説明

ボルスタレス台車用ボギー角検出機構、ボルスタレス台車用ボギー角連動空気圧バルブシステムおよびボルスタレス台車用ボギー角連動アシスト操舵システム

【課題】ボルスタレス台車に対して車体−台車間のボギー角を機械的に検知する。
【解決手段】鉄道車両(1)の車体(10)に固定された入力軸(31)と、鉄道車両(1)のボルスタレス台車(20)に回転可能に取り付けられた出力軸(32)と、入力軸(31)と出力軸(32)とを結合すると共に車体(10)およびボルスタレス台車(20)の間のボギー角を伝達する伸縮可能な等速ジョイント機構(33)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両のボルタレス台車のボギー角を検出する鉄道車両台車用ボギー角検出機構、鉄道車両のボルタレス台車のボギー角に連動して作動するボルスタレス台車用ボギー角連動空気圧バルブシステム、および、鉄道車両のボルタレス台車のボギー角に連動して作動するボルスタレス台車用ボギー角連動アシスト操舵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されている操舵機能付き台車は、車体(操舵はり)−台車枠間のボギー角を操舵リンクで検出し、前後輪軸のアタック角を機械的に操舵制御している(特開平10−203364号)。このような機構を用いることにより、円曲線中での横圧低減に効果が確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−203364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記操舵台車の機構の対象は、操舵はり(枕梁)を有するボルスタ台車に限定される。
【0005】
ボルスタ台車は、枕梁と中心ピンにより、垂直軸周りの回転変位を許容する構造である。ボルスタ台車は、車体と台車の間に幾何学的な回転中心を持つため、リンク機構によって輪軸をラジアル方向に向けることができる。
【0006】
ところで、現在の鉄道車両台車は、その枕梁を持たないボルスタレス台車が主流となっている。ボルスタレス台車は、幾何学的な回転中心を有しないので、車体に対する台車のボギー角の検知は行われてこなかった。
【0007】
同様に、ボルスタレス台車を対象とする操舵制御機構は存在しなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ボルスタレス台車に対して車体−台車間のボギー角を機械的に検知するボルスタレス台車用ボギー角検出機構を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、車体−台車間のボギー角に連動して空気圧を制御するボルスタレス台車用ボギー角連動空気圧バルブシステムを提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、輪軸の自己操舵機能をアシストして、曲線中での横圧低減を実現するボルスタレス台車用ボギー角連動アシスト操舵システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、符号を付して本発明の特徴を説明する。なお、符号は参照のためであり、本発明を実施形態に限定するものでない。
【0012】
本発明の第1の特徴に係わるボルスタレス台車用ボギー角検出機構(30)は、鉄道車両(1)の車体(10)に固定された入力軸(31)と、鉄道車両(1)のボルスタレス台車(20)に回転可能に取り付けられた出力軸(32)と、入力軸(31)と出力軸(32)とを結合すると共に車体(10)およびボルスタレス台車(20)の間のボギー角を伝達する伸縮可能な等速ジョイント機構(33)を有する。
【0013】
以上の第1の特徴において、等速ジョイント機構(33)は、入力軸(31)と結合した第1の等速ジョイント(331)と、出力軸(32)と結合した第2の等速ジョイント(332)と、第1の等速ジョイント(331)および第2の等速ジョイント(332)に連結されると共に伸縮自在な連結軸(333)を有する。
【0014】
連結軸(333)は、第1の等速ジョイント(331)と連結した第1の連結部(334)と、第2の等速ジョイント(332)と連結した第2の連結部(335)を有し、第1の連結部(334)と第2の連結部(335)とは互いに直線移動可能に連結される。
【0015】
連結軸(333)は、第1の連結部(334)と第2の連結部(335)とを直線に案内する直線案内機構(335a)を有する。
【0016】
本発明の第2の特徴に係わるボルスタレス台車用ボギー角連動空気圧バルブシステム(40)は、鉄道車両(1)の車体(10)に固定された入力軸(31)と、鉄道車両(1)のボルスタレス台車(20)に回転可能に取り付けられた出力軸(32)と、入力軸(31)と出力軸(32)とを結合すると共に車体(10)およびボルスタレス台車(20)の間のボギー角を伝達する伸縮可能な等速ジョイント機構(33)と、回転する出力軸(32)に連動して作動する空気圧バルブ(40)を有する。
【0017】
本発明の第3の特徴に係わるボルスタレス台車用ボギー角連動アシスト操舵システム(100)は、鉄道車両(1)の車体(10)に固定された入力軸(31)と、鉄道車両(1)のボルスタレス台車(20)に回転可能に取り付けられた出力軸(32)と、入力軸(31)と出力軸(32)とを結合すると共に前記車体およびボルスタレス台車(10)の間のボギー角を伝達する伸縮可能な等速ジョイント機構(33)と、回転する前記出力軸に連動して作動する空気圧バルブ(40)と、空気圧バルブ(40)によって制御されると共にボルスタレス台車(10)の輪軸(22A、22B)を操舵するアクチュエータ(50A−50D)を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の特徴によれば、車体およびボルスタレス台車のボギー角を機械的に検知することができるので、電気的なフェールを心配する必要がない。
【0019】
本発明の第2の特徴によれば、車体およびボルスタレス台車のボギー角に連動して、機械的に空気圧バルブを動作させるので、電気的なフェールを心配する必要がない。
【0020】
本発明の第3の特徴によれば、車体およびボルスタレス台車のボギー角に連動して、機械的にアクチュエータを作動させ、ボルスタレス台車に対して輪軸の操舵をアシストする。したがって、電気的な制御によるアクティブな操舵方式で懸念されるようなフェールによる逆操舵の恐れが無い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る鉄道車両を示す平面図である。
【図2】図1に示す鉄道車両の立面図である。
【図3】図1に示す鉄道車両の台車の側面図である。
【図4】図1に示す鉄道車両の軸箱支持装置のアクチュエータを示す一部断面図である。
【図5】実施形態に係るボルスタレス台車用ボギー角連動アシスト操舵システムを示すブロック図である。
【図6】図5に示すボギー角検出機構の概要図である。
【図7】図5に示すボギー角連動空気圧バルブの概要図である。
【図8】図5に示すボギー角連動空気圧バルブの概要図である。
【図9】曲線区間の軌道を走行する鉄道車両の概要図である。
【図10】(A)、(B)は曲線区間の軌道を走行する鉄道車両の台車を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
第1の実施形態
図1、2に示すように、鉄道車両1は、車体10と、車体10を支持するボルスタレス台車(以下、台車と称する。)20を有する。同台車20は、バラストB1に設置されたレールR1、R2上の走行車輪21A、21B、21C、21Dを回転可能に支持する前後の輪軸22A、22Bと、輪軸22A、22Bを支持する軸箱23A、23B、23C、23Dと、軸箱23A−23Dに取り付けられた軸箱支持装置24A、24B、24C、24Dと、軸箱支持装置24A−24Dによって支持された台車枠25と、台車枠25の頂部に取り付けられた左右の空気ばね26A、26Bを有する。同台車20は、台車枠25に配置されたボギー角検知機構30と、ボギー角検知機構30に接続したボギー角連動空気圧バルブ40を有する。
【0024】
ここで、軸箱23A−23Dは、輪軸22A、22Bを回転可能に支持する軸受と、軸受を収容する軸箱体と、潤滑装置等を有する。
【0025】
台車枠25は、ボギー角検知機構30を回転可能に支持する軸受251と、軸受251を台車枠25に固定する軸受部材252を有する。
【0026】
図3に示すように、軸箱支持装置24B、24Dの各々は、軸ばね241、ダンパ242、アクチュエータ50B、50Dを有する。軸ばね241、241は、軸箱23B、23Dの頂部と台車枠25の底部との間に配置され、上下方向の荷重を支持する。ダンパ242、242は、軸箱23B、23Dの側部と台車枠25との間に配置され、上下方向の振動を低減する。軸箱支持装置24A、24Cもアクチュエータ50A、50Cを含む同様な構造を有する。
【0027】
図4に示すように、各アクチュエータ50A−50Dは、軸箱23A−23Dと接続した軸箱側部材51と、台車枠25と接続した台車枠側部材52と、軸箱側部材51および台車枠側部材52の間に配置された戻しばね53と、戻しばね53の外側に配置された空気ばね54を有する。
【0028】
軸箱側部材51は、筒状の軸部511と、軸部511の端から径方向へ延びる円盤状のフランジ部512と、軸部511と反対側でフランジ512に固定されたブッシュ保持部513を有する。軸部511には円柱状のゴムブッシュ514、514が嵌め込まれている。ブッシュ保持部513は貫通孔513aを有し、この貫通孔513aに軸箱23A−23Dを弾性支持する軸箱側ブッシュ515が圧入される。軸箱側ブッシュ515により、軸箱側部材51と軸箱23A−23Dとは回転可能になる。
【0029】
台車枠側部材52は、円筒部521と、円筒部521の端から径方向へ延びる円盤状のフランジ部522と、円筒部521と反対側でフランジ部522に固定されたブッシュ保持部523を有する。円筒部521の中には、軸箱側部材51の軸部511が直線移動可能に挿入されている。フランジ部522は、内部の空気室55と外部の空気配管P1−P4とを連絡する空気供給孔524を有する。ブッシュ保持部523は貫通孔523aを有し、この貫通孔523aに台車枠25を弾性支持する台車枠側ブッシュ525が圧入されている。台車枠側ブッシュ525により、台車枠側部材52と台車枠25とは回転可能となる。台車枠側部材52は、円筒部521から径方向に延びる戻りばね座526を有する。
【0030】
戻しばね53は、例えば、コイルスプリングである。戻しばね53の中には、保持ボルト56が貫いている。保持ボルト56は軸箱側部材51のナット部516にネジ結合されている。保持ボルト56の中間部は台車枠側部材52の戻しばね座526を貫通し、この戻しばね座526に対して軸方向に相対移動可能である。戻しばね53は、圧縮した状態で、保持ボルト56の頭部と戻しばね座526とに接触している。
【0031】
空気ばね54は、軸箱側部材51のフランジ部512と台車枠側部材52のフランジ部522とに固定されたベローズ541と、フランジ部512、522に固定されたベローズ保持部材542、542を有する。ベローズ541はその内部に空気室55を規定する。空気ばね54は、一定圧以上の圧縮空気が供給されると伸長する機能を有する。空気ばね54の伸長により、輪軸22A、22Bの舵をラジアル方向に変更させ、輪軸22A、22Bの自己操舵機能をアシストする。
【0032】
詳細には、このアクチュエータ50A−50Dによれば、圧縮空気が空気供給孔524から空気室55に供給されると、空気室55の気圧が大きくなり、ベローズ541は戻しばね53に抗して伸びる。軸箱側部材51の軸部511と台車枠側部材52の円筒部521とは互いに離れるように反対方向に摺動する。これにより、軸箱側部材51と台車枠側部材52とは互いに離れる。
【0033】
一方、空気室55の気圧が小さくなると、戻しばね53は空気室55の気圧に抗して短縮する。軸箱側部材51の軸部511と台車枠側部材52の円筒部521とは互いに近づくように摺動する。これにより、軸箱側部材51と台車枠側部材52とは互いに近づく。
【0034】
次に、ボルスタレス台車用ボギー角連動アシスト操舵システム100について説明する。
【0035】
図5に示すように、同システム100は、軸箱23A−23Dを介在して輪軸22A、22Bを角変位させるアクチュエータ50A−50Dと、アクチュエータ50A−50Dを作動するボギー角連動空気バルブシステム110を有する。ボギー角連動空気圧バルブシステム110は、ボギー角検知機構30と、ボギー角検知機構30に連動するボギー角連動空気圧バルブ(以下、空気圧バルブと称する)40とを有する。
【0036】
図6に示すように、ボギー角検知機構30は、車体10に剛に固定された入力軸31と、台車20に支持された出力軸32と、入力軸31と出力軸32との間に配置された伸縮可能な等速ジョイント機構33を有する。
【0037】
ここで、出力軸32は、軸周りの回転を許容する軸受部材252の軸受251を介在して台車20に固定されている。出力軸の先端32aは正方形であり、空気圧バルブ40に差し込まれている。
【0038】
等速ジョイント機構33は、入力軸31と結合する第1の等速ジョイント331と、出力軸32と結合した第2の等速ジョイント332と、第1の等速ジョイント331と第2の等速ジョイント332とを連結する伸縮自在の連結軸333を有する。連結軸333は、第1の等速ジョイント331と連結した第1の連結部334と、第2の等速ジョイント332と連結した第2の連結部335とを有する。第1の連結部334は、第2の連結部335が挿入される挿入孔を有する。また、第1の連結部334は、挿入孔を規定する内面に、軸方向に延びると共に周方向に配置された複数の凹溝を有する。第2の連結部335は外周面に凹溝に挿入されると共に周方向に配置され、軸方向に延びる複数の凸条335aを有する。この伸縮可能な等速ジョイント機構33は、車体10と台車20との間の相対的な上下、左右、前後の変位、および、ロール・ピッチ角変位に影響されずに、車体10と台車20との間の相対的なヨー角変位(ボギー角)のみを伝えることができる。これにより、車体10−台車20間のボギー角を検出することができる。
【0039】
図7に示すように、空気圧バルブ40は、筐体の一方側に規定された入力ポート41と、入力ポート41と連絡する供給通路42と、供給通路42に連絡する第1のシリンダ側通路43Aおよび第2のシリンダ側通路43Bと、第1のシリンダ側通路43Aと連絡する第1の出力ポート44Aと、第2のシリンダ側通路43Bと連絡する第2の出力ポート44Bと、第1のシリンダ側通路43Aと連絡する第1の大気解放通路45Aと、第2のシリンダ側通路43Bと連絡する第2の大気解放通路45Bを有する。
【0040】
空気圧バルブ40は、第1のシリンダ側通路43Aに配置された第1の給気弁46Aと、第2のシリンダ側通路43Bに配置された第2の給気弁46Bと、第1の大気解放通路43Aに配置された第1の排気弁47Aと、第2の大気解放通路に配置された第2の排気弁47Bと、第1および第2の給気弁46A、46B並びに第1および第2の排気弁47A、47Bを操作する作動レバー48と、作動レバー48の支点48aと一致する角変位検出部49を有する。
【0041】
第1および第2の給気弁46A、46Bは、軌道の曲線の方向によって圧縮空気を出力する第1の出力ポート44Aまたは第2の出力ポート44Bを切り替える。
【0042】
第1の出力ポート44A、第2の出力ポート44Bはそれぞれ2系統の空気配管に分岐する。進行方向前側の台車であれば、第1の出力ポート44Aから経路は、空気配管P2、P4に分岐し、2位側・4位側軸箱支持装置24B、24Dのアクチュエータ50B、50Dへ達する。第2の出力ポート44Bからの経路は、空気配管P1、P3に分岐し、1位側・3位側軸箱支持装置24A、24Cのアクチュエータ50A、50Cに達する(図1参照)。
【0043】
作動レバー48は、通常、基線B1(角度0)と一致している(図8参照)。そして、作動レバー48は、出力軸先端32aの角変位により、作動レバー48は支点48aについて、時計方向または反時計方向へ回転可能である。
【0044】
角変位検出部49には、ボギー角検知機構30の出力軸32の先端部32aが差し込まれている。出力軸先端32aの対角線は、通常、基線B1と一致している。そして、角変位検出部49は、基線B1に対する出力軸先端32aの対角線の角変位から、車体10および台車20の間のボギー角を検出する。
【0045】
この空気圧バルブ40は、入力されたボギー角に応じて弁を開閉する機能を有する。そして、入力ボギー角がある角度以下の場合、空気圧バルブ40は第1および第2の出力ポート44A、44Bを大気解放状態にする。また、入力ボギー角がある角度以上の場合、空気圧バルブ40は第1または第2の出力ポート44A、44Bに圧縮空気を供給する。
【0046】
次に、ボルスタレス台車用ボギー角連動アシスト操舵システム100の動作について説明する。
【0047】
図9に示すように、鉄道車両1が軌道R1、R2の曲線区間に進入すると、鉄道車両1の台車20A、20Bは車体10に対して回転し、車体10と台車20A、20Bとの間にボギー角を生じさせる。さらに、図10(A)、(B)に示すように、同アシスト操舵システム100は台車20A、20Bに対して輪軸22A、22Bを回転させて、輪軸22A、22Bの自己操舵機能をアシストする。
【0048】
このとき、図6に示すように、第1の等速ジョイント331、第2の等速ジョイント332は車体10と台車20との間の相対的なロール角変位・ピッチ角変位に応じて回転する。また、第1の連結部334と第2の連結部335とは、車体10と台車20との相対的な上下、左右、前後の変位に応じて、互いに直線移動し、変位を吸収する。よって、車体10のヨー方向の回転角度(ボギー角)は、そのままボギー角検知機構30の入力軸31周りの角度(ψ)となり、入力軸31は角度(ψ)で回転する。第1の等速ジョイント331は回転角度(ψ)を連結軸333に伝達する。連結軸333は軸周りに角度(ψ)で回転する。第2の等速ジョイント332は、回転角度(ψ)を出力軸32に伝達する。出力軸32は回転角度(ψ)で回転する。よって、同ボギー角は、台車枠25(台車20)とボギー角検知機構30の出力軸32との相対的な回転角として伝わる。以上から、車体10−台車20間のボギー角が検知される。
【0049】
図8に示すように、ボギー角検知機構30によって伝達されるボギー角は、出力軸先端32aによって台車20に搭載された空気圧バルブ40の角変位検出部49に入力される。
【0050】
図7に示すように、空気圧バルブ40は、入力されたボギー角に応じて、弁を開閉する機能をもったバルブである。空気圧バルブ40は、入力ボギー角がある角度(|β|)以下の場合には、第1および第2の出力ポート44A、44Bは大気解放状態にする。また、空気圧バルブ40は、入力ボギー角がある角度(|α|)以上の場合に、第1および第2の出力ポート44A、44Bに圧縮空気を供給する。
【0051】
すなわち、空気圧バルブ40の作動部材48が中立位置(角度0)にあるとき、第1および第2の給気弁46A、46Bが閉状態、第1および第2の排気弁47A、47Bが開状態となり、第1および第2の出力ポート44A、44Bは大気解放状態となる。入力ボギー角が、排気弁閉動作角度(|β|)に達するまではこの状態を保持する。
【0052】
入力ボギー角が排気弁閉動作角度(|β|)を超えると、作動部材48は、ばねに抗して第1または第2の排気弁47A、47Bを移動させ、第1の大気解放通路45Aまたは第2の大気解放通路45Bを閉鎖する。これにより、第1または第2の出力ポート44A、44Bは大気解放状態から解除される。一方、第1および第2の給気弁46A、46Bは第1および第2のシリンダ側通路43A、43Bを閉鎖しているので、圧縮空気は入力ポート41から第1または第2の出力ポート44A、44Bに供給されない。
【0053】
入力ボギー角は給気弁動作角度(|α|)を超えると、作動部材48は、ばねに抗して第1または第2の給気弁46A、46Bを移動させ、第1のシリンダ側通路43Aまたは第2のシリンダ側通路43Bを解放する。これにより、入力ポート41と第1または第2の出力ポート44A、44Bとは連絡し、第1または第2の出力ポート44A、44Bは圧縮空気で満たされる。
【0054】
入力ボギー角が反時計回り(正の角度)の場合に、第1の出力ポート44Aに対する動作、入力ボギー角が時計回り(負の角度)のときに第2の出力ポート44Bに対する動作を行うものであり、非動作側の出力ポート44A、44Bは常に大気解放されている。
【0055】
ここで、第1および第2の給気弁46A、46Bは、軌道の曲線の方向によって圧縮空気を出力するための第1の出力ポート44Aまたは第2の出力ポート44Bを切り替える。例えば、進行方向に対し、左側にカーブする曲線であれば、台車20は車体10に対して反時計回りのボギー角をとる(図9参照)。このとき、空気圧バルブ40には、時計回りに同じ大きさの角変位入力が与えられ、第2の出力ポート44Bのみに圧縮空気が供給される。軌道が右カーブであれば、前述とは逆の動作により、第1の出力ポート44Aのみに圧縮空気が供給される。また、空気圧バルブ40は、一定以上の入力ボギー角の場合のみに圧縮空気を供給する仕組みになっており、それ以下の角度では、大気解放する仕組になっている。つまり、直線区間および半径の大きなカーブ(曲率の小さなカーブ)の区間では、第1および第2の出力ポート44A、44Bは常に大気解放された状態となっている。
【0056】
左カーブの時、圧縮空気は第2の出力ポート44Bにのみ供給される。その先の1位側、3位側軸箱支持装置24A、24Cのアクチュエータ50A、50Cは圧縮空気の供給により伸長する(図1参照)。このとき、第1の出力ポート44Aは大気解放されているので、その先の2位側・4位側軸箱支持装置24B、24Dも大気解放されており、アクチュエータ50B、50Dは伸長しない。従って、図10(B)に示すように、軌道R1、R2のカーブに沿って輪軸22A、22Bをラジアル方向に向けてアシスト動作させることができる。
【0057】
右カーブの時、圧縮空気は第1の出力ポート44Aにのみ供給されるので、その先の2位側、4位側軸箱支持装置24B、24Dに圧縮空気が供給されてアクチュエータ50B、50Dが伸長する(図1参照)。このとき、第2の出力ポート44Bは大気解放されているので、その先の1位側、3位側軸箱支持装置24A、24Cも大気解放されており、軸箱支持装置24A、24Cのアクチュエータ50A、50Cは伸長しない。したがって、同様に軌道のカーブに沿って輪軸22A、22Bをラジアル方向に向けてアシスト動作させることができる。
【0058】
以上の実施形態によれば、車体10−ボルスタレス台車20間のボギー角を機械的に検知することができるので、電気的なフェールを心配する必要がない。
【0059】
車体10−ボルスタレス台車20間のボギー角に連動して、機械的に空気圧バルブ40を動作させるので、電気的なフェールを心配する必要がない。
【0060】
車体10−ボルスタレス台車20のボギー角に連動して、機械的にアクチュエータを作動させ、ボルスタレス台車20に対して輪軸の操舵をアシストする。したがって、電気的な制御によるアクティブな操舵方式で懸念されるようなフェールによる逆操舵の恐れが無い。
【0061】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、また、各実施形態は発明の趣旨を変更しない範囲で変更、修正可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 鉄道車両
10 車体
20 台車
21A−21D 車輪
22A、22B 輪軸
23A−23D 軸箱
24A−24B 軸箱支持装置
25 台車枠
26A、26B 空気ばね
30 ボギー角検知機構
40 ボギー角連動空気圧バルブ
50A−50D アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体に固定された入力軸と、
鉄道車両のボルスタレス台車に回転可能に取り付けられた出力軸と、
前記入力軸と出力軸とを結合すると共に前記車体およびボルスタレス台車の間のボギー角を伝達する伸縮可能な等速ジョイント機構を有する、
ボルスタレス台車用ボギー角検出機構。
【請求項2】
前記等速ジョイント機構は、
前記入力軸と結合した第1の等速ジョイントと、
前記出力軸と結合した第2の等速ジョイントと、
第1の等速ジョイントおよび第2の等速ジョイントに連結されると共に伸縮自在な連結軸を有する、
請求項1に記載のボルスタレス台車用ボギー角検出機構。
【請求項3】
前記連結軸は、前記第1の等速ジョイントと連結した第1の連結部と、前記第2の等速ジョイントと連結した第2の連結部を有し、
前記第1の連結部と第2の連結部とは互いに直線移動可能に連結される、
請求項2に記載のボルスタレス台車用ボギー角検出機構。
【請求項4】
前記連結軸は、前記第1の連結部と第2の連結部とを直線に案内する直線案内機構を有する、
請求項3に記載のボルスタレス台車用ボギー角検出機構。
【請求項5】
鉄道車両の車体に固定された入力軸と、
鉄道車両のボルスタレス台車に回転可能に取り付けられた出力軸と
前記入力軸と出力軸とを結合すると共に前記車体およびボルスタレス台車の間のボギー角を伝達する伸縮可能な等速ジョイント機構と、
回転する前記出力軸に連動して作動する空気圧バルブを有する、
ボルスタレス台車用ボギー角連動空気圧バルブシステム。
【請求項6】
鉄道車両の車体に固定された入力軸と、
鉄道車両のボルスタレス台車に回転可能に取り付けられた出力軸と、
前記入力軸と出力軸とを結合すると共に前記車体およびボルスタレス台車の間のボギー角を伝達する伸縮可能な等速ジョイント機構と、
回転する前記出力軸に連動して作動する空気圧バルブと、
前記空気圧バルブによって制御されると共に前記ボルスタレス台車の輪軸を操舵するアクチュエータを有する、
ボルスタレス台車用ボギー角連動アシスト操舵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−6453(P2013−6453A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138798(P2011−138798)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)