説明

ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有するHCVNS3タンパク質フラグメント

【課題】ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する組換えHCV NS3タンパク質フラグメント、ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する融合HCV NS3タンパク質フラグメント、ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する短縮され変更されたHCV NS3タンパク質フラグメントを提供すること。
【解決手段】HCV NS3蛋白質に由来するヘリカーゼ活性を有する特定のアミノ酸配列を有する短縮型の精製されたC型肝炎ウイルス(HCV)NS3ヘリカーゼフラグメント、あるいは1つまたはいくつかのアミノ酸挿入、アミノ酸欠失またはアミノ酸置換を有するその改変体であって、この改変体は、ヘリカーゼ活性を保持しかつ可溶性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)の分子生物学およびウイルス学に関する。さらに詳細には、本発明は、(1)抽出およびアッセイ緩衝液中での改善された溶解性を有する、HCV NS3タンパク質のカルボキシ末端ヘリカーゼフラグメント、(2)改善された溶解性を有する新規のNS3タンパク質ヘリカーゼフラグメントの発現方法、(3)改善された溶解性を有する組換えNS3タンパク質ヘリカーゼフラグメント;(4)NS3タンパク質ヘリカーゼ変異体フラグメント;および(5)HCV NS3タンパク質ヘリカーゼフラグメントを、可能性のある治療剤としてのヘリカーゼインヒビターをスクリーニングするために用いる方法。
【背景技術】
【0002】
非A非B型肝炎(NANBH)は、ウイルスにより誘導されると考えられている伝染性疾患(または疾患ファミリー)であり、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはエプスタイン・バールウイルス(EBV)により引き起こされるような他の形態のウイルス関連肝疾患とは区別できる。疫学的証拠は、3つのタイプのNANBHがあり得ることを示唆する:水媒介流行タイプ;血液または注射針に関連するタイプ;および散発的に生じる(コミュニティー獲得)タイプ。しかし、原因因子の数は不明である。しかし最近、新規のウイルス種であるC型肝炎ウイルス(HCV)が、血液関連NANBH(BB−NANBH)の主要な(唯一ではない場合)原因として同定されている。例えば、PCT
WO89/046699およびWO92/02642;欧州特許明細書第318,216−B号および欧州特許出願公開第388,232−A号および第398,748−A号(それぞれ本明細書中で参考として援用される)を参照。C型肝炎は、米国および日本を含む多くの国において輸血関連肝炎の主要な形態のようである。肝細胞癌の誘導にHCVが関与している証拠もある。従って、HCV感染を処置するための有効な方法(現在はない)についてのニーズが存在する。
【0003】
HCVはプラス鎖RNAウイルスである。感染の際、そのゲノムRNAは、ウイルスタンパク質および細胞タンパク質により少なくとも10の異なるウイルスタンパク質にプロセシングされる大きなポリタンパク質を産生する。他のプラス鎖RNAウイルスと同様に、そのプラス鎖の複製はマイナス鎖RNAの最初の合成を包含する。このマイナス鎖RNA(これは複製中間産物である)は、子孫ゲノムRNAの産生のためのテンプレートとして働く。このプロセスは、2つまたはそれ以上のウイルスがコードする酵素(RNA依存性RNAポリメラーゼおよびRNAヘリカーゼを含む)により行われると考えられる。RNAポリメラーゼは、子孫RNAの産生のためにテンプレートRNAを複製する。この酵素は、DNAテンプレートからはRNA分子を合成しない。
【0004】
RNAヘリカーゼは、一本鎖RNA分子に存在する二次構造を巻き戻す。ヘリカーゼはまた、二本鎖RNAを一本鎖形態に巻き戻す。ゲノムHCV RNA分子は広範な二次構造を含む。HCV RNAの複製中間産物は、プラス鎖およびマイナス鎖のRNA分子からなる二本鎖RNAとして存在すると考えられる。RNAヘリカーゼの活性は、巻き戻された一本鎖RNA分子をテンプレートとして必要とするRNA依存性RNAポリメラーゼに重要であると考えられる。従って、ヘリカーゼの生物学的活性は、HCV複製に必要であると考えられる。
【0005】
フラビウイルス科の3つの属(フラビウイルス、ペスチウイルス、およびHCV)のN
S3タンパク質は、セリンタイププロテイナーゼの保存配列モチーフ、およびヌクレオシドトリホスファターゼ(NTPase)/RNAヘリカーゼの保存配列モチーフを有することが示されている。HCV NS3タンパク質のN’末端の1/3は、NS3−NS4A、NS4A−NS4B、NS4B−NS5AおよびNS5A−NS5B接合部を切断するトリプシン様セリンプロテイナーゼであることが示されている(Failaら、J.Virol.、68:3753−3760(1994))。NS3 C’末端フラグメントの2/3は、NTPase/RNAヘリカーゼ活性をコードすることが示されている(Chooら、PNAS、88:2451−2455(1991)、およびGorbalenyaら、Nucleic Acids Res.、17:4713−4729(1989))。Suzichらは、E.coliにおいて発現したHCV NS3のカルボキシ末端フラグメントの2/3が、ポリヌクレオチド刺激性NTPase活性を有することを示した(J.Virol、67:6152−6158(1993))。Gwackらは、「NTPase Activity of Hepatitis C Virus NS3
Protein Expressed in Insect Cells」Mol.Cells.、5(2):171−175(1995)において、2つのHCV NS3タンパク質p70およびp43がバキュロウイルス発現系で発現されることを示した。p70は、NS3モノクローナル抗体により阻害される特異的なNTPase活性を示した。Warrenerら(「Pestivirus NS3(p80)Protein Possesses RNA Helicase Activity」J.Virol.69:1720−1726(1995))は、バキュロウイルス発現系において発現されたウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)NS3タンパク質が、RNAヘリカーゼ活性を有することを示した。JP 06 319583Aは、バキュロウイルスの非必須領域へのHCVヘリカーゼ遺伝子の導入による、HCVによりコードされるヘリカーゼタンパク質の調製を記載している。ヘリカーゼアミノ酸配列は、HCVポリタンパク質の1200〜1500として報告されている。上記の全ての書類はその全体が本明細書中で参考として援用される。
【特許文献1】国際公開第WO89/046699号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO92/02642号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第318,216号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第388,232号明細書
【特許文献5】特開平6−319583号公報
【非特許文献1】Failaら、「Both NS3 and NS4A are required for proteolytic processing of hepatitis C virus nonstructural proteins.」、Journal of virology、米国、American Society For Microbiology、1994年6月、68(6)、3753-60頁
【非特許文献2】Chooら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、米国、National Academy of Sciences、1991年、88、2451−2455頁
【非特許文献3】Gorbalenyaら、「Two related superfamilies of putative helicases involved in replication, recombination, repair and expression of DNA and RNA genomes.」、Nucleic acids research.、英国、Oxford University Press、1989年6月26日、17(12)、4713-30頁
【非特許文献4】Suzichら、「Hepatitis C virus NS3 protein polynucleotide-stimulated nucleoside triphosphatase and comparison with the related pestivirus and flavivirus enzymes.」、Journal of virology.、米国、American Society For Microbiology、1993年10月、67(10)、6152-8頁
【非特許文献5】Gwackら、「NTPase Activity of Hepatitis C Virus NS3 Protein Expressed in Insect Cells」、Molecular cell.、米国、Cell Press、1995年、5(2)、171−175頁
【非特許文献6】Warrenerら、「Pestivirus NS3(p80)Protein Possesses RNA Helicase Activity」、Journal of virology、米国、American Society For Microbiology、1995年、69、1720−1726頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する組換えHCV NS3タンパク質フラグメント、ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する融合HCV NS3タンパク質フラグメント、ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する短縮され変更されたHCV NS3タンパク質フラグメント、ならびにこれらのためのクローニングおよび発現ベクター、ならびにこれらのタンパク質フラグメントを、化合物がRNAヘリカーゼ活性を阻害し、従ってHCV複製を阻害し得るかどうかを評価するためのスクリーニングアッセイで使用するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの局面において、本発明は、配列番号2に示される配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するHCV NS3ヘリカーゼフラグメントを含む組成物を提供する。
【0008】
好ましい実施態様において、上記フラグメントは、化学合成または組換えDNA発現により産生され得る。
【0009】
さらに好ましい実施態様において、上記フラグメントは、アミノ酸1561〜1657にそのカルボキシ末端を有し得る。
【0010】
さらに好ましい実施態様において、上記フラグメントは、アミノ酸1193〜アミノ酸1223にそのアミノ末端を有し得る。
【0011】
別の局面において、本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を実質的に有するHCV NS3ヘリカーゼフラグメントに融合した適切な融合パートナーを含む融合タンパク質を提供する。
【0012】
好ましい実施態様において、上記融合パートナーは、ヒトスーパーオキシドジスムターゼを含み得る。
【0013】
さらに好ましい実施態様において、上記フラグメントは、化学合成または組換えDNA発現により産生され得る。
【0014】
さらに好ましい実施態様において、上記ヘリカーゼフラグメントは、アミノ酸1561〜アミノ酸1657にそのカルボキシ末端を有し得る。
【0015】
さらに好ましい実施態様において、上記ヘリカーゼフラグメントは、アミノ酸1193〜アミノ酸1223にそのアミノ末端を有し得る。
【0016】
好ましい実施態様において、上記融合パートナーは、ユビキチンであり得る。
【0017】
別の局面において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を実質的に有するHCV NS3ヘリカーゼフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0018】
別の局面において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を実質的に有するHCV NS3ヘリカーゼフラグメントおよび融合パートナーを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。
【0019】
好ましい実施態様において、上記融合パートナーは、hSOD、酵母α因子、IL−2S、ユビキチン、βガラクトシダーゼ、βラクタマーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびウレアーゼからなる群より選択され得る。
【0020】
さらに好ましい実施態様において、上記ヘリカーゼフラグメントは、アミノ酸1561〜アミノ酸1657にそのカルボキシ末端を有し得る。
【0021】
さらに好ましい実施態様において、上記ヘリカーゼフラグメントは、アミノ酸1193〜アミノ酸1223にそのアミノ末端を有し得る。
【0022】
別の局面において、本発明は、化合物をC型肝炎ウイルスに対する活性についてアッセイするための方法であって:
配列番号2に示される配列と実質的に同じ配列を有するHCV NS3ヘリカーゼフラグメントを提供する工程;
このフラグメントを、RNAヘリカーゼ活性を阻害し得る化合物と接触させる工程;および
このC型肝炎ウイルスヘリカーゼの活性の阻害を測定する工程、
を包含する方法を提供する。
【0023】
好ましい実施態様において、上記フラグメントは、アミノ酸1561〜アミノ酸1657にそのカルボキシ末端を有し得る。
【0024】
さらに好ましい実施態様において、上記フラグメントは、アミノ酸1193〜アミノ酸1223にそのアミノ末端を有し得る。
【0025】
別の局面において、本発明は、宿主細胞中でHCV NS3活性ヘリカーゼフラグメントを産生するための発現ベクターであって:
配列番号2に示す配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するHCV NS3ヘリカーゼフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
このフラグメントをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連絡された、この宿主細胞中で機能する転写および翻訳調節配列;および
選択マーカー
を含むベクターを提供する。
【0026】
好ましい実施態様において、本発明は、発現の際に融合タンパク質を形成するために、上記フラグメントをコードするポリヌクレオチドに連結された、融合パートナーをコードする配列をさらに含み得る。
【0027】
好ましい実施態様において、上記融合パートナーは、hSOD、酵母α因子、IL−2S、ユビキチン、βガラクトシダーゼ、βラクタマーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびウレアーゼからなる群より選択され得る。
【0028】
さらに好ましい実施態様において、上記フラグメントは、アミノ酸1561〜アミノ酸1657にそのカルボキシ末端を有し得る。
【0029】
さらに好ましい実施態様において、上記フラグメントは、アミノ酸1193〜アミノ酸1223にそのアミノ末端を有し得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する組換えHCV NS3タンパク質フラグメント、ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する融合HCV NS3タンパク質フラグメント、ヘリカーゼ活性および改善された溶解性を有する短縮され変更されたHCV NS3タンパク質フラグメント、ならびにこれらのためのクローニングおよび発現ベクター、ならびにこれらのタンパク質フラグメントを、化合物がRNAヘリカーゼ活性を阻害し、従ってHCV複製を阻害し得るかどうかを評価するためのスクリーニングアッセイで使用するための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
発明の実施態様
A.定義
用語「C型肝炎ウイルス」および「HCV」は、BB−NANBHの主要な病因因子であるウイルス種をいう。そのプロトタイプの単離体は、PCT WO89/046699;欧州特許出願公開第318,216号、第388,232号、および第398,748号、ならびにPCT WO92/02642に同定されている。本明細書中で使用される「HCV」は、C型肝炎を引き起こし得る病原性株および弱毒化株またはそれ由来の欠損干渉粒子を含む。HCVゲノムはRNAから構成される。RNAを有するウイルスは比較的高率で自発的に変異し、その率は、取り込んだヌクレオチドあたり10−3から10−4のオーダーと報告されている(FieldsおよびKnipe、「Fundamental Virology」(1986、Raven Press、N.Y.))。遺伝子型の異種性および流動性は、RNAウイルスの固有の特徴であるので、HCV種には複数の株/単離体(毒性または無毒性であり得る)が存在する。
【0032】
HCVのいくつかの異なる株/単離体、特に株または単離体CDC/HCVI(HCV1ともいう)についての情報が、本明細書中に開示されている。1つの株または単離体からの情報(例えば、部分的なゲノム配列)は、当業者が標準的な技法を用いて、新規の株
/単離体を単離すること、およびこのような新規の株/単離体がHCVであるかどうかを同定することを可能にするに十分である。代表的には、異なる株(多くのヒト血清(および異なる地理的領域)から得られ得る)が、HCV1のゲノム配列からの情報を用いて単離される。
【0033】
HCVは、現在、他の2つの属がペスチウイルスおよびフラビウイルスであるフラビウイルス科の新規の属として分類されている。フラビウイルス科は、小さなエンベロープを有するヒト病原体である多くのウイルスを含む。フラビウイルス粒子の形態および組成は公知であり、M.A.Brinton、「The Viruses:The Togaviridae And Flaviviridae」(シリーズ編者、Fraenkel−ConratおよびWagner、巻編者、SchlesingerおよびSchlesinger、Plenum Press、1986)、327〜374頁に記載されている。一般に、形態に関しては、フラビウイルスは、脂質二重層により囲まれている中央のヌクレオキャプシドを含む。ビリオンは球状であり、約40〜50nmの直径を有する。そのコアは直径約25〜30nmである。ビリオンエンベロープの外表面にそって、直径約2nmの末端瘤を有する長さ約5〜10nmの突起がある。この科の代表的な例には、黄熱ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルスが挙げられる。これらは、HCVのRNAゲノムよりわずかに大きく、約3500アミノ酸のポリタンパク質前駆体をコードするプラス鎖RNAゲノム(約11,000ヌクレオチド)を有する。個々のウイルスタンパク質は、この前駆体ポリペプチドから切断される。
【0034】
HCVのゲノムは、約10,000ヌクレオチドを含む一本鎖RNAのようである。ゲノムはプラス鎖であり、約3,000アミノ酸のポリタンパク質をコードする連続した翻訳オープンリーディングフレーム(ORF)を有する。ORFにおいて、構造タンパク質はN末端領域の最初の約1/4中にコードされ、ポリタンパク質の大部分は非構造タンパク質に属しているようである。全ての公知のウイルス配列と比較した場合、フラビウイルス科の非構造タンパク質およびペスチウイルス(これもまた、現在、フラビウイルス科の一部であると考えられている)との小さいが重要な共直線性(co−linear)相同性が観察される。
【0035】
HCVポリタンパク質は、翻訳の間または翻訳後、宿主およびウイルスのプロテアーゼによりプロセシングされる。HCVの遺伝子地図は次のとおりである:アミノ末端からカルボキシ末端へ、ヌクレオキャプシドタンパク質(C)、エンペロープタンパク質(E1)および(E2)、ならびに非構造タンパク質2、3、4(a+b)および5(a+b)(NS2、NS3、NS4、およびNS5)。HCV1のヌクレオチド配列にコードされた推定アミノ酸に基づくと、HCVポリタンパク質の先端のN末端の小さなドメインは、フラビウイルスポリタンパク質のN末端で見出されたヌクレオキャプシドタンパク質(C)と、サイズと塩基性残基の高い含有率との両方が類似しているようである。HCVおよび黄熱ウイルス(YFV)の非構造タンパク質2、3、4および5(NS2〜5)は、アミノ酸配列は異なるが類似のサイズおよびハイドロパシー性(hydropathicity)の対応部分を有するようである。M、E、およびNS1タンパク質を含むYFVポリタンパク質の領域に対応するHCVの領域は、配列が異なるだけでなく、サイズおよびハイドロパシー性が全く異なるようである。従って、HCVゲノムの特定のドメインは、本明細書中で、例えば、E1、E2、またはNS2として言及され得るが、これらの名称は、単に言及の利便性のためであることが理解されるべきである;HCVファミリーとフラビウイルスとの間にはまだ理解されていない重要な相違があり得、これらの相違が表面化するにつれ、ドメインの名称は変化し得る。
【0036】
HCVの株または単離体の進化関係のため、推定HCV株および単離体は、ポリペプチドレベルでのそれらの相同性により同定され得る。本明細書中で開示される単離体に関し
て、新規のHCV株または単離体は、ポリペプチドレベルで、少なくとも約40%相同であることが予想され、いくつかは約70%以上相同であると、およびいくつかはさらに約80%以上相同であると予想される:いくつかは約90%以上相同であり得る。アミノ酸配列の相同性を決定するための技法は当該分野で公知である。例えば、アミノ酸配列が直接決定され、そして本明細書中に記載された配列と比較され得る。あるいは、推定HCVのゲノム物質のヌクレオチド配列が、(通常は、cDNA中間産物を介して)決定され得、そしてそれにコードされるアミノ酸配列が決定され得、そして対応する領域が比較され得る。
【0037】
用語「ヘリカーゼ活性を示すNS3タンパク質フラグメント」または「NS3タンパク質ヘリカーゼフラグメント」は、ヘリカーゼ活性を示すHCV NS3タンパク質に由来する酵素、特にHCVゲノムのNS3ドメインのカルボキシ末端側2/3にコードされるポリペプチドの部分をいう。一般には、プロテアーゼ活性を示すHCV NS3タンパク質の部分、すなわちアミノ末端側1/3に見いだされる部分は除かれる。HCVの少なくとも1つの株が、NS3タンパク質フラグメント中のアミノ酸残基の次の配列、すなわち、図1に示されるNS3タンパク質のおよそアミノ酸1193〜1657により、またはこの配列中に実質的にコードされると考えられるヘリカーゼ活性を示すNS3タンパク質フラグメントを含有する。このようなヘリカーゼフラグメントの配列を以下に記載する:
【0038】

【化1】



【0039】
ヘリカーゼフラグメントの上記NおよびC末端は推定であり、実際の末端は、NS3ドメイン全体をコードするDNA構築物の適切な宿主中での発現およびプロセシングにより規定される。HCVのようなRNAウイルスは、多くの変化を示すことが知られるので、この配列は株ごとに変化し得ることが理解される。さらに、ヘリカーゼ活性を示すNS3タンパク質フラグメントは、前駆体ポリタンパク質から切断されるので、実際のNおよびC末端は変化し得る:ヘリカーゼアミノ酸配列の変化は、ヘリカーゼ活性に関して異なる末端を生じ得る。従って、アミノ末端およびカルボキシ末端はHCVの株ごとに異なり得る。活性に必要な最小配列が確かに存在し、本明細書中で決定された。NS3フラグメントの配列は、任意の所望の数の塩基対を除くために、コード配列の5’または3’末端(またはその両方)での制限エンドヌクレアーゼを用いた切断後、エキソヌクレアーゼを用いて適切な発現ベクターを処理することによって、一端または両端で短縮され得る。次いで、得られたコードポリヌクレオチドが発現され、そして配列が決定される。この様式で、得られた産物の活性がアミノ酸配列と相関づけられ得る:限られた一連のこのような実験(累進的に多くの数の塩基対を除去する)は、ヘリカーゼ活性に必要な最小の内部配列を決定する。HCV NS3フラグメントの配列は、ヘリカーゼ活性を十分に保持しつつ、特にカルボキシ末端で、およそ50アミノ酸まで、実質的に短縮され得る。引き続くカルボキシ短縮は、ついにはヘリカーゼ活性の損失を生じてしまう。135アミノ酸あたりでのさらなるカルボキシ短縮は、NTPase活性の損失を生じる。NS3フラグメントのアミノ末端(すなわち、HCV−1アミノ酸配列の1190あたりから始まるフラグメント)はまた、ヘリカーゼ活性を損失することなく、ある程度短縮され得る。しかし驚くことに、20アミノ酸程度までの推定ヘリカーゼドメインのアミノ末端短縮は、精製およびアッセイ緩衝液中のフラグメントの溶解性の増加を生じる。一般に、NS3タンパク質は緩衝液に不溶である。ヘリカーゼN末端のおよそ20アミノ酸を欠失させた場合、フラグメントは緩衝液に可溶になる。しかし、およそ35アミノ酸を欠失させた場合、フラグメントはNTPaseおよびヘリカーゼ活性の両方を失う。NS3タンパク質のアミノ末端部分(すなわち、アミノ酸1027あたりから始まる部分)が、プロテアーゼ活性を示すことは公知である。しかし、プロテアーゼ活性は、本発明のHCVヘリカーゼに必要ではなく、実際、プロテアーゼ活性を示すNS3のアミノ末端フラグメントは、ヘリカーゼまたは本発明のフラグメントから除かれる。
【0040】
「HCV NS3フラグメントヘリカーゼアナログ」は、上記のヘリカーゼ活性を有するNS3カルボキシフラグメントから、天然のヘリカーゼフラグメントのアミノ酸配列に対する欠失、変更および/または付加により変化するポリペプチドをいう。HCV NS3ヘリカーゼフラグメントアナログとして、上記の短縮型ヘリカーゼフラグメント、ならびにHCV NS3フラグメントヘリカーゼ変異体、およびHCV NS3タンパク質ヘリカーゼフラグメント、短縮型NS3タンパク質ヘリカーゼフラグメントまたはNS3フラグメントヘリカーゼ変異体を含む融合ヘリカーゼフラグメントが挙げられる。HCV
NS3フラグメントヘリカーゼ変異体を形成するための変更は、好ましくは保存的アミノ酸置換であり、そこでは、アミノ酸は類似の性質の別の天然に存在するアミノ酸と置き換えられる。例えば、次の置換が「保存的」と考えられる:
【0041】
【化2】


【0042】
非保存的変化は、一般に、上記アミノ酸の1つを異なるグループのアミノ酸と置換すること(例えば、AsnとGluの置換)、あるいは上記アミノ酸のいずれかを、Cys、Met、His、またはProと置換することである。通常のアミノ酸を含む置換は、所望のタンパク質をコードする発現ベクターの部位特異的変異誘発、およびそれに続く変更形態の発現により簡便に実行される。また、合成または半合成法によりアミノ酸を変更し得る。例えば、単離したタンパク質の適切な化学処理により、システインまたはセリン残基をセレノシステインに変換し得る。あるいは、標準的なインビトロタンパク質合成法において、非通常なアミノ酸を組み込み得る。代表的には、変異体中の天然配列に対して変化、欠失、または付加した残基の総数は、約20を超えず、好ましくは約10を超えず、そして最も好ましくは約5を超えない。
【0043】
用語、融合タンパク質は、一般には、2つまたはそれ以上の個々のタンパク質から得られるアミノ酸配列を含むポリペプチドをいう。本発明において、「融合タンパク質」は、非HCVタンパク質またはポリペプチド(「融合パートナー」)に融合された、HCV NS3ヘリカーゼフラグメント、短縮体、変異体、またはそれらの機能的部分を含むポリペプチドを示すために用いられる。融合タンパク質は、融合遺伝子の発現により最も簡便に産生される。この融合遺伝子は、あるポリペプチドの一部分を5’末端に、異なるポリペプチドの一部分を3’末端にコードする。ここで、それらの異なる部分は、適切な宿主中で発現され得る1つのリーディングフレーム内で結合されている。融合タンパク質のカルボキシ末端にHCV NS3ヘリカーゼフラグメントまたはアナログを位置させること、およびアミノ末端に機能性酵素フラグメントを用いることが本発明では好ましい(しかし必要はない)。HCV NS3ヘリカーゼフラグメントは、通常、大きなポリタンパク質内に発現される。ヘリカーゼフラグメントは、細胞輸送シグナル(例えば、輸出または分泌シグナル)を含むことは期待出来ない。適切な機能性酵素フラグメントは、HCV NS3ヘリカーゼフラグメントと融合して発現した場合、定量可能な活性を示すポリペプチドである。例としての酵素には、βガラクトシダーゼ(β−gal)、βラクタマーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、グルコースオキシダーゼ(GO)、ヒトスーパーオキシドジスムターゼ(hSOD)、ウレアーゼなどが含まれるが、これらに限定されない。これらの酵素は、産生された融合タンパク質の量が、単純な呈色アッセイにより定量され得るので都合がよい。あるいは、金属結合カラムによる単純な検出および融合パートナーに特異的な抗体を用いる融合タンパク質の定量を可能にするため、フラグメントまたは抗原性タンパク質を用い得る。本発明に好ましい融合パートナーは、カルボキシ末端の6つのヒスチジン残基である。
【0044】
B.全般的な方法
本発明の実施は、一般に、当該分野の技術の範囲内である分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来技法を使用する。このような技法は、文献に十分に説明されている。例えば、J.Sambrookら、「Molecular Cloning:A
Laboratory Manual」(1989);「DNA Cloning」、第I巻および第II巻(D.N Glover編、1985年);「Oligonucl
eotide Synthesis」(M.J.Gait編、1984年);「Nucleic Acid Hybridizatin」(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編、1984年);「Transcription And Traslation」(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編、1984年);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney編、1986年);「Immobilized Cells And Enzymes」(IRL Press、1986年);B.Perbal、「A Practical Guide To
Molecular Cloning」(1984年);シリーズ「Methods In Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells」(J.H.MillerおよびM.P.Calos編、1987年、Cold Spring Harbor Laboratory);Meth Enzymol(1987)154および155(それぞれ、WuおよびGrossman編ならびにWu編);MayerおよびWalker編(1987年)、「Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology」(Academic Press,London);Scopes、「Protein Purification: Principles And Practice」、第二版(Springer−Verlag、N.Y.、1987年);および「Handbook Of
Experimental Immunology)」、第I巻〜第IV巻(WeirおよびBlackwell編、1986年)を参照。
【0045】
示された宿主に適合する適切な制御配列を使用する場合、原核および真核宿主細胞の両方とも、所望のコード配列を発現するために有用である。原核宿主中では、E.coliが最も頻繁に使用される。原核生物用の発現制御配列は、プロモーター(必要に応じて、オペレーター部分を含む)、およびリボソーム結合部位を含む。原核宿主に適合するトランスファーベクターは、一般に、例えば、pBR322(アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性を与えるオペロンを含有するプラスミド)、および種々のpUCベクター(これもまた、抗生物質耐性マーカーを与える配列を含有する)由来である。これらのプラスミドは市販されている。マーカーは、選択によって、成功した形質転換体を得るために使用され得る。一般的に使用される原核生物の制御配列には、T7バクテリオファージプロモーター(DunnおよびStudier、J.Mol.Biol.(1983)166:477)、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系(Changら、Nature(1977)198:1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nuc Acids Res(1980)8:4057)、ならびにλ由来PプロモーターおよびN遺伝子リボソーム結合部位(Shimatakeら、Nature(1981)292:128)、ならびに、trpおよびlac UV5プロモーター配列由来のハイブリッドtacプロモーター(De Boerら、Proc Nat Acad Sci USA(1983)292:128)が含まれる。前述の系はE.coliと特に適合し、所望であれば、BacillusまたはPseudomonas株のような他の原核宿主が、対応する制御配列とともに使用され得る。
【0046】
真核宿主には、培養系では酵母および哺乳動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。酵母発現宿主には、Saccharomyces、Klebsiella、Pichiaなどが含まれる。Saccharomyces cerevisiaeおよびSaccharomyces carlsbergensisならびにK.lactisは、最も一般的に使用される酵母宿主ならびに好都合なカビ宿主である。酵母適合ベクターは、野生型株に重金属に対する耐性を、または栄養要求性変異体に原栄養性を与えることによって、成功した形質転換体の選択を可能にするマーカーを有する。酵母適合ベクターは、2m複製起点(Broachら、Meth Enzymol(1983)101:307
)を、CEN3とARS1との組合せ、または、複製を確実にする他の手段(例えば、適切なフラグメントの宿主細胞ゲノムへの組み込みを生じる配列)を使用し得る。酵母ベクターのための制御配列は、当該分野で公知であり、3−ホスホグリセレートキナーゼ用のプロモーター(R.Hitzemanら、J Biol Chem(1980)255:2073)を含む、解糖酵素の合成用プロモーター(Hessら、J Adv Enzyme Reg(1968)7:149;Hollandら、Biochem(1978),17:4900)を包含する。ターミネーター(例えば、エノラーゼ遺伝子に由来するターミネーター(Holland,J Biol Chem(1981)256:1385))もまた包含され得る。特に有用な制御系は、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーター、またはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)調節可能プロモーター、GAPDH由来のターミネーター、および分泌が所望であれば、酵母α−因子由来のリーダー配列を含む制御系である(本明細書に参考として援用される米国特許第4,870,008号を参照)。
【0047】
本発明に好ましい発現系は、融合パートナーとしてユビキチンリーダーを使用する。1989年8月7日出願の係属出願USSN 7/390,599は、酵母ユビキチン融合タンパク質の高発現用ベクターを開示した。酵母ユビキチンは、発現に際して融合タンパク質から自動的に切断される76アミノ酸ポリペプチドを提供する。ユビキチンアミノ酸配列の以下のとおりである:
【0048】
【化3】


【0049】
Ozkaynakら、Nature(1984)312:663−66もまた参照。ユビキチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、Applied Biosystem 380A DNA合成機を使用して、Barrら、J Biol Chem(1988)268:1671−78の技法に従い、標準的な方法によって合成され得る。適切なリンカーを使用して、ユビキチン遺伝子は、適切なベクターへ挿入され、HCVヘリカーゼをコードする配列またはそのフラグメントに連結され得る。
【0050】
さらに、作動可能に連結された転写調節領域および転写開始領域は、野生型生物では天然には結合していないものであり得る。これらの系は、1984年10月3日公開のEPO第120,551号;1984年8月22日公開のEPO第116,201号、および1985年12月18日公開のEPO第164,556号に詳細に記載され、これらはすべて本発明と共有され、全体が本明細書に参考として援用される。
【0051】
発現用の宿主として入手可能な哺乳動物細胞株は、当該分野で公知であり、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、および他の多数の細胞株を含む、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を包含する。哺乳動物細胞に適切なプロモーターもまた、当該分野で公知であり、ウイルスプロモーター(例えば、シミアンウイルス40(SV40)(Fiersら、Nature(1978)273:113)、ラウス肉腫ウイ
ルス(RSV)、アデノウイルス(ADV)、およびウシパピローマウイルス(BPV)由来のプロモーター)を包含する。哺乳動物細胞はまた、ターミネーター配列およびポリA付加配列を必要とし得る。発現を増大させるエンハンサー配列もまた包含され得、遺伝子増幅を促進する配列(例えば、メトトレキセート耐性遺伝子)もまた望ましくあり得る。これらの配列は当該分野で公知である。
【0052】
哺乳動物細胞における複製に適したベクターは、当該分野で公知であり、ウイルスレプリコン、またはHCVエピトープをコードする適切な配列の宿主ゲノムへの組み込みを確実にする配列を包含し得る。例えば、外来DNAを発現するために使用される別のベクターは、ワクシニアウイルスである。この場合には、異種DNAはワクシニアゲノムに挿入される。外来DNAをワクシニアウイルスゲノムへ挿入するための技法は、当該分野で公知であり、例えば、相同組換えを利用し得る。異種DNAは、一般に、ウイルスに対して必須ではない遺伝子、例えば、チミジンキナーゼ遺伝子(tk)(これはまた選択マーカーも提供する)に挿入される。組換えウイルスの構築を非常に容易にするプラスミドベクターは、記載されている(例えば、Mackettら、J Virol(1984)49:857;Chakrabartiら、Mol Cell Biol(1985)5:3403;Moss、GENE TRANSFER VECTORS FOR MAMMLIAN CELLS(MillerおよびCalos編、Cold Spring Harbor Laboratory、NY、1987)、10頁を参照)。HCVポリペプチドの発現は、次いで、組換え生ワクシニアウイルスに感染した細胞または動物に生じる。
【0053】
ワクシニアベクターからHCVポリペプチドが発現するかどうかを検出するため、BSC 1細胞を、組換えベクターに感染させ、発現を可能にする条件下で、顕微鏡スライド上で増殖させ得る。次いで、細胞はアセトン固定され、そして組換え発現ベクター中のHCVセグメントが由来したHCVゲノム領域にコードされるポリペプチドに対する抗HCV抗体を含有することが既知である血清を使用して、免疫蛍光アッセイが実施され得る。
【0054】
真核生物またはウイルスゲノムの発現用の他の系は、昆虫細胞、およびこれらの細胞での使用に適したベクターを包含する。これらの系は、当該分野で公知であり、例えば、バキュロウイルスAutographa californica核ポリヘドロシスウイルス(AcNPV)由来の昆虫発現移入ベクター(これはヘルパー非依存性ウイルス発現ベクターである)を包含する。この系由来の発現ベクターは、通常、異種遺伝子の発現を駆動するために強力なウイルスポリヘドリン遺伝子プロモーターを使用する。AcNPVへの外来遺伝子の導入用に、現在最も一般的に使用される移入ベクターは、pAc373である(PCT WO89/046699およびUSSN 7/456,637を参照)。当業者に公知の他の多くのベクターもまた、改良発現用に設計された。これらには、例えば、pVL985(これは、ポリヘドリン開始コドンをATGからATTに変え、このATTから32bp下流にBamHIクローニング部位を導入する;LuckowおよびSummers、Virol(1989)17:31を参照)を包含する。非融合外来タンパク質の高レベル発現のためのAcNPV移入ベクターは、係属出願PCT WO89/046699およびUSSN 7/456,637に記載されている。単一のBamHI部位が、ポリヘドリン遺伝子の翻訳開始コドンATGに関して−8位の後に配置される。SmaI、PstI、BglII、XbaI、SstIの切断部位はいずれも存在しない。非融合外来タンパク質の良好な発現は、通常、ATG開始シグナルに先行する適切な翻訳開始シグナルを含有する短いリーダー配列を理想的には有する外来遺伝子を必要とする。プラスミドはまた、ポリヘドリンポリアデニル化シグナル、ならびに選択およびE.coliでの増殖のためのアンピシリン耐性(amp)遺伝子および複製起点を含有する。
【0055】
バキュロウイルスの所望部位へ異種DNAを導入するための方法は、当該分野で公知で
ある。(SummerおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555:Smithら、Mol Cell Biol(1983)3:2156−2165;ならびにLuckowおよびSummers、Virol(1989)17:31を参照)。例えば、異種DNAは、相同組換えによって、ポリヘドリン遺伝子のような遺伝子へ挿入され得るか、または、所望のバキュロウイルス遺伝子中に操作された制限酵素部位に挿入され得る。この挿入される配列は、ポリタンパク質の全部または種々のセグメントをコードする配列、またはウイルスポリペプチドをコードする他のorfであり得る。例えば、インサートは、ポリタンパク質に由来する以下の番号のアミノ酸セグメントをコードし得る:アミノ酸1〜1078;アミノ酸332〜662;アミノ酸406〜662;アミノ酸156〜328、およびアミノ酸199〜328。
【0056】
翻訳後修飾(例えば、シグナルペプチド切断、タンパク質分解切断、およびリン酸化)のためのシグナルは、昆虫細胞によって認識されるようである。分泌および核蓄積に必要なシグナルもまた、無脊椎動物細胞と脊椎動物細胞との間で保存されるようである。無脊椎動物細胞において有効な、脊椎動物細胞由来のシグナル配列の例は、当該分野で公知であり、例えば、細胞からの分泌をシグナルするヒトインターロイキン−2−シグナル(IL2)は、昆虫細胞内で認識され、適切に除去される。
【0057】
形質転換は、例えば、ポリヌクレオチドのウイルス内へのパッケージングおよびウイルスによる宿主細胞の形質導入を含む、ポリヌクレオチドを宿主細胞へ導入するための公知方法、ならびにポリヌクレオチドの直接取り込みにより得る。使用される形質転換手順は、形質転換される宿主に依存する。直接取り込みによる細菌の形質転換は、一般に、塩化カルシウムまたは塩化ルビジウムでの処理を用いる(Cohen、Proc Nat Acad Sci USA(1972)69:2110;T.Maniatisら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY、1982))。直接取り込みによる酵母の形質転換は、Hinnenら、ProcNat Acad Sci USA(1978)75:1929の方法を用いて実施され得る。直接取り込みによる哺乳動物の形質転換は、GrahamおよびVan der
Eb、Viol(1978)52:546のリン酸カルシウム沈澱法、またはその種々の公知の変法を使用して実施され得る。細胞(特に哺乳動物細胞)に、組換えポリヌクレオチドを導入する他の方法には、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへのカプセル化、およびポリヌクレオチドの核への直接マイクロインジェクションが含まれる。
【0058】
ベクター構築は、当該分野で公知の技法を使用する。部位特異DNA切断は、適切な制限酵素を用いて、これらの市販の酵素の製造者によって一般的に特定された条件下で、処置することによって実施され得る。一般に、約1mgのプラスミドまたはDNA配列は、約20mLの緩衝溶液中1単位の酵素によって、37℃にて1〜2時間のインキュベーションにより切断される。制限酵素とのインキュベーション後、タンパク質は、フェノール/クロロホルム抽出により除去され、DNAはエタノールでの沈澱によって回収される。切断されたフラグメントは、Meth Enzymol(1980)65:499−560に記載されている一般的な手順に従って、ポリアクリルアミドまたはアガロースゲルの電気泳動法を用いて分離され得る。
【0059】
粘着末端化切断フラグメントは、混合物中に存在する適切なデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)とともに、E.coli DNAポリメラーゼI(Klenowフラグメント)を使用して、平滑末端化され得る。S1ヌクレアーゼによる処理もまた
使用され得、任意の一本鎖DNA部分の加水分解を生じる。
【0060】
連結は、標準的な緩衝液および温度条件下で、T4 DNAリガーゼおよびATPを使用して実施される;粘着末端連結は、平滑末端連結より少ないATPおよび少ないリガーゼを必要とする。ベクターフラグメントが連結混合物の一部分として使用されるときは、そのベクターフラグメントは、しばしば、細菌アルカリホスファターゼ(BAP)またはウシ腸アルカリホスファターゼで処理されて、5’−ホスフェートが除去され、従って、ベクターの再連結が防がれる。あるいは、不必要なフラグメントの制限酵素消化が、連結を防ぐために使用され得る。
【0061】
連結混合物は、E.coliのような適切なクローニング宿主へ形質転換され、成功した形質転換体は、組み込まれたマーカー(例えば、抗生物質耐性)によって選択され、正確な構築物についてスクリーニングされる。
【0062】
合成オリゴヌクレオチドは、Warner、DNA(1984)3:401によって記載されているような自動オリゴヌクレオチド合成機を使用して調製され得る。所望であれば、合成鎖は、標準的な反応条件下にて、32P−ATPの存在下で、ポリヌクレオチドキナーゼでの処理によって、32Pで標識され得る。
【0063】
cDNAライブラリーから単離されたものを含むDNA配列は、公知の技法、例えば、部位特異的変異誘発(例えば、Zoller、Nuc Acids Res(1982)10:6487を参照)によって修飾され得る。簡潔に述べると、修飾されるDNAは、一本鎖配列としてファージへパッケージされ、修飾されるDNAの一部分に相補的な合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、DNAポリメラーゼによって二本鎖DNAに変換される。ここで、所望の修飾はプライマー配列に含まれる。得られた二本鎖DNAは、ファージ支持宿主細菌へ形質転換される。ファージの各鎖のコピーを含有する形質転換細菌の培養物は、寒天中にプレートされてプラークを得る。理論的には、新しいプラークの50%が、変異配列を有するファージを含有し、残りの50%は元の配列を有する。プラークの複製物は、適切な鎖とのハイブリダイゼーションを可能にするが、非修飾配列とのハイブリダイゼーションは可能でない温度および条件下で、標識された合成プローブにハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションによって同定された配列は、回収されてクローン化される。
【0064】
DNAライブラリーは、GrunsteinおよびHogness、Proc Nat
Acad Sci USA(1975)73:3961の手順を使用して、プローブされ得る。簡潔に述べれば、この手順において、プローブされるDNAは、ニトロセルロースフィルター上に固定され、変性され、そして0〜50%ホルムアミド、0.75M NaCl、75mM クエン酸Na、各々0.02%(wt/v)のウシ血清アルブミン、ポリビニルピロリドン、およびFicoll(登録商標)、50mMNaHPO(pH6.5)、0.1% SDS、ならびに100mg/mLキャリア変性DNAを含有する緩衝液でプレハイブリダイズされる。緩衝液中のホルムアミドの割合、ならびにプレハイブリダイゼーションおよび続くハイブリダイゼーション工程の時間および温度条件は、必要なストリンジェンシーに依存する。より低いストリンジェンシー条件が必要なオリゴマープローブは、一般に、低い割合のホルムアミド、より低い温度、およびより長いハイブリダイゼーション時間で用いられる。30または40ヌクレオチド以上を含むプローブ(例えば、cDNAまたはゲノム配列由来のプローブ)は、一般に、より高い温度(例えば約40〜42℃)、および高い割合のホルムアミド(例えば50%)を用いる。プレハイブリダイゼーション後、5’−32P標識オリゴヌクレオチドプローブは緩衝液に添加され、フィルターは、ハイブリダイゼーション条件下で、この混合物中でインキュベートされる。洗浄後、処理されたフィルターをオートラジオグラフィーに供し、ハイブリダイ
ズしたプローブの位置を示す;元の寒天プレート上の対応する位置のDNAが、所望のDNAの供給源として使用される。
【0065】
ルーチンのベクター構築のために、連結混合物が、E.coli株HB101または他の適切な宿主へ形質転換され、成功した形質転換体が抗生物質耐性または他のマーカーによって選択される。次に、形質転換体からのプラスミドが、通常、クロラムフェニコール増幅(Clewell、J Bacteriol(1972)110:667)の後、Clewellら、Proc Nat Acad Sci USA(1969)62:1159の方法に従って調製される。DNAが単離され、そして、通常、制限酵素分析および/または配列決定によって分析される。配列決定は、Messingら、Nuc Acids Res(1981)9:309によりさらに記載されるように、Sangerら、Proc Nat Acad Sci USA(1977)74:5463のジデオキシ法によって、またはMaxamら、Meth Enzymol(1980)65:499の方法によって実施され得る。バンド圧縮に伴う問題(これは、時に、GCリッチ領域で観察される)は、Barrら、Biotechniques(1986)4:428に従って、T−デアゾグアノシンの使用により克服された。
【0066】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が、抗原または抗体のいずれかの濃度を測定するために使用され得る。この方法は、酵素と抗原または抗体のいずれかとの結合に依存し、定量標識として結合酵素活性を使用する。抗体を測定するためには、既知の抗原を、固相(例えば、マイクロタイターディッシュ、プラスティックカップ、ディップスティック、プラスティックビーズなど)に固定し、試験血清希釈物とともにインキュベートし、洗浄し、酵素で標識された抗免疫グロブリンとともにインキュベートし、そして再度洗浄する。標識に適した酵素は当該分野で公知であり、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を包含する。固相に結合した酵素活性は、通常、特異基質を添加し、そして生成物形成または基質利用を比色決定することにより測定される。結合した酵素活性は、結合した抗体の量の正の関数である。
【0067】
抗原を測定するためには、既知の特異抗体を固相に結合し、抗原を含む試験物質を添加し、インキュベーション後、その固相を洗浄し、酵素標識二次抗体を添加する。洗浄後、基質を添加し、酵素活性を比色的に測定し、これが抗原濃度と関連する。
【0068】
フラビウイルス科の3つの属(フラビウイルス、ペスチウイルス、およびHCV)のNS3タンパク質は、セリンタイププロテイナーゼの配列モチーフおよびヌクレオシドトリホスファターゼ(NTPase)/RNAヘリカーゼの配列モチーフを保存している(図2を参照)。NS3タンパク質フラグメントのカルボキシ側2/3のNTPase/RNAヘリカーゼは、DEADボックスファミリーに属する。DEADボックスタンパク質ファミリーは、8つの高度に保存されたアミノ酸モチーフを有し、その1つが、ATPaseモチーフとしても知られるDEAD領域である。DEADタンパク質ファミリーは3つのサブファミリーからなる:DEADタンパク質、DEAHタンパク質、およびDEXHタンパク質。図3は、DEXHタンパク質ファミリーの保存配列モチーフ、およびHCV
NS3の対応するモチーフを示す。HCV NS3タンパク質は、DEXHタンパク質サブファミリー中にその分類を生じるDECHの配列モチーフを有する。
【0069】
本明細書に開示されるHCV NS3タンパク質フラグメントは、他の公知のRNAヘリカーゼと類似する特性を有する。すなわち、それらは、二価カチオン(Mn2+またはMg2+)およびATPの存在下でのみ、RNAヘリカーゼ活性を示す。より低レベルのATP(約1mM)では、いずれのカチオン量の増加も、NS3フラグメントの酵素活性を阻害する。ATP濃度が高い(約5mM)ときは、ヘリカーゼ活性は、Mg2+またはMn2+カチオンが高濃度で存在するときでさえ、高レベルのままである。HeLa細胞
から精製されたRNAヘリカーゼAは、そのコファクターとしてMg2+のみを必要とし、Mn2+はMg2+の代用にはならない(本明細書に参考として援用される、Leeら、J.Biol.267:4398−4407(1992)を参照)。ペスチウイルスNS3およびワクシニアウイルスRNAヘリカーゼは、両カチオンを使用することが示されている。同様に、本明細書に開示されるHCV NS3タンパク質ヘリカーゼフラグメントは、両金属イオンを利用し得る。
【0070】
HCV NS3タンパク質ヘリカーゼフラグメントのヘリカーゼ活性は、pH特異的であるようだ。実施例の実験はpH6.5で実施された。しかし、pHを7.6に増大させると、HCV NS3タンパク質ヘリカーゼフラグメントは、10%未満の鎖分離を示し、他の全ての成分は一定に保たれた(データは示さず)。HCV NS3タンパク質ヘリカーゼフラグメントのこれらの特性は、HCV NS3タンパク質ヘリカーゼが、ペスチウイルスNS3 RNAヘリカーゼ(これはpH感受性であることが知られている)と同様の性質を有することを暗示する。
【0071】
RNAヘリカーゼ活性は、2つの方法で、E.coliの夾雑物に由来しないことが実証された。第一は、HCV NS3タンパク質フラグメントインサートを含まないpET21bプラスミドを、ネガティブコントロールとして使用した。ネガティブコントロール細胞培養物からの同じ抽出画分の酵素活性を試験し、検出可能なレベルのNTPaseもRNAヘリカーゼ活性も存在しなかった。第二は、NS3タンパク質フラグメントのヘリカーゼ活性は、NS3特異モノクローナル抗体により阻害されたが、無関係な抗体はこの活性に影響しなかった。これらの結果から、ヘリカーセ活性は、E.coliの夾雑物由来ではなく、HCV NS3タンパク質フラグメント由来であることが決定された。
【0072】
試験されたRNAヘリカーゼの大部分は、一本鎖領域に結合し、次いで、一方向または両方向に移動することにより、二本鎖RNAを巻き戻した。3’および5’末端の両方に一本鎖領域を有する基質を使用した。Suzichら、J.Virol.、67:6152−6158(1993)は、HCV NS3のC’末端の2/3が、全てのNTPおよびdNTPを加水分解し得ることを示した。このNTPase活性は、本明細書に開示されるHCV NS3タンパク質フラグメントで観察された(データは示さず)。本明細書に記載される短縮型NS3タンパク質フラグメントが、N末端プロテイナーゼドメインの欠失にもかかわらず生化学的ヘリカーゼ活性を有することを示す結果は、プロテイナーゼおよびNTPaseドメインが独立して働き得ることを示唆する。
【0073】
本発明のヘリカーゼ活性を示すHCV NS3タンパク質フラグメントは、それらが、精製およびアッセイ緩衝液に可溶である(一方、NS3タンパク質全体は、一般的に可溶ではない)ので、有利である。ヘリカーゼフラグメントの溶解性は、最初に、種々のベクター由来のいくつかのクローンおよび融合タンパク質を構築することによって決定された。例えば、グルタチオン−s−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質を有するpGEX−2Tベクターを使用して、HCV NS3タンパク質(すなわち、HCV−1の1027〜1657a.a.)をクローン化した。GSTとHCV NS3タンパク質との得られた融合タンパク質は不溶性であった。すなわち、単離された融合タンパク質の唯一の部分は、細菌抽出物の不溶性部分からのものであった。その融合タンパク質を、6M尿素を用いて変性することによって可溶化した。変性融合タンパク質が、濃度段階勾配に対する一連の透析により、再び折り畳まれた場合、再生融合タンパク質の小画分のみが正しく再び折り畳まれ、そして酵素活性は再生タンパク質には観察されなかった。HCV NS3タンパク質を、pMALベクターを用いて、マルトース結合タンパク質と融合した場合、この融合タンパク質は可溶であった。しかし、マルトース結合タンパク質それ自体が約40kDaあるので、この融合タンパク質の分子量は、比較的大きかった(M.W.110kDa)。従って、このような融合タンパク質は使用に望ましくない。さらに、マ
ルトース結合タンパク質ドメインを、これとHCV NS3タンパク質とを含有する融合タンパク質から分離するのは困難である。さらに、pET21bベクターを利用して、HCV NS3タンパク質ドメイン(アミノ酸1027〜1657)を発現させた。このタンパク質の発現レベルは非常に低く、ほんの少量のタンパク質のみが単離された。
【0074】
従って、例えば、pETベクター系における本発明のHCV NS3タンパク質フラグメントは、以下の利点を提供する:
1)pMALまたはpGEXベクターのプロモーターと比較した場合、より良好なT7プロモーター系;
2)ヘリカーゼ活性を有する発現NS3タンパク質フラグメントの溶解性の増大;
3)融合タンパク質から非HCV NS3タンパク質フラグメントを除去する必要性の排除;および
4)ニッケルカラムクロマトグラフィーを用いる簡便な精製工程。
さらに、ヘリカーゼ活性を有する可溶性NS3タンパク質フラグメントは、不溶性の完全長タンパク質に対していくつかの利点を有する。第一に、可溶性タンパク質フラグメントは、精製および酵素アッセイにおける使用のために、変性および再折り畳みの必要がない。不溶性タンパク質またはフラグメントは、精製のために、尿素またはグアニジン−HClによって変性される必要があり、次いで、タンパク質フラグメントの再折り畳みおよびその酵素活性の回収の前に、尿素またはグアニジン−HClを除去するため、濃度段階勾配に対して透析されなければならない。第二に、発現系からの可溶性NS3タンパク質フラグメントの収率は、不溶性NS3タンパク質フラグメントの収率より高い。変性−再折り畳みプロセスの間に、不溶性タンパク質フラグメントは、大部分の細胞抽出物中で損失される。第三に、不溶性NS3タンパク質の酵素活性は、再折り畳み後には観察され得ない。
【0075】
HCV NS3タンパク質の可溶性ヘリカーゼフラグメントは、組合せライブラリーから特異ヘリカーゼインヒビターについてスクリーニングするために使用され得る。スクリーニングアッセイは、ヘリカーゼフラグメントの巻き戻し活性を調べることにより、ポリアクリルアミドゲルにおける二本鎖テンプレートRNAの移動度シフトに基いて実施され得る。スクリーニングアッセイはまた、マイクロタイターディッシュ(96ウェルプレート)形式において自動化され得る。後者のアッセイにおいて、二本鎖テンプレートRNAは、一方の鎖の5’末端をビオチンで標識され、そして他方の鎖の5’末端を32Pで用いて標識される。この標識テンプレートは、ストレプトアビジンでコートされているウェルの底に接着され得る。添加されたフラグメントのヘリカーゼ活性は、ウェル上清に存在する置換した32P標識RNA鎖からの放射活性をカウントすることによって測定され得る。組合せライブラリーに存在する潜在的なヘリカーゼインヒビターは、ヘリカーゼフラグメントによる鎖置換反応の特異阻害を検出することによって見出され得る。
【0076】
C型肝炎ウイルス(HCV)NS3タンパク質は、セリンプロテイナーゼ、ヌクレオチドトリホスファターゼ(NTPase)、およびRNAヘリカーゼのアミノ酸モチーフを含む。HCV NS3タンパク質のカルボキシフラグメントが精製され、そしてこれはRNAヘリカーゼ活性を有した。アミノ末端からの欠失により、タンパク質は可溶性になった。カルボキシ末端からの欠失は、少なくとも50アミノ酸の欠失までは、ヘリカーゼ活性の消失を生じない。ヘリカーゼ活性は、ATPならびにMg2+およびMn2+のような二価カチオンを必要とする。ヘリカーゼ活性は、HCV NS3タンパク質に特異的なモノクローナル抗体によりブロックされた。
【実施例】
【0077】
C.実施例
下記の実施例は、当業者へのさらなるガイドとして提供され、いかなる方法においても
本発明の限定として解釈されるべきではない。
実施例1
HCV NS3タンパク質の発現および精製
HCV NS3タンパク質のカルボキシ側2/3を発現させるために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、HCV−1 cDNA由来のアミノ酸1193〜1657を含む1.4Kb DNAフラグメントを増幅した。使用したセンスプライマーは、JCK−1 5’−GGGGATCCGGTGGACTTTATCCCT−3’(配列番号4)であり、そしてアンチセンスプライマーはJCK−7 5’−GGAAGCTTGCTGACGACCTCG−3’(配列番号5)であった。PCR産物をBamHIおよびHindIIIで消化し、そしてpET21b(Novagen,WIから購入した)のBamHIおよびHindIII部位に挿入した。組換えプラスミドをpET21b−NS3HCVと呼び、E.coli BL21(DE3)へ形質転換し、そして挿入された領域を配列決定によって確認した。pET21b−NS3HCVは、HCV NS3のカルボキシ末端の466アミノ酸残基からなり、そしてより容易な精製のために、C末端にHisタグ(6つのヒスチジン)およびpET発現ベクター由来のさらなる19残基を含有した。HCV NS3 Hisタグ融合タンパク質の約54kDa(481アミノ酸残基)を、組換えプラスミドを有するE.coli BL21(DE3)から1mM IPTGによって誘導して、10mg/mlのアンピシリンを含有するLB培地中で細胞を指数的に増殖させた(図5レーン1および2を参照)。200mlの培養物から純度約95%のタンパク質400mgを得た。37℃にて3時間培養後、細胞を回収し破砕した。細胞抽出物の可溶性部分を、金属結合カラムに負荷した。樹脂結合タンパク質を、1Mイミダゾール、0.5M NaCl、20mM Tris−Cl pH7.9を用いて溶出した。溶出画分をSDS−PAGEに供し、タンパク質含有画分をプールし、50mM Tris−Cl pH7.9に対して4時間透析した。ポリエチレンイミンセルロースTLC(J.T.Baker)上でのNTPaseアッセイを、Suzichらに以前に記載されたように実施して、最終的な精製タンパク質が活性コンホメーションを有することを確認した。精製タンパク質はNTPase活性を示した(データは示さず)。 ネガティブコントロールとして、インサートを含まないpET21bプラスミドを、E.coli BL21(DE3)に形質転換し、1mM IPTGで誘導した。ネガティイブコントロール細胞培養物を、pET21b−NS3HCVと同じ精製工程でプロセシングした。ネガティブコントロールは酵素活性を示さなかった(図6レーン1を参照)。 約50kDaの1つ以上のタンパク質バンドが、IPTG誘導によって出現したが、54kDa NS3−His融合タンパク質のみを、金属結合アフィニティーカラムから精製した(図5レーン3を参照)。
実施例2
RNAヘリカーゼに対する基質の調製
図4は、RNAヘリカーゼの基質として使用された二本鎖RNAの構造を示す。長鎖を、PvuIIで切断されたpGEM1のインビトロ転写によって調製し、そして短鎖をBamHI消化pSP65から転写した。両鎖を、SP6 RNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて、製造者のマニュアルに従って転写した。転写反応後、各アリコートをRNase free DNase(Promega)で処理し、フェノール:クロロホルムで抽出し、そしてエタノールで沈澱させた。各RNA鎖を、25mlのハイブリダイゼーション緩衝液(20mM HEPES−KOH pH7.6、0.5M NaCl、1mM EDTA、0.1%SDS)を用いて再懸濁し、そして混合した。この混合物を100℃に5分間加熱し、65℃で30分間インキュベートし、そして25℃で一晩インキュベートした。長鎖RNAを、[α−32P]−CTPで標識し、そして標識基質の比活性は、1〜1.5×10cpm/pmol ds RNA基質であった。二本鎖RNAを、6%未変性ポリアクリルアミドゲル(30:0.8)上で電気泳動し、ds RNAの位置をオートラジオグラフィーにより同定した。RNA基質を回収するために、切り出したゲルフラグメントを、400μlの溶出緩衝液(0.
5M酢酸アンモニウム、0.1%SDS、10mM EDTA)中で粉砕し、4℃で2時間激しく振盪した。上清をクロロホルムで抽出し、エタノールで沈澱させて、RNAペレットをD.W.中に溶解させた。 鎖置換を、放射標識した長鎖のバンドシフトによって観察した。
実施例3
RNAヘリカーゼアッセイ
RNAヘリカーゼアッセイを20μlの次の反応混合物中で実施した:1pmol NS3 HCVタンパク質フラグメント、0.5pmol ds RNA基質、25mM MOPS−KOH(pH6.5)、5mMATP、3mM MnCl、2mM DTT、100μg/ml BSA、および2.5U RNasin(Promega)。この反応混合物を37℃で30分間インキュベートした。反応を、5μlの5×終止緩衝液(0.1M Tris−Cl(pH7.4)、20mM EDTA、0.5%SDS、0.1%NP−40、0.1%ブロモフェノールブルー、0.1%キシレンシアノール、および50%グリセロール)を添加することによって停止させた。各アリコートを6%未変性ポリアクリルアミドゲル(30:0.8)に負荷し、80Vで3時間電気泳動した。ds
RNA基質および巻き戻しRNA鎖をオートラジオグラフィーにより可視化した。NS3タンパク質フラグメントのヘリカーゼ活性に対するATPおよび二価金属イオンの効果を、1mMまたは5mM ATPの存在下で、1、2、3、4、および6mMのMn2+またはMg2+を用いて同じ反応を実施して調べた。鎖分離効率を、PhosphoImager(Molecular Dynamics、Sunnyvale、CA)を用いて、バンドの放射活性をカウントすることによって計算した。種々の濃度のATPおよび二価カチオンでの、HCV NS3タンパク質フラグメントの活性変化については、図7を参照。HCV NS3 RNAヘリカーゼフラグメントは、Mg2+およびMn2+のような二価イオンを必要とした(図6レーン2〜5を参照)。Mg2+またはMn2+イオンが存在する場合のみ、鎖置換が観察された(図6レーン2および4を参照)。これら二価カチオンまたはATPのいずれかを欠く場合、ds RNAは巻き戻されなかった(図6レーン3、5、および7を参照)。一価カリウムイオンは、これらの条件下で、HCV NS3タンパク質フラグメントのヘリカーゼ活性を活性化しなかった(図6レーン6を参照)。1mM ATPでは、ヘリカーゼ活性は、5mMのときより低かった(図6レーン8を参照)。NS3の酵素活性は、HCV NS3タンパク質フラグメントのモノクローナル抗体によって阻害され(図6レーン9を参照)、そして2つの異なる濃度の非特異抗体によってはブロックされなかった(図6レーン10および11を参照)。
【0078】
上記のように、HCV NS3タンパク質フラグメントのRNAヘリカーゼ活性は、二価カチオンおよびATPに依存した。低濃度のATP(1mM)では、NS3のヘリカーゼ活性は、二価カチオンの低い濃度で最も高く、カチオン濃度が増加すると、ヘリカーゼ活性は減少した。高濃度のATP(5mM)で、ほとんどの基質が、試験した全カチオン濃度で、巻き戻された。Mn2+またはMg2+のいずれかのカチオン濃度が3mMまたは4mMのとき、ヘリカーゼ活性は最高であった。従って、ヘリカーゼ活性は、より低いATP濃度で、二価カチオン濃度に対してより感受性であるようだ。さらに、HCV NS3タンパク質フラグメントは、Mg2+に対してわずかに片寄りを示した。
実施例4
短縮型HCV NS3フラグメントのヘリカーゼ活性についての試験
種々のサイズのHCV NS3フラグメントを、上記のように発現および精製した。次いで、そのフラグメントを、上記のようにヘリカーゼ活性について、そして、当該分野で公知のようにNTPase活性について試験した。図9は、試験したフラグメントおよびそのフラグメントがヘリカーゼ/NTPase活性を示したどうかを示す。以下のフラグメントを試験した:番号1、完全長ヘリカーゼフラグメント(すなわち、HCV NS3ドメインのアミノ酸1193〜アミノ酸1657)、ATCC寄託番号97306;番号2、HCV NS3ヘリカーゼドメインのC末端から10アミノ酸を欠失させたHCV
NS3フラグメント(すなわち、HCV NS3ドメインのアミノ酸1193〜アミノ酸1648)、ATCC寄託番号97307;番号3、HCV NS3ヘリカーゼドメインのC末端から30アミノ酸を欠失させたHCV NS3フラグメント(すなわち、HCV
NS3ドメインのアミノ酸1193〜アミノ酸1638)、ATCC寄託番号97308;番号4、HCV NS3ヘリカーゼドメインのC末端から50アミノ酸を欠失させたHCV NS3フラグメント(すなわち、HCV NS3ドメインのアミノ酸1193〜アミノ酸1608)、ATCC寄託番号97309;番号5、HCV NS3ヘリカーゼドメインのC末端から97アミノ酸を欠失させたHCV NS3フラグメント(すなわち、HCV NS3ドメインのアミノ酸1193〜アミノ酸1651)、ATCC寄託番号97310;番号6、HCV NS3ヘリカーゼドメインのC末端から135アミノ酸を欠失させたHCV NS3フラグメント(すなわち、HCV NS3ドメインのアミノ酸1209〜アミノ酸1657)、ATCC寄託番号97311;番号7、HCV NS3ヘリカーゼドメインのN末端から16アミノ酸を欠失させたHCV NS3フラグメント(すなわち、HCV NS3ドメインのアミノ酸1209〜アミノ酸1657)、ATCC寄託番号97312;および番号8、HCV NS3ヘリカーゼドメインのN末端から32アミノ酸を欠失させたHCV NS3フラグメント(すなわち、HCV NS3ドメインのアミノ酸1225〜アミノ酸1657)、ATCC寄託番号97313。
【0079】
図9に示されているように、短縮型変異体である番号5、6、および8の変異体は、RNAヘリカーゼ活性を示さなかった。しかし、変異体7は、たとえその活性が番号1の(完全長)タンパク質の約半分であったとしても、NTPase活性を確かに示した。図8は、短縮型変異体のRNAヘリカーゼアッセイを示す。上方のバンドはdsRNAを示し、下方のバンドは32Pで標識されたssRNAを示す。煮沸RNAは、5分間煮沸後の変性dsRNAを示し、従ってssRNAに対するコントロールであった。図8および9の両方に示されているように、短縮型フラグメント番号5、6、および8は、RNAヘリカーゼ活性を消失した。
実施例5
HCV NS3フラグメントの溶解性測定
pET21b−HCVNS3ベクターからの発現タンパク質の溶解性を、以下の方法によって測定した:ITPG誘導細胞を5分間6000Gにて回収した。次いで、細胞を、1×結合緩衝液(5mMイミダゾール、500mM NaCl、20mM Tris−Cl pH7.9)を用いて再懸濁した。次いで、再懸濁した細胞を、ドライアイス−エタノールバス中で凍結させ、氷上で解凍して、2分間超音波処理した。細胞抽出物を27000Gで30分間遠心分離した。細胞抽出物の可溶性部分(上清)および細胞抽出物の不溶性部分(ペレット)をSDS−PAGEに供した。ウエスタンブロットを、HCV NS3タンパク質フラグメントに対するモノクローナル抗体を用いて、SDS−PAGEについて実施した場合、発現タンパク質は、細胞抽出物の可溶性部分中にのみ観察された。
【0080】
標記寄託番号の下でATCCに寄託された上記材料は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項の下に維持される。これらの寄託物は、当業者に対する便宜として提供されるのであって、寄託物が米国特許法112条の下で要求されることを認めるものではない。寄託物に含有されるポリヌクレオチド配列、およびこれによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、本明細書に参考として援用され、そして本明細書に記載されている配列となんらかの矛盾する事象において照合される。寄託物を製造、使用、または販売するためにはライセンスを必要とし得、このようなライセンスは本願明細書により承諾されない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1はHCV−1のNS3タンパク質の配列を示す。これは、HCV−1ポリタンパク質のおよそアミノ酸1027〜1657である(配列番号1)。
【図2】図2はHCV NS3タンパク質の模式図である。数字は、HCV−1ポリタンパク質のアミノ酸の位置を示す。
【図3】図3は、DEXHボックスRNAヘリカーゼタンパク質の保存配列モチーフおよびHCVNS3タンパク質のRNAヘリカーゼドメインの匹敵する配置を示す。ボックス間の数字はアミノ酸残基における距離を示す。
【図4】図4は、RNAヘリカーゼアッセイのための二本鎖RNA基質の構造を示す。太線は32P標識RNA鎖を示す。細線は非標識RNA鎖を示す。
【図5】図5はE.coliからのHCV NS3の発現および精製を示す。M:タンパク質サイズマーカー、レーン1:非誘導細胞由来の総タンパク質、レーン2:3時間IPTG誘導細胞由来の総タンパク質、レーン3:ニッケル結合クロマトグラフィにより精製したHCV NS3:Hisタグ融合タンパク質。
【図6】図6は、HCV NS3タンパク質フラグメントのRNAヘリカーゼアッセイの結果を示す。レーン(−)酵素:NS3タンパク質を含まないds RNA。レーン煮沸(boiled):熱変性させたds RNA。レーン1;ネガティブコントロール細胞(pETベクターのみ)由来の画分、レーン2:3mM Mn2+、レーン3:Mn2+なし、レーン4:3mM Mg2+、レーン5:Mg2+なし、レーン6:3mM KCl、レーン7:ATPなし、レーン8:1mM ATP、レーン9:NS3タンパク質をNS3特異的モノクローナル抗体とプレインキュベートしたもの、レーン10、11:NS3タンパク質を抗コネクシンモノクローナル抗体とそれぞれ20μlあたり0.5μg、1.0μgでプレインキュベートしたもの。モノクローナル抗体を、NS3タンパク質と室温で5分間プレインキュベートした。
【図7】図7は、異なるATPおよび二価カチオン濃度での、ヘリカーゼ活性を有するHCVNS3 RNAフラグメントの活性プロフィールを示す。カチオンの効果を2つの異なるATP濃度(1mMおよび5mM)で試験した。
【図8】図8は、HCV NS3タンパク質の種々の短縮型フラグメントの活性を示す。
【図9】図9は、種々の短縮型HCV NS3フラグメントを示し、これらフラグメントがヘリカーゼ/NTPase活性を示すかどうかを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸配列を有する短縮型の精製されたC型肝炎ウイルス(HCV)NS3ヘリカーゼフラグメント、あるいは、1つまたはいくつかのアミノ酸挿入、アミノ酸欠失またはアミノ酸置換を有するその改変体であって、該改変体は、ヘリカーゼ活性を保持しかつ可溶性である、フラグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−271388(P2006−271388A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129683(P2006−129683)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【分割の表示】特願2003−418777(P2003−418777)の分割
【原出願日】平成8年9月12日(1996.9.12)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】