説明

ヘプタモリブデン酸アンモニウムの製造法

ヘプタモリブデン酸アンモニウムの製造法であって、モリブデン含有の有機相とアンモニア含有溶液とからのモリブデンの逆抽出または脱着を、完全な逆抽出または脱着に際して、結果生じる逆抽出溶液または脱着溶液を、付加的かつエネルギーコストのかかる中間工程なしに直接にヘプタモリブデン酸アンモニウムの冷却晶析に供することができるように実施する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘプタモリブデン酸アンモニウムの新規の製造法に関する。
【0002】
ヘプタモリブデン酸アンモニウム(以下でAHMと呼ぶ)は、モリブデン金属粉末ならびにモリブデンを含有する触媒を製造するための公知の中間生成物である。
【0003】
ヘプタモリブデン酸アンモニウム(以下でAHMと呼ぶ)の製造は、原則的に、硫化モリブデン濃縮物の焙焼によって得られる工業用酸化モリブデン(technische Molybdaenoxiden)を、水中もしくはアルカリ性溶液中に溶解(aufschliessen)することにより行われる。生じる溶液は、例えば液−液抽出によるか、または固体イオン交換樹脂の使用下で精製される。精製された溶液は、一般に蒸発によって濃縮され、かつ、例えば鉱酸の添加によって、必要とされるpH値に調整された後、AHMが冷却晶析(Kuehlkristallisation)により晶析される。
【0004】
さらなる行程後、前精製されたモリブデン酸アンモニウム溶液は、酸性化によって中間生成物、例えばポリモリブデン酸アンモニウムへと変化される。該中間生成物は、アンモニアアルカリ性溶液中に熱条件で溶解され、かつAHMが引き続き冷却によって晶析される。
【0005】
AHMの製造法は、SU−A−1,732,042の中で記載される。該方法は、工業用酸化モリブデンを、水およびアンモニア溶液とでpH6.0〜6.8にて溶解し、かつMoO3約20〜24%の含量を有する溶液を作製することにある。この溶液は、引き続き約20〜30℃にて、組み合わせられたバグフィルターおよびメンブレンフィルターにより濾過され、かつ約50〜70℃での蒸発によって約36〜40%のMoO3濃度にまで濃縮される。その後、AHM生成物が冷却によって晶析される。この方法の欠点は、モリブデン溶液の濃縮に際しての高いエネルギー消費、溶解した不純物を分離除去するための精製工程が無いことに基づくAHM中での不純物の高い含量および母液を用いたモリブデン損失による低い生成物収率である。
【0006】
US−A−4,079,116の中では、AHMのさらなる製造法が記載される。これは水による工業用酸化モリブデンの浸出および濾過と、カチオン性不純物のイオン交換法によるこの溶液の精製とを包含する。引き続き、水浸出の残留物が、精製された溶液と合一され、かつアンモニア溶液で溶解される。生じる溶液から、蒸発晶析によりADMが晶析される。ADM母液は、例えば二酸化炭素によるpH値の調整後、最後にAHM冷却晶析に導かれる。この特許文献の第二の実施変法において、アンモニアアルカリ性溶解の溶液は、濃縮およびpH値の調整のために約55℃にて真空中で蒸発され、引き続きAHM冷却晶析に導かれる。これらの方法における欠点は、またしても、蒸発によるモリブデン溶液のエネルギー集約的な濃縮が実施されること、およびAHMが高い不純物含量を有することである。それというのも、ここで精製工程は、アニオン不純物およびアルカリ金属の分離除去を可能にしないからである。該方法のさらなる欠点は、AHM生成物に対して高いアンモニア過剰量(これは煩雑な方法によって再回収されなければならない)が用いられることにある。
【0007】
刊行物"The use of solvent extraction for the production and recovery of high-purity ammonium paramolybdate from normal alkali molybdate solution(Journal of the Less-Common Metals(1974, 36(112), 111-116)"の中で、AHMの製造が記載される。この方法に従って、工業用酸化モリブデンが水酸化ナトリウム溶液で溶解され、かつ生じるモリブデン酸ナトリウム溶液は液−液抽出により精製される。該抽出に際して、モリブデンはアミンを含有する有機相から選択的に吸収され、かつ水洗後、約9.0のアンモニア:モリブデンの物質量比(以下でNH3:Moの物質量比と呼ぶ)にて過剰量での15.7モルのアンモニア溶液を用いてストリッピングされる。生じる純粋なMoO3 250g/lを有するモリブデン酸アンモニウム溶液は蒸発され、かつAHM冷却晶析に供給される。この方法の欠点は、またしても、ここで必要とされるモリブデン含量の濃縮の高いエネルギー消費およびAHM晶析に不可欠な0.9〜1.4のNH3:Moの物質量比の調整である。それ以外に、AHM生成物に対して高いアンモニア過剰量が、煩雑な方法によって再回収されなければならない。
【0008】
論文"Production of ammonium paramolybdate from nonstandard molybdanite concentrate by extraction (Nauch. Tr., Irkutsk. Nauch.-Issled. Inst. Redk. Tsvet. Metal (1972), No. 27, 138-145)"の中で、AHMの製造法が記載される。その際、工業用酸化モリブデンが炭酸ナトリウムで溶解される。生じるモリブデン酸ナトリウム溶液はpH1〜2まで酸性化され、かつ該モリブデンはトリオクチルアミンで抽出される。有機相のモリブデン負荷量は約140g/lである。逆抽出は15〜20%のアンモニア溶液の使用下で行われるので、ストリッピング溶液は、Mo 180〜200g/lおよび4.3〜5.8のNH3:Moの物質量比を含有する。引き続く鉱酸を用いた酸性化によって、ポリモリブデン酸アンモニウムが晶析かつ分離除去される。その後、結晶はアンモニア溶液で溶解され、かつAHMへと再結晶される。この方法の欠点は、またしても、ストリッピング溶液からAHMの直接の冷却晶析を実施できないことにある。それというのも、該溶液のNH3:Moの物質量比が、明らかに高すぎるその値を有するからである。必要とされる0.9〜1.4の比を達成するために、付加的な処理工程により、ポリモリブデン酸アンモニウムの中間生成物が製造され、かつ再び溶解される。ここでもAHM生成物に対して高いアンモニア過剰量が、煩雑な方法によって再回収されなければならない。
【0009】
本発明の課題は、公知の方法の欠点を回避する製造法を提供することである。殊に本発明の課題は、高純度AHMを、エネルギー集約的な濃縮なしに、かつAHM生成物に対して高いアンモニア過剰量なしに、より少ない処理工程で製造することである。
【0010】
これまで従来技術においては、AHMを濃縮なしに蒸発および/または酸性化もしくはアンモニア過剰量の排除によって直接にストリッピング溶液から晶析することができる高純度AHMの製造法は記載されていなかった。
【0011】
意想外にも、今になって、AHMを直接に冷却晶析により製造することができる、よりきれいなモリブデン酸アンモニウム溶液の製造を可能にする方法が見つかった。
【0012】
本発明は、モリブデンを含有する有機相、液体イオン交換体もしくは固体イオン交換体と、アンモニア含有溶液との逆抽出または脱着に際して、0.9〜1.4のNH3:Moの物質量比および18質量%〜24質量%のモリブデン濃度を有する逆抽出溶液または脱着溶液を回収することができ、該溶液からAHMを冷却晶析により直接に付加的かつエネルギーコストのかかる中間工程なしに晶析することができるという意想外の認識に拠る。
【0013】
2つ以上の連続接続された逆抽出工程を実施する場合、アンモニア消費量が明らかにより少ない場合でも、公知の方法と比べて、逆抽出収率はほぼ100%である。
【0014】
AHM冷却晶析からの母液の返送と、モリブデンで負荷された有機相を逆抽出するための25質量%のアンモニア溶液の使用とによって、負荷された有機相のモリブデン含量に対して、96.5%の非常に高いAHM収率が達成される。アンモニア含有溶液のアンモニア濃度が高められる場合、該収率はなお一層上昇し得る。
【0015】
本発明は、次の工程:
i)モリブデンを含有する有機相を、液−液−逆抽出装置または固−液−逆抽出装置(脱着装置)に添加し、かつアンモニアを含有する水溶液を、この逆抽出装置または脱着装置に添加する工程、および
ii)生じる逆抽出溶液または脱着溶液の冷却によってヘプタモリブデン酸アンモニウムを直接に冷却晶析する工程
を有するヘプタモリブデン酸アンモニウムの製造法に関する。
【0016】
本発明による方法の着想は、有機相、例えば有機液相または固体イオン交換樹脂からのモリブデンの逆抽出または脱着を、達成可能な完全な逆抽出または脱着に際して、結果生じる逆抽出溶液または脱着溶液が0.9〜1.4、有利には1.0〜1.2のアンモニア対モリブデンの物質量比、およびMo 18〜24質量%、有利にはMo 18.5〜20.5質量%のモリブデン濃度を有するように実施し、かつ、この溶液から高純度AHMを直接に冷却晶析により晶析することにある。
【0017】
規定の範囲外のNH3:Moの物質量比の場合、純相のAHMは晶析しない。水相中でMo 24質量%を上回るモリブデン濃度は、有機液相が使用される場合、相分離に際して問題を引き起こすか、もしくは固体イオン交換体が使用される場合、該イオン交換体の晶析による閉塞をもたらす。水相中でMo 18.0質量を下回るモリブデン濃度は、結晶収率の低下をもたらす。
【0018】
本発明による方法の有利な一実施態様における着想は、逆抽出または脱着のために冷却晶析の母液を用いることにある。
【0019】
本発明による方法は、不連続的に、または有利には連続的に行ってよい。
【0020】
工程i)におけるモリブデンを含有する有機相として、それ自体公知の生成物を用いてよい。
【0021】
有機固相は、市販のアニオン交換樹脂であってよく、例えば、当業者に公知の方法にてモリブデンが負荷されているLewatit MP 62またはLewatit MP 500のような架橋ポリスチレンマトリックス上に結合した第三級アミンまたは第四級アミンであってよい。
【0022】
有利には、工程i)で出発溶液として、ジイソトリデシルアミン15%、イソデカノール10〜15%および脂肪族炭化水素混合物70〜75%(例えばESCAID 120)とから成り、当業者に公知の方法にてモリブデン40〜70g/l、有利にはモリブデン50〜60g/lが負荷されている有機液相が用いられる。第二級アミンの代わりに、他の塩基、例えば第三級アミンも、または第四級アンモニウム塩および他の調節剤も使用してよい;イソデカノールの代わりに、他のアルコールも使用してよい;他の組成比を有する他の炭化水素混合物も用いてよい。
【0023】
工程i)におけるアンモニア含有水溶液として、アンモニア水溶液を用いてよい。有利には、モリブデンおよびアンモニアを含有するAHM冷却晶析の母液との組み合わせにおいてアンモニア水溶液が使用される。
【0024】
モリブデンの逆抽出または脱着は1つ以上の工程において、当業者に公知の混合段および分離段とからの逆抽出装置、例えばミキサーセトラー装置中で実施してよい。好ましくは、逆抽出または脱着は二工程で行われ、その際、生じる逆抽出溶液または脱着溶液は合一される。
【0025】
逆抽出溶液または脱着溶液は、概して、40〜90℃の温度、有利には55〜65℃の温度を有する。
【0026】
逆抽出された有機相は水で洗浄され、かつモリブデン負荷処理に返送される。
【0027】
本発明による方法の工程ii)において、工程i)で得られた逆抽出溶液または脱着溶液は、AHMが晶析するよう冷却される。その際、冷却晶析は、結果生じる母液が、9.0〜13質量%、有利には10.5〜12.0質量%のモリブデン濃度を有するように実施される。該冷却晶析の実施は当業者に公知である。
【0028】
引き続き、AHMは、例えば濾過または遠心分離によって分離除去され、かつ公知の方法にて乾燥される。晶析に際して発生する母液は、本方法の工程i)での使用前に、好ましくは55〜65℃に加熱される。
【0029】
図面および後出の実施例の中で本発明を説明する。これらの実施例および図面への限定は、それによって意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】AHMの本発明による製造法の一実施態様(ワンフロー法(Einstromverfahren)、液−液逆抽出段)を示す図
【図2】AHMの本発明による製造法のさらなる一実施態様(ワンフロー法、液−液逆抽出段)を示す図
【図3】AHMおよびADMの本発明による選択的な製造法のさらなる一実施態様(サブフロー法(Teilstromverfahren))を示す図
【実施例】
【0031】
実施例1:ワンフロー法(2つの逆抽出段)
この実施例の中で記載される方法は、図2で略図にしている。この図面には2つの逆抽出段(6、7)が示されており、そこで液−液抽出を実施する。逆抽出段(6、7)はそれぞれ、図示されていない攪拌容器(該容器中で、溶解したモリブデン酸塩を含有する有機相を、アンモニア水溶液と、AHM晶析からの母液と攪拌下で互いに混合する)と、後接続された図示されていない浄化容器("セトラー")(該容器中で、水相および有機相とは重力作用下で分離し、かつ種々の導管によって排出する)とから成る。
【0032】
AHMの製造のために、工業用酸化モリブデンを慣例の方法にて水酸化ナトリウム溶液で溶解した。生じるモリブデン酸ナトリウム溶液を、約pH2.5にてジトリデシルアミン含有の有機相(以下で"OP"と呼ぶ)で抽出した。溶解および抽出は、図2に示されていない。これらの操作の生成物を、導管(A)を通して第一の逆抽出段(6)の攪拌容器中に導通した。そこで、モリブデンで負荷されたOPを、AHM晶析からの母液と導管(D)を介して組み合わせ、かつ25%のアンモニア水溶液と導管(B1)を介して組み合わせ、かつ第一の逆抽出段(6)において逆抽出した。その際、配量速度は、逆抽出溶液中で、1.15:1のNH3:Mo(モル)の比および19.55質量%のモリブデン濃度が生ずるように選択した。第一の攪拌容器の内容物は連続的に第一のセトラー中に移送し、かつ逆抽出溶液は導管(E1)を介して冷却晶析(2)に送り込んだ。
【0033】
第一のセトラーからの有機相は導管(C1)を介して、図示されていない第二の攪拌容器中に移送した(該容器は、図示されていない第二のセトラーと一緒に第二の逆抽出段(7)を形成していた)。第二の攪拌容器中に、導管(B2)を介して25%のアンモニア水溶液を供給し、ならびに導管(D)を介してAHM晶析(2)からの母液を供給した。その際、配量速度は、逆抽出溶液中で、2.13:1のNH3:Mo(モル)の比および18.5質量%のモリブデン濃度が生ずるように選択した。第二の攪拌容器の内容物は連続的に第二のセトラー中に移送し、かつ逆抽出溶液は導管(E2)を介して同様に冷却晶析(2)に送り込んだ。
【0034】
第二のセトラーからの有機相は導管(C2)を介して洗浄器(8)に供給し、かつ、そこで向流において導管(Q)を介して供給された水で洗浄し、残留したアンモニアをそこから完全に取り除いた。モリブデン不含の有機溶剤混合物を、導管(R)を介して排出し、かつモリブデン抽出の処理に返送した。導管(S)から排出された洗浄水からアンモニアを取り除き、かつ該洗浄水をモリブデン溶解の処理に返送した。
【0035】
冷却晶析の前に、導管(E1)および導管(E2)とからの水相を合一し、かつ導管(E)を介して冷却晶析(2)に供給した。冷却晶析(2)は、詳しくは図示されていない温度調整可能な攪拌容器と、晶析したAHM生成物を母液から分離するための図示されていないヌッチェとから成っていた。AHM生成物を、該処理から放出した。冷却晶析の母液は導管(F)を介して排出した。AHM母液の一部を、導管(H)を介して該処理から放出し、かつAHM母液のさらなる一部を、導管(D)を介して逆抽出段(6、7)に返送した。AHM生成物収率は、OPのMo含量に対して96.5%であった。段階1における逆抽出収率は、100%の全体の逆抽出収率にて94.5%であった。
【0036】
実施例2:ワンフロー法(1つの抽出段)
この実施例の中で記載される方法は、図1で略図にしている。この図面の中では、1つだけの逆抽出段(1)を用い、そこで液−液抽出を実施した。逆抽出段(1)は、実施例1と同じように攪拌容器/セトラーの組み合わせから成っていた。
【0037】
工業用酸化モリブデンを、実施例1の中で記載されるように、慣例の方法にて水酸化ナトリウム溶液で溶解した。生じるモリブデン酸ナトリウム溶液を、約pH2.5にてジトリデシルアミン含有の有機相で抽出した。モリブデンで負荷されたOPを、導管(A)を介して逆抽出段(1)に導入し、かつ、この逆抽出段(1)の図示されていない攪拌容器中において、逆抽出溶液中で19.0%のモリブデン濃度および1.20のNH3:Moの物質量比が生ずるように、導管(D)を介して供給されたAHM晶析(2)からの母液および導管(B)を介して供給されたアンモニア水溶液で逆抽出した。逆抽出溶液を、引き続きAHM冷却晶析(2)に供給し、かつMo 約3.0g/lで残留負荷された逆抽出段(1)からのOPを、導管(E)を介して洗浄器(4)に供給し、かつ導管(Q)を介して供給された水で向流において精製した。洗浄後、該OPは導管(R)を介して抽出に返送し、かつ該水は導管(O)を介して洗浄器から排出した。
【0038】
冷却晶析(2)は、実施例1の冷却晶析のその構造に相当していた。AHM生成物(G)は、該処理から放出した。冷却晶析の母液は導管(F)を介して排出し、AHM母液の一部は導管(H)を介して該処理から放出し、かつAHM母液のさらなる一部は導管(D)を介して逆抽出段(1)に返送した。AHM生成物収率は、OPのMo含量に対して96.5%であった。
【0039】
実施例3:サブフロー法
この実施例の中で記載される方法は、図3で略図にしている。この図面の中では、1つだけの逆抽出段(1)を用い、そこで液−液抽出を実施した。該図の上部分で示されたAHMを製造するための装置とならんで、下部分では攪拌容器(3)が示されており、該容器はADMを製造するための装置の部分を形成する。AHM処理のための逆抽出段(1)は、実施例1と同じように、攪拌容器/セトラーの図示されていない組み合わせから成っていた。
【0040】
工業用酸化モリブデンを、実施例1の中で記載されるように、慣例の方法にて水酸化ナトリウム溶液で溶解した。生じるモリブデン酸ナトリウム溶液を、約pH2.5にてジトリデシルアミン含有の有機相(OP)で抽出した。負荷されたOPの部分流を、導管(A1)を介して逆抽出段(1)の攪拌容器中に導入し、かつ、そこで、導管(E)を介して排出された逆抽出溶液中で19.24%のモリブデン濃度および1.20のNH3:Moの物質量比が生ずるように、導管(D)を介して供給された、Mo 11.66%および1.55のNH3:Moの物質量比を有するAHM冷却晶析(2)からの母液で逆抽出した。この場合、逆抽出収率は約94.5%であった。
【0041】
逆抽出溶液を、引き続き導管(E)を介してAHM冷却晶析(2)に供給し、かつ15〜20℃にて晶析した。AHM生成物(G)を、該処理から放出した。AHM母液は導管(F)を介して排出し、かつAHM母液の一部は導管(D)を介してAHM製造の逆抽出処理に返送した。AHM母液のさらなる一部は導管(H)を介して攪拌容器(3)(該容器は、ADMを製造するための慣例の逆抽出のための装置の部分を形成していた)に供給した。
【0042】
この攪拌容器(3)中で、AHM製造の逆抽出処理からの残留負荷されたOPを、導管(A2)を通して供給された第二のOP部分流と合一した。該装置のこの部分で、モリブデンを、ADMを製造するための慣例の方法にて逆抽出した。このためにAHM母液の一部(全体の母液量の3.3%)を、導管(I、J、L)を介して供給されたアンモニア水溶液と一緒に慣例の逆抽出に送った。生じる逆抽出溶液は導管(K)を介して排出し、かつ図示されていない蒸発晶析によりジモリブデン酸アンモニウム(ADM)に変化させた。攪拌容器(3)からのOPは洗浄器(4、5)に導き、かつ、そこで向流において導管(Q、O)を介して導かれた水からアンモニアを取り除いた。洗浄(4、5)は、導管(P)によって互いにつなげていた。精製されたOPは導管(R)を介して洗浄器(5)から排出し、かつ処理に返送した。
【0043】
AHM生成物収率は、OPのMo含量に対して91.5%であった。
【0044】
図示された作業様式により、OP出発溶液から出発して、AHMのみならずADMも種々の量比で製造され得た。これは導管(A1、A2)に向かうOP部分量の大きさによって調整することができた。
【符号の説明】
【0045】
1 逆抽出段、 2 冷却晶析、 3 攪拌容器、 4 洗浄器、 5 洗浄器、 6 逆抽出段、 7 逆抽出段、 8 洗浄器、 A 導管、 A1 導管、 A2 導管、 B 導管、 B1 導管、 B2 導管、 C 導管、 C1 導管、 C2 導管、 D 導管、 E 導管、 E1 導管、 E2 導管、 F 導管、 G 導管、 H 導管、 I 導管、 J 導管、 K 導管、 L 導管、 M 導管、 N 導管、 O 導管、 P 導管、 Q 導管、 R 導管、 S 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘプタモリブデン酸アンモニウムの製造法であって、次の工程:
i)モリブデンを含有する有機相を、液−液−逆抽出装置または脱着装置に添加し、かつアンモニアを含有する水溶液を、この逆抽出装置または脱着装置に添加する工程、および
ii)生じる逆抽出溶液または脱着溶液の冷却によってヘプタモリブデン酸アンモニウムを直接に冷却晶析する工程
を有する、ヘプタモリブデン酸アンモニウムの製造法。
【請求項2】
アンモニアの量を、逆抽出または脱着後に、結果生じる逆抽出溶液または脱着溶液中で0.9〜1.4、有利には1.0〜1.2のアンモニア対モリブデンの物質量比が生ずるように選択することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程i)での逆抽出または脱着のために、冷却晶析からの母液を供給することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
冷却晶析からの母液を、工程i)での使用前に55〜65℃に加熱することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
逆抽出または脱着のために供給された母液および/またはアンモニア溶液の量を、結果生じる逆抽出溶液または脱着溶液中で18.0〜24.0質量%、有利には18.5〜20.5質量%のモリブデン濃度が生ずるように選択することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
アンモニアを含有する水溶液の添加を、少なくとも二工程で行うことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
モリブデンの逆抽出または脱着を二工程で行い、その際、生じる逆抽出溶液または脱着溶液を冷却晶析の前に合一することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
モリブデンを含有する有機相として、モリブデンを含有する有機液相を用いることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記冷却晶析を、母液のモリブデン濃度が9.0〜13質量%、有利には10.5〜12.0質量%となるように実施することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
モリブデンを含有する有機相の所定の割合を工程i)に供給し、かつモリブデンを含有する有機相の残りの割合を、ジモリブデン酸アンモニウムを製造するための逆抽出段に供給することによって、工程i)〜ii)を有するヘプタモリブデン酸アンモニウムの製造をジモリブデン酸アンモニウムの製造と結び付けることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−517901(P2010−517901A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547656(P2009−547656)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050991
【国際公開番号】WO2008/092835
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】