説明

ベンズアミド誘導体の製造方法

【課題】ベンズアミド誘導体の効率的かつ簡便な製法。
【解決手段】


(式中、R及びRは水素、アルキル基、アリール基、アシル基、カルボアルコキシ基またはカルボベンゾキシ基を示し、R及びRは水素原子、アシル基又はカルボアルコキシ基を示し、Rは水素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基またはハロゲン原子を示す。ただし、R及びRが水素のとき、Rはアシル基又はカルボアルコキシ基を示す。)で表される化合物を塩化水素を含む溶媒中で反応させる、上式中、R及びRが水素であるベンズアミド誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的なベンズアミド誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンズアミド誘導体は、医薬、農薬などの原料として用いられている。特に、N-イソプロピル-4-(N'-メチルヒドラジノメチル)ベンズアミド一塩酸塩(以下、塩酸プロカルバジンと略)は、抗悪性腫瘍薬に用いられ、中枢神経抑制薬や三環系抗うつ薬との併用により、医薬品の作用が増強されることが知られている。そのため、塩酸プロカルバジンは、近年非常に重要な医薬品であると認識されるに至っている。
【0003】
従来、ベンズアミド誘導体の合成法として、(a)4-ホルミル安息香酸イソプロピルアミドとメチルヒドラジンを反応させた後、水素添加により得る方法、(b)メチルヒドラジンとベンジルオキシカルボニルクロライドを反応させて得られた化合物を4-ブロモメチル安息香酸メチルと水素化ナトリウムでアルキル化反応させた後、酸クロライド化工程、アミド化工程、脱保護化工程、塩酸塩化工程を経ることにより得る方法が知られている(たとえば特許文献1、非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、(a)の水素添加法では水素を使用するため工業的な製法には不向きである、特別な装置を必要とする、水素ガスによる発火・爆発の危険性がある、目的物へ触媒である重金属が混入するといった問題がある。また、(b)の方法ではアルキル化反応を非水中で、脱保護反応を高温で行なわなければならず、加えて臭素酸塩から塩酸塩にする工程が必要であり、操作が煩雑で必ずしも簡便な方法とは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3931268号公報
【非特許文献1】第十四改正日本薬局方解説書 第一部医薬品各条 [あ行]〜[さ行]、塩酸プロカルバジン ページC−932〜C−936、廣川書店(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、一般式(I)で表されるベンズアミド誘導体を効率的かつ簡便に製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、一般式(II)で表される化合物を塩化水素を含む溶媒中で反応させることにより、簡便に一般式(I)で表されるベンズアミド誘導体を得られることを見出し、さらに検討を進めた結果、一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物を、アルキル化させ、次いで前記反応を行なうことにより、温和な条件で簡便かつ高収率にベンズアミド誘導体を製造することができ、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【化1】

(式中、RおよびRは、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、カルボアルコキシ基またはカルボベンゾキシ基を示し、Rは水素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基またはハロゲン原子を示す。)で表されるベンズアミド誘導体の製造方法であって、一般式(II)
【化2】

(式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、カルボアルコキシ基またはカルボベンゾキシ基を示し、RおよびRは水素原子、アシル基またはカルボアルコキシ基を示し、Rは水素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基またはハロゲン原子を示す。ただし、RおよびRが水素原子のとき、Rはアシル基またはカルボアルコキシ基を示す。)で表される化合物を塩化水素を含む溶媒中で反応させる前記製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便にベンズアミド誘導体を製造することができる。
また、一般式(II)で表わされる化合物の反応を過剰の塩化水素を含む溶媒中で行なっているため、塩酸塩化工程を別途行なうことなく、脱保護反応と塩酸塩化を一工程で行うことができる。したがって、高収率でベンズアミド誘導体の塩酸塩を得ることができる。
【0010】
また、一般式(II)で表される化合物が、一般式(III)で表される化合物および一般式(IV)で表される化合物を塩基存在下で反応させることにより得られる、ベンズアミド誘導体の製造方法にあっては、安定な塩基を用いているため、温和な条件で簡便に一般式(II)で表される化合物を得ることができ、全体的に簡便かつ高収率でベンズアミド誘導体を得ることができる。
【0011】
さらに、溶媒が極性溶媒であるベンズアミド誘導体の製造方法にあっては、温和な条件で脱保護反応を行なうことができる。
また、極性溶媒が、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジオキサンまたはジメチルスルホキシドから選択される1種または2種以上であるベンズアミド誘導体の製造方法にあっては、より一層効率的、温和な条件で脱保護反応を行なうことができる。
【0012】
さらに、RおよびRが、t-ブトキシカルボニル基であるベンズアミド誘導体の製造方法にあっては、脱保護が容易に進行するとともに、一般式(II)で表される化合物が結晶状態になるため、簡便、高収率かつ高純度にベンズアミド誘導体を得ることができる。
【0013】
そして、塩基が、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアルコキシドであるベンズアミド誘導体の製造方法にあっては、温和な条件で簡便に一般式(II)で表される化合物を得ることができ、高収率でベンズアミド誘導体を得ることができる。
本発明を用いれば、医薬品、医薬製剤、農薬、それらの合成中間体などに用いられるベンズアミド誘導体を工業的有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般式(I)〜(IV)中、RおよびRで示されるアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基を示し、置換基を有してもよく、直鎖または分岐のいずれのアルキル基でもよい。たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基等が挙げられ、このうち、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ペンチル基、n-オクチル基等の炭素数6〜10のアルキル基が好ましく、特にメチル基、イソプロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
【0015】
アルキル基に置換し得る置換基としては、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、トルイル基、ビフェニル基などの芳香族炭化水素基、ピリジル基、チオフェニル基などの複素環基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、塩素原子などのハロゲン、カルバモイル基などが挙げられる。かかる置換基としては、ベンジル基が好ましい。
【0016】
アリール基としては、炭素数1〜20のアリール基を示し、たとえば、フェニル基、p-トルイル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基などが挙げられる。このうち、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
カルボベンゾキシ基としては、カルボベンジルオキシ基、カルボビフェニルメトキシ基、カルボ−p−メトキシベンジルオキシ基などが挙げられる。
【0017】
また、R、R、R、Rで示されるアシル基としては、COR(Rは、前記と同様のアルキル基、アリール基または水素原子を示す。)を表し、たとえば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
カルボアルコキシ基としては、COOR(Rは、前記と同様のアルキル基を示す。)を表し、たとえば、カルボメトキシ基、カルボエトキシ基、カルボ-n-プロポキシ基、カルボイソプロポキシ基、カルボ-n-ブトキシ基、カルボ-t-ブトキシ基(BOC)、カルボ-n-ペントキシ基などが挙げられる。これらのうち、脱保護が容易なカルボ-t-ブトキシ基(BOC)が好ましい。
【0018】
は、水素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基またはハロゲン原子を示し、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、よう素原子を表す。また、Rは、ベンゼン環のいずれの置換位置に置換してもよく、1〜4置換が可能である。
また、R〜Rは水素原子であってもよいが、RおよびRが同時に水素原子のときはRは前記アシル基またはカルボアルコキシ基を示す。
【0019】
一般式(I)で示されるベンズアミド誘導体の好適な例を示せば、Rがメチル基でRがイソプロピル基でRが水素原子であるN-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド、Rがメチル基でRがn-ペンチル基でRが水素原子であるN-n-ペンチ-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド、Rがメチル基でRがメチル基でRが水素原子であるN-メチル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミドが挙げられ、これらは塩酸塩であってもよい。このうち、収率が特に優れ、医薬品に用いられるという点で、N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミドおよびその塩酸塩が好ましい。
【0020】
一般式(II)で示される化合物としては、たとえば、Rがメチル基、Rがイソプロピル基、Rが水素原子であって、RおよびRがBOCであるN-イソプロピル-4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド、Rがメチル基、Rがn-ペンチル基であって、RおよびRがBOCであるN-n-ペンチル-4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミドが挙げられる。
【0021】
このうち、RおよびRの置換基を容易に脱保護でき、結晶性が高いN-イソプロピル-4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミドが好ましい。
【0022】
一般式(III)中、Xは、ハロゲン原子、p-CH3CHSO3-またはCHSO3-を示すが、収率向上の観点からは、ハロゲン原子が好ましい。かかるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子またはよう素原子が挙げられ、特に塩素原子であることが好ましい。
【0023】
一般式(III)で示される化合物としては、たとえば、Rがイソプロピル基、Rが水素原子で、Xが塩素原子である4-クロロメチル-N-イソプロピルベンズアミド、Rがイソプロピル基、Rが水素原子で、Xが臭素原子である4-ブロモメチル- N-イソプロピルベンズアミドが挙げられ、より安価に製造できる点で4-クロロメチル-N-イソプロピルベンズアミドが好ましい。
【0024】
一般式(IV)で示される化合物としては、たとえば、Rがメチル基であって、RおよびRがBOCである、1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-1-メチルヒドラジンが挙げられる。かかる化合物は、結晶性が高く、一般式(IV)で表される化合物の高純度結晶が容易に製造できる点で好ましい。
【0025】
本発明に用いられる溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればいずれの溶媒であってもよく、たとえば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジn-ブチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のS原子含有系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種でも2種以上組合せて用いてもよい。
【0026】
このうち、効率的にベンズアミド誘導体の塩酸塩を得るためには、極性溶媒であることが好ましく、特に好ましくはアルコール系溶媒、アミド系溶媒、ジメチルスルホキシドである。ベンズアミド誘導体を医薬品として用いる場合には、DMF、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが最も好ましい。
溶媒に塩化水素を含ませるためには、当該溶媒に塩化水素ガスを一定時間吹き込むか、当該溶媒と塩酸を混合させればよい。
【0027】
本発明で用いられる塩基としては、たとえば、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシドなどのナトリウムアルコキシドが挙げられる。中でも、温和な条件で反応が行なえ、かつ、高収率で一般式(II)で表される化合物が得られることから、ナトリウムアルコキシドが好ましい。また、必要に応じて触媒としてヨウ化カリウムやヨウ化テトラブチルアンモニウム等を用いることで反応温度を低減する事が出来る。
【0028】
本発明のベンズアミド誘導体の製造方法は、下記反応式で示すように、一般式(II)で表される化合物を塩化水素を含む溶媒中で反応させるものである。
【化5】

(式中、R1からR5は、前記と同様である。)
【0029】
塩化水素は、脱保護化および塩酸塩化に十分な濃度であれば特に制限されず、塩酸であってもよい。塩酸の場合、1〜37%塩酸が好ましく、35〜37%塩酸がより好ましい。かかる範囲内であれば、脱保護反応を効率よく進行させることができる。
また、塩化水素の使用量は、濃度によっても異なるが、一般式(II)で表される化合物に対して1.7〜6当量もあれば十分である。かかる範囲内であれば、脱保護反応が効率よく進行するとともに、塩酸塩化反応も一工程で行なうことができる。
【0030】
溶媒は、前記した溶媒を用いればよく、一般式(II)で表される化合物の使用量(g)に対して1.25〜7.2倍量(mL)もあれば十分である。
前記塩酸は、前記溶媒と混合して反応に用いても、40〜60℃の溶媒加温下、滴下混合して用いてもよい。
塩化水素ガスを溶媒に含有させる場合には、塩化水素が1〜37%、好ましくは35〜37%の濃度になるまで吹き込むことで調製することができる。
【0031】
反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なってもよく、反応温度は20℃〜100℃、好ましくは30℃〜70℃、最も好ましくは30℃〜60℃である。反応時間は、通常1時間から20時間もあれば十分であり、1〜15時間程度が好ましい。
これにより、従来低収率でしか得られなかったベンズアミド誘導体および/またはその塩酸塩をほぼ定量的に高収率で得ることが可能となる。
【0032】
一般式(II)で表される化合物の製造方法は、下記反応式で示すように、一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物を塩基存在下、溶媒中で反応させるものである。
【化6】

(式中、R1からR5、Xは、前記同様である。)
【0033】
一般式(III)で表される化合物および(IV)で表される化合物は、目的の一般式(II)で表される化合物に対応するものを用いればよい。たとえば、一般式(II)で表される化合物のRがメチル基、Rがイソプロピル基、Rが水素原子であって、RおよびRがBOCであるN-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミドを得る場合、一般式(III)で表される化合物はRがイソプロピル基、Rが水素原子であって、Xが塩素である4-クロロメチル-N-イソプロピルベンズアミドを、一般式(IV)で表される化合物はRがメチル基、RおよびRがBOCである1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-1-メチルヒドラジンを用いればよい。
【0034】
ここで、一般式(IV)表される化合物の使用量は、一般式(III)で表される化合物の使用量に対し1〜1.5当量が好ましく、1〜1.2当量がより好ましい。
塩基としては、前記したものが用いられる。かかる塩基は、一般式(III)で表される化合物に対して、1〜3当量が好ましく、1〜1.5当量がより好ましい。
【0035】
反応溶媒には、極性溶媒を用いるのが好ましく、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジn-ブチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、等のアミド系溶媒が適している。効率的にアルキル化反応を行うためには、特にDMF、MEKが好ましい。
【0036】
反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。反応温度は、10℃〜150℃が好ましく、高収率で目的物を得るためには10℃〜100℃がより好ましく、最も好ましくは15℃〜65℃である。
反応時間は、通常1時間から10時間が好ましく、1〜5時間程度で十分である。
【0037】
一般式(II)で表される化合物を塩化水素を含んだ溶媒中で反応させる、本発明のベンズアミド誘導体の製造方法においては、上記した一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物から一般式(II)で表される化合物を製造させる反応に引き続いて、当該ベンズアミド誘導体を製造することが、温和な条件で、かつ、簡易にベンズアミド誘導体を製造することができ、ひいては目的物質であるベンズアミド誘導体の通算収率を向上できる点から極めて好ましい。
すなわち、一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物とを塩基存在下、溶媒中で反応させ、反応終了後そのまま、あるいは抽出した後直ちに、新たな溶媒を添加して、塩酸と反応させることが好ましい。
【0038】
この場合、一般式(II)〜(IV)で表される化合物、塩基、塩酸の使用量は、既に述べたとおりである。これにより、目的物たるベンズアミド誘導体製造工程の簡略化および収率の向上が図れ、経済的にも優れた効果が得られる、工業的な製造方法を提供することができる。
なお、新たな溶媒としては、既述のとおり何れの溶媒を使用してもよいが、医薬品として用いる場合には、DMF、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0039】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は本発明の一例であり実施例により本発明は限定されない。実施例中、HPLCは株式会社島津製作所製のものを用い、4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミドに関しては、検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230 nm)、カラム:Mightysil RP-18 GP 250-4.6 (5μm)(関東化学株式会社製造)、カラム温度:40 ℃、移動相:A/B=60:40(0min)−30:70(30min)−30:70(40min)のグラジェント条件で測定;A液: 5mM濃度のりん酸二水素カリウム水溶液をりん酸でpH4.0に調整したもの;B液:アセトニトリル、流量:1.0 mL/minの条件で分析し、N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩に関しては、検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230 nm)、カラム:Mightysil RP-18 GP 250-4.6 (5μm)(関東化学株式会社製造)、カラム温度:40 ℃、移動相:A/B=90:10(0min)−10:90(30min)−10:90(40min)のグラジェント条件で測定;A液: 5mM濃度のりん酸二水素カリウム水溶液を水酸化カリウムでpH6.3に調整したもの;B液:アセトニトリル、流量:1.0 mL/minの条件で分析した。
【実施例1】
【0040】
N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の製造
(a)4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミドの製造
4-クロロメチル-N-イソプロピルベンズアミド30g(141.7mmol)、炭酸カリウム39.17g(283.4mmol)、1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-1-メチルヒドラジン36.65g(148.8mmol)及びDMF 283.2gをフラスコに仕込み、95〜105℃で4時間撹拌した。反応終了後水900mLを加え、酢酸エチル300mLで二回抽出し、有機層を合わせ、これを、水300mLで3回、飽和食塩水 100mLで1回洗浄後、芒硝で乾燥した。得られた有機層を濃縮、乾燥し、4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミド58.79gの白色結晶を得た(収率98.4%)。HPLCによる純度99.0%以上、NMRデータは以下に示すとおりである。
H-NMR(400MHz、CDCl):δ1.25(d, J=6.6Hz, 6H), δ1.40(s, 6H), δ1.47〜1.49(m, 12H), δ2.73〜2.87(m, 3H) , δ4.20〜4.34(m, 2H) , δ4.72〜5.04(m, 1H) , δ6.22(d, J = 7.6Hz,1H) , δ7.38(d, J=8.1Hz, 2H) , δ7.75(d, J=8.1Hz, 2H)
13C-NMR(400MHz、CDCl):δ22.7, 28.0, 28.09, 28.15, 36.2, 36.4, 38.3, 41.7, 52.0, 52.2, 54.0, 80.7, 80.8, 80.9, 81.0, 81.1, 81.6, 126.87, 126.91, 128.4, 128.6, 129.2, 134.0, 134.2, 140.0, 140.4, 140.5, 154.5, 154.8, 155.0, 155.5, 166.1, 166.3
【0041】
(b)N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の製造
(a)で得た4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミドの粗生成物27.57g及び10%HCl−MeOH溶液88.6mL(メタノールに塩化水素ガスを濃度が重量で10%となるまで吹き込んで調製)を仕込み、60℃で1時間撹拌した。生成してきた結晶を0℃でろ集、アセトン60gで洗浄後乾燥し、N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の白色結晶11.95gを得た(収率67.5%)。HPLCによる純度99.0%以上、NMRデータは以下に示すとおりである。比較例と比較すると、簡便かつ高純度に目的物を得ることができた。
H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ1.18(d, J=6.6Hz, 6H), δ2.69(s, 3H), δ4.07〜4.18(m, 1H), δ4.18(s, 2H) , δ6.22(brs, 0.7H) , δ7.46(brs, 2H) , δ7.89(d, J=8.1Hz, 2H) , δ8.32(d, J=7.6Hz, 1H) , δ10.58(brs, , 1.3H)
13C-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ22.3, 34.0, 41.0, 50.6, 127.4, 128.4, 134.1, 165.0
【実施例2】
【0042】
4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミドの製造
4-クロロメチル-N-イソプロピルベンズアミド2.0g(9.45mmol)、炭酸カリウム2.61g(18.9mmol)、1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-1-メチルヒドラジン2.44g(9.92mmol)、よう化カリウム0.16g(0.94mmol)及びDMF 20mLをフラスコに仕込み、60〜65℃で4時間撹拌した。反応終了後水60mLを加え、酢酸エチル20mLで二回抽出し、有機層を合わせ、これを、水20mLで3回洗浄後、芒硝で乾燥した。ろ過後、得られた有機層から酢酸エチルを26mL濃縮した。残渣にn-ヘプタン38mL加え、55℃で攪拌した後、5℃で1.5時間攪拌後、析出した結晶をろ集、乾燥し、4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミド3.68gの白色結晶を得た(収率92.4%)。HPLCによる純度は99.0%以上であった。
【実施例3】
【0043】
4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミドの製造
アルゴン置換したフラスコに水素化ナトリウム(55%)0.58g(13.23mmol)を仕込み、ヘキサン5mLでこれを洗浄した。ここに脱水DMF10mL及び1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-1-メチルヒドラジン2.44g(9.92mmol) をDMF3mLに溶解した溶液を加え室温下一時間攪拌した。その後4-クロロメチル-N-イソプロピルベンズアミド2.0g(9.45mmol)をDMF 4mLに溶解した溶液を加え25〜29℃で3時間撹拌した。反応終了後水60mLを加え、酢酸エチル20mLで二回抽出し、有機層を合わせ、これを、水20mLで3回洗浄後、芒硝で乾燥した。ろ過後、得られた有機層から酢酸エチルを23mL濃縮した。残渣にn-ヘプタン38mL加え、55℃で攪拌した後、5℃で1.5時間攪拌後、析出した結晶をろ集、乾燥し、4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミド3.86gの白色結晶を得た(収率97.0%)。HPLCによる純度は99.0%以上であった。
【実施例4】
【0044】
4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミドの製造
アルゴン置換したフラスコにナトリウムエトキシド1.66g (24.4mmol)、DMF29.8mL及び1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-1-メチルヒドラジン6.00g(24.4mmol)を加え、30分間攪拌した。ここに4-クロロメチル-N-イソプロピルベンズアミド4.48g(21.2mmol)をDMF10.0mLに溶解した溶液、さらにDMF5.0mLを加え室温下2時間攪拌した。反応終了後水89.6mL、t-ブチルメチルエーテル67.2mLで抽出し、有機層を、水44.8mLで2回洗浄後、得られた有機層からt-ブチルメチルエーテル36mLを濃縮した。残渣にn-ヘプタン85.2mL加え、55℃で攪拌した後、5℃で1.5時間攪拌後、析出した結晶をろ集、乾燥し、4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミド8.58gの白色結晶を得た(収率96.3%)。HPLCによる純度は99.0%以上であり、融点は114.7〜118.6℃であった。
【実施例5】
【0045】
N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の製造
4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミドの結晶5.0g(11.9mol)及びメタノール8.5mLを加え、40℃で加温下濃塩酸4.87g(47.5mol)を滴下し、同温で15時間反応した。室温に冷却後、アセトン17.35mLを添加し、氷冷下析出した結晶をろ集、乾燥し、N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の白色結晶2.67gを得た(収率87.3%)。HPLCによる純度は99.0%以上であった。
【実施例6】
【0046】
N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の製造
4-[(1,2-ジ-t-ブトキシカルボニル-2-メチルヒドラジノ)メチル]-N-イソプロピルベンズアミドの結晶5.0g(11.9mol)及びイソプロピルアルコール10.85mLを加え、60℃で加温下濃塩酸4.87g(47.5mol)を一時間で滴下し、同温で4時間反応した。室温に冷却後、アセトン20mLを添加し、氷冷下析出した結晶をろ集、乾燥し、N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の白色結晶2.89gを得た(収率94.4%)。HPLCによる純度が99.0%以上であった。
【実施例7】
【0047】
N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の製造
実施例6のイソプロピルアルコールの代わりに、DMSO、エタノール又は、ジオキサンで反応を行い、同様にN-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩が得られる事を確認した。
[比較例]
【0048】
(a)N-イソプロピル-α-(メチルヒドラジノ)-p-トルアミドの製造
N-イソプロピル-4-ホルミルベンズアミド 1.0g(5.23mmol)及びDMF 6.8mLをフラスコに仕込み、此処にメチルヒドラジン 0.25gをDMF0.5mLに溶解した溶液を滴下し、室温下4時間攪拌した。減圧下DMFを2mL留去しN-イソプロピル-α-(メチルヒドラジノ)-p-トルアミドのDMF溶液を得た。
【0049】
(b)N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド 一塩酸塩の製造
(a)で得たN-イソプロピル-α-(メチルヒドラジノ)-p-トルアミドのDMF溶液及び10%Pd炭素38mgをオートクレーブに仕込み、水素圧4kgcm−2にて19時間反応を行った。反応終了後、塩化水素ガス0.96gをDMF10mLに溶解した溶液2mL加え析出した結晶を濾別し、N-イソプロピル-4-[(2-メチルヒドラジノ)メチル]ベンズアミド一塩酸塩の灰色結晶 1.02gを得た(粗収率 75.7%)が、HPLCによる純度は、塩酸塩化時に酸化反応が起き91.5%と低い値であった。実施例1と比較すると、工程数が多く、純度も低かった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、簡易、迅速かつ高収率に目的とするベンズアミド誘導体を製造することができるため、これを用いる医薬品などの産業分野で大きく貢献するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】


(式中、RおよびRは、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、カルボアルコキシ基またはカルボベンゾキシ基を示し、Rは水素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基またはハロゲン原子を示す。)で表されるベンズアミド誘導体の製造方法であって、一般式(II)
【化2】


(式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、カルボアルコキシ基またはカルボベンゾキシ基を示し、RおよびRは水素原子、アシル基またはカルボアルコキシ基を示し、Rは水素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基またはハロゲン原子を示す。ただし、RおよびRが水素原子のとき、Rはアシル基またはカルボアルコキシ基を示す。)で表される化合物を塩化水素を含む溶媒中で反応させる、前記製造方法。
【請求項2】
一般式(II)で表される化合物が、一般式(III)
【化3】


(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、カルボアルコキシ基またはカルボベンゾキシ基を示し、Rは水素原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基またはハロゲン原子を示し、Xはハロゲン原子、p-CH3CHSO3-またはCHSO3-を示す。)で表される化合物および一般式(IV)
【化4】


(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、カルボアルコキシ基またはカルボベンゾキシ基を示し、RおよびRは水素原子、アシル基またはカルボアルコキシ基を示す。ただし、RおよびRが水素原子のとき、Rはアシル基、カルボアルコキシ基を示す。)で表される化合物を塩基存在下で反応させて得られる、請求項1記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項3】
溶媒が、極性溶媒である、請求項1または2に記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項4】
極性溶媒が、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジオキサンまたはジメチルスルホキシドから選択される1種または2種以上である、請求項1から3のいずれかに記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項5】
およびRが、t-ブトキシカルボニル基である、請求項1から4のいずれかに記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項6】
塩基が、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアルコキシドである、請求項1から5のいずれかに記載のベンズアミド誘導体の製造方法。
【請求項7】
ベンズアミド誘導体が、ベンズアミド誘導体の塩酸塩である、請求項1から6のいずれかに記載のベンズアミド誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2007−63162(P2007−63162A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249109(P2005−249109)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】