説明

ベルト部材梱包用カートリッジ

【課題】容易な取り扱いで無端ベルトの損傷を抑制し得て、しかも、再利用化が可能で廃棄物の発生を無くすことができるベルト部材梱包用カートリッジを提供する。
【解決手段】無端ベルト11の内端が挿入可能な一対の円筒部材2と、一対の円筒部材2の間で無端ベルト11を折り返す一つ以上の管体3と、一対の円筒部材2が接近離反可能となるように一つ以上の管体3を基点として連結する複数のアーム部材4と、を備え、一対の円筒部材2を接近させた際には無端ベルト11が一つ以上の管体3によって折り返された緊張蛇行状態で保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に使用される転写紙搬送ベルトや中間転写ベルト等の無端ベルトを搬送する際等に使用される無端ベルト用梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機・プリンタ・ファクシミリ或いはこれらを機能的に備えた複合機といった電子写真方式の画像形成装置では、転写紙搬送ベルトや中間転写ベルトといった様々な無端ベルト状の機能部材が用いられている。
【0003】
これらの無端ベルト状の機能部材は、画像形成処理に直接寄与する部位に配置・使用されることが多いため、無端ベルトに折れ等の変形が生じた場合には、直接画像形成に影響を与えることがある。
【0004】
例えば、中間転写体として無端ベルトに折れが生じていると、その部分でのトナーの付着不良や転写不良が発生してしまい、転写後の画像の一部が抜けてしまうといった不具合が発生する。
【0005】
そこで、このような無端ベルトの搬送時等には、特別な梱包材を用いて無端ベルトの折れ・傷・異物の付着等を防止する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平03−297715号公報
【特許文献2】特開2005−284083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の如く構成された無端ベルト用梱包体にあっては、無端ベルトに適度なテンションをかけることができないため、無端ベルト各々の内側や外側を保護材で覆うことによって無端ベルトの折れ・傷・異物の付着等を防止する必要があるばかりでなく、取り扱いが面倒で、しかも、保護材の再利用化が困難で、結果的に部品コストが高騰してしまうといった問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、容易な取り扱いで無端ベルトの損傷を抑制し得て、しかも、再利用化が可能で廃棄物の発生を無くすことができる無端ベルト用梱包体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のベルト部材梱包用カートリッジは、無端ベルトの内端が挿入可能な一対の円筒部材と、該一対の円筒部材間で無端ベルトを折り返す一つ以上の管体と、前記一対の円筒部材が接近離反可能となるように前記一つ以上の管体を基点として連結する複数のアーム部材と、を備え、前記一対の円筒部材を接近させた際には無端ベルトが前記一つ以上の管体によって折り返された緊張蛇行状態で保持されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のベルト部材梱包用カートリッジは、無端ベルトの内端が挿入可能な一対の円筒部材と、該一対の円筒部材間で無端ベルトを折り返す一つの管体と、前記一対の円筒部材が接近離反可能となるように前記一つの管体の中心を基点として連結する一対のアーム部材と、を備え、前記一対の円筒部材を接近させた際には無端ベルトが前記一つの管体によって折り返された緊張蛇行状態で保持されることを特徴とする。
【0010】
この際、前記一対の円筒部材及び前記管体には、無端ベルトを緊張蛇行状態で保持するために互いに接近対向しているもの同士の接近状態を維持するための維持部材が設けられているのが好ましい。
【0011】
尚、前記維持部材は、前記一対の円筒部材及び前記管体の接近対向部位に設けられたマグネットとするのが好ましい。
【0012】
また、前記アーム部材の長さは伸縮可能とすることができ、前記アーム部材に取手を設けることも可能である。
【0013】
また、前記円筒部材及び前記管体の各同軸上に他の前記円筒部材又は前記管体を設けることも可能である。
【0014】
さらに、前記円筒部材及び前記管体の先端が先細り状に縮径されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のベルト部材梱包用カートリッジは、容易な取り扱いで無端ベルトの損傷を抑制し得て、しかも、再利用化が可能で廃棄物の発生を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の一実施形態に係るベルト部材梱包用カートリッジについて、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係るベルト部材梱包用カートリッジに適用される無端ベルトの斜視図、図2は本発明の一実施形態に係るベルト部材梱包用カートリッジの一例の斜視図、図3は本発明の一実施形態に係るベルト部材梱包用カートリッジを示し、(A)はベルト保持前の要部の平面図、(B)はベルト保持途中の要部の平面図、(C)はベルト保持状態の要部の平面図である。
【0018】
図1に本発明の一実施形態に係る無端ベルト用梱包体に使用される無端ベルト11を示す。
【0019】
尚、無端ベルト11の構成(長さ・幅・材質・積層状態等)は、公知の技術のものが用いられる。本実施の形態においては、無端ベルト11には、多層のものを用い、その基材にはPVDF、中間弾性層にはCRゴム、表面コート層はPTFEを分散させたウレタン樹脂とし、その全体の厚さは120μmであった。
【0020】
一方、このような無端ベルト11は、図2に示す、ベルト部材梱包用カートリッジ1を利用して運搬が可能となっている。
【0021】
このベルト部材梱包用カートリッジ1は、無端ベルト11の内端が挿入可能な一対の円筒部材2と、一対の円筒部材2の間で無端ベルト11を折り返す一つ以上の管体3と、一対の円筒部材2が接近離反可能となるように一つ以上の管体3を基点として連結する複数のアーム部材4と、一対の円筒部材2に設けられた維持部材としてのマグネット5と、を備えている。
【0022】
円筒部材2は、例えば、同一の金属製シリンダー部材等から構成され、その外周の一部に、軸線方向に沿ってマグネット5が設けられている。尚、円筒部材2の材質や直径等は、特に限定されるものではないが、少なくとも、その長さは無端ベルト11の幅以上であるのが好ましい。
【0023】
管体3は、本実施の形態では、一対の円筒部材2と実質的に同一の金属製シリンダー部材等から構成されている。この際、無端ベルト11を折り返すことを考慮すると、無端ベルト11を緩やかに折り返すために、管体3の直径はなるべく大径であるのが好ましく、本実施の形態においては、円筒部材2の直径よりも大径のものが用いられている。
【0024】
尚、管体3の直径は、円筒部材2の直径を含めて、保持する無端ベルト11の長さを考慮するが、例えば、アーム部材4を伸縮可能としたり、管体3(円筒部材2でも良い)の直径を拡大・縮小可能とすることによって、無端ベルト11の長さに対応することも可能である。この際、アーム部材4の長さや管体3(又は円筒部材2)の直径は、無端ベルト11が蛇行緊張状態で保持されるように、調整可能とするのが好ましい。
【0025】
また、円筒部材2又は管体3は、アーム部材4に対して固定・回転可能の何れで保持されていても良いが、後述するように、円筒部材2を回動変位させつつ無端ベルト11を蛇行緊張状態で保持する際に、無端ベルト11と一対の円筒部材2及び管体3との左右対称の相対位置を容易に自動調整可能とするために、一方の円筒部材2と管体3とを回転可能とするのが好ましい。
【0026】
さらに、一対の円筒部材2及び管体3は、ある程度の直径を有していることから、無端ベルト11の装着作業の容易性を確保するため、その先端を先細り状に縮径するのが好ましい。
【0027】
アーム部材4は、その一部が重なるように、上下にずれて円筒部材2と管体3とを連結している。尚、アーム部材4の材質や幅等は特に限定されるものではないが、少なくとも、無端ベルト11を保持した際の強度は保障されている。また、アーム部材4の少なくとも一方に、取手6を設けることにより、操作性や運搬性(可搬性)を向上することができる。
【0028】
マグネット5は、一対の円筒部材2に無端ベルト11を挿入したままアーム部材4を回転させて折り畳んだ時に、一対の円筒部材2の少なくとも互いに近接対向する位置に設けられており、且つ、近接対向時には磁気的に互いに引き合うように逆極性の磁力を持たせている。これにより、マグネット5は、一対の円筒部材2及び管体3による無端ベルト11の蛇行緊張状態を維持させることができる。尚、マグネット5の材質、長さ、幅等は、適宜使用することができる。また、マグネット5は、無端ベルト11のベルト表面を損傷させないために、円筒部材2又は管体3の内側に配置することが好ましい。さらに、マグネット5は、一対の円筒部材2の一方にのみ配置すると共に、他方の円筒部材2の材質をマグネット5の磁力により磁気的吸引力が作用される材質としても良い。また、維持部材としてのマグネット5は、例えば、一対のアーム部材4の間に跨る引っ張りコイルスプリング等によって互いの接近状態を維持しても良い。
【0029】
上記の構成において、図3(A)に示すように、無端ベルト11の両端付近(規定された両端である必要なない)を円筒部材2に挿入すると共に、無端ベルト11の外周を管体3の外側へと回りこませ、図3(B)に示すように、円筒部材2をアーム部材4を操作しつつ回動接近させ、図3(C)に示すように、所定の接近位置に達した際に、無端ベルト11を蛇行緊張状態で保持することができうる。
【0030】
ところで、上記実施の形態では、一つの管体3によって無端ベルト11を折り返した緊張蛇行状態で保持する例を示したが、例えば、図4に示すように、複数の管体3を用いて無端ベルト11を複数回折り返したうえで、無端ベルト11を蛇行緊張状態で保持することも可能である。尚、これら複数の管体3を用いた場合には、無端ベルト11を蛇行緊張状態で保持した際に接近対向状態にある円筒部材2及び管体3にマグネット5を設けるのが好ましい。
【0031】
また、図5及び図6に示すように、一対の円筒部材2及び管体3の各同軸上に他の一対の円筒部材2及び管体3を設けてベルト部材梱包用カートリッジ1を一つのユニット状に構成し、複数の無端ベルト11を同時に保持するように構成することも可能である。
【0032】
この際、図5及び図6のように、円筒部材2及び管体3をずらした状態で同軸上に配置しても良いし、同一の円筒部材2及び管体3を同軸上に配置しても良い。また、縦列方向に複数連続させることにより、3本以上の無端ベルト11を1ユニットで保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係るベルト部材梱包用カートリッジに適用される無端ベルトの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るベルト部材梱包用カートリッジの一例の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るベルト部材梱包用カートリッジを示し、(A)はベルト保持前の要部の平面図、(B)はベルト保持途中の要部の平面図、(C)はベルト保持状態の要部の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る実施例2のベルト部材梱包用カートリッジの平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る実施例3のベルト部材梱包用カートリッジの平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る実施例3のベルト部材梱包用カートリッジの側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…ベルト部材梱包用カートリッジ
2…円筒部材
3…管体
4…アーム部材
5…磁性体
6…取手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトの内端が挿入可能な一対の円筒部材と、該一対の円筒部材間で無端ベルトを折り返す一つ以上の管体と、前記一対の円筒部材が接近離反可能となるように前記一つ以上の管体を基点として連結する複数のアーム部材と、を備え、前記一対の円筒部材を接近させた際には無端ベルトが前記一つ以上の管体によって折り返された緊張蛇行状態で保持されることを特徴とするベルト部材梱包用カートリッジ。
【請求項2】
無端ベルトの内端が挿入可能な一対の円筒部材と、該一対の円筒部材間で無端ベルトを折り返す一つの管体と、前記一対の円筒部材が接近離反可能となるように前記一つの管体の中心を基点として連結する一対のアーム部材と、を備え、前記一対の円筒部材を接近させた際には無端ベルトが前記一つの管体によって折り返された緊張蛇行状態で保持されることを特徴とするベルト部材梱包用カートリッジ。
【請求項3】
前記一対の円筒部材及び前記管体には、無端ベルトを緊張蛇行状態で保持するために互いに接近対向しているもの同士の接近状態を維持するための維持部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト部材梱包用カートリッジ。
【請求項4】
前記維持部材は、前記一対の円筒部材及び前記管体の接近対向部位に設けられたマグネットであることを特徴とする請求項3に記載のベルト部材梱包用カートリッジ。
【請求項5】
前記アーム部材の長さが伸縮可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のベルト梱包用カートリッジ。
【請求項6】
前記アーム部材に取手を設けたこと特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のベルト梱包用カートリッジ。
【請求項7】
前記円筒部材及び前記管体の各同軸上に他の前記円筒部材又は前記管体が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載のベルト部材梱包用カートリッジ。
【請求項8】
前記円筒部材及び前記管体の先端が先細り状に縮径されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のベルト部材梱包用カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−30630(P2010−30630A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194415(P2008−194415)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】