説明

ベルトコンベヤ駆動用プーリー、ベルトコンベヤ用ブースター、ベルトコンベヤ、トンネル掘削工法

【課題】ベルトコンベヤ本体の側方に突出しないようにモータ及び減速機をプーリー内に内包したベルトコンベヤ駆動用プーリー、このベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤ用ブースター又はベルトコンベヤ、並びにこのベルトコンベヤを利用したトンネル掘削工法を提供する。
【解決手段】ベルトコンベヤ駆動用プーリー1は、円筒形状の外周面を有するとともに、内方に中空部を有するプーリー本体7と、プーリー本体7を回転させるための駆動源となるモータ8と、モータ8の回転速度を減じて出力するための遊星減速機9と、モータ8を冷却するための冷却装置10と、モータ8及び遊星減速機9を支持するための側壁部17、18と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベヤを駆動するためのベルトコンベヤ駆動用プーリー、及びこのベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤ用ブースター又はベルトコンベヤ、並びにそのベルトコンベヤを利用したトンネル掘削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削により生じた掘削土砂は、ベルトコンベヤによって坑外へ運搬される。ベルトコンベヤの駆動手段としては、例えば、図12に示すように、モータ31と、減速機32と、プーリー33と、減速機32の出力軸32aとプーリー33の回転軸33aとを連結するチェーン34と、を備えたものが用いられている。この駆動手段は、モータ31の回転を減速機32及びチェーン34を介してプーリー33に伝達し、このプーリー33を駆動させることによってベルト35を回転させるものである。そして、減速機32の出力軸32a、プーリー33の回転軸33a及びチェーン34は、ベルト35に接触しないようにベルトコンベヤ本体の側方に突出した状態で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−177822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、上述した駆動手段を用いた場合には、減速機の出力軸、プーリーの回転軸及びチェーンがベルトコンベヤ本体の側方に突出しているため、ベルトコンベヤの幅が大きくなり、トンネル内の作業空間が狭くなってしまう。したがって、このようなベルトコンベヤを小断面トンネル内に設置すると、資機材運搬車がベルトコンベヤに接触するおそれがあるため、小断面トンネルへの適用が困難であるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、ベルトコンベヤ本体の側方に突出しないようにモータ及び減速機をプーリー内に内包したベルトコンベヤ駆動用プーリー、このベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤ用ブースター及びベルトコンベヤ、並びにこのベルトコンベヤを利用したトンネル掘削工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、円筒形状の外周面を有するとともに、内側に中空部を有するプーリー本体を備え、このプーリー本体が回転することにより前記外周面に掛けられたベルトを駆動するベルトコンベヤ駆動用プーリーであって、
前記プーリー本体内に設置されたモータと、
入力軸が前記モータに接続されるとともに、出力軸が前記プーリー本体の内周面と係合するように前記プーリー本体内に設置された減速機と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、モータ及び減速機がプーリー本体内に設置されているので、ベルトコンベヤの側方に突出する部材が存在しない。したがって、ベルトコンベヤを小断面トンネル内に設置しても、作業空間を拡く確保することができるため、資機材運搬車等を安全に併走させることができる。
【0008】
また、本発明において、前記減速機は遊星減速機であり、当該遊星減速機の遊星歯車が前記プーリー本体の内周面に固定されることとすれば、遊星歯車で直接、プーリー本体を回転させることができる。
【0009】
また、本発明において、前記モータの出力軸と前記遊星減速機の前記入力軸とが同一直線上に配置されていることとすれば、モータと遊星減速機とを接続したアッセンブリー状態における、出力軸や入力軸と直交する直交方向の長さ(以下、幅という)を、出力軸と入力軸とが同一直線上に無い場合よりも、短くすることができるので、モータ及び遊星減速機をコンパクトにプーリー本体内に格納することができる。
【0010】
本発明のベルトコンベヤは、上述したベルトコンベヤ駆動用プーリーや当該ベルトコンベヤ駆動用プーリーを有するベルトコンベヤ用ブースターを備えるので、小断面トンネルにこのベルトコンベヤを設置することができる。
【0011】
また、本発明は、トンネル掘削工法において、上述したベルトコンベヤでトンネルの掘削により生じる掘削土砂を坑外へ運搬することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、長距離のベルトコンベヤを設置することができるので、長いトンネルでも掘削土砂を効率良く排出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベルトコンベヤ本体の側方に張り出さないように駆動手段をプーリー内に内包したベルトコンベヤ駆動用プーリー、及びこのベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤやベルトコンベヤ用ブースター、並びにそのベルトコンベヤ等を利用したトンネル掘削工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤの側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤの平面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤを簡略化して示すための概念図である。
【図4】本実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリーの断面図である。
【図5】本実施形態に係るモータの仕様を示す図である。
【図6】図4のA断面図である。
【図7】図4のB断面図である。
【図8】ベルトコンベヤの幅を比較した図であり、(a)は従来のプーリーを備えたベルトコンベヤを示し、(b)は本発明に係るベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤを示す。
【図9】本発明の第二実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤ用ブースターの側面図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤ用ブースターの平面図である。
【図11】ベルトコンベヤ用ブースターの高さ及び幅を比較した図であり、(a)は従来のプーリーを備えたベルトコンベヤ用ブースターを示し、(b)は本発明に係るベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えたベルトコンベヤ用ブースターを示す。
【図12】従来のベルトコンベヤを示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1〜図3は、それぞれ本発明の第一実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリー1を備えたベルトコンベヤ2の側面図、平面図及び簡略化して示すための概念図である。
【0017】
図1〜図3に示すように、ベルトコンベヤ2は、上流側端部に配置されたヘッドプーリー3と、下流側端部に配置されたベルトコンベヤ駆動用プーリー1と、両プーリー1、3間を回転するように巻き付けられたエンドレスベルト4と、送り側ベルト4aを支持するためのキャリアローラー5と、戻り側ベルト4bを支持するためのリターンローラー6と、を備えている。
【0018】
図4は、本実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリー1の断面図である。
図4に示すように、ベルトコンベヤ駆動用プーリー1は、円筒形状の外周面を有するとともに、内方に中空部を有するプーリー本体7と、プーリー本体7を回転させるための駆動源となるモータ8と、モータ8の回転速度を減じて出力するための遊星減速機9と、モータ8を冷却するための冷却装置10と、モータ8及び遊星減速機9を支持するための側壁部17、18と、を備えている。
【0019】
モータ8及び遊星減速機9は、プーリー本体7内に設置され、モータ8の出力軸8aと遊星減速機9の入力軸9aとが同一直線上になるように配置されている。
モータ8は、外周を囲うように設けられた固定枠16を介して側壁部17に固定されている。そして、側壁部17、18がベルトコンベヤ2本体に固定されることで、モータ8が駆動するとその出力軸8aが回転し、この回転が遊星減速機9によって減速されて、プーリー本体7が側壁部17、18に対して回転するようになっている。
【0020】
モータ8は、小型化のために極数を少なくしたものを用いる。本実施形態においては、例えば、図5に示すように、3相2極で3000rpm(50Hz)の回転が可能な電動機を用いた。
【0021】
また、モータ8は、外郭温度が200℃以上になると電源を遮断するサーマルプロテクター12を備えている。
【0022】
冷却装置10は、水冷式であり、水の温度を低下させるための冷却器14と、冷却器14により冷却された水をモータ8へ供給するためのポンプ13と、水を冷却器14とポンプ13とモータ8との間で循環させるためのパイプ15と、を備えている。
【0023】
遊星減速機9は、図6及び図7に示すように、2段減速機構を備えており、各減速機構の減速比をそれぞれ4.7、6.4とした。
モータ8を回転させた場合における遊星減速機9の出力側の回転数を下記の式(1)により算出する。
Rout=Rin×(1/G1)×(1/G2)・・・(1)
=3000×(1/4.7)×(1/6.4)
=104.8
ここで、Rout:出力側回転数(rpm)、Rin:入力側回転数(rpm)、G1:1段減速比、G2:2段減速比である。
【0024】
モータ8の出力側の高回転数(3000rpm)は、遊星減速機9を介することにより、104.8rpmまで減速することができる。
【0025】
遊星減速機9の出力側の遊星歯車9bの外周面は、プーリー本体7の内周面に固定されおり、遊星歯車9bが回転することにより、プーリー本体7が回転する。
【0026】
遊星減速機9を用いた場合におけるベルトコンベヤ駆動用プーリー1の周速度V(m/min)を下記の式(2)により算出する。
V=Rout×D×π・・・(2)
=104.8×0.4×π
=131.7
ここで、V:周速度(m/min)、D:プーリー本体7の直径(m)である。
【0027】
ベルトコンベヤ駆動用プーリー1の周速度は、131.7m/minとなり、予め設計等により決定された掘削土砂を搬出するために必要な周速度(例えば、100m/min)以上であることを満たしている。なお、掘削土砂を搬出するために必要な周速度は各現場により異なり、設計等により適宜決定される。
【0028】
図8は、ベルトコンベヤ2の幅を比較した図であり、(a)は、従来のプーリー33を備えたベルトコンベヤを示し、(b)は、本発明に係るベルトコンベヤ駆動用プーリー1を備えたベルトコンベヤ2を示す。
図8に示すように、本発明に係るベルトコンベヤ駆動用プーリー1を備えたベルトコンベヤ2は、遊星減速機9の遊星歯車9bで直接、プーリー本体7を回転させるので、従来のベルトコンベヤと比べてプーリー本体7を回転させるためのチェーン34等が不要になり、側方にチェーン34等が突出していないので、小断面トンネル内に設置しても作業空間を拡く確保することができる。したがって、ベルトコンベヤ2の側方に資機材運搬車11を安全に併走させることができる。
【0029】
また、モータ8及び遊星減速機9は、ベルトコンベヤ駆動用プーリー1内に設けられていることにより、粉塵等が付着しにくいのでメンテナンスの手間を低減することができる。
【0030】
そして、ベルトコンベヤ駆動用プーリー1の内部にモータ8及び遊星減速機9が収容されて、外部にそれらを設置しなくてよいため、ベルトコンベヤ2本体を小型化することができる。
【0031】
さらに、モータ8の出力軸8aと遊星減速機9の入力軸9aとが同一直線上になるように配置されていることにより、モータ8と遊星減速機9とを接続したアッセンブリー状態における幅を短くすることができるので、モータ8及び遊星減速機9をコンパクトにベルトコンベヤ駆動用プーリー1内に格納することができる。
【0032】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、本発明のベルトコンベヤ駆動用プーリー1をベルトコンベヤ2用ブースターとして用いた場合について説明する。以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0033】
図9及び図10は、本発明の第二実施形態に係るベルトコンベヤ駆動用プーリー21を備えたベルトコンベヤ用ブースター20の側面図及び平面図である。
図9及び図10に示すように、本実施形形態に係るベルトコンベヤ22は、第1実施形態のベルトコンベヤ2の中間部にベルトコンベヤ用ブースター20を備えたものである。
【0034】
このベルトコンベヤ用ブースター20は、ベルトコンベヤ駆動用プーリー21と、ベルトコンベヤ駆動用プーリー21の下方上流側(図9中ではベルトコンベヤ駆動用プーリー21の左下側)に配置されたベルト押付け用プーリー23と、を備えている。
【0035】
エンドレスベルト4は、キャリアローラー5上を図9中の矢印方向に走行してベルトコンベヤ駆動用プーリー21で時計回りに回転駆動された後、ベルト押付け用プーリー23を経て下流側へ送られる。下流側へ送られたエンドレスベルト4は、図示しないが、下流側端部に配置されたベルトコンベヤ駆動用プーリー1を回って、リターンローラー6下を通過してヘッドプーリー3に戻り、このヘッドプーリー3を回ってキャリアローラー5上を通過してベルトコンベヤ駆動用プーリー21へ送られる。
【0036】
ベルトコンベヤ駆動用プーリー21の内部にモータ8及び遊星減速機9が収容されており、それらをベルトコンベヤ用ブースター20内に設置しなくてよいため、ベルトコンベヤ用ブースター20を小型化することができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、ベルトコンベヤ用ブースター20としてベルトコンベヤ駆動用プーリー21を1台用いたが、ベルト押付け用プーリー23の代わりに新たなベルトコンベヤ駆動用プーリー21を設けることとし、ベルトコンベヤ駆動用プーリー21を2台用いてもよい。
【0038】
図11は、ベルトコンベヤ用ブースター20の幅を比較した図であり、(a)は、従来のベルトコンベヤ用ブースター24を示し、(b)は、本発明に係るベルトコンベヤ用ブースター20を示す。
図11に示すように、本発明に係るベルトコンベヤ駆動用プーリー21を備えたベルトコンベヤ用ブースター20は、従来のベルトコンベヤ用ブースター24のように、側方にチェーン34等が突出していないので、本実施形態に係るベルトコンベヤ用ブースター20をベルトコンベヤ2本体の枠内に格納することができる。
これにより、前述したようにベルトコンベヤ用ブースター20を小型化できることと相俟って、ベルトコンベヤ2を小型化することができる。
【0039】
なお、上述した各実施形態においては、減速機として遊星減速機9を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の減速方法による減速機を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ベルトコンベヤ駆動用プーリー
2 ベルトコンベヤ
3 ヘッドプーリー
4 エンドレスベルト
4a 送り側ベルト
4b 戻り側ベルト
5 キャリアローラー
6 リターンローラー
7 プーリー本体
8 モータ
8a 出力軸
9 遊星減速機
9a 入力軸
9b 遊星歯車
10 冷却装置
11 資機材運搬車
12 サーマルプロテクター
13 コンプレッサー
14 冷却器
15 パイプ
16 固定枠
17、18 側壁部
20 ベルトコンベヤ用ブースター
21 ベルトコンベヤ駆動用プーリー
22 ベルトコンベヤ
23 ベルト押付け用プーリー
24 従来のベルトコンベヤ用ブースター
31 モータ
32 減速機
32a 出力軸
33 プーリー
33a 回転軸
34 チェーン
35 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の外周面を有するとともに、内側に中空部を有するプーリー本体を備え、このプーリー本体が回転することにより前記外周面に掛けられたベルトを駆動するベルトコンベヤ駆動用プーリーであって、
前記プーリー本体内に設置されたモータと、
入力軸が前記モータに接続されるとともに、出力軸が前記プーリー本体の内周面と係合するように前記プーリー本体内に設置された減速機と、
を備えることを特徴とするベルトコンベヤ駆動用プーリー。
【請求項2】
前記減速機は遊星減速機であり、当該遊星減速機の遊星歯車が前記プーリー本体の内周面に固定されることを特徴とする請求項1に記載のベルトコンベヤ駆動用プーリー。
【請求項3】
前記モータの出力軸と前記減速機の前記入力軸とが同一直線上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルトコンベヤ駆動用プーリー。
【請求項4】
請求項1〜3のうち何れか一項に記載のベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えることを特徴とするベルトコンベヤ用ブースター。
【請求項5】
請求項1〜3のうち何れか一項に記載のベルトコンベヤ駆動用プーリーを備えることを特徴とするベルトコンベヤ。
【請求項6】
請求項4に記載のベルトコンベヤ用ブースターを備えることを特徴とするベルトコンベヤ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のベルトコンベヤでトンネルの掘削により生じる掘削土砂を坑外へ運搬することを特徴とするトンネル掘削工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−195321(P2011−195321A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66791(P2010−66791)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(594145297)タグチ工業株式会社 (8)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【出願人】(390026549)小西咲株式会社 (2)