説明

ボギー台車及びこれを備えた軌道系車両

【課題】コスト低減と信頼性向上とを図りながら、乗り心地を改善可能なボギー台車及びこれを備えた軌道系車両を提供する。
【解決手段】車両本体11を支持するとともに軌道2上を走行可能とするボギー台車12A、12Bであって、台車枠21と、台車枠21の案内フレーム31に車軸25により回転可能に支持された走行輪22と、車軸25の前後両側それぞれで、幅方向両側に設けられ、案内フレーム31の横梁34A、34Bに支持された案内輪23a、23bとを備え、車軸25の前後方向の一方側の案内輪23aは、幅方向の衝撃を緩衝する緩衝装置41を介して横梁34Aに支持されているとともに、車軸25の前後方向の他方側の案内輪23bは、横梁34Bと幅方向に剛に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側方案内式の軌道系交通システム車両のボギー台車に設けられる案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バスや鉄道以外の新たな交通手段として、ゴムタイヤからなる走行輪で軌道上を走行するとともに、この車両の両側部に設けられた案内輪が、軌道の両側部に設けられたガイドレールによって案内される軌道系交通システムが知られている。このような軌道系交通システムは、一般に新交通システムやAPM(Automated People Mover)と呼ばれている
【0003】
上述の軌道系交通システムの車両の案内輪は、車両の下部に設けられるボギー台車に設置されている。
ここで、ボギー台車は一般に種々の構造を有するものが知られており、案内輪が設けられた案内枠と走行輪が設けられた車軸と台車枠とが一体で、車体に対して旋回するもの(例えば特許文献1)や、台車枠は車体に旋回不能に固定されて、車軸と案内枠とが台車枠の下部で一体に旋回するもの(例えば特許文献2)がある。
また、案内枠のみが旋回した後に、案内枠と車輪との間に設けられた操舵機構によって、車軸は旋回させずに、案内枠の旋回に連動して、キングピンに支持された車輪のみの操舵を行なうステアリングボギー台車も知られている。(例えば特許文献3)さらにステアリングボギー台車には、案内枠が左右に分割され、それぞれの案内枠の旋回に応じて車輪が旋回するものも知られている。(例えば特許文献4)
【0004】
そして、上述のボギー台車においては、乗り心地を改善すべく案内輪がガイドレールから受ける衝撃力を軽減する構造を備えるものが知られている。このようなボギー台車は、具体的には、台車枠に取付けた案内横梁及び案内輪ブラケットに設けられた案内バネ機構によって、案内側壁から案内輪に加えられる圧縮荷重を受けて衝撃を緩和可能とし、乗り心地の向上を図ったものとなっている。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−163054号公報
【特許文献2】特許第4486695号公報
【特許文献3】特許第4486696号公報
【特許文献4】特開2008−265569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のボギー台車では、全ての案内輪に対して緩衝装置(案内バネ機構)が設けられており、このため緩衝装置の構造が複雑となってしまう。また緩衝装置が可動部品であるために、コストアップが避けられない他、摩耗や劣化、故障等の頻度が多くなりメンテナンス上好ましくない。さらに、全ての案内輪が緩衝装置によって可動するため、軌道幅方向に走行が不安定となる可能性があり、乗り心地の低下につながるおそれもあった。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、コスト低減と耐久性向上とを図りながら、乗り心地の改善が可能なボギー台車及びこれを備えた軌道系車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係るボギー台車は、車両本体を支持するとともに軌道上を走行可能とするボギー台車であって、台車枠と、前記台車枠に車軸又はキングピンにより回転可能に支持された走行輪と、前記車軸の前後両側それぞれで、幅方向両側に設けられ、前記台車枠に支持された案内輪とを備え、前記車軸の前後方向の一方側の前記案内輪は、前記幅方向の衝撃を緩衝する緩衝装置を介して前記台車枠に支持されているとともに、前記車軸の前後方向の他方側の案内輪は、前記台車枠と前記幅方向に剛に連結されていることを特徴とする。
【0009】
このようなボギー台車によると、車軸に対して前後方向の一方側の案内輪のみに緩衝装置が設けられることで、緩衝装置の数量減少により、仮に前後方向の両側の案内輪に緩衝装置を設けた場合と比較してコストを抑えることができる。また、劣化や故障の可能性も低減できる。さらに、最初に荷重を受ける前後方向の一方側の案内輪について、幅方向から受ける衝撃を緩衝装置で緩衝するとともに、前後方向の他方側の案内輪が剛に連結されていることによって、走行時のフラつきを抑制でき、走行の安定性を向上できる。
【0010】
また、前記台車枠は、前記幅方向に作用する力に対する剛性が、前記車軸の前記前後方向の一方側よりも前記前後方向の他方側の方が高くなっていてもよい。
【0011】
前後方向の他方側の案内輪には緩衝装置が設けられていないため、軌道幅方向からの荷重を直接受けることになる。これに対して、本発明では、前後方向の他方側の台車枠の剛性を増加させることによって、台車枠が幅方向から受ける荷重に対する耐久性を増大させることができ、ボギー台車の耐久性を向上できる。
【0012】
さらに、前記車軸の前記前後方向の一方側の前記案内輪は、前記前後方向の他方側の前記案内輪よりも剛性が高くなっていてもよい。
【0013】
最初に荷重を受ける前後方向の一方側の前記案内輪の剛性を向上することによって、案内輪の耐久性を増大し、ボギー台車のさらなる耐久性向上につながる。
【0014】
また、前記台車枠は、前記前後方向及び幅方向に直交する高さ方向に延在する回転軸を中心に回転可能とされ、前記前後方向の一方側の前記案内輪は、前記前後方向の他方側の案内輪と比べて、前記幅方向の外側に配置されていてもよい。
【0015】
軌道曲線部の走行時には、案内輪が幅方向から力を受けて台車枠が回転する。この際、緩衝措置によって案内輪が幅方向内側に押し込まれるため、仮に緩衝装置が設けられていない場合と比べて台車枠の回転角が減少し、走行力の曲線方向成分が減少してしまう。この点、本発明では、前後方向の一方側の案内輪が幅方向外側に配置されることによって、この案内輪が幅方向に押し込まれた際にも、台車枠の所定の回転角を維持でき、走行力の幅方向成分の減少を防止できる。この結果、走行力の幅方向成分と遠心力との合力、即ち、案内輪に幅方向から作用する力を低減でき、案内輪及び台車枠の耐久性向上によって、ボギー台車のさらなる耐久性向上が可能となる。
【0016】
さらに、前記台車枠は、前記前後方向及び幅方向に直交する高さ方向に延在する回転軸を中心に回転可能とされ、前記前後方向の一方側の前記案内輪は、前記前後方向の他方側の案内輪と比べて、前記回転軸からの前記前後方向の距離が大きくされていてもよい。
【0017】
軌道曲線部の走行時に、案内輪が幅方向から力を受けて台車枠が回転する際、一方側の案内輪の方が、回転軸からの前後方向の距離が大きくされていることによって、台車枠の回転角をより大きくとることができる。従って、案内輪が幅方向に押し込まれた際にも、台車枠の所定の回転角を維持でき、走行力の幅方向成分の減少を防止でき、この結果、案内輪に幅方向から作用する力を低減でき、さらなる乗り心地の改善につながる。
【0018】
また、本発明に係る軌道系車両は、車両本体と、前記車両本体を支持する少なくとも1つのボギー台車とを備え、少なくとも1つの前記ボギー台車のうち、前記車両本体の最も前側に位置する該ボギー台車は、上記のボギー台車であり、前記車軸の前後方向の前側の前記案内輪と前記台車枠との間に前記緩衝装置が設けられていることを特徴とする。
【0019】
このような軌道系車両によると、緩衝装置の数量減少により、コスト抑制と、劣化及び故障の低減による耐久性向上とを図ることができる。また、最初に荷重を受ける前後方向の前側の前記案輪について緩衝装置によって衝撃が緩衝されるとともに、前後方向の後側の案内輪が剛に連結されており、これにより走行時のフラつきを抑制し、乗り心地の改善が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のボギー台車及び軌道系車両によれば、緩衝装置の数量減少によって、コスト抑制と劣化及び故障の抑制による耐久性向上とを図りながら、乗り心地の改善が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態に係る軌道系車両が軌道上を走行している状態を示す図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る軌道系車両が軌道上を走行している状態を示す図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係る軌道系車両が軌道上を走行している状態を示す図である。
【図4】本発明の第四実施形態に係る軌道系車両が軌道上を走行している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る軌道系車両1Aについて説明する。
軌道系車両1Aは、軌道2の両側部に設けられたガイドレール3によって案内されて軌道2上を走行する軌道系交通システムの車両である。
図1に示すように、軌道系車両1Aは箱状をなす車両本体11と、車両本体11の下方に設けられる2つのボギー台車12A、12Bとを備えている。
車両本体11は、内部が乗客を収容する収容空間とされた例えば中空の直方体形状をなしている。
【0023】
ボギー台車12A、12Bは、車両本体11の下部において、走行方向(前後方向)の前後に、間隔を空けて1つずつ設けられる走行装置である。
そして、それぞれのボギー台車12A、12Bは、フレームである台車枠21と、台車枠21に回転可能に車軸25によって支持された走行輪22と、車軸25に対して走行方向の前後において緩衝装置41を介して台車枠21に支持されて軌道2の幅方向の左右両側でガイドレール3に対向する案内輪23a、23bとを有している。
【0024】
台車枠21は、井桁構造をなす案内フレーム31と、案内フレーム31の上方に設けられて、車両本体11に対向する非旋回フレーム32とを有している。
【0025】
案内フレーム31は、走行方向に直交する幅方向に、即ち、軌道2の幅方向に、走行方向の前後にそれぞれ延在して配置される横梁34A、34Bと、これらの横梁34A、34B同士を幅方向の左右両側で結合する側梁35とを有することで井桁構造をなしている。また、これら横梁34A、34B同士に挟まれる位置において、側梁35には幅方向に延在する車軸25が設けられており、車軸25の両端それぞれには走行輪22が支持されてこの車軸25を中心に回転可能とされている。
【0026】
そして、走行方向の前側に設置されるボギー台車12Aにおいては、走行方向の後側(他方側)の横梁34Bが前側(一方側)の横梁34Aに比べて、板厚の増大等によって剛性が高くなっている。一方で、車両本体11の走行方向の後側に設置されるボギー台車12Bにおいては、走行方向の前側(他方側)の横梁34Bが後側(一方側)の横梁34Aに比べて、板厚の増大等によって剛性が高くなっている。
【0027】
非旋回フレーム32は、2つの側梁35の間において、案内フレーム31及び車軸25の上方に配置されるものである。案内フレーム31とこの非旋回フレーム32との間には不図示の旋回軸受が設置され、幅方向及び走行方向に直交する高さ方向に延在する回転軸33を中心として、案内フレーム31との間で相対回転可能に接続されている。
【0028】
さらに、非旋回フレーム32の幅方向両端のそれぞれからは棒状をなす牽引リンク38が車両本体11の前方に向かって延びており、この牽引リンク38の先端部が車両本体11と結合されている。このように、非旋回フレーム32と車両本体11とは相対回転不能に接続されている一方で、案内フレーム31は回転軸33を中心に回転可能に接続されている。
【0029】
なお、非旋回フレーム32の上部の幅方向両側の端部には、不図示の空気ばねが設置されており、この空気ばねの上方を向く面には車両本体11が載置され、車両本体11からの荷重を受けている。
【0030】
走行輪22は、内部に気体が封入されたゴムタイヤであり、横梁34A、34B同士の間に挟まれた位置に設けられており、車軸25の両端に回転可能に支持されて、軌道2の走行路上を転動可能となっている。
【0031】
案内輪23a、23bは、案内フレーム31におけるそれぞれの横梁34A、34Bの幅方向両端に、緩衝装置41を介して軌道2のガイドレール3と対向するように、高さ方向を軸線として回転可能に取り付けられたガイドローラである。そして、この案内輪23a、23bのガイドレール3と接触する外周面には、接触部材24a、24bが設けられている。
【0032】
走行方向の前側に設置されるボギー台車12Aでは、走行方向の後側の横梁34Bに設置された案内輪23bにおいては、この接触部材24bはポリウレタン樹脂となっており、走行方向の前側の横梁34Aに設置された案内輪23aにおいては、接触部材24aはポリウレタン樹脂よりも剛性の高い工業用の高強度樹脂(6ナイロン、66ナイロン等)等となっている。
【0033】
一方で、走行方向の後側に設置されるボギー台車12Bでは、走行方向の前側の横梁34Bに設置された案内輪23bにおいては、この接触部材24bはポリウレタン樹脂であり、走行方向の後側の横梁34Aに設置された案内輪23aにおいては、この接触部材24aはポリウレタン樹脂よりも剛性の高い工業用の高強度樹脂(6ナイロン、66ナイロン等)等とされている。
【0034】
次に、緩衝装置41について説明する。
緩衝装置41は、台車枠21における案内フレーム31の横梁34Aの両端において、案内輪23aとの間に設けられるものである。この緩衝装置41は、例えばバネ部材や、空圧及び油圧等のシリンダによって構成されており、ガイドレール3と案内輪23aとが接触することで該案内輪23aがガイドレール3からの荷重を受けた際には、これらバネ部材や、空圧及び油圧等のシリンダが衝撃を緩衝するように軌道2の幅方向に伸縮する。なお、このような緩衝装置41としては、既に公知となっている種々の構成のものを使用することができる。
【0035】
このような軌道系車両1Aにおいては、特に曲線部を通過する際、案内輪23a、23bの接触部材24a、24bがガイドレール3に接触して幅方向に力を受ける。この際、横梁34Aにのみ緩衝装置41が設けられることで、緩衝効果を維持しながら緩衝装置41の数量を減少でき、仮に前後方向の両側の横梁34A、34Bに緩衝装置41を設けた場合と比較して、コストを抑えることができる。またこれにより、劣化や故障の可能性も低減できる。
【0036】
さらに、いずれの方向(図1における紙面左右方向)が走行方向となった場合でも、最初にガイドレール3からの衝撃を受ける案内輪23aが幅方向から受ける衝撃を、緩衝装置41によって緩衝可能であるとともに、横梁34Bには緩衝装置41が設けられず、剛に連結されていることによって、走行のフラつきを防止でき、走行の安定性を向上できる。
【0037】
また、横梁34Bには緩衝装置41が設けられていないため、この案内輪23bは幅方向からの荷重を直接受けることになる。しかし、前側のボギー台車12Aにおいては後側の横梁34Bの剛性が増加され、後側のボギー台車12Bにおいては前側の横梁34Bの剛性が増加されていることによって、この横梁34Bが幅方向から受ける荷重に対する耐久性を増大させることができ、ボギー台車12A、12Bの耐久性を向上できる。
【0038】
そして、いずれの方向(図1における紙面左右方向)が走行方向となった場合でも、最初に荷重を受ける前側のボギー台車12Aにおける接触部材24a、及び後側のボギー台車12Bにおける接触部材24aに、工業用の高強度樹脂(6ナイロン、66ナイロン等)を採用して案内輪23aの剛性を向上させることによって、案内輪23aの耐久性を向上させることができ、ボギー台車12A、12Bのさらなる耐久性向上が可能となる。
【0039】
本実施形態の軌道系車両1Aによると、緩衝装置41の数量減少によって、コスト抑制と、劣化及び故障の抑制による耐久性向上とを図りながら、ガイドレール3からの衝撃力を軽減し、走行時のフラつきを抑制して、乗り心地の改善が可能である。
【0040】
そして、前側のボギー台車12Aにおける後側の横梁34Bの剛性向上と、後側のボギー台車12Bにおける前側の横梁34Bの剛性向上とによって、ボギー台車12A、12Bの耐久性向上につながる。また、前側のボギー台車12Aにおける案内輪23aの剛性向上と、後側のボギー台車12Bにおける案内輪23aの剛性向上とによって、案内輪23aの耐久性をさらに増大し、ボギー台車12A、12Bのさらなる耐久性向上による信頼性の向上を図ることができる。
【0041】
次に、第二実施形態に係る軌道系車両1Bについて説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態では、案内フレーム71及び緩衝装置61の構成が第一実施形態とは異なっている。
即ち、案内フレーム71は、前側のボギー台車52Aにおいては、走行方向の後側に幅方向に延在して配置される横梁34Bと、走行方向の前側に延在して配置される可動横梁64と、これら横梁34Bと可動横梁64とを幅方向の左右両側で結合する側梁35とを有することで、井桁構造をなしている。
【0042】
また同様に、後側のボギー台車52Bにおいては、走行方向の前側に配置される横梁34Bと、走行方向の後側に配置される可動横梁64と、これらを結合する側梁35とを有することで、井桁構造をなしている。
【0043】
可動横梁64は、走行方向の前側に配置されて幅方向左右の側梁35に結合されて幅方向に延在する筒状部材65に、同じく幅方向に延在する支持部材66が挿通されており、この支持部材66の幅方向両端に案内輪23aが取り付けられている。
【0044】
緩衝装置61は、この筒状部材65の幅方向略中央部に設けられ、例えばバネ部材や、空圧及び油圧等のシリンダによって構成されており、ガイドレール3と案内輪23aとが接触してガイドレール3からの荷重を案内輪23aが受けた際には、これらバネ部材や、空圧及び油圧等のシリンダが衝撃を緩衝するように支持部材66を幅方向にスライド又は伸縮させるものである。
【0045】
このような車両においては、軌道2の曲線部の走行時には、案内輪23aがガイドレール3に接触して幅方向に力を受ける際、各ボギー台車52A、52B毎に各1つのみ、緩衝装置61が設けられていることによって、緩衝効果を維持しながら、さらに緩衝装置61の数量を減少でき、さらなるコスト抑制が可能となる。
【0046】
本実施形態の軌道系車両1Bによると、緩衝装置61の数量減少によって、さらなるコスト抑制と、劣化及び故障の抑制による耐久性向上とを図りながら、ガイドレール3からの衝撃力を軽減し、走行時のフラつきを抑制して、乗り心地の改善が可能である。
【0047】
次に、第三実施形態に係る軌道系車両1Cについて説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態では走行方向の前側のボギー台車82Aにおいては、前側の案内輪23aの方が後側の案内輪23bよりも幅方向外側に配置されている。また、走行方向の後側のボギー台車82Bにおいては、後側の案内輪23aの方が前側の案内輪23bよりも幅方向外側に配置されている。
【0048】
即ち、案内フレーム81における横梁94A、94Bが、前側のボギー台車12Aにおいては、前側の横梁94Aの方が後側の横梁94Bよりも長くなっており、また、後側のボギー台車82Bにおいては、後側の横梁94Aの方が前側の横梁94Bよりも長くなっていることになる。
【0049】
このような軌道系車両1Cにおいては、曲線部を通過する際には案内輪23a、23bの接触部材24a、24bがガイドレール3に接触し、幅方向に力を受ける際、横梁94Aのみに緩衝装置41が設けられることで、緩衝効果を維持しながら緩衝装置41の数量を減少でき、コストを抑えることが可能となる。
【0050】
さらに、軌道2の曲線部の走行時には、案内輪23a、23bが幅方向から力を受けて案内フレーム81が回転軸33を中心に回転するが、この際、緩衝装置41によって案内輪23aが幅方向内側に押し込まれる。このため、仮に緩衝装置41が設けられていない場合と比べて、案内フレーム81の回転角が減少し、走行力の曲線方向成分が減少してしまう。
【0051】
この点、本実施形態では、案内輪23aが幅方向外側に配置されることによって、この案内輪23aが幅方向に押し込まれた際にも、案内フレーム81に所定の回転角を維持でき、走行力の幅方向成分の減少を防止できる。この結果、走行力の幅方向成分と遠心力との合力、即ち、案内輪23a、23bに幅方向から作用する力を低減できる。
【0052】
そして、いずれの方向(図3における紙面左右方向)が走行方向となった場合でも、常に走行方向の前側の案内輪23aが幅方向外側に配置されることとなるため、案内フレーム81に所定の回転角を維持でき、案内輪23a、23bに幅方向から作用する力を低減できる。
【0053】
本実施形態の軌道系車両1Cによると、緩衝装置41の数量減少によるコスト抑制、劣化及び故障の抑制と、さらに、ガイドレール3からの案内輪23a、23bへの荷重の低減によって、案内輪23a、23bの耐久性向上が可能となる。従って、ボギー台車82A、82Bのさらなる耐久性の向上を図りながら、走行時のフラつきを抑制して、乗り心地の改善が可能である。
【0054】
なお本実施形態では、第一実施形態の緩衝装置41を基本構成とした場合を説明したが、第二実施形態のような緩衝装置61を備える場合であってもよい。
【0055】
次に、第四実施形態に係る軌道系車両1Dについて説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態では、前側のボギー台車102Aにおいては、前側の案内輪23aは、後側の案内輪23bと比べて、回転軸33からの走行方向の距離が大きくなっている。また、後側のボギー台車102Bにおいては、後側の案内輪23aは、前側の案内輪23bと比べて、回転軸33からの走行方向の距離が大きくなっている。
【0056】
即ち、横梁114A、114Bは、前側のボギー台車102Aにおいては、前側の横梁114A及び後側の横梁114Bがその両端において走行方向の前側に向かって屈曲する屈曲部115を有しており、この屈曲部115の先端に案内輪23a、23bが設けられている。同様に、後側のボギー台車102Bにおいては、横梁114A、114Bが両端で走行方向の後側に向かって屈曲する屈曲部115を有している。
【0057】
このような車両においては、軌道2の曲線部の走行時に、案内輪23a、23bがガイドレール3に接触して幅方向に力を受ける際、横梁114Aにのみ緩衝装置41が設けられることで、緩衝効果を維持しながらコストを抑えることが可能となる。
【0058】
さらに、軌道2の曲線部の走行時には、案内輪23a、23bが幅方向から力を受けて案内フレーム101が回転軸33を中心に回転するが、この際、緩衝装置41によって案内輪23aが幅方向内側に押し込まれる。このため、仮に緩衝装置41が設けられていない場合と比べて、案内フレーム101の回転角が減少し、走行力の曲線方向成分が減少してしまう。
【0059】
この点、本実施形態では、曲線部の走行時に案内輪23aが幅方向から力を受けて案内フレーム101が回転する際に、屈曲部115によって、案内輪23aの方が案内輪23bと比べて回転軸33からの走行方向の距離が大きくなっていることによって、案内フレーム101の回転角を大きくできる。従って、案内輪23aが幅方向に押し込まれた際にも、案内フレーム101の回転角を所定の値に維持でき、走行力の幅方向成分の減少を防止できる。この結果、走行力の幅方向成分と遠心力との合力、即ち、案内輪23a、23bに幅方向から作用する力を低減できる。
【0060】
そして、いずれの方向(図4における紙面左右方向)が走行方向となった場合でも、常に走行方向の前側の案内輪23aが幅方向外側に配置されることとなるため、案内フレーム101に所定の回転角を維持でき、案内輪23a、23bに幅方向から作用する力を低減できる。
【0061】
本実施形態の軌道系車両1Dによると、緩衝装置41の数量減少によるコスト抑制と、劣化及び故障の抑制によって、さらに、ガイドレール3からの案内輪23a、23bへの荷重の低減によって、案内輪23a、23bの耐久性向上が可能となる。従って、ボギー台車102A、102Bのさらなる耐久性の向上を図りながら、走行時のフラつきを抑制して、乗り心地の改善が可能である。
【0062】
なお、本実施形態では、第一実施形態を基本構成として説明したが、第二実施形態のような緩衝装置61を備えたものであってもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態についての詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、緩衝装置41は、上述の実施形態で説明したボギー台車12A、12B、52A、52B、82A、82B、102A、102Bに適用することに限定されず、種々の公知のボギー台車に適用可能であり、また、キングピンによって支持された走行輪を操舵するステアリング機構を有するステアリングボギー台車にも適用できる。
【0064】
また、上述の実施形態では、軌道系車両1A、1B、1C、1Dの1両当りで、2台のボギー台車12A、12B、52A、52B、82A、82B、102A、102Bが設けられているが、例えば、車両1両当りで、1台のボギー台車12A、12B、52A、52B、82A、82B、102A、102Bが設けられているものであってもよい。
【0065】
さらに、仮に、車両の走行方向が一方側(図1から図4の紙面左から右へ向かう方向)のみである場合には、走行方向の後側のボギー台車12B、52B、82B、102Bについては、上述の実施形態で説明した場合とは前後逆側に設置されていてもよい。
【0066】
また、緩衝装置41、61は、案内輪23aに適用される場合に限定されず、例えば、軌道2の分岐位置で使用される分岐輪等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1A…軌道系車両 2…軌道 3…ガイドレール 11…車両本体 12A、12B…ボギー台車 21…台車枠 22…走行輪 23a、23b…案内輪 24a、24b…接触部材 25…車軸 31…案内フレーム 32…非旋回フレーム 33…回転軸 34A、34B…横梁 35…側梁 38…牽引リンク 41…緩衝装置 1B…軌道系車両 52A、52B…ボギー台車 61…緩衝装置 64…可動横梁 71…案内フレーム 65…筒状部材 66…支持部材 1C…軌道系車両 81…案内フレーム 82A、82B…ボギー台車 94A、94B…横梁 1D…軌道系車両 101…案内フレーム 102A、102B…ボギー台車 114A、114B…横梁 115…屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体を支持するとともに軌道上を走行可能とするボギー台車であって、
台車枠と、
前記台車枠に車軸又はキングピンにより回転可能に支持された走行輪と、
前記車軸の前後両側それぞれで、幅方向両側に設けられ、前記台車枠に支持された案内輪とを備え、
前記車軸の前後方向の一方側の前記案内輪は、前記幅方向の衝撃を緩衝する緩衝装置を介して前記台車枠に支持されているとともに、
前記車軸の前後方向の他方側の案内輪は、前記台車枠と前記幅方向に剛に連結されていることを特徴とするボギー台車。
【請求項2】
前記台車枠は、前記幅方向に作用する力に対する剛性が、前記車軸の前記前後方向の一方側よりも前記前後方向の他方側の方が高くなっていることを特徴とする請求項1に記載のボギー台車。
【請求項3】
前記車軸の前記前後方向の一方側の前記案内輪は、前記前後方向の他方側の前記案内輪によりも剛性が高くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のボギー台車。
【請求項4】
前記台車枠は、前記前後方向及び幅方向に直交する高さ方向に延在する回転軸を中心に回転可能とされ、
前記前後方向の一方側の前記案内輪は、前記前後方向の他方側の案内輪と比べて、前記幅方向の外側に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のボギー台車。
【請求項5】
前記台車枠は、前記前後方向及び幅方向に直交する高さ方向に延在する回転軸を中心に回転可能とされ、
前記前後方向の一方側の前記案内輪は、前記前後方向の他方側の案内輪と比べて、前記回転軸からの前記前後方向の距離が大きくされていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のボギー台車。
【請求項6】
車両本体と、
前記車両本体を支持する少なくとも1つのボギー台車とを備え、
少なくとも1つの前記ボギー台車のうち、前記車両本体の最も前側に位置する該ボギー台車は、請求項1から5のいずれか一項に記載のボギー台車であり、前記車軸の前後方向前側の前記案内輪と前記台車枠との間に前記緩衝装置が設けられていることを特徴とする軌道系車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100055(P2013−100055A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245686(P2011−245686)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)