説明

ベルト濃縮装置

【課題】ベルト面からの水抜けをよくすることによりベルト長さを大幅に短縮することができるベルト濃縮装置を提供する。
【解決手段】走行する透水性のベルト1上に、供給ボックス5から凝集汚泥を供給して水分を除去するベルト濃縮装置である。供給ボックス5の内部に、気泡供給装置11や加圧水供給装置などを設け、気泡を発生させて汚泥中の凝集フロックFに浮力を付与する。これによりベルト上で凝集フロックFが浮上し、汚泥中の自由水はベルト面側に位置することとなるため、速やかな水抜けが可能となり、有効ベルト長さを従来の1/2〜1/3程度にまで大幅に短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度の低い汚泥から水分を除去して濃縮するベルト濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルト濃縮装置は、走行する透水性のベルト上に汚泥を供給して水分を除去する装置であり、高分子凝集剤により凝集された濃度が0.4〜1.5%程度の低濃度の汚泥を、4%程度の濃度にまで濃縮する目的で広く使用されている。
【0003】
特許文献1に示されるように、ベルトの手前には傾斜板が設置されており、汚泥をできるだけ緩やかにベルト上に供給している。これはベルト上への汚泥の供給時に、汚泥中の凝集フロックが破壊されることを避けるためである。また特許文献2には、この傾斜板の角度を変えることによって濃縮濃度を調整することが開示されている。
【0004】
ところがこのように緩やかに汚泥をベルト上に供給しても、透水性のベルト面からの水抜けが悪いため、ベルトの長さを4m程度と長くしないと所期の濃縮性能が得られないという問題があった。このため設備が大型化し、広い設置スペースを要するという問題があった。
【特許文献1】特開2003―236596号公報
【特許文献2】特開2003―275507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、ベルト面からの水抜けをよくすることによりベルトの長さを従来の1/2〜1/3程度にまで大幅に短縮することができるベルト濃縮装置を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明者は透水性のベルト上に供給された汚泥の水抜けが悪い理由を検討したところ、図1に示すように凝集フロックFが自由水内で沈降してベルト面を覆い、除去すべき自由水がベルト面を通過することを妨げていることを究明した。このため、凝集フロックFの沈降を防止すれば、ベルト面からの水抜けがよくなることを確認した。
【0007】
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであって、走行する透水性のベルト上に汚泥を供給して水分を除去するベルト濃縮装置において、ベルト上に汚泥を供給する供給ボックスの内部に、汚泥中の凝集フロックに浮力を付与する手段を設けたことを特徴とするものである。なお、凝集フロックに浮力を付与する手段としては、気泡供給装置や加圧水供給装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のベルト濃縮装置によれば、ベルト上に汚泥を供給する供給ボックスの内部に、汚泥中の凝集フロックに浮力を付与する手段を設けたので、ベルト上に供給された汚泥は自由水の内部で浮上し、ベルト面側に自由水が来る。このため、除去すべき自由水は容易にベルト面を通過できることとなる。その結果、ベルトの長さを従来の1/2〜1/3程度にまで大幅に短縮しても、従来と同様の汚泥脱水が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図2は本発明の第1の実施形態を示すもので、1は両端のローラー2、3間に掛け渡されたベルトであり、モータ4によって矢印方向に連続的に駆動されている。このベルト1はろ布その他の透水性の材質からなるものである。ベルト1の上流端には、ベルト上に汚泥を供給するための供給ボックス5が設けられており、前段の凝集混和槽6で凝集フロックFが形成された汚泥が、供給ボックス5とベルト1との間に設けられた傾斜板7を介してベルト1上に供給されるようになっている。
【0010】
図3に示すように、供給ボックス5の内部には垂直壁8が設けられて下部に潜り堰9を形成しており、汚泥はこの潜り堰9を潜ったうえで上昇し、傾斜板7上に出る。なおベルト1は例えば1〜2m程度の横幅を持つため、汚泥を横幅全体に分散させることができるように、供給ボックス5及び傾斜板7はベルト1の横幅全体に延びている。そしてベルト1上に供給された汚泥中の自由水はベルト面を通過して下部の水受け15に集水され、濃縮された汚泥が排出用シュート10に排出されることは従来と同様である。
【0011】
しかし本発明においては、この供給ボックス5の内部に、汚泥中の凝集フロックFに浮力を付与する手段が設けられている。第1の実施形態では凝集フロックFに浮力を付与する手段は気泡供給装置11である。この気泡供給装置11は圧縮空気を潜り堰9の下流側(出口側)の下部に吹き込む装置であり、下水処理場の曝気槽に使用されている散気板や散気膜の小型のものを用いればよい。
【0012】
このように供給ボックス5内に気泡を供給すれば、図4に示すように凝集フロックFに気泡が付着し、浮力を付与する。このため、汚泥をベルト1上に供給したときに自由水内で凝集フロックFが浮上し、ベルト1に面する側に自由水が位置する。従って従来のようにベルト面が沈降した凝集フロックFによって閉塞されることはなくなり、自由水は速やかにベルト1を通過する。この結果、従来は水抜けにベルト1上で20〜30秒の滞留時間を要したが、本発明によれば10〜15秒で水抜けを完了させることが可能となる。
【0013】
図5は本発明の第2の実施形態を示すもので、凝集フロックFに浮力を付与する手段として、加圧水供給装置12が用いられている。この加圧水供給装置12は、加圧水タンク13からポンプ14によって送られる加圧水を、供給ボックス5の底部に供給するものであり、供給位置は潜り堰9の下流側(出口側)である。
【0014】
供給ボックス5の底部に供給された加圧水は大気圧にまで減圧されるので、加圧水に溶存していた空気が気泡となり、凝集フロックFに付着して浮力を与える。これにより第1の実施形態と同様に、汚泥をベルト1上に供給したときに自由水内で凝集フロックFが浮上し、速やかな水抜けが可能となる。加圧水の圧力は、0.13〜0.93MPa程度が適当である。
【0015】
なお、何れの実施形態においても発泡効果を高めるために、汚泥中に少量の界面活性剤を添加・混合しておくこともできる。添加する界面活性剤としては、凝集剤によるフロックの凝集効果を阻害しない種類を選択するものとし、カチオン系の高分子凝集剤を用いた場合には中性系の界面活性剤を用いることが好ましい。
【0016】
本発明のベルト濃縮装置は、従来は20〜30秒を必要としていた水抜け時間を、10〜15秒にまで短縮することができる。このため処理能力を同一とした場合、従来は2.5〜3mの有効ベルト長を必要としていたのに対し、本発明では有効ベルト長を1〜1.5mにまで短縮することができる。従って装置全長も従来の4mから2m程度に小型化することができ、設置スペースを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術の問題点を示す説明図である。
【図2】ベルト濃縮装置の全体図である。
【図3】供給ボックスの断面図である。
【図4】第1の実施形態を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
F フロック
1 ベルト
2 ローラー
3 ローラー
4 モータ
5 供給ボックス
6 凝集混和槽
7 傾斜板
8 垂直壁
9 潜り堰
10 排出用シュート
11 気泡供給装置
12 加圧水供給装置
13 加圧水タンク
14 ポンプ
15 水受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する透水性のベルト上に汚泥を供給して水分を除去するベルト濃縮装置において、ベルト上に汚泥を供給する供給ボックスの内部に、汚泥中の凝集フロックに浮力を付与する手段を設けたことを特徴とするベルト濃縮装置。
【請求項2】
凝集フロックに浮力を付与する手段が、気泡供給装置であることを特徴とする請求項1記載のベルト濃縮装置。
【請求項3】
凝集フロックに浮力を付与する手段が、加圧水供給装置であることを特徴とする請求項1記載のベルト濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−253015(P2007−253015A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78473(P2006−78473)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】