アーム部とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明の装置では、2つのアーム間に髪の房が挿入されるとアーム同士が離れるように動けるので、レバーや狭持部などの機械装置を使用せずとも、髪の房をアームの全長にわたって適切に位置決めしてカールを施すことができる。よって、本発明の装置は、スライド動作によってカールを施す前述の第2の方法を利用することができ、かつ、仕上りも良好で持続時間も長いので、取扱い性が大幅に向上し、作業時間も大いに短縮することができる。さらに、本発明の装置は、髪の毛にカールを施す過程で障害となるおそれのある機械要素、例えば、カールを施す髪の房を固定したり離したりするたびに用いられる狭持部やブレード、これらに接続されたレバーやボタンなどの要素を備えない。そのため、本発明の装置は2つの方法で使用可能であり、融通性および簡便性に優れている。さらに、上述のような種類の要素を備えないことにより、髪の毛の根元に近い部分にもカールを施すことができる。一般的に、このような根元に近い部分は、先行技術の装置では大きさが問題となって届きにくく、満足のいく髪の房のカールを得ることができないとされている。
【0019】
操作を必要とする機械要素がないので、ユーザの手は自由になる。これにより、例えば、必要に応じて髪の房をしっかりと保持することができ、また、作業の終了時に髪の房を離しやすくなるので、髪の毛のカール作業が改善される。
【0020】
本願明細書および特許請求の範囲において、「軸心にほぼ沿って」や「長手方向の軸心にほぼ沿って」という用語は、「軸心に正確に沿って」という意味と、「軸心から少しずれた仮想的な直線に沿って」という意味の両方を内包する。また、「ほぼ平坦」、「ほぼ半円柱」および「ほぼ円柱」という用語は、それぞれ、「平坦」、「半円柱」、「円柱」という意味を内包するだけでなく、これらのような形状から眼では判断できない程度に逸脱した形状、さらには、これらのような形状と全体的にほぼ同一である形状も指す。最後に、「互いにほぼ並列配置された(複数のアームまたはアーム部)」という用語は、互いに対向する(複数の)アームまたはアーム部はもちろん、両者間の隙間が極めて小さい(複数の)アームまたはアーム部も指す。
【0021】
好ましくは、第2のアームも、前記把持部に固定された固定半アーム部と、その固定半アーム部に弾性支持された可動半アーム部とを有する。
【0022】
これにより、いずれの可動半アーム部も、対応する固定半アーム部に対して移動可能となる。よって、これら可動半アーム部間に髪の房を挿入することで可動半アーム部同士の間隔が増加するので、髪の房の挿入がより簡単に行えるようになる。
【0023】
好ましくは、前記第1のアームおよび第2のアームは、いずれも、全体としてほぼ半円柱形であり、それぞれ、可動半アーム部に形成された第1の平坦面と、固定半アーム部に形成された第2の凸状面とを有し、前記平坦面同士は対向し、前記凸状面同士は背を向けるように配置されている。
【0024】
このような構成には、第1のアームと第2のアームとによって形成される部材が、髪の房を巻き付けてカールを施すのに最も好適とされる、ほぼ円柱形を成すという利点がある。
【0025】
好ましくは、このヘアカール用の装置が使用中でない状態で、前記第1のアームの可動半アーム部および前記第2のアームの可動半アーム部は、アームの全長にわたって互いにほぼ並列配置されている。
【0026】
好ましくは、このヘアカール用の装置が使用中でない状態で、前記第1のアームの可動半アーム部および前記第2のアームの可動半アーム部が、所定の距離だけ離れて配置されている。
【0027】
好ましくは、前記加熱手段は、第1の加熱要素および第2の加熱要素を有しており、その第1の加熱要素および第2の加熱要素のそれぞれが、対応する可動半アーム部に収容されている。変形例として、前記第1の加熱要素および第2の加熱要素のそれぞれが、対応する固定半アーム部に収容されていてもよい。より好ましくは、前記加熱手段は、可動半アーム部および固定半アーム部の両方を加熱するのに適した少なくとも1つの加熱要素を有している。
【0028】
事実、出願人は、持続時間の長い一貫したカールを比較的短時間で得るためには、髪の房を巻き付けてカールを施すための表面の全体を加熱することが基本的に必要であると気付いた。このように表面全体が加熱されることにより、髪の房全体を、カールをセットするのに必要な時間中ずっと加熱することができる。
【0029】
好ましくは、前記可動半アーム部のそれぞれは、対応するアームの、前記把持部とは反対側の第2端部にヘッド部を有する。
【0030】
前記ヘッド部により、2つの可動半アーム部の隙間に髪の房を案内しやすくなる。
【0031】
好ましくは、前記ヘッド部は、断熱材で構成されている。
【0032】
これにより、加熱手段で発生した熱は装置の先端部に伝わらないので、装置の取扱い性が向上し、さらに、ユーザおよび/またはカールを施されている人間が火傷を負う心配もない。
【0033】
好ましい一実施形態では、前記アームのうちの少なくとも1つのアームにおける固定半アーム部の凸状面に、少なくとも1つの畝(リブ)が前記長手方向の軸心Xを横切って延びるように形成されている。「少なくとも1つの畝が前記長手方向の軸心Xを横切って延びるように形成されている」とは、少なくとも1つの畝が、軸心Xに沿って配設されているのではなく、軸心Xに対して傾いて配設されていること、特に、軸心Xに対して垂直に配設されていることを意味する。
【0034】
畝は、髪の房をアームの周りに適切に位置決めするガイドとして機能し、カール作業中に髪の房がヘアカール用の装置から簡単に離れないようにしたり、髪の房の上に同じ髪の房が重なってカールされることを防いだりする。髪の房は、1巻きずつアームの隣合う畝の間にくるように、繰り返し巻き付けられる。
【0035】
前記第1のアームの畝は、前記第2のアームの畝と整列していてもずれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の装置の第1の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の装置の一部を示す側面図である。
【図3】図1および図2の装置を、図2の線III −III に沿って切断した断面図である。
【図4】図1〜図3の装置の一部を示す分解図である。
【図5】図4の詳細を示す分解図である。
【図6】本発明の装置の第2の好ましい実施形態を示す側面図である。
【図7】本発明の装置の第3の好ましい実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の装置のさらなる特徴および利点は、添付の図面を用いた、本発明の例示的な好ましい実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【0038】
図1〜図5において、符号1は、本発明の第1の実施形態であるヘアカール用の装置を示す。装置1は、把持部2、第1のアーム4および第2のアーム5を備え、第1のアーム4および第2のアーム5は、長手方向の軸心Xに沿って延びる、ほぼ同一のアームである。これら2つのアーム4,5は、把持部2と一直線状になるように、互いに平行に並列配置されている。第1のアーム4の一方の側は、その第1端部6で把持部2に接続されている。同様に、第2のアーム5も、その第1端部7で把持部2に接続されている。これら2つのアーム4,5は、互いに独立して把持部2に接続されている。
【0039】
図3〜図5に示すように、第1のアーム4は、把持部2に固定された固定半アーム部14と、その固定半アーム部14に弾性支持された可動半アーム部16とを有する。同様に、第2のアーム5は、把持部2に固定された固定半アーム部15と、その固定半アーム部15に弾性支持された可動半アーム部17とを有する。
【0040】
第1のアーム4および第2のアーム5は、いずれも、全体としてほぼ半円柱形であり、それぞれ、第1の表面として可動半アーム部16,17に形成された平坦面18,19と、第2の表面として固定半アーム部14,15に形成された凸状面20,21とを有する。平坦面18,19同士は対向し、凸状面20,21同士は背を向けるように配置されている。
【0041】
半可動アーム部16,17のそれぞれには、対応する加熱要素24,25で構成される加熱手段を収容するための座部22,23が形成されている。このような位置に配置された加熱要素24,25は、動作時において、アーム4,5の平坦面18,19および凸状面20,21の両方を良好に加熱する。好ましくは、加熱要素24,25は、適切な出力を有する公知の種類の電気抵抗であり、例えば、170℃から250℃の温度に達する、電気抵抗体、PTC(positive temperature coefficient heater, 正の温度係数を有するヒーター)、セラミック抵抗体(セラミックヒーター)などである。変形例として、または上述の構成に追加して、加熱要素24,25のそれぞれが、対応する固定半アーム部14,15に収容されてもよい。
【0042】
装置1の使用中でない状態において、第1のアーム4の可動半アーム部16および第2のアーム5の可動半アーム部17は、アーム4,5の全長にわたって互いにほぼ並列配置されている。可動半アーム部16,17同士は、所定の距離だけ離れて配置されている。図示の使用中でない状態の装置1において、平坦面18,19同士は、それらの全長にわたって一定の距離だけ離れて対向する。図1〜図5に示す実施形態において、この距離はほぼゼロ、すなわち、2mm未満である。このようにして、2つの平坦面間には、極めて狭い隙間3が形成される。
【0043】
固定半アーム部14は金属の形材から形成され、図3の断面図に示すように、凸状面20に沿って延びる主要部26を有する。主要部26の側部には2つの対向する案内爪部28,30が設けられており、これら案内爪部28,30は、可動半アーム部16の平坦面18に対してほぼ垂直な方向に延びている。案内爪部28,30のそれぞれの端部には、外方に延びる突部32,34が設けられている。
【0044】
可動半アーム部16も金属の形材から形成され、図3の断面図に示すように、平坦面18に沿って延びる主要部36を有する。主要部36の側部には2つの対向する案内爪部38,40が設けられており、これら案内爪部38,40は、固定半アーム部14の主要部26に対向するようにして平坦面18のほぼ垂直方向に延びている。案内爪部38,40のそれぞれの端部には、内方に延びる突部42,44が設けられている。
【0045】
固定半アーム部14と可動半アーム部16とは、それぞれの案内爪部28,30および38,40によって係合している。詳細には、図3から明らかなように、案内爪部38,40と案内爪部28,30とが重なり合うようにして、固定半アーム部14の各突部32,34と可動半アーム部16の各突部42,44とが係合している。これにより、固定半アーム部14からの可動半アーム部16の脱離が妨げられている。
【0046】
第2のアーム5の構造は、上述した第1のアーム4の構造と同一である。つまり、第2のアーム5の固定半アーム部15は金属の形材から形成され、図3の断面図に示すように、凸状面21に沿って延びる主要部27を有する。主要部27の側部には2つの対向する案内爪部29,31が設けられており、これら案内爪部29,31は、可動半アーム部17の平坦面19に対してほぼ垂直方向に延びている。案内爪部29,31のそれぞれの端部には、外方に延びる突部33,35が設けられている。
【0047】
同様に、可動半アーム部17も金属の形材から形成され、図3の断面図に示すように、平坦面19に沿って延びる主要部37を有する。主要部37の側部には2つの対向する案内爪部39,41が設けられており、これら案内爪部39,41は、固定半アーム部15の主要部27に対向するようにして平坦面19のほぼ垂直方向に延びている。案内爪部39,41のそれぞれの端部には、内方に延びる突部43,45が設けられている。
【0048】
第1のアーム4の場合と同様に、固定半アーム部15と可動半アーム部17とは、それぞれの案内爪部29,31および39,41によって係合している。詳細には、図3から明らかなように、案内爪部39,41と案内爪部29,31とが重なり合うようにして、固定半アーム部15の各突部33,35と可動半アーム部17の各突部43,45とが係合している。これにより、固定半アーム部15からの可動半アーム部17の脱離が妨げられている。
【0049】
各アーム4,5は、固定半アーム部14,15と可動半アーム部16,17との間に、可動半アーム部16,17を固定半アーム部14,15から遠ざけるように弾性的に押圧する弾性手段を有している。この押圧により、使用中でない状態の可動半アーム部は、図1〜図5に示す位置、詳細には、図3に示す位置を取る。これらの弾性手段は、それぞれ、符号10,11として概略図示されている。弾性手段10,11は、様々な種類のばね(板ばね、コイルばね、針ばねなど)、または他の種類の弾性体であってもよい。
【0050】
各アーム4,5は、さらに、把持部2とは反対側の第2端部8、9にヘッド部50,51を有する。
【0051】
ヘッド部50,51は、可動半アーム部16,17に取り付けられている。このために、図4および図5から明らかなように、ヘッド部50,51にはタング52,53が設けられている。タング52,53は、座部22,23における、第2端部8,9に最も近くかつ加熱要素24,25が設けられていない部位に挿入される。ヘッド部50,51は、軸心Xに対して傾いた前壁54,55を有するように、テーパ状に形成されている。これら2つのヘッド部50,51の前壁54,55は、2つのアーム4,5間にカールを施す髪の房を挿入するための凹状空間60を形成するように対向している。ヘッド部50,51は、アーム4,5に連結可能なように、傾いた前壁54,55が設けられている側とは反対側の形状がアーム4,5の形状と合致している。
【0052】
各ヘッド部50,51は、断熱材、例えば、公知のプラスチック材料、好ましくは、PPSなどの射出成形可能な種類のプラスチック材料で構成されている。
【0053】
装置1には、さらに、加熱要素24,25に給電するための電気接続部(図示せず)が設けられている。このような電気接続部は、公知の方法によって加熱要素24,25の加熱を調節する、電力調節部材(図示せず)を備えている。
【0054】
装置1の動作の手順を以下に説明する。
【0055】
図1および図2から理解されるように、本発明の装置1を用いて髪の毛をカールするには、まず、カールを施す髪の房を、ヘッド部50,51間の凹状空間60からアーム4,5の平坦面18,19間の隙間3に挿入する。このとき、2つの可動半アーム部16,17同士は、離れるように付勢されて弾性手段10,11を圧縮し、平坦面18,19間の隙間3の幅を増加させる。このように、髪の房は、弾性手段10,11による可動半アーム部16,17の弾性的な付勢によって優しく保持されたまま、2つのアーム4,5間に固定される。
【0056】
次に、軸心Xを中心として装置1を回転させることにより、髪の房が2つのアーム4,5の周りに巻き付けられる。図示しない他の実施形態において、2つのアーム4,5で構成されるアセンブリを、適切な指令でユーザが起動させる電気モータにより、把持部に対して回転させるようにしてもよい。
【0057】
髪の房が巻き付けられたアーム4,5は、髪の毛にカールを施すのに必要な時間だけ加熱される。この時間中、加熱要素24,25が給電されてアーム4,5を加熱する。装置1の構成では、給電、つまり、加熱は、髪の房が巻き付けられたときにのみ行われるか、または髪の房が巻き付けられる前から行われ、後者の場合、給電、加熱が恒久的に行われることもある。
【0058】
その後、装置は、髪の毛にカールが施されている人間の頭部からスライドするようにして取り外される。場合によっては、他方の手で髪の房をしっかりと保持しながら、装置をスライドさせてもよい。これにより、髪の毛が引っ張られることによる不快感を防ぐか、その不快感を少なくとも軽減させることができる。
【0059】
このようにして、髪の房は、全体が加熱されたアームに巻き付けられた状態でスライドされるので、作業時間の短縮につながる。さらに、これらの作業を行うにあたって、髪の房を固定したり解放したりするための狭持部や他の機械装置が必要にならない。これにより、本発明の装置は、取扱い性の観点から大いに有利である。
【0060】
本発明の装置によって得られるカールは、プレートを用いた公知の方法で得られるカールよりも見栄えがはるかに向上する。また、本発明の装置を用いれば、髪の毛の根元に近い部分まで、さらには、薄い髪の毛の場合でも、髪の毛にドラマチックなカールおよび/またはスタイリングを施すことができ、かつ、形状の持続時間も長くなる。さらに、カールを得るのに必要な時間も、従来のカールアイロンを使用した場合よりも約40%短縮することができる。
【0061】
図6に、本発明の装置の第2の好ましい実施形態を示す。図1〜図5に示す第1の実施形態との唯一の違いは、使用中でない状態でも、2つの平坦面18,19間の距離、すなわち、隙間3’の幅が、2mmから10mmに設定されている点である。それ以外のすべての構成は第1の好ましい実施形態と変わらないので、図6に示す符号は、隙間3’以外はすべて図1〜図5と同一である。
【0062】
第2の好ましい実施形態は、極めて太い髪の房を取り扱う場合に好適である。
【0063】
図7に、本発明の装置の第3の好ましい実施形態を示す。この実施形態では、固定半アーム部14,15の各凸状面20,21に、髪の房をアーム4,5に巻き付ける際に髪の房を案内して位置決めするための少なくとも1つの畝70,71、例えば、一連の畝70,71が形成されている。この少なくとも1つの畝70,71は、長手方向の軸心Xを横切って延びるように設けられていてもよい。
【0064】
詳細には、第1のアーム4の凸状面20に形成された畝70は、第2のアーム5の凸状面21に形成された畝71に対して長手方向の位置がずれており、すなわち、畝70,71は整列していない。
【0065】
この構成では、カールを施すための髪の房の巻付けを、極めて良好に行うことができる。事実、一方のアームの畝は他方のアームの畝に対して偏位しているので、髪の房をアームの周りに巻き付ける際、アームの長さ方向に対して斜めに位置決めされるように、髪の房を一方のアームから他方のアームへと2つの隣合う畝間の空間に案内することができる。
【0066】
これにより、カール作業が完了する前に髪の房が装置から簡単に滑り落ちたり、髪の房の上に同じ髪の房が巻き付いたりするおそれを軽減することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 ヘアカール用の装置
2 把持部
4 第1のアーム
5 第2のアーム
6,7 第1端部
14 固定半アーム部
16 可動半アーム部
24,25 加熱手段
X 長手方向の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘアカール用の装置であって、把持部(2)、第1のアーム(4)および第2のアーム(5)を備え、
前記第1のアーム(4)および第2のアーム(5)は、それぞれの第1端部(6,7)で前記把持部(2)に接続されており、かつ、長手方向の軸心(X)にほぼ沿って、互いに平行に並列配置されており、
さらに、前記第1のアーム(4)および第2のアーム(5)のうちの少なくとも1つを加熱する加熱手段(24,25)を備えるヘアカール用の装置(1)において、
前記第1のアーム(4)が、前記把持部(2)に固定された固定半アーム部(14)と、その固定半アーム部(14)に弾性支持された可動半アーム部(16)とを有することを特徴とするヘアカール用の装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘアカール用の装置において、
前記第2のアーム(5)も、前記把持部(2)に固定された固定半アーム部(15)と、その固定半アーム部(15)に弾性支持された可動半アーム部(17)とを有するヘアカール用の装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヘアカール用の装置において、
前記第1のアーム(4)および第2のアーム(5)のそれぞれが、全体としてほぼ半円柱形であり、前記可動半アーム部(16,17)に形成された第1の平坦面(18,19)と、前記固定半アーム部(14,15)に形成された第2の凸状面(20,21)とを有し、
前記平坦面(18,19)同士は対向し、前記凸状面(20,21)同士は背を向けるように配置されているヘアカール用の装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のヘアカール用の装置において、
使用中でない状態で、前記第1のアーム(4)の前記可動半アーム部(16)および前記第2のアーム(5)の前記可動半アーム部(17)が、前記アーム(4,5)の全長にわたって互いにほぼ並列配置されているヘアカール用の装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載のヘアカール用の装置において、
使用中でない状態で、前記第1のアーム(4)の前記可動半アーム部(16)および前記第2のアーム(5)の前記可動半アーム部(17)が、所定の距離だけ離れて配置されているヘアカール用の装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のヘアカール用の装置において、
前記加熱手段が、第1の加熱要素(24)および第2の加熱要素(25)を有しており、その第1の加熱要素(24)および第2の加熱要素(25)のそれぞれが、対応する前記可動半アーム部(16,17)に収容されているヘアカール用の装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のヘアカール用の装置において、
前記加熱手段が、第1の加熱要素(24)および第2の加熱要素(25)を有しており、その第1の加熱要素(24)および第2の加熱要素(25)のそれぞれが、対応する前記固定半アーム部(14,15)に収容されているヘアカール用の装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のヘアカール用の装置において、
前記可動半アーム部(16,17)のそれぞれが、対応する前記アーム(4,5)の、前記把持部(2)とは反対側の第2端部(8、9)に、ヘッド部(50,51)を有するヘアカール用の装置。
【請求項9】
請求項8に記載のヘアカール用の装置において、
前記ヘッド部(50,51)が、断熱材で構成されているヘアカール用の装置。
【請求項10】
請求項3から9のいずれか一項に記載のヘアカール用の装置において、
前記アーム(4,5)のうちの少なくとも1つのアームにおける前記固定半アーム部(14,15)の凸状面に、少なくとも1つの畝(70,71)が前記長手方向の軸心(X)を横切って延びるように形成されているヘアカール用の装置。
【請求項11】
請求項10に記載のヘアカール用の装置において、
前記第1のアーム(4)の畝(70)が、前記第2のアーム(5)の畝(71)からずれた位置にあるヘアカール用の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104360(P2011−104360A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−248967(P2010−248967)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(505453826)テナクタ・グループ・エス・ペー・アー (9)