説明

ヘアクリップ

【課題】 本発明は、髪の量の多少にかかわらず確実に髪に固定することができるヘアクリップを提供することを課題とする。
【解決手段】 2つのクリップ片を有し、それぞれのクリップ片に設けられたリーフ部が髪束を両側から圧迫して髪を固定するヘアクリップにおいて、一方のクリップ片のリーフ部は複数の突起を含み、各突起は前記髪束に分け入る方向に突出するように突起基台に設けられ、他方のリーフ部と反対の方向に変形可能に前記一方のクリップ片に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に女性が使用するヘアクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
一方のリーフ部に多数の突起を有するヘアクリップは存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】登録実用新案第3008410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、髪の量の多少にかかわらず確実に髪に固定することができるヘアクリップを提供することを課題とする。
【0004】
従来の複数の突起を有するヘアクリップは、板状の突起基台に複数の突起が一体に設けられ、弧状をなす一方のリーフ部に合わせて突起基台を弧状にした状態でリーフ部に固定した構成である。このような構成であるから、ヘアクリップで髪を束ね止めるときに突起基台が変形することはない。突起基台が変形しないので、突起基台と他方のリーフ部に挟まれた髪は突起基台に圧接状態で接触してもストレートの状態のままで方向を変えることがなく、その部分の髪は滑りやすい状態である。
【0005】
また、突起基台が変形しないので、各突起を柔軟性のある材料で形成したときは突起間に挟まれた髪の量の違いによって突起が曲がることはあるが、突起が髪を積極的に圧迫する構成ではない。したがって、少しの量の髪を束ね止めようとするときや髪の少ない女性が使用するときは突起間に挟まれた髪の量が少なくなるから、髪と突起の接触圧力が非常に小さくなって十分な摩擦力が生じずヘアクリップの脱落の原因となっている。そこで、本発明は髪の量の多少にかかわらず確実に髪に固定することができるヘアクリップを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は、2つのクリップ片を有し、それぞれのクリップ片に設けられたリーフ部が髪束を両側から圧迫して髪を固定するヘアクリップにおいて、一方のクリップ片のリーフ部は複数の突起を含み、各突起は前記髪束に分け入る方向に突出するように突起基台に設けられ、他方のリーフ部と反対の方向に変形可能に前記一方のクリップ片に設けられている構成である。
【0007】
請求項2は、細長く形成された少なくとも1つの突起基台が一方のリーフ部の長さ方向に架け渡され、前記突起基台に突起が一体に設けられている要素が請求項1に付加された構成である。
【0008】
請求項3は、突起基台が一方のリーフ部のほぼ全長に亘って架け渡されている要素が請求項2に付加された構成である。
【0009】
請求項4は、2つのリーフ部が同じ側に凸の弧状をなすように形成されている要素が請求項1乃至請求項3のいずれか一項に付加された構成である。
【0010】
請求項5は、各突起がその全長の途中部分に突出部を有する要素が請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載された構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1は、2つのクリップ片を有し、それぞれのクリップ片に設けられたリーフ部が髪束を両側から圧迫して髪を固定するヘアクリップにおいて、一方のクリップ片のリーフ部は複数の突起を含み、各突起は前記髪束に分け入る方向に突出するように突起基台に設けられ、他方のリーフ部と反対の方向に変形可能に前記一方のクリップ片に設けられている。したがって、突起基台が変形し突起の位置が変化することにより髪をしっかり止めることができてクリップの脱落を防止できる。さらに、突起基台が一方のリーフ部の内面を越えてそのリーフ部の外側方向に変形することができれば、その部分の髪もリーフ部の外側方向に曲がってストレートでなくなるから髪が両リーフ部の間をすり抜けづらくなり、ヘアクリップの脱落を効果的に防止できる。
【0012】
請求項2は、細長く形成された少なくとも1つの突起基台が一方のリーフ部の長さ方向に架け渡され、その突起基台に突起が一体に設けられている。突起基台が細長く形成されリーフ部の長さ方向に架け渡されているから、突起基台を容易に変形させることができる。
【0013】
請求項3は、突起基台が一方のリーフ部のほぼ全長に亘って架け渡されている。したがって、突起基台が最も長い状態で架け渡されているから多くの突起を設けることが可能であり、髪と突起全体の摩擦力が大きくなってヘアクリップの脱落を効果的に防止できる。また、突起基台をさらに容易に変形させることができる。
【0014】
請求項4は、2つのリーフ部が同じ側に凸の弧状をなすように形成されている。両リーフ部が弧状で一方のリーフ部の長さ方向に突起基台が架け渡されているから、突起基台は弓に張られた弦の如き状態である。突起基台がこのような状態にあるから、髪を束ね止めたときに突起基台は一方のリーフ部に沿うように弧状に曲がる。突起基台に設けられている各突起が平行の状態であるときは、突起基台が弧状に曲がると共に各突起はそれらの突起間に存在する突起基台と扇形をなすように突起の先端同士がやや近づくのである。そのために、隣接する突起間の距離が狭まりその間の髪は突起により積極的に圧迫されるから、突起間の髪と突起の接触圧力を強くすることができて十分な摩擦力を得ることができる。これにより、ヘアクリップの脱落を確実に防止できる。髪がやや少なめであっても突起間の距離が狭まることにより髪を効果的に束ね止めることができる。突起基台がやや曲がった状態で架け渡されていても同様である。各突起が平行でなくても同様である。
【0015】
請求項5は、各突起がその全長の途中部分に突出部を有している。したがって、突出部が髪を圧迫して摩擦力が増すのでヘアクリップの脱落を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施形態について説明する。ヘアクリップ1は、2つのクリップ片2,3を支軸4で回動可能に結合した構成である。クリップ片2,3はそれぞれ髪を挟んで束ね止める外リーフ部5と内リーフ部6を有する。両リーフ部5,6は同じ側に弧状に曲がっている。内リーフ部6は文字通り外リーフ部5のなす弧の内側に位置する。外リーフ部5は基部7と連結し、内リーフ部6は基部8と連結している。前記支軸4は基部7,8に取り付けられている。基部7,8の間に図5に示すバネ9が介装されていて、そのバネ9の弾性力により通常の状態で両リーフ部5,6は閉じている。基部7,8はそれぞれ押え片10,11を有し、その押え片10,11を指で押えることによって両リーフ部5,6を開くことができる。押え片10,11の表面に指宛て用の凹みが設けられている。
【0017】
図2に示すように、外リーフ部5はワイヤーを細長いU字形に曲げることにより形成されている。したがって、外リーフ部5はそのワイヤーで囲まれた空間部20を有する。この空間部20は外リーフ部5の内面から外面まで貫通する孔であるが、本発明は空間部20を孔により設ける構造に限定されるものではない。例えば、外リーフ部5を板で形成し、その板の内面に凹部を形成することによりその凹部内が空間部となる。
【0018】
外リーフ部5を構成するワイヤーの2つの基端部を基部7が保持している。外リーフ部5は複数の突起12を含んでいる。図4に示すように、突起12は櫛状部材13に設けられており、この櫛状部材13は細長く延びる突起基台14に複数の突起12が一体に設けられた構成である。突起12は突起基台14に対して垂直に突出し、各突起12は平行であるがこれに限定されるものではない。突起12が突起基台14に対して垂直に突出しなくてもよく、各突起12は平行でなくてもよい。突起12はすべて同じ高さであるが本発明はこれに限定されるものでない。例えば、両端の突起の高さを最も高く形成し、中央に行くに従って徐々に高さが低くなる構成であってもよい。櫛状部材13は可撓性及び又は柔軟性のある材料で形成されている。したがって、自由に曲げることができて長さ方向に引っ張れば伸びる性質を有する。材料として例えばエラストマー樹脂やシリコーン樹脂が使用されるが他の材料であってもよい。突起12の高さは約4mmであるがこれに限定されず、2〜10mmであることが好ましい。また、突起12の直径は1.5mmであるがこれに限定されず、0.5〜4mmであることが好ましい。突起12の形状は円柱状であるがそれ以外の形状であってもよい。突起基台14の長さは約100mmであるがこれに限定されず、30〜200mmであることが好ましい。突起基台14の幅は約3mmであるがこれに限定されず、2〜10mmであることが好ましい。突起基台14の厚みは約1.5mmであるがこれに限定されず、0.5〜5mmであることが好ましい。また、外リーフ部5及び内リーフ部6のいずれか一方が弧状をなさなくてもよく、両リーフ部5,6が共に弧状をなさなくてもよい。
【0019】
櫛状部材13の一方の端部には掛け止め部15が一体に設けられ、他方の端部にはフック16が一体に設けられている。図2に示すように、基部7に瓢箪形の掛け孔17が設けられており、この掛け孔17に櫛状部材13の掛け止め部15を掛ける。また、外リーフ部5の先端に凹部18が形成されており、フック16をこの凹部18に掛ける。これにより櫛状部材13は外リーフ部5のほぼ全長に亘るようにクリップ片2に取り付けられる。櫛状部材13の取付け構造はこのようなものであるから着脱自在である。図5に示すように、両リーフ部5,6を閉じたときに、内リーフ部6の端部23がフック16の周囲を囲ってフック16が外れないようにしている。さらに、内リーフ部6の端部23がフック16を押圧してフック16が外れないようにしてもよい。また、櫛状部材13を着脱不能に設けてもよい。櫛状部材13は外リーフ部5よりも短いものであっても差し支えないことは勿論である。この場合、櫛状部材13は外リーフ部5の両端部よりも中心寄りの位置に弓の弦のように架け渡される。図4に示すように、櫛状部材13は直線状に形成されているが、あらかじめ下方に曲がった状態になるように形成してもよく、上方に曲がった状態に形成してもよい。突起12はその根元から端部までの全長の途中に突出部19が設けられている。突出部19は突起12の全周に亘ってフランジ状に設けられているがこれに限定されるものでなく、1又は2以上の突起を突出させるものでもよい。突起が複数のときは異なる方向に突出することが好ましい。突出部19を設けることにより髪との摩擦力が増加してヘアクリップ1の脱落を効果的に防止できる。櫛状部材13は、それと材質、物性又は形状の異なるものを交換可能に用意することによって、種々の目的に沿って使い分けるようにしてもよい。例えば、突起12の密度が異なるものを用意してもよい。また、櫛状部材13はクリップ片2に取り付けなくても、髪との接触によりクリップの脱落を防止できる効果を発揮できる場所であればどこでもよい。櫛状部材13は1本に限定されるものでなく2本以上取り付けてもよい。さらに、短く形成した複数の突起基台を外リーフ部5の幅方向に架け渡し、その突起基台に突起を設けてもよい。
【0020】
内リーフ部6も外リーフ部5と同様にワイヤーを細長いU字形に曲げることにより形成されている。したがって、内リーフ部6はそのワイヤーで囲まれた空間部21を有する。図3に示すように、内リーフ部6はそれが取り付けられている基部8に近接する部分を除きほぼ全長に亘って外リーフ部5よりも幅が狭く形成されている。内リーフ部6の幅は、外リーフ部5の空間部20の幅よりも狭い。また、図6に示すように、内リーフ部6の弧状をなす半径は外リーフ部5の弧状をなす半径よりも小さい。したがって、図1に示すように、両リーフ部5,6を閉じたときに内リーフ部6の中央付近の部分が外リーフ部5の空間部20に入り込む。内リーフ部6の端部23は外リーフ部5の端部22よりも先に突き出ているので、両リーフ部5,6を閉じたときに内リーフ部6の端部23付近の部分が外リーフ部5の端部22に当たる。これにより、両リーフ部5,6を閉じるときに内リーフ部6の全体が外リーフ部5の空間部20を通過してしまうことがなく、両リーフ部5,6をほぼ重なった状態で閉じることができる。また、図2に示すように、外リーフ部5の端部に凹部18を形成することにより、その両隣りにU字形屈曲部24,24が形成される。両リーフ部5,6を閉じたときに内リーフ部6のワイヤー部分の一部がこのU字形屈曲部24,24にはまり、内リーフ部6は外リーフ部5に対して左右に振れることがない。
【0021】
また、櫛状部材13の幅は内リーフ部6の空間部21の幅より狭い。したがって、図1に示すように両リーフ部5,6を閉じたときに櫛状部材13のほぼ全体が空間部21を通過して内リーフ部6のなす弧の中に現われる。比較的少ない髪を両リーフ部5,6で挟んだときに、内リーフ部6は髪を外リーフ部5の空間部20に押し込むように作用する。髪は櫛状部材13の突起基台14から弾性的反力を受けるが、櫛状部材13は可撓性又は柔軟性を有するのでバネ9の弾性力によって髪と共に外リーフ部5の空間部20に押し込められる。この結果、空間部20に押し込まれた髪はその空間部20内で外リーフ部5の外側方向に曲がってストレートではなくなり、さらに櫛状部材13から受ける弾性力によって髪が両リーフ部5,6の間をすり抜けづらくなり、ヘアクリップの脱落を効果的に防止できる。
【0022】
前述したように両リーフ部5,6は同じ側に凸の弧状をなすように形成されている。両リーフ部5,6が弧状で外リーフ部5の長さ方向に突起基台14が架け渡されているから、突起基台14は弓に張られた弦の如き状態である。突起基台14がこのような状態にあるから、髪を束ね止めたときに突起基台14は外リーフ部5に沿うように弧状に曲がる。突起基台14に設けられている各突起12が平行の状態であるときは、突起基台14が弧状に曲がると共に各突起12はそれらの突起12,12間に存在する突起基台14と扇形をなすように突起12,12の先端同士がやや近づくのである。そのために、隣接する突起12,12間の距離が狭まりその間の髪は突起12,12により積極的に圧迫されるから、突起12,12間の髪がやや少なめであっても髪と突起12の接触圧力を強くすることができて十分な摩擦力を得ることができる。これにより、ヘアクリップの脱落を確実に防止できる。突起基台14がやや曲がった状態で架け渡されていても同様である。各突起12が平行でなくても同様である。
【0023】
次に本発明の使用方法について説明する。図6に示すように、髪を束ね止めようとする前に両リーフ部5,6を開く。次いで、内リーフ部6と櫛状部材13の間に髪を挟んで両リーフ部5,6を閉じる。このとき、両リーフ部5,6を閉じると共に髪は支軸4に近い突起から順に挟まれる。この作業により髪を束ね止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の正面図
【図2】本発明を外側から見た図
【図3】本発明を内側から見た図
【図4】櫛状部材の正面図
【図5】本発明を内側から見た斜視図
【図6】両リーフ部を開いた状態の正面図
【符号の説明】
【0025】
1 ヘアクリップ
2 クリップ片
3 クリップ片
4 支軸
5 外リーフ部
6 内リーフ部
7 基部
8 基部
9 バネ
10 押え片
11 押え片
12 突起
13 櫛状部材
14 突起基台
15 掛け止め部
16 フック
17 掛け孔
18 凹部
19 突出部
20 外リーフ部の空間部
21 内リーフ部の空間部
22 外リーフ部の端部
23 内リーフ部の端部
24 U字形屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのクリップ片を有し、それぞれのクリップ片に設けられたリーフ部が髪束を両側から圧迫して髪を固定するヘアクリップにおいて、一方のクリップ片のリーフ部は複数の突起を含み、各突起は前記髪束に分け入る方向に突出するように突起基台に設けられ、他方のリーフ部と反対の方向に変形可能に前記一方のクリップ片に設けられていることを特徴とするヘアクリップ。
【請求項2】
細長く形成された少なくとも1つの突起基台が一方のリーフ部の長さ方向に架け渡され、前記突起基台に突起が一体に設けられている請求項1記載のヘアクリップ。
【請求項3】
突起基台は、一方のリーフ部のほぼ全長に亘って架け渡されている請求項2記載のヘアクリップ。
【請求項4】
2つのリーフ部は同じ側に凸の弧状をなすように形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載のヘアクリップ。
【請求項5】
各突起はその全長の途中部分に突出部を有する請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載のヘアクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−189618(P2009−189618A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34403(P2008−34403)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 貝印株式会社 刊行物名 「New Line−up 2008」と題されたパンフレット 発行年月日 平成19年12月13日
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)