説明

ベルトクリーニング装置、ベルト搬送装置及び画像記録装置

【課題】無端ベルトの表面に対し、清掃を必要とする範囲のみに清掃液を散水できるようにすることにより、効率良くクリーニングを行うことのできるベルトクリーニング装置、ベルト搬送装置及び画像記録装置を提供すること。
【解決手段】被搬送物Pを載置して搬送する無端ベルト23の幅方向に亘って清掃液を噴射し、無端ベルト23表面の幅方向に亘って連続した水膜を形成することにより、無端ベルト23表面に付着した異物を洗浄するための散水パイプ40と、無端ベルト23表面に付着した異物の付着幅に応じて散水パイプ40による無端ベルト23の幅方向に亘る散水範囲を可変とする散水範囲変更手段とを有するベルトクリーニング装置及びこれを備えるベルト搬送装置及び画像記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトクリーニング装置、ベルト搬送装置及び画像記録装置に関し、詳しくは、無端ベルト表面に付着した異物を清掃液によって効率的に清掃することのできるベルトクリーニング装置、ベルト搬送装置及び画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙、布帛等の種々の記録媒体に対して高精細な画像を記録する装置として、インクジェット方式による画像記録装置が広く普及している。特に、記録媒体が長尺ウェブ状である場合には、無端ベルトを有するベルト搬送装置を使用し、記録媒体を無端ベルト上に密着させて搬送することが行われている。
【0003】
その際、記録媒体のミスフィードやいわゆる縁なし印刷、インクの裏抜け等のために、記録ヘッドから吐出されたインクが無端ベルトに付着する場合があり、無端ベルトに付着したインクが無端ベルト上に新たに供給されてきた記録媒体に転移して記録媒体を汚してしまう等のトラブルが生じる。
【0004】
また、記録媒体は、その種類によって紙粉や糸くず、前処理剤等の汚染物質を無端ベルト上に付着させる場合があり、これらが無端ベルト上のインクと混合して異物として付着してしまう場合がある。
【0005】
無端ベルトに付着した異物を放置した場合、これが新たに供給される記録媒体の裏面に付着して製品品質を低下させたり、無端ベルトと記録媒体との間の摩擦に影響を与えて記録媒体の搬送を不安定化させたりする問題が生じる。
【0006】
そのため、通常、このようなベルト搬送装置又は画像記録装置には、無端ベルトの表面に付着した異物をクリーニングするためのベルトクリーニング装置が設けられている。
【0007】
従来、無端ベルトの表面をクリーニングする技術として、無端ベルトの表面に当接して摺擦するブラシローラと、このブラシローラに対して清掃液を直接噴射させる噴射筒とを備えるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−242018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無端ベルトの表面をクリーニングする一次清掃手段として、散水パイプから無端ベルト表面に清掃液を直接噴射させるものがある。これは、印字が終了して記録媒体が剥離した無端ベルト上に、無端ベルトの幅方向に配列された複数の散水ノズルからそれぞれ清掃液を直接噴射するものである。各散水ノズルから噴射された清掃液は、無端ベルト表面に衝突して広がり、隣接する散水ノズルからの清掃液同士が繋がることで、無端ベルトの幅方向に亘って連続する水膜を形成する。これにより、インクと紙粉、前処理剤、糸くず等とが混合した異物の濃度を低下させて、その後段に設けられるブラシローラ等の二次清掃手段による異物の除去を容易にすることが目的である。
【0010】
この場合、散水パイプは、無端ベルトの全幅に亘って清掃液を噴射し、幅方向に亘って水膜が途切れることなく散水することができるように、無端ベルトの幅方向の全幅に亘って架け渡され、無端ベルト表面に対向する面に、無端ベルトの全幅に相当する長さに亘って多数の散水ノズルが所定ピッチで配列形成される。
【0011】
しかし、記録媒体が無端ベルトの幅よりも幅狭である場合や、記録媒体上の一部領域のみにインクが吐出されることによって画像が記録される場合等では、記録媒体を裏抜けしたり記録媒体幅からはみ出したりしたインクが無端ベルト表面に付着する領域の幅は、無端ベルトの幅よりも狭くなる場合があり、このような場合、異物が付着する付着幅(異物が付着する領域の無端ベルト幅方向に亘る幅)は無端ベルトの全幅よりも幅狭となる。
【0012】
上記の散水パイプでは、このように異物が付着する幅が幅狭となる場合であっても全ての散水ノズルを使用して無端ベルトの全幅に亘って清掃液を噴射しており、異物が付着していない領域にも散水が行われることによって清掃液が無駄に消費されてしまい、清掃効率が悪い問題があった。
【0013】
しかも、無端ベルトの表面に噴射された清掃液は、無端ベルト上に新たな記録媒体が載置されるまでに除去される必要がある。新たな記録媒体に清掃液が付着すると、インクの滲み等の画像欠陥を発生させてしまうためである。従って、この除去を効率的に行うためにも、散水量は極力少なくすることが望まれるが、異物が付着していない領域にも無駄に清掃液が散水されると、それだけ清掃液の除去不良を発生させる要因が増えるばかりでなく、清掃液の除去のために後段に設けられるスポンジローラや不織布ローラ等の吸液部材の耐久性にも影響を及ぼす問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、無端ベルトの表面に対し、清掃を必要とする範囲のみに清掃液を散水できるようにすることにより、効率良くクリーニングを行うことのできるベルトクリーニング装置を提供することを課題とする。
【0015】
また、本発明は、無端ベルトの表面に対し、清掃を必要とする範囲のみに清掃液を散水できるようにすることにより、効率良くクリーニングを行うことのできるベルト搬送装置を提供することを課題とする。
【0016】
更に、本発明は、無端ベルトの表面に対し、清掃を必要とする範囲のみに清掃液を散水できるようにすることにより、効率良くクリーニングを行うことのできる画像記録装置を提供することを課題とする。
【0017】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0019】
請求項1記載の発明は、被搬送物を載置して搬送する無端ベルトの幅方向に亘って清掃液を噴射し、前記無端ベルト表面の幅方向に亘って連続した水膜を形成することにより、前記無端ベルト表面に付着した異物を洗浄するための散水パイプと、
前記無端ベルト表面に付着した異物の付着幅に応じて、前記散水パイプによる前記無端ベルトの幅方向に亘る散水範囲を可変とする散水範囲変更手段を有することを特徴とするベルトクリーニング装置である。
【0020】
請求項2記載の発明は、前記散水パイプは、固定筒と該固定筒に対して回転可能な回転筒とからなる二重管によって形成され、
前記固定筒は、前記無端ベルト表面に向かい、且つ、前記無端ベルトの幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように軸方向に沿ってスリット状に開口する一つの開口部を有しており、
前記回転筒は、前記無端ベルト表面の幅方向に亘る散水範囲がそれぞれ異なる軸方向に延びる複数の散水ノズル列を、周方向に間隔をおいて有しており、
前記散水範囲変更手段は、前記無端ベルト表面に付着した異物の付着幅に応じて、いずれかの前記散水ノズル列が前記固定筒の前記開口部の位置に一致するように前記回転筒を回転させることにより、散水範囲を変更することを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置である。
【0021】
請求項3記載の発明は、前記散水パイプは、固定筒と該固定筒に対して回転可能な回転筒とからなる二重管によって形成され、
前記固定筒は、前記無端ベルト表面に向かい、且つ、前記無端ベルトの幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように軸方向に沿って開口する一列の散水ノズル列を有しており、
前記回転筒は、軸方向に沿ってスリット状に開口すると共にそれぞれ軸方向の長さが異なる複数の開口部を、周方向に間隔をおいて有しており、
前記散水範囲変更手段は、前記無端ベルト表面に付着した異物の付着幅に応じて、いずれかの前記開口部が前記固定筒の前記散水ノズル列の位置に一致するように前記回転筒を回転させることにより、散水範囲を変更することを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置である。
【0022】
請求項4記載の発明は、前記散水パイプは、固定筒と該固定筒に対して回転可能な回転筒とからなる二重管によって形成され、
前記固定筒は、前記無端ベルト表面に向かい、且つ、前記無端ベルトの幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように軸方向に沿って開口する一列の散水ノズル列を有しており、
前記回転筒は、その周方向に沿って開口幅が狭幅から次第に広幅に変化するように形成された一つの開口部を有しており、
前記散水範囲変更手段は、前記無端ベルト表面に付着した異物の付着幅に応じて、前記開口部のいずれかの開口幅が前記固定筒の前記散水ノズル列の位置に一致するように前記回転筒を回転させることにより、散水範囲を変更することを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置である。
【0023】
請求項5記載の発明は、前記散水パイプへ清掃液を供給する供給ポンプを有し、
前記散水範囲変更手段は、散水範囲の変更に伴って、前記散水パイプからの清掃液の単位時間当たりの噴射量が、各散水範囲で等しくなるように、前記供給ポンプの駆動量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベルトクリーニング装置である。
【0024】
請求項6記載の発明は、前記回転筒に形成された前記散水ノズル列の各々におけるノズルの開口面積の総和が、複数の前記散水ノズル列で等しいことを特徴とする請求項2記載のベルトクリーニング装置である。
【0025】
請求項7記載の発明は、被搬送物を上面に載置して搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルト表面のクリーニングを行うための請求項1〜6のいずれかに記載のベルトクリーニング装置を備えることを特徴とするベルト搬送装置である。
【0026】
請求項8記載の発明は、記録媒体を上面に載置して搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルトに載置された前記記録媒体上に画像データに基づいてインクを吐出して記録を行う記録手段と、
前記無端ベルト表面のクリーニングを行うための請求項1〜6のいずれかに記載のベルトクリーニング装置を備えることを特徴とする画像記録装置である。
【0027】
請求項9記載の発明は、前記画像データから前記記録手段による前記記録媒体に対する記録幅の情報を取得する記録幅取得手段を有し、
前記散水範囲変更手段は、前記記録幅取得手段によって取得された前記記録幅の情報に応じて、散水範囲が該記録幅に対応する範囲となるように前記散水パイプによる散水範囲を変更することを特徴とする請求項8記載の画像記録装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、無端ベルトの表面に対し、清掃を必要とする範囲のみに清掃液を散水できるようにすることにより、効率良くクリーニングを行うことのできるベルトクリーニング装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、無端ベルトの表面に対し、清掃を必要とする範囲のみに清掃液を散水できるようにすることにより、効率良くクリーニングを行うことのできるベルト搬送装置を提供することができる。
【0030】
更に、本発明によれば、無端ベルトの表面に対し、清掃を必要とする範囲のみに清掃液を散水できるようにすることにより、効率良くクリーニングを行うことのできる画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る画像記録装置の一例を示す概略構成図
【図2】ベルトクリーニング装置における散水パイプが配設された部分の詳細を示す斜視図
【図3】散水パイプの断面図
【図4】画像記録装置の制御構成の概略を示すブロック図
【図5】制御テーブルの一例を示す図
【図6】制御テーブルの他の一例を示す図
【図7】散水パイプの他の態様を示す断面図
【図8】散水パイプの他の態様を示す図
【図9】散水パイプの他の態様を示す図
【図10】異物の付着幅を検出するための他の態様を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0033】
図1は、本発明に係る画像記録装置の一例を示す概略構成図であり、図中、1は画像記録装置であり、この画像記録装置1は、ベルト搬送装置2、記録ヘッド3、ベルトクリーニング装置4を備えている。
【0034】
ベルト搬送装置2は、所定の間隔をおいて平行に配置された複数(図示の例では2つ)のローラ21、22に亘って所定幅の無端ベルト23が張架されている。これらローラ21、22間に架け渡された無端ベルト23の上面は、記録媒体Pを密着させて載置する載置面とされている。
【0035】
一方のローラ21は図示しない副走査モータに対して駆動力を伝達可能に接続された駆動ローラ、他方のローラ22は従動ローラであり、駆動ローラ21が副走査モータの回転駆動によって、図1において反時計回りに所定の速度で回転することにより、従動ローラ22との間に架け渡された無端ベルト23を回転移動させ、その上面に載置される記録媒体Pを副走査方向である図中のA方向に向けて搬送するようになっている。
【0036】
記録媒体Pには、例えば、紙、布帛、プラスチックフィルム、ガラス板等、インクジェット記録に通常使用される記録媒体を使用することができる。記録媒体Pは所定サイズに裁断されたシート状であってもよいし、ロール状に巻回された元巻きから連続して繰り出される長尺状であってもよい。特に、布帛は、インクが裏抜けし易いため、無端ベルト23の表面にインクが付着するおそれが高く、後述するベルトクリーニング装置4を備えることによって特に顕著な効果が得られるために好ましい。
【0037】
記録ヘッド3は、無端ベルト23上の記録媒体Pが載置される面の上方に所定の間隔をおいて配設されており、その下面に設けられた多数のノズルからインク滴を吐出することにより、記録媒体P上に所望の画像を記録するインクジェットヘッドである。この記録ヘッド3は、図示しないキャリッジに搭載されて、画像記録時に間欠的に搬送される記録媒体Pの搬送方向と直交する主走査方向に往復移動するシャトル型の記録ヘッドであってもよいし、無端ベルト23の幅方向に亘って固定状に架け渡され、連続的に搬送される記録媒体P上にインク滴を吐出することによって画像を記録するライン型の記録ヘッドであってもよい。
【0038】
ベルトクリーニング装置4は、本発明において駆動ローラ21の近傍に配置されており、無端ベルト23の回転移動方向に沿って順に配設される散水パイプ40、ブラシローラ41を有している。
【0039】
このうち散水パイプ40は、一次清掃手段であり、その下方に配置される清掃桶42に貯留された清掃液を供給ポンプ43の駆動によって無端ベルト23の表面に向けて噴射することにより、該無端ベルト23の表面に付着した異物を洗浄する。この散水パイプ40の詳細については更に後述する。
【0040】
ブラシローラ41は、二次清掃手段であり、無端ベルト23の全幅に亘って架け渡された回転軸の周囲にブラシ毛が植毛されてローラ状に形成されている。ブラシ毛の先端は、散水パイプ40による散水位置よりも無端ベルト23の回転移動方向の下流側において無端ベルト23の表面に常時接触状態にあり、不図示の駆動モータによって無端ベルト23の回転移動方向と逆方向に回転することにより、該無端ベルト23の表面を摺擦し、上流側の散水パイプ40による清掃液の散水によって洗浄された異物を除去する。
【0041】
ブラシローラ41の下部は、清掃桶42内の清掃液に一部浸漬しており、回転時に清掃液を掻き上げることにより、異物の除去効果を高めている。
【0042】
図2は、ベルトクリーニング装置4における散水パイプ40が配設された部分の詳細を示す斜視図である。
【0043】
散水パイプ40は、駆動ローラ21に架け渡された部分の無端ベルト23の幅方向に亘って清掃液を直接噴射するように、該無端ベルト23の全幅に亘る長さを有している。散水パイプ40の無端ベルト23の表面に対向する部分には、その長さ方向に亘って多数の散水ノズル(図2では示されていない。)が配列されている。これらの散水ノズルから無端ベルト23の表面に噴射された清掃液は、無端ベルト23表面に衝突して上下左右に広がり、隣接する散水ノズルからの清掃液同士が繋がることで、無端ベルト23の幅方向に亘って連続する水膜を形成し、無端ベルト23の表面を洗浄することにより、インクを含む異物の濃度を低下させる。
【0044】
散水パイプ40から噴射される清掃水は、清掃桶42から散水チューブ44aを介して供給ポンプ43まで導入され、供給ポンプ43の駆動によって散水チューブ44bを介して供給される。散水パイプ40から無端ベルト23表面に噴射された清掃液は、その下方の清掃桶42内に滴下し、再利用されるようになっている。
【0045】
なお、図2において、45は散水チューブ44aに導入される清掃液中のゴミ等の不純物を取り除くフィルタ、46は不図示の清掃液供給装置から清掃桶42内に清掃液を供給する清掃液供給パイプ、47は清掃桶42内の所定量を越える清掃液を排水するためのオーバーフロー管である。
【0046】
この散水パイプ40の更に詳細な構成を図3に示す。図3(a)〜(c)は散水パイプ40の断面図であり、左図は軸方向に沿う断面図、右図は軸方向と直交する方向の断面図である。
【0047】
散水パイプ40は、回転不能に設けられる固定筒401と該固定筒401に対して回転可能に設けられる回転筒402とからなる二重管構造を呈している。ここでは、固定筒401を外筒、回転筒402を内筒としており、回転筒402が固定筒401の内部に軸周りに回転可能に挿入されることによって二重管を構成している。回転筒402の一端は閉塞されており、他端には散水チューブ44bが接続され、清掃液が供給されるようになっている。
【0048】
固定筒401には、無端ベルト23の表面に向かい、且つ、無端ベルト23の幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように、その軸方向に沿ってスリット状に開口する一つの開口部401aが形成されている。
【0049】
一方、回転筒402には多数の散水ノズルnが配列されてなる散水ノズル列が軸方向に延びるように形成されており、この散水ノズル列の長さによって無端ベルト23の表面の幅方向に亘る散水範囲が規定される。そして、回転筒402には、この散水ノズル列が、無端ベルト23の表面の幅方向に亘る散水範囲がそれぞれ異なる複数の散水ノズル列402a、402b、402cからなっており、これら散水ノズル列402a、402b、402cが周方向に間隔をおいて配置されている。ここでは3種類の散水ノズル列を示すが、散水ノズル列の種類は複数であればよく、3種類に限定されない。
【0050】
散水ノズル列402aは、図3(a)に示すように、固定筒401の開口部401aのほぼ全長に亘って散水ノズルnが配列されることによって形成されており、本実施形態において散水幅が最も広い最大散水範囲W1に亘って清掃液を噴射するようになっている。
【0051】
散水ノズル列402bは、図3(b)に示すように、固定筒401の開口部401aの全長の半分程度の長さ範囲に散水ノズルnが配列されることによって形成されており、本実施形態において散水幅が中程度である散水範囲W2に亘って清掃液を噴射するようになっている。
【0052】
散水ノズル列402cは、図3(c)に示すように、固定筒401の開口部401aの中央部付近に散水ノズルnが配列されることによって形成されており、本実施形態において散水幅が最も狭い最小散水範囲W3に亘って清掃液を噴射するようになっている。
【0053】
この回転筒402は、その一端において、例えばステッピングモータからなるアクチュエータ403に対して駆動力を伝達可能に接続されており、このアクチュエータ403の駆動を受けて固定筒401に対して軸周りに所定角度で回転することによって、いずれかの散水ノズル列402a、402b、402cを、固定筒401の開口部401aの位置に選択的に一致させる。これにより散水チューブ44bを介して供給される清掃液は、開口部401aと一致するいずれかの散水ノズル列402a、402b、402cから無端ベルト23の表面に向けて、該開口部401aと一致した散水ノズル列402a、402b、402cの散水範囲W1、W2、W3に応じて噴射される。
【0054】
このため、無端ベルト23の表面に付着した異物の付着幅に応じて、いずれかの散水ノズル列402a、402b、402cが固定筒401の開口部401aの位置に一致するように回転筒402を回転させることにより、散水範囲W1、W2、W3を容易に変更することができる。本実施形態では、固定筒401、回転筒402及びアクチュエータ403が本発明の散水範囲変更手段を構成している。
【0055】
すなわち、異物の付着幅が無端ベルト23のほぼ全幅に相当する場合は、アクチュエータ403の駆動によって回転筒402を所定角度回転させ、散水ノズル列402aを固定筒401の開口部401aに一致させることにより、最大散水範囲W1で清掃液の噴射を行うことができる。
【0056】
また、異物の付着幅が無端ベルト23の中程度の幅に相当する場合は、アクチュエータ403の駆動によって回転筒402を所定角度回転させ、散水ノズル列402bを固定筒401の開口部401aに一致させることにより、中程度の散水範囲W2で清掃液の噴射を行うことができる。
【0057】
更に、異物の付着幅が無端ベルト23の中央部付近のみに相当する場合は、アクチュエータ403の駆動によって回転筒402を所定角度回転させ、散水ノズル列402cを固定筒401の開口部401aに一致させることにより、最小散水範囲W3で清掃液の噴射を行うことができる。
【0058】
これにより、無端ベルト23の表面に対し、異物が付着した清掃を必要とする範囲のみに清掃液を散水することができるようになり、効率良くクリーニングを行うことができるようになる。
【0059】
本発明において、アクチュエータ403の駆動による回転筒402の所定角度の回転動作は、例えばオペレータが無端ベルト23の表面の異物の付着状況を確認し、付着幅が幅広、幅狭、その中間のいずれであるかを判断することにより、選択スイッチ、キーボード、タッチパネル等の適宜の入力手段から手入力による入力操作を行うことによって実行するようにしてもよいが、異物の付着幅は、インクが吐出される範囲とほぼ一致することから、以下に説明するように、画像記録装置1が画像データから得られる記録幅に応じて自動的に行われるようにすることが好ましい。
【0060】
図4は、この構成を実現するための画像記録装置1の制御構成の概略を示すブロック図である。
【0061】
記録ヘッド3によって記録すべき画像データが取得され、画像メモリ101に格納されると、制御部100は、その画像データから記録ヘッド3に出力するための吐出データを生成する。この吐出データは、記録媒体Pの幅方向、すなわち無端ベルト23の幅方向に亘る記録幅の情報を含むため、制御部100は画像データから記録幅の情報を取得することができる。
【0062】
画像データから記録幅の情報を取得した制御部100は、その記録幅の情報に応じて、散水パイプ40によって散水すべき散水範囲が、その記録幅に対応する範囲となるように、アクチュエータ403に所定の駆動信号を出力し、異物の付着幅に応じた最適ないずれかの散水範囲W1、W2、W3を選択する。
【0063】
このような制御を実行する際は、図5に示すように、予め記録幅の情報と選択すべき最適な散水範囲との対応関係を規定した制御テーブルT1を用意して制御部100内又は不図示のメモリ等に格納しておき、画像データから記録幅を取得した制御部100が、この制御テーブルT1を参照することによって実行することができる。
【0064】
なお、入力操作方法が手入力の場合も、図4に示すように、制御部100に対して入力手段から手入力による信号が入力される制御構成となる。
【0065】
ところで、本実施形態では、各散水ノズルnの穴径は約2mmで均一であり、最大散水範囲W1で供給ポンプ43を駆動させた時に、所定の噴射圧が得られるように、最大送液量19.5L/min、最高揚程9.3mの供給ポンプ43を使用している。ここで、最大散水範囲W1で散水を行っていた状態から、供給ポンプ43の供給量を変えずに、回転筒402を回転させて散水範囲W2又はW3に変更すると、清掃液を噴射可能な散水ノズルnの数が減少することによって、散水範囲の縮小につれて噴射圧が高くなってしまう問題がある。噴射圧が高くなると、清掃液が大きく飛び散ってしまい、装置周囲を汚染するばかりでなく、無端ベルト23から剥離したばかりの記録媒体Pにも付着して画像に損害を与えるおそれがある。
【0066】
この場合、制御部100は、散水範囲の変更に伴って、散水パイプ40からの清掃液の単位時間当たりの噴射量が、各散水範囲W1、W2、W3で等しくなるように、供給ポンプ43の駆動量を変更することが好ましい。これにより、散水範囲を最大散水範囲W1からW2又はW3に縮小させても、散水パイプ40からの清掃液の噴射圧は等しくなり、装置周囲へ飛び散ったり、記録媒体Pに付着したりする問題を回避することができる。
【0067】
このような制御を実行する際は、図6に示すように、図5に示した制御テーブルT1に加えて更にポンプ供給量(ポンプ駆動量)との対応関係を規定した制御テーブルT2を用意して制御部100内又は不図示のメモリ等に格納しておき、画像データから記録幅を取得した制御部100が、この制御テーブルT2を参照することによって実行することができる。
【0068】
また、散水範囲によって噴射圧が異なる問題は、供給ポンプ43の駆動量を変更する代わりに、回転筒402に形成される散水ノズル列402a、402b、402cの各々における散水ノズルnの開口面積の総和(散水ノズル列内の1つの散水ノズルの開口面積×当該散水ノズル列内のノズル数)を、各散水ノズル列402a、402b、402cで等しくすることによって解決することもできる。
【0069】
例えば、散水ノズル列402aに対して散水ノズル列402b、402cは、徐々に散水ノズルnの数が減少するので、散水ノズル列402b、402cの各散水ノズルnの穴径を、散水範囲が狭くなるにつれて大きく形成すれば、散水ノズルnの数が減少しても、散水ノズル列全体の散水ノズルnの開口面積の総和を等しくすることができる。これにより、散水範囲を最大散水範囲W1からW2又はW3に縮小させても、散水パイプ40からの清掃液の噴射圧は等しくなり、装置周囲へ飛び散ったり、記録媒体Pに付着したりする問題を回避することができる。
【0070】
以上説明した散水パイプ40は、固定筒401を外筒、回転筒402を内筒としたが、図7に示すように、固定筒401を内筒、回転筒402を外筒とした二重管構造にしても同様の効果が得られる。
【0071】
また、散水パイプ40のその他の態様を図8、図9に示す。
【0072】
図8に示す散水パイプ40Aは、固定筒401を内筒、回転筒402を外筒とした例である。(a)は固定筒401と回転筒402を分解した状態、(b)は回転筒402内に固定筒401を挿入した完成状態を示している。
【0073】
固定筒401には、無端ベルト23の表面に向かい、且つ、無端ベルト23の幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように、その軸方向に沿って多数の散水ノズルnが配列されている。
【0074】
一方、回転筒402には、無端ベルト23の表面の幅方向に亘る散水範囲を異ならせるための複数の開口部402d、402e、402fが、それぞれ軸方向に沿って長さを異ならせ、周方向に間隔をおいて配置されている。
【0075】
散水パイプ40Aは、外筒となる回転筒402内に固定筒401を挿入し、この固定筒401の一端に散水チューブ44bを接続すると共に、外側の回転筒402にアクチュエータ403を接続することにより構成される。従って、アクチュエータ403によって外側の回転筒402を回転させて、いずれかの開口部402d、402e、402fを内側の固定筒401の散水ノズル列と一致させることにより、散水ノズルnからの散水範囲を所望の範囲に変更することができる。
【0076】
図9に示す散水パイプ40Bも、固定筒401を内筒、回転筒402を外筒とした例である。(a)は固定筒401と回転筒402を分解した状態、(b)は回転筒402内に固定筒401を挿入した完成状態を示している。
【0077】
固定筒401には、無端ベルト23の表面に向かい、且つ、無端ベルト23の幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように、その軸方向に沿って多数の散水ノズルnが配列されている。
【0078】
一方、回転筒402には、無端ベルト23の表面の幅方向に亘る散水範囲を異ならせるための開口部402gが形成されているが、この開口部402gは、回転筒402の周方向に沿って、軸方向の開口長さが短から長に連続して変化するように形成されている。従って、この開口部402gは、略台形状となる一つの開口からなっている。
【0079】
散水パイプ40Bは、外筒となる回転筒402内に固定筒401を挿入し、この固定筒401の一端に散水チューブ44bを接続すると共に、外側の回転筒402にアクチュエータ403を接続することにより構成される。従って、アクチュエータ403によって外側の回転筒402を回転させると、開口部402gから露出する内側の固定筒401の散水ノズルnの数だけ清掃液の噴射がなされるので、散水ノズルnからの散水範囲を所望の範囲に変更することができる。
【0080】
これら図8、図9に示す各散水パイプ40A、40Bの例においても、固定筒401を内筒、回転筒402を外筒とした二重管構造にしても同様の効果が得られる。
【0081】
以上説明した各態様において、散水パイプ40、40A、40Bは、いずれもアクチュエータ403の駆動によって散水範囲を変更するようにしたが、オペレータによって手動で散水範囲を変更するようにしてもよい。この場合は、図示しないが、散水パイプ40、40A、40Bの回転筒402の端部に手動操作用の摘みやレバー等を設けておき、オペレータが無端ベルト23表面の異物の付着幅に応じて回転操作することにより、散水範囲を変更できるようにすればよい。
【0082】
また、異物の付着幅の判断は、オペレータの目視判断によって手入力によって行う方法や画像データから取得する方法に代えて、図10に示すように、無端ベルト23の表面に対して非接触で異物の有無を検出できる異物付着確認用のセンサ12によって直接センサリングすることによって行うこともできる。
【0083】
ここでは、記録媒体Pが剥離した直後の無端ベルト23の表面に対向するように、その全幅に亘る長さでセンサ12を設けている。センサ12の検出信号は制御部100に送信される。制御部100では、センサ12の検出信号から、無端ベルト23の表面の異物の付着幅を判別し、その付着幅に応じて、図4と同様の制御構成によってアクチュエータ403に対して所定の駆動信号を出力することにより、散水パイプ40(40A、40B)における回転筒402の回転角を制御して散水範囲を変更する。
【0084】
このようなセンサ12は、無端ベルト23の表面の異物を非接触で検出できるものであればよい。例えば、インクを含む異物の色が無端ベルト23の表面の色と異なることを利用して、フォトセンサ等のカラーセンサを使用することができる。また、異物を直接画像として認識し、ベルト表面の汚染状況を確認するCCD等のイメージセンサを使用することもできる。これらによって無端ベルト23の表面に所定濃度以上の部分の存在を検出し、これを異物付着領域と認識してその幅を検出することにより異物の付着幅を検出することができる。
【0085】
また、以上説明した態様では、ブラシローラ41が一部浸漬している清掃桶42内の清掃液を使用するようにしたが、散水パイプから噴射する清掃液は独立した清掃桶から供給されるようにしてもよい。
【0086】
更に、散水パイプへの清掃液の供給は、清掃桶内の清掃液を再利用せず、常に新しい清掃液が散水パイプから噴射されるようにしてもよい。この場合、散水範囲を変更することによって、無駄な清掃液の消費が防止されると共に、廃液量も低減することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:画像記録装置
100:制御部
101:画像メモリ
12:センサ
2:ベルト搬送装置
21:駆動ローラ
22:従動ローラ
23:無端ベルト
3:記録ヘッド
4:ベルトクリーニング装置
40、40A、40B:散水パイプ
401:固定筒
401a:開口部
402:回転筒
402a、402b、402c:散水ノズル列
402d、402e、402f、402g:開口部
403:アクチュエータ
41:ブラシローラ
42:清掃桶
43:供給ポンプ
44a、44b:散水チューブ
45:フィルタ
46:清掃液供給パイプ
47:オーバーフロー管
P:記録媒体
T1、T2:制御テーブル
n:散水ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を載置して搬送する無端ベルトの幅方向に亘って清掃液を噴射し、前記無端ベルト表面の幅方向に亘って連続した水膜を形成することにより、前記無端ベルト表面に付着した異物を洗浄するための散水パイプと、
前記無端ベルト表面に付着した異物の付着幅に応じて、前記散水パイプによる前記無端ベルトの幅方向に亘る散水範囲を可変とする散水範囲変更手段とを有することを特徴とするベルトクリーニング装置。
【請求項2】
前記散水パイプは、固定筒と該固定筒に対して回転可能な回転筒とからなる二重管によって形成され、
前記固定筒は、前記無端ベルト表面に向かい、且つ、前記無端ベルトの幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように軸方向に沿ってスリット状に開口する一つの開口部を有しており、
前記回転筒は、前記無端ベルト表面の幅方向に亘る散水範囲がそれぞれ異なる軸方向に延びる複数の散水ノズル列を、周方向に間隔をおいて有しており、
前記散水範囲変更手段は、前記無端ベルト表面に付着した異物の付着幅に応じて、いずれかの前記散水ノズル列が前記固定筒の前記開口部の位置に一致するように前記回転筒を回転させることにより、散水範囲を変更することを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置。
【請求項3】
前記散水パイプは、固定筒と該固定筒に対して回転可能な回転筒とからなる二重管によって形成され、
前記固定筒は、前記無端ベルト表面に向かい、且つ、前記無端ベルトの幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように軸方向に沿って開口する一列の散水ノズル列を有しており、
前記回転筒は、軸方向に沿ってスリット状に開口すると共にそれぞれ軸方向の長さが異なる複数の開口部を、周方向に間隔をおいて有しており、
前記散水範囲変更手段は、前記無端ベルト表面に付着した異物の付着幅に応じて、いずれかの前記開口部が前記固定筒の前記散水ノズル列の位置に一致するように前記回転筒を回転させることにより、散水範囲を変更することを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置。
【請求項4】
前記散水パイプは、固定筒と該固定筒に対して回転可能な回転筒とからなる二重管によって形成され、
前記固定筒は、前記無端ベルト表面に向かい、且つ、前記無端ベルトの幅方向に亘る最大散水範囲に対応するように軸方向に沿って開口する一列の散水ノズル列を有しており、
前記回転筒は、その周方向に沿って開口幅が狭幅から次第に広幅に変化するように形成された一つの開口部を有しており、
前記散水範囲変更手段は、前記無端ベルト表面に付着した異物の付着幅に応じて、前記開口部のいずれかの開口幅が前記固定筒の前記散水ノズル列の位置に一致するように前記回転筒を回転させることにより、散水範囲を変更することを特徴とする請求項1記載のベルトクリーニング装置。
【請求項5】
前記散水パイプへ清掃液を供給する供給ポンプを有し、
前記散水範囲変更手段は、散水範囲の変更に伴って、前記散水パイプからの清掃液の単位時間当たりの噴射量が、各散水範囲で等しくなるように、前記供給ポンプの駆動量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のベルトクリーニング装置。
【請求項6】
前記回転筒に形成された前記散水ノズル列の各々におけるノズルの開口面積の総和が、複数の前記散水ノズル列で等しいことを特徴とする請求項2記載のベルトクリーニング装置。
【請求項7】
被搬送物を上面に載置して搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルト表面のクリーニングを行うための請求項1〜6のいずれかに記載のベルトクリーニング装置を備えることを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項8】
記録媒体を上面に載置して搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルトに載置された前記記録媒体上に画像データに基づいてインクを吐出して記録を行う記録手段と、
前記無端ベルト表面のクリーニングを行うための請求項1〜6のいずれかに記載のベルトクリーニング装置を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項9】
前記画像データから前記記録手段による前記記録媒体に対する記録幅の情報を取得する記録幅取得手段を有し、
前記散水範囲変更手段は、前記記録幅取得手段によって取得された前記記録幅の情報に応じて、散水範囲が該記録幅に対応する範囲となるように前記散水パイプによる散水範囲を変更することを特徴とする請求項8記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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