説明

ペット用トイレ

【課題】排泄液に由来する悪臭を発生し難く、良好な飼育環境を維持し得るペット用トイレを提供すること。
【解決手段】本発明のペット用トイレ1は、ペットの排泄液を透過可能な簀の子3と、簀の子3の下方に配置され簀の子3を透過した排泄液を収容する液溜め部60とを備えている。液溜め部60は、底部41と、底部41の上方に位置し且つ簀の子3を透過した排泄液を受け入れる上部開口65とを有し、上部開口65は、簀の子3よりも平面視における大きさが小さい。簀の子3と上部開口65との間に、上部開口65に向かって下向きに傾斜する傾斜部66が形成されている。簀の子3と底部41との間に、液透過性の消臭部21が、液溜め部60内に収容された排泄液と接しないように配置されており、簀の子3を透過した排泄液が、消臭部21を透過して液溜め部60内に移行するようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猫や犬等のペット(小動物)の排泄液の処理に用いられるペット用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
猫や犬等のペットの排泄液(尿等)を処理するためのペット用トイレとして、トイレ本体を液透過性の簀の子により上下に区画して、上層部分に猫砂と呼ばれる便床を形成する粒状の排泄物処理材を収容し、下層部分のトレーに繊維や吸水性樹脂等を含む液保持性の吸収体を収容して使用するものが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。斯かる構成のペット用トイレにおいて、トレーがトイレ本体から引き出し可能になっているものも知られている(例えば特許文献3参照)。これらのペット用トイレは、上層部分に収容された排泄物処理材が、ペットの排泄液を素早く通過させ、通過した尿を簀の子の通液孔を介して下層部分に落下させ、落下した尿を下層部分のトレーに収容された吸収体に積極的に吸収させるものである。
【0003】
また、特許文献4には、前述の如き構成を有するペット用トイレにおいて、簀の子より下方の下層部分を、吸収体を併用するトレーに代えて、液溜め部としたものが提案されている。特許文献4に記載のペット用トイレにおいては、簀の子と液溜め部の上部開口との間に、該上部開口に向かって下向きに傾斜する傾斜部が形成され、該簀の子を透過した排泄液が該傾斜部を伝って該上部開口に誘導されるようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3519353号公報
【特許文献2】特許第3939272号公報
【特許文献3】特開2006−67920号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0163604号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に記載の如き従来のペット用トイレは、簀の子の下方に配置されたトレーあるいは液溜め部内の排泄液あるいはその腐敗物(排泄液等)の臭いが、簀の子を介して外部に揮散するおそれがあり、悪臭の原因となるおそれがある。猫砂等の粒状の排泄物処理材が簀の子の上面の全域に十分な量で敷設されていれば、それらの排泄物処理材が排泄液等の臭いをある程度遮断するため、悪臭の問題は生じ難いが、例えば猫は、排泄後に排泄物処理材を足でかき混ぜる習性があるため、仮に、猫が排泄する前において、簀の子の上面の全域が排泄物処理材で覆われていて排泄液等の外部への揮散が防止可能になされていたとしても、猫が排泄後に排泄物処理材をかき混ぜることによって、排泄物処理材の分布が変動して簀の子が露出し、その露出した部分を介して排泄液等が外部に揮散するおそれがある。猫によって排泄物処理材がかき混ぜられても簀の子が露出しないように、簀の子上に多量の排泄物処理材を敷設することは、トイレの取り扱いやランニングコスト等の点で問題がある。
【0006】
特許文献2には、悪臭の原因の一つである、吸収体内に保持された排泄液の腐敗を防止する目的で、トレー内に収容される吸収体に抗菌剤を配合する方法が記載されているが、この方法では、排泄液の腐敗臭を抑制できても、排泄液自体の臭い(尿臭等)を抑制することはできず、排泄液に由来する悪臭の問題を完全に解決することはできない。また、トレー内に収容される吸収体は、通常使い捨てであって、一定のサイクルで新しいものと交換されるため、斯かる吸収体の使用を必須とするペット用トイレは、水分を多く含んだ使用済みの吸収体を可燃ゴミとして大量に発生させ、環境に対する負荷が大きく、また、ランニングコストの点でも問題がある。
【0007】
従って本発明の課題は、排泄液に由来する悪臭を発生し難く、良好な飼育環境を維持し得るペット用トイレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ペットの排泄液を透過可能な簀の子と、該簀の子の下方に配置され該簀の子を透過した排泄液を収容する液溜め部とを備えたペット用トイレであって、前記液溜め部は、底部と、該底部の上方に位置し且つ前記簀の子を透過した排泄液を受け入れる上部開口とを有し、該上部開口は、該簀の子よりも平面視における大きさが小さく、前記簀の子と前記液溜め部の上部開口との間に、該上部開口に向かって下向きに傾斜する傾斜部が形成され、該簀の子を透過した排泄液が該傾斜部を伝って該上部開口に誘導されるようになされており、前記簀の子と前記液溜め部の底部との間に、液透過性の消臭部が、該液溜め部内に収容された排泄液と接しないように配置されており、該簀の子を透過した排泄液が、該消臭部を透過して該液溜め部内に移行するようになされているペット用トイレを提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペット用トイレは、排泄液に由来する悪臭を発生し難く、良好な飼育環境を維持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のペット用トイレの一実施形態の使用状態における長手方向に沿った断面を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示すペット用トイレの模式的な分解斜視図である。
【図3】図3は、図1に示すペット用トイレにおける液溜め部(外容器)の模式的な上面図である。
【図4】図4は、本発明のペット用トイレの他の実施形態の図1相当図である。
【図5】図5は、図4に示すペット用トイレにおける液溜め部(外容器)の模式的な上面図である。
【図6】図6は、本発明のペット用トイレの更に他の実施形態の図1相当図である。
【図7】図7は、図6に示すペット用トイレにおける液溜め部(外容器)の模式的な上面図である。
【図8】図8は、本発明のペット用トイレの更に他の実施形態の図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のペット用トイレについて、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。第1実施形態のペット用トイレ1Aは、図1〜図3に示すように、猫、犬等のペット(小動物)の排泄液(尿等)を透過可能な簀の子3と、簀の子3の下方に配置され簀の子3を透過した排泄液を収容する液溜め部60とを備えている。
【0012】
第1実施形態について更に説明すると、ペット用トイレ1Aは、トイレ本体2、及びトイレ本体2内を上層部分2Aと下層部分2Bとに区画する簀の子3を備え、上層部分2Aに便床を形成する粒状の排泄物処理材20を収容して使用する。下層部分2Bに配置された液溜め部60内には、排泄液を吸収保持し得る液保持性の吸収体を収容することも可能であるが、基本的にはそのような吸収体は収容しない。
【0013】
ペット用トイレ1Aは、図1及び図2に示すように、上部開口を有する外容器4と、外容器4内に着脱自在に装着される内容器5とを備えている。外容器4は、外容器4(液溜め部60)の底面を形成する平坦な底部41と、底部41の周縁から立設し外容器4(液溜め部60)の側面を形成する側壁部42,43とを有する、平面視において略四角形形状(略矩形形状)のトレー状のものである。外容部4の底部41及び側壁部42,43によって囲まれた内側は、上から順に、内容器5の収容部及び液溜め部60となっている。また、内容器5も、外容器4と同様に、略四角形形状のトレー状のものであり、その底部51及び側壁部52,53によって囲まれた内側は、排泄物処理材20の収容部となっている。外容器4の側壁部42及び内容器5の側壁部52は、トイレ本体2(外容器4、内容器5)の長手方向に延びており、外容器4の側壁部43及び内容器5の側壁部53は、該長手方向と直交する方向(幅方向)に延びている。
【0014】
外容器4は、図1に示すように、トイレ本体2の幅方向に延びる側壁部43の上端部にフランジ部44を有している。フランジ部44には垂下壁部45が設けられており、この垂下壁部45の外周面には、内容器5の後述する嵌合凹部56に嵌合する嵌合凸部46が設けられている。また、内容器5は、トイレ本体2の幅方向に延びる側壁部53の上端部にフランジ部54を有している。フランジ部54には、図1に示すように垂下壁部55が設けられており、垂下壁部55の内周面には、外容器4の嵌合凸部46が嵌合する嵌合凹部56が設けられている。尚、図1には、トイレ本体2の長手方向に延びる側壁部42及び側壁部52が図示されていないが、これらの側壁部42,52についても、前述したトイレ本体2の幅方向に延びる側壁部43,53と同様に構成されている。
【0015】
内容器5の底部51は、液透過性の簀の子3を含んで構成されている。即ち、簀の子3は内容器5の一部である。簀の子3は、ペット用トイレ1において排泄動作を行うペットの足場を構成するもので、扁平で平面視して略矩形形状をしており、図1に示すように、トイレ使用時にペットに近い側に位置する上面3a、及び上面3aと反対側に位置し且つトイレ使用時にペットから遠い側に位置する下面3bを有している。上面3a上には、適量の排泄物処理材20が積載されて排泄物処理層が形成され、ペットは、該排泄物処理層上にて尿等の排泄液を排泄する。
【0016】
簀の子3は、該簀の子3を厚み方向に貫通する(上面3aと下面3bとを連通する)、平面視して略矩形形状の貫通孔31を多数有している。多数の貫通孔31は、簀の子3の長手方向及び幅方向それぞれに所定間隔を置いて配置されている。簀の子31は、上層部分2A(内容器5内)の液を下層部分2Bに通過させるための透液孔として機能する。
【0017】
外容器4及び内容器5の大きさは特に制限されない。外容器4は、例えば長辺が300〜600mm、短辺が200〜400mmの平面矩形形状を有し、側壁部41,42の高さが70〜200mmである。また内容器5は、例えば長辺が295〜595mm、短辺が195〜395mmの平面矩形形状を有し、側壁部52,53の高さが30〜170mmである。尚、ここに示した外容器4及び内容器5の各部の寸法は、内寸法(容器4,5の内側の寸法)である。
【0018】
液溜め部60は、図1〜図3に示すように、底部41(外容器4の底部)と、底部41の上方に位置し且つ簀の子3(内容器5の底部51)を透過した排泄液を受け入れる上部開口65とを有している。上部開口65は、平面視して四角形形状の空間である。簀の子3と液溜め部60の上部開口65との間に、上部開口65に向かって下向きに傾斜する傾斜部66が形成され、簀の子3を透過した排泄液が傾斜部66を伝って上部開口65に誘導されるようになされている。傾斜部66は、外容器4の側壁部42,43の内面における、簀の子3の下方近傍(簀の子3の下面3bから好ましくは20mm以内の位置)をその上端とし、そこから容器内方に向かって斜め下方に突出して形成されており、外容器4の内面の全周に亘って連続している。上部開口65は、傾斜部66(傾斜部66の下端)によって包囲されており、外容器4(トイレ1)の平面視において中央部に位置している。傾斜部66の水平面(簀の子3)に対する傾斜角度θ(図1参照)は、傾斜部66上の排泄液を上部開口65に向けて流れ易くする観点から、好ましくは10〜30°である。
【0019】
液溜め部60の上部開口65は、簀の子3及び上部開口65と対向する底部41それぞれよりも平面視における大きさが小さい。簀の子3の面積をS1、液溜め部60の上部開口65の面積をS2、液溜め部60の底部41の面積をS3とした場合、S1/S2は
20〜50であることが好ましく、S3/S2は30〜70であることが好ましい。上部開口65の面積S2は、好ましくは10〜100cm2、更に好ましくは20〜60cm2である。
【0020】
液溜め部60内には、図1及び図2に示すように、液受けとしてのトレー6Aが収容されており、上部開口65から液溜め部60内に移行してきた排泄液は、トレー6A内に収容される。トレー6Aは、トレー6Aの底面を形成する平坦な底部61と、底部61の周縁から立設しトレー6Aの側面を形成する側壁部62,63とを有し、底部61の上方が開放されていて上部開口が形成されており、平面視において略四角形形状(略矩形形状)である。トレー6Aの底部61は、外容器4(液溜め部60)の底部41と略同じ面積を有している。トレー6Aの側壁部62は、トレー6Aの長手方向(後述するトレー6Aの引き出し方向X)に延びており、側壁部63は、該長手方向と直交する方向に延びている。
【0021】
トレー6Aは、液溜め部60内に着脱自在に装着されており、トイレ本体2から引き出し可能になされている。図2に示すように、トレー6Aの引き出し方向Xは、平面視において略矩形形状の外容器4(トイレ本体2)の長手方向と平行である。外容器4の相対向する側壁部43,43(トイレ本体2の幅方向に延びる側壁部)のうちの一方には、下層部分2Bに相当する部分に、トレー6Aの出し入れが可能な開口部47が形成されている。開口部47の形状及び大きさは、トレー6Aの引き出し方向Xと直交する方向の断面形状及び大きさと略同じになされており、開口部47から手でトレー6Aを引き出しあるいは挿入することができるようになされている。トレー6Aの引き出し方向Xの前端側の側壁部63の中央部には、トレー6Aを引き出す際に指を引っ掛けることが可能な凹部64が形成されている。
【0022】
第1実施形態のペット用トイレ1Aの主たる特長の1つとして、図1に示すように、簀の子3と液溜め部60の底部41との間に、液透過性の消臭部21が、液溜め部60(トレー6A)内に収容された排泄液と接しないように配置されており、簀の子3を透過した排泄液が、消臭部21を透過して液溜め部60内に移行するようになされている点が挙げられる。消臭部21は、簀の子3と液溜め部60の上部開口65との間〔上部開口65(液溜め部60)の上方〕で上部開口65の近傍(上部開口65から上方に好ましくは10mm以内の位置)に、上部開口65を覆うように配置されている。消臭部21は、上部開口65を包囲する傾斜部66によって、上部開口65の上方に支持されている。ここで「液溜め部内に収容された排泄液と接しないように」とは、通常の使用状態、即ち液留め部に尿が満たされ、極端には漏れ出る程度にまで満たされるような状態は除いた使用状態で排泄液と接しないようになされていることを意味する。
【0023】
消臭部21は、液溜め部60内の排泄液あるいはその腐敗物(排泄液等)に由来する臭い成分が液溜め部60の上部開口65から簀の子3を通過してトイレ外部に放出されることを物理的に防止する蓋として機能し、消臭部21によって、排泄液等に由来する臭い成分は簀の子3より下方の下層部分2B(液溜め部60)内に閉じ込められ、それにより悪臭の発生が防止される。また、消臭部21と液溜め部60(トレー6A)内の排泄液とが接触しないようになされていることにより、消臭部21の速乾性が向上し、排泄液によって消臭部21が濡れても速やかに乾燥し、それにより、消臭部21における、悪臭(排泄液の腐敗臭)の原因となる菌の増殖が防止され、悪臭の発生が効果的に防止される。
【0024】
消臭部21は、消臭シート7を含んで構成されている。第1実施形態においては、消臭部21は消臭シート7のみから構成されている。消臭シート7は、扁平な板状(シート状)であり、その平面視形状は、簀の子3の平面視形状と同様に矩形形状である。消臭シート7の詳細は後述する。
【0025】
消臭部21(消臭シート7)は、液透過性を有している。液透過性の消臭部21は、下記測定方法による液透過率が80%以上、好ましくは90%以上である。液透過率が80%以上である液透過性の消臭部21は、尿等の排泄液の透過性に優れ、排泄液をその上部に保持し難く(液バリア性を有しておらず)、その上面(簀の子3との対向面)で受けた排泄液をその下面(液溜め部60の底部41との対向面)側に速やかに移行させることができるため、悪臭の防止効果に優れる。ちなみに、この種のペット用トイレにおいて、第1実施形態の液溜め部60(トレー6A)に相当する部分に収容される液保持性の吸収体(例えばパルプ繊維、粘土鉱物系材料、高分子吸収材料等の成分の1種以上を含む原料を扁平板状に成形したもの)は、通常、最下層に液バリア性を有し、液透過率はほぼ0%である。
【0026】
<液透過率の測定方法>
内径65mmの中空円筒部を有し且つ該円筒部の底部に液濾過速度100cc/分以上のサポートメッシュが装着された、ガラス製濾過器の該サポートメッシュの上面上に、測定対象物〔消臭部(消臭シート)〕を、該サポートメッシュの上面の全域を覆うように配置する。濾過器の下方には、測定対象物及びサポートメッシュを透過した液を収容する容器を設置しておく。濾過器の円筒部の上部開口から、25℃に温度調節されたイオン交換水を300cc投入し、投入時点から3分経過後に、濾過器下方の容器内に収容されたイオン交換水の量(透過量、単位cc)を測定し、次式により液透過率(%)を算出する。
液透過率(%)={透過量(cc)/300}×100
【0027】
消臭部21の液透過性は、消臭部21の形成材料、厚み、坪量等を適宜選択することによって調整可能である。必要に応じ、消臭部21に、該消臭部21を厚み方向に貫通する貫通孔を多数形成して、消臭部21の液透過性を高めても良い。尚、消臭部21が、後述する消臭シート7A及び7Bのように、繊維を主体として構成されている(繊維の含有量が50質量%以上である)場合は、その繊維間の空隙が透液孔として機能し得るため、特に貫通孔を形成しなくても、高い液透過性を有し、優れた悪臭防止効果を奏し得る。
【0028】
消臭部21は、それによる消臭効果を最大限に引き出して悪臭の発生を効果的に防止する観点から、液溜め部60の上部開口65の面積の90%以上、特に95%以上を覆うように配置されていることが好ましい。第1実施形態においては、消臭部21の平面視における大きさは、上部開口65の平面視における大きさよりも大きく、消臭部21は、上部開口65の全域を覆っており、上部開口65の面積の100%を覆うように配置されている。消臭部21の面積S4と上部開口65の面積S2との比(S4/S2)は、好ましくは1.1〜1.4である。消臭部21の面積S4は、好ましくは11〜140cm2、更に好ましくは22〜84cm2である。
【0029】
消臭部21を構成する消臭シート7について説明する。消臭シート7としては、例えば、植物性繊維及びバインダー繊維を混合積繊し、得られた混合積繊物を、該バインダー繊維の融点以上の温度で加熱しつつ圧縮することにより得られたもの(以下、消臭シート7Aともいう)を用いることができる。消臭シート7Aにおいて、バインダー繊維は本来の繊維形状を略維持しており、消臭シート7Aは、植物性繊維とバインダー繊維とが絡み合って構成される繊維集合体である。
【0030】
消臭シート7Aに含有される植物性繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ(NUKP、NBKP等)、広葉樹系パルプ(LUKP、LBKP等)等の木材繊維;コットンリンター、コットンリント、麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材繊維が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの植物性繊維の中でも、特に、漂白されていない木材繊維である針葉樹未晒クラフトパルプ(NUSP)や広葉樹未晒クラフトパルプ(LUSP)は、抗菌機能及び悪臭に対するマスキング機能を有しているため、消臭シートに抗菌剤やマスキング剤(香料)を別途添加せずとも優れた消臭機能を発揮しうるため、本発明で好ましく用いられる。
【0031】
消臭シート7Aに含有されるバインダー繊維としては、バインダー繊維の融点以上の温度で加熱されて接着性を発現しうる、撥水性の繊維状物を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂からなる合成繊維が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのバインダー繊維の中でも、特に、接着性を付与したポリエチレンからなる合成繊維は、低温で溶融接着に優れており、本発明で好ましく用いられる。
【0032】
消臭シート7Aにおける植物性繊維の含有量は、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70〜97質量%である。また、消臭シート7Aにおけるバインダー繊維の含有量は、好ましくは3〜50質量%、更に好ましくは5〜20質量%である。
【0033】
消臭シート7Aには、植物性繊維及びバインダー繊維に加えて、必要に応じ、4級アンモニウム塩等の抗菌剤;香料等のマスキング剤:活性炭、ゼオライト等の吸着剤等の他の成分を含有させることができる。
【0034】
消臭シート7Aの厚みは、好ましくは0.5〜40mm、更に好ましくは2〜15mmであり、坪量は、好ましくは30〜2500g/m2、更に好ましくは50〜500g/m2である。
【0035】
消臭シート7Aは、例えば次のように乾式抄紙法によって製造することができる。先ず、植物性繊維及びバインダー繊維をカード方式によって混合積繊させて混合積繊物であるウエブを得る。次いで、得られたウエブに熱処理を行いつつ、該ウエブを圧縮する。このウエブの熱処理においては、ウエブを、バインダー繊維の融点以上の温度で加熱する。この温度は、バインダー繊維の融点よりも10℃以上高いことが好ましい。ここで、「バインダー繊維の融点」とは、バインダー繊維が複数種存在することによってバインダー繊維の融点が複数存在する場合、あるいは1種類のバインダー繊維が複数の融点を有している場合は、それら複数の融点のうちの最も高い融点である。ウエブ内では、植物性繊維及びバインダー繊維が混合された状態になっており、この状態下に該ウエブを熱圧縮することで、熱処理により接着性を帯びたバインダー繊維どうし、あるいは該バインダー繊維と植物性繊維とが、それらの交点で接着して一体化し、目的とする消臭シート7Aが得られる。熱処理における熱の付与には、熱風の吹き付けや赤外線の照射等が用いられる。ウエブの圧縮には、金属製の網状のベルトで上下から挟み、一定時間加圧保持する方法等が用いられる。
【0036】
尚、前述したように、得られた消臭シート7Aに、該消臭シート7Aを厚み方向に貫通する貫通孔を多数形成して、消臭シート7Aの液透過性を更に高めても良い。その場合、貫通孔の直径は、5mm程度とすることが好ましい。また、貫通孔は、シート面積100cm2当たり20〜500個形成されていることが好ましい。
【0037】
消臭部21を構成する消臭シート7としては、前述した植物性繊維及びバインダー繊維を含んで構成されるもの(消臭シート7A)に限定されず、例えば、活性炭及び不織布を含んで構成されるもの(以下、消臭シート7Bともいう)を用いることもできる。
【0038】
消臭シート7Bの具体例として、例えば、上下2枚の液透過性の不織布(上層不織布及び下層不織布)の間に活性炭を介在配置させたものが挙げられる。上層不織布と下層不織布とは、接着剤や熱溶着等により接合されて一体化されている。また、活性炭が接着剤等によって単層の不織布に接着されていても良い。
【0039】
消臭シート7Bを構成する不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、あるいはこれらの不織布の2種以上を貼り合せた複合シート等が挙げられる。上層不織布及び下層不織布の種類、厚み、坪量は同じでもよく、異なっていても良い。活性炭の坪量(散布量)は、好ましくは5〜500g/m2、更に好ましくは20〜200g/m2である。消臭シート7Bの厚み及び坪量は、消臭シート7Aと同様にすることができる。消臭シート7Bには、消臭シート7Aと同様に、不織布及び活性炭以外の他の成分(抗菌剤、マスキング剤等)を含有させることができる。
【0040】
ペット用トイレ1Aの構成部材〔外容器4(液溜め部60、傾斜部66)、内容器5(簀の子3)等〕の材質は、耐食性を有するものであれば特に制限はない。軽量で取り扱い易く、成形性が良い等の点から、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等の汎用の合成樹脂で一体成形されたものが好ましい。また、表面に撥水加工や抗菌加工が施された樹脂等も、ペット用トイレ1Aの構成部材として好適に用いられる。
【0041】
トイレ本体2の上層部分2Aに収容される排泄物処理材20としては、当該技術分野において猫砂やトイレ砂等として用いられている粒状の排泄物処理材を特に制限無く用いることができる。排泄物処理材20は、好ましくは、植物由来の素材の粉砕物、合成樹脂、粘土鉱物等の成分の1種以上を含んで構成され、成形された成形物が挙げられる。排泄物処理材20の形状は、例えば、円筒形状、球状、立方体、直方体等とすることができる。
【0042】
第1実施形態のペット用トイレ1Aは、図1に示すように、簀の子3の上面3aの全域に適量の排泄物処理材20を敷設して上層部分2Aに排泄物処理層を形成すると共に、簀の子3の下面3bより下方の下層部分2Bにおける液溜め部60内にトレー6Aを配置して使用する。排泄物処理材20は、ペットが排泄する尿等の排泄液を素早く透過させ、この透過した排泄液は、液透過性の簀の子3の貫通孔31を透過して、液溜め部60の上部開口65を覆う消臭部21上あるいは傾斜部66上に落下する。傾斜部66上に落下した排泄液は、傾斜部66を伝って下方の消臭部21に流れる。消臭部21に到達した排泄液は、消臭部21を透過して液溜め部60内のトレー6A内に収容される。ペット用トイレ1Aは、猫、犬、ウサギ、ハムスター等の小動物のトイレとして使用でき、特に、猫のような、排泄後に排泄物処理材を足でかき混ぜる習性がある小動物のトイレとして好適である。
【0043】
第1実施形態のペット用トイレ1Aによれば、簀の子3(内容器5の底部51)の下面3bと排泄液を収容する液溜め部60の上部開口65との間に、液透過性の消臭部21(消臭シート7)が配置されており、この消臭部21が、液溜め部60(トレー6A)内の排泄液等に由来する臭い成分に対して「蓋」として機能するため、簀の子3の上面3a上に敷設された排泄物処理材20が、猫等によってかき混ぜられて上面3aが露出したとしても、蓋としての消臭部21によって、臭い成分が簀の子3を通過してトイレ外部に放出されることが防止され、それによって悪臭の発生が防止され、良好な飼育環境が維持される。
【0044】
また、消臭部21の採用によって、排泄物処理材20及びこの種のペット用トイレで使用される液保持性の吸収体の低減や削減が可能となり、それによって、トイレの取り扱い性の向上、ランニングコストの低下、環境負荷の低減等の利点が得られる。第1実施形態においては、消臭部21の採用により、従来のペット用トイレのように、液溜め部60(トレー6A)内に尿等を吸収する吸収体を配置しなくても、悪臭を効果的に防止できる。このような吸収体を用いないことにより、ランニングコストの低下、ゴミ(使用済みの吸収体)の量の削減による環境負荷の低減等の利点が得られる。また、液溜め部60(トレー6A)内に直接収容された排泄液は、そのまま下水に流して廃棄することができ、その場合には、下水処理によって種々の用途に再利用することができ、あるいは下水に流さずにそのまま肥料等として利用することも可能である。これらの利点は、排泄液を吸収体に保持させた場合には得られ難い。
【0045】
次に、本発明のペット用トイレの他の実施形態について説明する。後述する他の実施形態については、前記実施形態(第1実施形態)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態についての説明が適宜適用される。
【0046】
図4及び図5には、本発明のペット用トイレの第2実施形態が示されている。第2実施形態のペット用トイレ1Bにおいては、図4及び図5に示すように、外容部4の底部41における長手方向の略半分の領域(トレー6Aの引き出し方向Xの前半分側)が、液溜め部60の平坦な底面を構成しており、底部41における残り半分の領域(トレー6Aの引き出し方向Xの後半分側)は、隆起して、液溜め部60の上部開口65に向かって下向きに傾斜する傾斜部66となっている。液溜め部60内には、トレー6Aが着脱自在に装着されている。トレー6Aは、図5に示すように、トイレ本体2から引き出し可能になされている。ペット用トイレ1Bにおける上部開口65の平面視における大きさは、簀の子3よりも小さいが、上部開口65と対向する液溜め部60の底部41(傾斜部66となっている部分を除く)とは略同じである。
【0047】
ペット用トイレ1Bにおいては、図4に示すように、傾斜部66は、その下端がトレー6Aの上方に位置するように、トレー6Aの側壁部63からトレー6Aの内方に延出しており、従って、液溜め部60の上部開口65は、第1実施形態と同様に、トレー6Aの上部開口よりも小さくなっている。斯かる構成により、傾斜部66を伝って下方に流れる排泄液は、液溜め部60内により確実に流入するようになる。斯かる作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、傾斜部66の側壁部63からの延出長さW1(図4参照)は、好ましくは2〜10mmであり、傾斜部66の下端の上部開口65(あるいは側壁62,63の上端面)からの離間距離W2(図4参照)は、好ましくは5mm以下である。
【0048】
ペット用トイレ1Bにおいては、消臭部21(消臭シート7)は、外容器4の内部に設けられた支持部48によって、液溜め部60の上部開口65の上方に支持されている。支持部48は、図4に示すように外容器4の上方から内容器5をはめ込んだ状態において、内容器5の底部51(簀の子3)と上部開口65との間に設けられており、図5に示すように、外容器4における傾斜部66が形成されていない領域(前半部側)の側壁部42,43の内面から、容器内方に向かって水平に突出して形成されており、外容器4の前半部側の内面の全周に亘って連続している。支持部48は、消臭部21の周縁部の下面と接触して該周縁部を下方から支持することによって、消臭部21全体を液溜め部60の上部開口65の上方に浮かせて支持しており、それにより消臭部21と液溜め部60(トレー6A)内の排泄液とが接触しないようになされている。消臭部21の周縁部を除く部分は、支持部48によって支持されておらず、該部分の下方には、液溜め部60内に装着されたトレー6Aの底部61が位置している。消臭部21による消臭効果を最大限に引き出す観点から、支持部48によって直接支持される部分(支持部48と重なる部分)の総面積は、消臭部21の一面(下面)の全面積に対して、50%以下とすることが好ましい。第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0049】
図6及び図7には、本発明のペット用トイレの第3実施形態が示されている。第3実施形態のペット用トイレ1Cにおいては、図6及び図7に示すように、液溜め部60内に、液受けとしての液収容具6Bが着脱自在に装着されており、上部開口65から液溜め部60内に移行してきた排泄液は、液収容具6B内に収容される。外容器4は、図6中矢標Pで示す部位において、上層部分4Aと下層部分4Bとに分離可能になされており、下層部分4B内の空間部に、液収容具6Bが着脱自在に装着される。液収容具6Bは、液収容具6Bの底面を形成する平坦な底部61と、底部61の周縁から立設し液収容具6Bの側面を形成する側壁部62,63とを有し、底部61の上方の一部が開放されていて上部開口が形成されており、平面視において略四角形形状(略矩形形状)である。液収容具6Bの装着状態において、傾斜部66の下端によって画成される、液溜め部60の上部開口65は、液収容具6Bの上部開口よりも小さく、斯かる構成により液収容具6Bへの排泄液の流入を容易にする。液収容具6Bの底部61は、外容器4(液溜め部60)の底部41と略同じ面積を有している。消臭部21(消臭シート7)は、上部開口65を包囲する傾斜部66によって、上部開口65の上方に支持されている。ペット用トイレ1Cにおける上部開口65の平面視における大きさは、簀の子3及び上部開口65と対向する液溜め部60の底部41それぞれよりも小さい。第3実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0050】
図8には、本発明のペット用トイレの第4実施形態が示されている。第4実施形態のペット用トイレ1Dは、消臭部21の形態の点で、図4及び図5に示すペット用トイレ1Bと構成が異なる。即ち、ペット用トイレ1Dにおいては、図8に示すように、簀の子3(内容器5の底部51)の下方で簀の子3の下面3bから所定距離離間した位置に、液透過性の第2の簀の子30が設けられており、両簀の子3,30の間に、消臭部21として、粒状の排泄物処理材20を敷設してなる液透過性の排泄物処理層8が形成されている。第2の簀の子30は、外容器4と内容器5との間に配される中容器9の底部91であり、中容器9の一部である。中容器9は、内容器5と同形状同寸法であり、簀の子30は、貫通孔31を多数有し、簀の子3と同様に形成されている。中容器9は、内容器5と同様に、外容器4内に着脱自在に装着される。簀の子3と第2の簀の子30との離間距離H1は、排泄物処理層8(消臭部21)に悪臭防止機能を付与するのに十分な量の排泄物処理材20を敷設可能にする観点から、好ましくは5〜100mm、更に好ましくは10〜30mmである。第4実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0051】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、基本的に、消臭部21(消臭部21A)を、液溜め部60の上部開口65の近傍〔上部開口65から上方又は下方(特に上方)に好ましくは10mm以内の位置〕に配置することを想定していたが、本発明に係る消臭部は、簀の子3と液溜め部60の底部41との間に、液溜め部60(トレー6A、尿収容具6B)内に収容された排泄液と接しないように配置されていれば良く、簀の子3と底部41との間の任意の位置に配置することができる。
【0052】
また、外容器4及び内容器5(簀の子3)の平面視における形状は、前記実施形態の如き矩形形状に限定されず、円形、楕円形等であっても良い。但し、ペットの排泄に関する習性を考慮すると、平面視して一方向が相対的に長い形状を有していることが好ましい。また、前記実施形態では、トレー6Aの引き出し方向Xは、外容器4(トイレ本体2)の長手方向と平行であったが、外容器4の幅方向と平行であっても良い。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1A,1B,1C,1D ペット用トイレ
2 トイレ本体
3 簀の子
4 外容器
5 内容器
6A トレー(液受け)
6B 液収容具(液受け)
7 消臭シート(消臭部)
8 排泄物処理層(消臭部)
20 排泄物処理材
21,21A 消臭部
30 第2の簀の子
41 液溜め部の底部(外容器の底部)
48 支持部
60 液溜め部
65 液溜め部の上部開口
66 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットの排泄液を透過可能な簀の子と、該簀の子の下方に配置され該簀の子を透過した排泄液を収容する液溜め部とを備えたペット用トイレであって、
前記液溜め部は、底部と、該底部の上方に位置し且つ前記簀の子を透過した排泄液を受け入れる上部開口とを有し、該上部開口は、該簀の子よりも平面視における大きさが小さく、
前記簀の子と前記液溜め部の上部開口との間に、該上部開口に向かって下向きに傾斜する傾斜部が形成され、該簀の子を透過した排泄液が該傾斜部を伝って該上部開口に誘導されるようになされており、
前記簀の子と前記液溜め部の底部との間に、液透過性の消臭部が、該液溜め部内に収容された排泄液と接しないように配置されており、該簀の子を透過した排泄液が、該消臭部を透過して該液溜め部内に移行するようになされているペット用トイレ。
【請求項2】
前記消臭部は消臭シートを含んで構成されており、
前記消臭シートは、植物性繊維及びバインダー繊維を混合積繊し、得られた混合積繊物を、該バインダー繊維の融点以上の温度で加熱しつつ圧縮することにより得られたものである請求項1記載のペット用トイレ。
【請求項3】
更に、前記液溜め部内に着脱自在に装着される液受けを備えている請求項1又は2記載のペット用トイレ。
【請求項4】
前記上部開口は、前記液溜め部の底部よりも平面視における大きさが小さい請求項1〜3の何れか一項に記載のペット用トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−100577(P2012−100577A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251151(P2010−251151)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)