説明

ペンチ

【課題】容易に割りピンの一対の脚部の先端間を離間させることのできるペンチを得る。
【解決手段】それぞれ、一端及び他端の間に構成される連結部22a,22bを有し、連結部22a,22bを通過する回動軸心まわりに回動自在に連結され、他端間を接近及び離反するのに応じて、一端間が接近及び離反するように構成された一対のアーム21A,21Bを備え、一方のアーム21Aの一端側には、他方のアーム21Bに向けて開口し、頭部3が嵌合可能なピン嵌合凹部26が所定の長さに形成され、他方のアーム21Bの一端側には、ピン嵌合凹部26の最深部と相対する頂部28aを有し、ピン嵌合凹部26から離れる方向に頂部28aから延在するピン沿わせ面29、及びピン沿わせ面29から離れるにつれて、漸次ピン嵌合凹部26から離間するように頂部28aから延在する第1ピン曲げ面30からなる壁面形状の尖頭突出部28が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、割りピンの脚部の先端間を離間させるのに好適なペンチに関する。
【背景技術】
【0002】
軸支持部材に遊嵌状態に挿通された軸が、軸支持部材から脱落するのを防止する手段として割りピンを用いることは広く知られている。
【0003】
例えば、従来の懸垂碍子は、碍子本体と、碍子本体の外周面に取り付けられたキャップ部と、キャップ部の上端部に互いに相対して設けられた一対の突出片と、一対の突出片に遊嵌状態に挿通されて突出片に支持され、一対の突出片の外側近傍に位置する部位に、径方向を孔方向とするピン用孔が穿設されたコッターピンと、ピン用孔に挿し込まれ、コッターピンの突出片からの脱落を防止する割りピンと、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
割りピンは、例えば鋼材よりなる棒状の部材を、長手方向の所定部位で折り返した形状であり、頭部と、頭部から一方向に互いの間に略隙間なく延在する一対の脚部と、を備え、一方の脚部の先端側は、他方の脚部の先端より若干延出されている。
【0005】
そして、割りピンは、ピン用孔に一対の脚部を挿通させ、ピン用孔から延出される一対の脚部の先端側を、互いに相反する方向に折り曲げて用いられる。これにより、コッターピンが軸方向に移動して、突出片から抜けようとしても、頭部やピン用孔から突出する脚部の先端側が突出片に当接するので、コッターピンが突出片から脱落することが防止されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3122955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の懸垂碍子において、割りピンは、コッターピンの周方向に一対の脚部の先端側が並んで延出されるようにピン用孔に一対の脚部を挿通して配置される。そして、割りピンは、一対の脚部の先端側を、おおよそコッターピンの周方向の相反する方向に折り曲げてコッターピンに取り付けられる。このとき、まず、長さの長い一方の脚部の先端側を先に折り曲げ、次いで他方の脚部の先端側を一方の脚部の先端側から離れる方向に折り曲げるという手順で、一対の脚部の先端側を離間させていた。
【0008】
コッターピンはその軸心まわりに回転可能な状態にあるので、一方の脚部の先端側を折り曲げるときは、一方の手に把持したラジオペンチ等で頭部を掴み、コッターピンの回転を規制するように頭部に力を加えながら、他方の手に把持したラジオペンチで一方の脚部の先端側を掴んで折り曲げる必要がある。
【0009】
割りピンの一方の脚部は、他方の脚部の先端から若干延出されているだけであり、一方の脚部をラジオペンチで掴みにくい。このような条件下、コッターピンが回転しないように、両手に把持したラジオペンチに適当な力を加えて一方の脚部を折り曲げるには熟練の技が必要となり、作業者によっては、割りピンのコッターピンへの取り付け作業の効率が大きく低下してしまう。
【0010】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、容易に割りピンの一対の脚部の先端間を離間させることのできるペンチを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のペンチは、頭部、及び頭部から一方向に延在する一対の脚部を備える割りピンの一対の脚部の先端間を離間させるためのものであり、それぞれ、一端及び他端の間に構成される連結部を有し、連結部を通過する回動軸心まわりに回動自在に連結され、他端間を接近及び離反するのに応じて、一端間が接近及び離反するように構成された一対のアームを備え、一方のアームの一端側には、他方のアームに向けて開口し、割りピンの頭部が嵌合可能なピン嵌合凹部が所定の長さに形成され、他方のアームの一端側には、ピン嵌合凹部の最深部と相対する頂部を有し、ピン嵌合凹部から離れる方向に頂部から延在するピン沿わせ面、及びピン沿わせ面から離れるにつれて、漸次ピン嵌合凹部から離間するように頂部から延在する第1ピン曲げ面からなる壁面形状の尖頭突出部が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、軸に一対の脚部を挿通させた割りピンに対し、ピン嵌合凹部が割りピンの頭部に嵌合し、ピン沿わせ面が一方の脚部に沿うようにペンチを移動し、一対のアームの一端間を狭めるように、一対のアームを回動させるだけで、尖頭突出部を一対の脚部の間に押し込むことができる。つまり、作業者は、一対のアームを回動軸心まわりに回動させるという容易な作業を行うだけで、一対の脚部の先端間を離間させることができ、軸に割りピンを挿通させて取り付けるときの作業性が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】割りピンの正面図である。
【図2】割りピンの使用例を説明する斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るペンチの正面図である。
【図4】図3のA方向から見たペンチの側面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るペンチにおいて、ピン嵌合凹部に頭部を嵌合させて一対のアーム作用部の一端間に割りピンを配置させた状態を示す側面図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るペンチを用いて割りピンを軸に取り付ける作業を説明する正面図である。
【図7】図6のVII−VII矢視断面図である。
【図8】割りピンが軸に取り付けられた状態を示す正面図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るペンチの側面図である。
【図10】この発明実施の形態2に係るペンチを用いて割りピンを軸に取り付ける作業を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
実施の形態1.
まず、ペンチの説明に先立って、割りピンの構造について説明する。
図1は割りピンの正面図である。
図1において、割りピン1は、例えば、鋼製の棒状の部材を曲げ成形して作製され、頭部3と、頭部3から一方向に互いの間に略隙間なく延在する一対の脚部2a,2bと、を備えている。
頭部3は、所定の内径を有する環状体の一部を切り欠いた形状を有している。
そして、一対の脚部2a,2bが、頭部3の両端から延在されている。一方の脚部2aは、他方の脚部2bより長く作製され、一方の脚部2aの先端側は、他方の脚部2bの先端より若干延出されている。
【0016】
次いで、上記のように構成された割りピン1の使用例について説明する。
図2は割りピンの使用例を説明する斜視図である。
図2において、割りピン1は、何らかの装置の本体10に相対するように突設された一対の軸支持部11に挿通された軸13が、軸支持部11から抜け出るのを防止するのに用いられる。
【0017】
孔方向が径方向に一致するピン挿通孔13aが、軸13の軸方向の一端及び他端近傍の部位に穿設されている。詳細には図示しないが、一対のピン挿通孔13aの間の間隔は、一対の軸支持部11の間隔よりやや広く設定されている。そして、軸13は、ピン挿通孔13aのそれぞれが、一対の軸支持部11の外側で、かつ軸支持部11の近傍に配置されるように、一対の軸支持部11の外側に一端及び他端を延出させて軸支持部11に支持されている。
【0018】
割りピン1は、ピン挿通孔13aに一対の脚部2a,2bを挿通させて配置され、ピン挿通孔13aから延出された一対の脚部2a,2bの先端側を、互いに離間する方向に折り曲げて軸13に取り付けられている。このように取り付けられた割りピン1により、軸13が一対の軸支持部11から脱落されることが防止される。
【0019】
次いで、ペンチについて説明する。
図3はこの発明の実施の形態1に係るペンチの正面図、図4は図3のA方向から見たペンチの側面図、図5この発明の実施の形態1に係るペンチにおいて、ピン嵌合凹部に頭部を嵌合させて一対のアーム作用部の一端間に割りピンを配置させた状態を示す側面図である。
【0020】
図3〜図5において、ペンチ20Aは、それぞれ延在方向の中間部の所定領域に構成される連結部22a,22bを有し、連結部22a,22bを重ね互いに交差させ、それぞれの連結部22a,22bからの延出部が互いに相対し、連結部22a,22bを通過する回動軸心まわりに回動自在に連結される一対のアーム21A,21Bを備え、一対の挟持部25a,25bが、一対のアーム21A,21Bの一端側の相対する部位に構成されている。
【0021】
一方のアーム21Aは、連結部22a、連結部22aから互いに逆方向に延設されるアーム作用部23a及び把持部24aを備えている。なお、アーム作用部23aが、連結部22aの一側に配置され、挟持部25aがアーム作用部23aの先端側に構成されている。
【0022】
そして、挟持部25aは、回動軸心の軸心方向に所定の幅を有し、挟持部25aの幅方向の中央部に開口するピン嵌合凹部26が、割りピン1の頭部3が嵌合可能なように、アーム作用部23aの先端側(アーム21Aの一端)から連結部22aに向かって所定の長さに形成されている。ピン嵌合凹部26の長手方向に直交する断面の形状は、挟持部25aの幅方向の中央部で最も深く、最深部から開口にむけて漸次幅広となっている。
【0023】
他方のアーム21Bは、アーム21Aと同様に、連結部22b、アーム作用部23b及び把持部24bを備え、挟持部25bがアーム作用部23bの先端側に構成されている。
そして、挟持部25bは、挟持部25aの幅に一致する回動軸心方向の幅を有し、挟持部25bの幅中心の一側及び他側が、尖頭突出部28及び低底部31aにより構成されている。尖頭突出部28の壁面は、回動軸心に直交し、低底部31aの挟持部25bの幅中心側の端部から突出され、突出端が尖頭突出部28の頂部28aを構成するピン沿わせ面29、及びピン沿わせ面29から離れるに従って漸次ピン沿わせ面29の基端側に壁面位置を変えて頂部28aから延在する第1ピン曲げ面30を有している。
【0024】
また、挟持部25aに相対して配置される低底部31aの面は、ピン沿わせ面29に直交している。そして、頂部28aとピン沿わせ面29の基端部との間の距離は、割りピン1の脚部2b,2cを軸13に形成されたピン挿通孔13aに挿通させ、頭部3を軸13に当接させたときに、ピン挿通孔13aから延出される一方の脚部2aの先端側の長さより長くなるように設定されている。
【0025】
次いで、一対のアーム21A,21Bの連結構造について説明する。
一対のアーム21A,21Bは、一対のアーム作用部23a,23b及び一対の把持部24a,24bのそれぞれが相対するように連結部22a,22bを重ねて配置され、連結部22a,22bに挿通された回動軸ピン32の軸心まわりに回動自在に連結される。
【0026】
連結部22a,22bには、回動軸心に孔中心が一致する貫通孔(図示せず)が形成されている。また、回動軸ピン32は、連結部の貫通孔より僅かに小径に構成され、一端に雄ねじが形成されたピン軸(図示せず)、及びピン軸の他端にピン軸より大きな直径のヘッド33を有している。そして、ピン軸を連結部22a,22bの貫通孔に連結部22a側から挿通し、他方の連結部22bから延出されるピン軸の雄ねじにナットを螺合させることで、一対のアーム21A,21Bが連結されている。このとき、一対の連結部22a,22bは、回動軸ピン32のヘッド33とナットの間に締め付けられないように構成されており、これにより、一対のアーム21A,21Bが、回動軸心としての回動軸ピン32の軸心まわりに回動自在となっている。
【0027】
以上のように一対のアーム21A,21Bを連結して構成されたペンチ20Aにおいては、ピン嵌合凹部26が、他方のアーム21Bの一端側に向けて開口し、尖頭突出部28の頂部28aとピン嵌合凹部26とは相対する位置関係にある。また、一対の把持部24a,24bの先端(一対のアーム21A,21Bの他端)を接近及び離反させるように、一対の把持部24a,24bを操作したときに、アーム作用部23a,23bの先端(一対のアーム21A,21Bの一端)が、言い換えれば、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28とが接近及び離反される。
【0028】
また、図5に示されるように、他方のアーム21Bの尖頭突出部28の頂部28aは、ピン嵌合凹部26の最深部と相対する位置に配置される。このとき、ピン沿わせ面29は、ピン嵌合凹部26から離れる方向に頂部28aから延在し、第1ピン曲げ面30は、ピン沿わせ面29から離れるにつれて、漸次ピン嵌合凹部26から離間するように頂部28aから延在する。
【0029】
以上のように、嵌合凹部26と尖頭突出部28が相対しているので、軸13に挿通された割りピン1に対し、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28とを離反させたペンチ20Aを適当な位置に移動させて向きを調整すれば、嵌合凹部26に頭部3が嵌合させた状態で、ピン沿わせ面29に一方の脚部2aを沿わせることができる。
【0030】
次いで、ペンチ20Aを用いて割りピン1を軸13に取り付ける作業について説明する。
図6はこの発明の実施の形態1に係るペンチを用いて割りピンを軸に取り付ける作業を説明する正面図、図7は図6のVII−VII矢視断面図、図8は割りピンが軸に取り付けられた状態を示す正面図である。
【0031】
初期状態として、軸13は、図2に示したように、一対の軸支持部11の外側に一端及び他端を延出させて軸支持部11に支持されているものとする。
図6に示されるように、作業者は、まず、割りピン1の一対の脚部2a,2bを、軸13に形成されたピン挿通孔13aに挿通させる。次いで、一対のアーム21A,21Bを回動軸ピン32の軸心まわりに回動させ、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28の間の間隔を割りピン1の長さより広くする。
【0032】
一対の脚部2a,2bの先端側が、軸13の周方向に並ぶように割りピン1を向けた後、ピン嵌合凹部26を割りピン1の頭部3に嵌合させ、ペンチ20Aの向きを調整し、ピン沿わせ面29に一方の脚部2aを沿わせる。このとき、他方の脚部2bの先端と一方の脚部2aの間の部位が、尖頭突出部28の頂部28aと相対する。次いで、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28の間隔を狭める。
【0033】
さらに、図7に示されるように、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28の間隔を狭めるように一対のアーム21A,21Bを回動させ、尖頭突出部28の頂部28aを一対の脚部2a,2bの間に押し込む。このとき、ピン沿わせ面29は、一方の脚部2aの先端側に接しながら一方の脚部2aに沿って移動するとともに、第1ピン曲げ面30が他方の脚部2bの基端側に向かって移動する。これにより、他方の脚部2bの先端側は、第1ピン曲げ面30に押されて第1ピン曲げ面30に沿った方向に曲げられるので、一方の脚部2aの先端側から離れる。
【0034】
このようにして、一対の脚部2a,2bの先端間を離した後、一対の脚部2a,2bの先端側を、例えば、両手に把持したラジオペンチ(図示せず)で掴み、図8に示されるように、一対の脚部2a,2bを逆方向に折り曲げる。以上により、割りピン1が軸13に取り付けられ、軸13の軸支持部11からの脱落が防止される。
【0035】
この実施の形態1によれば、ペンチ20Aは、それぞれ、一端及び他端の間に構成される連結部22a,22bを有し、連結部22a,22bを通過する回動軸心まわりに回動自在に連結され、一端間が、他端間を接近及び離反させるのに応じて、接近及び離反するように構成された一対のアーム21A,21Bを備えている。そして、一方のアーム21Aの一端側には、他方のアーム21Bに向けて開口し、かつ頭部3に嵌合可能なピン嵌合凹部26が所定の長さに形成されている。また、他方のアーム21Bの一端側には、ピン嵌合凹部26の最深部と相対する頂部28aを有し、ピン嵌合凹部26から離れる方向に頂部28aから延在するピン沿わせ面29、及びピン沿わせ面29から離れるにつれて、漸次ピン嵌合凹部26から離間するように頂部28aから延在する第1ピン曲げ面30からなる壁面形状の尖頭突出部28が形成されている。
【0036】
従って、軸13に一対の脚部2a,2bを挿通させた割りピン1に対し、ピン嵌合凹部26が割りピン1の頭部3に嵌合し、ピン沿わせ面29が一方の脚部2aに沿うようにペンチ20Aを移動し、一対のアーム21A,21Bの一端間を狭めるように、一対のアーム21A,21Bを回動させるだけで、尖頭突出部28を一対の脚部2a,2bの間に押し込むことができる。つまり、作業者は、尖頭突出部28が一対の脚部2a,2bの間に押し込まれるようにアーム21A,21Bを回動軸心まわりに回動させるという容易な作業を行うだけで、一対の脚部2a,2bの先端間を離間させるように他方の脚部2bを折り曲げることができる。
【0037】
また、他方の脚部2bを曲げてしまえば、一対の脚部2a,2bの先端間が離れるので、一対の脚部2a,2bのそれぞれの先端側は、両手に把持したラジオペンチのそれぞれで簡単に掴むことができる。これにより、一方の脚部2aを他方の脚部2bと逆側に曲げる作業は、他方の脚部2bの先端側を掴んだラジオペンチの状態を維持しながら一方の脚部2aの先端側を他方の脚部2aの先端側と逆側に曲げることで簡単に行える。ペンチ20Aを用いることにより、軸13に割りピン1を挿通させて取り付けるときの作業性を著しく向上させることができる。
【0038】
なお、上記実施の形態1では、ピン嵌合凹部26及び尖頭突出部28は、一方及び他方のアーム21A,21Bの一端から連結部22aに向かって所定の長さに形成されるものとして説明したが、ピン嵌合凹部26及び尖頭突出部28は、一方及び他方のアーム21A,21Bの一端から連結部22aに向かって形成されるものに限定されない。ピン嵌合凹部26及び尖頭突出部28は、一方及び他方のアーム21A,21Bの連結部22a,22bより一端側の所定部位に形成されていればよい。
【0039】
また、ピン嵌合凹部26は、長手方向に垂直な断面が、最深部から開口に向かって漸次幅広となる形状であるものとして説明したが、ピン嵌合凹部の形状はこのものに限定されない。ピン嵌合凹部の長手方向に垂直な断面形状は、割りピン1の頭部3が嵌合可能なものであればよく、例えば、ピン嵌合凹部の断面形状を、割りピン1の頭部3の直径よりやや幅広で、所定の深さを有する矩形形状にしてもよい。
【0040】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2に係るペンチの側面図、図10はこの発明の実施の形態2に係るペンチを用いて割りピンを軸に取り付ける作業を説明する断面図である。
なお、図9及び図10において、上記実施の形態1と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0041】
図9において、ペンチ20Bは、アーム21Bに代え、アーム21Cが用いられる他はペンチ20Aと同様に構成されている。
アーム21Cは、アーム作用部23bに代え、低底部31b及び尖頭突出部28からなる挟持部25cが形成されたアーム作用部23cを有する他はアーム21Bと同様に構成されている。
挟持部25cに相対して配置される低底部31bの面は、ピン沿わせ面29から離れるに従って、ピン沿わせ面29に直交する面から離れる方向に壁面位置を変えるように、頂部28aから所定距離だけ離間するピン沿わせ面29の基端部から延在する第2ピン曲げ面34を構成している。なお、所定距離は、割りピン1において、他方の脚部2bから延出される一方の脚部2aの長さより長く設定される。
【0042】
一対のアーム21A,21Cを連結して構成されるペンチ20Bにおいて、ピン沿わせ面29の基端部は、ピン嵌合凹部26から離れる方向に向かって頂部28aから所定距離だけ離間する位置に配置される。そして、第2ピン曲げ面34は、ピン沿わせ面29から離れるにつれて、漸次ピン嵌合凹部26から離れるように、ピン沿わせ面29の基端部から第1ピン曲げ面30と逆側に延在される。
【0043】
次いで、ペンチ20Bを用いて割りピン1を軸13に取り付ける作業について説明する。
【0044】
初期状態として、軸13は、図2に示したように、一対の軸支持部11の外側に一端及び他端を延出させて軸支持部11に支持されているものとする。
作業者は、まず、割りピン1の一対の脚部2a,2bを、軸13に形成されたピン挿通孔13aに挿通させる。次いで、一対のアーム21A,21Cを回動軸ピン32の軸心まわりに回動させ、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28の間の間隔を割りピン1の長さより広くする。
【0045】
一対の脚部2a,2bの先端側が、軸13の周方向に並ぶように割りピン1を向けた後、ピン嵌合凹部26を割りピン1の頭部3に嵌合させ、ペンチ20Bの向きを調整し、ピン沿わせ面29に一方の脚部2aを沿わせる。このとき、他方の脚部2bの先端と一方の脚部2aの間の部位が、尖頭突出部28の頂部28aと相対する。次いで、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28の間隔を狭める。
【0046】
さらに、図10に示されるように、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28の間隔を狭めるように一対のアーム21A,21Cを回動させ、尖頭突出部28の頂部28aを一対の脚部2a,2bの間に押し込む。このとき、ピン沿わせ面29は、一方の脚部2aの先端側に接しながら一方の脚部2aに沿って移動するとともに、第1ピン曲げ面30が他方の脚部2bの基端側に向かって移動する。これにより、他方の脚部2bの先端側は、第1ピン曲げ面30に押されて第1ピン曲げ面30に沿った方向に曲げられるので、一方の脚部2aの先端側から離れる。
【0047】
他方の脚部2bが折り曲げられてから、さらに、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28の間隔を狭めるように一対のアーム21A,21Cを回動させる。これにより、第2ピン曲げ面34が、一方の脚部2aに当接する。さらに、ピン嵌合凹部26と尖頭突出部28の間隔を狭める。これにより、他方の脚部2bの先端側は、第2ピン曲げ面34に押されて第1ピン曲げ面30に沿った方向に曲げられる。このとき、一対の脚部2a,2bは互いに逆側に折り曲げられる。
【0048】
この実施の形態2のペンチ20Bは、他方のアーム21Cの一端側に、ピン沿わせ面29及び第1ピン曲げ面30を壁面に有する尖頭突出部28と、ピン沿わせ面29から離れるにつれて、漸次ピン嵌合凹部26から離れるように、嵌合凹部26から離間する方向に向かって頂部28aから所定距離だけ離間したピン沿わせ面29の基端部から延在する第2ピン曲げ面34を壁面形状に有する低底部31bと、を備えている。
【0049】
従って、ペンチ20Bを用いれば、作業者は、尖頭突出部28が一対の脚部2a,2bの間に押し込しこみ、一方の脚部2aが第2ピン曲げ面34に当接してから、さらに一対のアーム21A,21Cの一端間を狭めるように一対のアーム21A,21Cを回動させるという容易な作業を行うだけで、一対の脚部2a,2bの先端間を互いに離間する方向に同時に折り曲げることができる。従って、軸13に割りピン1を挿通させて取り付けるときの作業性を一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 割りピン、2a,2b 脚部、3 頭部、20A,20B ペンチ、21A〜21C アーム、22a,22b 連結部、26 ピン嵌合凹部、28 尖頭突出部、28a 頂部、29 ピン沿わせ面、30 第1ピン曲げ面、31b 低底部、34 第2ピン曲げ面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部、及び上記頭部から一方向に延在する一対の脚部を備える割りピンの一対の脚部の先端間を離間させるためのペンチであって、
それぞれ、一端及び他端の間に構成される連結部を有し、上記連結部を通過する回動軸心まわりに回動自在に連結され、他端間を接近及び離反するのに応じて、一端間が接近及び離反するように構成された一対のアームを備え、
一方の上記アームの一端側には、他方の上記アームに向けて開口し、上記頭部が嵌合可能なピン嵌合凹部が所定の長さに形成され、
他方の上記アームの一端側には、上記ピン嵌合凹部の最深部と相対する頂部を有し、上記ピン嵌合凹部から離れる方向に頂部から延在するピン沿わせ面、及び上記ピン沿わせ面から離れるにつれて、漸次上記ピン嵌合凹部から離間するように上記頂部から延在する第1ピン曲げ面からなる壁面形状の尖頭突出部が形成されていることを特徴とするペンチ。
【請求項2】
他方の上記アームの一端側には、上記ピン沿わせ面から離れるにつれて、漸次上記ピン嵌合凹部から離れるように、上記嵌合凹部から離間する方向に向かって上記頂部から所定距離だけ離れた上記ピン沿わせ面の基端部から延在する第2ピン曲げ面を壁面形状に有する低底部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のペンチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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