説明

ベルトコンベヤのベルト蛇行制御装置

【課題】ベルトコンベヤのベルトの片寄り走行や蛇行を、迅速にかつ正確に修正することのできる蛇行制御装置を提案する。
【解決手段】駆動プーリとテールプーリとの間にベルトを張架してなるベルトコンベヤにおいて、このベルトコンベヤのテールプーリ部に、張架ベルトの平面内で回転するように支持された可動支持枠を設け、その可動支持枠内にテールプーリを軸支収容すると共に、この可動支持枠の後部側に支持枠回転機構を連結した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベヤのベルト蛇行制御装置に関し、とくに鉄鉱石や石灰石、焼結鉱などの鉱石類、石炭やコークスその他の粉粒状物の搬送に用いるベルトコンベヤの、ベルトの蛇行を修正する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベヤは、複数のローラ(駆動プーリおよびテールプーリ)間にベルトを掛け渡し、そのうちいずれか一つまたは複数のプーリを回転駆動させることによってベルトをエンドレスに循環移動させ、このベルトの上面に載せた各種の物品を所定の場所まで搬送するようにした装置である。このベルトコンベヤが抱える課題は、コンベヤ駆動中に、ベルトが片寄り走行を起こしたり、蛇行したりすることにあり、このことによってベルトがローラから外れたり、ベルトの幅方向端部(側縁部)がローラの鍔等と擦過して損傷しやすくするという点にある。しかも、ベルトコンベヤのベルトが片寄り走行を始め、ひいては蛇行を起すようになると、荷崩れの発生やベルトの側縁部(耳部)の摩耗、プーリへの過度の負荷によって火災を発生するという問題などもあった。
【0003】
このような問題に対し、従来、ベルト1の片寄り走行や蛇行は、図1に示すような片寄りスイッチ2a、2bや目視等によって確認できるが、この場合たとえば、その片寄り走行がベルトの機長(進行)方向の中間部であれば、自動調芯ローラーとか、キャリアローラスタンドの調整によって修正が可能である。しかし、その片寄り走行や蛇行がテールプーリ3付近で起った場合は、テールプーリ3自体の姿勢制御が、しかも早急に回復させることが必要である。
【0004】
例えば、ベルト1が進行方向に向かって右に片寄っていれば、作業員がテールプーリ軸の右側にある水平移動用スクリュー装置4aを使ってベルト1が緊張する方向(矢印)に移動するように調整している。そして、もしその蛇行がそれでも改善されないようであれば、該作業をさらに繰り返して調整するようにしている。これに対し、ベルト1が左側に片寄っていれば、同様にして反対側のスクリュー装置4bにて調整するようにしている。このような調整作業はベルト1を停止して実施するのが普通であるが、多くの場合、片寄り走行の修正には長時間を要するので、時間的な制約もあって作業員が運転しながら実施することが多く危険な作業となっていた。この場合は、作業員がしばしば被災する事故を招くことから、その解決が強く求められている。
【0005】
このような要求に対して、例えば、特許文献1には、テールプーリ部での調整作業を、格別の修正装置を使用することなく、支持フレームの自己復元機能を利用することによって、ベルトの蛇行防止を図る技術が開示されている。
【特許文献1】実開平1−83713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した図1に示す従来技術では、作業員がスクリューを直接調整する方法であるから、作業に危険を伴うという欠点がある。また、特許文献1に記載の方法は、回転可能に支持した支持フレームをベルト内張力によって自己復元させる蛇行防止方法・装置であるから、簡便ではあるが蛇行制御の正確性に欠ける他、応答の遅れを生じてベルト縁部の損傷が起りやすいという課題が残った。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ベルトコンベヤのベルトの片寄り走行や蛇行を迅速にかつ正確にしかも安全に修正することのできる蛇行制御装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の実現に向けた検討の中で、発明者らは、下記に示す要旨構成からなる装置、とりわけ回転自在に支持されるテールプーリ支持用の可動支持枠を、蛇行検知用センサーと支持枠回転機構とを使って回転させるようにすると、ベルトの蛇行等の修正を、迅速、正確、安全に行うことができることを確認し、本発明を開発した。
【0009】
即ち、本発明は、駆動プーリとテールプーリとの間にベルトを張架してなるベルトコンベヤのそのテールプーリを、ベルト平面内で回転可能に軸支すると共に、該ベルトの側縁部に沿う位置には片寄りスイッチを配設してなるベルト蛇行制御装置において、ベルトコンベヤのテールプーリ部に、張架ベルトの平面内において回転するように支持された可動支持枠を設け、その可動支持枠内に前記テールプーリを軸支収容すると共に、この可動支持枠の後部側には支持枠回転機構を連結してなることを特徴とするベルトコンベヤのベルト蛇行制御装置である。
【0010】
また、本発明に係るベルト蛇行制御装置は、前記支持枠回転機構は、可動支持枠のベルト張架側とは反対側に当る後部側の幅方向両端部にそれぞれ、電動シリンダ、油圧・空圧シリンダ、電動スクリューの如きシリンダ型駆動機を取付けて構成されたものであること、そして、前記支持枠回転機構は、前記片寄りスイッチからの信号を蛇行検出器を介して前記左・右のシリンダ型駆動機の少なくとも一方に出力して、このシリンダ型駆動機のシリンダロッドを伸縮させることにより、該支持枠をベルト平面内において回転させるようにしたものが好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された本発明のベルト蛇行制御装置によれば、ベルトコンベヤのテール部付近で発生するベルトの片寄り走行や蛇行を、迅速、正確に修正することができると共に、この修正作業を安全に行うことができる。従って、本発明によれば、ベルトがテールプーリから外れたり、ベルトの側縁が損傷をするようなことがなく、メインテナンスが著しく軽減される。さらに本発明によれば、ベルトの過度の片寄り走行による荷崩れの発生がなく、作業負荷も軽減されるので、ベルト寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図2および図3は、本発明に係るベルト蛇行制御装置の一実施形態を示すものである。例示した装置は、ベルトコンベヤのテールプーリ部分(駆動プーリ側の図示は省略した)を示している。そのテールプーリ3は、井桁状直方体を好適例とする可動支持枠5内に、一対の軸受6にて回転自在に軸支されており、その可動支持枠5は、その上・下に取付けた回転軸8a、8bにて、該可動支持枠と略同形の固定枠7中に、ベルト平面内で回転するように軸支されているものである。なお、図示の9a、9bは回転軸用軸受箱である。
【0013】
このように、可動支持枠5をベルト平面内で回転させることにより、ベルト1は、その幅方向の両端部に生じている張力差をバランスさせることができ、このことによってベルト走行の片寄りや蛇行を防止できるようになる。なお、ベルト全体の張力調整は、前記軸受6部に設けたボルト(図示を省略)を使って調整する。
【0014】
このベルトコンベヤには、前記可動支持枠5内に軸支収容したテールプーリ3と、図示を省略した駆動プーリとの間で、ベルト1を張架して構成されているが、そのテールプーリ3の下流側には、走行ベルトの両側縁に当接し得る位置にそれぞれ、ローラ型の片寄りスイッチ2a、2bが配設されている。これらの片寄りスイッチ2a、2bは蛇行検出器10、10’に接続されて蛇行センサーを形造り、ベルトの片寄り走行や蛇行を迅速に検出するのに有効である。
【0015】
そして、回転可能な前記可動支持枠5には、ベルト張架側とは反対側に当る後部側に、これを回転させるための支持枠回転機構Mが取付けられている。この支持枠回転機構Mは、可動支持枠5の後部側の幅方向両端部、即ち、テールプーリ3の両端部相当位置に、左右一対のシリンダ型駆動機11、12を取付けて構成される。
【0016】
これらの左右一対のシリンダ型駆動機11、12は、前記蛇行検出器10,10’からの蛇行制御信号に基づき、協働してあるいは独立して、シリンダロッド11a、12aをベルト走行方向に押し込みまたは牽引する向きに伸縮することによって、前記可動支持枠5ひいてはテールプーリ3をベルト平面内においていずれかの方向に回転させ、ベルト1にかかる張力をベルト幅方向で変化させるために用いられる。このシリンダ型駆動機11、12の採用によって、本発明では、ベルトの片寄り走行や蛇行を短時間のうちに修正制御することができるようになる。
【0017】
なお、かかるシリンダ型駆動機11、12は、電動シリンダ、油圧式シリンダ、空圧式シリンダあるいは電動スクリューのような、シリンダロッド11a、12aを伸縮させる駆動機が有利に適合する。これらのうちのいずれの形式を採用するかは、駆動制御のし易さやコスト、コンベヤベルトの容量、機能等を考慮して適宜に選ぶことが好ましい。ただし、いずれのシリンダ型駆動機11、12の場合も、前記シリンダロッド11a、12aのストローク位置情報と任意の移動量、任意の停止位置制御ができるようなものでなくてはならない。図示した例は、ポテンションメーター付き電動シリンダを用いた例を示している。
【0018】
このような装置構成において、例えば、片寄りスイッチ2b側が作動したら+方向、2a側の片寄りスイッチが作動したら−方向と定義し、2b側の片寄りスイッチがある時間作動が連続している場合(例えば、10秒間)、支持枠回転機構のシリンダ型駆動機12を+方向に一単位量だけ動かすようにする(図示例の方向に1mm)。この場合、2a側のシリンダ型駆動機11のロッド伸縮方向は2b側のそれとは反対方向になる。
【0019】
そして、もし可動支持枠5(テールプーリ3)を、1単位+方向に作動させてもなお、片寄りスイッチ2bが10秒連続して作動するようであれば、さらに一単位、該シリンダ駆動機12を作動させる。このような操作を繰り返すことにより、+側のベルトの片寄り、蛇行を解消させる。
【0020】
一方、もし2a側片寄りスイッチが作動すれば、シリンダ型駆動機11を−方向に1単位づつ作動させることにより、片寄りを解消する。このような一連の作動は、シーケンシャルに回路を構成してもよいし、現地でマニアルで運転してもかまわないが、本発明装置によれば、いずれの方法であっても所期した目的(安全性)を果すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のベルト蛇行制御装置は、搬送物の種類に限定されることはなく、いずれの分野で使用されるベルトコンベヤであっても適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のベルト蛇行防止装置の斜視図である。
【図2】本発明に係るベルト蛇行制御装置の斜視図である。
【図3】本発明に係るベルト蛇行制御装置の正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ベルト
2a、2b 片寄りスイッチ、
3 テールプーリ
5 可動支持枠
6 軸受箱
7 固定枠
8a、8b 回転軸
9a、9b 軸受箱
10、10’ 蛇行検出器
11、12 シリンダ型駆動機
12a、12b シリンダロッド
M 回転駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリとテールプーリとの間にベルトを張架してなるベルトコンベヤのそのテールプーリを、ベルト平面内で回転可能に軸支すると共に、該ベルトの側縁部に沿う位置には片寄りスイッチを配設してなるベルト蛇行制御装置において、ベルトコンベヤのテールプーリ部に、張架ベルトの平面内において回転するように支持された可動支持枠を設け、その可動支持枠内に前記テールプーリを軸支収容すると共に、この可動支持枠の後部側には支持枠回転機構を連結してなることを特徴とするベルトコンベヤのベルト蛇行制御装置。
【請求項2】
前記支持枠回転機構は、可動支持枠のベルト張架側とは反対側に当る後部側の幅方向両端部にそれぞれ、電動シリンダ、油圧・空圧シリンダ、電動スクリューの如きシリンダ型駆動機を取付けて構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のベルトコンベヤのベルト蛇行制御装置。
【請求項3】
前記支持枠回転機構は、前記片寄りスイッチからの信号を蛇行検出器を介して前記左・右のシリンダ型駆動機の少なくとも一方に出力して、このシリンダ型駆動機のシリンダロッドを伸縮させることにより、該支持枠をベルト平面内において回転させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のベルトコンベヤのベルト蛇行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−100826(P2008−100826A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285755(P2006−285755)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)