説明

ヘテロ環ジイソシアナートの製造方法

【課題】チオフェンジイソシアナートまたはフランジイソシアナートを、工業的に安全且つ効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】チオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸を、芳香族炭化水素溶媒中においてハロゲン化剤と反応させ、チオフェンジカルボン酸ハライドまたはフランジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液を得る工程(a);チオフェンジカルボン酸ハライドまたはフランジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液に極性溶媒を加えて、アジ化物と反応させ、次いで水洗して極性溶媒を除去し、チオフェンジカルボン酸アジドまたはフランジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を得る工程(b);ならびに、チオフェンジカルボン酸アジドまたはフランジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を加熱して、チオフェンジイソシアナートまたはフランジイソシアナートを得る工程(c);を含有するジイソシアナートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ環ジイソシアナートの製造方法に関する。さらに詳しくは、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等の高分子化合物のモノマー原料として有用なチオフェンジイソシアナートおよびフランジイソシアナートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チオフェン環を有するウレタン樹脂およびウレア樹脂は、ベンゼン環を有する同樹脂よりも熱的に安定であること、また、フラン環を有するウレタン樹脂およびウレア樹脂は、難燃性を有することが知られている。そして、チオフェンジイソシアナートおよびフランジイソシアナートは、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等の高分子化合物のモノマー原料として、産業上の有用性が広く一般に認められている。
【0003】
例えば、2,5−チオフェンジイソシアナートの製造方法としては、アジピン酸を出発原料として用いて、これを塩化チオニルで塩素化してチオフェンジカルボン酸クロリドを得て、次いで、該チオフェンジカルボン酸クロリドをアセトン・水の混合溶媒中でアジ化ナトリウムと反応させてチオフェンジカルボン酸アジドを得て、次いで、該チオフェンジカルボン酸アジドをトルエン溶媒中で熱転位させて目的物のチオフェンジイソシアナートを得る方法(収率41%)が知られている(非特許文献1参照)。該方法においては、中間体のチオフェンジカルボン酸クロリドおよびチオフェンジカルボン酸アジドを単離する必要があるため、それぞれ再結晶により精製している。
【0004】
また、例えば、2,5−フランジイソシアナートの製造方法としては、2,5−フランジカルボン酸をピリジン存在下に塩化チオニルで塩素化してフランジカルボン酸クロリドを得て、次いで、該フランジカルボン酸クロリドをエーテル・水の混合溶媒中でアジ化ナトリウムと反応させてフランジカルボン酸アジドを得て、次いで、該フランジカルボン酸アジドをトルエン溶媒中で熱転位させて目的物のフランジイソシアナートを得る方法(収率60%)が知られている(非特許文献2参照)。該方法においては、中間体のフランジカルボン酸クロリドおよびフランジカルボン酸アジドを単離する必要があるため、それぞれ再結晶等により精製している。
【0005】
上記の2,5−チオフェンジイソシアナートの製造方法の場合、アセトン・水の混合溶媒中にアジ化ナトリウムを溶解させてチオフェンジカルボン酸クロリドと反応させる工程では、チオフェンジカルボン酸クロリドの加水分解が避けられず、収率が低下するために工業的に不利であるだけではなく、副生する塩酸ガスによって爆発性のアジ化水素が発生するため、工業的に非常に危険である。また、中間体のチオフェンジカルボン酸クロリドおよびチオフェンジカルボン酸アジドを再結晶によって精製しているが、それぞれの工程で再結晶をすることは、精製ロスによる収率低下、製造時間の延長等の問題があり、工業的には不利である。また、チオフェンジカルボン酸アジドは爆発性を有しており、再結晶による精製を行って結晶を単離することは非常に危険である。さらに、41%の収率は、工業的に満足のいくものではない。
【0006】
一方、上記の2,5−フランジイソシアナートの製造方法の場合にも、上記の2,5−チオフェンジイソシアナートの製造方法とほぼ同様の問題があり、さらに、60%の収率は、工業的に満足のいくものではない。
【非特許文献1】ジャーナル オブ ポリマー サイエンス:パート エー:ポリマー ケミストリー(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry),1987年,25巻,p.1781−1791
【非特許文献2】ジャーナル フューエル プラクティシェ ケミィ(JOURNAL FUER PRAKTISCHE CHEMIE),1988年,330巻,5号,p.825−829
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等の高分子化合物のモノマー原料として有用なチオフェンジイソシアナートおよびフランジイソシアナートを、工業的に安全且つ効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の溶媒を用いることにより、製造中間体を単離することなく、工業的に安全且つ効率よくチオフェンジイソシアナートおよびフランジイソシアナートを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に示すとおりのジイソシアナートの製造方法および3,4−フランジイソシアナートを提供するものである。
項1. 工程(a):下記一般式(I);
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Aは酸素原子または硫黄原子を示す。)で表されるジカルボン酸を、芳香族炭化水素溶媒中においてハロゲン化剤と反応させ、下記一般式(II);
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Aは前記と同様である。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液を得る工程、
工程(b):上記一般式(II)で表されるジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液に極性溶媒を加えて、下記一般式(III);
M(N) (III)
(式中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。nは1または2である。)で表されるアジ化物と反応させ、次いで水洗して極性溶媒を除去し、下記一般式(IV);
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Aは前記と同様である。)で表されるジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を得る工程、ならびに、
工程(c):上記一般式(IV)で表されるジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を加熱して、下記一般式(V);
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Aは前記と同様である。)で表されるジイソシアナートを得る工程、
を含有するジイソシアナートの製造方法。
項2. 芳香族炭化水素溶媒が、トルエンまたはキシレンであることを特徴とする項1に記載のジイソシアナートの製造方法。
項3. 一般式(I)で表されるジカルボン酸が、2,5−チオフェンジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸または3,4−フランジカルボン酸であることを特徴とする項1または2に記載のジイソシアナートの製造方法。
項4. 一般式(III)で表されるアジ化物が、アジ化ナトリウムであることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載のジイソシアナートの製造方法。
項5. 下記式(VI);
【0018】
【化5】

【0019】
で表される3,4−フランジイソシアナート。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明のジイソシアナートの製造方法は、工程(a)、工程(b)および工程(c)を含有する。
【0022】
[工程(a)]
この工程は、上記一般式(I)で表されるチオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸を、芳香族炭化水素溶媒中においてハロゲン化剤と反応させ、上記一般式(II)で表されるチオフェンジカルボン酸ハライドまたはフランジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液を得る工程である。
【0023】
本工程において、出発原料として用いられるチオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸は、どのような方法で製造されたものでもよい。好適な具体例としては、2,5−チオフェンジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、3,4−フランジカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(II)中のX(ハロゲン原子)としては、ハロゲン化剤の入手し易さから、塩素原子または臭素原子が好ましい。本工程で用いるハロゲン化剤としては、塩化チオニル、オキシ塩化リン、五塩化リン、三塩化リン、四塩化炭素とトリフェニルホスフィンとの組合せ等が好ましい。これらの中でも、特に塩化チオニルが好ましい。ハロゲン化剤の使用量は、上記一般式(I)で表されるチオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸1モルに対して、2〜10モルであるのが好ましく、2〜3モルであるのがより好ましい。
【0025】
反応溶媒としては、反応に不活性な芳香族炭化水素溶媒を用いる。工業的に好ましく、且つ反応に好適な芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、クメン、クロロトルエン等が挙げられ、特にトルエン、キシレンが好ましい。これらの芳香族炭化水素溶媒は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。芳香族炭化水素溶媒の使用量は、反応が進行するのに必要な量でよいが、上記一般式(I)で表されるチオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸1gに対して、1〜50mlであるのが好ましく、1〜30mlであるのがより好ましい。
【0026】
本工程においては、必要に応じて、反応促進剤を用いてもよい。反応促進剤としては、ジメチルホルムアミド、塩化アルミニウム、ピリジンが好ましく、ピリジンがより好ましい。反応促進剤の使用量は、上記一般式(I)で表されるチオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸1モルに対して、0.1〜5モルであるのが好ましく、0.1〜3モルであるのがより好ましい。
【0027】
本工程においては、上記一般式(I)で表されるチオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸、ハロゲン化剤、および必要に応じて反応促進剤を加えて、芳香族炭化水素溶媒中で反応させる。
【0028】
反応温度は、20〜120℃であるのが好ましく、70〜120℃であるのがより好ましい。反応温度が高すぎると副生成物が多くなり、反応温度が低すぎると反応速度が低下する。反応時間は、2〜40時間であるのが好ましく、3〜7時間であるのがより好ましい。
【0029】
反応終了後、室温まで冷却し、必要に応じて晶析する塩類をろ過によって取り除き、上記一般式(II)で表されるチオフェンジカルボン酸ハライドまたはフランジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液を得る。
【0030】
[工程(b)]
この工程は、上記工程(a)で得られた一般式(II)で表されるチオフェンジカルボン酸ハライドまたはフランジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液に極性溶媒を加えて、上記一般式(III)で表されるアジ化物と反応させ、次いで水洗して極性溶媒を除去し、上記一般式(IV)で表されるチオフェンジカルボン酸アジドまたはフランジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を得る工程である。
【0031】
上記一般式(III)中のMは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、nは、1または2である。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としてはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが挙げられる。上記一般式(III)で表されるアジ化物としては、アルカリ金属のアジ化物が好ましく、アジ化ナトリウムがより好ましい。上記一般式(III)で表されるアジ化物の使用量は、上記工程(a)で使用した上記一般式(I)のチオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸1モルに対して、2〜10モルであるのが好ましく、2〜5モルであるのがより好ましい。
【0032】
極性溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン系溶媒;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル、セロソルブ類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリドン等の三級アミン;酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等のカルボン酸;ピリジン、ピラジン等の含窒素芳香族溶媒が挙げられ、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、芳香族炭化水素溶媒との相溶性、アジ化物の溶解性、水との相溶性の点から、非プロトン系溶媒が好ましく、ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0033】
極性溶媒の使用量は、上記一般式(II)で表されるチオフェンジカルボン酸ハライドまたはフランジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液1mlに対して、0.05〜1mlであるのが好ましく、0.05〜0.2mlであるのがより好ましい。極性溶媒の使用量が多すぎれば、反応終了後に水洗により除去することが困難となり、次工程で反応を阻害するおそれがある。極性溶媒の使用量が少なすぎれば、反応速度、反応率が低下するおそれがある。
【0034】
本工程においては、上記一般式(II)で表されるチオフェンジカルボン酸ハライドまたはフランジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液、極性溶媒、およびアジ化物を加えて反応させる。
【0035】
反応温度は、0〜50℃であるのが好ましく、0〜30℃であるのがより好ましい。反応温度が高すぎると副生成物が多くなり、反応温度が低すぎると反応速度が低下する。反応時間は、3〜40時間であるのが好ましく、3〜22時間であるのがより好ましい。
【0036】
反応終了後、水洗・分液・脱湿などの常法により、極性溶媒、副生塩等を除去して、上記一般式(IV)で表されるチオフェンジカルボン酸アジドまたはフランジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を得る。
【0037】
[工程(c)]
この工程は、上記一般式(IV)で表されるチオフェンジカルボン酸アジドまたはフランジカルボン酸アジドを熱転位(クルチウス転位)させ、上記一般式(V)で表されるチオフェンジイソシアナートまたはフランジイソシアナートを得る工程である。
【0038】
本工程においては、上記工程(b)で得られた一般式(IV)で表されるチオフェンジカルボン酸アジドまたはフランジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を加熱して反応させる。
【0039】
反応温度は、70〜110℃であるのが好ましく、80〜100℃であるのがより好ましい。反応温度が高すぎると副生成物が多くなり、反応温度が低すぎると反応速度が低下する。反応時間は、1〜20時間であるのが好ましく、2〜10時間であるのがより好ましい。
【0040】
反応終了後、不溶解物をろ過した後に、ろ液を溶媒留去すると粗生成物が得られる。得られた粗生成物は、常法に従って再結晶等の精製を行う。
【発明の効果】
【0041】
本発明のジイソシアナートの製造方法によれば、チオフェンジカルボン酸またはフランジカルボン酸を出発原料として用いて、製造中間体を単離することなく、工業的に安全且つ効率よくチオフェンジイソシアナートまたはフランジイソシアナートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
実施例1 2,5−チオフェンジイソシアナートの製造
500ml四つ口フラスコに、2,5−チオフェンジカルボン酸60g(349mmol)、トルエン300ml、塩化チオニル87.07g(732mmol)およびピリジン57.88g(0.7317mol)を加え、115℃で4時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、沈殿物をろ過した。ろ液に、アジ化ナトリウム67.98g(1.05mol)およびジメチルホルムアミド45mlを加え、室温で22時間反応させた。反応終了後、水360mlを加え、トルエン(240ml×2)で抽出し、得られた有機層を水(180ml×2)で洗浄した後に、硫酸マグネシウムで脱湿を行った。得られたトルエン溶液を、100℃で9時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物をろ過した後に、ろ液を溶媒留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物にアセトニトリルを加えて再結晶し、2,5−チオフェンジイソシアナート42gを微黄色固体として得た(収率73%)。
融点:42.4−43.2℃
IR(KBr,cm−1):3015,2291,1593,1418,1317,1213,1059,1001,810,716,598,548
H−NMR(CDCl):δ=6.37(s,2H)
13C−NMR(CDCl):δ=127.74,124.64,118.92
元素分析
計算値(CS):C43.37%,H1.21%,N16.86%,S19.30%
実測値:C43.20%,H0.92%,N17.00%,S19.05%。
【0044】
実施例2 2,5−フランジイソシアナートの製造
30ml二つ口フラスコに、2,5−フランジカルボン酸3g(19.22mmol)、トルエン60ml、塩化チオニル4.80g(40.36mmol)およびピリジン3.19g(40.36mmol)を加え、115℃で4時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、アジ化ナトリウム3.75g(57.66mmol)およびジメチルホルムアミド6mlを加え、室温で4時間反応させた。反応終了後、水30mlを加え、トルエン(30ml×2)で抽出し、得られた有機層を水(30ml×2)で洗浄した後に、硫酸マグネシウムで脱湿を行った。得られたトルエン溶液を、95℃で4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物をろ過した後に、ろ液を溶媒留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物にヘキサンと活性炭を加えて精製し、溶媒留去して、2,5−フランジイソシアナート2.19gを無色液体として得た(収率76%)。
IR(KBr,cm−1):3373,3159,2280,1733,1555,1346,1122,763
H−NMR(CDCl):δ=5.66(s,2H)
元素分析
計算値(C):C48.01%,H1.34%,N18.66%
実測値:C48.13%,H1.28%,N18.69%。
【0045】
実施例3 3,4−フランジイソシアナートの製造
30ml二つ口フラスコに、3,4−フランジカルボン酸701mg(4.49mmol)、トルエン19ml、塩化チオニル1.14g(9.58mmol)およびピリジン750mg(9.48mmol)を加え、115℃で5時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、アジ化ナトリウム880mg(13.54mmol)およびジメチルホルムアミド1.4mlを加え、室温で3時間反応させた。反応終了後、水7mlを加え、トルエン(7ml×2)で抽出し、得られた有機層を水(7ml×2)で洗浄した後に、硫酸マグネシウムで脱湿を行った。得られたトルエン溶液を、95℃で3.5時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、不溶物をろ過した後に、ろ液を溶媒留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物にアセトニトリルを加えて再結晶し、3,4−フランジイソシアナート201mgを微黄色固体として得た(収率30%)。
IR(KBr,cm−1):3371,3163,2272,1728,1557,1342,1119,760
H−NMR(CDCl):δ=7.28(s,2H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(a):下記一般式(I);
【化1】

(式中、Aは酸素原子または硫黄原子を示す。)で表されるジカルボン酸を、芳香族炭化水素溶媒中においてハロゲン化剤と反応させ、下記一般式(II);
【化2】

(式中、Aは前記と同様である。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液を得る工程、
工程(b):上記一般式(II)で表されるジカルボン酸ハライドの芳香族炭化水素溶液に極性溶媒を加えて、下記一般式(III);
M(N) (III)
(式中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。nは1または2である。)で表されるアジ化物と反応させ、次いで水洗して極性溶媒を除去し、下記一般式(IV);
【化3】

(式中、Aは前記と同様である。)で表されるジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を得る工程、ならびに、
工程(c):上記一般式(IV)で表されるジカルボン酸アジドの芳香族炭化水素溶液を加熱して、下記一般式(V);
【化4】

(式中、Aは前記と同様である。)で表されるジイソシアナートを得る工程、
を含有するジイソシアナートの製造方法。
【請求項2】
芳香族炭化水素溶媒が、トルエンまたはキシレンであることを特徴とする請求項1に記載のジイソシアナートの製造方法。
【請求項3】
一般式(I)で表されるジカルボン酸が、2,5−チオフェンジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸または3,4−フランジカルボン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載のジイソシアナートの製造方法。
【請求項4】
一般式(III)で表されるアジ化物が、アジ化ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のジイソシアナートの製造方法。
【請求項5】
下記式(VI);
【化5】

で表される3,4−フランジイソシアナート。

【公開番号】特開2006−257004(P2006−257004A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75411(P2005−75411)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000222554)東洋化成工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】