説明

ヘアキャッチャー

【課題】設置スペースに高さ制限があっても設置可能でかつ排水口への着脱操作時に摘む摘み部の汚れを抑制するヘアキャッチャーを提供すること。
【解決手段】排水口に着脱可能に装着されるヘアキャッチャー本体12と、ヘアキャッチャー本体12の洗い場側に形成されて洗い場から排水が流入する凹状の第1流入部22と、第1流入部22の底面22Bに形成され第1流入部22からの排水を排水口内へ流出させる第1排水孔26が形成された凹状の第2流入部24と、第1流入部22の底面22Bでかつ側壁面22Aと第2流入部24との間に設けられ洗い場側へ突出し一部がヘアキャッチャー本体12の着脱操作時に摘む摘み部34を構成する壁部28と、底面22Bでかつ少なくとも壁部28と側壁面22Aとの間に形成され洗い場からの排水を排水口内へ流出させる第2排水孔30と、をヘアキャッチャー10が有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口に設置されるヘアキャッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の洗い場に設けられる排水口には、排水に含まれる毛髪などの異物を捕集するためにヘアキャッチャーが設置されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、毛髪などを捕集するための目皿部に上方へ突出する仕切り壁部を設けたヘアキャッチャーを排水口に設置している。このヘアキャッチャーは、仕切り壁部の上部が摘み部となっており、清掃時には、摘み部を掴んで排水口から容易に取り外せるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−274621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ユニットバスの中には、洗い場床面に設けられた凹状の排水受部の底部に排水口が形成され、この排水口を排水受部に嵌め込んだ蓋で覆うタイプのものがある。この種のユニットバスの場合にも、ヘアキャッチャーは排水口に設置される。
【0006】
しかしながら、ユニットバスは、排水受部の深さが戸建住宅向けのものよりも集合住宅向けのもので浅くなっていることが多く、排水口に設置されるヘアキャッチャーの高さ(排水口からの突出量)に制限が設けられることが多い。
【0007】
このため、特許文献1のヘアキャッチャーのように目皿部に上方へ突出する仕切り壁部が設けられていると、蓋と仕切り壁部とが干渉して蓋が閉じられない、という問題が生じる虞がある。
上記問題を考慮して、仕切り壁部の目皿部からの突出量を少なくすると、洗い場から排水受部に流入した排水が仕切り壁部を乗り越えやすくなる。このように、排水が仕切り壁部を乗り越えることが繰り返されると、摘み部が排水で汚れたり、摘み部に毛髪などが付着して汚れたり、などしてしまう。
【0008】
本発明は、設置スペースに高さ制限があっても設置可能で、かつ、排水口への着脱操作時に摘む摘み部の汚れを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のヘアキャッチャーは、洗い場に設けられた排水口に着脱可能に装着されるヘアキャッチャー本体と、前記ヘアキャッチャー本体の前記洗い場側に形成され、前記洗い場から排水が流入する凹状の第1流入部と、前記第1流入部の底面に形成され、前記第1流入部から流入する前記排水を前記排水口内へ流出させる第1排水孔が形成された凹状の第2流入部と、前記第1流入部の底面でかつ該第1流入部の側壁面と前記第2流入部との間に設けられ、前記洗い場側へ突出し、一部が前記ヘアキャッチャー本体を前記排水口へ着脱操作する際に摘む摘み部を構成する壁部と、前記第1流入部の底面でかつ少なくとも前記壁部と前記第1流入部の側壁面との間に形成され、前記洗い場から流入する前記排水を前記排水口内へ流出させる第2排水孔と、を有する。
【0010】
請求項1に記載のヘアキャッチャーでは、洗い場からの排水は、第1流入部に流入し、第2排水孔を通って排水口内へ流出する。また、第2排水孔で処理しきれない排水は、第1流入部から第2流入部へ流入し、第1排水孔を通って排水口内へ流出する。
ここで、洗い場からの排水に異物(例えば、毛髪など)が混入している場合、この異物は、排水とともに第1流入部から第2流入部へ流入する。そして、第2流入部に流入した排水は第1排水孔を通って排水口内へ流出するため、異物が第2流入部内に残留する。つまり、異物が第2流入部によって捕集される。
なお、摘み部を摘んで、ヘアキャッチャー本体を排水口から脱着する操作を行なうことで、ヘアキャッチャー本体が排水口から外れる。そして、第2流入部から異物を除去することで、ヘアキャッチャーの排水性能が回復する。
【0011】
上記ヘアキャッチャーでは、第1流入部の底面に洗い場側へ突出する壁部を設けていることから、例えば、ヘアキャッチャー本体の洗い場側の面に洗い場側へ突出する壁部を設けたものと比べて、ヘアキャッチャー本体からの壁部の突出量が少なくなり、ヘアキャッチャーの設置スペースに高さ制限があったとしても、設置が可能となる。
【0012】
一方、上記ヘアキャッチャーでは、第1流入部の深さを深くすることで、ヘアキャッチャー本体からの壁部の突出量を増加させずに、該壁部の第1流入部の底面からの突出高さを高くすることができる。これにより、洗い場から第1流入部へ流入する排水の壁部の乗り越えを抑制することができる。
【0013】
また、上記ヘアキャッチャーでは、第1流入部の底面でかつ少なくとも壁部と第1流入部の側壁面との間に第2排水孔を形成していることから、洗い場から第1流入部へ流入した排水は、壁部手前(壁部と第1流入部の側壁面との間)の第2排水孔を通って排水口内へ流出する。上記ヘアキャッチャーは、例えば、壁部と第1流入部の側壁面との間に第2排水孔を形成していないものと比べて、壁部を乗り越えようとする排水が壁部手前で第2排水孔を通って排水口内へ流出されることから、壁部の乗り越えをさらに抑制することができる。
これにより、壁部の一部によって構成される摘み部が排水や毛髪などの付着によって汚れるのが抑制される。
【0014】
なお、洗い場から第1流入部に流入した排水が第2流入部へ多方向から勢いよく流入すると、排水同士が衝突し合って排水の流れが乱れ、第2流入部の第1排水孔から排水が流出する速度(排水速度)が低下しやすい。このため、上記ヘアキャッチャーでは、第1流入部の底面でかつ該第1流入部の側壁面と第2流入部との間に壁部を設けている。この壁部により第2流入部に流入する少なくとも一方向の排水の流れが妨げられるため、例えば、第1流入部の側壁面と第2流入部との間に壁部を設けないものと比べて、第2流入部に流入する排水の流れの乱れが抑制されて、第1排水孔から排水が流出する速度の低下が抑制される。
【0015】
以上、上記ヘアキャッチャーによれば、設置スペースに高さ制限があっても設置することができ、かつ、排水口への着脱操作時に摘む摘み部の汚れを抑制することができる。
【0016】
請求項2に記載のヘアキャッチャーは、請求項1に記載のヘアキャッチャーにおいて、前記壁部は、前記第1流入部の底面に沿って前記第2流入部の外周の一部を囲うように延在している。
【0017】
請求項2に記載のヘアキャッチャーでは、壁部を、第1流入部の底面に沿って第2流入部の外周の一部を囲うように延在させていることから、第2流入部に流入する排水の流れを広い範囲で妨げられるため、例えば、壁部を、第2流入部の外周の一部を囲うように延在させていないものと比べて、第2流入部に流入する排水の流れの乱れがさらに抑制される。
【0018】
請求項3に記載のヘアキャッチャーは、請求項2に記載のヘアキャッチャーにおいて、前記壁部は、前記第2流入部側に対して反対側の外壁面が、前記第2流入部の外周を囲うように湾曲している。
【0019】
請求項3に記載のヘアキャッチャーでは、壁部の外壁面が第2流入部を囲うように湾曲していることから、洗い場から第1流入部に勢いよく流入した排水が湾曲した外壁面に沿って壁部の延在方向の端部へスムーズに案内される。これにより、例えば、壁部の外壁面が第2流入部の外周を囲わずに直線状に延びているものと比べて、洗い場から第1流入部に勢いよく流入した排水の壁部の乗り越えを抑制することができる。
【0020】
請求項4に記載のヘアキャッチャーは、請求項3に記載のヘアキャッチャーにおいて、前記第2流入部は、前記洗い場側から見て断面円形状とされ、前記壁部の外壁面は、該壁部の延在方向の両端側が前記第2流入部の中心を向くように湾曲している。
【0021】
請求項4に記載のヘアキャッチャーでは、外壁面の壁部延在方向の両端側を、第2流入部の中心を向くように湾曲させていることから、洗い場から第1流入部へ流入した排水が湾曲した外壁面に沿って壁部延在方向の両端側にある第2流入部へスムーズに案内される。これにより、例えば、外壁面の壁部延在方向の両端側を、第2流入部の中心を向くように湾曲させていないもの(例えば、外壁面の壁部延在方向の両端側を第2流入部の側壁面に沿った形状としたもの)と比べて、洗い場から第1流入部に流入した排水をスムーズに第2流入部へ案内することができる。
【0022】
請求項5に記載のヘアキャッチャーは、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘアキャッチャーにおいて、前記第1流入部の側壁面から前記第2流入部の側壁面までの距離は、前記壁部が設けられた領域よりもその他の領域で短い。
【0023】
請求項5に記載のヘアキャッチャーでは、壁部が設けられた領域よりもその他の領域で第1流入部の側壁面から第2流入部の側壁面までの距離が短いことから、その他の領域側を流れる排水は、壁部が設けられた領域よりも速く第2流入部に流入し、第1排水孔を通って排水口内へ流出する。この構成により、洗い場から第1流入部へ流入する排水が、スムーズに第2流入部に流入して処理(排水口内へ流出)される。これにより、洗い場から、急激に多量の排水が第1流入部に流入しても、第1流入部から排水が溢れるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明のヘアキャッチャーによれば、設置スペースに高さ制限があっても設置することができ、かつ、排水口への着脱操作時に摘む摘み部の汚れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るヘアキャッチャーが用いられる浴室を斜め上方から見下ろした斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るヘアキャッチャーの排水口への設置状態を示す、ヘアキャッチャーを斜め上方から見下ろした斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るヘアキャッチャーを排水口へ設置し、化粧蓋で覆った状態を示す、化粧蓋を斜め上方から見下ろした斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るヘアキャッチャーの排水口への設置状態を示す、洗い場の排水受部周辺の断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るヘアキャッチャーを斜め上方から見下ろした斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るヘアキャッチャーを上方から見下ろした平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るヘアキャッチャーを側方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1実施形態に係るヘアキャッチャー10について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(第1実施形態)
本実施形態のヘアキャッチャー10は、図1に示す浴室90の洗い場92に設けられる排水口98に着脱可能に装着されて、洗い場92からの排水に含まれる異物(例えば、毛髪など)を捕集するためのものである。
【0028】
図1に示すように、浴室90は、洗い場92と浴槽94とを含んで構成されている。洗い場92の床面92Aには、浴槽94との境界近傍に凹状の排水受部96が形成されている(図2、図4参照)。
【0029】
洗い場92の床面92Aは、排水受部96に向かって高さが低くなるように緩やかに傾斜している。この傾斜により、床面92A上の排水が排水受部96へ向かって流れるようになっている。
【0030】
図2、図4に示すように、排水受部96の底部96Aには、排水口98が形成されている。この排水口98は、洗い場92から排水受部96内に流れ込んだ排水を図示しない排水管などを通して下水へと流すためのものである。また、上述したように、排水口98には、ヘアキャッチャー10が着脱可能に装着されている。
【0031】
図3、図4に示すように、排水受部96には、排水口98及びヘアキャッチャー10を洗い場92や浴槽94から遮蔽する(すなわち、目隠しする)ための化粧蓋100が設置されている。
【0032】
(ヘアキャッチャー)
次に、ヘアキャッチャー10について説明する。
図4、図5に示すように、ヘアキャッチャー10は、排水口98に着脱可能に装着される樹脂製のヘアキャッチャー本体12を有している。なお、本実施形態では、ヘアキャッチャー本体12を樹脂材料で構成しているが、錆が発生し難い材料であれば、樹脂材料以外でも構わない。
【0033】
ヘアキャッチャー本体12は、軸方向X(軸心Xに沿った方向)の一端が開放され、他端が閉塞された有底円筒状とされている。なお、ヘアキャッチャー本体12を排水口98に装着した状態においては、軸方向Xが浴室の上下方向と一致し、軸方向Xの一端側が洗い場92側となる。また、ヘアキャッチャー本体12の軸心は、後述する筒部14の軸心である。
【0034】
図5に示すように、ヘアキャッチャー本体12は、軸方向Xの一端側を構成する筒部14と、軸方向Xの他端側を構成し筒部14よりも外径及び内径が小さい筒部16とを備えている。
また、ヘアキャッチャー本体12は、筒部16の軸方向Xの一端部から外周側(軸方向Xと直交する方向)へ張り出して外周縁部が筒部14の軸方向Xの他端部に連結される連結部18と、筒部16の軸方向Xの他端部を閉塞する底部20とを備えている。
【0035】
上記構成により、ヘアキャッチャー本体12には、洗い場92側(軸方向Xの一端側)に対して反対側に凹む凹状の第1流入部22が形成される。この第1流入部22は、具体的には、筒部14の内周壁面と連結部18の軸方向Xの一端側の壁面とで構成されるものである。
以下では、筒部14の内周壁面を第1流入部22の側壁面22A、連結部18の軸方向Xの一端側の壁面を第1流入部22の底面22Bとして説明する。
【0036】
また、ヘアキャッチャー本体12には、第1流入部22の底面22Bに洗い場92側(軸方向Xの一端側)に対して反対側に凹む凹状の第2流入部24が形成されている。第2流入部24は、具体的には、筒部16の内周壁面と底部20の軸方向Xの一端側の壁面とで構成されるものである。なお、第2流入部24は、洗い場92側から見て(軸方向の一端側から見て)円形状とされている。
以下では、筒部16の内周壁面を第2流入部24の側壁面24A、底部20の軸方向Xの一端側の壁面を第2流入部24の底面24Bとして説明する。
【0037】
図2に示すように、第1流入部22及び第2流入部24には、洗い場92からの排水が流入するようになっている。このため、第1流入部22及び第2流入部24には、それぞれ排水用の排水孔(詳細は後述)が複数形成されている。
【0038】
図5、図6に示すように、第2流入部24の底面24Bには、第1流入部22から流入する排水を排水口98内へ流出させる第1排水孔26が複数形成されている。この第1排水孔26は、底部20を軸方向Xの一端側(洗い場92側)から他端側(排水口98の奥側)へ貫通する貫通孔であり、本実施形態では、断面形状が円形の丸孔とされている。なお、本発明のその他の実施形態では、第1排水孔26の断面形状を楕円、多角形などにしてもよい。
【0039】
なお、本実施形態では、第2流入部24の側壁面24Aに排水用の排水孔を形成しない構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、側壁面24Aに排水孔を形成してもよい。
【0040】
図2、図5に示すように、第1流入部22の底面22Bには、軸方向Xの一端側(洗い場92側)へ突出する壁部28が形成されている。この壁部28は、第1流入部22の側壁面22Aと第2流入部24との間に配置されている。
【0041】
図5、図6に示すように、壁部28は、第1流入部22の底面22Bに沿って第2流入部24の外周の一部を囲うように延在している。この壁部28は、第2流入部24の外周の1/8〜1/2を囲うように延在することが好ましい。なお、第2流入部24に対する壁部28の囲いが1/8未満の場合には、後述する壁部28の洗い場92から第1流入部22へ勢いよく流入する排水を妨げることで得られる効果が少なく、1/2を超える場合には、第1流入部22内の排水が第2流入部24に流入しにくくなる。このため、本実施形態では、壁部28が、第2流入部24の外周の1/8〜1/2を囲うように延在させている。
【0042】
また、壁部28は、第2流入部24に対して反対側の外壁面28Aが、第2流入部24の外周を囲うように湾曲している。また、壁部28は、該壁部28の延在方向(以下、単に「壁部延在方向」と記載。)の両端側が第2流入部24の中心を向くように湾曲している。これにともなって、上記外壁面28Aの壁部延在方向の両端側が第2流入部24の中心を向くように湾曲している。
【0043】
図5に示すように、第1流入部22の底面22Bは、第1流入部22内の排水が第2流入部24へ流れやすくなるように、第2流入部24へ向かって直線状又は湾曲しながら傾斜している。
【0044】
また、第1流入部22の底面22Bには、洗い場92から流入する排水を排水口98内へ流出させる第2排水孔30が形成されている。この第2排水孔30は、連結部18を軸方向Xの一端側(洗い場92側)から他端側(排水口98の奥側)へ貫通する貫通孔であり、本実施形態では、断面形状が円形の丸孔とされている。なお、本発明のその他の実施形態では、第2排水孔30の断面形状を楕円、多角形などにしてもよい。
【0045】
図6に示すように、第2排水孔30は、少なくとも壁部28と第1流入部22の側壁面22Aとの間に複数配置されている。なお、本実施形態では、第2排水孔30は、第1流入部22の底面22Bに円環状に形成されている。
【0046】
図5に示すように、第1流入部22の底面22Bのうち、壁部28と第2流入部24との間の底面22Cは、第2流入部24の側壁面24Aの端部から壁部28の頂上付近まで延在しており、上端が底面22Bよりも高い位置にある。このため、壁部28は、外壁面28Aの底面22Bからの突出高さよりも、内壁面28B(外壁面28Aに対して反対側の壁面)の底面22Cからの突出高さが低くなっている。図5、図6に示すように、底面22Cには、壁部28側でかつ壁部延在方向の中央部分近傍に、軸方向Xの他端側へ凹となる窪み32が形成されている。これにより、壁部28の上記中央部分を、ヘアキャッチャー本体を排水口98へ着脱操作する際の摘み部34として摘むことができるようになる。なお、図6に示すように、底面22Cにも、第2排水孔30が複数形成されている。
【0047】
また、窪み32の底面32Aにも、洗い場92から流入する排水を排水口98内へ流出させる第3排水孔36が形成されている。この第3排水孔36は、連結部18を軸方向Xの一端側(洗い場92側)から他端側(排水口98の奥側)へ貫通する貫通孔であり、本実施形態では、断面形状が円形の丸孔とされている。なお、本発明のその他の実施形態では、第3排水孔36の断面形状を楕円、多角形などにしてもよい。
【0048】
また、図6に示すように、第1流入部22の側壁面22Aから第2流入部24の側壁面24Aまでの距離(軸方向Xに対して直交する方向に沿った距離)は、壁部28が設けられた領域M1よりもその他の領域M2で短くなっている。すなわち、筒部14と筒部16の軸心は、軸方向Xに対して直交する方向にずれている(言い換えると、第1流入部22と第2流入部24は偏心している)。
【0049】
図7に示すように、筒部14の外周部には、一端が軸方向Xの他端側に開口し、筒部14の外周に沿って延び、他端が筒部14の外周上で終端する係合溝部38が複数形成されている。この係合溝部38には、図4に示すように、排水口98の入口部分に形成された係合突部98Aが一端から入り込んで係合するようになっている。
ここで、ヘアキャッチャー本体12の筒部14を、係合溝部38に係合突部98Aが入り込むように排水口98に挿入し、係合突部98Aが係合溝部38の奥(他端)へ移動するようにヘアキャッチャー本体12を回転させることで、係合溝部38と係合突部98Aとが係合されて、ヘアキャッチャー本体12が排水口98に装着される。
【0050】
次に、第1実施形態のヘアキャッチャー10について説明する。
ヘアキャッチャー10では、洗い場92からの排水は、第1流入部22に流入し、第2排水孔30を通って排水口98内へ流出する。また、第2排水孔30で処理しきれない排水は、第1流入部22から第2流入部24に流入し、第1排水孔26を通って排水口98内へ流出する。
【0051】
ここで、洗い場92からの排水に異物(例えば、毛髪など)が混入している場合、この異物は、排水とともに第1流入部22から第2流入部24へ流入する。そして、第2流入部24に流入した排水は、第1排水孔26を通って排水口98内へ流出するため、異物が第2流入部24内に残留する。つまり、異物が第2流入部24によって捕集される。
【0052】
なお、摘み部34を摘んで、ヘアキャッチャー本体12を排水口98から脱着する操作を行なうことで、ヘアキャッチャー本体12が排水口98から外れる。そして、第2流入部24から異物を除去することで、ヘアキャッチャー10の排水性能が回復する。
【0053】
ヘアキャッチャー10では、第1流入部22の底面22Bに壁部28を設けていることから、例えば、ヘアキャッチャー本体12の軸方向Xの一端側の面(ここでは、筒部14の一端部)に壁部28を設けたものと比べて、ヘアキャッチャー本体12からの壁部28の突出量が少なくなり、ヘアキャッチャー10の設置スペースに高さ制限があったとしても、設置が可能となる。つまり、例えば、本実施形態の浴室90が集合住宅向けのユニットバスであり排水受部96の底部96Aと化粧蓋100の裏面との間の間隔が狭い(ヘアキャッチャー10の設置スペースの高さが低い)場合でも、ヘアキャッチャー10であれば、ヘアキャッチャー本体12からの壁部28の突出量が少ないため、排水口98へ設置しても、図4に示すように、壁部28と化粧蓋100とが干渉することなく設置することができる。
【0054】
一方、ヘアキャッチャー10では、第1流入部22の深さを深くすることで、ヘアキャッチャー本体12からの壁部28の突出量を増加させずに、該壁部28の第1流入部22の底面22Bからの突出高さを高くすることができる。これにより、洗い場92から第1流入部22へ流入する排水の壁部28の乗り越えを抑制することができる。
【0055】
また、ヘアキャッチャー10では、第1流入部22の底面22Bでかつ壁部28と第1流入部22の側壁面22Aとの間に第2排水孔30を形成していることから、洗い場92から第1流入部22へ流入した排水は、壁部28手前(壁部28と第1流入部22の側壁面22Aとの間)の第2排水孔30を通って排水口98内へ流出する。ヘアキャッチャー10は、例えば、壁部28と第1流入部22の側壁面22Aとの間に第2排水孔30を形成していないものと比べて、壁部28を乗り越えようとする排水が壁部28手前で第2排水孔30を通って排水口98内へ流出されることから、壁部28の乗り越えをさらに抑制することができる。
これにより、壁部28により構成される摘み部34が排水や毛髪などの付着によって汚れるのが抑制される。
【0056】
なお、洗い場92から第1流入部22に流入した排水が第2流入部24へ多方向から勢いよく流入すると、排水同士が衝突し合って流れが乱れ、第2流入部24の第1排水孔26から排水が流出する速度(排水速度)が低下しやすい。このため、上記ヘアキャッチャー10では、第1流入部22の側壁面22Aと第2流入部24との間に壁部28を設けている。この壁部28により第2流入部24に流入する少なくとも一方向の排水の流れが妨げられるため、例えば、第1流入部22の側壁面22Aと第2流入部24との間に壁部28を設けないものと比べて、第2流入部24に流入する排水の乱れが抑制されて、第1排水孔26から排水が流出する速度の低下が抑制される。
【0057】
特に、壁部28を、第1流入部22の底面22Bに沿って第2流入部24の外周の一部を囲うように延在させていることから、第2流入部24に流入する排水の流れを広い範囲で妨げられるため、例えば、壁部28を、第2流入部24の外周の一部を囲うように延在させていないものと比べて、第2流入部24に流入する排水の乱れがさらに抑制される。
【0058】
また、壁部28の外壁面28Aが第2流入部24の外周を囲うように湾曲していることから、洗い場92から第1流入部22に勢いよく流入した排水が湾曲した外壁面28Aに沿って壁部28の該壁部28の延在方向の端部へスムーズに案内される。これにより、例えば、壁部28の外壁面28Aが第2流入部24の外周を囲わずに直線状に延びているものと比べて、洗い場92から第1流入部22に勢いよく流入した排水の壁部28の乗り越えを抑制することができる。
【0059】
さらに、外壁面28Aの壁部延在方向の両端側を、第2流入部24の中心を向くように湾曲させていることから、洗い場92から第1流入部22へ流入した排水が湾曲した外壁面28Aに沿って壁部延在方向の端側にある第2流入部24へスムーズに案内される。これにより、例えば、外壁面28Aの壁部延在方向の両端側を、第2流入部24の中心を向くように湾曲させていないもの(例えば、外壁面28Aの壁部延在方向の両端側を第2流入部24の側壁面24Aに沿った形状としたもの)と比べて、洗い場92から第1流入部22に流入した排水をスムーズに第2流入部24へ案内することができる。
【0060】
また、上記ヘアキャッチャー10では、壁部28が設けられた領域M1よりもその他の領域M2で第1流入部22の側壁面22Aから第2流入部24の側壁面24Aまでの距離が短いことから、その他の領域M2を流れる排水は、領域M1を流れる排水よりも速く第2流入部24に流入し、第1排水孔26を通って排水口98内へ流出する。この構成により、洗い場92から第1流入部22へ流入する排水が、スムーズに第2流入部24に流入して処理(排水口内へ流出)される。これにより、洗い場92から、急激に多量の排水が第1流入部22に流入しても、第1流入部22から排水が溢れるのを抑制することができる。
【0061】
一方、上記ヘアキャッチャー10では、壁部28の壁部延在方向の中央部(摘み部34)近傍の底面22Cに窪み32を形成していることから、摘み部34を摘みやすくなっている。そして、窪み32の底面32Aにも第3排水孔36が形成されていることから、例えば、第2流入部24から排水が溢れ出た場合でも、排水は、窪み32の第3排水孔36を通って排水口98内へ流出される。このため、ヘアキャッチャー10は、例えば、窪み32の底面32Aに第3排水孔36を形成しないものと比べて、第2流入部24側からの排水が壁部28を乗り越えるのを抑制することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
前述した実施形態のヘアキャッチャー本体12は、筒部14、16、連結部18及び底部20を備えているが、本発明はこの構成に限定されず、有底円筒状の筒体の中空部を軸方向Xの一端側の大径部と他端側の小径部とで構成し、大径部を第1流入部、小径部を第2流入部とする構成としてもよい。
【0063】
また、前述した実施形態では、ヘアキャッチャー本体12に壁部28を1箇所形成する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、複数箇所に形成してもよい。
【0064】
前述した実施形態では、浴室90の洗い場92に設けられた排水口98にヘアキャッチャー10を適用する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば、水廻り器具の一例としての台所の、洗い場(流し)に設けられた排水口にヘアキャッチャー10を適用する構成としてもよい。また、例えば、水廻り器具の一例としての洗面所の、手洗い場に設けられた排水口にヘアキャッチャー10を適用する構成としてもよい。
【0065】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
10 ヘアキャッチャー
12 ヘアキャッチャー本体
22 第1流入部
22A 側壁面
22B 底面
24 第2流入部
24A 側壁面
24B 底面
26 第1排水孔
28 壁部
28A 外壁面
30 第2排水孔
34 摘み部
92 洗い場
98 排水口
M1 領域(壁部が設けられた領域)
M2 領域(その他の領域)
X 軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場に設けられた排水口に着脱可能に装着されるヘアキャッチャー本体と、
前記ヘアキャッチャー本体の前記洗い場側に形成され、前記洗い場から排水が流入する凹状の第1流入部と、
前記第1流入部の底面に形成され、前記第1流入部から流入する前記排水を前記排水口内へ流出させる第1排水孔が形成された凹状の第2流入部と、
前記第1流入部の底面でかつ該第1流入部の側壁面と前記第2流入部との間に設けられ、前記洗い場側へ突出し、一部が前記ヘアキャッチャー本体を前記排水口へ着脱操作する際に摘む摘み部を構成する壁部と、
前記第1流入部の底面でかつ少なくとも前記壁部と前記第1流入部の側壁面との間に形成され、前記洗い場から流入する前記排水を前記排水口内へ流出させる第2排水孔と、
を有するヘアキャッチャー。
【請求項2】
前記壁部は、前記第1流入部の底面に沿って前記第2流入部の外周の一部を囲うように延在している請求項1に記載のヘアキャッチャー。
【請求項3】
前記壁部は、前記第2流入部側に対して反対側の外壁面が、前記第2流入部の外周を囲うように湾曲している請求項2に記載のヘアキャッチャー。
【請求項4】
前記第2流入部は、前記洗い場側から見て円形状とされ、
前記壁部の外壁面は、該壁部の延在方向の両端側が前記第2流入部の中心を向くように湾曲している請求項3に記載のヘアキャッチャー。
【請求項5】
前記第1流入部の側壁面から前記第2流入部の側壁面までの距離は、前記壁部が設けられた領域よりもその他の領域で短い請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘアキャッチャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−207417(P2012−207417A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72976(P2011−72976)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】