説明

ボイラー管の付着スケール測定方法

【課題】ボイラー管の内壁のスケール厚さを正確に測定することができるボイラー管の付着スケール測定方法を提供する。
【解決手段】ボイラー管1の下端を閉塞し、管内に常温より温度差のある非常温流体Wを充填し、管内に充填された非常温流体Wの温度と、所定時間後の管外壁の温度との差を求めてスケールKの付着状態を判定する。また、管外壁及び非常温流体Wの温度を所定時間連続又は断続して複数点計測し、その温度勾配に基づいて所定厚さのスケール付着状態を判定することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラー管の内壁に付着するスケールの厚さを測定するボイラー管の付着スケール測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラー管の付着スケール測定方法として、超音波を用いた測定方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、例えば、火炉蒸発管の内壁のスケールは、流れてくる酸化鉄や、復水器からの低合金成分、水の硬度成分など、鋼材とは異なる成分が濃縮している可能性がある。そのため、超音波測定では正確なスケール厚さを測定することが困難であった。
また、スケールは、ポーラスな部位の上に硬質の部位が形成されてなり、ポーラスな部位に超音波が到達せず、硬質の部位の厚さだけの測定になる場合があった。このような場合、スケールの厚さが実際より薄く測定され、ボイラー管の安全性に関し危険側での測定となっていた。
【0003】
ところで、超音波によるスケール測定の他、熱電対で直接ボイラー管の温度を測定する接触式の測定方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の付着スケール測定方法では、ボイラー管の管内部に熱電対の先端を埋設し、温度測定を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−369470号公報
【0005】
【特許文献2】特開昭54−107400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載のボイラー管の付着スケール測定方法では、熱電対用の穴が貫通穴でなく、また熱電対用の穴は小径であるため、ドリルで穴開け加工を開始する際に、湾曲したボイラー管の表面をドリル長さ方向に正確に穴開けすることが困難であった。加工開始時にドリルの先端が多少撓み、ドリルが湾曲するためである。また、穴開け加工に手間がかかるという問題があった。さらに、仮に正確に穴開けを行っても、熱電対の先端を穴の底部に正確に配置することは困難であった。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、ボイラー管の内壁のスケール厚さを正確に測定することができるボイラー管の付着スケール測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決する手段としてなされたものである。
本発明は、ボイラー管の下端を閉塞し、管内に常温より温度差のある非常温流体を充填し、管内に充填された非常温流体の温度と、所定時間後の管外壁の温度との差を求めてスケールの付着状態を判定することを特徴とする。
かかる発明では、管外壁と管内の非常温流体とに熱電対の先端が配置されるため、ボイラー管に穴開け加工をする必要がない。ボイラー管の下端は閉塞されているため、管内に収容された非常温流体の温度はほぼ一様であり、非常温流体の温度はボイラー管の上端から熱電対を管内に挿入して測定することができる。また、ボイラー管の外壁の温度は、熱電対の先端を直接、ボイラー管の外壁に接触させて測定すればよい。この2点の温度測定を経時的に行って、予めスケール厚さに応じて測定した校正用データと比較することでボイラー管の内壁のスケール厚さを正確に測定することができる。
【0009】
本発明は、さらに、前記非常温流体及び管外壁の温度を所定時間連続又は断続して複数点計測し、その温度勾配に基づいて所定厚さのスケール付着状態を判定することを特徴とする。
かかる発明では、管壁の温度が定常状態に近づくまでの過渡期の温度を経時的に測定するため、温度測定のパラメータが増加し、より正確な温度測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボイラー管の付着スケール測定方法では、ボイラー管の内壁のスケール厚さを正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のボイラー管の付着スケール測定方法を実施するための装置を示す説明図である。
【図2】図2は、ボイラー管の管壁の温度勾配を示す説明図である。
【図3】図3は、スケールが付着していない場合と、スケールが付着している場合との経時的な温度差、及び非常温流体の経時的な温度を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは特に記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0013】
図1は、本発明のボイラー管の付着スケール測定方法を実施するための装置を示す説明図である。図に示すように、ボイラー管1の下端は閉塞され、管内には常温より温度差のある非常温流体Wが充填されている。本実施形態では、ボイラー管1の下端は蓋体2で閉塞されているが、閉塞の方法は特に限定されることはない。また、本実施形態で常温とは、冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち冷却処理や加熱処理を行わないときの温度をいう。また、非常温流体Wとしては、冷水又は温水を用いることができるが、流体であれば水以外の物質も含まれる。
【0014】
ボイラー管1の外壁には、熱電対3Aが取り付けられ、熱電対3Aの先端はボイラー管1の外壁に接触している。一方、ボイラー管1の内部の非常温流体Wには熱電対3Bの先端が浸漬されている。熱電対3A,3Bの種類としては、クロメル−アルメル熱電対や銅−コンスタンタン熱電対など、各種の材料を組み合わせた熱電対を用いることが可能である。この熱電対3A,3Bは、保護チューブ4の中に挿通されている。
【0015】
この熱電対3A,3Bの後端は、レコーダ5に接続されている。そして、このレコーダ5により温度測定が行われる。レコーダ5はコンピュータ6に接続されており、コンピュータ6で各種演算処理が行われる。コンピュータ6への情報入力機器としては、キーボード7やマウス8を用いることができる。また、コンピュータ6にはモニター9が接続されている。
そして、上記構成の装置を用いて、管内に充填された非常温流体Wの温度と、所定時間後の管外壁との温度差を求めてスケールの付着状態を判定する。ここで、スケールとは一般に水垢のことをいうが、ボイラー管1の内壁に付着する熱抵抗物質を広く含むものとする。
【0016】
付着スケールの測定方法としては、先ず、キャリブレーションを行う必要がある。より具体的には、スケールのない状態の新品のボイラー管、及びスケールの厚さの異なる複数のボイラー管に対して、管内に充填された非常温流体Wの温度と、管外壁の温度とを経時的に測定する。ここで、非常温流体Wとしてボイラーに使用する水を用いれば、異物の混入がない。
【0017】
ボイラー管1の管壁温度は、温水を用いた場合は、図2に示すように径方向に沿って管中心から遠ざかるに連れて温度が低くなる。図中、点線はスケールKがないときの温度勾配であり、スケールKが管内壁に付着すると、非常温流体Wの温度が同一であっても図中、実線で示すように温度勾配が変化する。この温度勾配の変化の違いを熱電対3A,3Bを用いて算出することで、スケールKの概ねの厚さを推測することが可能である。なお、冷水を用いた場合は、温度勾配が反転する。
【0018】
また、非常温流体Wの温度は、経時的に変化するため、図3に示すように、非常温流体W及び管外壁の温度は所定時間連続又は断続して複数点計測される。この経時的な温度勾配の変化や、非常温流体Wの温度変化をもスケール測定のパラメータとすることにより、より正確なスケール厚さの測定を行うことができる。
【0019】
次いで、上記経時的に測定したデータを校正用データとして記録媒体に記録して、上記パラメータを含めたスケール測定用の計算式を作成する。
そして、実際のボイラー管1の付着スケール厚さの測定では、複数のスケール厚さに応じた温度変化のデータと、実際のボイラー管1の温度変化のデータとを比較し、両データのマッチング度からスケール厚さの算出を行う。
【0020】
上述した実施形態のボイラー管の付着スケール測定方法では、管外壁と管内の非常温流体Wとに熱電対3A,3Bの先端が配置されるため、ボイラー管1に穴開け加工をする必要がない。ボイラー管1の下端は閉塞されているため、管内に収容された非常温流体Wの温度はほぼ一様であり、非常温流体Wの温度はボイラー管1の上端から熱電対3Bを管内に挿入して測定することができる。また、ボイラー管1の外壁の温度は、熱電対3Aの先端を直接、ボイラー管1の外壁に接触させて測定すればよい。この2点の温度測定を経時的に行って、予めスケール厚さに応じて測定した校正用データと比較することでボイラー管1の内壁のスケール厚さを正確に測定することができる。
【0021】
また、上述した実施形態のボイラー管の付着スケール測定方法では、管壁の温度が定常状態に近づくまでの過渡期の温度を経時的に測定するため、温度測定のパラメータが増加し、より正確な温度測定を行うことができる。
【0022】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のボイラー管の付着スケール測定方法では、ボイラー管の内壁のスケール厚さを正確に測定することができる。本発明は、スケールが発生し易いボイラー管のスケール測定を正確に行いボイラーの安全性の向上を図るためのものであるが、本発明の測定方法は管内に異物が付着したり、錆びが発生したりする装置の全てに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 ボイラー管
2 蓋体
3A,3B 熱電対
4 保護チューブ
5 レコーダ
6 コンピュータ
7 キーボード
8 マウス
9 モニター
K スケール
W 非常温流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラー管の下端を閉塞し、管内に常温より温度差のある非常温流体を充填し、管内に充填された非常温流体の温度と、所定時間後の管外壁の温度との差を求めてスケールの付着状態を判定することを特徴とするボイラー管の付着スケール測定方法。
【請求項2】
前記非常温流体及び管外壁の温度を所定時間連続又は断続して複数点計測し、その温度勾配に基づいて所定厚さのスケール付着状態を判定することを特徴とする請求項1に記載のボイラー管の付着スケール測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−175529(P2010−175529A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22042(P2009−22042)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】