説明

ペット用引き紐の止め具

【課題】 1つの部材で構成することが可能で、かつシンプルな構造となっているペット用引き紐の止め具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のペット用引き紐の止め具1は、相互近接配置された1対の紐2が各別に長手方向に沿って移動自在なまま挿通可能にする紐通孔5を、備えたペット用引き紐の止め具であって、紐通孔5の一端側には、各別の紐2の長手方向に沿った移動を規制するために、係止溝部7が径外方向の対称位置に連設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、小型犬のショーリードに用いられるペット用引き紐の止め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、チワワ、トイプードル、ミニチュア・ダックスフンド等のような小型犬用のショーリードが市販されている。このショーリードは、首輪部分とリード(引き紐)部分とが一体になっている。このため、首輪を装着していない室内犬を散歩させる際に、飼い主は、犬の首回りの大きさに応じて首輪部分の大きさを調整し、犬の首回りに沿って首輪部分を留める。そして、この首輪部分を留める際に、飼い主は、止め具を使用する。
【0003】
この止め具については、一般に2つの部材で構成されることが多い。例えば、首輪部分の大きさを調整するための筒金具と、首輪を形成する紐をクロスさせ設定した首輪の大きさを維持するための小リングと、からなるものが広く知られている。
しかし、2つの部材からなる止め具は、飼い主が止め具を使用する際、2つの操作すなわちそれぞれの部材の調整が必要となる。2つの操作の過程で、犬が動いてしまうことがあるため、飼い主にとって首輪のセットが負担となる。この負担を軽減するため、1つの部材からなる止め具のニーズが飼い主からある。
【0004】
例えば、特許文献1には、1つの部材からなる止め具として、操作ボタンを用いた止め具が開示されている。この止め具は、ボタンを移動させるだけの簡単な操作で、犬の首回りに沿ってサイズ調整済みの首輪部分を留めることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−149767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の操作ボタンを用いた止め具の場合、角筒状本体、クラッチ輪、及び操作ボタン等複数部材から成り、構造が複雑であるという問題があった。
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、1つの部材で構成することが可能で、かつシンプルな構造となっているペット用引き紐の止め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のペット用引き紐の止め具は、相互近接配置された1対の紐が各別に長手方向に沿って移動自在なまま挿通可能にする紐通孔を、備えたペット用引き紐の止め具であって、前記紐通孔の一端側には、各別の紐の長手方向に沿った移動を規制するために、係止溝部が径外方向の対称位置に連設されている。
【0008】
また、前記紐通孔には、第1紐通部と第2紐通部とに仕切られる隔壁が軸方向に沿って形成され、前記第1、第2紐通部のそれぞれに対して、前記1対の紐を各別に挿通可能であることが好ましい。
さらに、前記隔壁は、前記紐通孔の軸心方向一端側開口部から軸心方向中央部近傍にわたって形成されていることが好ましい。
【0009】
そして、前記係止溝部は、紐が係止溝部に係止されて、該紐に張りが与えられた状態で紐が係止溝の溝奥部の一端と他端とで接触しかつ中途部で接触しないように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つの部材で構成することが可能で、かつシンプルな構造となっているペット用引き紐の止め具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るペット用引き紐の止め具を、紐が装着された状態で、裏側から見た図である。
【図2】(a)はペット用引き紐の止め具を表側から見た図であり、(b)は図2(a)のA−A線矢視断面図であり、(c)は図2(b)のB−B線矢視断面図であり、(d)はペット用引き紐の止め具1を裏側から見た図である。
【図3】ペット用引き紐の止め具と紐とを、ペットに装着した状態を示す斜視図である。
【図4】ペット用引き紐の止め具と紐とを、ペットに装着したその他の別実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るペット用引き紐の止め具の実施形態を、図1、図2及び図3を用いて説明する。
図1は、本発明に係るペット用引き紐の止め具1を、紐2が装着された状態で、裏側(ペットの首回りが配置される側)から見た図である。
図2は、図1のペット用引き紐の止め具1を拡大した図である。ここで、図2(a)は、ペット用引き紐の止め具1を表側(ペットの首回りが配置される側とは反対側)から見た図である。図2(b)は、図2(a)のA−A線矢視断面図である。また、図2(c)は、図2(b)のB−B線矢視断面図である。そして、図2(d)は、ペット用引き紐の止め具1を裏側から見た図である。
【0013】
ここで図2(b),図2(c)における上下に沿った方向を、「前後方向X」と以後定義する。また、図2(a),図2(b),図2(d)における左右に沿った方向を、「左右方向Y」と以後定義する。さらに、図2(a),図2(d)における上下に沿った方向を、「上下方向Z」と以後定義する。
図3は、ペット用引き紐の止め具1と紐2とを、ペットに装着した状態を示す斜視図である。
【0014】
図3に示すように、首輪部分3とリード(引き紐)部分4とが一体になった紐2(ショーリード)を、飼い主が犬をはじめとするペットの首回りの大きさに応じて首輪部分3を留める。この首輪部分3を留める際に、飼い主は、ペット用引き紐の止め具1を使用する。ここで、ペットとは、図3に示されている犬の他、うさぎ、猫等をいう。
以下ペット用引き紐の止め具1の詳細について、説明する。
【0015】
図1〜図3に示すように、ペット用引き紐の止め具1は、球体状に形成されていて、合成樹脂で製作されている。このペット用引き紐の止め具1には、1対の紐2を挿通するための紐通孔5が形成されている。ここで、紐2の形状については、丸紐状となっている。
紐通孔5は、図2(b)に示すように、ペット用引き紐の止め具1の前後方向Xにおける一端部1Aから他端部1Bにわたって、設けられている。前後方向Xに沿って1対の紐2が各別に移動自在なまま挿通可能とするために、紐通孔5の左右方向Yにおける幅Lは、図2(a),図2(b),図2(d)に示すように、相互近接配置された状態における一対の紐2の太さ乃至厚みより大きくなるように設定されている。また、紐通孔5の上下方向Zにおける幅lについても、図2(a),図2(d)に示すように、紐2単独の太さ乃至厚みより大きくなるように設定されている。
【0016】
紐通孔5には、図2に示すように、第1紐通部5Aと第2紐通部5Bとに仕切られる隔壁6が前後方向X(紐通孔5の軸心方向)に沿って形成されている。ここで、第1紐通部5Aと第2紐通部5Bとの左右方向Yにおける幅L’は、共に紐2単独の太さ乃至厚みより大きくなるように設定されている。
また、紐通孔5の一端側(ペット用引き紐の止め具1の一端部1A側)には、各別の紐2の長手方向に沿った移動を規制するために、これら紐2を嵌め込む係止溝部7が径外方向の対称位置に連設されている。
【0017】
隔壁6は、上下方向Z(図2(a),図2(d)参照)に立設され、紐通孔5の軸心方向一端側開口部5Cから軸心方向中央部5D近傍(図2(b)参照)にわたって形成されている。
係止溝部7は、図2(b)に示すように、ペット用引き紐の止め具1の一端部1Aからペット用引き紐の止め具1の前後方向X中央部近傍にわたって設けられている。すなわち、係止溝部7の前後方向Xの長さは、隔壁6の前後方向Xの長さと略等しくなっている。
【0018】
ところで、係止溝部7は、図2(b)に示すように、係止溝部7の一端7A側から他端7B側にかけて溝奥部7Cが紐通孔5の径外側に屈曲している。すなわち、係止溝部7は、紐2が係止溝部7に係止されて、紐2に張りが与えられた状態で紐2が係止溝部7の溝奥部7Cの一端7Aと他端7Bとで接触しかつ中途部で接触しないように形成される。
以上述べた構成を有するペット用引き紐の止め具1及び紐2を、ペットに装着する際の作動態様、装着後の作動態様、ペットから取り外す際の作動態様について以下に述べる。
【0019】
まず、1本の紐2を折り返す。そのうえで、図1に示すように、折り返しによって形成された1対の紐2の先端それぞれを、開口部5C側から第1紐通部5A、第2紐通部5Bに挿入し、紐通孔5を経由してペット用引き紐の止め具1の他端部1B外方に突出させる。
紐2については、紐2の太さ乃至厚みが、紐通孔5、第1紐通部5A、第2紐通部5Bにおける左右方向Y、上下方向Zの幅より小さく設定されている。よって、紐2は、第1紐通部5A、第2紐通部5B、紐通孔5を容易に通過させることができる。このようにすることで、図1に示すように、開口部5C側にある紐2については、輪状になっていて、ペットの首回りに装着するための首輪部分3となる。そして、この首輪部分3の外周の大きさは、ペット用引き紐の止め具1を紐2の長手方向に沿って移動させることで、容易に調整することが可能となる。
【0020】
次に、この首輪部分3をペットの首回りに取り付ける。ペットの首回りに首輪部分を取り付ける際、首輪部分3は、ペットの顔回りを経由して首回りに至る。このため、首輪部分3の外周の大きさをペットの顔回りの大きさより大きくなるように、飼い主は、ペット用引き紐の止め具1を調整する。ペットの首回りに到達した首輪部分3は、首輪部分3がペットの頭部から抜き出ないようにするために、首輪部分3の外周の大きさをペットの首回りの大きさと略等しくなるようにペット用引き紐の止め具1の調整を介して行われる。
【0021】
そして、外周の大きさを設定した首輪部分3の大きさを保持させるために、飼い主は、1対の紐2を係止溝部7に嵌め込む。紐2が係止溝部7に嵌め込まれると、紐は、長手方向に沿った移動を規制される。
ところで、第1紐通部5Aと第2紐通部5Bとに仕切られる隔壁6が前後方向Xに沿って形成されている。この隔壁6の存在により、輪状になった首輪部分3が、ペット用引き紐の止め具1の一端部1Aから他端部1Aに向かって抜け出せないようになっている。これにより、ペット用引き紐の止め具1の使用時には、いったん輪状に形成された首輪部分3のままの状態で使用開始することが可能となり、飼い主がわざわざ紐2を紐通孔5に挿通する必要がなくなるため、便利である。さらに、隔壁6は、図2(b)に示すように、紐通孔5の軸心方向一端側開口部5Cから軸心方向中央部5D近傍にわたって形成されている。隔壁を紐通孔5の軸心方向一端から軸心方向中間位置までに留めることで、紐通孔5における紐2の長手方向に沿った移動の際、紐2と隔壁6との摺動による摩擦が、隔壁を紐通孔5の軸心方向全長にわたって設けた場合と比較して、少なくなる。これにより、首輪部分3の外周の調整が、よりスムーズに行うことが可能になる。
【0022】
紐2が係止溝部7に嵌め込まれると、図3に示すように、リード(引き紐)部分4と首輪部分3とが一体になった紐2(ショーリード)が形成される。このとき、紐2が係止溝部7に係止される際、紐2に張りが与えられた状態で紐2は、係止溝部7の溝奥部7Cの一端7Aと他端7Bとで接触しかつ中途部で接触しないように形成される。これにより、紐2が係止溝部7の一端7Aの尖った部分にしっかりと係止されるため、紐2の長手方向の移動規制は、(溝奥部7Cの中途部を含めた)溝奥部7C全体で係止される場合と比較して、より高められることになる。
【0023】
ペット用引き紐の止め具1及び紐2をペットから取り外すには、係止溝部7に嵌め込まれている紐2を、紐通孔5に移動させる。紐2が係止溝部7から紐通孔5に移ることで、紐2の長手方向の移動規制が解除される。
次に、ペットの首回りに装着している首輪部分3をペットの首回りから取り外すために、ペット用引き紐の止め具1を首輪部分3とは反対方向に向かって摺動させ、首輪部分3の外周の大きさをペットの顔回りの大きさより大きくするようにする。そのうえで、首輪部分3をペットの頭部から抜き出す。
【0024】
以上のように、本実施形態のペット用引き紐の止め具1は、1つの部材で構成することが可能で、かつシンプルな構造となっている。加えて、ペット用引き紐の止め具1及び紐2をペットに脱着する際、紐2の長手方向に沿った移動規制及び移動規制の解除が容易で、ペット用引き紐の止め具1の調整も容易かつスムーズに行うことが可能である。そして、いったん首輪を形成すると輪状を保持したまま使用可能であるため、非常に使い勝手が良い。
【0025】
なお、本発明のペット用引き紐の止め具1は、上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、首輪部分3とリード(引き紐)部分4とが一体になった紐2いわゆるショーリードに使用が限定されるものではなく、図4に示すように、胴輪等に使用してもよい。
また、紐2の形状については、丸紐状に限定されるものではなく、平紐状であってもよい。これにより、平紐状の紐2を嵌め込むための係止溝部7を、図2(a),図2(b)に示すように半円形状ではなく、楕円形状等にしてもよい。
【0026】
さらに、紐2の長手方向に沿った調整をするために、ペット用引き紐の止め具1の一端部1A側先方に別体のリングを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えば、小型犬のショーリードに用いられるペット用引き紐の止め具に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ペット用引き紐の止め具
1A 一端部
1B 他端部
2 紐
3 首輪部分
4 リード(引き紐)部分
5 紐通孔
5A 第1紐通部
5B 第2紐通部
5C 開口部
5D 中央部
6 隔壁
7 係止溝部
7A 一端
7B 他端
7C 溝奥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互近接配置された1対の紐が各別に長手方向に沿って移動自在なまま挿通可能にする紐通孔を、備えたペット用引き紐の止め具であって、
前記紐通孔の一端側には、各別の紐の長手方向に沿った移動を規制するために、係止溝部が径外方向の対称位置に連設されていることを特徴とするペット用引き紐の止め具。
【請求項2】
前記紐通孔には、第1紐通部と第2紐通部とに仕切られる隔壁が軸方向に沿って形成され、
前記第1、第2紐通部のそれぞれに対して、前記1対の紐を各別に挿通可能であることを特徴とする請求項1に記載のペット用引き紐の止め具。
【請求項3】
前記隔壁は、前記紐通孔の軸心方向一端側開口部から軸心方向中央部近傍にわたって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のペット用引き紐の止め具。
【請求項4】
前記係止溝部は、紐が係止溝部に係止されて、該紐に張りが与えられた状態で紐が係止溝の溝奥部の一端と他端とで接触しかつ中途部で接触しないように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のペット用引き紐の止め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−80792(P2012−80792A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227651(P2010−227651)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000111638)ドギーマンハヤシ株式会社 (25)