説明

ペット用寝床

【課題】ペットの臭気を吸収分解し、ペットの体温調節も行うことのできる優れたペット用寝床を提供する。
【解決手段】床面に設置される基材1の上に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板2を敷設する。珪酸カルシウム板2には、貫通孔3、非貫通孔、又は溝4を設けるとよい。また、箱状の上屋5を、係止部材6を介して基材1に着脱可能に取り付け、さらに、上屋5の内面の少なくとも一部に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を取り付けることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬などのペットを飼育する場合に用いる、ペット用寝床に関する。
【背景技術】
【0002】
犬などのペットを飼育する場合、従来は番犬としての役割もあって屋外飼育することが主流であったが、近年は愛玩用に屋内飼育するケースが増えてきている。
屋外飼育の場合は、雨露を防ぐ必要から、屋根・壁・床を備え、小型の家の形状をした「犬小屋」を用いるのが一般的である。一方、屋内飼育の場合は、最小限「寝床」があれば十分であるが、外部から遮断された落ち着いた空間をペットに提供するために、囲いとしての上屋を設ける場合もある。
【0003】
このように、ペットを屋内飼育するためには少なくとも寝床を用意する必要があるが、その場合には、臭気の問題やペットの体温調節の問題が生じていた。
すなわち、ペットには糞尿の臭気の他、独特の「獣臭」があり、例えばプラスチック製や木製の寝床では臭気が吸収されなかった。また、上屋を設けたとしても完全密閉できず、臭気が周囲に拡散してしまう恐れがあった。
また、夏など気温が高い場合には、特に犬など汗腺が未発達なペットに対して、体温を調節してやる必要があった。
【0004】
ここで、臭気の問題に対しては、消臭機能を有する繊維を用いたペット用シーツの発明(特許文献1)、活性炭などの炭素粉末を用いたペットハウスの発明(特許文献2)、活性炭と送風ファンを用いた動物用飼育小屋の発明(特許文献3)、酸化チタンを光触媒として用いたペットハウスの発明(特許文献4)などが開示されている。
また、ペットの体温調節の問題に対しては、保冷材を用いたペット用クーラーマットの発明(特許文献5)、蓄熱材とアルミニウム製の熱拡散板を用いたペット用体温調節装置の発明(特許文献6)などが開示されている。
【特許文献1】特開昭63−126441号公報
【特許文献2】実用新案登録第3100076号公報
【特許文献3】実開昭64−20177号公報
【特許文献4】特開2003−225027号公報
【特許文献5】特開2004−267036号公報
【特許文献6】特開2002−345355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来例においては、それぞれ以下のような問題点を有していた。
【0006】
(1)特許文献1に記載された発明のように、シーツを用いる場合には、ペットが噛んだり、爪で引っ掻いたりして容易に破損してしまい、耐久性が低かった。
(2)特許文献2や特許文献3に記載された発明の場合には、吸収型の脱臭剤である活性炭や、電気を使用する送風ファンを用いるので、寿命が短く定期交換が必要で、ランニングコストも高かった。また、活性炭は吸収量が一定量を超えると、昇温により吸収した物質を再放出する性質があり、脱臭効果が小さい場合があった。
(3)特許文献4に記載された発明のように、光触媒を用いる場合には、臭気の分解に光が必要で、臭気が篭りやすい部分(光が届かない部分)への使用は困難であった。
【0007】
(4)特許文献5に記載された発明のように、冷却材を用いる場合には、結露を生じやすく結露水が溜まってカビの発生原因となった。
(5)特許文献6に記載された発明のように、アルミニウム板を用いる場合には、ペットの臭気を吸収させることができなかった。
【0008】
また、寝床に上屋を設けた場合には、内部を掃除するのに出入口から奥まで手を突っ込む必要があって面倒であり、また多くの場所をとるという問題もあった。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、ペットの臭気を吸収分解し、ペットの体温調節も行うことのできる優れたペット用寝床を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る発明のペット用寝床は、床面に設置される基材(1)の上に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板(2)を敷設してなるものである。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記珪酸カルシウム板(2)に貫通孔(3)を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記珪酸カルシウム板(2)の表面に非貫通孔又は溝(4)を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一つに記載の発明において、下面に開口部を有するとともに側面のうちの1つにペット用出入口(8)を有する箱状の上屋(5)を、係止部材(6)を介して前記基材(1)に着脱可能に取り付けたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記上屋(5)の内面の少なくとも一部に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を取り付けたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明において、前記上屋(5)が折り畳み又は分解可能となっていることを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の記号は、発明を実施するための最良の形態および図面に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、床面に設置される基材の上に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を敷設してあるので、珪酸カルシウム板でペットの臭気を吸収することができ、さらに、吸収した臭気を分解することができる。また、抗菌効果でカビが発生しにくい。
また、珪酸カルシウム板は吸湿性能を有しているので、寝床の水分を吸収して蒸れを防ぐとともに適度なヒンヤリ感を与えることができる。さらに、内部に吸収された水分がペットの不在時に放湿されて、寝床が乾燥されると同時に気化熱で適度に冷却される。このようにして、夏場のペットの体温調節を適切に行うことができる。
また、珪酸カルシウム板は硬質で耐久性が高く、脱臭剤、電気、光などが不要でランニングコストが安い。さらに、汚れが落ちないときはサンドペーパーで削り落とせば再生可能である。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、珪酸カルシウム板に貫通孔を設けてあるので、通気性が向上して、さらに快適にすることができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、珪酸カルシウム板の表面に非貫通孔又は溝を設けてあるので、臭気や水分の吸収面積が増加して、さらに快適にすることができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一つに記載の発明の作用効果に加えて、箱状の上屋を、係止部材を介して基材に着脱可能に取り付けてあるので、上屋が簡単に取り外し可能であり、掃除を容易に行うことができる。
また、夏場は寝床のみで使用し、冬場のみ上屋を取り付けるなどして、できるだけ場所をとらないようにして使用することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の作用効果に加えて、上屋の内面の少なくとも一部に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を取り付けてあるので、寝床に加えて上屋の内面においても、臭気や水分の吸収が可能であり、さらに快適にすることができる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項4又は請求項5に記載の発明の作用効果に加えて、上屋が折り畳み又は分解可能となっているので、夏場などの上屋を使用しない時期にコンパクトに収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態1に係るペット用寝床について説明する。
図1は、実施形態1に係るペット用寝床10を示す斜視図であり、図2は、図1のA−A断面図である。また、図3は、実施形態1に係るペット用寝床10を示す平面図である。
【0024】
図1に示すように、ペット用寝床10は、床面に設置される基材1と、基材1の上に敷設される珪酸カルシウム板2から構成されている。
基材1は、矩形状の枠材であり、木材やプラスチック等で形成されている。そして、図2及び図3に示すように、基材1の内側周縁には、珪酸カルシウム板2の周縁部に合わせて段差が形成されて、珪酸カルシウム板2を支持するようになっている。
また、基材1の対向する枠材を結ぶように支持部材11,12が複数設けられており、珪酸カルシウム板2を支持している。
【0025】
一方、珪酸カルシウム板2は、基材1に合わせて矩形状に形成されるとともに、バーミキュライトが混入されている。このバーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板2は、有害物質を吸着・無害することができる資材である。また、水分子が周囲の湿度の変化によって出入りすることで、室内の湿度調整の役目を果たすことができるものである。
珪酸カルシウム板2の厚みに特に制限はないが、ペットの種類によって、6〜12ミリ程度の適当な厚さにするとよい。
【0026】
なお、基材1及び珪酸カルシウム板2の形状は、矩形状に限られず、例えば円形等であってもよい。また、支持部材11,12の代わりに、珪酸カルシウム板2の裏面に合板等を貼着してもよい。
【0027】
ここで、ペット用寝床の材料として、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を用いた場合と、その他の材料を用いた場合の比較を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すように、他の材料を用いた場合には、すべての項目を満足させる(例えば吸湿性と臭気吸収を同時に実現する)ことはできないが、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を用いた場合には、すべての項目で優れた特徴を示している。
【0030】
また、臭気の問題への対応として、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を用いた場合と、他の吸臭剤等を用いた場合の比較を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2に示すように、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板は、価格面や耐久性等すべての面で優れていることがわかる。
【0033】
実施形態1に係るペット用寝床10によれば、床面に設置される基材1の上に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板2を敷設してあるので、珪酸カルシウム板2でペットの臭気を吸収することができ、さらに、吸収した臭気を分解することができる。また、抗菌効果でカビが発生しにくい。
また、珪酸カルシウム板2は吸湿性能を有しているので、寝床の水分を吸収して蒸れを防ぐとともに適度なヒンヤリ感を与えることができる。さらに、内部に吸収された水分がペットの不在時に放湿されて、寝床が乾燥されると同時に気化熱で適度に冷却される。このようにして、夏場のペットの体温調節を適切に行うことができる。
また、珪酸カルシウム板2は硬質で耐久性が高く、脱臭剤、電気、光などが不要でランニングコストが安い。さらに、汚れが落ちないときはサンドペーパーで削り落とせば再生可能である。
【0034】
次に、図4及び図5を参照して、本発明の実施形態2に係るペット用寝床について説明する。
図4は、実施形態2に係るペット用寝床20を示す斜視図であり、図5は、ペット用寝床20の珪酸カルシウム板2を示す拡大断面図である。
【0035】
図4に示すように、ペット用寝床20の珪酸カルシウム板2には、貫通孔3が複数設けられている。
貫通孔3は、図5の拡大断面図に示すように珪酸カルシウム板2の表と裏を貫通するように設けられている。なお、貫通孔3の数や配置に特に制限はない。
【0036】
実施形態2に係るペット用寝床20によれば、珪酸カルシウム板2に貫通孔3を設けてあるので、通気性が向上して、さらに快適にすることができる。
【0037】
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施形態3に係るペット用寝床について説明する。
図6は、実施形態3に係るペット用寝床30を示す斜視図であり、図7は、ペット用寝床30の珪酸カルシウム板2を示す拡大断面図である。
【0038】
図6に示すように、ペット用寝床30の珪酸カルシウム板2には、溝4が複数設けられている。
溝4は、図7の拡大断面図に示すように珪酸カルシウム板2の表側に設けられている。なお、溝4の数や配置に特に制限はない。
【0039】
実施形態3に係るペット用寝床30によれば、珪酸カルシウム板2の表面に溝4を設けてあるので、臭気や水分の吸収面積が増加して、さらに快適にすることができる。
なお、溝4の代わりに、珪酸カルシウム板2の表側から裏面に向けて非貫通孔を設けても良い。また、実施形態2における貫通孔3と溝4や非貫通孔を組み合わせてもよい。
【0040】
次に、図8及び図9を参照して、本発明の実施形態4に係るペット用寝床について説明する。
図8は、実施形態4に係るペット用寝床40を示す分解斜視図であり、図9は、実施形態4に係るペット用寝床40を示す斜視図である。
【0041】
図8に示すように、ペット用寝床40は、基材1と珪酸カルシウム板2からなるペット用寝床の上から、上屋5を被せるようにして構成されている。
上屋5は、下面に開口部を有するとともに、側面のうちの1つにペット用出入口8が形成されている。また、他の側面の下部には係止部材6が設けられており、基材1の係止部材6に対応する部分には係止孔13が設けられている。
そして、基材1の上に上屋5を被せた後、係止部材6の先端を係止孔13に嵌合させて、図9に示すようなペット用寝床40が完成する。なお、係止部材6を介して、上屋5は自由に基材1に着脱できるようになっている。
また、上屋5の着脱や運搬に便利なように、上屋上部にハンドル7を設けてある。
【0042】
なお、上屋5の材質は、基材1と同様に木材やプラスチック等、特に限定されないが、内面の少なくとも一部、より好ましくは内面全体に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を取り付けるとよい。
【0043】
ここで、実施形態4に係るペット用寝床40のように上屋5を着脱可能としたペット用寝床と、従来の寝床型(寝床のみのもの)及び小屋型(固定式上屋のもの)のものとの比較を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表3に示すように、着脱式上屋の場合、すべての項目で優れた特徴を示している。
【0046】
実施形態4に係るペット用寝床40によれば、箱状の上屋5を、係止部材6を介して基材1に着脱可能に取り付けてあるので、上屋5が簡単に取り外し可能であり、掃除を容易に行うことができる。
また、夏場は寝床のみで使用し、冬場のみ上屋5を取り付けるなどして、できるだけ場所をとらないようにして使用することができる。
【0047】
さらに、上屋5の内面の少なくとも一部に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板2を取り付ければ、寝床に加えて上屋5の内面においても、臭気や水分の吸収が可能であり、さらに快適にすることができる。特に、上屋5の内面全体に珪酸カルシウム板2を取り付ければ、一層効果的である。
【0048】
また、上屋5を折り畳み又は分解可能とするとよい。
例えば、図10に示すように、上屋5の側板51,52,53,54及び天板55をそれぞれ蝶番9で結合して平面状に折り畳み可能とすることにより、夏場などの上屋5を使用しない時期にコンパクトに収納することができる。
【0049】
以上、実施形態1乃至実施形態4について説明したが、上記実施形態に係るペット用寝床は、犬の他、猫や各種小動物等の様々なペットの飼育に使用することができる。また、屋根のある場所など雨露を防ぐことのできる場所であれば、屋外での使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態1に係るペット用寝床を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】実施形態1に係るペット用寝床を示す平面図である。
【図4】実施形態2に係るペット用寝床を示す斜視図である。
【図5】実施形態2に係るペット用寝床の珪酸カルシウム板の拡大断面図である。
【図6】実施形態3に係るペット用寝床を示す斜視図である。
【図7】実施形態3に係るペット用寝床の珪酸カルシウム板の拡大断面図である。
【図8】実施形態4に係るペット用寝床を示す分解斜視図である。
【図9】実施形態4に係るペット用寝床を示す斜視図である。
【図10】別の実施形態に係る上屋を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 基材
2 珪酸カルシウム板
3 貫通孔
4 溝
5 上屋
6 係止部材
7 ハンドル
8 ペット用出入口
9 蝶番
10 ペット用寝床
11 支持部材
12 支持部材
13 係止孔
20 ペット用寝床
30 ペット用寝床
40 ペット用寝床
51 側板
52 側板
53 側板
54 側板
55 天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置される基材の上に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を敷設してなるペット用寝床。
【請求項2】
前記珪酸カルシウム板に貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のペット用寝床。
【請求項3】
前記珪酸カルシウム板の表面に非貫通孔又は溝を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のペット用寝床。
【請求項4】
下面に開口部を有するとともに側面のうちの1つにペット用出入口を有する箱状の上屋を、係止部材を介して前記基材に着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一つに記載のペット用寝床。
【請求項5】
前記上屋の内面の少なくとも一部に、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を取り付けたことを特徴とする請求項4に記載のペット用寝床。
【請求項6】
前記上屋が折り畳み又は分解可能となっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のペット用寝床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−68414(P2007−68414A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255836(P2005−255836)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)
【Fターム(参考)】