説明

ボールチェーン及びその製造方法

【課題】肉厚が薄い金属球により、大きな引張荷重に耐えられるボールチェーンおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】金属片を丸めて中空の金属製回転軸対称体22に形成し、両端部に連結頭部を有する連結軸23によって回転軸対称体22を鎖状に連結したボールチェーン21において、回転軸対称体22は、回転軸対称体の回転軸の方向に突き合わせシーム24を有し、突き合わせシーム24の少なくとも一部に溶接部分25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空の金属球を、両端部に連結頭部を有する連結軸によってチェーン状に連結したボールチェーン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は一部を切り欠いて示した従来のボールチェーンの一部断面図である。
【0003】
図5に示すように、従来のボールチェーン31は、複数の中空の金属球32を有し、両端部に連結頭部33aを有する連結軸33によってチェーン状に連結されたものである。
【0004】
金属球32は、金属片を丸めて中空の球体に成形したものであり、金属片の突き合わせシーム34を有している。
【0005】
突き合わせシーム34の上下端部は、開口部になっている。
【0006】
各開口部には、連結軸33の軸部が挿通しており、連結軸33の両端の連結頭部33aは膨出して開口部の内径より大径に形成されている。
【0007】
連結軸33の連結頭部33aと金属球32の開口部との係合により、連結軸33が抜け出ないようになっている。
【0008】
この構造が連続的に形成されることにより、各金属球32は連結軸33により、チェーン状に連結されている。
【特許文献1】特開2003−25041号公報
【特許文献2】特開2005−192838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のボールチェーンは、前記連結軸の連結頭部を内包した状態で、肉厚が薄い金属テープを球状に成形しただけのものであったため、大きな引張荷重がかかると、金属球のシームが開き、連結軸の連結頭部が抜け出ることがあった。
【0010】
一方、大きな引張荷重に耐えられるように、肉厚が厚い金属テープで金属球に成形することも考えられるが、加工が困難であり、ボールチェーン全体の重量も増し、材料も多く必要とならざるを得なかった。
【0011】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、肉厚が薄い金属球により、大きな引張荷重に耐えられるボールチェーンおよびその製造方法を提供することにある。
【0012】
なお、何らかの接着技術や溶接技術でボールチェーンの金属球のシームを接合することができれば、肉厚が薄い金属球からなるボールチェーンで、大きな引張荷重に耐えられるボールチェーンを得られることは考えられる。
【0013】
しかし、接着は信頼性に欠ける一方、溶接は一般に溶接入熱が大きいため、肉厚が薄い金属同士の接合には従来用いられなかった。
【0014】
これに対して、近来、レーザー溶接の技術が発達してきており、該レーザー溶接は溶接入熱が少ないため、限定された部位の金属同士の溶接や薄肉の金属同士の溶接に好適であることは知られている。
【0015】
しかし、レーザー溶接は、限定された部位の金属同士の溶接に好適である反面、溶接箇所に正確にレーザーを照射しなければならない性質を有している。
【0016】
一方、ボールチェーンは、ボールチェーンを構成する金属球は概ね球形をなしており、しかも個々の金属球が回転自由であるため、金属球の突き合わせシームの位置が定まらず、金属球の突き合わせシームに正確にレーザーを照射することはほとんど不可能である。
【0017】
また、ボールチェーンの成形する途中では、金属テープをまず管状に成形し、しかる後に該金属管を中心軸に関して回転させ、互いに噛み合う金型に通し、徐々に金属球が連なった形状に成形するが、金属管あるいは金属球の突き合わせシームが絶えず動くため、突き合わせシームに正確にレーザーを照射することは非常に困難であった。
【0018】
上記事情はTIG溶接においても同様であり、最近は溶接入熱をコントロールして溶接する技術が発達しているが、溶接部との精密な位置合わせやアークのための距離の制御が必要であるため、ボールチェーンの金属球の突き合わせシームに精確にTIG溶接することは非常に困難であった。
【0019】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、金属管の突き合わせシームに正確にレーザー溶接またはTIG溶接行うことにより、肉厚が薄い金属球からなる大きな引張荷重に耐えられるボールチェーン及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明によるボールチェーンは、
金属片を丸めて中空の金属製回転軸対称体に形成し、両端部に連結頭部を有する連結軸によって前記回転軸対称体を鎖状に連結したボールチェーンにおいて、
前記回転軸対称体は、回転軸対称体の回転軸の方向に突き合わせシームを有し、前記突き合わせシームの少なくとも一部に溶接部分を有することを特徴とする。
【0021】
前記回転軸対称体は、好ましくは中空の球である。
【0022】
前記突き合わせシームの溶接部分は、前記連結軸が挿通する前記回転軸対称体の開口部の近傍に位置するようにすることができる。
【0023】
本願発明によるボールチェーン製造方法は、
金属ワイヤを連結軸金型に通して連結軸が線状につながった連結軸ワイヤに成形する工程と、
前記連結軸ワイヤの送り込み位置と金属テープの送り込み位置と送り込み角度を位置決めする位置決め手段を有する引き抜きダイスに、金属テープと前記連結軸ワイヤを送給する工程と、
前記金属テープと前記連結軸ワイヤを前記連結軸ワイヤに関して所定の角度ずつ回転させ、前記引き抜きダイスにより、前記金属テープを前記連結軸ワイヤを内包した状態で金属管に引き抜く工程と、
前記金属管の突き合わせシームが所定の位置に回転したときに、前記金属管の回転に同期して前記突き合わせシームにレーザーを照射することにより、あるいはTIG溶接を行うことにより、前記金属管の突き合わせシームを溶接する工程と、
回転軸対称体成形金型に前記金属管と前記連結軸ワイヤを送給し、前記金属管と前記連結軸ワイヤを所定の角度ずつ回転させ、前記金属管を各回転軸対称体が前記連結軸ワイヤの各連結軸の連結頭部を内包する状態で複数の回転軸対称体が線状につながったボールチェーン構造体に成形する工程と、
前記ボールチェーン構造体の各回転軸対称体の接合部と前記連結軸ワイヤの各連結軸の接合部を切断する工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
前記レーザー照射あるいは前記TIG溶接のタイミングと前記金属管の送りのタイミングとピッチは、前記突き合わせシームが、前記連結軸が挿通する各回転軸対称体の開口部の近傍で溶接されるように、互いに同期されているようにすることができる。
【0025】
本願発明によるボールチェーン製造方法は、
金属ワイヤを連結軸金型に通して連結軸が線状につながった連結軸ワイヤに成形する工程と、
前記連結軸ワイヤの送り込み位置と金属テープの送り込み位置と送り込み角度を位置決めする位置決め手段を有する引き抜きダイスに、金属テープと前記連結軸ワイヤを送給する工程と、
前記金属テープと前記連結軸ワイヤを前記連結軸ワイヤに関して所定の角度ずつ回転させ、前記引き抜きダイスにより、前記金属テープを前記連結軸ワイヤを内包した状態で金属管に引き抜く工程と、
前記引き抜きダイスの回転と共に回転し、前記引き抜きダイスと相対的に一定位置から溶接を行うレーザー溶接トーチまたはTIG溶接トーチにより、前記金属管の突き合わせシームを溶接する工程と、
回転軸対称体成形金型に前記金属管と前記連結軸ワイヤを送給し、前記金属管と前記連結軸ワイヤを所定の角度ずつ回転させ、前記金属管を各回転軸対称体が前記連結軸ワイヤの各連結軸の連結頭部を内包する状態で複数の回転軸対称体が線状につながったボールチェーン構造体に成形する工程と、
前記ボールチェーン構造体の各回転軸対称体の接合部と前記連結軸ワイヤの各連結軸の接合部を切断する工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
前記金属管の突き合わせシームを連続してあるいは断続的に溶接するようにすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によるボールチェーンは、回転軸対称体が、回転軸対称体の回転軸の方向に突き合わせシームを有し、前記突き合わせシームの少なくとも一部に溶接部分を有している。このため、ボールチェーンに引張荷重がかかったときに、溶接部分によって突き合わせシームが開かず、これにより連結軸の連結頭部が抜け出ることがなく、単に金属片を丸めて回転軸対称体形状に形成したボールチェーンに比して、大幅に大きな引張荷重に耐えることができる。
【0028】
換言すると、必要な引張荷重に対して、ボールチェーンの肉厚を薄くすることができ、これにより、加工が容易であり、かつ、材料が廉価で合理的なボールチェーンを得ることができる。
【0029】
特に、突き合わせシームの溶接部分が、連結軸が挿通する回転軸対称体の開口部の近傍に位置する場合は、少ない溶接により、許容引張荷重を効果的に増大させることができ、加工が容易で、廉価で合理的なボールチェーンを得ることができる。
【0030】
本発明によるボールチェーンの製造方法は、金属テープと連結軸ワイヤを引き抜きダイスに送給し、前記金属テープと連結軸ワイヤを所定の角度ずつ回転させ、前記引き抜きダイスにより、前記金属テープを前記連結軸ワイヤを内包した金属管に引き抜く。
【0031】
前記金属管が、前記引き抜きダイスから出た後、次のボールチェーン構造体に成形する前に、金属管の回転に同期して突き合わせシームにレーザー溶接あるいはTIG溶接を行い、前記突き合わせシームを溶接する。
【0032】
金属管における突き合わせシームは、回転軸対称体の突き合わせシームに比して、半径方向の距離が一定しているため、レーザーの照射の焦点距離が一定しており、正確にレーザーのエネルギーを集中させることができる。TIG溶接においても、金属管の突き合わせシームの溶接箇所が半径方向に一定の距離に位置しているため、TIG溶接のトーチと溶接部の距離を正しく維持することができ、適切に溶接を行うことができる。
【0033】
また、本発明では、位置決め手段により引き抜きダイスに対して連結軸ワイヤの送り込み位置と金属テープの送り込み位置と送り込み角度が一定に位置決めされているため、引き抜きダイスと金属管の回転に対して、突き合わせシームの周方向の位置を正確に制御することができる。これにより、引き抜きダイスの回転に対してレーザー溶接とTIG溶接のタイミングを同期させる場合に、周方向の突き合わせシームの位置に正確にレーザー溶接またはTIG溶接を行うことができる。
【0034】
これにより、突き合わせシームを断続的に溶接することを好適に行うことができる。
【0035】
また、金属管の送りの速度とピッチとレーザー溶接やTIG溶接のタイミングを同期させることにより、所望の場所で突き合わせシームを溶接することができる。
【0036】
特に、金属管の送りの速度とピッチと、レーザー溶接またはTIG溶接のタイミングと、次のボールチェーン構造体に成形する工程とを同期させることにより、ボールチェーン構造体を構成する各回転軸対称体のくびれた部分、すなわち、連結軸が挿通する回転軸対称体の開口部となる部分の近傍に、レーザー溶接またはTIG溶接を行うことができる。
【0037】
また、本発明のボールチェーン製造方法は、レーザー溶接トーチまたはTIG溶接トーチを、引き抜きダイスと相対的に一定位置に固定し、引き抜きダイスの回転と共に回転するようにすることができる。
【0038】
この製造方法によれば、レーザー溶接またはTIG溶接を連続的に照射することを好適に行うことができる。
【0039】
すなわち、位置決め手段により引き抜きダイスに対して連結軸ワイヤの送り込み位置と金属テープの送り込み位置と送り込み角度が一定に位置決めされ、かつ、レーザー溶接トーチまたはTIG溶接トーチが引き抜きダイスと相対的に一定位置に固定されているため、金属管の周方向の突き合わせシームの位置に正確にレーザー溶接またはTIG溶接を行うことができ、溶接を連続的に行えば、金属管の周方向の突き合わせシームを連続的に溶接することができる。
【0040】
むろん、溶接を断続的に行うようにすれば、突き合わせシームを断続的に溶接することもできる。
【0041】
なお、金属テープは、通常リール状に巻かれた金属テープリールから繰り出されるが、金属テープリールは定位置に固定され金属テープを繰り出すため、位置決め手段が無い場合には、引き抜きダイスが所定角度ごとに回転するときに、金属テープリールがアンカーのようになり、引き抜きダイスに対する金属テープの送り込み位置と送り込み角度が変動し、その結果、引き抜きダイスから引き抜かれる金属管の突き合わせシームの引き抜きダイスに対する周方向位置が変動する。その場合には、金属管の周方向の突き合わせシームの位置に正確にレーザー溶接またはTIG溶接を行うことができない。
【0042】
本発明は位置決め手段により、引き抜きダイスから引き抜かれる金属管の突き合わせシームの引き抜きダイスに対する周方向位置が常に一定するため、上述したように、金属管の周方向の突き合わせシームの位置に正確にレーザー溶接またはTIG溶接を行うことができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、本発明によるボールチェーンとその製造方法の一実施形態について以下に説明する。
【0044】
図1は、本発明によるボールチェーンを製造する装置の全体を示している。
【0045】
本実施形態によるボールチェーン製造装置1は、ワイヤ送り部2と、連結軸金型3と、引き抜きダイス4と、回転軸対称体成形金型5と、レーザー溶接トーチまたはTIG溶接トーチ6とを有している。
【0046】
なお、レーザー溶接トーチまたはTIG溶接トーチ6は、以下代表的にレーザー溶接トーチ6といい、レーザーの照射を例に説明するが、レーザー溶接トーチをTIG溶接トーチに置き換え、レーザーの照射をTIG溶接のためのエネルギー投入に置き換えてもよい。
【0047】
符号7は、ボールチェーンの連結軸となる素材のワイヤを示している。ワイヤ7は、送り方向Pに送られる。
【0048】
ワイヤ送り部2は、ワイヤ7を把持して所定ピッチごとに送ることができ、かつ、ラックピニオン8,9により、所定の角度ずつに回転方向Rに回転することができる。
【0049】
ワイヤ7は、ワイヤ送り部2により送り方向Pに送られ、所定角度ずつ回転し、連結軸金型3に送られ、連結軸金型3が繰り返し咬合することにより、連結軸が線状につながった連結軸ワイヤ10に成形される。なお、「連結軸が線状につながった」とは、連結頭部が互いにくっついた状態で連結軸が繋がったものをいう。連結軸ワイヤ10は、屈曲等させる外力をかけることにより、隣接する連結頭部の間の溝が分離し、個々の連結軸に分離するものである。
【0050】
符号11は、ボールチェーンを構成する回転軸対称体の素材となる金属テープを示している。
【0051】
金属テープ11は、ワイヤ7を連結軸ワイヤ10に成形した後に、連結軸ワイヤ10とともに引き抜きダイス4に送給される。
【0052】
引き抜きダイス4は、ラックピニオン12,13により、連結軸ワイヤ10と金属テープ11を把持したまま、所定の角度ずつ方向Rに回転し、金属テープ11を金属管14に引き抜くことができる。
【0053】
ラックピニオン12,13はラックピニオン8,9と回転が同期され、同一の角度と方向で所定の角度ごとに回転する。
【0054】
これにより、金属管14とその内部の連結軸ワイヤ10は、同一の角度と方向で所定の角度ごとに回転し、回転軸対称体成形金型5に送られ、回転軸対称体成形金型5が繰り返し返し咬合することにより、回転軸対称体が線状につながったボールチェーン構造体15に成形される。
【0055】
なおここで、回転軸対称体とは、およそ回転軸に関して対称で中空の物体をいい、球体、回転体、多面体を含むものとする。
【0056】
連結軸ワイヤ10と金属管14の送りは、回転軸対称体成形金型5において成形されるボールチェーン構造体15の各回転軸対称体が連結軸の連結頭部を内包するように、それらの相対位置と送りピッチが調整されている。
【0057】
引き抜きダイス4は、内部に連結軸ワイヤ10の送り込み位置と金属テープ11の送り込み位置と送り込み角度を位置決めする位置決め手段を有している。
【0058】
図2に上記位置決め手段と引き抜き部の詳細を示す。
【0059】
位置決め手段は、上半月部材16と下半月部材17とを有している。
【0060】
引き抜きダイス4の本体は、円筒状部材を有し、上半月部材16と下半月部材17は、それぞれ引き抜きダイス4の本体の円筒状部材の内面に固定されている。
【0061】
上半月部材16と下半月部材17の間には隙間18が存在し、金属テープ11はその隙間18に案内されるようになっている。
【0062】
金属テープ11は隙間18に案内されることにより、その送り込み位置すなわち引き抜きダイス4の半径方向の位置と、その送り込み角度が位置決めされる。
【0063】
送り込み角度とは、送り方向Pに垂直な断面で見た場合に、金属テープ11の角度をいい、引き抜きダイス4の中心に関して2等辺三角形の底辺に金属テープ11が送り込まれるのが好ましい。
【0064】
一方、上半月部材16には、連結軸ワイヤ10の案内管19が固定されている。
【0065】
案内管19の先端は引き抜きダイス4の外部に突出してラッパ状をなし、連結軸ワイヤ10を受け入れやすいようになっている(図1参照)。
【0066】
案内管19に案内されることにより、連結軸ワイヤ10の送り込み位置すなわち引き抜きダイス4の半径方向の位置が位置決めされる。
【0067】
好ましくは、連結軸ワイヤ10は、送り方向Pに垂直な断面で見た場合に、引き抜きダイス4の中心に送り込まれる。
【0068】
上半月部材16と下半月部材17の送り方向Pの後方(下流)には、引き抜き部20が設けられている。
【0069】
引き抜き部20は、内面が漏斗状になっており、この内面に案内されることにより、金属テープ11は連結軸ワイヤ10を内包した状態で金属管14に引き抜かれる。
【0070】
金属テープ11の特に送り込み角度が引き抜き部20の直前の位置決め手段の隙間18によって位置決めされることにより、引き抜き部20を出た金属管14の突き合わせシームは、金属管14の周方向の一定位置に位置している。
【0071】
前述したように、引き抜きダイス4は、所定の角度ごとに回転するが、金属テープ11の送り込み位置と送り込み角度が引き抜きダイス4に関して固定されているため、金属管14の突き合わせシームは、引き抜きダイス4に関して一定の位置から引き出される。
【0072】
本発明では、引き抜きダイス4を出た後、回転軸対称体成形金型5に入る前の金属管14の突き合わせシームに対してレーザー溶接を行う。
【0073】
TIG溶接トーチを有する場合は、TIG溶接を行う。
【0074】
図1に示されているように、レーザー溶接トーチ6は、引き抜きダイス4と回転軸対称体成形金型5の間に設けられ、本実施形態では、地面あるいは台座に対して一定位置に固定され、引き抜きダイス4から引き出される金属管14に向けてレーザーを照射するように構成されている。
【0075】
レーザー溶接トーチ6は、金属管14すなわち引き抜きダイス4の回転と同期し、金属管14の突き合わせシームが所定の位置に回転したときに、金属管14の突き合わせシームにレーザーを照射し、該突き合わせシームを溶接するように構成されている。
【0076】
なお、同期のための制御は、特に図示しないが、ワイヤ7の送りと、金属テープ11の送りと、引き抜きダイス4とワイヤ送り部2の回転と、レーザーの照射と、連結軸金型3と回転軸対称体成形金型5の咬合動作を駆動する装置を全体として制御する当業者が適宜設け得る制御装置によって制御することができる。制御は、全機構のそれぞれをソフトウェア的に制御しなくても、ワイヤ7や金属テープ11の送りの機構と、引き抜きダイス4とワイヤ送り部2の回転機構の機械的な連動と、レーザー溶接トーチやTIG溶接トーチの動力投入を制御するソフトウェア的な連動とを組み合わせることもできる。
【0077】
本実施形態では、レーザー溶接トーチ6によるレーザーの照射は、断続的に行うのが好ましい。
【0078】
図3と図4は、レーザーによる溶接の例を示している。
【0079】
図3と図4において、符号21はボールチェーン、符号22は回転軸対称体、符号23は連結軸をそれぞれ示している。
【0080】
符号24は回転軸対称体22の突き合わせシームを示している。
【0081】
符号25,26はレーザー溶接による溶接部を示している。
【0082】
図3の例は、金属管14の段階で、後に隣接する2つの回転軸対称体22の継目となる場所の両側に、離れて2つの溶接部25を設け、しかる後に、回転軸対称体22を形成したものである。
【0083】
図4の例は、金属管14の段階で、後に隣接する2つの回転軸対称体22の継目にまたがるように、若干長い溶接部26を設け、しかる後に、回転軸対称体22を形成し、回転軸対称体22の継目で溶接部26を分割して、隣接する2つの回転軸対称体22の連結軸23のための開口部近傍に、溶接部を設けたものである。
【0084】
図1に示したように、引き抜きダイス4と回転軸対称体成形金型5の間で、金属管14の突き合わせシームにレーザーを照射するようにすると、金属管14の突き合わせシームは半径方向の距離が一定しているため、レーザーの照射の焦点距離が一定しており、正確にレーザーのエネルギーを集中させることができる。
【0085】
このことは、回転軸対称体成形金型5の後でレーザーを照射する場合と比較すれば明らかである。
【0086】
すなわち、回転軸対称体成形金型5の後では、回転軸対称体のくびれにより、レーザーを照射する部位の半径方向の位置が変化し、正確にレーザーのエネルギーを集中させることが困難である。
【0087】
また、本発明によれば、位置決め手段の上半月部材16と下半月部材17により、引き抜きダイス4に対して連結軸ワイヤ10の送り込み位置と、金属テープ11の送り込み位置と送り込み角度が一定に位置決めされているため、引き抜きダイス4から引き出される金属管14の突き合わせシームの周方向位置が引き抜きダイス4に対して常に一定である。
【0088】
すなわち、金属管14のねじれにより、突き合わせシームの周方向位置がずれることがないのである。
【0089】
引き抜きダイス4の回転、すなわち金属管14の回転と、レーザー溶接トーチ6のレーザー照射を同期させることにより、金属管14の周方向の突き合わせシームの位置に正確にレーザーを照射することができる。
【0090】
レーザー照射のタイミングと、金属管14の送りのタイミングとを同期させることにより、図3,4に示したように、連結軸23が挿通する回転軸対称体22の開口部近傍にレーザーによる溶接部25,26を設けることができる。
【0091】
図3,4のように、連結軸23が挿通する回転軸対称体22の開口部近傍にレーザーによる溶接部25,26を設けた場合は、肉厚が薄い金属テープからボールチェーンを形成しても、溶接によって効果的に許容引張荷重を増大させることができ、加工が容易かつ廉価で合理的なボールチェーンを得ることができる。
【0092】
図1の例では、レーザー溶接トーチ6は、地面あるいは台座に関して一定の位置に固定され、引き抜きダイス4の回転と同期し、金属管14の突き合わせシームが所定の位置に回転したときにレーザーを照射するようにしていたが、レーザー溶接トーチ6を引き抜きダイス4に固定し、引き抜きダイス4とともに回転するようにすることもできる。
【0093】
この場合、引き抜きダイス4から引き出される金属管14の突き合わせシームにレーザーを照射するように、レーザー溶接トーチ6を引き抜きダイス4に固定する。
【0094】
この実施形態によれば、レーザーを断続的あるいは連続的に突き合わせシームに照射することができる。レーザー溶接トーチ6によって連続的に溶接を行うようにすれば、金属管14の突き合わせシームの全長に渡って溶接部を設けることもできる。
【0095】
金属管14の突き合わせシームの全長を溶接するようにすれば、より頑丈なボールチェーンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の製造方法を実施するためボールチェーン製造装置の全体構成を示した構成図。
【図2】本発明のボールチェーン製造装置の引き抜きダイスの位置決め手段と引き抜き部を拡大して示した斜視図。
【図3】本発明によるレーザー溶接の一例を示したボールチェーンの一部を切断して示した斜視図。
【図4】本発明によるレーザー溶接の他の一例を示したボールチェーンの一部を切断して示した斜視図。
【図5】従来のボールチェーンの一部を切断して示した斜視図。
【符号の説明】
【0097】
1 ボールチェーン製造装置
2 ワイヤ送り部
3 連結軸金型
4 引き抜きダイス
5 回転軸対称体成形金型
6 レーザー溶接トーチ
7 ワイヤ
8 ラック
9 ピニオン
10 連結軸ワイヤ
11 金属テープ
12 ラック
13 ピニオン
14 金属管
15 ボールチェーン構造体
16 上半月部材
17 下半月部材
18 隙間
19 案内管
20 引き抜き部
21 ボールチェーン
22 回転軸対称体
23 連結軸
24 突き合わせシーム
25 溶接部
26 溶接部
31 ボールチェーン
32 金属球
33 連結軸
33a 連結頭部
34 突き合わせシーム
P 送り方向
R 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属片を丸めて中空の金属製回転軸対称体に形成し、両端部に連結頭部を有する連結軸によって前記回転軸対称体を鎖状に連結したボールチェーンにおいて、
前記回転軸対称体は、回転軸対称体の回転軸の方向に突き合わせシームを有し、前記突き合わせシームの少なくとも一部に溶接部分を有することを特徴とするボールチェーン。
【請求項2】
前記回転軸対称体は、中空の球であることを特徴とする請求項1記載のボールチェーン。
【請求項3】
前記突き合わせシームの溶接部分は、前記連結軸が挿通する前記回転軸対称体の開口部の近傍に位置することを特徴とする請求項1記載のボールチェーン。
【請求項4】
金属ワイヤを連結軸金型に通して連結軸が線状につながった連結軸ワイヤに成形する工程と、
前記連結軸ワイヤの送り込み位置と金属テープの送り込み位置と送り込み角度を位置決めする位置決め手段を有する引き抜きダイスに、金属テープと前記連結軸ワイヤを送給する工程と、
前記金属テープと前記連結軸ワイヤを前記連結軸ワイヤに関して所定の角度ずつ回転させ、前記引き抜きダイスにより、前記金属テープを前記連結軸ワイヤを内包した状態で金属管に引き抜く工程と、
前記金属管の突き合わせシームが所定の位置に回転したときに、前記金属管の回転に同期して前記突き合わせシームにレーザーを照射することにより、あるいはTIG溶接を行うことにより、前記金属管の突き合わせシームを溶接する工程と、
回転軸対称体成形金型に前記金属管と前記連結軸ワイヤを送給し、前記金属管と前記連結軸ワイヤを所定の角度ずつ回転させ、前記金属管を各回転軸対称体が前記連結軸ワイヤの各連結軸の連結頭部を内包する状態で複数の回転軸対称体が線状につながったボールチェーン構造体に成形する工程と、
前記ボールチェーン構造体の各回転軸対称体の接合部と前記連結軸ワイヤの各連結軸の接合部を切断する工程と、を有することを特徴とするボールチェーン製造方法。
【請求項5】
前記レーザー照射あるいは前記TIG溶接のタイミングと前記金属管の送りのタイミングとピッチは、前記突き合わせシームが、前記連結軸が挿通する各回転軸対称体の開口部の近傍で溶接されるように、互いに同期されていることを特徴とする請求項4に記載のボールチェーン製造方法。
【請求項6】
金属ワイヤを連結軸金型に通して連結軸が線状につながった連結軸ワイヤに成形する工程と、
前記連結軸ワイヤの送り込み位置と金属テープの送り込み位置と送り込み角度を位置決めする位置決め手段を有する引き抜きダイスに、金属テープと前記連結軸ワイヤを送給する工程と、
前記金属テープと前記連結軸ワイヤを前記連結軸ワイヤに関して所定の角度ずつ回転させ、前記引き抜きダイスにより、前記金属テープを前記連結軸ワイヤを内包した状態で金属管に引き抜く工程と、
前記引き抜きダイスの回転と共に回転し、前記引き抜きダイスと相対的に一定位置から溶接を行うレーザー溶接トーチまたはTIG溶接トーチにより、前記金属管の突き合わせシームを溶接する工程と、
回転軸対称体成形金型に前記金属管と前記連結軸ワイヤを送給し、前記金属管と前記連結軸ワイヤを所定の角度ずつ回転させ、前記金属管を各回転軸対称体が前記連結軸ワイヤの各連結軸の連結頭部を内包する状態で複数の回転軸対称体が線状につながったボールチェーン構造体に成形する工程と、
前記ボールチェーン構造体の各回転軸対称体の接合部と前記連結軸ワイヤの各連結軸の接合部を切断する工程と、を有することを特徴とするボールチェーン製造方法。
【請求項7】
前記金属管の突き合わせシームを連続してあるいは断続的に溶接することを特徴とする請求項4または請求項6に記載のボールチェーン製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−166114(P2009−166114A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10267(P2008−10267)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(594077080)株式会社並木製作所 (7)
【Fターム(参考)】