説明

ペット用包葬部材と、これを用いたペットの遺体の包葬方法

【課題】ペットが亡くなったときに、飼い主の心が癒されるまでの間、長く手元にペットの遺体を置いておくことが可能であり、また、ペットの遺体を火葬することなく埋葬処理した場合でも、ペットの遺体の土葬による環境破壊や、イノシシ等の他の野生動物に掘り返されて損傷を受けてしまう虞を解消して、ペットを供養することを可能としたペット用包葬部材と、これを用いたペットの遺体の包葬方法を提供する。
【解決手段】吸湿性及び脱臭性を有する第1の粉粒体と、この第1の粉粒体と混合して用いられ、水を含むことで硬化する吸水硬化性を有する第2の粉粒体とを、所定の割合で混合して構成したペット用包葬部材調整する。次いで、このペット用包葬部材で、ペットの遺体を全体的に包み込む。さらに、ペットの遺体を包み込んだペット用包葬部材上に水を散布する。そして、ペット用包葬部材が硬化するまで養生をとることにより、ペットの遺体を包葬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、愛犬や愛猫等のペットが亡くなったときに、ペットの遺体を火葬せずにそのまま埋葬して供養することを可能としたペット用包葬部材と、これを用いたペットの遺体の包葬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、広く多くの家庭において犬や猫、鳥類、げっ歯類、観賞魚といったペットが飼われている。特に、核家族、単家族人口の増加にともない、近年ではペットと共に暮らす人々の数が増えてきている。要するに、人々はペットと暮らすことで、気持ちがゆったりとし、心が癒されるものとなるのである。
【0003】
ところで、ペットの寿命は一般的に飼い主より短く、ペットが亡くなってしまったときに飼い主はその遺体を適切に処分しなければならない。現在ではペットが亡くなったとき、一般的には、清掃局へ持って行くか、或いは清掃局に取りに来てもらう等の住民サービスを利用している。
【0004】
ここで、ペットの遺体は原則として一般廃棄物の扱いとなり、清掃局では、いわゆるゴミとして焼却処理している。しかしながら、永年家族の一員として共に生活をし、絆も強くなっているペットが一般ゴミと一緒に焼却処分されてしまうのは、飼い主の気持ちとして耐えられないものがある。
【0005】
また、ペットの遺体の処分手段として、ペットの遺体を一般ゴミと同じ扱いとせずに、動物専用の炉で火葬するといった方法もある。ところが、動物専用の火葬施設は、ペットの遺体を焼いた焼却熱や、大量の二酸化炭素(CO)、および臭気が排出されるといった問題がある。また、火葬の場合、無煙無臭の動物専用火葬炉を使用して焼却するにしても、ペットの死体を焼却する行為が火葬施設周辺地域の住民に対して精神的苦痛を与えるといった問題等がある。さらに、火葬施設のイメージ、及び実質的な生活環境悪化から、その地域の地価が下がり、住民の財産権が侵害されるといった問題が生じる虞もある。
【0006】
一方、ペットの遺体を火葬することなく、そのまま土葬するといった昔ながらの自然な方法もある。この方法によれば、ペットの遺体の火葬による種々の問題を回避することができる。ところが、公園や空き地、河川敷といった自分の土地以外に埋葬してしまうと、法律で禁止されている不法投棄と同じ扱いになってしまうため、アパートやマンション暮らしの場合、土葬したくても埋葬することができない。一方、自宅の庭に土葬することができる場合でも、土壌や水質の汚染に影響を与える虞がある等の理由により近隣住民の理解が得られない場合や、イノシシ等の他の野生動物に掘り返されてしまい、ペットの遺体が損傷を受ける虞がある。
【0007】
さらに、飼い主によっては、ペットが亡くなってしまったときの深い悲しみから心が癒されるまでの間、少しでも長く手元に置いておきたいといった願望もある。ところが、ペットは生き物ゆえ腐敗が進行することによって悪臭が発生してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、ペットの遺体の腐敗進行や悪臭発生を抑制し、比較的長期間保存可能とすることを目的として、抗菌・消臭剤を含有する特殊な構造の密封袋が提案されている(特許文献1乃至3参照)。
また、ペット用棺桶による環境破壊を解消することを目的として、土壌等の環境中で生分解を受ける生分解性の合成樹脂で構成された棺桶が提案されている(特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1乃至3に記載の手段では、火葬もしくは土葬によって生じる上記問題を解決することができない。すなわち、特殊な構造の密封袋にペットの遺体を収容することである程度の長期保存が可能となり、飼い主の心が癒されるまでの間、長く手元にペットの遺体を置いておくことはできるが、その後、ペットを供養するためには火葬もしくは土葬を行わなければならず、その際に生じる上記問題を解決するための手当てが何ら考慮されていない。
【0010】
一方、上記特許文献4に記載の手段では、飼い主の心を癒す供養を行うことができない。すなわち、生分解性の合成樹脂で構成された棺桶にペットの遺体を収容することで、環境破壊や、イノシシ等の他の野生動物に掘り返されてしまう虞を解消してペットの供養を行うことができるが、ペットが亡くなってしまった直後において、飼い主の心が癒されるまでの間、長く手元に置いておくことを可能とするための手当てが何ら考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−116069号公報
【特許文献2】実開2005−494号公報
【特許文献3】実用新案登録第3099200号公報
【特許文献4】特開平10−98967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、ペットが亡くなったときに、飼い主の心が癒されるまでの間、長く手元にペットの遺体を置いておくことが可能であり、また、ペットの遺体を火葬することなく埋葬処理した場合でも、ペットの遺体の土葬による環境破壊や、イノシシ等の他の野生動物に掘り返されて損傷を受けてしまう虞を解消して、ペットを供養することを可能とした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係るペット用包葬部材は、吸湿性及び脱臭性を有する第1の粉粒体と、この第1の粉粒体と混合して用いられ、水を含むことで硬化する吸水硬化性を有する第2の粉粒体と、から構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2に係るペット用包葬部材は、請求項1の記載において、前記第1の粉粒体は、炭酸水素ナトリウム(重曹)であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3に係るペット用包葬部材は、請求項1又は2の記載において、前記第2の粉粒体は、真砂土と無機系固化剤とを主成分とすることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4に係るペットの遺体の包葬方法は、吸湿性及び消臭性を有する第1の粉粒体と、水を含むことで硬化する吸水硬化性を有する第2の粉粒体とを、所定の割合で混合してペット用包葬部材を調整する第一工程、前記ペット用包葬部材で、ペットの遺体を全体的に包み込む第二工程、前記ペットの遺体を包み込んだ前記ペット用包葬部材上に水を散布する第三工程、前記ペット用包葬部材が硬化するまで養生をとる第四工程、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5に係るペットの遺体の包葬方法は、請求項4の記載において、前記第二工程は、前記ペットの遺体を収容することが可能な容器内で行うことを特徴とする。

【0018】
本発明の請求項6に係るペットの遺体の包葬方法は、請求項4又は5の記載において、前記第二工程の前に、前記ペットの遺体を前記第1の粉粒体だけで被覆する前処理工程αを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項7に係るペットの遺体の包葬方法は、請求項4乃至6のいずれか1項に記載において、前記第三工程は、前記ペット用包葬部材の上面が濡れ、その下面から水が染み出ない程度に水を散布する工程β1と、前記工程β1後、前記ペット用包葬部材の上面が硬化したら、引き続き前記ペット用包葬部材の下面から水が染み出るまで水を散布する工程β2と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のペット用包葬部材は、吸湿性及び脱臭性を有する第1の粉粒体と、水を含むことで硬化する吸水硬化性を有する第2の粉粒体と、が混合されたものである。そのため、これら混合物は流体(液体)のように振舞い、その取り扱いにおいてペットの体形に合わせて遺体を隙間なく全体的に包み込むことができる。ゆえに、ペットの遺体のあらゆる箇所から生じる水分を吸収し、腐敗を防止すると共に、異臭の発生を防止して、ペットの遺体を疑似埋葬することができる。しかも、このペット用包葬部材は、水を含むことで第2の粉粒体が、第1の粉粒体を抱き込むように一体化して硬化するものとなる。そのため、第1の粉粒体が有する吸湿性及び脱臭性を維持しながら、ペットの遺体が外部から損傷等を受けることがないように見栄え良く、長期間保存することが可能となる。さらに、第1の粉粒体と第2の粉粒体が一体化して硬化することで、粉粒体に包み込まれたまま容易にペットの遺体を移動(搬送)等することができると共に、そのままペットの遺体を埋葬することもできる。
【0021】
また、本発明のペットの遺体の包葬方法は、吸湿性及び消臭性を有する第1の粉粒体と、水を含むことで硬化する吸水硬化性を有する第2の粉粒体とを、所定の割合で混合してペット用包葬部材を調整するものである。そのため、ペットの種類や大きさ等に併せて、第1の粉粒体及び第2の粉粒体からもたらされる効果の程度を適宜調整した所望のペット用包葬部材を調整することができる。また、このペット用包葬部材によって、ペットの遺体を全体的に包み込むことで、非常に簡単にペットの遺体を疑似埋葬したものとすることができる。さらに、その後ペット用包葬部材上に水を散布し、しばらく放置する(養生をとる)ことで、ペット用包葬部材中の第2の粉粒体が硬化し、第1の粉粒体を抱き込むように一体化したものとなる。そして、ペット用包葬部材が中まで完全に硬化することで、外部からの衝撃等に対してペットの遺体を保護可能とすると共に、ペットの遺体を移動(搬送)等可能なものとすることができる。
【0022】
したがって、ペットが亡くなったときに、飼い主の心が癒されるまでの間、長く手元にペットの遺体を置いておくことが可能であり、また、ペットの遺体を火葬することなく埋葬処理した場合でも、ペットの遺体の土葬による環境破壊や、イノシシ等の他の野生動物に掘り返されて損傷を受けてしまう虞を解消して、ペットを供養することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るペット用包葬部材によってペットの遺体を包葬した状態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るペット用包葬部材の調整方法を説明する模式図である。
【図3】本発明に係るペット用包葬部材を用いてペットの遺体を包葬する手順を説明する図であり、ペットの遺体を全体的にペット用包葬部材で包み込んだ状態を示す模式図である。
【図4】本発明に係るペット用包葬部材を用いてペットの遺体を包葬する手順を説明する図であり、ペットの遺体を包み込んだペット用包葬部材上に水を散布し、ペット用包葬部材を硬化させる状態を示す模式図である。
【図5】本発明に係るペット用包葬部材を用いてペットの遺体を包葬する他の手順を説明する図であり、(A)樹脂製袋内にペット用包葬部材の一部を敷き詰めた状態を示す模式図、(B)ペット用包葬部材上にペットの遺体を載置する状態を示す模式図、(C)ペットの遺体を全体的に包み込むように残りのペット用包葬部材を樹脂製袋内に充填する模式図である。
【図6】本発明に係るペット用包葬部材を用いてペットの遺体を包葬する他の手順を説明する図であり、(A)ペット用包葬部材上に水を散布してその表面を硬化させる状態を示す模式図、(B)ペット用包葬部材上にさらに水を散布して全体的に硬化させる状態を示す模式図である。
【図7】本発明に係るペット用包葬部材を用いてペットの遺体を包葬する他の手順を説明する図であり、(A)樹脂製袋内を脱気する状態を示す模式図、(B)樹脂製袋の開口部を閉塞する状態を示す模式図である。
【図8】本発明に係るペット用包葬部材を用いてペットの遺体を包葬した他の状態を示す模式図である。
【図9】本発明に係るペット用包葬部材を用いてペットの遺体を包葬したさらに他の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明における実施の形態の一例について、図面を参照して説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるため技術的に種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態におけるペット用包葬部材10は、第1の粉粒体Aと、第2の粉粒体Bと、から構成されている。このペット用包葬部材10によって全体的に包み込むようにペットの遺体20を包葬している。
【0026】
第1の粉粒体Aは、吸湿性及び脱臭性を有する。この第1の粉粒体Aとしては、たとえば炭酸水素ナトリウム(NaHCO)の粉末を挙げることができる。第1の粉粒体Aが炭酸水素ナトリウムであると、吸湿性及び脱臭性を有することはもちろんのこと、本発明のペット用包葬部材の取り扱いにおいて人体に影響なく安全にペットを埋葬することができる。すなわち、炭酸水素ナトリウムは、別名で重炭酸ナトリウムや重曹と称される天然の無機物質であり、灰汁抜き、臭み取り、ベーキングパウダーなどとして日常的に調理に使われているため、人体に対する悪影響は無いものといえる。
【0027】
また、第1の粉粒体Aは、木質材を破砕したオガ粉(大鋸屑)、吸湿性を有する生石灰に脱臭性を有する活性炭やゼオライトを配合したもの等とすることもできるが、第2の粉粒体Bと混合した後の硬化作用を考慮すると、炭酸水素ナトリウムの粉末とすることが望ましい。
【0028】
一方、第2の粉粒体Bは、水を含むことで硬化する吸水硬化性を有し、第1の粉粒体Aと混合して用いられる。この第2の包葬材としては、具体的に、たとえば日本硝子工業社製の「透塊ソイル」又はECSテクノ社製の「エコクリ−ンソイル」と称される環境改善舗装材料(いわゆる水で固まる砂)を挙げることができる。これらは天然の真砂土と自然の原料を使用した無機系の固化剤(水溶性珪酸塩)とを主成分としてできており、防草、雑草対策や透水性や保水性に優れ、人体や周囲の環境に無害なものとされている。
【0029】
次に、図2乃至図4を参照して、本発明のペット用包葬部材10を用いたペットの遺体の包葬方法について説明する。
まず、図2に示すように、第1の粉粒体Aと第2の粉粒体Bとを所定の割合で混合して、ペット用包葬部材10を調整する(第一工程)。ここで、第1の粉粒体Aと第2の粉粒体Bとの混合割合は、ペットの種類や大きさ等に応じて異なるが、おおよそ1:1〜1:4にすると良い。
【0030】
次いで、図3に示すように、調整したペット用包葬部材10で、ペットの遺体20を全体的に包み込む(第二工程)。この際、ペット用包葬部材10は、ペットの遺体から生じる水分を吸収し、腐敗及び異臭の発生を防止することを考慮して、できるだけペットの体形に合わせて隙間なく配するものとする。したがって、本発明における包葬方法含む前処理として、ペットの遺体20の周囲に第1の粉粒体Aだけを被覆した後、ペット用包葬部材10を被覆して包葬するようにしても良い(前処理工程α)。
【0031】
さらに、図4に示すように、ペットの遺体20を包み込んだ後のペット用包葬部材10に対し、如雨露等によって水30を散布する(第三工程)。
そして、ペット用包葬部材10が内部まで全体的に硬化するまで、そのままの状態でしばらくの時間養生をとる(第四工程)。
【0032】
以上により、ペットの遺体20はペット用包葬部材10によって包葬されて疑似埋葬された状態となり、吸湿性及び脱臭性を維持しながら、長期間保存することが可能となる。したがって、飼い主の心が癒されるまでの間、長く手元にペットの遺体を置いて供養することができる。
【0033】
また、ペットの遺体20は、ペット用包葬部材10が硬化することで外部からの応力や衝撃によって損傷等を受けることがなく、かつ、ペット用包葬部材10に包み込まれたままペットの遺体20を容易に移動(搬送)等することができる。
【0034】
そして、ペット用包葬部材10に包み込まれたペットの遺体20は、火葬することなくそのまま(すなわち、ペット用包葬部材10で包み込まれたまま)土壌内に埋葬(いわゆる土葬)することができる。したがって、ペットの遺体20を火葬する場合に引き起こされる、焼却熱や、大量の二酸化炭素(CO)、および臭気が排出されるといった問題や、周辺住民に対する精神的苦痛、実質的な生活環境悪化といった虞のないものとすることができる。
【0035】
しかも、ペット用包葬部材10を構成する第1の粉粒体A及び第2の粉粒体Bは、上述したとおり何れも自然物であって人体に影響がないものであるので、ペットの遺体20を土葬する場合に環境破壊を引き起こすこともない。
【0036】
さらに、上述のようにペットの遺体20を火葬することなくそのまま埋葬処理をしても、ペットの遺体20は事前に疑似埋葬されたものとなっているので外部に臭いが漏れる恐れがなく、イノシシ等の他の野生動物に掘り返されてしまう虞がない。また仮に、野生動物に掘り返されてしまったとしても、ペットの遺体20は硬化したペット用包葬部材10によって強固に包み込まれているので、大事なペットの遺体20が野生動物によって荒らされてしまう虞もない。
【0037】
次に、図5乃至図7を参照して、本発明のペット用包葬部材10を用いたペットの遺体の他の包葬方法について説明する。
すなわち、本発明のペットの遺体の包葬方法においては、ペット用包葬部材10でのペットの遺体20の包み込みを、ペットの遺体20を収容することが可能な容器内で行うものとしても良い。
【0038】
まず、図5(A)に示すように、柔軟な樹脂製袋40内に、ペット用包葬部材10の一部を敷き詰める。
次に、図5(B)に示すように、樹脂製袋40内に敷き詰めたペット用包葬部材10上に、ペットの遺体20を載置する。なお、図では説明における便宜上、ペットの遺体20がペット用包葬部材10上に立った状態で載置されるように描かれているが、実際は、ペット用包葬部材10上にペットの遺体20を寝かすように載置するものとなる。
引き続き、図5(C)に示すように、ペットの遺体20の上から残りのペット用包葬部材10を被せ、ペットの遺体20を全体的に包み込むように樹脂製袋40内にペット用包葬部材10を充填する。
【0039】
次いで、図6(A)及び(B)に示すように、ペット用包葬部材10上に水30を散布して、ペット用包葬部材10を硬化させる。
この際、水30の散布は、まず、図6(A)に示すように、ペット用包葬部材10の上面10aが濡れ、その下面から水が染み出ない程度に留めておく(第三工程β1)。
そして、図6(B)に示すように、ペット用包葬部材10の表面10aが硬化した後、引き続きペット用包葬部材1の下面から水30aが染み出るまで水30を散布する(第三工程β2)。したがって、この場合は樹脂製袋40の底部には予め排水用の小孔が設けられたものとするか、もしくはペット用包葬部材10の表面10aを硬化させる一度目の水30の散布後、樹脂製袋40の底部に排水用の小孔を形成するものとする。
その後、ペット用包葬部材10が全体的に硬化するまで、そのままの状態でしばらくの時間養生をとる。
【0040】
このように水の散布を2回に分けて行うことで、ペット用包葬部材10の表面が、散布した水によって部分的にえぐれてでこぼこになってしまうことなく、平坦できれいに仕上げることができると共に、散布した水が周囲に流れてしまうことなくペット用包葬部材10の中に均一に染み込んで効率良く効果させることができる。すなわち、水の散布初めに、ペット用包葬部材10の表面が水を弾いてしまうことを解消するために、水の散布を2回に分けて行うと好ましい。
【0041】
以上により、ペットの遺体20の包葬においてペット用包葬部材10が周囲に散乱してしまうこと無く、樹脂製袋40内において綺麗に効率良く包葬作業を行なうことができる。また、ペット用包葬部材10の周囲が樹脂製袋40で覆われているので、万が一ペットの遺体20から異臭が発生してペット用包葬部材10より外部に漏れてしまったとしても、臭気が樹脂製袋40の外部に漏れることなく、ペットの遺体20を長期間保存することが可能となる。しかも、硬化したペット用包葬部材10が、外部からの応力や衝撃等を受けて一部破損してしまった場合でも、ペット用包葬部材10の破損屑は樹脂製袋40内に収まり、周囲に散乱して室内が汚れてしまう虞もない。
【0042】
さらに、以上のようにして包葬されたペットの遺体20は、その後、図7(A)に示すように、この樹脂製袋40内に減圧管60を挿入し、減圧管60を介して樹脂製袋40内を脱気する。
そして、図7(B)に示すように、樹脂製袋40の開口部41を封止具42によって密封し、樹脂製袋40内にペット用包葬部材10で包葬されたペットの遺体20を密閉収容するものとしても良い。
この際、樹脂製袋40とその袋内の脱気は、たとえば布団の圧縮袋として知られている樹脂製袋と同様の構造をしたものを用い、この樹脂製袋内を、掃除機を利用して吸引することで容易に行うことができる。
【0043】
これにより、ペット用包葬部材10で包葬されたペットの遺体20と触れる空気が遮断され、より一層腐敗防止効果や異臭発生防止効果を高めるものとすることができる。しかも、ペットの遺体20の樹脂製袋内への密閉収容は、何ら特別な行為ではなく、極めて容易に行うことができるものである。
【0044】
また、容器を用いたペット用包葬部材10でのペットの遺体20の包み込みは、上述のように柔軟な樹脂製袋40内で行うものに限らず、図8に示すように、容器本体51と蓋体52とから構成された、木製や合成樹脂等の硬質製容器50内において行うものとしても良い。ここでは、硬質製容器50を用いたペットの遺体20の包葬方法について特に詳述しないが、図5及び図6に基づく説明と同様に行なうことができる。
【0045】
すなわち、容器本体51内に、ペット用包葬部材10の一部を敷き詰める。次に、敷き詰めたペット用包葬部材10上に、ペットの遺体20を載置する。引き続き、ペットの遺体20の上から残りのペット用包葬部材10を被せ、ペットの遺体20を全体的に包み込むように容器本体51内にペット用包葬部材10を充填する。次いで、ペット用包葬部材10上に水30を散布して、ペット用包葬部材10を硬化させる。そして、ペット用包葬部材10が全体的に硬化するまで、そのままの状態でしばらくの時間養生をとる。その後、容器本体51の開口部に蓋体52を被せ、釘や螺子等によって蓋体52を固定する。
【0046】
このように硬質製容器50を用いることで、樹脂製袋40と同様に、ペット用包葬部材10が周囲に散乱してしまうこと無く、硬質製容器50内において綺麗に効率良く包葬作業を行なうことができる。また、ペットの遺体20の移動(搬送)が安定して一層行い易いものとなると共に、外部からの衝撃等によって硬化したペット用包葬部材10が破損してしまうことを効果的に防止することができる。
【0047】
また、必要に応じて、図9に示すように、樹脂製袋40内に収容したペット用包葬部材10で包葬したペットの遺体20(すなわち、図7(B)に示す状態のもの)を、上述のような硬質製容器50内にさらに収容するものとしても良い。
このように樹脂製袋40と硬質製容器50を併用することで、複数のペットの遺体20を一つの硬質製容器50内に収容して供養することができる。
【0048】
さらに、上述のようにしてペットの遺体20を収容した樹脂製袋40や硬質製容器50は、表面に亡くなってしまったペットの写真を遺影として貼り付けることや、印刷等することで、そのまま簡易墓標として利用することも可能である。また、疑似棺桶としてこのまま土壌中に埋葬することも可能である。なお、硬質製容器50が木製の場合、硬質製容器50の周囲に防腐剤を塗布しておくと、これを埋葬した際における腐敗が防止され、土壌中での強度を維持することが可能となる。
【0049】
また、樹脂製袋40や硬質製容器50を土壌中に埋葬する場合、これら樹脂製袋40や硬質製容器50は、何れも土壌内で生分解可能な素材により構成されたものとすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、亡くなってしまったペットの遺体の処理を行う業種において産業上有用であり、特に、死後のペットを適切に供養するペット埋葬具における市場において有用である。しかも、生前の動物を扱うペットショップや動物病院等と連携することで、ペットの死後までを含めて一連に手当てすることができる安心感を与えることができる。よって、ペットの飼い主の心配を解消してペット需要を一層喚起し、関連産業の発達に寄与するものとなる。
【符号の説明】
【0051】
A 第1の粉粒体(炭酸水素ナトリウム)、B 第2の粉粒体、10 ペット用包葬部材、20 ペットの遺体、30 水、40 樹脂製袋、41 開口部、42 封止具、50 硬質製容器、60 減圧管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性及び脱臭性を有する第1の粉粒体と、
この第1の粉粒体と混合して用いられ、水を含むことで硬化する吸水硬化性を有する第2の粉粒体と、
から構成されていることを特徴とするペット用包葬部材。
【請求項2】
前記第1の粉粒体は、炭酸水素ナトリウム(重曹)であることを特徴とする請求項1に記載のペット用包葬部材。
【請求項3】
前記第2の粉粒体は、真砂土と無機系固化剤とを主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のペット用包葬部材。
【請求項4】
吸湿性及び消臭性を有する第1の粉粒体と、水を含むことで硬化する吸水硬化性を有する第2の粉粒体とを、所定の割合で混合してペット用包葬部材を調整する第一工程、
前記ペット用包葬部材で、ペットの遺体を全体的に包み込む第二工程、
前記ペットの遺体を包み込んだ前記ペット用包葬部材上に水を散布する第三工程、
前記ペット用包葬部材が硬化するまで養生をとる第四工程、
を含むことを特徴とするペットの遺体の包葬方法。
【請求項5】
前記第二工程は、前記ペットの遺体を収容することが可能な容器内で行う、
ことを特徴とする請求項4に記載のペットの遺体の包葬方法。
【請求項6】
前記第二工程の前に、前記ペットの遺体を前記第1の粉粒体だけで被覆する前処理工程α、
を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のペットの遺体の包葬方法。
【請求項7】
前記第三工程は、前記ペット用包葬部材の上面が濡れ、その下面から水が染み出ない程度に水を散布する工程β1と、
前記工程β1後、前記ペット用包葬部材の上面が硬化したら、引き続き前記ペット用包葬部材の下面から水が染み出るまで水を散布する工程β2と、

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−189316(P2010−189316A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35518(P2009−35518)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(507084729)株式会社開発技研 (1)
【Fターム(参考)】