説明

ベース付きフィラメントランプ

【課題】発光管の端部のシール部から外部リードが突出してなるフィラメントランプと、該フィラメントランプのシール部に嵌合されるベースとからなり、前記外部リードがベース内で端子に接続されるとともに、該端子に給電線が接続されてなるベース付きフィラメントランプにおいて、ランプ全体の軸方向の全長の寸法精度を向上させた構造を提供しようとするものである。
【解決手段】前記端子の側面に端子側係合部が形成され、前記ベースの挿通孔にベース側係合部が形成され、前記ベースが前記端子側係合部によって軸方向への移動が規制されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベース付きフィラメントランプに関するものであり、特に、ベースをセメント等の接着剤を用いることなくフィラメントランプに固定してなるベース付きフィラメントランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザービームプリンタなどの画像固定装置のトナー定着用加熱光源として用いられるフィラメントランプにおいては、その両端の封止部内の金属箔に、フィラメントの両端の内部リードと、発光管外に導出される外部リードとを接続してピンチシールするものが一般に多用されていた。
このようなフィラメントランプは、通常その両端のピンチシール部にベースを取り付けて使用されるが、このベースをセメント等の接着剤を用いることなく取り付ける構造のものが知られている。例えば、実用新案登録第2579042公報(特許文献1)などがこれである。
【0003】
フィラメントランプ30は、石英ガラスからなる長尺な発光管31の両端にピンチシールからなる封止部32が形成されており、その発光管31内部にはフィラメント33が管軸と一致するように配置されている。そして、前記発光管31の両端のシール部32内には、図示しない金属箔が埋設されていて、前記フィラメント33の内部リード34と、発光管外部に導出された外部リード35とが、それぞれ溶接等により接続されている。
そして、前記ピンチシール部32には、ベース36が嵌合されている。このベースは、例えばセラミックよりなる略円筒形状体であり、一端側にシール部32が挿入される第1の開口37が、他端側に給電線42が挿入される第2の開口38が形成されている。
その中央部には、溶接作業孔39が形成されており、該溶接作業孔39は第2開口38と連通している。また、該溶接作業孔39と前記第1開口37との間には隔壁40が形成され、該隔壁40には外部リード挿通口41が形成されている。
【0004】
フィラメントランプ30のシール部32はベース36の第1開口37に挿入され、このとき、シール部32から外部に導出された外部リード35は前記外部リード挿通口41を貫通して溶接作業孔39内にまで突出する。
一方、給電線42の先端には端子43が、圧着や溶接などの手段によって固着されていて、この給電線42が第2開口38に挿入されると、その先端の端子43は前記溶接作業孔39内に位置し、ここで前記外部リード35と重なり合う位置関係にある。
そして、該溶接作業孔39を介して適宜の溶接具により、外部リード35と前記端子43とが溶接されるものである。
このとき、シール部32と端子43は、隔壁40を両側から挟さむように固定され、これによりベース36がシール部32に対して固定される。
【0005】
ところで、この従来例においては、前記したように、ランプ30のシール部32は、ベース36の第1開口37の底部に当接するまで挿入されて、その状態で端子43とともに隔壁40を挟持することによって、ベース36とランプ30の位置関係が決定する。
ところで、ピンチシールによるシール部32は、ガラスを加熱した状態で加圧することによって形成しているので、加圧時のガラスの変形の仕方が、材料となる個々のガラス管によって異なり、一定以上の寸法精度を求めることができない。そのため、どうしても個々のガラス管によって、管軸方向の長さにばらつきが生じることが避けられず、両端のシール部32に装着したベース36間の距離にばらつきが生じてしまうという不具合がある。
このように、ランプ30とベース36を含めたランプ全長は、このシール部32の寸法精度のバラツキによって左右されてしまい、どうしても誤差が避けられず、その結果ランプを灯具に装着したときにランプの発光部の位置がずれてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2579042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、フィラメントランプのピンチシール部に嵌合されたベースを有し、前記フィラメントランプの外部リードがベース内で端子に接続されるとともに、該端子に給電線が接続されてなるベース付きフィラメントランプにおいて、前記端子とベースを係合させることによりベースの軸方向の動きを規制して、ランプ全体の軸方向の全長の寸法精度を向上させた構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明では、フィラメントランプのシール部に嵌合されたベース内に収容される端子の側面に端子側係合部が形成され、前記ベースの挿通孔にはベース側係合部が形成され、前記ベースが前記端子側係合部によって軸方向への移動が規制されていることを特徴とする。
また、前記端子側係合部が、端子の側面に形成された切り欠きからなり、前記ベース側係合部が挿通孔内面から突出する仕切り壁からなり、該仕切り壁には前記端子が通過できる隙間が形成されていることを特徴とする。
また、前記端子側係合部が、端子の側面から突出する突片からなり、前記ベース側係合部が挿通孔内面に形成された凹所からなり、前記挿通孔内面には前記端子が通過できるスリットが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベースは、係合する端子側係合部によって軸方向の動きが規制されるので、ベースのランプに対する軸方向位置が、ガラス部材であるランプの端部に依存する場合に比べて、極めて向上する。これにより、ベースを含めたランプ全長が一定となり、その寸法精度が向上してランプによるばらつきが生じないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のベース付きフィラメントランプの端部の断面図。
【図2】図1の実施例の組み立て工程の説明図。
【図3】図2の組み立て工程での要部の説明図。
【図4】他の実施例の組み立て工程の説明図。
【図5】図4の形態の更に他の実施例。
【図6】最終組み立て作業の説明図。
【図7】従来技術の端部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明のベース付きフィラメントランプの端部の断面図であり、(A)は平面断面図、(B)その側断面図である。
フィラメントランプ1のシール部2に嵌合されるベース5には、その両端に貫通する挿通孔6が形成されていて、一端側からフィラメントランプ1のシール部2が、他端側から給電線10が嵌挿されている。
これらシール部2から突出する外部リード3と、給電線10とは、ベース5内で端子7にそれぞれ接続されている。そして、該端子7の側面には切り欠き8が形成されており、前記ベース5の挿通孔6に形成された一対の仕切り壁11、11に係合している。該仕切り壁11、11間には隙間12が形成され、後述するように、前記端子7の平坦面を通過させることができる。
そして、図1(B)に示すように、前記ベース5には溶接作業孔9が穿設されていて、端子7と外部リード3との溶接作業は、この溶接作業孔9に溶接具を挿入してなされる。
【0012】
この組み立て工程を図2に基づいて説明する。
図2(A)、(B)に示すように、ベース5の挿通孔6には仕切り一対の壁11、11が設けられ、その間には隙間12が形成されている。
給電線10には圧着や溶接などによって端子7が接続されていて、この状態でベース5内に挿入される。このとき、端子7の向きは、ベース5の仕切り壁11、11間の隙間12の向きと一致している。
これにより、図2(C)に示すように、端子7は仕切り壁11、11間を通過して、その両側面の切り欠き8、8が仕切り壁11と一致する箇所に位置するまで挿入される。
この位置で、給電線10を回動させると、端子7の切り欠き8がベース5の仕切り壁12に係合する。これにより、ベース5は端子7の切り欠き8によって軸方向の動きが規制されることになる。
【0013】
その動作について、図3を用いて更に詳しく述べると以下の通りである。
図3は、端子7と仕切り壁11、11のみを取り出して記載している。図3(A)において、端子7と仕切り壁11、11間の隙間12の方向が一致していて、この状態で端子7は隙間12を通過して挿入される。
次いで、図3(B)に示すように、端子7の切り欠き8とベースの仕切り壁11とが一致する位置で、端子7が90°回動されると、切り欠き8は仕切り壁11に係合する。勿論、端子7を回動するのに代えて、ベース5側を回動するものであってもよい。
【0014】
再び図2を参照して、図2(F)は、図2(D)を90°回転させた状態の断面図であって、図2(E)のA−A断面図である。
上記のようにして端子7とベース5の仕切り壁11とが係合した状態で、フィラメントランプのシール部2をベース5の挿通孔6の他端から挿入して、図2(G)に示すように、外部リード3が端子7に重なり合うようにする。この状態で、図1(B)に示される溶接作業孔9を介して外部リード3が端子7に溶接される。
こうすることで、端子7の切り欠き8とベース5の仕切り壁11とが係合した状態の端子7にランプの外部リード3が溶接されるので、該ベース5は端子7によって軸方向への動きが規制されて、ランプとの位置関係が所定の位置に固定される。
【0015】
上記の実施例では、端子側係合部を端子7の切り欠き8とし、ベース側係合部を挿通孔6の内面に設けた仕切り壁11としたが、これに限られず、その逆の関係であってもよく、その例が図4に示されている。
図4(C)で示されるように、端子7の両側面には突片14、14が形成されていて、これが端子側係合部を構成する。一方、ベース5の挿通孔6には一対の突出壁15、16が設けられ、その間に凹所17が形成されていて、これがベース側係合部を構成する。
そして、図4(A)、(B)に示すように、端子7挿入側の一方の突出壁15には、該端子7が通過できるスリット18が形成されている。
【0016】
図4(A)に示すように、先端に端子7が接続された給電線10がベース5の挿通孔6に挿入され、その先端の端子7の突片14がスリット18を通過して、前記凹所17内に位置するまで挿入される。
次いで、この例では、ベース5側を90°回動する。それにより、端子7の突片14がベース5の凹所17に係合する。
その状態が図4(C)に示されている。次いで、反対側からフィラメントランプのシール部2をベース5の挿通孔6に挿入して、外部リード3が端子7に重なり合うようにする。
この図4(C)を、90°回転させて示したものが図4(D)であって、溶接作業孔9を介して、外部リード3と端子7とを溶接する。
【0017】
なお、上記実施例では、ベースに設けるベース側係合部である凹所17を、一対の突片15、16によって形成しているが、挿通孔6の内表面自体に形成するものであってもよく、その例が図5に示されている。
図5は、ベース5のみを示し、(A)は正面図、(B)はその側断面図であって、図において、挿通孔6の内表面に凹所17が形成されていて、ベース5の一端側、即ち、給電線および端子を挿入する端部から該凹所に至るスリット19が形成されている。
同図には示されないが、給電線の先端に取り付けられた端子7は、このスリット19を通して挿通孔6に挿入されて、凹所17内に至るものである。
そして、その後、給電線もしくはベースの何れかを回動させて、突片と凹所を係合させることは、上記図4の例と同じである。
【0018】
上記の構成をもつベース付きフィラメントランプの組み立て工程における最終工程である、外部リードと端子の溶接作業は、図6に示されるように、溶接用治具を用いることによって、ベース間の軸方向寸法を正確に決定できる。
ベース付きフィラメントランプが灯具に装着されるときに求められる軸方向寸法は、ランプに取り付けたベース間の寸法精度である。
図6において、組み立てられたベース付きフィラメントランプは、両端のベース5、5を溶接用治具20の溝21、21内に載置する。そして、例えばベース5の段部5aをこの溝21の端部に押圧して、段部5a、5a間の寸法Lを所定の寸法に維持し、この状態で、外部リード3と端子7との溶接を行うようにすればよい。
勿論、段部5aは一例にすぎず、ベース5における寸法精度が要求される箇所を寸法管理対象とすればよい。
【0019】
上記のように、本発明においては、フィラメントランプのシール部に嵌合されたベース内に収容される端子の側面に端子側係合部が形成され、前記ベースの挿通孔にはベース側係合部が形成され、前記ベースが前記端子側係合部によって軸方向への移動を規制するようにしたことにより、ベースの位置決めを寸法精度の悪いガラスに依存することなく、正確な軸方向の寸法精度が実現した。
また、ベースと端子の係合も単にどちらかを90°回動するだけでよく、その作業が極めて簡略である。
【符号の説明】
【0020】
1 フィラメントランプ
2 シール部
3 外部リード
5 ベース
6 挿通孔
7 端子
8 切り欠き(端子側係合部)
9 溶接作業孔
10 給電線
11 仕切り壁(ベース側係合部)
12 隙間
15 突片(端子側係合部)
16、17 突出壁
18 凹所(ベース側係合部)
19 スリット
20 溶接用治具
21 溝




【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管の端部のシール部から外部リードが突出してなるフィラメントランプと、該フィラメントランプのシール部に嵌合されるベースとからなり、前記外部リードがベース内で端子に接続されるとともに、該端子に給電線が接続されてなるベース付きフィラメントランプにおいて、
前記端子の側面には端子側係合部が形成され、前記ベースの挿通孔にはベース側係合部が形成され、前記ベースが前記端子側係合部によって軸方向への移動が規制されていることを特徴とするベース付きフィラメントランプ。
【請求項2】
前記端子側係合部が、端子の側面に形成された切り欠きからなり、前記ベース側係合部が挿通孔内面から突出する仕切り壁からなり、該仕切り壁には前記端子が通過できる隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベース付きフィラメントランプ。
【請求項3】
前記端子側係合部が、端子の側面から突出する突片からなり、前記ベース側係合部が挿通孔内面に形成された凹所からなり、前記嵌挿孔内面には前記端子が通過できるスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベース付きフィラメントランプ。
【請求項4】
前記端子側係合部と、前記ベース側係合部とは、係合位置において互いに相対的に回動することによって係合することを特徴とする請求項2または3記載のベース付きフィラメントランプ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−48830(P2012−48830A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186872(P2010−186872)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)