説明

ベンゾトリアゾール系化合物

【課題】本発明の目的は、紫外線吸収剤として有用であり、有機溶媒に対する溶解性が良好なので使用する際に支障をきたすことがなく、また樹脂との相溶性が良好なので経時でブリードアウトを起こすことがない、新規なベンゾトリアゾール系化合物を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール系化合物。
【化1】


〔式中、R1及びR2は置換基を表し、R3はアルキル基を表す。pは0〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾトリアゾール系化合物に関し、詳しくは、本発明は、良好な紫外線吸収能を有し、溶解性の良好な新規なベンゾトリアゾール系化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料の安定化剤としては、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール化合物が光安定化剤として知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これらの化合物は、有機溶媒に対する溶解性が悪く、使用する際に支障をきたしたり、また樹脂との相溶性が悪いため経時でブリードアウトを起こし、有機材料を長期間にわたり安定化させることができなかった。
【特許文献1】特開平5−78517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、紫外線吸収剤として有用であり、有機溶媒に対する溶解性が良好なので使用する際に支障をきたすことがなく、また樹脂との相溶性が良好なので経時でブリードアウトを起こすことがない、新規なベンゾトリアゾール系化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、有機溶媒に対する溶解性が良好で、また樹脂との相溶性が良好な化合物を探索する過程において各種ベンゾトリアゾール系化合物を詳細に検討したところ、ある特定の置換基を含有するベンゾトリアゾール系化合物が特に有機溶媒に対する溶解性や樹脂との相溶性の改善が著しく大であり、紫外線吸収剤として特により非常に優れて有用に効果を奏することができるものであるとの知見を得、前記目的が達成されたものである。
【0005】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0006】
1.下記一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール系化合物。
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、R1及びR2は置換基を表し、R3はアルキル基を表す。pは0〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表す。〕
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紫外線吸収剤として有用であり、有機溶媒に対する溶解性が良好なので使用する際に支障をきたすことがなく、また樹脂との相溶性が良好なので経時でブリードアウトを起こすことがない、新規なベンゾトリアゾール系化合物を提供することができる。
【0010】
詳しくは、本発明によれば、波長300〜400nmの近紫外領域での紫外線吸収能に優れるとともに、かつ、有機溶媒に対する溶解性が良好なので使用する際に支障をきたすことがなく、また樹脂との相溶性が良好なので経時でブリードアウトを起こすことがない、新規なベンゾトリアゾール系化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0012】
本発明の前記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物は、3つのベンゾトリアゾール骨格とアルキル基を同一の分子内に有することを特徴とする。本発明の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物は、特に波長300〜400nmの近紫外領域での紫外線吸収能に優れる。
【0013】
以下、本発明の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物ついて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0014】
前記一般式(1)において、R1及びR2は置換基を表す。R1及びR2が表す置換基としては特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基、等の各基が挙げられる。これらの置換基は同様の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0015】
一般式(1)において、R1が表す置換基として、アルキル基が好ましく、t−ブチル基、t−アミル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、クミル基等の3級アルキル基が特に好ましい。
【0016】
一般式(1)において、R2が表す置換基として、アルキル基、塩素原子、アルコキシ基が好ましい。
【0017】
一般式(1)において、R3はアルキル基を表す。R3で表されるアルキル基として、例えば、一般式(1)において、R1及びR2が表す置換基の例として挙げられるアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0018】
一般式(1)において、R3はメチル基、エチル基、n−プロピル基及びn−ブチル基が好ましく、メチル基及びエチル基が更に好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0019】
一般式(1)において、pは0〜4の整数を表し、pが2以上のとき、複数のR1は同じであっても異なっていても良いが、pは1または2が好ましい。
【0020】
一般式(1)において、qは0〜3の整数を表し、qが2以上のとき、複数のR2は同じであっても異なっていても良いが、qは0が好ましい。
【0021】
上記の好ましい範囲では、有機溶媒に対する溶解性がより良好であり、また樹脂との相溶性もより良好になるので、本発明の効果を奏するうえでより好ましい。
【0022】
次に、本発明の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって限定されるものではない。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
本発明の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物による安定性改善の対象となる有機材料としては、例えば、高密度、低密度または直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン及びこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリカーボネート、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、セルロース系樹脂等の熱可塑性合成樹脂及びこれらのブレンド物あるいはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリカステル樹脂等の熱硬化性樹脂、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム等のエラストマーを挙げることができる。
【0028】
本発明の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物は、必要に応じて他の汎用の酸化防止剤、安定剤等の添加剤を併用することができる。
【0029】
これらの添加剤として特に好ましいものとしては、フェノール系、ヒンダードアミン系、硫黄系、ホスファイト系、ホスホナイト系、ラクトン系等の酸化防止剤が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0031】
実施例1
《本発明の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物の例示化合物1−1の合成》
(化合物CLのトルエン溶液の合成)
【0032】
【化6】

【0033】
反応容器に18.4gの2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−カルボキシル−2H−ベンゾトリアゾールと92mlのトルエンを入れる。そこへ、6.48mlの塩化チオニルと0.92mlのN,N−ジメチルホルムアミドを加え、約60℃に加熱し、そのまま約1時間反応させた。反応終了後、トルエンと過剰の塩化チオニルを減圧留去し、再び60mlのトルエンを加えて50℃に加温した。
【0034】
(例示化合物1−1の合成)
別の反応容器に、2.65gの2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールと44mlのトルエン、及び5.55gのピリジンを加えた。この反応溶液を約80℃に加熱したところへ、先に調製しておいた化合物CLのトルエン溶液を手早く滴下した。その後昇温し、加熱還流下で約1時間反応させ、反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで抽出し、希塩酸水と重曹水でこの順に有機相を洗浄し、ロータリーエバポレーターで濃縮後、酢酸エチルとn−へキサンを用いて再結晶を行うことで、例示化合物1−1の化合物が15.0g得られた。
【0035】
得られた結晶を1H−NMR及びMASSスペクトルで分析結果することにより、例示化合物1−1であることが確認された。収率は76.3%であり、融点は155℃であった。
【0036】
1H−NMR(400MHz、重水素化クロロホルム、δ(ppm)、TMS基準):1.17(t,3H)、1.37(s,27H)、1.92(q,2H)、4.68(s,6H)、7.06(m,1H)、7.38(m,1H)、8.08(m,1H)、8.35(m,1H)、8.65(m,1H)、10.81(s,3H)。
【0037】
また、塩化メチレン中で分光吸収を測定したところ、λmaxは353.0nmであり、その波長でのε(モル吸光係数)は51,100であった。なお、例示化合物1−1の分光吸収スペクトルは図1に示す。
【0038】
実施例2
トルエン、酢酸エチルへの溶解性を従来のベンゾトリアゾール系化合物と比較検討した。各種有機溶媒100質量部あたり、5質量部のベンゾトリアゾール系化合物を加え、加熱して溶解させた後放冷し、20℃にて24時間後の状態(結晶が析出するか否か)を観察した。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【化7】

【0041】
表1より明らかなように、本発明の化合物は有機溶媒に対する溶解性が良好であることが分かる。
【0042】
実施例3
〔セルロースエステルフィルム試料1−1の作製〕
セルロースエステル(イーストマンケミカル社製、CAP−482−20)を、空気中、常圧下で130℃、2時間乾燥し、室温まで放冷した。このセルロースエステルに例示化合物1−1をセルロースエステルに対して1.2質量部添加し、この混合物を230℃の溶融温度に加熱溶融した後、T型ダイより溶融押出成形し、さらに160℃において1.2×1.2の延伸比で延伸し、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム試料1−1を得た。
【0043】
〔セルロースエステルフィルム試料1−2〜1−5の作製〕
セルロースエステルフィルム試料1−1の作製において、ベンゾトリアゾール系化合物を表2記載のように変更した以外は同様にして、セルロースエステルフィルム試料1−2〜1−5(いずれも膜厚80μm)を作製した。
【0044】
得られたフィルム試料1−1〜1−5に関して、下記の要領でブリードアウトを評価した。
【0045】
(ブリードアウト耐性)
セルロースエステルフィルムを、80℃、90%RHの高温高湿雰囲気下で50日間放置後、セルロースエステルフィルム表面のブリードアウト(結晶析出)の有無を目視観察を行い、下記に記載の基準に従って評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
◎:表面にブリードアウトの発生が全く認められない
○:表面で、部分的なブリードアウトが僅かに認められる
△:表面で、全面に亘りブリードアウトが僅かに認められる
×:表面で、全面に亘り明確なブリードアウトが認められる
【0047】
【表2】

【0048】
表2より明らかなように、本発明に係るベンゾトリアゾール系化合物を含有したセルロースエステルフィルム試料は、比較例に対し、ブリードアウト耐性においても優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1で合成して得られた化合物(本発明の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系化合物の例示化合物1−1)の分光吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 例示化合物1−1の分光吸収スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール系化合物。
【化1】

〔式中、R1及びR2は置換基を表し、R3はアルキル基を表す。pは0〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表す。〕

【図1】
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【公開番号】特開2008−37784(P2008−37784A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212989(P2006−212989)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】