説明

ホワイトボード用イレーサー

【課題】ホワイトボードの汚れや文字等のかすれを防止することができるホワイトボード用イレーサーを提供する。
【解決手段】本発明は、ホワイトボード用イレーサーに関する。本発明によるホワイトボード用イレーサー(1)は、ホワイトボード上の筆記線又は描画線を消去する消去面(6)を有する。消去面(6)は、パイル織物のパイル側の面で構成され、パイル織物は、ホワイトボード用マーカーの剥離剤を拭き取ることができる素材、例えば、レーヨン又はポリエステルで形成される。パイル織物のパイルの太さは、10〜50デシテクスであり、パイル織物のパイルの長さは、3〜15mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトボード用イレーサーに関し、更に詳細には、パイル織物を有するホワイトボード用イレーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホワイトボードにマーカーで書いた筆記線又は描画線、例えば、文字、線、図形等を消すためのホワイトボード用イレーサーが知られている。更に、パイル織物を含むホワイトボード用イレーサーが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
ホワイトボード用イレーサーの作用を説明する。ホワイトボードに使用されるマーカーには、インキ剤と剥離剤とが含まれている。インキ剤は、文字等を表すためにホワイトボード上に付着することができるが、剥離剤によって、ホワイトボードから剥離しやすくなっている。ホワイトボード用イレーサーを文字等の上に押し当ててそれを擦るようにして拭くと、インキ剤がホワイトボードから削り取られて剥離し、拭きカスとなり、その結果、文字等がホワイトボードから消去される。パイル織物を含むホワイトボード用イレーサーを使用すれば、インキ剤の拭きカスがパイル織物のパイル(起毛)によって保持されるので、拭きカスをホワイトボードから拭取ることができる。
【0004】
特許文献1に記載されたホワイトボード用イレーサーは、インキ剤を削り取るための太い繊維と、インキ剤の拭きカスを保持するための細い繊維とからなるパイル織物を有している。
【0005】
特許文献2に記載されたホワイトボード用イレーサーは、適当な長さと太さのパイルを、様々な形状の保持部材に直接植毛している。
【0006】
【特許文献1】実用登録第2578289号公報(段落0009)
【特許文献2】特開平8−67096号公報(段落0012及び段落0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホワイトボードを長い間使用していると、イレーサーで拭取った拭きカスがホワイトボードに再付着することがあり、ホワイトボード上の汚れの原因になる。また、マーカーで筆記又は描画したとき、筆記線又は描画線、例えば文字等にかすれが生じてしまうことがある。特に、固形状のマーキングスティック(特願2001−205固形状描画剤)を使用するとき、かすれが生じやすいことがわかった。
【0008】
ホワイトボードが汚れた場合には、スプレー式やウェットシート状の専用クリーナーでホワイトボードを掃除していた。しかしながら、ユーザーは、別途、専用クリーナーを購入しなければならず、また、ホワイトボードを定期的に掃除することは面倒である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ホワイトボードの汚れや文字等のかすれを防止することができるホワイトボード用イレーサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によるホワイトボード用イレーサーは、ホワイトボード上の筆記線又は描画線を消去する消去面を有し、この消去面は、パイル織物のパイル側の面で構成され、このパイル織物は、ホワイトボード用マーカーの剥離剤を拭取ることができる素材で形成されることを特徴としている。
【0011】
本願の発明者は、上述したホワイトボードの汚れや文字等のかすれの原因が、ホワイトボード用のマーカーに含まれる剥離剤であることに着目した。詳細には、インキ剤をホワイトボードから剥離させやすくするための剥離剤は、透明な油状物であり、ホワイトボードに筆記又は描画された文字等を従来のホワイトボード用イレーサーで消去するとき、ホワイトボードに付着したまま残っていた。更に、剥離剤は、ホワイトボードをイレーサーで擦るときにホワイトボード上に広がって薄い膜状になっていた。ホワイトボード上に剥離剤が膜状に残っていると、イレーサーで拭取った拭きカスが剥離剤に再付着して、ホワイトボード上の汚れの原因になっていた。また、剥離剤が膜状に残っているところに、マーカーで筆記又は描画したとき、インキ剤が剥離剤によってはじかれ、十分にホワイトボードに付着することができず、筆記線又は描画線にかすれが生じていた。特に、上述した固形状のマーキングスティック(特願2001−205固形状描画剤)を使用するとき、ステックが、ホワイトボード表面に残っている剥離剤によって滑ってしまい、特にかすれが生じやすくなっていた。
【0012】
本願の発明者は、今までのホワイトボード用イレーサーがホワイトボード用のマーカーのインキ剤を除去することに重点がおかれ、インキ剤の拭取りと同時に剥離剤を拭取るホワイトボード用イレーサーが存在しなかったことに着目して、本願発明に想到した。
【0013】
本発明によるホワイトボード用イレーサーは、上述したように、ホワイトボード上の筆記線又は描画線を消去する消去面がパイル織物で形成されているので、ホワイトボード上の筆記線又は描画線、即ち、ホワイトボード用のマーカーのインキ剤を削り取って保持することができる。また、パイル織物が、ホワイトボード用のマーカーの剥離剤を拭取ることができる素材で形成されているので、筆記線又は描画線を消去するためにホワイトボードをホワイトボード用イレーサー擦るとき、インキ剤を削り取ると同時に、剥離剤を拭取ることができる。それにより、拭きカスがホワイトボードに再付着することに起因するホワイトボードの汚れを防止することができる。また、マーカーで筆記又は描画したときに、マーカーのインキ剤がはじかれることがなくなるので、筆記線又は描画線のかすれを防止することができる。その結果、ホワイトボードを長期間、良好な状態に保つことができる。
【0014】
本発明によるホワイトボード用イレーサーにおいて、好ましくは、パイル織物は、レーヨン又はポリエステルで形成される。
【0015】
また、本発明によるホワイトボード用イレーサーにおいて、好ましくは、パイル織物のパイルの太さが10〜50デシテクスであり、又は、パイル織物のパイルの長さが3〜15mmである。
【0016】
また、本発明によるホワイトボード用イレーサーにおいて、好ましくは、アルコール変性シリコーン100重量%、トリメチロールアルカン脂肪酸トリエステル100重量%、メトキシプロパノール100重量%、及び青色の油溶性染料5重量%からなる配合物を滴下したホワイトボードから配合物を拭取ったとき、ホワイトボードに残った配合物の彩度が0.2以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるホワイトボード用イレーサーは、ホワイトボードの汚れや文字等のかすれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明によるホワイトボード用イレーサーを説明する。図1は、本発明の第1の実施形態によるホワイトボード用イレーサーの斜視図である。
【0019】
ホワイトボード用イレーサー1は、直方体形状の保持部材2と、保持部材2の上面に貼り付けられた拭取り部材4とを有している。拭取り部材4は、ホワイトボード上の筆記線又は描画線を消去する消去面6を有している。
【0020】
保持部材2は、例えば、プラスチック成形体又はウレタンなどの発泡体で形成されている。また、拭取り部材4は、パイル織物で形成され、その消去面6は、パイル織物のパイル側の面で構成されている。パイル織物は、ホワイトボード用マーカーの剥離剤を拭取ることができる素材で形成され、特に、レーヨン、ポリエステル繊維から作られたパイル織物が好ましい。レーヨン及びポリエステルは、ホワイトボード用マーカーに含まれる剥離剤との親和力が特に優れており、イレーサー1の拭取り性能を向上させることができる。
【0021】
パイル織物のパイルの形状は、タオル生地のようなループ状であってもよいし、ループをカットした起毛状であってもよい。
【0022】
パイルの太さは、1〜150デシテックスであることが好ましい。パイルの太さが1デシテックスよりも小さいと、パイルを構成する繊維が軟らかくなり、ホワイトボード上で硬化したインキを削り取る力が小さくなる。また、パイルの太さが150デシテックスよりも大きいと、硬化したインキを削り取る力は大きくなるが、拭きカスを保持する能力が小さくなる。詳細には、パイルが太くなると、パイルの存在密度が粗くなってパイル間の隙間が大きくなり、拭きカスの保持能力が小さくなる。
【0023】
パイルの長さは、好ましくは、3〜15mmであり、更に好ましくは、5〜10mmである。パイルの長さが3mmよりも短いと、拭きカスを保持する能力が小さくなる。また、パイルの長さが15mmよりも長いと、パイルが横に倒れる傾向が強くなり、硬化したインキを削り取る力が小さくなる。ループ上のパイルよりも、起毛状のパイルのほうが倒れやすい。また、パイル長さが長いと、パイルが消去面6をはみ出して、けば状になり、消去面6の輪郭が不明確になり、その結果、ホワイトボード上のインキ剤の意図した箇所を消去できなくなることがある。
【0024】
上述したイレーサー1は、保持部材2を備えた直方体形であったが、変形例として、ホワイトボード用イレーサーを拭取り部材4だけで形成してもよい。例えば、図2に示す本発明による第2の実施形態のホワイトボード用イレーサー10は、パイルを外側にしてパイル織物を筒状にし且つ一方の端部を閉じるように縫製したミット形状を有している。また、図3に示す本発明による第3の実施形態のホワイトボード用イレーサー20は、単にパイルを外側にしてパイル織物を筒状に縫製した筒形状を有している。これらのイレーサー10、20を、筒部分に手を差し込むようにして使用してもよいし、筒部分にハンドタオル等を入れて膨らまして外から掴むようにして使用してもよい。また、第2の実施形態及び第3の実施形態のイレーサー10、20においては、第1の実施形態のイレーサー1と異なり、プラスチック等の保持部材2を使用する必要はなく、簡易に丸洗いでき、洗濯後の乾燥も速い。また、イレーサー10、20は、コンパクトであるので、収納や持ち運びにも便利である。
【0025】
次に、本発明によるホワイトボード用イレーサーの実験例と比較例を説明する。
【0026】
実験例1のホワイトボード用イレーサー1を、発泡体(ポリエチレンフォーム)の保持部材2と、起毛側が消去面6を構成するように保持部材2に貼り付けられたパイル織物からなる拭取り部材4とを有するように構成した。消去面6の大きさを、5×10cmとした。パイル織物をカットパイルタイプ(起毛状)とし、パイルをレーヨン製とし、パイル太さを15デシテックスとし、パイルの長を7mmとした。
【0027】
実験例2のホワイトボード用イレーサー1は、パイル織物をポリエステル製としたこと以外、実験例1と同様とした。
比較例1のホワイトボード用イレーサーは、パイル織物をアクリル製としたこと以外、実験例1と同様とした。
比較例2のホワイトボード用イレーサーは、消去面が5×10cmである、サクラクレパス(株)製ホワイトボード用イレーサー(商品名「白板イレーサーM」)を使用した。消去面は、フェルト製であり、細かい波形になっていた。
比較例3のホワイトボード用イレーサーは、消去面が6×13.5cmである、コクヨ(株)製ホワイトボード用イレーサー(商品名「RA−11N」)を使用した。消去面は、凹凸のないフェルト製であった。
【0028】
ホワイトボード用マーカーの剥離剤を拭き取る能力を比較するために、着色した剥離剤を用意した。すなわち、(1)やや揮発性の剥離剤であるアルコール変性シリコーン(東レ・ダウコーニング製「SF5427」)1g、(2)不揮発性の剥離剤であるトリメチロールアルカン脂肪酸トリエステル(日光ケミカル製「ユニスターH334R」)1g、(3)有機溶剤であるメトキシプロパノール(ダイセル化学工業製)1g、(4)青色の油溶性染料であるC.I. Solvent Blue 35(クラリアント製「ファットブルーB−01」)0.05gを配合したものを用意した。
【0029】
以下のように実験を行った。水平に置いたホワイトボード(韓国のYERIM社製)の上に、上記剥離剤配合物を2滴(約0.05g)を滴下した。実験例1及び2、比較例1〜3のイレーサーを用い、それぞれ円を描くように移動させて、剥離剤配合物をそれ以上拭取れない状態まで拭取った。拭取った跡には、剥離剤配合物が膜状且つ円形に残り、それをうっすらと青色の部分として確認した。ミノルタ製分光測色計「CM−1000」を用いて、青色の部分を測色して、マンセル表色系におけるV値(明度)とC値(彩度)を求めた。V値が大きいほど、また、C値が小さいほど、ボード上に残った剥離剤が少なく、多くの剥離剤を拭取ることができたことを意味する。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から分かるように、実験例1、2及び比較例1〜3において、V値の差はあまり見られなかったが、実験例1及び2のC値が、比較例1〜3のC値よりも著しく小さかった。これにより、実験例1及び2では、剥離剤配合物をホワイトボードからほとんど拭取っているのに対し、比較例1〜3では、剥離剤配合物が薄い膜となってホワイトボードに残っていることが分かった。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態によるホワイトボード用イレーサーの斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施形態によるホワイトボード用イレーサーの斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施形態によるホワイトボード用イレーサーの斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1、10、20 ホワイトボード用イレーサー
2 保持部材
4 拭取り部材
6 消去面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホワイトボード用イレーサーであって、
ホワイトボード上の筆記線又は描画線を消去する消去面を有し、この消去面は、パイル織物のパイル側の面で構成され、このパイル織物は、ホワイトボード用マーカーの剥離剤を拭取ることができる素材で形成されることを特徴とするホワイトボード用イレーサー。
【請求項2】
前記パイル織物は、レーヨン又はポリエステルで形成されることを特徴とする請求項1に記載のホワイトボード用イレーサー。
【請求項3】
前記パイル織物のパイルの太さが10〜50デシテクスであることを特徴とする請求項1又は2に記載のホワイトボード用イレーサー。
【請求項4】
前記パイル織物のパイルの長さが3〜15mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のホワイトボード用イレーサー。
【請求項5】
アルコール変性シリコーン100重量部、トリメチロールアルカン脂肪酸トリエステル100重量部、メトキシプロパノール100重量部、及び青色の油溶性染料5重量部からなる配合物を滴下したホワイトボードから前記配合物を拭取ったとき、ホワイトボードに残った配合物の彩度が0.2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のホワイトボード用イレーサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−1006(P2008−1006A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173782(P2006−173782)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000136697)株式会社ブンチョウ (6)