説明

ベッド

【課題】 生後間もない乳児の段階から大人の段階に至るまでの各段階で最適な形態で使用することのできるベッドを提供する。
【解決手段】 ベッド1は、矩形の床板2と、この矩形床板2の周囲を取り囲む囲い枠とを備えたベビーベッドのフレームを利用して、揺動式ベビーベッドの形態と、固定式ベビーベッドの形態と、大型ベッドの形態とに切換え可能である。揺動式ベビーベッドの形態では、乳幼児は、矩形床板2の上方に位置する空間で揺動可能に支えられている。第1連結部材107は、寝床部材106の一方側端部と頭部枠3の上方端とを面状に連結し、寝床部材106の一方側端部を矩形床板2から浮かせた状態で保持する。第2連結部材108は、寝床部材106の他方側端部と足部枠4の上方端とを面状に連結し、寝床部材106の他方側端部を矩形床板2から浮かせた状態で保持する。固定式ベビーベッドの形態では、寝床部材106が取り外され、乳幼児は矩形床板2上に寝かされる。大型ベッドの形態では、より低い位置で、かつより大きなベッド面積の床板上で人を寝かせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベッドに関し、特にベビーベッドとして適した形態と、大人用ベッドとして適した形態とに切換え可能なベッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、乳児は誕生してからほぼ1歳を経過するまで、周囲四方を囲んだ形態のベビーベッド上に寝かされる。乳児の成長に伴い、このベビーベッドは不要なものとなる。
【0003】
ベビーベッドそのものは乳児を寝かせるだけのものであるため、比較的傷つくことが少なく、十分再利用が可能である。ベビーベッドを使用した乳児が、成長後も引き続いてこのベッドを利用することができれば、物を大切にしようとする気持ちを持たせることができる。また、形を変えたベビーベッドを成長後も継続して使用することにより、乳児の時代に親から受けた愛情の記憶を長期に亘って持続させることができ、あたたかい心を育むことができるようになる。
【0004】
この種のベビーベッドは、例えば、特開2004−41629号公報(特許文献1)に開示されている。この公報に開示されたベビーベッドでは、ベッド床フレームの長さが調節可能に設けられている。乳児のときにはベッド床フレームの長さを短くし、子供が成長したときにはベッド床フレームの長さを長くする。
【0005】
実開昭63−202353号公報(特許文献2)に開示されたベビーベッドでは、生後間もない乳児を安眠させるために、ベビーベッドの頭部枠上部および足部枠上部から紐を介して布などからなる寝床部材を吊下げている。寝床部材は、床板の上部で揺動可能である。
【0006】
実開平2−28653号公報(特許文献3)に開示されたベビーベッドにおいても、ベビーベッドの頭部枠上部および足部枠上部から4本のコイルばねを介して寝床部材を揺動可能に吊下げている。
【特許文献1】特開2004−41629号公報
【特許文献2】実開昭63−202353号公報
【特許文献3】実開平2−28653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2004−41629号公報に開示されたベビーベッドの場合、ベッド床フレームの長さを長くすることにより、大人用ベッドとして使用することを可能にしている。しかしながら、ベビーベッドとしての形態と大人用ベッドとしての形態とを比較したとき、ベッドの幅寸法は同じである。そのため、大人がこのベッドを大人用ベッドの形態で使用するとき、幅が窮屈なものとなる。
【0008】
実開昭63−202353号公報や実開平2−28653号公報に開示されたような揺動式ベッドの場合、寝床部材が、頭部枠および足部枠から下方に延ばされた紐やコイルばねによって支持されている。紐やコイルばねで寝床部材を支持する構造では、寝床部材の揺動の方向が定まらず、安定した揺れの動きを発揮できない。
【0009】
本発明の目的は、生後間もない乳児の段階から大人の段階に至るまでの各段階で最適な形態で使用することのできるベッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従ったベッドは、矩形の床板と、この床板の周囲を取り囲む囲い枠とを備えたベビーベッドのフレームを利用して、矩形床板の上方に位置する空間で乳幼児を揺動可能に支える揺動式ベビーベッドの形態と、囲い枠で取り囲まれて所定の高さに位置する矩形床板上に乳幼児を寝かせる固定式ベビーベッドの形態と、固定式ベビーベッドにおける矩形床板に比べて、より低い位置で、かつより大きなベッド面積の床板上で人を寝かせる大型ベッドの形態とに切換え可能であることを特徴とする。
【0011】
生後間もない乳児の場合には、揺動式ベッドの形態で使用する。成長後の次の段階では、固定式ベッドの形態で使用する。さらに成長して学童や大人になった段階では、より低い位置でより大きなベッド面積となる大型ベッドの形態で使用する。
【0012】
好ましくは、固定式ベビーベッドの形態において、矩形床板は高さ調節可能に設けられている。幼い乳幼児に対しては、世話のし易さ、脱落の危険性が少ないこと等の理由で矩形床板を高い位置で固定する。乳幼児が成長して大きくなったときには活発に動くようになるので、脱落防止の観点から矩形床板を低い位置で固定する。
【0013】
好ましくは、大型ベッドの形態は、ベッド面積が相対的に小さいジュニア用ベッドの形態と、ベッド面積が相対的に大きい大人用ベッドの形態とに切換え可能である。このようにすれば、学童段階および大人の段階でより適した大きさのベッドの形態を提供できる。
【0014】
好ましくは、大型ベッドの形態における床板は、囲い枠の一部を利用して形成されている。ベビーベッドにおける囲い枠の高さは、一般的には、ベッド床の幅寸法よりも大きい。従って、囲い枠の一部を大型ベッドの床板として使用すれば、十分なベッド幅寸法となる。
【0015】
好ましくは、揺動式ベビーベッドの形態におけるベッドは、一方側端部と他方側端部とを有する矩形の寝床部材と、第1連結部材と、第2連結部材とを備える。第1連結部材は、寝床部材の一方側端部と、囲い枠の一方側フレームの上方端とを面状に連結し、寝床部材の一方側端部を矩形床板から浮かせた状態で保持する。第2連結部材は、寝床部材の他方側端部と、囲い枠の他方側フレームの上方端とを面状に連結し、寝床部材の他方側端部を矩形床板から浮かせた状態で保持する。このような構成にすれば、第1連結部材および第2連結部材が、寝床部材の一方側端部および他方側端部と、囲い枠とを面状に連結するものであるので、寝床部材の揺動の方向が定まり、安定した揺動運動を行わせることができる。
【0016】
好ましくは、第1連結部材および前記第2連結部材は、布である。さらに好ましくは、静止状態において、第1連結部材および第2連結部材は、鉛直線方向に延在する。このような構成であれば、寝床部材は、水平状態を維持したまま平行に揺動運動を行う。
【0017】
好ましくは、第1連結部材および第2連結部材を構成する布は、固定式ベビーベッドの形態または大型ベッドの形態において、折畳んだ状態でベッドのフレームに取付けられる。布は、揺動式ベビーベッドの形態において乳児を支えていたものである。布に支えられたこの時期の乳児に対して、母親や父親は深い愛情を注ぐ。乳児が成長して幼児、学童、大人になったときに、乳児の段階において自らを支えていた布を目にすれば、乳児期に注がれた親の深い愛情の記憶が蘇り、あたたかい心をもてるようになる。
【0018】
揺動式ベビーベッドの形態におけるベッドは、第1連結部材および前記第2連結部材の少なくともいずれか一方の吊下げ長さを調節するための長さ調節手段を備える。長さ調節手段を備えることにより、寝床部材は、揺動可能状態、水平固定状態、傾斜固定状態の3状態を選択的に取ることが可能となる。例えば、乳児を静かに寝かせるときには寝床部材を水平固定状態にし、乳児をあやすときには寝床部材を揺動可能状態にする。また、授乳後にげっぷをさせようとするときには、頭を僅かに高くする傾斜固定状態にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、図1〜図6を参照して、この発明の基本的な構成を説明し、その後で図7〜図19を参照して具体的な構成を説明する。これらの図において、同一の参照番号は、同一または相当の要素を示すものである。
【0020】
この発明に従ったベッド1は、矩形の床板2と、この矩形床板2の周囲を取り囲む囲い枠とを備えたベビーベッドのフレームを利用して、揺動式ベビーベッドの形態(図1)と、固定式ベビーベッドの形態(図3および図4)と、大型ベッドの形態(図5および図6)とに切換え可能である。図1〜図4では、囲い枠のうち、頭側に位置する頭部枠3と、足側に位置する足部枠4とが図示されている。
【0021】
図1〜図4に示すベビーベッドの形態では、矩形床板2は、囲い枠(例えば、頭部枠3および足部枠4)に支えられて所定の高さに位置する。好ましくは、矩形床板2は、高さ調節可能に設けられる。
【0022】
図1に示す揺動式ベビーベッドの形態では、乳幼児は、矩形床板2の上方に位置する空間で揺動可能に支えられている。すなわち、ベッド1は、一方側端部と他方側端部とを有する矩形の寝床部材106と、第1連結部材107と、第2連結部材108とを備える。第1連結部材107は、寝床部材106の一方側端部と頭部枠3の上方端とを面状に連結し、寝床部材106の一方側端部を矩形床板2から浮かせた状態で保持する。第2連結部材108は、寝床部材106の他方側端部と足部枠4の上方端とを面状に連結し、寝床部材106の他方側端部を矩形床板2から浮かせた状態で保持する。
【0023】
生後間もない乳児に対して、図1に示す揺動式ベビーベッドの形態が適用される。なお、図1に示す揺動式ベビーベッドの形態において、寝床部材106の長さLは矩形床板2の長さLよりも短い。矩形床板の高さはHである。
【0024】
第1連結部材107および第2連結部材108の少なくともいずれか一方の吊下げ長さを調節可能としている。従って、図2に示すように、例えば、第2連結部材108の吊下げ長さを長くして、寝床部材106の他方側端部を矩形床板2に接触させれば、寝床部材106は頭側を僅かに高くした傾斜状態で固定される。例えば、授乳後にこの状態とする。第1連結部材107および第2連結部材108は、好ましくは、布である。
【0025】
図3および図4は、固定式ベビーベッドの形態を示している。乳児が成長して揺動させることが不要になったときに、寝床部材106、第1連結部材107および第2連結部材108を囲い枠から取り外してこの状態にする。乳幼児の動きが活発でない時期には、図3に示すように矩形床板2を相対的に高い位置(H)にし、乳幼児の動きが活発になってきた時期には、図4に示すように矩形床板2を相対的に低い位置(H)にする。取り外した布製の第1連結部材107および第2連結部材108は小さく折畳み、例えば偏平な袋やケースに入れて頭部枠3に取付けておく。
【0026】
図5および図6は、大型ベッドの形態を示している。この状態では、ベビーベッドの形態となっていた囲い枠を展開し、これらの囲い枠の一部を利用して大型ベッドとしての床板A、頭部枠Bおよび足部枠Cを形成している。図5は、ジュニア用として適した大きさとなるように、床板Aの頭部側端部および足部側端部上にスペース部材D,Eを置いている。スペース部材D,Eは、例えば、マットレスや物品収納ボックスである。図6に示す大人用ベッドの形態では、スペース部材を取り除いている。従って、図5に示すジュニア用ベッドの形態では、ベッド面の長さLは、図6に示す大人用ベッドの形態におけるベッド面の長さLよりも短くなっている。また、図5および図6に示す大型ベッドの形態における床板Aの高さHは、ベビーベッドの形態における矩形床板2の高さHまたはHよりも低い。この大型ベッドの形態においても、取り外した布製の第1連結部材107および第2連結部材108を小さく折畳み、例えば偏平な袋やケースに入れて頭部枠Bに取付けておく。
【0027】
次に、図7〜図19を参照してベッドの具体的な構成を説明する。
【0028】
本発明の実施形態に係るベッドは、ベビーベッドのフレームを利用して、揺動式ベビーベッドの形態と、固定式ベビーベッドの形態と、大型ベッドの形態とに切換え可能であるが、便宜上、図7〜図11では揺動式ベビーベッドに関連する構造の図示を省略し、図12〜図19では大型ベッドに関連する構造の図示を省略している。
【0029】
図7は、ベビーベッドとして適した形態になっているベッド1を示し、図9および図10は、大人用ベッドとして適した形態になっているベッド1を示している。本明細書中において使用する「大人」という用語は、必ずしも成人した大人だけを意味するのではなく、小学生、中学生、高校生のような子供も包含するものであると理解しなければならない。
【0030】
図7を参照して、ベッド1の基本的な構成を説明する。ベビーベッドの形態になっているベッド1は、矩形の床板2と、この床板2の周囲四方を取り囲む囲い枠とを備える。囲い枠は、通常、格子形状のものであるが、図では便宜上、単純な平板形状として示している。
【0031】
囲い枠は、床板2上に寝かされる乳幼児の頭側に位置する頭部枠3と、足側に位置する足部枠4と、左手側に位置する左側部枠5と、右手側に位置する右側部枠(図示省略)とを備える。図示していない右側部枠は、例えば、上下にスライド可能または取り外し可能に設けられている。ベビーベッドの底部の4つのコーナー部には、移動のためのキャスタ11が取り付けられている。このキャスタ11は、取り外し可能に設けられており、大人用ベッドの形態にする際、取り外される。
【0032】
床板2は、その頭側端部および足側端部に、下方に張出した脚部2aを有している。床板2の高さ調節を可能にするために、頭部枠3および足部枠4は、それぞれ上下に間隔をあけて設けられた複数の穴9を有している。図示した状態では、最も上に位置する穴に嵌められた4個のねじ8(頭部枠3上に2個、足部枠4上に2個)によって、床板2の高さを固定している。生まれて間もない乳児に対しては、世話のし易さ、脱落の危険性が少ないこと等の理由で床板2を高い位置で固定する。乳児が成長して大きくなったときには活発に動くようになるので、脱落防止の観点から床板2を低い位置で固定する。
【0033】
乳幼児が成長してベビーベッドとしての使用が不要になったとき、図7に示すように右側部枠を取り外せば子供の学習机としての利用が可能になる。
【0034】
頭部枠3は、左側部枠5にヒンジ(図示省略)を介して回動可能に連結された内側頭部枠3aと、この内側頭部枠3aにヒンジ(図示省略)を介して回動可能に連結された外側頭部枠3bとを含む。足部枠4は、左側部枠5にヒンジ(図示省略)を介して回動可能に連結された内側足部枠4aと、この内側足部枠4aにヒンジ10を介して回動可能に連結された外側足部枠4bとを含む。このように各枠をヒンジを介して回動可能に接続することにより、形態の変更および折り畳みを容易に行なうことが可能になる。
【0035】
図示するように、外側頭部枠3bの上下の端面に、1対の頭部張出部材6が固定して取り付けられている。この1対の頭部張出部材6は、内側頭部枠3aの上下端面上にまで張出して延びている。また、各側部張出部材6は、ねじ8を受け入れるための穴6aを有している。
【0036】
外側足部枠4bの上下の端面にも、1対の足部張出部材7が固定して取り付けられている。この1対の足部張出部材7は、内側足部枠4aの上下端面上にまで張出して延びている。また、各足部張出部材7は、ねじ8を受けれるための穴7aを有している。
【0037】
図8は、外側頭部枠3bと内側頭部枠3aとが屈曲した状態、および外側足部枠4bと内側足部枠4aとが屈曲した状態を示している。内側頭部枠3aおよび内側足部枠4aは、それぞれ、左側部枠5に対して同平面に延在する状態(図10参照)から内側に屈曲して重なり合う状態(図11参照)になるまで回動可能である。また、外側頭部枠3bおよび外側足部枠4bは、それぞれ、内側頭部枠3aおよび内側足部枠4aに対して同平面に延在する状態(図7参照)から外側に屈曲して重なり合う状態(図11参照)になるまで回動可能である。
【0038】
図7に示すベビーベッドの形態では、ねじ8によって頭部枠3および足部枠4を床板2に固定しているので、頭部枠3、足部枠4、左側部枠5および右側部枠(図示省略)からなる囲い枠の形状が固定される。
【0039】
図7に示すベビーベッドの形態から図9および図10に示す大人用ベッドの形態に変更しようとするときには、4個のねじ8を取り外し、床板2および右側部枠(図示省略)を分離する。また、4個のキャスタ11も取り外す。この状態が図8に示す状態である。
【0040】
図8に示す状態から、左側部枠5の内側の面が床面に対面するようにし、内側頭部枠3aおよび内側足部枠4aを左側部枠5と同平面に延在するようにする。図9および図10に示すように、内側頭部枠3aおよび内側足部枠4aは、それぞれ、左側部枠5と同平面に延在している状態では、左側部枠5の両端面にほぼ隙間なく突き当たって当接しているので、平面状態を越えて屈曲するようなことはない。
【0041】
図9および図10に示すように、外側頭部枠3bおよび外側足部枠4bは、それぞれ、内側頭部枠3aおよび内側足部枠4aに対して90度に屈曲した位置関係とされる。この屈曲状態は、床板2を固定するのに使用されていた4個のねじ8を頭部張出部材6の穴6aおよび足部張出部材7の穴7a内に嵌め入れることによって固定される。具体的には、外側頭部枠3bに固定されている1対の頭部張出部材6と内側頭部枠3aとを2個のねじ8によって固定し、外側足部枠4bに固定されている1対の足部張出部材7と内側足部枠4aとを2個のねじ8によって固定する。
【0042】
図9および図10に示すように、大人用ベッドの形態では、1対の頭部張出部材6および1対の足部張出部材7が大人用ベッドの床板を床面から浮かせた状態で支持するための脚部となる。大人用ベッドの床板は、左側部枠5、内側頭部枠3aおよび内側足部枠4aによって形成される。また、外側頭部枠3bおよび外側足部枠4bは、それぞれ、頭側の枠部材および足側の枠部材となる。ベビーベッドの形態で使用されていた床板2は、大人用ベッドの形態のとき、水平に延在する大人用ベッドの床板を下から支えて、床板の水平状態を安定に保つのに利用される。床板2の脚部2aは、このような機能を発揮できるような長さとされている。
【0043】
図11は、運搬時または倉庫収納時の折り畳み状態のベッドを示している。図示するように、内側頭部枠3aは左側部枠5上に重なり合うようにされ、外側頭部枠3bは内側頭部枠3a上に重なり合うようにされる。同様に、内側足部枠4aは左側部枠5上に重なり合うようにされ、外側足部枠4bは内側足部枠4a上に重なり合うようにされる。また、この折り畳み構造上に、床板2および右側部枠(図示省略)が重なるように置かれる。このように折り畳まれたベッドの嵩張りは、比較的小さいので、運搬および倉庫収納時のスペースの有効利用を図れる。
【0044】
この発明は、ベビーベッドそのものの構造にも焦点を当てている。すなわち、図7、図8および図11に示すように、この発明に従ったベビーベッド1は、矩形の床板2と、この床板2の周囲を取り囲む囲い枠とを備える。囲い枠は、頭側に位置する頭部枠3と、足側に位置する足部枠4と、側面側に位置する側部枠5とを含む。頭部枠3は、側部枠5にヒンジを介して回動可能に連結された内側頭部枠3aと、内側頭部枠3aにヒンジを介して回動可能に連結された外側頭部枠3bとを含む。足部枠4は、側部枠5にヒンジを介して回動可能に連結された内側足部枠4aと、内側足部枠4aにヒンジを介して回動可能に連結された外側足部枠4bとを含む。このような構成のベビーベッドによれば、折畳み状態への移行操作を簡単に行なうことができ、さらに折畳み状態の嵩張りを小さくすることができる。
【0045】
なお、本明細書中に現れる「頭部」、「足部」、「右」および「左」という用語は、相対的な位置関係を示すために便宜的に使用したものである。
【0046】
図12〜図19に示す揺動式ベビーベッドに関連する構造は、図7〜図11に示したベッドに適用されるものである。
【0047】
図12〜図15は、揺動式ベビーベッドの一形態を示している。ベビーベッド1は、所定の高さに位置する矩形のベース壁(床板)2と、このベース壁2の周囲を取り囲む囲い枠とを備える。囲い枠は、ベース壁2上に寝かされる乳児の頭側に位置する頭部枠3と、足側に位置する足部枠4と、側面側に位置する1対の側部枠5とを備える。
【0048】
図12では、囲い枠を想像線で示し、また揺動構造を図解的に示している。まず、この図12を参照して、揺動構造の基本的構成を説明する。
【0049】
ベビーベッド1は、必要に応じてベース壁2の上に配置される矩形の寝床部材106と、寝床部材106の頭側端部の上方に位置し、この頭側端部に対してほぼ平行に延びる第1支持枠109と、寝床部材106の足側端部の上方に位置し、この足側端部に対してほぼ平行に延びる第2支持枠110と、寝床部材106の頭側端部と第1支持枠109とを面状に連結し、寝床部材106の頭側端部を浮かせた状態で保持する第1連結部材107と、寝床部材106の足側端部と第2支持枠110とを面状に連結し、寝床部材106の足側端部を浮かせた状態で保持する第2連結部材108とを備える。
【0050】
第1連結部材107および第2連結部材108は、好ましくは、布で作られる。また、寝床部材106は、平らな形態を安定して維持できるような構造とされている。
【0051】
図13は、第1支持枠109および第2支持枠110をより具体的に示している。図示するように、第1支持枠109は、頭部枠3の上端部に着脱可能に取付けられており、頭部枠3の前後に張り出した形状を有している。同様に、第2支持枠110も、足部枠4の上端部に着脱可能に取付けられており、足部枠4の前後に張り出した形状を有している。
【0052】
ベビーベッド1の幅方向に面状に広がった布製の第1連結部材107の先端は、第1支持枠109の上面を通った後に、第1巻芯111に巻かれて固定されている。第1巻芯111は、適当な手段によって、第1支持枠109に固定される。同様に、ベビーベッド1の幅方向に面状に広がった第2連結部材108の先端は、第2支持枠110の上面を通った後に、第2巻芯112に巻かれて固定される。第1巻芯111による巻き長さを調節することにより、第1連結部材107の吊下げ長さを調節できる。同様に、第2巻芯112による巻き長さを調節することにより、第2連結部材108の吊下げ長さを調節できる。第1および第2連結部材の吊下げ長さを調節する手段としては、他に種々の形態のものが考えられる。
【0053】
好ましくは、第1連結部材107および第2連結部材108は、鉛直線方向に延在するようにされる。このことを実現するために、第1支持枠109と第2支持枠110との間隔を、寝床部材106の長さとほぼ同じにする。このような寸法関係であれば、図13において想像線で示すように、寝床部材106は、水平状態を維持しながら平行に揺動運動を行う。
【0054】
ベビーベッド1は、第1連結部材107および第2連結部材108の吊下げ長さを調節することによって、図13に示す揺動可能状態と、図14に示す水平固定状態と、図15に示す傾斜状態の3状態を選択的に取ることが可能である。
【0055】
図13に示す状態では、第1連結部材107および第2連結部材108の両者の吊下げ長さを短くして、寝床部材106をベース壁2から上方に離している。従って、寝床部材106を前後に揺動させることが可能である。第1連結部材107および第2連結部材108は、寝床部材106のほぼ全幅に亘って面状に寝床部材106を吊下げているので、寝床部材106の揺動の方向が定まり、安定した揺動運動を実現できる。乳児をあやすときには、この揺動可能状態とする。
【0056】
図14に示す状態では、第1連結部材107および第2連結部材108の両者の吊下げ長さを長くして、寝床部材106の頭側端部および足側端部の両者をベース壁2に当接させている。従って、寝床部材106の揺動は禁止され、水平に固定した状態となる。乳児を静かに寝かせようとするときには、この水平固定状態とする。
【0057】
図15に示す状態では、第1連結部材107の吊下げ長さを短くして、寝床部材106の頭側端部をベース壁2から上方に離す。寝床部材106の足側端部はベース壁2に当接している。この傾斜状態は、例えば、授乳後の乳児に適用される。乳児の頭が僅かに上方に持上げられるので、乳児はげっぷを出しやすくなる。
【0058】
図12〜図15に示した実施形態では、寝床部材106と1対の側部枠5との間に隙間が形成されている。安全性を考慮して、この隙間を覆うような覆い部材を、寝床部材106と1対の側部枠5との間に設けるようにしてもよい。
【0059】
図16〜図19は、第1連結部材107の長さを調節するための手段の他の例を示している。図示していないが、第2連結部材に対しても、同様の長さ調節手段を設ける。なお、これらの図において、前述の実施形態と同一または相当の要素に対して同一の参照番号を付している。
【0060】
図16および図17に示すように、頭部枠3の上端部に、第1支持枠120が着脱可能に取付けられている。具体的には、頭部枠3の前後に張り出した形態を有する第1支持枠120は、1対の垂下壁120a,120bを有している。これらの垂下壁120a,120bによって頭部枠3の上端部にある肉厚部103aを挟む。一方の垂下壁120aに取付けられたねじ126は、頭部枠3の肉厚部103aに係合し、この係合によって第1支持枠120が頭部枠3から外れないようにしている。
【0061】
第1連結部材107に対する長さ調節手段は、第1支持枠120の上面上に位置変更可能に設けられた調節プレート123を含む。図18は、調節プレート123を単独で示している。調節プレート123は、ベビーベッドの幅方向に延びており、その両端部分に、球状のつまみ125と、係合穴124とを有している。係合穴124は、丸穴124aと、この丸穴124aに連なって前方外側に延びる細溝124bとを有する。第1連結部材107の先端部分は、調節プレート123に連結される。
【0062】
第1支持枠120の上面には、外側係合突起121と内側係合突起122とが前後に間隔をあけて設けられている。図16に示す状態では、調節プレート123の係合穴124の細溝124bが内側係合突起122に係合している。調節プレート123を取り外す場合には、係合穴124の丸穴124aと内側係合突起122とを同じ位置にし、調節プレート123を脱離可能にする。
【0063】
第1連結部材107の吊下げ長さを短くしようとするときには、つまみ125を手で持って調節プレート123を前方の位置に動かし、係合穴124と外側係合突起121とを係合させる。
【0064】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明は、ベビーベッドと大人用ベッドとを兼用できるベッドに有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】揺動式ベビーベッドの形態になっているベッドを示す図解図である。
【図2】寝床部材の頭側端部が僅かに高くされた状態を示す図解図である。
【図3】固定式ベビーベッドの形態になっているベッドを示す図解図である。
【図4】図3に示す状態から、矩形床板の高さを低くした状態を示す図解図である。
【図5】ジュニア用ベッドの形態になっているベッドを示す図解図である。
【図6】大人用ベッドの形態になっているベッドを示す図解図である。
【図7】ベビーベッドの形態となっているベッドの一実施形態を示す斜視図である。
【図8】大人用ベッドの形態に移行する途中段階の形態を示す斜視図である。
【図9】大人用ベッドの形態となっているベッドの一実施形態を示す斜視図である。
【図10】大人用ベッドの形態となっているベッドの一実施形態を示す側面図である。
【図11】折り畳み状態のベッドの一実施形態を示す側面図である。
【図12】揺動式ベビーベッドの形態を図解的に示す斜視図である。
【図13】揺動式ベビーベッドの断面図である。
【図14】寝床部材が固定されている状態を示す断面図である。
【図15】寝床部材が傾斜している状態を示す断面図である。
【図16】第1連結部材の長さを調節するための手段の一例を示す平面図である。
【図17】図16の線A−Aに沿って見た断面図である。
【図18】調節プレートの平面図である。
【図19】第1連結部材の吊下げ長さを短くした状態に対応する長さ調節手段の平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ベッド、2 床板(ベース壁)、2a 脚部、3 頭部枠、3a 内側頭部枠、3b 外側頭部枠、4 足部枠、4a 内側足部枠、4b 外側足部枠、5 左側部枠、6 頭部張出部材、6a 穴、7 足部張出部材、7a 穴、8 ねじ、9 穴、10 ヒンジ、11 キャスタ、20 ベッド、21 床板、22 頭部枠、22a 内側頭部枠、22b 外側頭部枠、23 右側部枠、24 足部枠、24a 屈曲壁、25 ヒンジ、26 ねじ、106 寝床部材、107 第1連結部材、108 第2連結部材、109 第1支持枠、110 第2支持枠、111 第1巻芯、112 第2巻芯、120 第1支持枠、120a,120b 垂下壁、121 外側係合突起、122 内側係合突起、123 調節プレート、124 係合穴、124a 丸穴、124b 細溝、125 つまみ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の床板と、この床板の周囲を取り囲む囲い枠とを備えたベビーベッドのフレームを利用して、
前記矩形床板の上方に位置する空間で乳幼児を揺動可能に支える揺動式ベビーベッドの形態と、
前記囲い枠で取り囲まれて所定の高さに位置する前記矩形床板上に乳幼児を寝かせる固定式ベビーベッドの形態と、
前記固定式ベビーベッドにおける前記矩形床板に比べて、より低い位置で、かつより大きなベッド面積の床板上で人を寝かせる大型ベッドの形態とに切換え可能であることを特徴とする、ベッド。
【請求項2】
前記固定式ベビーベッドの形態において、前記矩形床板は高さ調節可能に設けられている、請求項1に記載のベッド。
【請求項3】
前記大型ベッドの形態は、ベッド面積が相対的に小さいジュニア用ベッドの形態と、ベッド面積が相対的に大きい大人用ベッドの形態とに切換え可能である、請求項1または2に記載のベッド。
【請求項4】
前記大型ベッドの形態における床板は、前記囲い枠の一部を利用して形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載のベッド。
【請求項5】
前記揺動式ベビーベッドの形態におけるベッドは、
一方側端部と他方側端部とを有する矩形の寝床部材と、
前記寝床部材の一方側端部と、前記囲い枠の一方側フレームの上方端とを面状に連結し、前記寝床部材の一方側端部を前記矩形床板から浮かせた状態で保持する第1連結部材と、
前記寝床部材の他方側端部と、前記囲い枠の他方側フレームの上方端とを面状に連結し、前記寝床部材の他方側端部を前記矩形床板から浮かせた状態で保持する第2連結部材とを備える、請求項1〜4のいずれかに記載のベッド。
【請求項6】
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、布である、請求項5に記載のベッド。
【請求項7】
前記布は、前記固定式ベビーベッドの形態または前記大型ベッドの形態において、折畳んだ状態でベッドのフレームに取付けられる、請求項6に記載のベッド。
【請求項8】
前記揺動式ベビーベッドの形態におけるベッドは、前記第1連結部材および前記第2連結部材の少なくともいずれか一方の吊下げ長さを調節するための長さ調節手段を備える、請求項5〜7のいずれかに記載のベッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−34620(P2006−34620A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219150(P2004−219150)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)