説明

ベルト転写装置

【目的】コロナ除電器を必要とせず、簡単な構成で確実に転写紙の除電を行うことのできる新規なベルト転写装置を実現する。
【構成】電気抵抗が中抵抗である材質により形成された転写ベルト12を用い、感光体10上のトナー画像を転写紙S上に転写する装置であって、転写紙Sが転写ベルト12から分離する側に設けられて、分離した転写紙Sを案内する転写紙ガイド部材30の転写紙案内面32a,32bを平面とし、少なくとも転写紙案内面部分を導電性材料により形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はベルト転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子複写機や光プリンター等の画像形成装置では一般に、光導電性の感光体上に静電線像を形成し、この静電線像を現像して得られるトナー画像を転写紙上に転写・定着して所望の画像を得る。
【0003】トナー画像を感光体上から転写紙上に転写する転写方式には種々のものがあるが、その一つとして、転写ベルトにより転写紙を搬送しつつ感光体表面に接触させて転写を行う「ベルト転写方式」が知られている。
【0004】ベルト転写方式では、トナー画像を転写された転写紙が転写ベルトから分離するとき「転写紙の除電」が行われる。この除電は、従来、コロナ除電器を用いて行われていた(特開平3−231783号公報)。
【0005】コロナ除電器による除電は除電効果において優れているが、コロナ除電器の配備される部位は転写ベルトと定着装置との間であり、定着装置では、ともすれば転写紙の搬送不全が生じ易い。定着装置で転写紙の搬送不全が発生すると、手作業でジャムした転写紙を取り除く必要があるが、転写紙の近傍にコロナ除電器のような高電圧の印加される部材があることはメンテナンス作業の安全性の上から好ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、コロナ除電器を必要とせず、簡単な構成で確実に転写紙の除電を行うことのできる新規なベルト転写装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明のベルト転写装置は「電気抵抗が中抵抗である材質により形成された転写ベルトを用い、感光体上のトナー画像を転写紙上に転写する」装置であり、転写紙ガイド部材を有する。転写紙ガイド部材」は、トナー画像を転写された転写紙が転写ベルトから分離する側に設けられ、転写ベルトから分離した転写紙を定着部側へ案内する。転写紙ガイド部材の転写紙案内面は平面であり、少なくとも転写紙案内面部分は導電性材料により形成される(請求項1)。
【0008】転写紙ガイド部材は、例えば、これをプラスチックにより形成し、転写紙案内面部分を金属蒸着膜で形成するなどして転写紙案内面部分を導電性としてもよいが、転写紙ガイド部材自体を金属材料で構成することができる(請求項2)。
【0009】また、転写紙ガイド部材の導電性部分は、画像形成装置本体の電気容量の大きい部材に接続しても良いが、上記導電性部分を接地するのが最も好ましい(請求項3)。
【0010】また、転写紙ガイド部材と転写ベルトとの位置的関係は、転写紙が「転写ベルトから分離しつつ、転写紙ガイド部材によりスムーズに案内される」ように定められることが必要であることは言うまでもないが、転写紙ガイド部材の転写ベルトに近接する側の端部と転写ベルトとの間隙:Dは0≦D≦3mmの範囲が好適であり(請求項4)、転写紙ガイド部材の転写ベルトに近接する側の端部側表面と、転写ベルトの上部平面部分との段差:Lは1≦L≦3mmの範囲が好適である(請求項6)。ここに「転写ベルトの上部平面部分」とは、転写ベルトが平面的に張られた部分のうち、上方にある部分、即ち転写紙を保持搬送する側の平面状部分を言う。
【0011】さらに、転写紙ガイド部材の「転写ベルトに近接する側の端部近傍」の表面性は、中仕上げ以上とすることが望ましい(請求項5)。
【0012】また、転写ベルトの線速:VBが、定着ローラーの線速:VTよりも大きく設定される場合には、「定着ローラーのニップ部と、転写ベルトの上部平面部分の転写紙が分離する側の端部とを結ぶ直線に対し、転写紙ガイド部材の転写紙案内面が、転写ベルトから離れるに従い上記直線から下方へ離れるように傾斜する」ようにする(請求項7)。
【0013】転写紙ガイド部材により案内される転写紙が転写紙ガイド部材から離れる部位には、除電ブラシを設け、その穂先が転写紙裏面側に接触するようにすることができ(請求項8)、この場合、転写紙ガイド部材の転写紙案内面からの除電ブラシの穂先の突出量:Kは、0≦K≦2mmの範囲が好適である(請求項9)。
【0014】
【作用】この発明では、転写ベルトから分離した転写紙は、その裏面側を転写紙ガイド部材の転写紙案内面に接しつつ定着部側へ案内される。転写紙ガイド部材の転写紙案内面は平面に形成され導電性であり、転写紙はその裏面が転写紙案内面に面接触することにより除電される。
【0015】
【実施例】以下、具体的な実施例に即して説明する。図1R>1は、この発明のベルト転写装置の1実施例を説明するための図である。図1(a)において、符号10で示す光導電性の感光体はドラム状に形成され、転写されるべきトナー画像を周面に保持して矢印方向へ回転する。符号12で示す転写ベルトは、電気抵抗が中抵抗であるゴム材料で形成され、駆動ローラー14と従動ローラー16とに巻装され、駆動ローラー14により反時計回りに回転駆動される。
【0016】駆動ローラー14は金属ローラーの外周面に、転写ベルト12との摩擦係合を高めるためのゴム層を形成され、図示されない駆動機構により反時計回りに回転駆動される。従動ローラー16は金属ローラーである。
【0017】符号18で示す印加ローラーは金属ローラーであって、感光体10と転写ベルト12との接触部から駆動ローラー14側へ「所定の距離ずれた」位置において転写ベルト12の内周面に当接し、転写ベルト12の回転に従動して回転する。符号20で示すフィードバック板は金属板であって、印加ローラー18と駆動ローラー14との間で転写ベルト12の内周面に接触している。印加ローラー18およびフィードバック板20は共に電源22に接続されている。
【0018】トナー画像転写時には、反時計方向へ回転する転写ベルト12の従動ローラー16側から転写紙Sが配紙される。転写紙Sは転写ベルト12の上部平面部の右側端部に乗り上げ、転写ベルト12の回転に伴い左方へ搬送され、転写部において感光体10の周面に接触する。このとき、電源22から印加ローラー18に電流I1が印加される。印加された電流I1の一部は、転写ベルト12を右方へ流れて転写電流となり、感光体10上のトナー画像を転写紙S上に転写する。印加電流の残りの部分I2は、転写ベルト12を左方へ流れ、フィードバック板20から電源22へ戻る。
【0019】このようにして感光体10上のトナー画像は転写紙S上に転写されるが、この転写の際に転写紙Sは不可避的に帯電する。トナー画像を転写された転写紙Sは転写ベルト12の回転に伴い、図の左方へ搬送され、転写紙ガイド部材30により案内されつつ除電され、除電ブラシ40により更に除電されたのち、ガイド52により定着部へ案内される。定着部は定着ローラー50のニップ部であり、転写紙Sは、この定着部を通過する際にトナー画像を定着される。
【0020】転写紙ガイド部材30は、図1(b)に示すように、金属板を3部分31,32a,32bに折り曲げられた形状を有しており、図1(a)に示すように接地されている。転写紙ガイド部材30の、符号31で示す部分は基部、32a,32bで示す部分は転写紙案内面である。「転写紙案内面が平面である」とは、転写紙案内面32aおよび32bが、それぞれ平面であるという意味である。
【0021】トナー画像を転写された転写紙Sは、転写ベルト12が駆動ローラー14に巻きつく部分まで搬送されてくると、自身の腰の強さにより転写ベルト12から分離し、転写紙案内面32aの上に乗り、さらに転写紙案内面32bの上を案内される。このとき転写紙Sの裏面は転写紙案内面32a,32bと面積的に接触し、除電される。
【0022】除電以前の転写紙Sは、転写ベルト12における電気抵抗の局所的な「ばらつき」により、帯電状態が一様でなく、この不均一な帯電状態を放置すると、転写紙が導電性の部材に接触したりする際に転写紙S内で電荷の急激な移動が発生してトナー画像に乱れが生じることがるが、上記のようにして除電を行うことにより、このような問題を有効に回避することができる。
【0023】転写紙Sと転写紙ガイド部材30の転写紙案内面32a,32bとの接触は面積的であるため、除電の際に、転写紙上の電荷が急激に移動してトナー画像を乱すことはない。
【0024】図1(a)に符号Dをもって示す「転写紙ガイド部材30の転写ベルト12に近接する側の端部(転写紙案内面32aの転写ベルト12側端部)と転写ベルト12との間隙」は、0〜3mmの範囲に設定される(請求項4)。
【0025】上記間隙:Dの大きさが3mmを超えて大きくなると、転写ベルト12から分離した転写紙Sの先端部と転写紙案内面32aの端部とが線接触的に近接し、近接部に強い電解が発生し、転写紙上の電荷が放電により急激に動いてトナー画像を乱す虞れがある。
【0026】また図1(c)に符号320で示す「転写紙ガイド部材30の転写ベルト12に近接する側の端部近傍」の表面性は「中仕上げ以上」に仕上げられている(請求項5)。この部分に所謂「ばり」や傷による微小な突起があると、転写紙Sがこの突起に近接したときに、転写紙Sの電荷が上記突起に異状放電してトナー画像を乱す虞れがあるからである。
【0027】さらに、図1(a)に符号Lで示された「転写紙ガイド部材30の転写ベルト12に近接する側の端部側表面(転写紙案内面32a)と、転写ベルト12の上部平面部分との段差」は1〜5mmの範囲に設定される(請求項6)。
【0028】上記段差:Lが1mmよりも小さいと、転写ベルト12から分離する転写紙先端部が転写紙ガイド部材30の下へ潜り込んでジャム状態となる虞れがある。また段差:Lが5mmを超えて大きくなると、転写ベルト12から分離する転写紙Sと転写紙ガイド部材30の転写紙案内面32a,32bとの面積的な接触が確保されなくなり除電の効果が保証されなくなる。
【0029】尤も、上記段差:Lを5mmより大きくした場合でも、「転写紙案内面32a,32bを同一平面状として、これを転写ベルト12の上部平面上部分と略平行にし、且つ転写紙案内面の転写紙案内方向の幅を十分に大きくとれば」確実な除電を行うことができる。
【0030】また、この実施例に於ては、転写紙ガイド部材30の基部31の部分に除電ブラシ40が設けられ、その穂先が転写紙Sの裏面に接触可能な状態で配置されている(請求項8)。除電ブラシ40は導電性で、転写紙ガイド部材30を通じて接地されている。
【0031】除電ブラシ40を用いることにより転写紙Sの除電を有効に助長できる。除電ブラシ40の穂先は、図1(d)に示すように、転写紙案内面32bから、突出量:Kだけ突出している。この突出量:Kは2mm以下が良い(請求項9)。突出量:Kが2mmより大きくなると、穂先の弾性により転写紙が振動し、トナー画像が乱れる虞れがあるからである。
【0032】転写紙ガイド部材の転写紙案内面と転写紙との接触面積を十分に取れば、転写紙ガイド部材のみで転写紙を完全に除電することができる。従って、そのような場合は除電ブラシは不要である。しかし、除電ブラシを補助的に用いて転写紙の除電を助長することにより、転写紙ガイド部材の転写紙案内面の「転写紙案内方向の長さ」を有効に短縮でき、除電部をコンパクト化することが可能になる。
【0033】さて、この実施例においては転写ベルト12の線速:VBが定着ローラー50の線速:VTよりも大きく設定されている。転写ベルト12の線速:VBと定着ローラーの線速:VTとは「原理的には同速度でよい」が、これらを完全に同速度に制御するのは必ずしも容易でない。
【0034】転写紙Sのサイズが長いと、「転写紙先端部が定着ローラー50に挾持されて定着搬送されている状態で、転写紙後端部側は未だに転写部でトナー画像を転写されている」ような場合があり、このような場合に、定着ローラー50の線速:VTが転写ベルト12の線速:VBよりも大きくなる事態が生ずると、定着部における搬送力により転写紙Sが引っ張られ、転写部でトナー画像が「縮んだ状態」で転写されることになる。
【0035】このような事態を避けるためには、この実施例のように転写ベルト12の線速:VBを定着ローラー50の線速:VTよりも大きく設定するのがよい。このようにすると、転写ベルト12と定着ローラー50とにより搬送される転写紙Sには、転写ベルト12と定着ローラー50との間で「弛み」が発生することになり、この弛みを吸収するスペースが必要となる。
【0036】図1の実施例では、この弛みを吸収するためのスペースを、転写紙ガイド部材30とガイド52とにより形成している。即ち、「定着ローラー50のニップ部と、転写ベルト12の上部平面部分の転写紙が分離する側の端部とを結ぶ直線100(2点鎖線で示す)に対し、転写紙ガイド部材30の転写紙案内面32bが、転写ベルト12から離れるに従い、上記直線100から下方へ離れるように傾斜している」のである。このようにして、転写紙ガイド部材30とガイド52とにより直線100の下部に形成されたスペースにより、転写紙Sの弛みを吸収することができる。
【0037】図2を参照すると、転写紙ガイド部材30の転写紙案内面を実線のようにせずに、破線で示すように直線100と略平行にしても、転写紙Sの腰が弱い場合には問題がないが、図に示す転写紙Sのように腰の強い転写紙を用いた場合には、破線で示す転写紙ガイド部材とガイド51との間のスペースに転写紙が十分に入り込むことができず、図示のように「弛み」による変形で、転写紙Sが転写ベルト12から、本来の分離位置よりも転写位置側(図の右側)で分離してしまい、転写紙と転写紙案内面との接触が十分に行われず除電不良が生じるのである。しかるに図1に示す実施例では、このような問題の発生がない。
【0038】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば新規なベルト転写装置を提供できる。この発明は上記の如き構成となっているから、除電手段としてコロナ除電器を必要とせず、簡単な構成で転写紙を確実に除電することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の1実施例を説明するための図である。
【図2】請求項6記載の発明の効果を説明するための図である。
【符号の説明】
10 感光体
12 転写ベルト
30 転写紙ガイド部材
32a,32b 転写紙案内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】電気抵抗が中抵抗である材質により形成された転写ベルトを用い、感光体上のトナー画像を転写紙上に転写する装置であって、転写紙が転写ベルトから分離する側に設けられて、分離した転写紙を案内する転写紙ガイド部材の転写紙案内面を平面とし、少なくとも上記転写紙案内面部分を導電性材料により形成したことを特徴とするベルト転写装置。
【請求項2】請求項1記載のベルト転写装置において、転写紙ガイド部材を金属材料で構成したことを特徴とするベルト転写装置。
【請求項3】請求項1または2記載のベルト転写装置において、転写紙ガイド部材の導電性部分を接地したことを特徴とするベルト転写装置。
【請求項4】請求項1または2または3記載のベルト転写装置において、転写紙ガイド部材の転写ベルトに近接する側の端部と転写ベルトとの間隙:Dを0≦D≦3mmとしたことを特徴とするベルト転写装置。
【請求項5】請求項1または2または3または4記載のベルト転写装置において、転写紙ガイド部材の転写ベルトに近接する側の端部近傍の表面性を、中仕上げ以上とすることを特徴とするベルト転写装置。
【請求項6】請求項1または2または3または4記載のベルト転写装置において、転写紙ガイド部材の転写ベルトに近接する側の端部側表面と、転写ベルトの上部平面部分との段差:Lを、1≦L≦3mmとすることを特徴とするベルト転写装置。
【請求項7】請求項1または2または3または4または5または6記載のベルト転写装置において、転写ベルトの線速:VBが、定着ローラーの線速:VTよりも大きく設定され、上記定着ローラーのニップ部と、転写ベルトの上部平面部分の転写紙が分離する側の端部とを結ぶ直線に対し、転写紙ガイド部材の転写紙案内面が、転写ベルトから離れるに従い上記直線から下方へ離れるように傾斜していることを特徴とするベルト転写装置。
【請求項8】請求項1または2または3または4または5または6または7記載のベルト転写装置において、転写紙ガイド部材により案内される転写紙が転写紙ガイド部材から離れる部位に、除電ブラシを設けたことを特徴とするベルト転写装置。
【請求項9】請求項8記載のベルト転写装置において、転写紙ガイド部材の転写紙案内面からの除電ブラシの穂先の突出量:Kを、0≦K≦2mmとしたことを特徴とするベルト転写装置。

【図1】
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【図2】
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