説明

ボルテックスチューブ

【課題】チューブ本体の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できるボルテックスチューブの構成を提供することを目的とする。
【解決手段】一端側に設けられ加圧流体が内部を略旋回するように流入させるノズル11a、前記ノズル11aと同方向側の略端部に設けられた低温流体出口11c、他端側に設けられた高温流体出口11bを有する略円筒状のチューブ本体20と、前記チューブ本体20内部に設けられた可動体22とを備え、前記可動体22は、前記チューブ本体20内部を軸線方向に移動する構成としたもので、チューブ内部の分離空間の軸線方向長さを変更することで、チューブ本体20の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口11cおよび高温流体出口11bの流体温度や、減圧量を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテックスチューブの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルテックス・チューブは、円筒状のチューブ本体の一端部に、加圧流体を接線方向からチューブ本体内に流入させるノズルと軸線方向に低温流体出口とを備え、他端部に円錐型の流量弁と高温流体出口を備えたもので、加圧空気の熱エネルギーを高温と低温に分離する機能を有するものである。
【0003】
ところで、このようなボルテックス・チューブでは、円錐型の流量弁の開度を調整することで、低温流体出口および高温流体出口の流体温度を調整することができるが、ノズル入口の流体圧力と低温流体出口および高温流体出口の流体圧力の差である減圧量は調整することはできない。
【0004】
そこで、図3のように、チューブ本体の軸線方向の長さを変化させて、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整する改良が提案されている。図3において、10aはノズル側チューブ本体、10bは高温流体出口側チューブ本体、11aは加圧流体を接線方向に流入させるノズル、11bは高温流体出口、11cは低温流体出口、12は円錐型流量弁、13はノズル側チューブ10aと高温流体出口側チューブ10bの接合部である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭61−46351号公報(第2頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献に記載された従来技術の場合、チューブ本体の長さを可変としているために、接合部13での耐圧性や機密性を確保するのが困難であるといった課題がある。すなわち、ノズル側チューブ10aが高温流体出口側チューブ10bに挿入されている構成となっているので、接合部13から内部の流体がチューブ外部(外気)に漏洩する恐れがあった。
【0006】
特に、流体が高圧となる場合や流体の分子量が小さい場合、例えば、二酸化炭素を用いた場合などに漏洩する恐れがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するもので、チューブ本体の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できるボルテックスチューブの構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のボルテックスチューブは、一端側に設けられ加圧流体が内部を略旋回するように流入させるノズル、前記ノズルと同方向側の略端部に設けられた低温流体出口、他端側に設けられた高温流体出口を有する略円筒状のチューブ本体と、前記チューブ本体内部に設けられた可動体とを備え、前記可動体は、前記チューブ本体内部を軸線方向に移動する構成としたもので、チューブ内部の分離空間の軸線方向長さを変更することで、チューブ本体の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チューブ本体の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できるボルテックスチューブを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、一端側に設けられ加圧流体が内部を略旋回するように流入させるノズル、前記ノズルと同方向側の略端部に設けられた低温流体出口、他端側に設けられた高温流体出口を有する略円筒状のチューブ本体と、前記チューブ本体内部に設けられた可動体とを備え、前記可動体は、前記チューブ本体内部を軸線方向に移動する構成としたもので、チューブ内部の分離空間の軸線方向長さを変更することで、チューブ本体の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる。
【0011】
第2の発明は、電気的パルスにより駆動する可動手段を備え、可動体は前記可動手段により移動する構成としたもので、電気的な制御により、チューブ本体の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる。
【0012】
第3の発明は、高温流体出口に開度調整手段を設けたもので、さらに高温流体出口の流量を調整することで、チューブ本体の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる
第4の発明は、電気的パルスにより駆動する可動手段を備え、開度調整手段は前記可動手段により動作する構成としたもので、電気的な制御により、チューブ本体の耐圧性、気密性を確保しつつ、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる。
【0013】
以下、本発明の実施に形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるボルテックスチューブを示す構成図である。図1において、11aは加圧流体を接線方向に流入させるノズル、11bは高温流体出口、11cは低温流体出口であり、20はチューブ本体、21は略円錐状なる円錐体、22は可動円板、23は可動円板22に穿たれた穴、24は弁組立体、25は弁組立体24と可動円板22とを接続するシャフトである。
【0016】
ノズル11aは略円筒状のチューブ本体20の周面略端部に、低温流体出口11cは前記ノズル11aと同方向の側端面に、高温流体出口11bは他端側の周面に設けられている。
【0017】
また、31は分離空間、32は高温出口側空間であり、可動円板22によりチューブ本体20内を仕切っていると共に、それらの一部は穴23により連通している。40は可動手段であり、これは主に、ロータ組立体41、コイル組立体42、ロータ組立体を被覆するキャン43から構成される。可動円板22はシャフト25により弁組立体24を通して、可動手段40に接続されている。可動手段40のコイル組立体41に電気的パルスを与えることで、ロータ組立体42が定められた回転角だけ回転し、弁組立体24に設けられたネジ(図示せず)に伝えられ、シャフト25および可動円板22は図中の左右(チューブ本体20の軸線方向)に移動させることができる。
【0018】
次に、上述のように構成されたボルテックスチューブの動作について説明する。
【0019】
ノズル11aからチューブ本体20内に流入した加圧流体は、分離空間31で高速渦流となり、減圧されつつ壁面付近を通ってを図中の左から右へと流れたのち、円錐体21で流れ方向を反転し、分離空間31の中心部を通って図中の左から右へと流れる。この際、分離空間31の管内壁面を流れる高温流体と、分離空間31の中心部を流れる低温流体とにエネルギー分離される。分離された低温流体は、低温流体出口11cより流出する。
【0020】
また、分離された高温流体は円錐体23の底面に設けられた可動円板22に穿たれた穴23から高温出口側空間32へと流れる。その後、高温流体は高温出口側空間32と連通して設けられた高温流体出口11bより流出する。
【0021】
低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整するには、可動手段40に電気的パルスを与えて、可動円板22を左右に移動させることで、分離空間31の軸線方向長さを変更すれば可能である。すなわち、可動円板22を図中の左方向に移動させ、分離空間31の軸線方向長さを短くすれば、低温流体出口温度は上昇し、高温流体出口温度は低下し、減圧量は低下する。逆に、可動円板22を図中の右方向に移動させ、分離空間31の軸線方向長さを長くすれば、低温流体出口温度は低下し、高温流体出口温度は上昇し、減圧量は増加する。
【0022】
ここで、分離空間31と高温出口側空間32は、チューブ本体20、弁組立体24,キャン42によって密閉された耐圧性を有する空間を、可動円板22で仕切っているだけで、チューブ外部(外気)との間に可動する接合部もないので耐圧性が高く、外気に流体が漏洩することもない。また、仮に可動円板22とチューブ本体20との接合部から流体が漏れたとしても、高温出口側空間32に漏洩するだけで外気に漏洩することはない。なお、高温出口側空間32とシャフト25の接合部から漏洩した場合にも、キャン43に覆われているので外気に漏洩することはない。
【0023】
以上説明したように、第1の実施の形態のボルテックスチューブでは、外気と接するところに可動する接合部を無くしたために、チューブ本体20の耐圧性、気密性を確保しつつ、ボルテックスチューブの分離空間31の軸線方向長さを変更することで、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる。さらに、可動手段40は電気的パルスにより駆動されるために、電気的な制御により低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる。
【0024】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態におけるボルテックスチューブについて図2を用いて説明する。図2において、本実施の形態のボルテックスチューブは、第1の実施の形態のボルテックスチューブとほぼ同様な構成であり、同一機能部品については同一の符号を付して説明を省略する。
【0025】
本実施の形態のボルテックスチューブでは、高温流体出口11bに高温流体がチューブ本体20から流出する量を調整する開度調整手段である弁51が設けられている。
【0026】
次に、上述のように構成されたボルテックスチューブで低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整するには、可動手段40に電気的パルスを与えて、可動円板22を左右に移動させることで、分離空間31の軸線方向長さを変更すれば可能である。さらに、従来のボルテックスチューブのように、弁51により高温流体が流出する量を調整することで、低温流体出口および高温流体出口の流体温度の調整が可能である。
【0027】
以上説明したように、第1の実施の形態のボルテックスチューブでは、外気と接するところに可動する接合部を無くしたために、チューブ本体20の耐圧性、気密性を確保しつ
つ、ボルテックスチューブの分離空間31の軸線方向長さと高温流体出口流量を変更することで、低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる。
【0028】
さらに、弁51についても、第1の実施の形態で説明したような可動手段を設けても良い。この場合には、弁は電気的パルスにより駆動される可動手段により調整されるために、電気的な制御により低温流体出口および高温流体出口の流体温度や、減圧量を調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のボルテックスチューブは、冷凍分野、医療分野、機械加工などの工業分野で応用利用できる。そして、耐圧性、気密性を確保しつつ、分離空間の軸線方向長さと、高温流体出口の流量を変更することで、流体出口温度と減圧量が調整できるために、より細かな条件変化に対応することができるボルテックスチューブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるボルテックスチューブを示す概略断面図
【図2】本発明の第2の実施の形態におけるボルテックスチューブを示す概略断面図
【図3】従来のボルテックスチューブを示す概略断面図
【符号の説明】
【0031】
10a ノズル側チューブ本体
10b 高温流体出口側チューブ本体
11a ノズル
11b 高温流体出口
11c 低温流体出口
20 チューブ本体
21 円錐体
22 可動円板
31 分離空間
32 高温出口側空間
40 可動手段
51 弁








【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に設けられ加圧流体が内部を略旋回するように流入させるノズル、前記ノズルと同方向側の略端部に設けられた低温流体出口、他端側に設けられた高温流体出口を有する略円筒状のチューブ本体と、前記チューブ本体内部に設けられた可動体とを備え、前記可動体は、前記チューブ本体内部を軸線方向に移動する構成としたボルテックスチューブ。
【請求項2】
電気的パルスにより駆動する可動手段を備え、可動体は前記可動手段により移動する構成とした請求項1記載のボルテックスチューブ。
【請求項3】
高温流体出口に開度調整手段を設けた請求項1または2記載のボルテックスチューブ。
【請求項4】
電気的パルスにより駆動する可動手段を備え、開度調整手段は前記可動手段により動作する構成とした請求項3記載のボルテックスチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−22976(P2006−22976A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199154(P2004−199154)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)