説明

ヘルドシャフトのための直接油圧サーボドライブ

【課題】簡単に制御でき、速い作動速度が得られるヘルドシャフトドライブを提供する。
【解決手段】本発明に従うヘルドシャフトドライブは、好ましくはヘルドシャフト(1)に横にフランジ取り付けされた油圧サーボ駆動ユニット(6,7)を有する。油圧サーボ駆動ユニット(6,7)は移動測定システムを有する。このシステムは、それら自体のそれぞれの位置調節回路を介して所望のヘルドシャフトの位置を設定する。両ドライブユニット(6,7)は、共通の名目値ジェネレータの発した共通のガイド信号で制御される。この種の直接駆動は、機械的により固く振動が少なく用途が非常に柔軟なヘルドシャフトドライブになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織機のヘルドシャフトのためのドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の織機の大部分においてヘルドシャフトはシェッド(開口)形成に用いられる。シェッド形成では、たて糸面からたて糸を振ることが織物を作るためよこ糸を導入するのに必要である。この目的のために、たて糸はヘルドを通して引っ張られる。ヘルドは上側及び下側端部のはと目によりそれぞれのシャフト板に着座している。上側及び下側シャフト板は、製作すべき編物の全幅にわたって延び、連続して上下に動かなければならないヘルドシャフトと称されるフレーム状構造により支持される。適用されるべき加速力と実現すべき作動速度に関して関連する駆動装置のために厳しい要件が設定される。
【0003】
特許文献1は、ヘルドシャフトが駆動部としてピストン・シリンダ集合体について記述する。集合体はそれぞれ、移動可能に保持されたピストンが配置されたシリンダを有する。ピストンはそれぞれの端面で両端にシリンダから突出したそれぞれのピストンロッドを具備している。上側ピストンロッドは牽引手段によりヘルドシャフトの上側シャフトロッドに連結している一方、下側ピストンロッドは別な牽引手段によりヘルドシャフトの下側シャフトロッドに連結している。
【0004】
前記の配置は速い作動速度において困難に直面する。
【0005】
同様の装置が特許文献2(無審査で公表された出願)に開示されている。ドライブのために利用される油圧(ハイドロリック)又は空気シリンダが、給気弁を作動させるカム(cam disk)により機械的に制御される。
【0006】
この配置は高めの作動速度を実現するには採用できない。
【0007】
特許文献3は、流体シリンダによるヘルドシャフトの作動を記述する。ピストンロッドは下からヘルドシャフトに連結し、それに力を与える。それぞれの流体シリンダは1つのピストンロッドを有するのみである。ロッドはその一方の側でシリンダから突出し、ヘルドシャフトに連結する。往復運動の発生の際、牽引力と押す力が交互するピストンロッドに揺動負荷が加えられる。圧力負荷に関して、加わる質量を増加させ装置の操作速度を制限する、固い、特にねじれ耐性のあるピストンロッドの設計が必要とされる。
【0008】
特許文献4は、加圧流体によるヘルドシャフトの直結駆動を提案する。このために、上側及び下側シャフトロッドはそれぞれIビームである。ウェブは楕円形管の側方の溝を横切り、そこで密封して保持される。楕円形管は、ウェブに形成された拡張部分が上側及び下側作動チャンバを分離している流体シリンダとして働く。圧力を一方又は他方のチャンバに加えることにより、ヘルドシャフト全体が一方又は他方の方向に移動する。
【0009】
前記の装置は特定のヘルドシャフトの構造に基づいており、たいてい実用的でなかった。
【0010】
特許文献5から、刺繍フレームに直結した油圧モータにより刺繍機の刺繍フレームを駆動させることが知られている。油圧モータは、電気ステッピングモータで作動するマルチ方向調節弁により制御される。
【0011】
この特許文献5によれば、さらに、追従装置の調節回路において油圧モータを制御する弁を有することも知られている。この装置は標準・実際値の比較に基づき刺繍フレームを設定するために操作量を生じる。出発点として、所望の動きが電圧のようなアナログ電気量により予め与えられ、この名目値(nominal value)と実際値の比較が電気油圧式調節弁に影響するパルスになる。このパルスの大きさと方向に従って油圧モータは動き始め、その後必要な停止が標準・実際値の新たな比較により開始される。これに基づき高めの操作速度を実現するために、位置調節を省き、ステッピングモータで制御された油圧シリンダにより刺繍フレームの位置決めを実行することが提案されている。
【0012】
【特許文献1】DE 3120097
【特許文献2】DE 1813411
【特許文献3】United Kingdom Patent No. 591904
【特許文献4】DE 1802118
【特許文献5】DE 2452631
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゆえに本発明の目的は、簡単に制御でき、速い作動速度が得られるヘルドシャフトドライブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1及び15において定められるヘルドシャフトドライブにより達成される。
【0015】
請求項1に記載のような本発明に従うヘルドシャフトは、複動式油圧シリンダを有する。そのピストンロッドは両側で油圧シリンダから突出している。ピストンロッドの両端はヘルドシャフトに直結しているか、固い中間キャリアにより間接的に連結している。結局、たいてい設定運動を伝えるために用いられる従来技術の牽引手段は不必要になった。油圧ドライブとヘルドシャフトの連結を確立するためにレバー、ブラケットなどを有する連結チェーンを利用してきた油圧ドライブに比べて、油圧ドライブのピストンロッドの上側及び下側端をヘルドシャフトに直結することにより、高めの作動速度が得られるという利点がある。ピストンロッドは比較的細くてもよい。従って、油圧ドライブに関連する質量慣性力は最小化される。固い連結、すなわち、ピストンロッドの端とヘルドシャフトとの静的に決定された連結は、ピストンロッドとヘルドシャフトとの分離・連結位置の形成を排除しない。とにかく、フレキシブル又は結合した牽引手段、連結式サポートなどを有するブラケットなどは存在しない。
【0016】
原則的に油圧シリンダは例えばヘルドシャフトの下にも配置されるが、そのバインダに隣接して配置されるのが好ましい。このような配置は短い力伝達経路になり、従って、アセンブリ全体がそれに応じて固くなり、非常にダイナミックに移動できるようになる。好ましくは、両方のピストンロッドは圧力のみにさらされ、すなわち、押出し部品として設計される。力伝達は、押すことによってのみシリンダの両方のピストンロッドで生じる。上側ピストンロッドは上方ストロークの際ヘルドシャフトを上方に押すのに対し、下側ピストンロッドは下方ストロークの際ヘルドシャフトを下方に加速させる。このような配置は特にコンパクトな構造になる。
【0017】
好ましい実施形態によれば、それぞれの油圧シリンダはヘルドシャフトの両方の端バインダに配置される。油圧シリンダは同期して制御され、ヘルドシャフトは直線運動を行う。保持のために、少なくとも非常に幅の広いヘルドシャフトの場合、1つ又は複数の付加的な油圧駆動ユニットが設けられる。このような付加的な駆動ユニットはヘルドシャフトの下に配置され、下側シャフトロッドと連結するのが好ましい。それらは、シャフトロッドが中間バインダによって互いに連結している位置に配置されるのが好ましい。このような配置はヘルドシャフトのダイナミックな曲がりを減少させる。
【0018】
隣接するヘルドシャフトの油圧シリンダはシリンダブロックと結合する。このブロックは比較的細くできており、コンパクトで、高速で、しかし静かに作動する織機の構造を可能にする。油圧シリンダのシリンダブロックは好ましくはバルブブロックに直結しており、それでバルブと油圧シリンダの間の油圧管は短く、固い。この配置は、ピストンロッドの端の中間キャリア又は端バインダへの直結と同様に振動の減少をもたらす。所定の運動曲線とヘルドシャフトが行う実際の運動の間でより良好な伝達挙動が得られる。さらには、例えば160バールの高いシステム圧力と、例えばたった60l/minのシリンダの低い体積流れが可能である。1分当たり1000以上の突き(ピック)が実現される。
【0019】
好ましい実施形態では、ピストンロッドの端は端バインダと直結しておらず、中間キャリアを介している。後者はヘルドシャフトをさらにガイドし、またピストンロッドに放射状に伝わる力であって、ヘルドシャフトから生じる力から油圧シリンダを分離する働きをする。
【0020】
ピストンロッドは、直接又はそれに代えて例えば中間キャリアを介して間接的に、移動測定装置と連結する。この装置はヘルドシャフトドライブの実際の位置を連続的に測定し、実際値として信号を調節回路に適用する。制御装置は実際値を名目値と比較し、偏差が最小になるようにバルブブロックの弁を制御する。このようにして、本当の油圧サーボドライブが得られる。これにより、ヘルドシャフトはガイド信号に反応すると直線的に移動する。例えばコンピュータ制御による制御信号の対応する適用により、実質的に任意の運動曲線が予め決定され、得られる。例えば、加速度ピークが最小になり、従って低めのヘルドシャフト振動が期待される運動曲線が得られる。
【0021】
2つの駆動ユニットに、好ましくはジョイント所定値に従い作動するそれら自体の位置調節回路が結合するが、別な機能は互いに独立である。このために、それぞれの位置調節回路がそれ自体の移動センサーとそれ自体の調節増幅器を有する。加えて、モニタリングユニットが設けられ、これは両方の調節回路の調節の偏差をモニターし、調節の偏差の差が過大になると信号を発する。信号はシャットオフ信号として働く。
【0022】
さらに、移動測定装置をヘルドシャフトに直結してその位置を例えば中間領域で検知することが可能である。この手段により、ヘルドシャフト振動は打ち消される。
【0023】
ヘルドシャフトの運動は、織機の作動速度で所与の信号を同期させることで簡単に織機のドライブと同期する。このようにして、織機の作動回転数の変動が機械の始動、機械の停止又は低速運転の際自動的に考慮される。
【0024】
本発明の別な有利な実施形態の詳細は明細書、図面又は特許請求の範囲のテーマである。
【0025】
図面は本発明の実施形態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、ヘルドシャフト1を有する一群のヘルドシャフトを示す。ヘルドシャフトはヘルド(図示せず)を担持し、織機においてシェッド形成の役割をする。ヘルドシャフト1は上側シャフトロッド2、下側シャフトロッド3、及び上側及び下側シャフトロッド2,3と共に長方形フレームを形成する端バインダ4,5を有する。長方形フレームはヘルド(図示せず)を収容する働きをする。ヘルドシャフト1と、他の実質的に同一構造だが分離して考えられないヘルドシャフトとを駆動させるために、駆動ユニット6,7が設けられる。これらユニットはヘルドシャフト1の端バインダ4,5、又はシャフトロッド2,3のそれぞれの右又は左端部8,9,11,12に連結する。
【0027】
駆動ユニット6,7は鏡像対称に配置される。それらは同一、ほとんど同一又は似た構造をしており、鏡像対象に配置されるだけである。ゆえに、以下の駆動ユニット6の記述は同様に駆動ユニット7にも当てはまる。駆動ユニット6,7は第1位置ではヘルドシャフトを駆動させる働きをするが、それらのガイドの働きもする。この連結に関しては、図2及び3を参照されたい。ヘルドシャフトは、図2及び3から分かる縦のたて糸方向に対してそれぞれ相対的に短い(平らである)。例えば、ヘルドシャフトはたて糸の長手方向に測定してほんの12mmの長さを有する。ヘルドシャフトは互いにぴったり当接し、摩擦減少スペーサ又はライダーにより互いに小さい間隔を置いて保持される。端バインダ4(従って、端バインダ5も)は、駆動ユニット6(及び7のそれぞれ)に指向する側に、端バインダ4の外側の狭い側面にわたって垂直に延びるガイド溝13を有する。ガイド要素14は端バインダ4及びヘルドシャフト1のガイドの働きをする。ガイド要素14は横のキャリアであり、そこから一連の突出部が突出している。それぞれの突出部15は各端バインダ4の関連するガイド溝13に延び、それにより垂直滑りガイドを構成する。
【0028】
ガイド要素14は、シリンダブロック17に連結したガイドボディ16の側方設置面にフランジ取り付けされる。ガイドボディ16は長方形の基本形状を有する。ガイド要素14に向かう側面に、ガイドボディ16は一連の垂直ガイドチャネル18を有する。このチャネルは、例えば図に示されているように長方形断面を有する。特に図5、また他には図1,3,4及び6からから分かるように、ガイドチャネル18はガイドバー19の滑りガイドの働きをする。それぞれのガイドバー19は、ガイドチャネル18において垂直に移動できるようにガイドされたスレッド(キャリッジ)21の部分を形成する。この実施形態では、ガイドは滑るタイプであるが、ローラガイドのような転動体ガイドも利用されることが分かる。
【0029】
ガイドバー19は、上側及び下側端部の両方で、それぞれの連結部材22,23と結合又は連結する。固い連結部材22,23は、端バインダ4に向かう面に連結装置24,25を有する。この連結装置は、端バインダ4、又はシャフトロッド2,3の端部8,9,11,12との連結を確立するように設計される。連結装置24,25から離れた面では、連結部材22,23は突出部26,27を有する。突出部はそれらの間で広い開口を定め、相互に向かい合う好ましくは平行に延びる平らな面を有する。シリンダブロック17はこのようにして開口領域に配置される。ガイドバー19の長さと、突出部26,27の向かい合う平らな面の間の距離は、スレッド21がガイドボディ16においてシェッド形成に十分な垂直ストロークを実行するように寸法決めされる。本実施例では、その距離は例えば150mmである。
【0030】
シリンダブロック17は複数のシリンダ穴28を有する。その数は突出部15の数に一致し、スレッド21の数に等しい。シリンダ穴28は、互いにジグザグに配置された2列又は必要ならばそれ以上の列で配置される。このようにして、本実施例で示されるように、個々のシリンダ穴28の直径は12mmのヘルドシャフト幅より大きい。図5から分かるように、スレッド21の突出部26,27の長さは、両方の列がシリンダ穴28により橋渡しされるように寸法決めされる。シリンダ穴28はガイドバー19及びそれらのガイドチャネル18と平行に延びる。各シリンダ穴28に、シールされた垂直に移動可能なピストン29が配置される。本実施例では、ピストン29が単一のシールを有していれば十分である。
【0031】
ピストン29はピストンロッド31と連結している。ロッドは、ピストン29で分割された上側及び下側作動チャンバ32,33を通って延びる。さらに、ピストンロッド31は閉部材34,35を通って延びる。これら部材は、この目的のために適切な貫通口36,37を具備し、作動チャンバ32,33を閉じるためにシリンダブロック17の上部と下部にそれぞれ配置される。好ましくは、それぞれの静水力学的なピストンロッドベアリングが貫通口36,37に配置される。このようなベアリングはピストンロッドの高速を可能にする。シールは好ましくは、摩擦を最小にする非接触間隙シール(contactless clearance seal)により行われる。
【0032】
ピストンロッド31は、上側及び下側端部の両方に、それぞれの平らな又は非常に僅かに凸状の端面38,39を有する。端面は遊びなしでそれぞれの突出部26,27の平らな面と係合する。このようにして、ピストン29の全ての運動はスレッド21に直接伝えられる。
【0033】
シリンダブロック17に、作動チャンバ32,33を加圧又は減圧するために電気制御された切換弁42(電磁弁又は電気モータで制御された弁)を有するバルブブロック41がフランジ取り付けされる。対応する流体チャネル43,44がバルブブロック41に直接加工される。それらはシリンダブロック17に直接結合するか、示されるように短い連結管45,46により閉部材34,35に連結してもよい。各ピストン29、すなわち各シリンダ穴28に、少なくとも1つの切換弁42が結合する。
【0034】
移動測定装置47が、ピストン29と特にスレッド21の運動の正確な検知のために設けられる。移動測定装置47はスケール表示ボディ48を有する。このボディは例えばスレッド21に連結し、スレッド21と共に移動し、ガイドボディ16の穴を通って延びる。関連するセンサー49(図7に概略的に示されている)はガイドボディ16に配置される。移動測定装置47は、スレッド21の瞬間移動位置を表す電気、アナログ又はデジタル測定値を配信する。
【0035】
図7は、駆動ユニット6,7の2本の油圧シリンダがヘルドシャフト1を駆動させる例において、本発明に従うヘルドシャフトドライブ1の油圧システムを概略的に示す。識別のために、端バインダ4に関連する駆動ユニット6の要素は「a」を付されており、端バインダ5に関連する駆動ユニット7の要素は「b」を付されている。文字符号のない参照番号は駆動ユニット6と7の両方に適用される。先に導入した参照番号はここでも用いられる。
【0036】
駆動ユニット6,7の油圧シリンダを制御するために、駆動ユニット6,7のそれぞれの油圧シリンダのために位置調節回路52a,52bを有する制御装置51が設けられる。どちらの位置調節回路も、名目値ジェネレータ53からの所定値又は名目値を受ける。ジェネレータは導体54を介して織機に連結し、そこからクロック信号を受ける。この信号は連続的又は周期的信号であり、織機の作動速度を表す。名目値ジェネレータ53は、標準信号として好ましくは時間的に連続するガイド信号を作る。ガイド信号はヘルドシャフト1の所望の運動を記述する時間関数である。最も簡単なケースでは、それは、名目値の時間関数が所望のヘルドシャフトの運動の時間関数に等しくなる出発点と考えられる。
【0037】
制御装置51、すなわち位置調節回路52a,52bは、入力で名目値信号を受け別な入力でセンサー49a,49bによりもたらされる実際の値の信号を受ける、アナログ又はデジタル差動増幅器55a,55bを有する。発生した差動信号は調節増幅器56a,56bに適用される。調節出力信号は、電磁弁(ソレノイドバルブ)42a,42bを制御する働きをする。電磁弁は、好ましくは、負の重なり(negative overlap)と機械リセットを有する2段油圧プリ制御サーボ弁である。電磁弁42a,42bは切換弁であり、チャネル43,44をブロックするか、それらを同じ回転方向に又はそれに代えて交差して圧力源Pに連結するか、それらをオイルパンTに連結する。圧力源Pは好ましくは、圧力調節移動ポンプを有する定圧システムであって、さらに体積流れのピークを吸収するために図示されていない油圧アキュムレータを有する定圧システムである。さらに、エネルギー損失の結果発生する熱損失を排除するためにオイルクーラーが設けられる。
【0038】
改良実施形態によれば、名目値ジェネレータは以下の点で改良される。つまり、例えば織機の作動速度に依存して、時間的な名目値のコースをヘルドシャフトの実際に望ましい運動曲線からそらすことができる。これは、瞬間の作動速度で現れる調節偏差を考慮し瞬間の実際の名目値を測定するための名目値の断定的な事前決定(pre-determination)に関する。これは、このような名目値において現れる調節エラー(調節偏差)と実際の作動速度を考慮する一方で、実際に望ましい名目値が得られるように行われる。従って、レギュレータにより速度に依存して生じた限界エラーが名目値に付加されると言ってもよい。
【0039】
前記のヘルドシャフトドライブは以下のように作動する。
【0040】
ヘルドシャフト1は、2つの端バインダ4,5において少なくとも1つの連結装置24又は2つの連結装置24,25と係合し、所定のとおりに上下に垂直にガイドされる。この目的のために、それぞれのヘルドシャフトのために少なくとも1つの油圧シリンダを有する駆動ユニット6,7が設けられる。ヘルドシャフトの運動を始動させるために、制御装置51が、導体54を介して、例えば織機の主軸の角位置を表す電気信号であるガイド信号を受ける。この信号に従って、名目値ジェネレータ53が、互いに平行に独立して作動する位置調節回路52a,52bのために名目値を作る。位置調節回路52a,52bにあるレギュレータ56a,56bは、名目値とセンサー49a,49bで測定された実際値の間の既存偏差を決定し、対応する制御信号を電磁弁42a,42bに適用する。後者は、両ピストン29a,29bが同じ所望の垂直な名目位置に移動するように、作動チャンバ32a,32b又は33a,33bに圧力をかける。従って、ピストンロッド31a,31bにより、駆動ユニット6,7のスレッド21は所望の位置に同期して移動し、それによりヘルドシャフト1を所望の位置にセットする。機械の作動の間、名目値ジェネレータ53は名目値を絶えず変える。従って、ピストン29a,29bは絶えず名目値信号に従う一方、ピストンはそれぞれの瞬間にピストン調節回路52a,52bにより制御される。このようにして、ヘルドシャフト1の制御された上下運動によりシェッド形成が行われる。
【0041】
好ましい実施形態では、名目値ジェネレータは、ヘルドシャフト1の上側及び下側端部の両位置で小さい振幅の垂直振動を行う。これらの位置は静止の位置と考えられる。このような垂直振動は、ヘルドシャフトを速度0までブレーキをかけ速度0に維持する際に生じるようなヘルドシャフトの加速の急な変化を防ぐ。このようにしてストロークの上側及び下側端部領域のこのようなヘルドシャフト振動は揺れが現れるのを防ぎ、従ってヘルドシャフトにおける意図しない振動を避ける。
【0042】
伝動部材なしでヘルドシャフトを直接駆動させることにより、振動が減少し、ドライブの運動は実質的にゆがみなくヘルドシャフト1に伝えられる。質量慣性力及び摩擦力及び振動で引き起こされる限界エラーが最小化される。端部位置の上側及び下側領域で揺れるヘルドシャフトが加速度を最小化するために作られてもよい。これにより、ヘルドシャフトに対する負荷が小さくなり、エネルギー必要量が少なくなる。ヘルドシャフトのストロークは調節できる。例えば、シェッド開口の幅は特定の織物に適する大きさに適合しうる。これは、対応する大きさを名目値ジェネレータ53に適合させることで行われる。
【0043】
本発明に従うヘルドシャフトドライブは、好ましくはヘルドシャフト1に側面にフランジ取り付けされた油圧サーボ駆動ユニット6,7を有する。油圧サーボ駆動ユニット6,7は、それぞれの位置調節回路により所望のヘルドシャフト位置を設定する移動測定システムを有する。両方の駆動ユニット6,7は、共通の名目値ジェネレータにより発された共通のガイド信号により制御される。この種の直接駆動はより機械的に固く、振動が少なく、用途が非常にフレキシブルなヘルドシャフトドライブになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一群のヘルドシャフトと関連するヘルドシャフトドライブの簡単な斜視図である。
【図2】図1のヘルドシャフトの平面図である。
【図3】異なる尺度の図2の詳細図である。
【図4】図1のヘルドシャフトの一側面のヘルドシャフトドライブの斜視図である。
【図5】図4に従うヘルドシャフトドライブの縦断面図である。
【図6】図4及び5のヘルドシャフトドライブの平面図である。
【図7】ヘルドシャフトドライブを制御するための制御装置の概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ヘルドシャフト
2,3 上側シャフトロッド、下側シャフトロッド
4,5 端バインダ
6,7 駆動ユニット
8,9,11,12 端部
13 ガイド溝
14 ガイド要素
15 突出部
16 ガイドボディ
17 シリンダブロック、シリンダボディ
18 ガイドチャネル
19 ガイドバー
21 スレッド、中間キャリア
22,23 連結部材
24,25 連結装置
26,27 突出部
28 シリンダ穴
29 ピストン
31 ピストンロッド
32,33 作動チャンバ
34,35 閉部材
36,37 貫通口
38,39 端面
41 バルブブロック
42 電磁弁(切換弁)
43,44 流体チャネル
45,46 連結管
47 移動測定装置
48 スケール表示ボディ
49 センサー
51 制御装置
52 位置調節回路
53 名目値ジェネレータ
54 導体
55 差動増幅器
56 調節増幅器
P 圧力源
T オイルパン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側閉部材(34)及び下側閉部材(35)を有するシリンダボディ(17)を具備した少なくとも1つの複動式油圧シリンダ、
油圧シリンダに設けられたシリンダ穴であって、ピストン(29)が移動できるように保持されたシリンダ穴(28)、及び
ピストン(29)に連結したピストンロッド(31)
を有する織機のヘルドシャフト(1)のためのヘルドシャフトドライブにして、
それぞれの閉部材(34,35)は貫通口(36,37)を具備し、
前記ピストンロッドは上側閉部材(34)の貫通口(36)を通って延びる上側端部と、下側閉部材(35)の貫通口(37)を通って延びる下側端部を有し、
両方の端部が、直接又は中間キャリア(21)を介してヘルドシャフト(1)に連結しているヘルドシャフトドライブ。
【請求項2】
油圧シリンダがヘルドシャフト(1)の端バインダ(4,5)の側方に隣接して配置されることを特徴とする請求項1に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項3】
油圧シリンダが両方の端バインダ(4,5)の側方に隣接してヘルドシャフト(1)に配置されることを特徴とする請求項1に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項4】
複数のヘルドシャフトを駆動させるために、複数の油圧シリンダがシリンダブロック(17)に一体化していることを特徴とする請求項1に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項5】
ピストン(29)の加圧を制御するために電気制御可能な弁(42)を有するバルブブロック(41)に油圧シリンダが連結していることを特徴とする請求項1に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項6】
中間キャリア(21)が、ガイド装置(18,19)によりガイド方向に移動できるように保持されたスレッドであり、ガイド方向がピストン(29)の運動方向に一致することを特徴とする請求項1に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項7】
中間キャリア(21)が、ヘルドシャフト(1)への取り付けのために少なくとも1つの連結装置(24)を具備していることを特徴とする請求項1に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項8】
中間キャリア(21)が、ヘルドシャフト(1)の端バインダ(4,5)への取り付けのために少なくとも1つの連結装置(24)を具備していることを特徴とする請求項1に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項9】
ガイド装置(18,19)が、ヘルドシャフト(1)の端バインダ(4,5)をガイドするために少なくとも1つのガイド要素(15)を具備していることを特徴とする請求項6に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項10】
ピストンロッド(31)が、ピストンロッド(31)の実際の位置に対応する信号を発する移動測定装置(47)と連結していることを特徴とする請求項1に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項11】
移動測定装置(47)が中間キャリア(21)、端バインダ(4,5)又はヘルドシャフト(1)と連結していることを特徴とする請求項10に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項12】
移動測定装置(47)とバルブブロック(41)が、ヘルドシャフトドライブを制御するための制御装置(51)に接続していることを特徴とする請求項10に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項13】
制御装置(51)が、時間変化する所与の信号に対応する実際のヘルドシャフトの位置を調節するための位置調節装置(52)であり、それぞれの油圧シリンダのために、それ自体の位置調節回路(52a,52b)が設けられていることを特徴とする請求項12に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項14】
所与の信号が織機の作動速度と同期することを特徴とする請求項13に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項15】
貫通口(36)を有する少なくとも1つの閉部材(34)を具備したシリンダボディ(17)を有する少なくとも1つの複動式油圧シリンダ、
油圧シリンダのシリンダ穴(28)内に移動できるように保持されたピストン(29)、
ピストン(29)と連結し、閉部材(34)の貫通口(36)を貫通する端部を有し、且つヘルドシャフト(1)と連結したピストンロッド(31)、
ピストンロッド(31)の実際の位置に対応する信号を発する移動測定装置(47)、
ピストン(29)の加圧を制御するためのバルブブロック(41)、及び
ヘルドシャフトドライブを制御するためにバルブブロック(41)と移動測定装置(47)に接続した制御装置(51)
を有する織機のヘルドシャフト(1)のためのヘルドシャフトドライブ。
【請求項16】
制御装置(51)が、時間変化する所与の信号に対応する実際のヘルドシャフトの位置を調節するための位置調節装置(52)であることを特徴とする請求項15に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項17】
所与の信号が織機の作動速度と同期することを特徴とする請求項16に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項18】
油圧シリンダがヘルドシャフト(1)の端バインダ(4,5)の側方に隣接して配置されることを特徴とする請求項15に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項19】
複数のヘルドシャフトを駆動させるために、複数の油圧シリンダがシリンダブロック(17)に一体化していることを特徴とする請求項15に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項20】
油圧シリンダが両方の端バインダ(4,5)の側方に隣接してヘルドシャフト(1)に配置されることを特徴とする請求項15に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項21】
シリンダボディ(17)が上側閉部材(34)と下側閉部材(35)を有し、それぞれの閉部材(34,35)がそれぞれの貫通口(36,37)を具備していることを特徴とする請求項15に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項22】
ピストン(29)に連結したピストンロッド(31)が、上側閉部材(34)の貫通口(36)を通って延びる上側端部と、下側閉部材(35)の貫通口(37)を通って延びる下側端部を有し、
両方の端部がそれぞれ、直接又は中間キャリア(21)を介してヘルドシャフト(1)に連結していることを特徴とする請求項21に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項23】
ピストンロッド(31)の端部がヘルドシャフト(1)又は中間キャリア(21)と固く連結していることを特徴とする請求項22に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項24】
中間キャリア(21)が、ガイド装置(18,19)によりガイド方向に移動できるように保持されたスレッドであり、ガイド方向がピストン(29)の運動方向に一致することを特徴とする請求項22に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項25】
中間キャリア(21)が、ヘルドシャフト(1)への取り付けのために少なくとも1つの連結装置(24)を具備していることを特徴とする請求項22に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項26】
中間キャリア(21)が、ヘルドシャフト(1)の端バインダ(4,5)への取り付けのために少なくとも1つの連結装置(24)を具備していることを特徴とする請求項22に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項27】
ガイド装置(18,19)が、ヘルドシャフト(1)の端バインダ(4,5)をガイドするために少なくとも1つのガイド要素(15)を具備していることを特徴とする請求項24に記載のヘルドシャフトドライブ。
【請求項28】
移動測定装置が中間キャリア(21)、端バインダ(4)又はヘルドシャフト(1)と連結していることを特徴とする請求項15に記載のヘルドシャフトドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−176947(P2006−176947A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360334(P2005−360334)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)