説明

ホイッスル

【課題】吹く力の強弱に影響を受けにくいとともに、高く、大きな音を発生して、緊急時に助けを求めるのに好適なホイッスルを提供する。
【解決手段】本体10とマウスピース20とからなるホイッスル1である。本体10には、共鳴室11および共鳴室11と外部を連通する排気口12を形成する。マウスピース20には、共鳴室11へ空気を送り込む略平板状の送気通路21を形成する。送気通路21は、共鳴室11に繋がる出口23の高さが、0.3〜1.0mm、かつ入口22の高さが、0.8〜3.5mmとされ、入口22から出口23に向かって徐々に狭まる形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイッスルに関し、特に、緊急時に助けを求めるのに好適なホイッスルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホイッスルは、送気口から送気通路を通じて流れた空気を、排気口のエッジにあてつつ排気口から吹き出させることで音を出している。従来の典型的な形状のホイッスルの一つとしては、例えば特許文献1の図2に開示されているように、マウスピースに略平板状の送気通路が形成され、送気通路と繋がった共鳴室の一壁部に吹出口が形成されているものがある。このような典型的な形状のホイッスルは、通常、送気通路の高さが3mm前後に形成されている。また、その多くが、送気通路の高さが一定に形成されている。
しかし、このような従来のホイッスルは、送気通路の高さが大きいことから、音が出るまでに多量の空気が必要とされる。つまり、送気口から強く空気を吹き込んで初めて音が出るようになっている。
【0003】
ところで、地震や水害などの災害が顕著になってきた昨今においては、防災に対する意識の高まりの中、崩れた建物の中から救済を求める場合などにホイッスルを用いることが注目されている。ところが、前記した一般的な形状のホイッスルでは、強い吹き込みが必要とされていることから、高齢者などの吹く力が弱い人には、十分な音を出せないという問題があった。
【0004】
このような問題から、従来でも、送気通路の高さを小さく、例えば前記した送気通路の高さを1mmで一定にして、弱い力でも音が出るようにしたホイッスルが知られている。
【0005】
しかしながら、送気通路の高さを1mmで一定にすると、強く吹いたときに、音が出なくなるという問題がある。つまり、災害に遭った動揺から、助けを求めてつい強く吹き込んでしまった場合には、送気通路内をスムーズに空気が流れず、うまく音が出ないという問題がある。
【0006】
一方、助けを求めるのに使用されるホイッスルとしては、高く、大きい音が出るものが望ましい。このような音は遠くまで届くことができ、ホイッスルの使用により救助隊などに発見されやすくなるからである。
この点、特許文献1に記載のホイッスルでは、3.0〜3.5kHz程度の周波数を強度的なピークとした音が出ている。従来の高さ1mmの送気通路を有するホイッスルも同様に、3kHz程度の周波数を強度的なピークとした音を発生する。
【0007】
【特許文献1】特開平9−212171号公報(図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、吹く力の強弱に影響を受けにくいとともに、高く、大きな音を発生して、緊急時に助けを求めるのに好適なホイッスルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のホイッスルは、共鳴室および前記共鳴室と外部を連通する排気口を有する本体と、前記共鳴室へ空気を送り込む略平板状の送気通路を有するマウスピースとを備えたホイッスルであって、前記送気通路は、前記共鳴室に繋がる出口の高さが、0.3〜1.0mm、かつ入口の高さが、0.8〜3.5mmとされ、入口から出口に向かって徐々に狭まる形状であることを特徴とする。入口の高さは、望ましくは1.0〜3.0mmである。
【0010】
このようなホイッスルでは、送気通路の出口部分の高さが0.3〜1.0mmと小さくされていることから、弱い力で吹き込んでも十分な流速の空気流を発生して、音を出すことができる。また、強い力で吹き込んだ場合にも、入口側が出口側より広いことから送気通路内をスムーズに空気が流れて、送気通路の出口から共鳴室へ高い流速で空気を送り込むことができる。その結果、ホイッスルは、極めて大きく、高い音を発生し、使用者が緊急時に助けを求めてホイッスルを使用すれば、遠くまで自己の存在を知らせることができる。
【0011】
また、前記ホイッスルにおいては、前記送気通路を形成する上壁および下壁の一方または双方を可動に構成し、前記送気通路の傾斜を可変にするのが望ましい。
このように構成することで、大きな音を出して助けを求めたいときには、送気通路の壁の入口から出口へ向かう傾斜(送気通路の傾斜)を大きくし、通常の使用時には、送気通路の壁の傾斜を緩く、または上下の壁を平行にして、音量や音色を調整するなど、使用の状況に応じた使い分けが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のホイッスルによれば、吹く力の影響を受けにくく、高く、大きな音を発生することができる。そのため、緊急時に助けを求めるのに好適に使用できる。また、送気通路を形成する壁の傾斜を可変にすることで、使用状況に応じた音量、音色の音を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は、実施形態に係るホイッスルの全体斜視図であり、図2(a)は、可動下壁の斜視図、図2(b)は、本体部品の図1におけるX−X線断面に相当する図であり、図3は、図1のX−X線断面図であり、(a)が通常使用時、(b)が緊急使用時を示す。
【0014】
図1に示すように、ホイッスル1は、共鳴室11を有する本体10と、本体10と繋がったマウスピース20とを備えて構成されている。マウスピース20には、一端(入口22)が外部に開口し、他端(出口23)が共鳴室11に繋がった送気通路21が形成されている。本実施形態のホイッスル1は、機能的に本体10とマウスピース20とに分かれるが、部品としては、本体10とマウスピース20の上側(図1における上方を「上」とする)を樹脂の一体成形により構成した一つの部品(「本体部品15」とする。図2(b)参照)と、マウスピース20の下側を構成するもう一つの部品(「可動下壁25」とする。図2(a)参照。)の2つの部品から構成されている。このような部品の割り方は、本発明において特に重要ではなく、適宜な数の部品から構成することができる。ホイッスル1を構成する材料も樹脂以外に金属、セラミックス、木材などを任意に選択することができる。
【0015】
本体10には、共鳴室11に送られた空気を排出する排気口12が形成されている。排気口12には、送気通路21から送り込まれた空気が当たって音を発生するエッジ12aが、およそ送気通路21の出口23に向けて配置されている。
送気通路21は、略平板状の形状を有しているが、後述するように可動下壁25の操作により通路の形状が変えられるようになっている。前記した排気口12のエッジ12aは、送気通路21の平たい方向、言い換えれば幅方向に沿った稜線を有している。
本体10の後端部(図1における奥側)には、上下に貫通する小さなストラップ孔13が形成されている。ストラップ孔13に紐や鎖を通して、キーホルダや携帯電話にホイッスル1を繋ぐことで、常にホイッスル1を携帯することができ、緊急時に救助を求めるのに有効である。
【0016】
図2(a)に示すように、可動下壁25は、前側(図2(a)の手前側)が細くなった略くさび形の形状をしている。可動下壁25の断面形状は、幅方向において略一定である。可動下壁25の両側壁には、円柱状の突起からなる回動軸25aが形成されている。また、可動下壁25の上面、つまり、送気通路21にとっての下壁27上には、2つの小さな突起25bが設けられている。さらに、可動下壁25の両側壁には、回動軸25aに並んで小さな突起25cが設けられている。また、可動下壁25の上部後端は、本体10の排気口12に対面する凹曲面25dが形成されている。凹曲面25dは、共鳴室11内の空気を排気口12から排出するときに、空気の流れを排気口12へ向けることで、音の乱れを防止している。
【0017】
一方、図2(b)に示すように、本体部品15には、可動下壁25の回動軸25aに対応して、内側の側壁(「内側壁16」とする。)に円柱状の窪みからなる軸支穴17が形成されている。回動軸25aが軸支穴17に嵌合されると、可動下壁25は、回動軸25aを中心として回動できるようになる。内側壁16には、軸支穴17に連続して、軸支穴17より若干浅いガイド溝18が形成されている。ガイド溝18は、回動軸25aを軸支穴17へ嵌装するときの回動軸25のガイドとして機能する。また、前記した可動下壁25の側壁に形成された突起25cは、可動下壁25を本体部品15に組み合わせたときにガイド溝18内に収まるように配置されている。
【0018】
このような各部品の構成により、本体部品15と可動下壁25とを組み合わせると、図3のような位置関係になる。
通常使用時においては、図3(a)に示すように、可動下壁25の前端(図3(a)の左側)が上がって送気通路21の入口22が狭くなっている。このとき、突起25bが送気通路21の上壁26に当接することで、送気通路21の入口22の高さが規制されている。例えば、突起25bの高さを1.0mmに設定しておくことで、可動下壁25を閉じたときの入口22の高さH2を1.0mmにすることができる。
【0019】
一方、緊急使用時には、図3(b)に示すように、可動下壁25を、その前端が下がるように回動させると、送気通路21の入口22が広がる。このとき、ガイド溝18内にあった可動下壁25の突起25cが、ガイド溝18の壁18a(内側壁16とガイド溝18の段差部分)に当接することで入口22の高さが規制される。例えば、可動下壁25を開いたときの入口22の高さH2を3.0mmとなるように突起25cの位置を設定することができる。
【0020】
送気通路21の出口23の高さH1は、0.3〜1.0mmに設定される。0.3mmより大きくすることで、空気が十分に流れ、高く、大きな音を出すことができる。また、1.0mmより小さくすることで、高い流速を実現でき、高く、大きな音を出すことができる。
送気通路21の入口22の高さH2は、少なくとも可動下壁25の可動範囲内で、0.8〜3.5mmの状態があるように設定され、より望ましくは、1.0〜3.0mmの状態があるように設定される。入口22の高さH2が0.8mmより大きいことで、十分な量の空気を共鳴室11へ送り込むことができ、3.5mmより小さいことで、送気通路21を流れる空気流の乱れを防止して、安定して音を発することができる。高さH2は、望ましくは、可動下壁25を開ききった状態で、これらの高さ(0.8〜3.5mmまたは1.0〜3.0mm)の範囲にあるのがよい。このようにすることで、緊急時に可動下壁25を開ききるという単純な動作で緊急時に適した送気通路21が確保できる。また、可動下壁25を開いた状態で、送気通路21内の高さが、徐々に小さくなっていくように形成されるのがよい。
なお、送気通路21の幅は、あまり重要ではないが、小さすぎるとその分大きな音が出ず、大きすぎると、強く吹かなくてはならなくなる。通常、送気通路21の高さに応じて、幅を5〜15mm程度の範囲で適宜設定するのが望ましい。
【0021】
以上のように構成されたホイッスル1の動作について説明する。
通常使用時においては、図3(a)に示すように、可動下壁25を閉じて(前端部を上げて)突起25bを送気通路21の上壁26へ当接させる。これにより、送気通路21は、例えば、入口22から出口23まで1.0mmで一定の高さとなる。したがって、この状態で入口22から息を吹き込むことで、弱い吹き込み力でも音を出すことができる。また、音の大きさが従来の典型的なホイッスルより若干大きい程度で、音の高さも従来と同等であるため、耳障りになることなく、体育の授業や部活動などでの一般的な使用に用いることができる。
【0022】
そして、緊急使用時には、図3(b)に示すように可動下壁25を開いて(前端部を下げて)突起25cをガイド溝18の壁18aに当接させる。これにより、送気通路21の入口22の高さH2は、例えば3.0mmになり、出口23の高さH1は、1.0mmになる。なお、図3(a)および(b)に示したように、回動軸25aを出口23の略真下(上壁26の面に対して鉛直方向の下方)辺りに配置しておけば、可動下壁25の出口23の高さは、可動下壁25の作動によってもほとんど変わらない。
この状態で入口22から息を吹き込むと、少ない抵抗で空気が送気通路を通過していき、狭く絞られた出口23から勢いよく共鳴室11へ送り込まれる。そのため、ホイッスル1から高く、大きな音が発生する。しかも、出口23が絞られているので弱く吹いた場合でも音が発生するとともに、強く吹き込んだ場合にも、入口22が開いて送気通路21は徐々に狭くなっているので、空気がスムーズに通りホイッスルから大きな音が発生する。
また、凹曲面25dが、排気口12に対面しているので、共鳴室11内に入った空気は排気口12からスムーズに排出され、音がかすれることなく発生する。
【0023】
このように、本実施形態のホイッスル1によれば、強く吹いても弱く吹いても安定して音を発するとともに、送気通路21の入口22を開いた状態とすれば、高く、大きな音が出て、緊急時に助けを求める場合に好適に使用することができる。一例としては、約5kHzを強度的なピークとした高い音を発生することができる。
【0024】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。
例えば、実施形態においては、可動下壁25により、送気通路21の上壁に対する下壁の傾斜角を変更できるようにしたが、図4に示すように、下壁27′を本体10と一体に構成して、送気通路21の傾斜角を一定に固定した構成とすることもできる。この場合でも、略平板状の送気通路21の入口22の高さH2および出口23の高さを本発明で規定する所定範囲内に設定しておけば、吹く力によらず音を発し、かつ高く大きな音を発生するという本発明の効果を得ることができる。また、緊急時専用のホイッスルとして、緊急時に取り出してすぐに救助を求めることができる。
【0025】
また、可動下壁25の動作を規制する構造は、実施形態のものに限られず、例えば図5(a),(b)に示す変形例のように、可動下壁125の後端に適宜な数の突起126を形成しておき、一方、本体部品115には、突起126に対面する部分に突起126を収容できる溝116を形成する構成とすることもできる。この構造においても、可動下壁125が閉まりきる姿勢と、開ききる姿勢のところで突起126と溝116の壁が当接するように設計しておけば、可動下壁25の回動範囲を適宜に設定することができる。
【0026】
さらに、実施形態においては、送気通路21の下壁27が可動になるように構成したが、図6(a),(b)に示すように、下壁227を固定して、上壁226を回動軸226a周りに回動させる構成としてもよい。このとき、実施形態と同様に上壁226に設けた突起226bにより上壁226を閉じたときの位置規制は可能である。また、上壁226を開いたときの位置規制は、共鳴室11の内壁に上壁226の後端部に当接する突起216を形成しておくとよい。なお、このように上壁226を可動に構成する場合には、図6(a),(b)に示すように、排気口12の部分も上壁226と一体に動くようにしておくことで、音色の変化や、製造誤差による音のかすれを防止することができる。
【0027】
また、図2の可動下壁25と、図6の可動な上壁226を組み合わせて適用して、上壁および下壁の双方を可動に構成することも可能である。
【実施例】
【0028】
次に、本発明のホイッスルの作用効果を確認した実施例について説明する。
実施形態と同様の略平板状の送気通路を有するホイッスルにおいて、送気通路の入口高さと出口高さを変更して、発生した音の周波数を測定した。周波数の測定には、Sound
analyzer TES-1358Aを用い、各テストにおいて強度が最大となった周波数をプロットした。なお、送気通路の幅は10mmとした。
図7は、実施例のテスト結果を示すグラフである。
出口の高さを0.2mm,0.3mm,0.5mm,1.0mm,1.2mm,1.5mmの各大きさに変更したところ、0.3〜1.0mmの範囲では、安定した音を発生したが、0.2mm,1.2mm,1.5mmの場合には、高い音、十分な音が発生しなかった。
そして、入口の高さを0.5〜4.0mmの間で変更して複数テストしたところ、0.8〜3.5mmの範囲で、3kHz以上の高い音が発生した。特に、1.0〜3.0mmの範囲では、3kHzより高い大きな音が発生した。
より高い音、例えば3.5kHzより高い音を発生させるには、入口の高さを2.0〜3.0mmの範囲に設定するとよいことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係るホイッスルの全体斜視図である。
【図2】(a)は、可動下壁の斜視図、(b)は、本体部品の図1におけるX−X線断面に相当する図である。
【図3】図1のX−X線断面図であり、(a)が通常使用時、(b)が緊急使用時を示す。
【図4】本発明の第1の変形例を示す図1のX−X線断面に相当する図である。
【図5】本発明の第2の変形例を示す図1のX−X線断面に相当する図であり、(a)は送気通路の入口を狭くした状態、(b)は、送気通路の入口を広くした状態を示す。
【図6】本発明の第3の変形例を示す図1のX−X線断面に相当する図であり、(a)は送気通路の入口を狭くした状態、(b)は、送気通路の入口を広くした状態を示す。
【図7】実施例のテスト結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 ホイッスル
10 本体
11 共鳴室
12 排気口
12a エッジ
13 ストラップ孔
20 マウスピース
21 送気通路
22 入口
23 出口
25 可動下壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴室および前記共鳴室と外部を連通する排気口を有する本体と、前記共鳴室へ空気を送り込む略平板状の送気通路を有するマウスピースとを備えたホイッスルであって、
前記送気通路は、前記共鳴室に繋がる出口の高さが、0.3〜1.0mm、かつ入口の高さが、0.8〜3.5mmとされ、入口から出口に向かって徐々に狭まる形状であることを特徴とするホイッスル。
【請求項2】
前記送気通路を形成する上壁および下壁の一方または双方を可動に構成し、前記送気通路の傾斜を可変にしたことを特徴とする請求項1に記載のホイッスル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−114638(P2007−114638A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308075(P2005−308075)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(305052447)創曉有限公司 (4)