説明

ヘッドホン

【課題】外部からの騒音を良好に低減する遮音性のより高いヘッドホン(50)を提供する。
【解決手段】放音孔(11Rg)を有するバッフル板(11R)と、バッフル板(11R)の一面側に放音孔(11Rg)を囲むよう立設された周壁(11Re)と、周壁(11Re)の内側に収容されたスピーカユニット(16R)と、周壁(11Re)に当接すると共にスピーカユニット(16R)の背面(16R2)を覆って背面(16R2)との間に第1のキャビティ(BC1)を形成するユニットカバー(12R)と、バッフル板(11R)に当接すると共にユニットカバー(12R)を覆ってニットカバー(12R)及びバッフル板(11R)との間に第2のキャビティ(BC2)を形成するハウジング(15R)と、を有するスピーカ部(1R)を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドホンに係り、特に、外部騒音の侵入を抑制して高い遮音性を発揮し、パッシブ型はもとより電池を搭載したアクティブ型のヘッドホンにも好ましく適用できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯音楽プレーヤの普及に伴い、そのプレーヤに接続するヘッドホンの市場も急速に拡大している。
ヘッドホンは、その形態として、耳介の内側に装着するいわゆるインナーイヤータイプと、頭部に装着するヘッドバンド、及び、耳介に当てるあるいは耳介を覆って頭に当てる軟らかいパッドを備えたオーバーヘッドタイプと、に大別される。
【0003】
後者のオーバーヘッドタイプでは、主に頭がヘッドバンドを介してヘッドホン自体の重量を支えるので、音を出力するスピーカやそれを内装するハウジングに、インナーイヤータイプと比べてはるかに大きいものを用いることができることが特徴であり、より音質の優れたヘッドホンを提供できるものとされている。
【0004】
ところで、ヘッドホンの市場拡大に伴い、従来、室内での使用が主であったオーバーヘッドタイプのヘッドホンも、より様々な環境下で使用されるようになってきている。
具体的には、電車,バス,あるいは航空機などの移動体内での使用、あるいは、屋外における待ち時間での使用、などの環境下である。
【0005】
これらの環境下では外部の騒音レベルが非常に高いので、ヘッドホンの使用者がこの高い外部騒音の中でいかに高品位な音を享受できるかが改善テーマとなってきている。
すなわち、遮音性のより高いヘッドホンが望まれている、ということである。
【0006】
このテーマに対する改善技術の一つとしてノイズキャンセル機能があり、この機能を搭載したいわゆるノイズキャンセルヘッドホンが、近年特に注目されている。
このノイズキャンセルヘッドホンは、例えば、ヘッドホン周囲の騒音成分を収音するためにハウジングに設けられたマイクと、このマイクで収音した騒音成分の逆位相成分の信号を生成し、その逆位相成分信号を音声信号に合成してスピーカに出力する騒音低減回路とを備えており、騒音成分の正逆の相殺効果により聴感上騒音を低減できるアクティブ型のヘッドホンである。
また、マイクを、耳に放出される騒音成分を含んだ音を直接収音するためにスピーカと耳との間に配置し、このマイクで収音された音と原信号との差分から騒音成分を検出してその騒音成分を減じた音声信号を出力するようにフィードバックをかける騒音低減回路と、を備えて騒音成分を低減させるノイズキャンセルヘッドホンも知られている。
一般に、前者はフィードフォワードタイプ、後者はフィードバックタイプと称して区別される。
【0007】
このようなノイズキャンセルヘッドホンの一例として、特許文献1や特許文献2に記載されたヘッドホンがある。これらはいずれもフィードバックタイプの例である。
また、一般的に、ノイズキャンセルヘッドホンは、動作のための電源を内蔵しており、特許文献2には、その電源として電池(バッテリ37)が記載されている。
【0008】
【特許文献1】実開平5−36991号公報
【特許文献2】特開2005−287018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したヘッドホンの使用環境の変化に伴って、ノイズキャンセルヘッドホンも使用用途が広がってきている。
具体的には、音声信号をスピーカから出力して音楽鑑賞などをする場合にとどまらず、航空機などの移動体の内部で睡眠をとる場合の遮音装置としても用いられるようになってきている。
【0010】
この場合、ヘッドホンを装着した状態で、鑑賞すべき音楽などの音声信号を出力せずに騒音低減回路のみを動作させ、騒音の逆位相成分のみを音声信号として出力することで、外部騒音の低減効果を聴感上得ることができる。
これにより、外部騒音が大きい環境下においても、耳に聞こえる騒音が極めて小さい静かで快適な睡眠環境が得られる。
これは特に、外部騒音となるエンジンノイズなどが大きい航空機の乗客にとって大変有効である。
【0011】
しかしながら、このようなノイズキャンセルヘッドホンは、騒音低減回路の動作状態で騒音低減効果は顕著に得られるものの、その非動作状態での騒音低減効果は、パッシブ型のヘッドホンと同等であって、期待に添えるものではない。
従って、睡眠などのために騒音低減回路を長時間動作させると、電源である電池の消耗が著しく、頻繁に電池交換をしなければならなくなる、という問題が生じる。
また、旅行などの場合は、交換の電池を常に携帯する必要があり煩わしい、という問題も派生する。
【0012】
そのため、ノイズキャンセルタイプのヘッドホンにおいては、騒音低減回路の非動作状態でも外部からの騒音をある程度低減して聴感上の静かな環境が得られることが強く望まれていた。
また、ノイズキャンセルタイプでないパッシブ型のヘッドホンにおいても、音声信号の出力有無に拘わらず外部からの騒音を効果的に低減するものであれば、上述したような聴感上の静粛環境が得られ、航空機等での睡眠環境構築が可能となるので、極めて有用である。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、外部からの騒音を良好に低減する遮音性のより高いヘッドホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本願発明は手段として次の1)乃至6)の構成を有する。
1) 放音孔(11Rg)を有するバッフル板(11R)と、
前記バッフル板(11R)の一面側に前記放音孔(11Rg)を囲むよう立設された周壁(11Re)と、
該周壁(11Re)の内側に収容されたスピーカユニット(16R)と、
前記周壁(11Re)に当接すると共に前記スピーカユニット(16R)の背面(16R2)を覆って該背面(16R2)との間に第1のキャビティ(BC1)を形成するユニットカバー(12R)と、
前記バッフル板(11R)に当接すると共に前記ユニットカバー(12R)を覆って該ユニットカバー(12R)及び前記バッフル板(11R)との間に第2のキャビティ(BC2)を形成するハウジング(15R)と、を有するスピーカ部(1R)を備えたヘッドホン(50)である。
2) 前記スピーカ部(1R)に、
所定形式の電池(BT)を電源として動作する回路基板(13R)と、
前記第1及び第2のキャビティ(BC1,BC2)に対して非連通として前記バッフル板(11R)に設けられた、前記所定形式の電池(BT)を収容する凹部(11Rd)と、を備えたことを特徴とする1)に記載のヘッドホン(50)である。
3) 前記凹部(11Rd)に収容された前記所定形式の電池(BT)の一部が前記バッフル板(11R)の表面(11Rf)から突出することを特徴とする2)に記載のヘッドホン(50)である。
4) イヤーパッド(8R)と該イヤーパッド(8R)がはめ込まれた板状のパッドホルダ(9R)とを有して前記バッフル板(11R)に取り付けられたパッド部(17)を備え、
前記所定形式の電池(BT)が前記凹部(11Rd)に収容されている場合に、前記パッドホルダ(9R)を前記突出した所定形式の電池(9R)の一部に当接または近接するよう構成して成ることを特徴とする3)に記載のヘッドホン(50)である。
5) 1)に記載のスピーカ部(1R)を第1及び第2のスピーカ部(1R,1L)として1対備え、
さらに、
該第1及び第2のスピーカ部(1R,1L)の少なくとも一方に搭載された、所定形式の電池(BT)を電源として動作する回路基板(13R)と、前記第1及び第2のスピーカ部(1R,1L)のそれぞれの前記バッフル板(11R,11L)に、前記第1及び第2のキャビティ(BC1,BC2)に対して非連通として設けられた第1及び第2の凹部(11Rd,11Ld)と、を備え、
前記第1及び第2のキャビティ(BC1,BC2)の形状及び前記第1及び第2の凹部(11Rd,11Ld)の形状を、前記第1のスピーカ部(1R)と第2のスピーカ部(1L)とで同じにして成ることを特徴とするヘッドホン(50)である。
6) 前記第1の凹部(11Rd)に前記所定形式の電池(BT)を収容可能にすると共に、前記第2の凹部(11Ld)に前記所定形式の電池(BT)の収容を規制する規制手段(11Ld1)を備えたことを特徴とする5)に記載のヘッドホン(50)である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部からの騒音を良好に低減してより高い遮音性が得られる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図12を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明のヘッドホンの実施例を示す外観図であり、図1(F)が正面図、図1(L)が左側面図、図1(R)が右側面図、図1(U)が天面図である。
【0018】
このヘッドホン50は、左スピーカ部1Lと、右スピーカ部1Rと、左スピーカ部1Lを軸CLL回りの所定角度範囲で回動自在に支持する左ハンガー2Lと、右スピーカ部1Rを軸CLR回り(矢印D0)の所定角度範囲で回動自在に支持する右ハンガー2Rと、左ハンガー2Lと右ハンガー2Rとを連結するヘッドバンド部3と、を備えている。
【0019】
ヘッドバンド部3は、基部3aと、その両端側にそれぞれ接続され基部3aに対して矢印D1方向に出入可能とされた腕部3b,3cと、を備えている。
左右のハンガー2L,2Rは、それぞれ基部3a,3bに対して矢印D2方向の所定角度範囲で回動自在に連結されている。
【0020】
この構成により、使用者は、ヘッドバンド部3を頭部に装着し、左右のスピーカ部1L,1Rの位置や向きを矢印D0,D2の回動動作と矢印D1の出入り動作とで調節することで、その左右のスピーカ部1L,1Rを、頭部形状や耳の位置の個人差によらず、左右の耳にそれぞれ良好に装着することができる。
【0021】
左スピーカ部1Lは、外部の音響機器と電気的接続をするためのジャック4を備えている。
図1(L)は、このジャック4に信号ケーブル5のプラグ5aが装着された状態を示している。
この信号ケーブル5の他端側には、例えばCD(Compact Disc)プレーヤや携帯音楽プレーヤなどの音響機器が接続され、その音響機器から出力された音声信号が信号ケーブル5を介してこのヘッドホン50に供給される。
【0022】
右スピーカ部1Rは、内蔵された騒音低減回路(後述)の動作をON/OFFする電源スイッチ6と、そのON時に点灯する電源インジケータとしてLED7と、を備えている。
【0023】
また、左右のスピーカ部1L,1Rは、それぞれ耳介に当接するパッド8L,8Rを備えている。このパッド8L,8Rは、表面を覆う樹脂レザーとその内部に収めた低発泡のウレタンフォームとを備え柔軟性を有して形成されている。このパッド8L,8Rの詳細は後述する。
【0024】
次に、このヘッドホン50の構造について、組み立て図である図2を用いて説明する。
このヘッドホン50の左右のスピーカ部1L,1Rは、互いに概ね同様の構造を有しており、特に違いについての記載がない限り、左右のスピーカ部1L,1Rは同様の対称構造である。そこで、代表として右スピーカ部1Rについて詳述する。
【0025】
右スピーカ部1Rは、バッフル板11Rと、バッフル板11Rに取り付けられるユニットケース12R,回路基板13R,及びマイクロホン14Rと、これらを覆うようにバッフル板11Rに取り付けられるハウジング15Rと、バッフル板11Rに対してハウジング15Rとは反対側に取り付けられるイヤーパットホルダ9Rと、このパッドホルダ9Rに取り付けられるパッド8Rと、を有して構成されている。また、ユニットケース12Rには、電気信号を音声に変換するスピーカユニット16Rが一体的に取り付けられている。
【0026】
また、左スピーカ部1Lは、ジャック4を含むジャック部JKがバッフル板11Lに取り付けられている。
また、右スピーカ部1Rのバッフル板11Rには、電源として単4乾電池を収容する電池収容部11Rdが形成され、左スピーカ部1Lのバッフル板11Lには、電池収容部11Rdと同様形状の電池収容ダミー部11Ld〔図3(c)参照〕が形成されている。使用時には、右スピーカ1R側の電池収容部11Rdにのみ、電池BTが収められる。
【0027】
右ハンガー2Rは、ハンガー2Raとハンガーカバー2Rbとに2分割されて概ね逆Y字状に形成されており、内部に信号線SLが配線されている。
また、Y字状の2つの腕の先端部には、内向きに突出したダボ2Rcがそれぞれ形成されている。
【0028】
以上説明した構造において、バッフル板11Rに対して、ユニットケース12R,回路基板13R,及びハウジング15Rは、タッピングねじNJにより固定されている。
マイクロホン14Rは、バッフル板11Rに形成されたマイク収容部11Raに嵌着されている。
【0029】
また、パッドホルダ9Rとパッド8Rとは、パッドホルダ9Rの周縁部にパッド8Rが嵌めこまれて一体化され、後述するスナップフィット嵌合によってバッフル板11Rに着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0030】
バッフル板11Rには、その板面に沿う軸を共通軸とする一対の貫通孔11Rbが設けられている。
この一対の貫通孔11Rbに右ハンガー2Rのダボが嵌合して右スピーカ部1Rと右ハンガー2Rとが連結されている。
また、右ハンガー2Rの逆Y字状の基部2Rdに、ヘッドバンド部3の腕部3cの先端部が係合して右ハンガー2Rとヘッドバンド部3とが連結されている。
【0031】
左スピーカ部1Lと左ハンガー2Lとヘッドバンド部3とも、同様の構造で連結される。
【0032】
次に信号経路及び電源経路について概略説明する。図2において、信号線SLなどの音声信号経路は、便宜的に各部材について一部を記載しており、全体として音声信号などが以下のように入出力されるように配線されている。
【0033】
すなわち、外部機器からジャック4に入来した音声信号の内、左チャネルの信号は回路基板13Lに送出され、右チャネルの信号は、左ハンガー2L,ヘッドバンド部3及び右ハンガー2Rの内部に収められた信号線SLを介して回路基板13Rに送出される。
また、マイクロホン14L,14Rで収音された音声信号は、それぞれ回路基板13L,13Rに送出される。
回路基板13L,13Rからは、それぞれスピーカユニット16L,16Rに音声出力信号が出力される。
電池収容部11Rdに収められた電池の電源電圧は、各回路基板13L,13Rに供給される。その際、左スピーカ部1Lの回路基板13Lには、ヘッドバンド部3の内部に収められた別の信号線SL1を介して供給される。
【0034】
次に、騒音低減回路について説明する。この騒音低減回路NCCは、回路基板13L,13Rそれぞれに同じ構成のものが独立して搭載されており、以下、代表として回路基板13R側のものについて説明する。
【0035】
この騒音低減回路NCCは、スピーカユニット16Rの放音面HOM近傍に設けられたマイクロホン収容部11Raに装着されているマイクロホン14Rで収音された収音信号と、スピーカユニット16Rに出力する音声信号と、の差分をとった差分信号を生成する。このマイクロホン14Rでは、耳で聴取される音とほぼ同じ音が収音される。
そして、この差分信号の逆位相信号である逆差分信号を生成し、この逆差分信号と音声信号とを合成した合成音声信号をスピーカユニット16Rに対して出力する。
この合成音声信号は、そして、スピーカユニット16Rから出力された合成音声信号と外部からの騒音とを再びマイクロホン14Rで収音して音声信号との差分を取った差分信号を生成する・・・というフィードバックが行われるよう構成されている。
【0036】
従って、聴感上、外部からの騒音が極めて良好に低減される。
【0037】
次に、右スピーカ部1Rの具体的内部構造について詳述する。
まず、バッフル板11Rについて図3を用いて説明する。
図3(a)は、バッフル板11Rをスピーカユニット15Rが装着される側から見た斜視図であり、図3(b)は、パッド8Rが装着される側から見た斜視図である。
【0038】
軸CLHは、右ハンガー2Rに支持された際の回動軸であり、ヘッドホン50が頭部に装着された際に概ね前後方向を向く軸である。従って、便宜的に図3に示したように上下前後の方向を設定して説明する。
このバッフル板11Rは、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を用い、上下方向にやや長い長丸状に形成されている。
また、この長丸状において、軸CLHは上下方向のほぼ中央に位置するように設定されている。
また、周縁の全域には、周壁11Rcが形成されている。
【0039】
そして、このバッフル板11Rには、中央からやや下方よりの位置を中心として環状に突出する周壁である突出壁11Reが形成されている。
この突出壁11Reの内形は、スピーカユニット16Rの外形と隙間なく嵌合するように設定されている。
この突出壁11Reには、ユニットケース12RをねじNJで固定するための下孔11Re1が2ヶ所形成されている。
また、突出壁11Reに囲まれた範囲には、所定の大きさで開口する複数の放音孔11Rgと、略籠状に突出壁11Reとは反対側に突出しマイクロホン14Rを収容するマイク収容部11Raが形成されている。
【0040】
突出壁11Reには、スピーカユニット16Rが取り付けられたユニットケース12Rが当接して固定され、スピーカユニット16Rから出力された音が、放音孔11Rgを通過して外部(耳側)に放出される。
また、突出壁11Reには、一対の半円弧状の切り込み11Re2が一対形成されている。
【0041】
突出壁11Reの上方には、突出壁11Reの突出方向に張り出すと共に、軸CLHに沿う方向を長手として縦断面が略円弧状なる電池収容部11Rdが形成されている。
この電池収容部11Rdの張り出し量、言い換えれば、電池収容部11Rdの収容部深さdp1は、この電池収容部11Rdに収められた電池の一部が、バッフル板11Rの表面11Rfよりも突出するように設定されている。また、電池収容部11Rdが円弧状でなくてもよく、その場合も、その内面形状などが電池の一部をバッフル板11Rの表面11Rfから突出させるように形成されていればよい。
電池収容部11Rdの長手方向の一方、または両方の端部には、電池BTの電極と接触させるための端子を取り付けるための端子孔11Rd1が設けられている。
この端子孔11Rd1は、端子を取り付けた後にシール材により封止される。
【0042】
また、バッフル板11Rには、突出壁11Reと同じ方向に突出する6つのボスB1〜B6が設けられている。ボスB1〜B4は、ハウジング15Rをねじ止めするために利用され、そのねじが挿通される貫通孔を有しており、ボスB5,B6は、回路基板13Rをねじ止めするために利用され、下孔(めくら孔)を有している。
また、バッフル板11Rには、マイク収容部11Raと同じ方向に突出し、外向きの凸部11Rh1を有する係合爪11Rhが4つ設けられている。この係合爪11Rhは、詳細を後述するパッドホルダ9Rの係合爪と係合する。
【0043】
次に、スピーカユニット16R及びユニットケース12Rについて図4を用いて詳述する。
図4(a)は、スピーカユニット16Rのユニットケース12Rへの取り付けを説明する斜視図であり、図4(b)は、スピーカユニット16Rを取り付けた状態での図4(a)におけるS1−S1断面を示した図である。
【0044】
スピーカユニット16Rは、扁平の円盤状を呈し、音が放出される放音面HOMの反対側の面である背面16R2の周縁には段部16R1が設けられている。
また、背面M1から信号線SN2が一対延出している。
【0045】
一方、ユニットケース12Rは、スピーカユニット16Rの段部に当接する周縁壁12R1を有する扁平の丸蓋形状を呈し、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
また、ユニットケース12Rの周縁壁12R1には、突出壁11Reに設けられた切り込み11Re2に対応するように、半円弧状の切り込み12R2が一対形成され、中心から図4の下方に偏倚した位置に貫通孔12R3が形成されている。
【0046】
そして、スピーカユニット16Rとユニットケース12Rとは、突出壁11Reの切り込み11Re2と切り込み12R2との間から信号線SN2を突出壁11Reの外側へ引き出すと共に、段部16R1と周縁壁12R1とを接着剤で密着固定することで一体化される。
信号線SN2と各切り込み11R2,12R2で形成される孔とは、両者の間に隙間が生じないように切り込みの形状が設定されている。
【0047】
ユニットケース12Rの内面12R4には、貫通孔12R3を覆って空気流通に対して所定の抵抗を付与するシート20Rが貼付されている。このシートとしては、ヒメロン(アンビック株式会社の登録商標)などの不織布が好適である。
そして、貫通孔12R3は、スピーカユニット16Rに直接接する空間であるキャビティBC1と壁を挟んだその外側の空間であるキャビティBC2とを連通するダクト(音響孔)として機能する。
【0048】
キャビティBC1は、図4(b)に示すように、スピーカユニット16Rがユニットケース12Rに固定された状態において、スピーカユニット16Rの背面16R2とユニットケース12Rの内面12Rとの間の、貫通孔12R3以外密閉された空間として形成されている。
【0049】
図5は、ハウジング15Rを内面側から見た斜視図である。
【0050】
このハウジング15Rは、バッフル板11Rに対応する外形形状を有する略椀状を呈して、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
また、このハウジング15Rは、外縁に沿う周壁部15R1を備えており、この周壁部15R1の先端とバッフル板1Rの周壁11Rcとは、隙間無く嵌合するように互いの詳細形状が設定されている。
また、ハウジング15Rの内側には、下孔(めくら孔)を有する4本のボスB11〜B14が立設されており、これらのボスは、バッフル板1RのボスB1〜B4とそれぞれ対応してねじ止めに供される。
【0051】
また、このハウジング15Rには、開口部としてはただ2つ、すなわち、回路基板13R上に備えられた電源スイッチ6とLED7とが嵌合する開口部15R2,15R3が形成されている。
これらの開口部15R2,15R3は、組み立て後において、嵌合した電源スイッチとLEDとの隙間がほとんどなくなるように寸法や形状が設定されている。
【0052】
以上説明した各部材を、図2に示すように組み立てた右スピーカ部1Rについて図6及び図7を用いて説明する。
具体的には、バッフル板11Rに、スピーカユニット16Rを固着したユニットケース12Rをねじ止めし、回路基板13Rをねじ止めし、ユニットケース12R及び回路基板13Rを覆うようにハウジング15Rをねじ止めした状態を、説明する。
図6は、図1におけるS2−S2断面図であり、図7は、図6におけるS3−S3断面図であり、いずれの図も、理解容易のために一部を省略して模式的に示している。
【0053】
図6及び図7において、スピーカユニット16Rの外周面とバッフル板11Rの突出壁11Reの内周面とは、ほとんど隙間なく嵌合するように寸法が設定されている。
また、上述したように、電池収納部11Rdに設けられた端子孔11Rd1(図6及び図7には不図示)は、図示しない充填剤(シリコン系のシール材など)により封止されている。
また、ボスB1〜B4の貫通孔もねじNJ(図2参照)により塞がれている。
また、左スピーカ部1Lにおいて、ジャック4の孔は、それがキャビティBC1またはBC2と空間的に連結しないように、バッフル板1L及びハウジング15Lとにより形成される図示しない壁により塞がれている。
【0054】
従って、突出壁Reとスピーカユニット16Rの放音面HOMとバッフル板11Rとにより囲まれた空間SPは、放音孔11Rg以外密閉された状態となっている。そして、バッフル板11Rおける開口部は、その放音孔11Rgのみとなっている。
さらに、スピーカユニット11Rの背面11R2側は、上述したように、ユニットケース12Rにより貫通孔12R3以外塞がれた密閉状態のキャビティBC1が形成されている。
また、ユニットケース12Rと、ハウジング15Rの内面15R2との間には、所定の間隙が設けられており、これにより、密閉された空間であるキャビティBC2が形成されている。
【0055】
ここで、放音孔11Rgから放出される音SDを耳EARで聞く場合を説明すると、スピーカユニット16Rからの音を直接聴取できることは当然であるが、ハウジング15Rの外側からの騒音NSが放音孔11Rgを通過して耳EARに到達するための空間経路は存在せず、その騒音NSのすべて、あるいは大部分が、ハウジング15Rを通過し、キャビティBC2を通過し、さらにユニットケース12Rを通過しなければ、放音孔11Rgを介して耳EARに到達することができない構造となっている。
換言するならば、外部からの騒音は、少なくとも2つの壁を通過しないと耳に到達し得ないということである。
【0056】
すなわち、放音孔11Rgを通過して耳EARに到達する外部からの騒音NSは、少なくとも、バッフル板11Rの周壁11Rc又はハウジング15Rからなる第1の壁と、キャビティBC2による空間と、バッフル板11Rの突出壁11Re又はユニットケース12Rからなる第2の壁と、を通過したものであるので十分に減衰しており、良好な遮音効果が得られる。以下、この構造を、簡単のために2重壁構造とも称する。
【0057】
また、図6においては、突出壁Reとスピーカユニット16Rの放音面HOM側の端面とバッフル板11Rとで空間SPを形成する構成を示したが、スピーカユニット16Rの放音面HOM側の端面をバッフル板11Rの内側面に密着させるようにしてもよい(図8参照)。
【0058】
この図8に示した構成によれば、放音孔11Rgを通過して耳EARに到達する外部からの騒音NSのすべて、あるいは大部分は、バッフル板11Rの周壁11Rc又はハウジング15Rからなる第1の壁と、バッフル板11Rの突出壁11Re又はユニットケース12Rからなる第2の壁と、さらにスピーカユニット16Rを通過した音であるので、その音量は大幅に減衰しており、極めて良好に遮音効果が得られる。
【0059】
ところで、インナーイヤータイプと比較して大型のハウジングが許容されるオーバーヘッドタイプのヘッドホンといえども、同じ高音質が得られるのであれば、スピーカ部は小さい方が望まれるが、キャビティの容量が異なると、あるいは、キャビティの容量が同じであっても、その形状が異なると、再生周波数特性が変わることが知られている。
【0060】
そこで、実施例のヘッドホン50においては、そのスピーカ部1L,1Rにおいて、電池BTを収容しない左スピーカ部1Lにおいても、右スピーカ部1Rと同じ形状の電池収容部11Ldを設けると共に左右のキャビティBC1,BC2を同形状(自ずと同容積)にしている。
これにより、左右のスピーカ部1L,1Rから出力される音声の再生周波数特性が揃うので、このヘッドホン50は極めて高品位な再生音を提供することができる。
【0061】
ここで、左スピーカ部1Lのバッフル板11Lにおける電池収容部11Ldには、図3(c)に示すように、リブ11Ld1が形成されて電池の誤収容が防止されている。
また、右スピーカ部1R側に設けてある端子孔11Rd1に相当する孔は設けられてないので電池収容部11Ldに開口部はない。
【0062】
一方、ハウジングの外形サイズを拡大することなくキャビティBC2の容量を増加させるために、電池収容部11Rdに収容された電池BTの収容位置を、その電池BTの一部がバッフル板11Rの表面11Rfから突出するように設定してある。
この突出量は、図6においてβで示される。
その際、電池BTの押さえは、後述するように、パッドホルダ9Rで行う構成としている。
【0063】
これにより、図6に示されるように、実施例の電池収容部11RdにおけるキャビティBC2側の面11Rd1位置を、電池BTが表面11Rfから突出しないように収容する場合の電池収容部11Rdの外面位置αよりも外側(図6の下方側)に位置させることができるので、電池BTを完全に収容した場合と比較してキャビティBC2の容量を増加させることができる。
【0064】
従って、この実施例のヘッドホン50は、スピーカ部が同じ外形サイズの他のヘッドホンと比べて、より優れた音質の再生音を提供することができる。
また、電池収容部11Rdの凹みを少なくできるので、スピーカ部の内部レイアウトに余裕ができ、スピーカ部を小さく、あるいは、薄くすることが可能となる。これは、図6に示すように、電池BTを完全に収容した場合のαのラインが、例えば基板13Rと干渉してしまうことからも明らかである。
【0065】
使用する電池BTは、単4乾電池に限るものではなく、単1〜単3,単5などの乾電池や、各種充電池,ボタン電池など、サイズ、形状、種類などについて種々の電池を適用することができる。
いずれの態様の電池であっても、実施例のヘッドホン50は、バッフル板11Rにおけるパッド8Rを装着する面11Rf側に開口すると共に他の面11Rd側が塞がれた電池収容部11Rdを形成し、この電池収容部11Rdを、電池BTの一部がバッフル板11Rの表面11Rfから突出するようにその電池BTの一部を収容するものとし、この電池収容部11Rdから電池BTが外れるのを防止する蓋の機能を、パッド8Rの形状維持機能を有するパッドホルダ9Rに持たせるように構成されている。
【0066】
実施例のヘッドホン50における主要寸法を以下に示す。もちろん、これは一例であり、種々のサイズの部材を用いることができるのは言うまでもない。
左右スピーカ部1L,2Rの外形:72mm(長手),60mm(短手),厚さ15mm
スピーカユニット16Rの外径:φ40mm
【0067】
次に、バッフル板11Rに装着されイヤーパッド51について説明する。
このイヤーパッド51は、バッフル板に装着されるパッド8R及びパッドホルダ9Rを有して構成され、その形状は、いずれも左右同じとすることができるので、簡単のために、以下、パッド8Rとパッドホルダ9Rを一体にしたものをパッド部19と称し、代表として右側のものについて説明する。
【0068】
図9(a)は、パッド8Rのバッフル板11Rに取り付ける側から見た斜視図であり、図9(b)は、図9(a)におけるS5−S5断面図である。
【0069】
このパッド8Rは、リング状のスポンジ部材8Raをシート8Rb及び樹脂レザー8Rcにより、断面における略半周ずつ包んだパッド本体部8Rdと、中央開口を塞ぐようにパッド本体部8Rdに容着された防塵ネット8Reと、防塵ネット8Reに容着されたフラップ8Rfと、で構成されている。
防塵ネット8Reは、微細な網目状に形成され、埃などは通過せず、音は自由に通過するものである。
フラップ8Rfは、パッド本体部8Rdの全周にわたり、図9(b)に示す断面が横U字状となって収容部8Rgを形成するように設けられている。
【0070】
スポンジ部材8Raの材料として、例えば、低発泡ウレタンフォームを用いることができる。
シート8Rb及びフラップ8Rfの材料として、例えば、ポリウレタン(PU)シートを用いることができる。
樹脂レザー8Rcの材料として、例えば、プロテインレザー(出光興産株式会社の登録商標)を用いることができる。
防塵ネット8Reの材料として、例えば、ナイロンを用いることができる。
【0071】
パッドホルダ9Rは、図10に示すように、平板状に形成されている。材料としては、ポリアセタール(POM)樹脂を用いることができる。
このパッドホルダ9Rには、このパッドホルダ9Rとバッフル板11Rとを面同士対向させて重ね合わせることでバッフル板11Rの係合爪11Rhに係合する爪9R1が設けられている。
【0072】
また、このパッドホルダ9Rをバッフル板11Rに取り付けた状態において、そのスピーカユニット16Rの放音面HOMに対応する位置に、開口部9R2が形成されている。
また、爪9R1が形成されている面には、一対のリブ9R3が形成されている。このリブ9R3は、このパッドホルダ9Rがバッフル板11Rに取り付けられた際に、電池収容部8Rdに収められた電池BTにわずかな隙間を有して近接する高さで形成されている。
【0073】
これにより、パッドホルダ9Rは、電池BTが電池収容部8Rdから外れないようにするための押さえ(蓋)として機能する。
従って、実施例のヘッドホン50は電池蓋が不要であるから、部品点数が削減され、その分、コストダウンとなり得る。
【0074】
また、実施例のヘッドホン50においては、このパッドホルダ9Rに、さらに、遮音リング18が取り付けられている。
具体的には、パッドホルダ9Rの周縁に沿ってリング状の遮音リング18が取り付けられている。
この遮音リング18は、ウレタンフォームで形成されて弾力性を有しており、パッドホルダ9Rに対して両面テープ19で貼付されている。この状態で遮音リング18の厚さをtとし、リブ9R3の高さをβ1としておく。
【0075】
図11は、パッド8Rをパッドホルダ9Rに装着した状態を示す断面図である。
図11において、パッドホルダ9Rは、収容部8Rgに、遮音リング18がバッフル板11R側(図11の下方側)になるように収められている。
パッドホルダ9Rを収める際には、フラップ8Rfをめくるように変形させ、収容部8Rgに嵌め込むようにして収める。ここで、フラップ8Rfの厚さをt2としておく。
【0076】
このように組み立てられたパッド部17を、バッフル板11Rに装着した状態の断面図を図12に示す。この図12は、電池収容部11Rdに電池BTが収容された状態を示し、端子は簡単のため削除してある。
【0077】
バッフル板11Rの係合爪11Rhとパッドホルダ9Rの爪9R1との係合により、両者は、厚さ方向(図12の上下方向)において、次のような位置関係を有して一体化される。
すなわち、遮音リング18は、厚さ方向にわずかにつぶされている。
また、繰り返しとなるが、リブ9R3の先端が電池BTと当接寸前の位置にある。
【0078】
前者により、バッフル板11Rの表面11Rfと遮音リング18との間に挟み込まれたフラップ8Rfは、表面11Rfに隙間なく密着する。
後者により、電池BTは電池収容部11Rdにほぼガタなく収められる。
【0079】
寸法関係でみると、図6で示した電池BTの突出量βと、図10で示した遮音リング18の自然厚さt,フラップ8Rfの厚さt2,及びリブ9R3の高さβ1と、の関係は、
β+β1<t+t2 となるように設定されている。
パッドホルダ9Rをバッフル板11Rに固定した状態で、密閉性を高めるために遮音リング18は所定量圧縮されるように各寸法が設定されており、この圧縮量をΔtとすると、 β+β1≒t−Δt+t2 である。
実施例では、t=2mm,t2=0.5mm,β=1mm,β1=1.1mm,圧縮率:75%とし、電池BTとリブ9R3との隙間を0.1mmとして、良好な密閉性と電池押さえ機能を発揮することができている。その場合、β+β1+0.1=0.75t+t2 として示される。
【0080】
バッフル板11Rに取り付けられたパッド部17は、両者を引き離す方向に力を付与することで係合爪11Rhと爪9R1との係合が解除し、容易に分離できる。電池BTの交換は、このようにパッド部17をバッフル板11Rから外して容易に行うことができる。
【0081】
上述したような、パッドホルダ9Rに直接遮音リング18を取り付け、これをフラップ8Rfの内向きに開口した収容部8Rgに収めると共に、このフラップ8Rfを介して遮音リング18をバッフル板11Rに押圧する構成により、以下のような効果が得られる。
【0082】
まず、遮音リング18がフラップ8Rfに巻き込まれて外部に露出していないので、このパッド部17の遮音性が極めて高くなっている。この効果について、遮音リングを用いた従来のヘッドホンと比較して、図15を用いて説明する。
【0083】
図15に示す従来のヘッドホン150においては、ハウジング151の端面に遮音リング152を貼り付けていた。
そして、内部に低発泡ポリウレタン材153を収め、中央開口を塞ぐように防塵ネット155が取り付けられたリング状のパッド154を、図示しない係合手段によりハウジング151に固定していた。
その際、遮音リング152は、若干量厚さ方向につぶされてパッド154とハウジング151間の密着度を向上させるように構成されていた。
従って、遮音リング152は外部から視認できるものであった。
【0084】
実施例においても、遮音リング18は、密着度を高めるために弾力性を有する材料を用いている。
この材料としては、上述したように、ポリウレタンの発泡材を用いるのが望ましいが、これは気泡構造を有するため遮音性は高くない。
【0085】
そこで、従来例に対して実施例においては、遮音リング18を、シート材であることから比較的高い遮音性を有するフラップ8Rfにくるむように内部に収める構成としている。これにより従来と比較して高い遮音性を発揮することができている。
【0086】
また、別の効果として、遮音リング18が外部に露出していないため、紫外線による材料の劣化が極めて少なく、長期に遮音特性が維持される、ということがある。
また、別の効果として、発泡ポリウレタン材は、外観的に高い品位を得にくく、遮音リング18が外部から視認できるデザインで高品位を得ることは難しかったが、実施例では、遮音リングが外部から見えず、PUのシート材や樹脂レザー材のみを見せるようにできるので、ヘッドホン50を高級感溢れる外観デザインにすることが容易になっている、ということがある。
【0087】
以上詳述したように、実施例のヘッドホン50は、パッド部17においても、外部からの騒音がパッドの内部に侵入するのを抑制し、高い遮音性を有するものである。
従って、このパッド部17の遮音構造と、スピーカ部1L,1Rが有する2重壁の遮音構造とを組み合わせることは、それぞれ単独で得られた以上の極めて高い遮音性が得られて大変好ましい。
【0088】
以上詳述した実施例のヘッドホン50の遮音特性について、従来のヘッドホンを比較例として図13及び図14を用いて説明する。
図13は、実施例のヘッドホン50の音圧周波数特性を示す。
図14は、比較例のヘッドホン150の音圧周波数特性を示す。
【0089】
比較例のヘッドホン150は、実施例と同様のフォードバックタイプのノイズキャンセルヘッドホンであるが、図15に示すように、スピーカユニット156のキャビティがただ1つの空間であって、外部からの騒音NSがハウジング151を通過するとスピーカユニット156に到達してしまう1重筐体構造である点と、遮音リング152が上述したように外部に露出する構造である点で実施例とは異なっている。
【0090】
図13及び図14においては、外部騒音の音圧周波数特性NSFと、ヘッドホンを装着した際に耳で聴取される音に相当し、騒音低減機能が非動作状態であるパッシブ状態での聴取音PLと、を示し、特に、図13については、参考として騒音低減機能が動作状態であるアクティブ状態での聴取音ALも表示している。
【0091】
これらの図において、実施例は比較例に対して、パッシブ状態で1000Hz〜10000Hzの帯域で顕著に騒音が減衰されていることがわかる。
これは、実施例における、スピーカ部の2重壁構造やパッドの遮音構造による遮音性が、この周波数帯域で極めて高いことを示している。
【0092】
従来、アクティブな騒音低減機能は、低音域で特に高い効果を発揮することが知られており、図13からもそれが裏付けられている。
このアクティブな騒音低減機能に加えて、実施例のパッシブな構造を採用することで、低音域から中音域にわたる広い帯域で、極めて良好な騒音減衰効果が得られることがわかる。
【0093】
実施例においては、使用する電池をキャビティBC1,BC2の内部ではなく外部に配置させるように電池収納部11Rdを設けている。
これは、ノイズキャンセル回路の消費電力が少なく、左右スピーカ部1L,1Rのいずれか一方のみに電池を搭載すれば十分であることから、キャビティBC1,BC2の内部に電池を配置する構成にすると、左右のキャビティの容量が異なって出力音質も左右で異なってしまうことを回避するためである。
すなわち、実施例のように、キャビティの外部に一つの電池を配設することにより、左右のキャビティの容量を同じにして左右の出力音質を揃えることが可能となっている。
【0094】
キャビティBC1とキャビティBC2を連結するダクト12R3は、各キャビティBC1,BC2や、用いるスピーカユニット16L,16Rなどに応じて最適な再生周波数特性になるように、その径が設定され、併せてそのダクト12R3を覆うシート20L,20Rの厚さや材質が設定される。
【0095】
キャビティBC1,BC2は、スピーカユニット16Rの背面16R2に直交する方向において、同じ距離を有しているのが望ましい。具体的には、図6において、距離BC1dと距離BC2dとの差ができるだけ少ないことが望ましい。一方の距離が長くても、他方が短くなると、騒音の減衰効果が少なくなることによる。
【0096】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0097】
キャビティBC1,BC2は、完全に密閉されてなくてもよい。例えば、外形サイズが50mm〜60mm程度のスピーカ部の場合、φ3mm程度の開口は、音質や遮音特性に若干の影響があるものの、遮音効果は十分であり許容され得る。もちろん、開口がなく密閉に近い方が好ましいことは言うまでもない。
【0098】
実施例においては、ノイズキャンセルヘッドホンについて説明したが、本発明は、電池を搭載しないヘッドホンや、電池を搭載したノイズキャンセルタイプ以外のヘッドホンにも適用することができる。
ノイズキャンセルタイプ以外の電池搭載ヘッドホンの例として、ワイヤレスヘッドホン,サラウンドヘッドホン,ラジオ内蔵ヘッドホンなどがある。
また、本発明は、ヘッドバンドを備えていないいわゆる耳掛け型のヘッドホンにも適用することができる。
回路基板は、左右のスピーカ部1L,1Rの内の少なくとも一方に搭載されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明のヘッドホンの実施例を示す外観図である。
【図2】本発明のヘッドホンの実施例を説明するための組み立て図である。
【図3】本発明のヘッドホンの実施例におけるバッフル板を説明するための図である。
【図4】本発明のヘッドホンの実施例におけるユニットケースを説明するための図である。
【図5】本発明のヘッドホンの実施例におけるハウジングを説明するための図である。
【図6】本発明のヘッドホンの実施例を説明するための断面図である。
【図7】本発明のヘッドホンの実施例を説明するための他の断面図である。
【図8】本発明のヘッドホンの実施例の変形例を説明するための断面図である。
【図9】本発明のヘッドホンの実施例におけるパッドを説明するための図である。
【図10】本発明のヘッドホンの実施例におけるパッドホルダを説明するための図である。
【図11】本発明のヘッドホンの実施例におけるパッド部を説明するための図である。
【図12】本発明のヘッドホンの実施例における要部の構造を説明するための図である。
【図13】本発明のヘッドホンの実施例における音圧周波数特性を示すグラフである。
【図14】比較例のヘッドホンの音圧周波数特性を示すグラフである。
【図15】従来のヘッドホンを説明するための図である。
【符号の説明】
【0100】
1L 左スピーカ部
1R 右スピーカ部
2L 左ハンガー
2R 右ハンガー
2Ra ハンガー
2Rb ハンガーカバー
2Rc ダボ
3 ヘッドバンド部
3a 基部
3b,3c 腕部
4 ジャック
5 信号ケーブル
5a プラグ
6 電源スイッチ
7 LED(インジケータ)
8L,8R パッド
8Ra スポンジ部材
8Rb PUシート
8Rc 樹脂レザー
8Rd パッド本体部
8Re 防塵ネット
8Rf フラップ
8Rg 収容部
9L,9R パッドホルダ
9R1 爪
9R2 開口部
9R3 リブ
11L,11R バッフル板
11Ra マイク収容部
11Rc 周壁
11Rd,11Ld 電池収容部
11Rd1 端子孔
11Re 突出壁
11Re1 下孔
11Re2 切り込み
11Rf 表面
11Rg 放音孔
11Rh 係合爪
12L,12R ユニットケース
12R1 周縁壁
12R2 貫通孔
12R3 貫通孔(ダクト)
12R4 内側面
13L,13R 回路基板
14L,14R マイクロホン
15L,15R ハウジング
15R1 周壁部
16L,16R スピーカユニット
16R1 段部
16R2 背面
17 パッド部
18 遮音リング
19 両面テープ
20L,20R シート
50 ヘッドホン
51 イヤーパッド
BC1,BC2 キャビティ
BT 電池
CLH (回動)軸
dp1 電池収容部深さ
EAR 耳
NJ タッピングねじ
NS 騒音
SD (音孔からの)音

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放音孔を有するバッフル板と、
前記バッフル板の一面側に前記放音孔を囲むよう立設された周壁と、
該周壁の内側に収容されたスピーカユニットと、
前記周壁に当接すると共に前記スピーカユニットの背面を覆って該背面との間に第1のキャビティを形成するユニットカバーと、
前記バッフル板に当接すると共に前記ユニットカバーを覆って該ユニットカバー及び前記バッフル板との間に第2のキャビティを形成するハウジングと、を有するスピーカ部を備えたヘッドホン。
【請求項2】
前記スピーカ部に、
所定形式の電池を電源として動作する回路基板と、
前記第1及び第2のキャビティに対して非連通として前記バッフル板に設けられた、前記所定形式の電池を収容する凹部と、を備えたことを特徴とする請求項1記載のヘッドホン。
【請求項3】
前記凹部に収容された前記所定形式の電池の一部が前記バッフル板の表面から突出することを特徴とする請求項2記載のヘッドホン。
【請求項4】
イヤーパッドと該イヤーパッドがはめ込まれた板状のパッドホルダとを有して前記バッフル板に取り付けられたパッド部を備え、
前記所定形式の電池が前記凹部に収容されている場合に、前記パッドホルダを前記突出した所定形式の電池の一部に当接または近接するよう構成して成ることを特徴とする請求項3記載のヘッドホン。
【請求項5】
請求項1記載のスピーカ部を第1及び第2のスピーカ部として1対備え、
さらに、
該第1及び第2のスピーカ部の少なくとも一方に搭載された、所定形式の電池を電源として動作する回路基板と、前記第1及び第2のスピーカ部のそれぞれの前記バッフル板に、前記第1及び第2のキャビティに対して非連通として設けられた第1及び第2の凹部と、を備え、
前記第1及び第2のキャビティの形状及び前記第1及び第2の凹部の形状を、前記第1のスピーカ部と第2のスピーカ部とで同じにして成ることを特徴とするヘッドホン。
【請求項6】
前記第1の凹部に前記所定形式の電池を収容可能にすると共に、前記第2の凹部に前記所定形式の電池の収容を規制する規制手段を備えたことを特徴とする請求項5記載のヘッドホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−17175(P2009−17175A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176009(P2007−176009)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】