説明

ホウ酸エステルの使用

【課題】潤滑油として用いられ、より特には圧縮型の冷蔵庫における潤滑油として用いられるためのポリアルキレングリコール誘導体の提供。
【解決手段】冷媒(refrigerant)と共に用いられた潤滑剤用の脱水剤としての式(III)のホウ酸エステルの使用。[R−X−(RO)(RO)(RO)−O−]−B(III)、ここでX=OまたはS、RはC−C10のアルキル、または複素環を含むC〜C15の置換基であって、前記複素環におけるヘテロ原子は酸素及び/または硫黄であり、Rは、Cアルキレン基、Rは、Cアルキレン基、Rは、Cアルキレン基、r、s、tはそれぞれ独立な0または50以下の整数であり、r+s+t=3〜50(両端の数値を含めて)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油として用いられ、より特には圧縮型の冷蔵庫における潤滑油として用いられるためのポリアルキレングリコール誘導体に関する。
【0002】
従来の圧縮型の冷蔵庫においては、冷媒(refrigerant)と潤滑油との混合物は、コンプレッサーを含む数々の装置を通って循環され、そのコンプレッサーは液体に変化させるためにガス冷媒(refrigerant)に圧力を加える。このような装置は可動部品を含み、潤滑油はこれらの部品の間の摩擦を減少させる必要がある。このような潤滑特性に加えて、潤滑油は冷媒(refrigerant)と相溶性が良いことが望ましい。これは、冷媒(refrigerant)/潤滑油混合物が遭遇する温度がコンプレッサー内の65℃から冷却装置内の-40℃に広がっているからである。もし潤滑油がこの温度範囲内の如何なる点においても冷媒(refrigerant)と相溶性がよくなければ、相分離が生じ、潤滑と冷却の効率の減少が進行する。
【0003】
種々の冷媒(refrigerant)用の潤滑油が知られている。例えば、US4755316は、1種以上のポリエーテルポリオールを含む潤滑油組成物を開示している。その組成物は、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)のような圧縮冷媒(refrigerant)と共に用いるのに適している。
【0004】
US485114もR134aのような冷媒(refrigerant)に適した潤滑剤を開示している。US485114の潤滑油は、ポリエーテルポリオールとエステルの混合物に基づいている。
【0005】
EP377122AとEP634467Aにおいては、ポリオキシアルキレングリコールの誘導体に基づく潤滑油が開示されている。開示されている潤滑油の一つは、一般式:
[(OROR]
ここで、Rが炭素数1〜10のアルキル基であり、炭素数1〜10のアシル基、または2〜6価の脂肪族炭化水素基であり、
が炭素数2〜4のアルキレン基であり、
が、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアシル基であり、
nが1〜6の整数であり、かつ
mが1〜80の整数である、
に代表される。
【0006】
EP913456Aは、R1が5員環アルキレンカーボネート(例えば−O−(C=O)−O−基を含む)であるが上記一般式に関するハロゲンフリー冷媒(refrigerant)用の潤滑剤を開示している。ハロゲン化した冷媒(refrigerant)にも使うことができるようにするための適切な溶解特性をそれらが有することの示唆はない。
【0007】
発明者らは、いま、複素環置換基を有するポリオキシアルキレングリコール誘導体に基づいた新たな潤滑油を開発した。
【0008】
本発明によれば、式(I)のポリアルキレングリコール誘導体を含む潤滑油が提供される。:
RX(RO)(RO)(RO) (I)
ここで
X=OまたはS、
Rは、複素環を含むC〜C15の置換基で、前記環におけるヘテロ原子が酸素及び/または硫黄であり、
はCアルキレン基、
はCアルキレン基、
はCアルキレン基、
は、Rと同じか、または、H、C〜C20アルキルまたはC〜C20アシル、
x,y,zは、互いに独立で0または100以下の整数値であって、かつx+y+z=4〜100である。
Xは酸素であることが好ましい。
【0009】
本発明の製品は、これらが低温において分離を示さないことにおいて、市販のジメチルエーテル(EP634467において記載されたものと似ている)よりもかなりの優位性を示している。
【0010】
現代のコンプレッサーは、−60℃以下まで稼動でき、それゆえ、これはますます重要な特徴になってきている。圧縮型の冷蔵庫における低温分離は、結果として不完全な搬送と潤滑油の循環となり、摩耗の不具合などにつながる。
【0011】
上記のように、Rは、C〜C15の複素環種を含む置換基であり、複素環ヘテロ原子は酸素及び/又は硫黄である。好ましくは、その複素環は、酸素又は硫黄を含む。複素環は飽和又は不飽和であってもよい。例えば、Rは、飽和環式エーテルまたは飽和環式チオエーテルでもよい。このような環式化合物は、置換がされても、されていなくてもよい。置換がされた場合には、複素環は、その置換基又は不特定の1つの置換基を介してXに連結してもよく、このような場合において置換基は、例えば−CH−、−C−、または−C−である炭化水素リンケージでもよい。好ましくは、Rは、直接または炭化水素リンケージを介してXに接続するC〜Cの複素環部分を含んでいてもよい。たとえば、その複素環部分は、フランまたはチオフェン環であってもよい。複素環部分は、代わりに、フルフリル、またはテトラヒドロフルフリルのようなフルフリル誘導体であってもよく、直接または炭化水素リンケージを介してXへと接続されてもよい。Rが誘導されるもとの化合物の例には、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、またはメチルテトラヒドロチオフェン置換基が含まれる。Rの好ましい例は、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランから誘導可能なものであり、Rがメチルテトラヒドロフランから誘導されて且つXがOであるなど、その誘導可能なものは上記の定義に従う式R−XHを有するとみなすことができるものである。
【0012】
、R及びRのそれぞれは、式IIにより表されてもよい。;
[−C(R)(R)−C(R)(R)−] (II)
【0013】
の場合においては、R、R、R及びRのそれぞれは水素である。Rの場合には、R、R、R及びRのうちの1つがメチルであって、且つその他が水素である。Rの場合には、Re、R、R及びRのいずれかの1つがエチルであるか、またはR、R、R及びRのいずれかの2つがメチルであるかのどちらかであって、残りが水素である。例えば、Rは、ブチレン基またはイソブチレン基でもよい。
【0014】
好ましくは、R、R及びRの1つ又は2つのみが式Iで与えられる。言い換えれば、本発明の好ましい態様においては、X、Y及びZのうちの1つまたは2つがゼロである。例えば、Xがゼロ及び/又はZがゼロであってもよい。
【0015】
は、Rと同様であってもよく、またはH、C〜C20アルキルまたはC〜C20のアシルであってもよい。RがC〜C20のアルキルまたはC〜C20のアシル基である場合には、Rは1〜15の炭素原子を有することが好ましく、1〜10の炭素原子を有することが更に好ましく、1〜6の炭素原子を有することが最も好ましい。RがC〜C20のアルキル基である場合には、そのアルキル基は、直鎖、枝分れ鎖または環状アルキル基であってもよい。適したアルキル基にはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル基が含まれる。RがC〜C20のアシル基である場合には、直鎖、枝分れ鎖または環状であってもよい。アシル基は、例えば、アルキル置換基のような置換基をさらに有していてもよく、その置換基は直鎖、枝分れ鎖、環状アルキル置換基であってもよい。そのようなアルキル置換基はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基を含む。
【0016】
x+y+z=4〜100(両端の数値を含めて)。好ましくは、その合計値は、5と50との間の値(両端の数値を含めて)に等しく、より好ましくは15と40との間であり、最も好ましくは、15と25との間である。一の実施態様では、x=0,z=0,かつy=18である。他の実施態様では、x=0、y=17、かつz=1である。
【0017】
式(I)のポリアルキレングリコール誘導体は、当該技術において知られたいかなる適切な方法により調製されてもよい。適切な方法は、EP0634467の7から8頁において記載されている方法A、B及びCに記載されている。しかし、好ましい方法は、以下に述べられる。
【0018】
式RXH(上記で定義されたRとX)の化合物は、開始剤として用いられ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及び/またはブチレンオキサイドと反応する。エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、またはブチレンオキサイドは、それぞれ単独で用いられてもよく、2種またはそれ以上のそのようなアルキレンオキサイドの混合物が用いられてもよい。2種またはそれ以上のアルキレンオキサイドが用いられる場合には、これらのアルキレンオキサイドは、任意の順序で順次反応してもよい。したがって、RXHは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはブチレンオキサイドの一つと反応し、結果生成物はそのリストから選ばれた異なるアルキレンオキサイドと反応してもよく、また逆も同様である。随意的に、結果生成物は、さらに、例えば、さらに異なるアルキレンオキサイドと完全に反応してもよく、代わりに、最初の加える段階で用いられたのと同じアルキレンオキサイドと反応してもよい。一の実施態様において、RXHは最初にプロピレンオキサイドと重合され、その結果生成物がイソブチレンオキサイドと反応する。
【0019】
開始剤は、RXHまたはそのアルカリ金属塩のどちらとしても用いることができる。適した開始剤の例は、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフラン、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロチオフェン、フルフリルアルコール、2−ヒドロキシメチルテトラヒドロピラン及び3−ヒドロキシフランである。
【0020】
その反応は、塩基、ルイス酸又はニ金属シアナミドを触媒とすることが好ましい。適切な酸としては、トリフルオライドホウ素が含まれる。適切な塩基としては、水酸化カリウムが含まれる。結果生成物は、RがHである式(I)のポリアルキレングリコール誘導体が含まれてもよい。
【0021】
このような生成物が、Rがアルキル基、アシル基又はRと同一の官能基に変換されるなど、当該技術において公知の反応を用いてさらに反応が行われたものであってもよい。例えば、その生成物は、Rがアルキル基である式(I)のポリアルキレングリコール誘導体を生成するために、アルキルクロライドまたはジアルキルスルホン酸エステルと反応しても良い。代わりとして、その生成物は、Rがアシル基である式(I)のポリアルキレングリコール誘導体を生成するために、直接または間接的のいずれかによりエステル化がされてもよい。RがRと同じである生成物を得るために、その生成物は、例えば適切なクロライドと反応されてもよい。例えば、Rが2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランから誘導されたものである場合には、その生成物は2−(クロロメチル)−テトラヒドロフランと反応してもよい。代わりとして、その生成物の2つの等価物は、エチレンジブロミドと反応してもよい。
【0022】
本発明の潤滑油は、工業用、自動車用、冷房/空気調整用の用途としての潤滑剤として用いられても良い。例えば、その油は、歯車、ベアリング、圧縮型の冷蔵庫を円滑にするために用いられても良い。本発明は、フルオロカーボン、炭化水素(例えばプロパン)、アンモニア及び二酸化炭素のような冷媒(refrigerant)と非常に相溶できるので後者の用途に非常に適している。これらの冷媒(refrigerant)について、本発明は、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)及び1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)並びにこれらを混合物の様なフルオロカーボンを潤滑するために特に有用である。本発明は、この様な冷媒(refrigerant)と他の潤滑油との相溶性を向上させるのであっても良い。この理由のため、本発明の潤滑油は、このような冷媒(refrigerant)のための潤滑組成物を生成するために他の潤滑油と混合しても良い。
【0023】
潤滑油は、極圧添加剤、耐摩耗剤、防錆剤、酸化防止剤、増粘剤のような他の添加剤と組合わせて用いることもできる。他の添加剤には、酸性度調整剤(acidity
regulators)、反応性水除去剤(reactive water-eliminating
additives)、消泡剤及び乳化破壊剤が含まれる。
【0024】
本発明の潤滑油は、100℃において2〜50cStの粘度を有していてもよい。好ましくは、その潤滑油の粘度は5〜30cStであり、より好ましくは6〜30cStであり、最も好ましくは9〜30cStである。
【0025】
本発明の潤滑油は、脱水剤と組合わせて用いられてもよい。如何なる適切な脱水剤を用いても良い。脱水剤は、潤滑油に含まれる水量を典型的な値である0.1〜0.5wt%またはそれ以上から、0.05wt%未満、例えば0.015wt%未満、の値にまで減らすために用いてもよい。このことは、コンプレッサーの膨張球(expansion bulb)において0℃以下の温度で水が、凍って潤滑油から分離しやすいために、有利である。この分離は、潤滑効果を減少させる。
【0026】
数々の従来の脱水剤が知られている。典型的には、これらは、例えば、モレキュラーシーブのように不均一の薬剤であり、この薬剤はコンプレッサーの設計に組み入れられなければならないのである。このような薬剤は、有効かもしれないが、コンプレッサーの設計に複雑さを加える。したがって、同質の化学的な脱水剤であり、簡単に潤滑剤と混合されることができるものを用いることが望ましい。
【0027】
我々は、特定のホウ酸エステル、特に、下記の式(III)の定義の範囲内に納まるホウ酸エステルが、有用な脱水特性を有することを見出した。
[R−X−(RO)(RO)(RO)−O−]−B (III)
ここでX=OまたはS
はC−C10のアルキル、または複素環を含むC〜C15の置換基であり、前記複素環におけるヘテロ原子が酸素及び/または硫黄であり、
はCアルキレン基、
はCアルキレン基、
はCアルキレン基、
r、s、tはそれぞれ独立な0または50以下の整数であり、且つ
r+s+t=3〜50(両端の数値を含めて)である。
【0028】
がC〜C10のアルキルである場合には、直鎖と枝分れとの両方のアルキル置換基を用いても良い。C〜Cアルキルが好ましい。適切な例には、メチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル基が含まれる。好ましくは、Rはメチル基である。
【0029】
は、上記Rと同様の意味を持っていても良い。
【0030】
基は、RXH開始剤から誘導されても良い。
【0031】
式(I)との関係で述べたように、R、R及びRは、それぞれアルキレンオキサイドから誘導されても良い。ホウ酸エステルIIIの調製において、このようなアルキレンオキサイドはRXH開始剤と反応しもよい。2つまたはそれ以上のR、R及びR基が存在する場合には、2種またはそれ以上のアルキレンオキサイドの混合物がその開始剤と反応しても良い。しかし、別個の反応段階において異なるアルキレンオキサイドが順次に反応することができる。
【0032】
本発明は、更なる特徴において、冷媒(refrigerant)、潤滑油及び式(III)のホウ酸エステルを含む組成物を提供する。ホウ酸エステルIIIは、それ自体として潤滑特性を有するので、どのような割合で用いても良い。しかし、好ましくは、そのエステルIIIは潤滑油/エステル混合物(冷媒(refrigerant)を除く)の1〜25重量%を形成する。
【0033】
本発明は、冷媒(refrigerant)と併せて用いられる潤滑油のための脱水剤としての式(III)のホウ酸エステルの使用という他の特徴をも含む。好ましくは、その潤滑油は式(I)の潤滑油である。
【0034】
好ましくは、本発明の潤滑油/ホウ酸エステル組成物は、50〜99重量%の潤滑油を含む。より好ましくは、その組成物は、95〜100重量%の潤滑油を含む。この組成物は、酸化防止剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、防錆剤及び酸性度捕捉剤をも含んでよい。しかし、典型的には、このような添加剤は、組成物全量の0.1〜5重量%を形成するのみである。
【0035】
式IIIのホウ酸エステルは、ポリアルキレングリコールとホウ酸との反応により調製されてもよい。反応での水は、次いで蒸留により除去されてもよい。
【0036】
式IIIのホウ酸エステルそれ自体が優れた潤滑特性を有していることについても見出されている。そのうえさらに、エステル(III)は、フルオロカーボン、炭化水素(例えばプロパン)、アンモニア及び二酸化炭素のような冷媒(refrigerant)と非常に相溶することが見出されている。これらの冷媒(refrigerant)について、エステル(III)は、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)及び1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)並びにこれらを混合物の様なフルオロカーボンを潤滑するために特に有用であることが見出されている。したがって、本発明の他の特徴は、このような冷媒(refrigerant)用の潤滑剤としての上記式IIIのホウ酸エステルについての使用である。
【0037】
本発明のこれらの特徴若しくは他の特徴を、以下の実施例を引用した説明により、ここに説明する。
【実施例】
【0038】
実施例1
2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフランを開始剤(RXH)として用いた。この化合物を、下記の反応条件下でプロピレンオキサイドと反応させた。中間体及び最終生成物は、本実施例では、上記式Iの定義の範囲内で形成された。しかし、中間体が約9のy値を有するのに対して、最終生成物のy値は約18であった。中間体と最終生成物とのxとyの値は、それぞれ0であった。
【0039】
2−ヒドロキシメチルテトラヒドロフラン(1062g)を10Lの圧力反応器に充填した。24.3gのメトキシカリウムを次いで加え、この量は最終生成物の濃度を0.20%とするために必要である。
【0040】
プロピレンオキサイド(5000g)が、次いで、自動要求装置(automatic demand system)において反応温度120℃で反応器に加えられた。一定圧力で反応した後、中間体(3152g)が除去された。この中間体は、99.1mg.KOH/gのヒドロキシル価を有していた。
【0041】
反応器内の残り2934gに対して、さらにプロピレンオキサイド2885gを、同様に120℃において、触媒を除去するためのマグネシウムシリケートを用いた処理の後において52.3のヒドロキシル価を有する最終生成物を得るために、加えた。このヒドロキシル価は、y値が18であることを示唆するものである。この生成物は、40℃において58.4cStの粘度を有し、pH6.6、水分量0.03%で、30ハーゼン(Hazen)の色を有していた。100℃での粘度は10.7cStであった。
【0042】
実施例2
本実施例において、実施例1の最終生成物をイソブチレンオキサイドと反応させた。結果生成物は17のy値と1のz値を有することがわかった。
【0043】
実施例1におけるニ段階目のサンプル生成物(4.7kg、ヒドロキシル価55.8)を120℃においてイソブタノールオキサイド(400g、1モル)と反応させた。触媒を除去した後、生成物(5.1kg)は、以下の特性を有する。
ヒドロキシル価(mgKOH/g) 12.8
40℃における粘度(cSt) 57.6
水 (%) 0.02
PH(IPS/水) 6.9
色(Pt/Co) 50
外観 クリヤー
【0044】
実施例3
本実施例において、実施例1の最終生成物を、Rdがメチルであるようにメチル基でキャップした。
3000gの実施例1の最終生成物を、756g(1.25当量)のナトリウムメトキシドと真空中で90℃において4時間反応させた。メチルクロライド282g(2当量)が、次いで、その混合物に90℃において4時間加えられた。生成物は、塩酸水溶液でpH5に調整され、塩を除去するために水で洗浄された。生成物は分離され、マンガンシリケートで処理され、ろ過されて乾燥された。結果としてキャップされた物質は、5.3の残留ヒドロキシ価を有し(90%がキャップされた)、40℃で42.9の粘度を有し、100℃で9.2の粘度を有し、204の粘度指数を与えている。
【0045】
実施例4
本実施例において、上記式IIIの定義の範囲内であるホウ酸エステルを合成した。
【0046】
40℃で粘度=55cSt、ヒドロキシル価50(Mw1122)のメタノールプロポキシレート(300g)をオルトホウ酸(Mw62)(5.5g)と共に混合した。反応物は、100mlのトルエンと混合され、次いでその混合物を、ディーンスターク装置(Dean Stark apparatus)を用いて、反応の水および試薬の水が除去され(1.6gと2.4g)、水がさらに分離されないまで、加熱還流した。次いで、約300gのホウ酸エステルが残るまで、減圧で溶媒を除去した。
【0047】
実施例5
本実施例において、実施例3において製造された潤滑油を、本発明の1つの実施態様に関する組成物を製造するために、実施例4のホウ酸エステルと混合した。
10グラムの実施例4の生成物を100gの実施例3の生成物と混合した。生じた混合物は、分析され、0.0重量%の水分含有量を有することがわかった。混合されなかった潤滑油(実施例3)の水分含有量は、0.1重量%と計測された。
【0048】
実施例6−14
さらに、異なる複素環の開始剤を用いた異なる分子量のポリアルキレングリコールを、実施例1の方法にしたがって調製した。
【0049】
PAGに25%のナトリウムメトキシド(1.1モル当量)を加えた。メタノールが次いで蒸溜により除去された。その蒸溜というのは、温度を、減圧を10mbarまで増加させるのに従い、ゆっくりと100℃まで上昇させた。これらの条件下における4時間のストリッピング(stripping)の後に、混合物は窒素ガスを用いて大気圧下に戻された。メチルクロライド(1.2モル当量)を、85−90℃で3時間かけて、その混合物中に穏やかに通気した。反応混合物を、次いで、分液漏斗に注ぎ、0.2容量の飽和食塩水で4回洗浄した。最後に、生成物を、100℃で2時間乾燥し、望ましいキャップされたPAGを得るためにろ過した。得られたポリアルキレングリコールの概要を、下記
に示す。
【0050】
【表1】


【0051】
低温分離試験
前に記載したように、良好な低温分離特性は、現代のコンプレッサーにおいて用いられる潤滑剤にとって重要な必要条件である。実施例3の生成物を、比較例14の生成物と比較した。比較例14は、出光興産株式会社の製品であり、EP377122Aの実施例8の生成物と化学的性質が同じ若しくは非常に類似している。これは、粘度、上曇点及び鎖構造の直線性について、実施例3に対して、最も類似している。この試験において、潤滑油とフルオロカーボン冷媒(refrigerant)とを、管内に封印し、冷却した。どのような分離の温度も観測した。高温分離もまた管を熱して観測することで評価できる。低温分離の結果を下記表2に示す。これらは、実施例3の生成物は、−60℃である試験をした最低温においてでさえも分離しなかった。しかしながら、比較例14は、比べて非常に高い温度で分離した。
【0052】
【表2】

【0053】
EP377122Aにおける特定の実施例は比較的低い分離温度を示すが、それらは、一般的に線状ではないので、直接比較することができない。線状の構造は、より高い粘度指数及びより低いキャッピングのコストという利点を有し、省エネルギーコンプレッサーにおいて現在要求される非常に低い粘度にするという低分子量への要望に対応して製造することができるので、市販製品として好ましい。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒と共に用いられる潤滑油用脱水剤としての式(III)のホウ酸エステルの使用。
[R−X−(RO)(RO)(RO)−O−]−B (III)
ここでX=OまたはS、
はC−C10のアルキル、または複素環を含むC〜C15の置換基であって、前記複素環におけるヘテロ原子は酸素及び/または硫黄であり
は、Cアルキレン基
は、Cアルキレン基
は、Cアルキレン基
r、s、tはそれぞれ独立な0または50以下の整数であり、
r+s+t=3〜50(両端の数値を含めて)。
【請求項2】
がメチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルである請求項1に記載のホウ酸エステルの使用。
【請求項3】
ホウ酸エステルがオルトホウ酸とメタノールのプロポキシエステルとの反応生成物である請求項1または2に記載のホウ酸エステルの使用。
【請求項4】
式(III)のホウ酸エステルが、潤滑油にエステルのみを足し合わせたものを基準として1〜25重量%の量で存在する請求項1乃至3のいずれかに記載のホウ酸エステルの使用。
【請求項5】
前記潤滑油が式(I)の潤滑油である請求項1記載のホウ酸エステルの使用。
RX(RO)x(RO)(RO) (I)
ここで
X=OまたはS
Rは、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、メチルテトラヒドロチオフェン、フルフリル、またはテトラヒドロフルフリルから誘導されたC〜C複素環部分を含み、それがXに直接または炭化水素リンケージを介して接続され、
はCアルキレン基、
はCアルキレン基、
はCアルキレン基、
は、Rと同じか、または、H、C〜C20アルキル若しくはC〜C20アシルであり、
x,y,zは、互いに独立で0または100以下の整数値であって、かつx+y+z=4〜100である。
【請求項6】
式(III)のホウ酸エステルからなる潤滑油用脱水剤。
[R−X−(RO)(RO)(RO)−O−]−B (III)
ここでX=OまたはS、
はC−C10のアルキル、または複素環を含むC〜C15の置換基であって、前記複素環におけるヘテロ原子は酸素及び/または硫黄であり
は、Cアルキレン基
は、Cアルキレン基
は、Cアルキレン基
r、s、tはそれぞれ独立な0または50以下の整数であり、
r+s+t=3〜50(両端の数値を含めて)。

【公開番号】特開2012−180527(P2012−180527A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109659(P2012−109659)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2001−557983(P2001−557983)の分割
【原出願日】平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願人】(508114096)コグニス・アイピー・マネジメント・ジーエムビーエイチ (1)
【Fターム(参考)】