ボール
【課題】芯部と表皮材との間の発泡材の発泡状態を均一に近づけることにより、ボールの歪みを抑制して、使用感の良好なボールを得る。
【解決手段】ボール1は、気体が注入される芯部としてのチューブ2と、チューブ2の外側に設けられた発泡材11と、発泡材11の外側に設けられた表皮材10とを備えている。発泡材11は、発泡材料が機械発泡されてなるものとする。
【解決手段】ボール1は、気体が注入される芯部としてのチューブ2と、チューブ2の外側に設けられた発泡材11と、発泡材11の外側に設けられた表皮材10とを備えている。発泡材11は、発泡材料が機械発泡されてなるものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、球技等で使用されるボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、サッカーボール等は、チューブからなる芯部と、芯部を覆うように設けられた複数の表皮パネルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。各表皮パネルは、ボールの最外層を構成する樹脂製の表皮材と、表皮材の裏側に設けられた発泡材とを有している。発泡材は、ポリウレタンフォームで構成されている。
【0003】
上記特許文献1には、表皮パネルの製造方法が開示されている。すなわち、まず、表皮材を予め成形しておき、この表皮材を発泡材成形用の成形型のキャビティ内に配置する。そして、そのキャビティにポリウレタンフォーム材料を注入する。この発泡材料は、キャビティ内で熱や圧力等の雰囲気環境によって化学変化を起こして発泡しながら膨張して表皮材と一体化し、これにより、表皮パネルが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−174256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のように発泡材を成形する際にポリウレタンフォーム材料をキャビティ内で発泡させるようにした場合、発泡の過程でポリウレタンフォーム材料が曝される雰囲気環境は部位によって異なることになる。また、雰囲気環境を常に一定に保つことは難しい。よって、ポリウレタンフォーム材料の化学変化の進行度合いが部位によって異なったり、成形サイクル毎に異なったりして、発泡材の発泡状態を均一化するのは困難である。発泡状態が均一に近い状態でないと、ボールに歪みが生じるとともに、ボールの部位によって硬さが異なることになる。そのため、ボールの外形状が設計通りにならず使用者にとって扱い難いものになるとともに、使用者が例えば蹴った場合に、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じに違和感を感じたり、リバウンドが不自然になったりして、ボールの使用感が悪化する。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、芯部と表皮材との間にある発泡材の発泡状態を均一に近づけることにより、ボールの歪みを抑制するとともに、硬さの均一化を図り、これによって使用感の良好なボールを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、発泡材料を機械発泡させることによって発泡材を構成するようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、芯部と、該芯部の外側に設けられた発泡材と、該発泡材の外側に設けられた表皮材とを備えたボールであって、上記発泡材は、熱硬化エラストマーフォーム材が機械発泡されてなる独立気泡構造を有する構成とする。
【0009】
この構成によれば、芯部と表皮材との間の発泡材が機械発泡したものであるため、従来の化学発泡させた場合のように雰囲気環境の影響を受け難く、よって、発泡材の発泡状態は全体として見たときに均一に近い状態となる。これにより、ボールの歪みが抑制されるとともに、ボールの部位によって硬さが異なるのを回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、芯部と表皮材との間の発泡材を機械発泡してなるものとしたので、ボールの歪みを抑制できるとともに、ボールの部位によって硬さが異なるのを回避できる。これにより、ボールを例えば蹴った場合に、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じが自然になるとともに、リバウンドも自然になり、使用感の良好なボールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係るボールの外観図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】表皮材の本体部を成形する成形型の断面図である。
【図4】表皮材の本体部を成形した状態の図3相当図である。
【図5】表皮材の本体部を脱型した状態の図3相当図である。
【図6】表皮材の突出壁部を成形する成形型の断面図である。
【図7】表皮材の本体部を保持した状態の図6相当図である。
【図8】表皮材の突出壁部を成形した状態の図6相当図である。
【図9】表皮材を脱型した状態の図6相当図である。
【図10】発泡材料供給装置の構成図である。
【図11】発泡材を成形する成形型の断面図である。
【図12】発泡材の成形途中の図11相当図である。
【図13】発泡材を成形した状態の図11相当図である。
【図14】実施形態1の変形例1に係る図2相当図である。
【図15】実施形態1の変形例2に係る図2相当図である。
【図16】実施形態1の変形例3に係る図2相当図である。
【図17】実施形態1の変形例4に係る図2相当図である。
【図18】実施形態1の変形例5に係る図2相当図である。
【図19】実施形態1の変形例6に係る図2相当図である。
【図20】実施形態1の変形例7に係る図2相当図である。
【図21】実施形態1の変形例8に係る図2相当図である。
【図22】実施形態1の変形例9に係る図2相当図である。
【図23】実施形態1の変形例10に係る表皮パネルの平面図である。
【図24】図23のXXIV−XXIV線における断面図である。
【図25】実施形態2の図2相当図である。
【図26】チューブの補強材表面に発泡材料を塗布している状態を説明する図である。
【図27】チューブの補強材表面に発泡材を設けた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るボール1を示すものである。このボール1は、球技用のものであり、図2に示すように、芯部としてのチューブ2と、該チューブ2の外周面を覆う表皮を構成する複数の表皮パネル3、3、…とを備えている。この実施形態では、表皮パネル3の枚数を12枚としており、従って、各表皮パネル3の面積は、ボール1の総表面積の8%以上となっている。また、ボール1の直径は、16cm以上25cm以下に設定されている。尚、表皮パネル3の数や、ボール1の直径は上記に限られるものではない。
【0014】
上記チューブ2は、例えば、ブチルゴム又はラテックスゴム等の空気非透過性を有する弾性材料で構成されており、図1に示すように、周知の構造のゴム製バルブ4を有している。このバルブ4は、表皮パネル3を貫通してボール1の外面に露出している。バルブ4を介してチューブ2内に圧縮空気が注入されるようになっている。バルブ4の構造は上記に限定されるものではない。
【0015】
また、チューブ2には、補強層5が設けられている。補強層5は、チューブ2の外周面に密着している。この補強層5は、チューブ2に接着された布や、糸で構成されている。尚、補強層5は省略してもよいし、布や糸以外の部材で構成してもよい。
【0016】
上記表皮パネル3の形状は、五角形又は六角形状とされている。表皮パネル3は、全体として、チューブ2の外周面形状に沿うように湾曲形状をなしている。この表皮パネル3は、ボール2の最外層を構成する表皮材10と、表皮材10の裏側に設けられた発泡材11とを有する2層構造となっている。つまり、ボール1は、チューブ2と、チューブ2の外側に設けられた発泡材11と、発泡材11の外側に設けられた表皮材10とを備えた構造となっている。
【0017】
表皮材10は、例えば、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の樹脂材を射出成形してなる射出成形品である。表皮材10は、湾曲した板状の本体部10aと、本体部10aの周縁部から裏側へ向けて突出する突出壁部10bとが一体化されてなる。本体部10aの厚みは、その全体に亘って同じになっており、例えば、0.01mm〜3.00mmの範囲で設定されている。突出壁部10bは、表皮材10の全周に亘って連続した環状をなしている。突出壁部10bの厚みは、本体部10aの厚みと同じに設定されている。突出壁部10bの突出方向先端部は、チューブ2の補強層5に接している。尚、本体部10aと突出壁部10bとは、同じ樹脂材料で形成してもよいし、異なる樹脂材料で形成してもよい。異なる樹脂材料で形成する場合には、突出壁部10bを形成する樹脂材料の方を柔らかくするのが好ましい。こうすることにより、突出壁部10bの剛性が低下して、ボール1の硬さを全体に亘って均一に近づけることが可能になる。
【0018】
発泡材11は、ウレタン樹脂等を含む発泡材料を機械発泡させてなるものであり、表皮材10の本体部10aの裏面と突出壁部10bの内面に接着されていて、表皮材10と一体化している。発泡材11の厚みは、全体に亘って、突出壁部10bの突出高さと略同じに設定されていて、発泡材11の裏面は、表皮材10の本体部10aの形状と同様な湾曲形状となっている。尚、上記機械発泡とは、気体を物理的手段で原料に導入して細胞様の構造を得るように当該原料を発泡させることをいい、気体を原料に導入する手段としては、以下に示す加圧手段以外にも、例えば攪拌手段等がある。
【0019】
発泡材11の裏面は、チューブ2の補強層5に接着剤(図示せず)によって接着されている。また、チューブ2上で隣り合う表皮パネル3、3のうち、表皮材10の突出壁部10bの外面同士は、接着剤(図示せず)によって接着されている。
【0020】
次に、上記表皮パネル3を製造する製造装置について説明する。この製造装置は、表皮材10の本体部10aを成形する本体部成形装置と、表皮材10の突出壁部10bを成形する突出壁部成形装置と、発泡材11を成形する発泡材成形装置とで構成されている。
【0021】
上記本体部成形装置は、射出成形機(図示せず)と、成形型20(図3に示す)とを備えている。射出成形機は、樹脂材料を混練して溶融状態にしてノズルから射出するように構成された周知のものである。一方、成形型20は、上下に対向するように配置された上型21及び下型22と、上型21を上下方向に移動させて下型22に対し接離させる型駆動装置(図示せず)とを備えている。上型21の下面には、本体部10aの表面側を成形する表面側成形面21aが形成されている。この表面側成形面21aは、表皮材10の湾曲形状を形成するために上方へ湾曲している。下型22の上面には、本体部10aの裏面側を成形する裏面側成形面22aが形成されている。この裏面側成形面22aも同様に湾曲している。上型21と下型22とを型締めすると、表面側成形面21aと裏面側成形面22aとによってキャビティ(図示せず)が形成されるようになっている。図示しないが、下型22には、射出成形機のノズルに連通するランナが形成されている。ランナの下流端は、キャビティに開口するゲートに接続されている。
【0022】
上記突出壁部成形装置は、本体部成形装置と同様な射出成形機と、成形型25(図6に示す)とで構成されている。成形型25は、上型26及び下型27と、型駆動装置(図示せず)とを備えている。上型26の下面には、本体部10aの表面形状に対応した湾曲面26aが形成されている。湾曲面26aの周縁部は、本体部10aの周縁部よりも外方へ延びるように形成されており、この湾曲面26aの周縁部によって突出壁部10bの一部が成形されるようになっている。下型27の上面には、本体部10aの裏面形状に対応した湾曲面27aが形成されている。この湾曲面27aは、下型27の上面の外周部に比べて一段上がっており、この段差部分によって突出壁部10bの残りの部位が成形されるようになっている。上型26と下型27とを型締めすると、本体部10aが両湾曲面26a、27aによって表裏方向に挟持された状態となり、さらに、その本体部10aの周囲を囲むように突出壁部10b用のキャビティが形成されるようになっている。下型27には、ランナ及びゲートが設けられている。
【0023】
尚、上記成形型20、25は、左右方向に接離する型で構成してもよい。また、ランナ及びゲートは、どちらの型に設けられていてもよい。また、ゲート及びランナの位置や形状は、任意に設定することができる。
【0024】
上記発泡材成形装置は、図10に示す発泡材料供給装置30と、図11に示す成形型50とで構成されている。発泡材料供給装置30は、気体供給装置31、材料供給装置32、気体導入装置33、制御ユニット34、加圧装置35、分散装置36及び吐出装置37とで構成されている。
【0025】
気体供給装置31は、コンプレッサやボンベAに接続される接続管31aと、周知の圧力調整弁31bと、気体流量計31cと、気体供給管31dとを備えている。接続管31aに導入された圧縮気体が圧力調整されてから、気体供給管31dを流れるようになっている。この気体供給装置31により供給される気体の圧力は、例えば、0.1〜5.0kg/cm2の低圧領域で調整可能となっている。また、供給する気体の種類としては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス等であるが、好ましくは空気である。
【0026】
材料供給装置32は、フォロアプレート式のプランジャーポンプ32aと、プランジャーポンプ32aの吐出管に接続された材料供給管32bとを備えている。プランジャーポンプ32aの吸入管は、熱硬化性発泡ウレタン材料が貯留された容器Bに挿入されている。プランジャーポンプ32aによって、容器B内の熱硬化性発泡ウレタン材料が材料供給管32bに送出されるようになっている。このウレタン材料の送出圧力は、例えば、100〜300kg/cm2の高圧領域で調整可能となっている。
【0027】
気体導入装置33は、第1ピストンポンプ33a及び第2ピストンポンプ33bと、弁33c〜33hと、モーターM1、M2とを備えている。第1及び第2ピストンポンプ33a、33bは、それぞれ、モーターM1、M2によってピストンが往復駆動されることにより、吸入行程と吐出行程とを行うようになっている。気体供給管31dの下流側は2つに分岐しており、各々が第1及び第2ピストンポンプ33a、33bの吸入管に接続されている。また、材料供給管32bの下流側も2つに分岐しており、各々が第1及び第2ピストンポンプ33a、33bの吸入管に接続されている。従って、気体供給管31dを流れる気体及び材料供給管32bを流れるウレタン材料は、第1及び第2ピストンポンプ33a、33bに導入されるようになっている。気体供給管31dの分岐部よりも下流側と、材料供給管32bの分岐部よりも下流側とには、それぞれ、弁33c〜33fが設けられている。また、第1及び第2ピストンポンプ33a、33bの吐出管には、それぞれ、弁33g、33hが設けられている。
【0028】
モーターM1、M2及び弁33c〜33hは、制御ユニット34によって制御されるようになっている。具体的には、第1及び第2ピストンポンプ33a、33bのシリンダー内に、吸入行程で気体を流入させ、その後、吸入行程の後にウレタン材料を流入させるようにし、ウレタン材料の流入が終了したら、吐出行程に移行して気体及びウレタン材料を吐出管に送出するようになっている。
【0029】
加圧装置35は、第1ピストンポンプ35a及び第2ピストンポンプ35bと、弁35c〜35fと、モーターM3、M4とを備えている。第1及び第2ピストンポンプ35a、35bは、それぞれ、モーターM3、M4によってピストンが往復駆動されて、吸入行程と吐出行程とが行われるようになっている。弁35cは、第1ピストンポンプ35aの吸入管に設けられ、弁35dは、第2ピストンポンプ35bの吸入管に設けられている。また、弁35eは、第1ピストンポンプ35aの吐出管に設けられ、弁35fは、第2ピストンポンプ35bの吐出管に設けられている。
【0030】
モーターM3、M4及び弁35c〜35fは、上記制御ユニット34によって制御されるようになっている。具体的には、第1ピストンポンプ35aを作動させるときには、まず、弁35cを開いて弁35eを閉じた状態で、ピストンを動かして吸入行程として気体導入装置33から送られてきた混合物をシリンダー内に吸入させる。この状態で、弁35cを閉じて弁35eを開いた状態で、ピストンを動かして吐出行程としてシリンダー内の混合物を吐出管に送出するようになっている。第2ピストンポンプ35bも同様に動作する。第1及び第2ピストンポンプ35a、35bからの混合物の吐出圧力は、150kg/cm2以上とされている。第1及び第2ピストンポンプ35a、35bからの混合物の吐出圧力及び流量は、制御ユニット34からの信号によって変更可能となっている。また、制御ユニット34には、図示しないが、各種設定を行うための操作パネルが設けられている。
【0031】
分散装置36は、吐出管に接続された分散用管36aと、分散用管36aを開閉する弁36bとを備えている。分散用管36aは、内径が10mm以下の細い管であり、長さは10m程度に設定されている。
【0032】
吐出装置37は、分散装置36の分散用管36aの下流側に接続された吐出用管37aと、吐出用管37aの下流側に設けられた弁内蔵型のノズル37bとを備えている。尚、上記した発泡材料供給装置30は、一例であり、各部を変更して用いることも可能である。
【0033】
一方、成形型50は、図11に示すように、上型51及び下型52と、加熱装置53と、型駆動装置(図示せず)とを備えている。上型51の下面には、発泡材11の裏面を成形する裏面成形面51aが形成されている。裏面側成形面51aは、発泡材11の湾曲形状を形成するために下方へ湾曲している。下型52の上面には、表皮材10の本体部10aの表面及び突出壁部10bの外面に沿って延びる凹面52aが形成されており、この凹面52aによって表皮材10が保持されるようになっている。加熱装置53は、上型51に配設される上型加熱器53aと、下型52に配設される下型加熱器53bと、これら加熱器53a、53bに接続された制御ユニット53cとで構成されている。上型加熱器53aは、上型51に形成された孔部内に収容されており、例えば、電熱線ヒーター等で構成されている。下型加熱器53bも同様である。これら加熱器53a、53bは、制御ユニット53cによって制御されて、上型51の裏面成形面51a及び下型52の凹面52aの温度を所定範囲で調整するようになっている。
【0034】
次に、上記のように構成された製造装置によって表皮パネル3を製造する要領について説明する。まず、図3〜図5に示すように、本体部成形装置によって表皮材10の本体部10aを成形する。すなわち、上型21及び下型22を型締めした状態で、射出成形機のノズルから溶融樹脂材料をキャビティに射出する(図4参照)。キャビティ内の樹脂材料が固化した後に型開きすると、表皮材10の本体部10aが得られる(図5参照)。
【0035】
次いで、図6に示すように、本体部10aを突出壁部成形装置の下型27の湾曲面27aに載置し、図7に示すように、上型26及び下型27を型締めした状態で、射出成形機のノズルから溶融樹脂材料をキャビティに射出する。すると、図8に示すように、溶融樹脂材料が、本体部10aの周縁部に溶着した状態で成形され、図9に示すように、固化後に型開きすると、本体部10aと突出壁部10bとが一体化した表皮材10が得られる。このように、本体部10a及び突出壁部10bを射出成形する際、成形型20、25のキャビティには、成形に必要なだけの樹脂材料を供給すればよいので、樹脂材料の無駄が殆どない。また、溶融樹脂材料を成形型20、25で成形することで、残留応力が生じ難く、高精度な表皮材10を得ることが可能になる。
【0036】
しかる後、図11に示すように、上記表皮材10を発泡材成形装置の下型52の凹面52aに嵌める。このときの上型51及び下型52の温度は、後述の発泡材料Cが熱硬化する温度まで上昇しており、例えば、約80℃となっている。
【0037】
そして、次のようにして発泡材料Cを表皮材10の裏面に供給する。
【0038】
すなわち、図10に示すように、発泡材料供給装置30においては、気体供給装置31及び材料供給装置32により、気体及びウレタン材料が、気体導入装置33の第1及び第2ピストンポンプ33a、33bに供給される。ウレタン材料としては、例えば、サンスター技研株式会社製のペースト状の自在成型エラストマーフォーム材(ペンギンフォーム)を用いることができる。このフォーム材は、流動性のある1液タイプである。尚、ウレタン材料は、上記したものに限られず、機械発泡が可能な材料であれば特に限定されない。
【0039】
気体導入装置33の第1及び第2ピストンポンプ33a、33bは別々に動作する。まず、弁33cを開いて弁33d、33gを閉じた状態にしてから、第1ピストンポンプ33aのシリンダー内に、吸入行程で気体を所定量流入させる。その後、弁33cを閉じて弁33dを開いてから、吸入行程の後にウレタン材料を流入させる。ウレタン材料を所定量流入させたら、弁33c、33dを共に閉じたまま、弁33gを開いて吐出行程に移行し、気体及びウレタン材料を吐出管に送出する。第1ピストンポンプ33aが吐出行程に移行したら、第2ピストンポンプ33bのシリンダに同様にして気体及びウレタン材料を流入させた後、気体及びウレタン材料を吐出管に送出する。つまり、気体導入装置33は、バッチ式に作動するようになっており、気体とウレタン材料との混合物は、第1及び第2ピストンポンプ33a、33bから交互に吐出されるようになっている。また、各ピストンポンプ33a、33bのシリンダに流入する気体とウレタン材料との比率は、気体供給装置31及び材料供給装置32による供給圧力や、弁33c〜33fの開閉タイミング及び開閉量によって任意に調整可能となっている。
【0040】
第1及び第2ピストンポンプ33a、33bから吐出された混合物は、加圧装置35の第1及び第2ピストンポンプ35a、35bに吸入される。すなわち、弁35cを開いて弁35e、35dが閉じた状態で第1ピストンポンプ35aが吸入行程になると、混合物がシリンダに吸入される。そして、弁35eを開いて弁35cを閉じた状態で第1ピストンポンプ35aが吐出行程に移行すると、混合物が吐出される。このときの圧力は、150kg/cm2以上に設定され、また、流量は、100〜1000ml/min程度に設定されている。第2ピストンポンプ35bも同様にして混合物を吸入し吐出する。第1及び第2ピストンポンプ35a、35bは、交互に作動する。
【0041】
加圧装置35の第1及び第2ピストンポンプ35a、35bから吐出された混合物は、分散装置36の分散用管36aに流入する。分散用管36aに流入した混合物の圧力は、150kg/cm2以上で、流量は、100〜1000ml/min程度に設定されているので、混合物が分散用管36aを流通する間に、気体が微細な気泡となってウレタン材料中に略均一に分散する。これにより、本発明の発泡材料Cが得られる。この気泡の平均粒径は、約0.01mm〜0.03mm程度の微細なものである。
【0042】
分散装置36から送出された発泡材料Cは、吐出装置37の吐出用管37aを経て、ノズル37bから吐出されて、図11に示すように表皮材10の裏面に供給される。発泡材料Cは、ノズル37cから吐出されることで、大気開放された状態となる。よって、ノズル37cから吐出された後の単位質量当たりの体積は、吐出される前の単位質量当たりの体積よりも大きくなるが、これは化学変化による発泡ではないため、大気開放された直後に体積が大きくなってから以後は、体積の変化は殆ど無い。尚、ノズル37bから吐出された後の単位質量当たりの体積を、ノズル37bから吐出される前の単位質量当たりの体積で除した値が発泡倍率であり、この発泡倍率は、気体とウレタン材料との混合比率によって任意に設定できるようになっている。
【0043】
各表皮材10の裏面に供給する発泡材料Cの量は、上述の如く発泡材料Cが吐出後に殆ど体積変化しないものなので、発泡材11の体積と略同じ量である。
【0044】
上記のようにして発泡材料Cを表皮材10の裏面に供給した後、図12に示すように、上型51と下型52とを型締めすると、発泡材料Cは、上型51の裏面成形面51aで成形されるとともに、上型51及び下型52によって加熱されて硬化して、図13に示すように、発泡材11が得られる。この発泡材11の成形時に、発泡材11は、表皮材10に接着された状態となる。このように発泡材料Cを機械発泡させて発泡材11を得るようにしているので、従来の化学発泡させた場合のように雰囲気環境の影響を受け難く、よって、発泡材11の発泡状態は全体として見たときに均一に近い状態となる。また、発泡材料C中には、気体が微細な気泡となって分散して存在しているので、発泡材11は、その気泡同士が壁で仕切られていて繋がってない、いわゆる独立気泡構造を有するものとなる。
【0045】
そして、上型51及び下型52を型開きすると、表皮パネル3が得られる。以上が、表皮パネル製造工程である。
【0046】
尚、発泡材料Cを表皮材10の裏面に供給する場合には、例えば、表皮材10の裏面中心部近傍から外周部へ向けて渦巻きを描くように供給してもよい。こうすることで、発泡材料Cの中に空気が入り難くなり、発泡材11をより均一な発泡状態とすることが可能になる。発泡材料Cは、表皮材10の裏面外周部から中心部へ向けて渦巻きを描くように供給してもよい。発泡材料Cの供給方法は、上記したものに限定されるものではない。
【0047】
その後、表皮パネル接合行程に移って、表皮パネル3をチューブ2の補強層5に接着するとともに、隣り合う表皮パネル3、3の突出壁部10b、10b同士を接着する。以上のようにしてボール1を得ることができる。
【0048】
以上説明したように、この実施形態1によれば、チューブ2と表皮材10との間の発泡材11を機械発泡してなるものとしたので、発泡材11の発泡状態を全体として均一に近い状態とすることができる。これにより、ボール1の歪みを抑制できるとともに、ボール1の部位によって硬さが異なるのを回避できる。よって、ボールを例えば蹴った場合に、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じが自然になるとともに、リバウンドも自然になり、使用感の良好なボール1を得ることができる。
【0049】
また、発泡材11が独立気泡構造を有しているので、例えば雨天時等にボール1が水を吸って重くなってしまうのを抑制でき、天候によらず使用感を良好にできる。また、埃等が発泡材11の内部に入り込むのも抑制できる。また、これらのことにより、ボール1の長寿命化を図ることもできる。
【0050】
また、連続気泡構造のものに比べて、発泡材11中の気泡が独立した小さいものとなる。これにより、例えば蹴ることによって発泡材11が衝撃を受けて、気泡の壁が破れて隣り合う気泡が連通した場合においても、連続気泡構造のものに比べて小さい空間とすることが可能になる。その結果、発泡材11の強度低下が抑制される。また、気泡が小さいものなので、チューブ2や表皮材10への接着面積を広く確保することが可能になり、強い接着力が得られる。これらのことにより、ボール1の耐久性が向上する。
【0051】
また、発泡材11中に小さい気泡が独立して形成されているので、発泡材11の部位による硬度を均一に近づけることが可能になるとともに、各部位の比重も均一に近づき、ボール1の重量を簡単に規定重量にすることが可能になる。上記のように発泡材11の部位による硬度を均一に近づけることで、例えば蹴った際にボール1の飛ぶ方向や、脚へ食い込む感じに違和感を感じなくなる。
【0052】
また、発泡材料Cに空気、炭酸ガス、窒素のいずれかを混合させるようにしたので、製造工程において、安全性が高く、人体や環境への悪影響が無い。また、発泡材11においても、安全性が高く、人体や環境への悪影響が無いものが得られる。
【0053】
また、表皮材10を射出成形品としたことで、例えば、フィルム状の材料から打ち抜いて表皮材を成形する場合に比べて、歩留まりが向上するとともに、寸法精度を高めることができる。
【0054】
また、表皮材10を射出成形してなるものとしたので、無駄な材料が殆ど生じなくなって歩留まりを向上でき、また、表皮材10の寸法精度を高めることができ、扱いやすいボール1を得ることができる。
【0055】
また、表皮材10の突出壁部10bの樹脂を本体部10aの樹脂よりも柔らかくしたので、使用時に突出壁部10bが突っ張り難くなり、よって、表面の硬さが均一に近いボール1を得ることができる。これにより、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じが自然になるとともに、リバウンド特性も自然になり、ボール1の使用感を良好にすることができる。
【0056】
尚、表皮材10の本体部10aと突出壁部10bとは一体成形してもよい。この場合、図14に示す変形例1のように、突出壁部10bの厚みを本体部10aの厚みよりも薄くすることも可能である。突出壁部10bの厚みは、本体部10aの1/2〜1/3の範囲で設定するのが好ましい。これにより、突出壁部10bの剛性が低下して、突出壁部10bが突っ張り難くなり、ボール1の硬さが全体に亘って均一に近づくようになる。変形例1において、本体部10aと突出壁部10bとを別々に成形するようにしてもよい。
【0057】
また、図15に示す変形例2のように、表皮材10の突出壁部10bの突出高さを低くして、突出壁部10bの先端部をチューブ2の補強層5から離すようにしてもよい。この変形例2のものでは、突出壁部10bの先端部と補強層5との間に発泡材11が介在することになり、ボール1の硬さが全体に亘って均一に近づくようになる。この変形例2において、突出壁部10bの厚みを本体部10aの厚みよりも薄くしてもよいし、また、本体部10aと突出壁部10bとを別々に成形するようにしてもよい。
【0058】
また、表皮材10の本体部10aの厚みを部位によって変えてもよいし、突出壁部10bの厚みを部位によって変えてもよい。
【0059】
また、図16に示す変形例3のように、発泡材11を、突出壁部10b側の内側部11aと外側部11bとで別々に成形してもよい。この場合、外側部11bを内側部11aよりも柔らかくするのが好ましい。具体的には、発泡材11の外側部11bの発泡倍率を内側部11aの発泡倍率よりも大きくすることや、外側部11bのウレタン材料を内側部11aのウレタン材料よりも柔らかくすることで可能となる。この変形例3の発泡材11を形成する場合には、図示しないが、外側部11bを成形する成形型と、内側部11aを成形する成形型とを用意して、外側部11bと内側部11aとを別々に成形する。また、外側部11bと内側部11aとは接着してもよいし、熱溶着してもよい。また、外側部11bと内側部11aとは、ウレタン材料以外の材料で構成してもよい。また、外側部11bと内側部11aとは、異なる材料で構成してもよく、硬さも任意に設定することができる。
【0060】
また、図17に示す変形例4のように、発泡材11が多数のビーズ55を有するようにしてもよい。このビーズ55は、成形前に発泡材料Cに混ぜておくことで、発泡材11に分散させることができる。ビーズ55の比重を発泡材11の比重よりも小さくすることで、ボール1の重量を軽くすることができ、また、逆に、ビーズ55の比重を発泡材11の比重よりも大きくすることで、ボール1の重量を重くすることができる。ビーズ55は、例えば、各種樹脂材で構成することができるものである。ビーズ55の個数や大きさ、材質は、任意に設定できる。例えば、発泡材11よりも高反発な材料でビーズ55を形成した場合には、ボール1の反発性を向上させることができ、低反発な材料でビーズ55を形成した場合には、ボール1の反発性を低下させることができる。また、ビーズ55の直径は、例えば、0.01mm〜3.00mmの範囲内で設定するのが好ましい。また、ビーズ55の形状は、球以外であってもよい。
【0061】
また、図18に示す変形例5のように、表皮材10の突出壁部10bを短くした場合に、隣り合う表皮材10の周縁部に対応するように、別体の発泡材12を設けるようにしてもよい。この周縁部の発泡材12を発泡材11よりも柔らかくするのが好ましい。こうすることで、ボール1の突出壁部11bに対応する部位の硬さを、他の部位の硬さに近づけることができる。
【0062】
また、図19に示す変形例6のように、発泡材11の裏面に凹凸部11cを設けてもよい。これにより、チューブ2の補強層5との接触面積が増加して、発泡材11の剥がれや浮きを抑制できる。凹凸部11cは、発泡材11の裏面の一部に設けてもよいし、全面に設けてもよい。
【0063】
また、図20に示す変形例7のように、表皮材10の本体部10aに凹凸部を設けることによって波板形状に形成してもよい。この波板形状は、表皮材10の射出成形時に成形型20によって形成されたものである。このように表皮材10を射出成形することによって、凹部や凸部を容易に形成することができる。また、本体部10aを波板状にすることなく、ボール1の周方向に延びる凸条(凸部)や凹条(凹部)を設けてもよいし、ディンプル形状部(凹部)を設けてもよい。表皮材10の凹部や凸部の形状によって、カーブのかかり易いボール1や飛びやすいボール1とすることもできる。尚、上記のように本体部10aの表側に凹部や凸部を形成することで、それらに対応した形状が本体部10aの裏側にも形成されることになるが、本体部10aが射出成形してなるものであることから、裏側の形状と表側の形状とは異なる形状にすることも可能である。
【0064】
また、図21に示す変形例8のように、発泡材11の裏面に複数の凹部11cを形成してもよい。これにより、ボール1を蹴ったときの脚へ食い込む感じや、リバウンド特性、頭や脚へ与える衝撃といったボール1の使用感を発泡材11によって変更することが可能になる。また、図22に示す変形例9のように、発泡材11に凹部11dを設ける場合に、凹部11dのうち、その底部側(表皮パネル3表面側)の断面を球形にして拡大させてもよい。この変形例8では、発泡材11に凹部11dを形成して柔らかくしながら、補強層5との接着面積を十分に確保することができ、剥がれや浮きを抑制できる。また、凹部11dによってボール1のリバウンド性を調整することも可能である。
【0065】
また、図23に示す変形例10のように、例えば、学校名が印刷されたフィルム56を表皮材10の本体部10aに設けるようにしてもよい。この場合、表皮材10を形成する材料は透光性を有する材料とする。このフィルム56は、表皮材10の成形時、成形型20の裏面側成形面22aに保持しておく(インサート成形する)ことで、フィルム56の表面を樹脂材で覆うことができる。これにより、フィルム56の表面を保護することができ、ボール1の使用によって文字が消えてしまうのを抑制できる。インサートするフィルム56には、学校名に限らず、チーム名、クラブ名、スポーツ協会の認定マーク、大会名の他、ボール1のメーカー名等の各種文字や模様を印刷しておくことが可能である。また、そのようにフィルム56の表面が透光性のある樹脂材で覆われることにより、フィルム56の文字や模様はボール1の表面よりも奥に見えることになって、ボール1のデザインに高級感を与えることができるとともに、ボール1の見栄えを向上できる。また、複数枚のフィルム56を1枚の表皮材10にインサート成形するようにしてもよい。フィルム56の大きさや形状は任意に設定できるものである。また、フィルム56を、表皮材10の表側にインサート成形してもよいし、表皮材56の厚み方向中間部にインサート成形するようにしてもよい。また、フィルム56をインサート成形することなく、表皮材10の表面や裏面に貼り付けるようにしてもよい。
【0066】
変形例1〜10として例示する構造は、任意に組み合わせることが可能である。
【0067】
また、上記実施形態では、発泡材11を表皮材10に一体に成形するようにしているが、これに限らず、例えば、発泡材11を、表皮材10の裏面の形状に対応する形状に予め成形しておき、この発泡材11を表皮材10に接着するようにしてもよい。すなわち、発泡材料をシート材にしておき、このシート材から型を用いて表皮材10の裏面形状に一致する形状の発泡材11を切り抜くようにすることで、表皮材10の裏面の形状に対応する発泡材11を得ることができる。
【0068】
この場合、発泡材11は、チューブ2の外周面形状に沿うように湾曲した形状とするのが好ましい。また、発泡材11をチューブ2の補強層5に接着した後に、表皮材10を発泡材11に接着するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、複数の表皮パネル3を同じ硬さの発泡材11で構成するようにしているが、これら表皮パネル3のうち、例えば1枚のみを他の表皮パネル3よりも硬くしたり、柔らかくしてもよい。これにより、例えば、サッカーボールにおいては、コーナーキックやフリーキックの際に、例えばカーブをかかりやすくすることができる等、ボールコントロールが容易になる。他の表皮パネル3と硬さを変えた表皮パネル3の数は、2枚や3枚であってもよい。また、その表皮パネル3の色や模様を他の表皮パネル3と変えるのが好ましい。
【0070】
また、上記実施形態では、表皮材10の本体部10aと突出壁部10bとを別体の装置で成形するようにしているが、本体部10aと成形型と突出壁部10bの成形型とが一体化した装置を用いて成形するようにしてもよい。
【0071】
(実施形態2)
図25は、本発明の実施形態2に係るボール1の断面図である。この実施形態2に係るボール1は、チューブ2の補強層5に設けた発泡材57が実施形態1のように分割されていない点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態2のボール1について、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0072】
発泡材57は、発泡材料を機械発泡させてなるものであり、チューブ2の補強層5の全体に亘って均一な厚さで連続して設けられており、一体成形されたものである。また、各表皮材10には、実施形態1のような突出壁部が無く、裏面全体が発泡材57の表面に貼り付けられている。
【0073】
この実施形態2のボール1は、次のようにして製造される。すなわち、まず、チューブ2の補強層5の表面全体に、図26に示すようにして、実施形態1の発泡材料供給装置30を用いて発泡材料Cを塗布し、補強層5を発泡材料Cでコーティングした状態にする。その後、図示しないが、約80℃に加熱された加熱炉に入れて発泡材料を硬化させることにより、図27に示すように発泡材57が得られる。これが発泡材形成工程である。
【0074】
その後、発泡材57の表面に表皮材10を接着する。このとき、隣り合う表皮材10、10の周縁部同士も接着しておく。これが表皮材接合工程である。表皮材10は、実施形態1の本体壁部成形装置と同様な装置によって得ることが可能である。
【0075】
この実施形態2のものでも、チューブ2と表皮材10との間の発泡材57を機械発泡してなるものとしたことで、ボールを例えば蹴った場合に、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じが自然になるとともに、リバウンドも自然になり、使用感の良好なボール1を得ることができる。
【0076】
尚、上記実施形態2において、実施形態1の変形例4のように発泡材57がビーズを有するものであってもよい。実施形態2において、表皮材10に波板形状や、凸条、凹条、ディンプル形状を設けてもよい。実施形態2において、表皮材10にフィルムをインサート成形してもよい。
【0077】
また、上記実施形態1、2では、表皮材10が単層構造である場合について説明したが、表皮材10は、多層構造であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態1、2において、表皮材10を透光性のある樹脂材料で形成するようにしてもよい。これにより、発泡材11、57の色がボール1の表面から透けて見えるようになり、ボール1を、深みのあるデザインとすることができる。この場合、発泡材11、57の色を任意に設定することで、発泡材11、57をデザインの一部として利用することができる。また、表皮材10を有色の透明にすることで、発泡材11、57の色と表皮材10の色とが混ざって見えることになり、デザインの自由度が向上する。また、表皮材10に印刷を施す場合には、発泡材11、57の色を利用することで、その印刷色を減らすことが可能になる。また、表皮材10を無色透明とすることで、シースルーデザインのボール1を得ることができる。また、表皮材10の色を、多色が不完全に混ざったようなマーブル模様にしてもよいし、発泡材11、57の色を同様なマーブル模様にしてもよい。また、表皮材11を形成する樹脂材や発泡材11の材料には、蓄光材や、光を反射する反射材、蛍光材等を混ぜてもよい。
【0079】
また、上記実施形態1、2では、ボール1の表皮材10が五角形や六角形の場合について説明したが、これに限らず、表皮材10の形状は、任意に設定することができる。例えば、表皮材10を半球状にして2枚を合わせるようにしてもよいし、球を1/4や1/5にした形状にしてこれらを複数枚合わせるようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態1、2では、表皮材10が湾曲した形状である場合について説明したが、この表皮材10は、平板形状であってもよい。同様に、発泡材11も平板形状であってもよい。
【0081】
また、発泡材11、57の発泡倍率を変化させることで、ボール1の重量を変更することや、反発性(リバウンド性)を変更することも容易に可能である。
【0082】
また、発泡材11、57の厚みや、表皮材10の厚みは任意に設定することができる。
【0083】
また、表皮材10には、パッド印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷によって印刷層を形成するようにしてもよい。この場合、印刷層は、表皮材10の一部に形成してもよいし、全面に形成してもよい。
【0084】
また、表皮材10の材料や色は、互いに変えてもよい。また、表皮材10は、例えば、樹脂製のシート材から打ち抜いて得るようにしてもよい。
【0085】
また、本発明は、サッカーボール、フットサル用ボール、ハンドボール、バスケットボール、バレーボール等の球技用のボールの他、玩具用のボールに適用することも可能である。また、上記実施形態では、本発明の芯部をチューブ2で構成しているが、芯部は、中空構造のもの以外にも、スポンジやゲル等からなる中実構造のものであってもよい。また、芯部の材料は、上記したものに限られず、様々な種類のものを用いることができる。また、芯部の形状は、球形以外にも、例えばラグビーボールのような形状であってもよい。また、芯部は、多層構造であってもよい。
【0086】
また、フットサル用のボールにおいては、サッカーボール等に比べてリバウンド性を低下させる必要があるが、この場合に、発泡材11を低反発にすることで、内部に詰め物をすることなく、所望のリバウンド性を得ることができる。これにより、内部が軽く、かつ、外周部が重いボールが得られるので、コントロール性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明は、例えば、サッカーボール等に適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ボール
2 チューブ(芯部)
3 表皮パネル
10 表皮材
11、57 発泡材
11d 凹部
55 ビーズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、球技等で使用されるボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、サッカーボール等は、チューブからなる芯部と、芯部を覆うように設けられた複数の表皮パネルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。各表皮パネルは、ボールの最外層を構成する樹脂製の表皮材と、表皮材の裏側に設けられた発泡材とを有している。発泡材は、ポリウレタンフォームで構成されている。
【0003】
上記特許文献1には、表皮パネルの製造方法が開示されている。すなわち、まず、表皮材を予め成形しておき、この表皮材を発泡材成形用の成形型のキャビティ内に配置する。そして、そのキャビティにポリウレタンフォーム材料を注入する。この発泡材料は、キャビティ内で熱や圧力等の雰囲気環境によって化学変化を起こして発泡しながら膨張して表皮材と一体化し、これにより、表皮パネルが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−174256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のように発泡材を成形する際にポリウレタンフォーム材料をキャビティ内で発泡させるようにした場合、発泡の過程でポリウレタンフォーム材料が曝される雰囲気環境は部位によって異なることになる。また、雰囲気環境を常に一定に保つことは難しい。よって、ポリウレタンフォーム材料の化学変化の進行度合いが部位によって異なったり、成形サイクル毎に異なったりして、発泡材の発泡状態を均一化するのは困難である。発泡状態が均一に近い状態でないと、ボールに歪みが生じるとともに、ボールの部位によって硬さが異なることになる。そのため、ボールの外形状が設計通りにならず使用者にとって扱い難いものになるとともに、使用者が例えば蹴った場合に、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じに違和感を感じたり、リバウンドが不自然になったりして、ボールの使用感が悪化する。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、芯部と表皮材との間にある発泡材の発泡状態を均一に近づけることにより、ボールの歪みを抑制するとともに、硬さの均一化を図り、これによって使用感の良好なボールを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、発泡材料を機械発泡させることによって発泡材を構成するようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、芯部と、該芯部の外側に設けられた発泡材と、該発泡材の外側に設けられた表皮材とを備えたボールであって、上記発泡材は、熱硬化エラストマーフォーム材が機械発泡されてなる独立気泡構造を有する構成とする。
【0009】
この構成によれば、芯部と表皮材との間の発泡材が機械発泡したものであるため、従来の化学発泡させた場合のように雰囲気環境の影響を受け難く、よって、発泡材の発泡状態は全体として見たときに均一に近い状態となる。これにより、ボールの歪みが抑制されるとともに、ボールの部位によって硬さが異なるのを回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、芯部と表皮材との間の発泡材を機械発泡してなるものとしたので、ボールの歪みを抑制できるとともに、ボールの部位によって硬さが異なるのを回避できる。これにより、ボールを例えば蹴った場合に、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じが自然になるとともに、リバウンドも自然になり、使用感の良好なボールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係るボールの外観図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】表皮材の本体部を成形する成形型の断面図である。
【図4】表皮材の本体部を成形した状態の図3相当図である。
【図5】表皮材の本体部を脱型した状態の図3相当図である。
【図6】表皮材の突出壁部を成形する成形型の断面図である。
【図7】表皮材の本体部を保持した状態の図6相当図である。
【図8】表皮材の突出壁部を成形した状態の図6相当図である。
【図9】表皮材を脱型した状態の図6相当図である。
【図10】発泡材料供給装置の構成図である。
【図11】発泡材を成形する成形型の断面図である。
【図12】発泡材の成形途中の図11相当図である。
【図13】発泡材を成形した状態の図11相当図である。
【図14】実施形態1の変形例1に係る図2相当図である。
【図15】実施形態1の変形例2に係る図2相当図である。
【図16】実施形態1の変形例3に係る図2相当図である。
【図17】実施形態1の変形例4に係る図2相当図である。
【図18】実施形態1の変形例5に係る図2相当図である。
【図19】実施形態1の変形例6に係る図2相当図である。
【図20】実施形態1の変形例7に係る図2相当図である。
【図21】実施形態1の変形例8に係る図2相当図である。
【図22】実施形態1の変形例9に係る図2相当図である。
【図23】実施形態1の変形例10に係る表皮パネルの平面図である。
【図24】図23のXXIV−XXIV線における断面図である。
【図25】実施形態2の図2相当図である。
【図26】チューブの補強材表面に発泡材料を塗布している状態を説明する図である。
【図27】チューブの補強材表面に発泡材を設けた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るボール1を示すものである。このボール1は、球技用のものであり、図2に示すように、芯部としてのチューブ2と、該チューブ2の外周面を覆う表皮を構成する複数の表皮パネル3、3、…とを備えている。この実施形態では、表皮パネル3の枚数を12枚としており、従って、各表皮パネル3の面積は、ボール1の総表面積の8%以上となっている。また、ボール1の直径は、16cm以上25cm以下に設定されている。尚、表皮パネル3の数や、ボール1の直径は上記に限られるものではない。
【0014】
上記チューブ2は、例えば、ブチルゴム又はラテックスゴム等の空気非透過性を有する弾性材料で構成されており、図1に示すように、周知の構造のゴム製バルブ4を有している。このバルブ4は、表皮パネル3を貫通してボール1の外面に露出している。バルブ4を介してチューブ2内に圧縮空気が注入されるようになっている。バルブ4の構造は上記に限定されるものではない。
【0015】
また、チューブ2には、補強層5が設けられている。補強層5は、チューブ2の外周面に密着している。この補強層5は、チューブ2に接着された布や、糸で構成されている。尚、補強層5は省略してもよいし、布や糸以外の部材で構成してもよい。
【0016】
上記表皮パネル3の形状は、五角形又は六角形状とされている。表皮パネル3は、全体として、チューブ2の外周面形状に沿うように湾曲形状をなしている。この表皮パネル3は、ボール2の最外層を構成する表皮材10と、表皮材10の裏側に設けられた発泡材11とを有する2層構造となっている。つまり、ボール1は、チューブ2と、チューブ2の外側に設けられた発泡材11と、発泡材11の外側に設けられた表皮材10とを備えた構造となっている。
【0017】
表皮材10は、例えば、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の樹脂材を射出成形してなる射出成形品である。表皮材10は、湾曲した板状の本体部10aと、本体部10aの周縁部から裏側へ向けて突出する突出壁部10bとが一体化されてなる。本体部10aの厚みは、その全体に亘って同じになっており、例えば、0.01mm〜3.00mmの範囲で設定されている。突出壁部10bは、表皮材10の全周に亘って連続した環状をなしている。突出壁部10bの厚みは、本体部10aの厚みと同じに設定されている。突出壁部10bの突出方向先端部は、チューブ2の補強層5に接している。尚、本体部10aと突出壁部10bとは、同じ樹脂材料で形成してもよいし、異なる樹脂材料で形成してもよい。異なる樹脂材料で形成する場合には、突出壁部10bを形成する樹脂材料の方を柔らかくするのが好ましい。こうすることにより、突出壁部10bの剛性が低下して、ボール1の硬さを全体に亘って均一に近づけることが可能になる。
【0018】
発泡材11は、ウレタン樹脂等を含む発泡材料を機械発泡させてなるものであり、表皮材10の本体部10aの裏面と突出壁部10bの内面に接着されていて、表皮材10と一体化している。発泡材11の厚みは、全体に亘って、突出壁部10bの突出高さと略同じに設定されていて、発泡材11の裏面は、表皮材10の本体部10aの形状と同様な湾曲形状となっている。尚、上記機械発泡とは、気体を物理的手段で原料に導入して細胞様の構造を得るように当該原料を発泡させることをいい、気体を原料に導入する手段としては、以下に示す加圧手段以外にも、例えば攪拌手段等がある。
【0019】
発泡材11の裏面は、チューブ2の補強層5に接着剤(図示せず)によって接着されている。また、チューブ2上で隣り合う表皮パネル3、3のうち、表皮材10の突出壁部10bの外面同士は、接着剤(図示せず)によって接着されている。
【0020】
次に、上記表皮パネル3を製造する製造装置について説明する。この製造装置は、表皮材10の本体部10aを成形する本体部成形装置と、表皮材10の突出壁部10bを成形する突出壁部成形装置と、発泡材11を成形する発泡材成形装置とで構成されている。
【0021】
上記本体部成形装置は、射出成形機(図示せず)と、成形型20(図3に示す)とを備えている。射出成形機は、樹脂材料を混練して溶融状態にしてノズルから射出するように構成された周知のものである。一方、成形型20は、上下に対向するように配置された上型21及び下型22と、上型21を上下方向に移動させて下型22に対し接離させる型駆動装置(図示せず)とを備えている。上型21の下面には、本体部10aの表面側を成形する表面側成形面21aが形成されている。この表面側成形面21aは、表皮材10の湾曲形状を形成するために上方へ湾曲している。下型22の上面には、本体部10aの裏面側を成形する裏面側成形面22aが形成されている。この裏面側成形面22aも同様に湾曲している。上型21と下型22とを型締めすると、表面側成形面21aと裏面側成形面22aとによってキャビティ(図示せず)が形成されるようになっている。図示しないが、下型22には、射出成形機のノズルに連通するランナが形成されている。ランナの下流端は、キャビティに開口するゲートに接続されている。
【0022】
上記突出壁部成形装置は、本体部成形装置と同様な射出成形機と、成形型25(図6に示す)とで構成されている。成形型25は、上型26及び下型27と、型駆動装置(図示せず)とを備えている。上型26の下面には、本体部10aの表面形状に対応した湾曲面26aが形成されている。湾曲面26aの周縁部は、本体部10aの周縁部よりも外方へ延びるように形成されており、この湾曲面26aの周縁部によって突出壁部10bの一部が成形されるようになっている。下型27の上面には、本体部10aの裏面形状に対応した湾曲面27aが形成されている。この湾曲面27aは、下型27の上面の外周部に比べて一段上がっており、この段差部分によって突出壁部10bの残りの部位が成形されるようになっている。上型26と下型27とを型締めすると、本体部10aが両湾曲面26a、27aによって表裏方向に挟持された状態となり、さらに、その本体部10aの周囲を囲むように突出壁部10b用のキャビティが形成されるようになっている。下型27には、ランナ及びゲートが設けられている。
【0023】
尚、上記成形型20、25は、左右方向に接離する型で構成してもよい。また、ランナ及びゲートは、どちらの型に設けられていてもよい。また、ゲート及びランナの位置や形状は、任意に設定することができる。
【0024】
上記発泡材成形装置は、図10に示す発泡材料供給装置30と、図11に示す成形型50とで構成されている。発泡材料供給装置30は、気体供給装置31、材料供給装置32、気体導入装置33、制御ユニット34、加圧装置35、分散装置36及び吐出装置37とで構成されている。
【0025】
気体供給装置31は、コンプレッサやボンベAに接続される接続管31aと、周知の圧力調整弁31bと、気体流量計31cと、気体供給管31dとを備えている。接続管31aに導入された圧縮気体が圧力調整されてから、気体供給管31dを流れるようになっている。この気体供給装置31により供給される気体の圧力は、例えば、0.1〜5.0kg/cm2の低圧領域で調整可能となっている。また、供給する気体の種類としては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス等であるが、好ましくは空気である。
【0026】
材料供給装置32は、フォロアプレート式のプランジャーポンプ32aと、プランジャーポンプ32aの吐出管に接続された材料供給管32bとを備えている。プランジャーポンプ32aの吸入管は、熱硬化性発泡ウレタン材料が貯留された容器Bに挿入されている。プランジャーポンプ32aによって、容器B内の熱硬化性発泡ウレタン材料が材料供給管32bに送出されるようになっている。このウレタン材料の送出圧力は、例えば、100〜300kg/cm2の高圧領域で調整可能となっている。
【0027】
気体導入装置33は、第1ピストンポンプ33a及び第2ピストンポンプ33bと、弁33c〜33hと、モーターM1、M2とを備えている。第1及び第2ピストンポンプ33a、33bは、それぞれ、モーターM1、M2によってピストンが往復駆動されることにより、吸入行程と吐出行程とを行うようになっている。気体供給管31dの下流側は2つに分岐しており、各々が第1及び第2ピストンポンプ33a、33bの吸入管に接続されている。また、材料供給管32bの下流側も2つに分岐しており、各々が第1及び第2ピストンポンプ33a、33bの吸入管に接続されている。従って、気体供給管31dを流れる気体及び材料供給管32bを流れるウレタン材料は、第1及び第2ピストンポンプ33a、33bに導入されるようになっている。気体供給管31dの分岐部よりも下流側と、材料供給管32bの分岐部よりも下流側とには、それぞれ、弁33c〜33fが設けられている。また、第1及び第2ピストンポンプ33a、33bの吐出管には、それぞれ、弁33g、33hが設けられている。
【0028】
モーターM1、M2及び弁33c〜33hは、制御ユニット34によって制御されるようになっている。具体的には、第1及び第2ピストンポンプ33a、33bのシリンダー内に、吸入行程で気体を流入させ、その後、吸入行程の後にウレタン材料を流入させるようにし、ウレタン材料の流入が終了したら、吐出行程に移行して気体及びウレタン材料を吐出管に送出するようになっている。
【0029】
加圧装置35は、第1ピストンポンプ35a及び第2ピストンポンプ35bと、弁35c〜35fと、モーターM3、M4とを備えている。第1及び第2ピストンポンプ35a、35bは、それぞれ、モーターM3、M4によってピストンが往復駆動されて、吸入行程と吐出行程とが行われるようになっている。弁35cは、第1ピストンポンプ35aの吸入管に設けられ、弁35dは、第2ピストンポンプ35bの吸入管に設けられている。また、弁35eは、第1ピストンポンプ35aの吐出管に設けられ、弁35fは、第2ピストンポンプ35bの吐出管に設けられている。
【0030】
モーターM3、M4及び弁35c〜35fは、上記制御ユニット34によって制御されるようになっている。具体的には、第1ピストンポンプ35aを作動させるときには、まず、弁35cを開いて弁35eを閉じた状態で、ピストンを動かして吸入行程として気体導入装置33から送られてきた混合物をシリンダー内に吸入させる。この状態で、弁35cを閉じて弁35eを開いた状態で、ピストンを動かして吐出行程としてシリンダー内の混合物を吐出管に送出するようになっている。第2ピストンポンプ35bも同様に動作する。第1及び第2ピストンポンプ35a、35bからの混合物の吐出圧力は、150kg/cm2以上とされている。第1及び第2ピストンポンプ35a、35bからの混合物の吐出圧力及び流量は、制御ユニット34からの信号によって変更可能となっている。また、制御ユニット34には、図示しないが、各種設定を行うための操作パネルが設けられている。
【0031】
分散装置36は、吐出管に接続された分散用管36aと、分散用管36aを開閉する弁36bとを備えている。分散用管36aは、内径が10mm以下の細い管であり、長さは10m程度に設定されている。
【0032】
吐出装置37は、分散装置36の分散用管36aの下流側に接続された吐出用管37aと、吐出用管37aの下流側に設けられた弁内蔵型のノズル37bとを備えている。尚、上記した発泡材料供給装置30は、一例であり、各部を変更して用いることも可能である。
【0033】
一方、成形型50は、図11に示すように、上型51及び下型52と、加熱装置53と、型駆動装置(図示せず)とを備えている。上型51の下面には、発泡材11の裏面を成形する裏面成形面51aが形成されている。裏面側成形面51aは、発泡材11の湾曲形状を形成するために下方へ湾曲している。下型52の上面には、表皮材10の本体部10aの表面及び突出壁部10bの外面に沿って延びる凹面52aが形成されており、この凹面52aによって表皮材10が保持されるようになっている。加熱装置53は、上型51に配設される上型加熱器53aと、下型52に配設される下型加熱器53bと、これら加熱器53a、53bに接続された制御ユニット53cとで構成されている。上型加熱器53aは、上型51に形成された孔部内に収容されており、例えば、電熱線ヒーター等で構成されている。下型加熱器53bも同様である。これら加熱器53a、53bは、制御ユニット53cによって制御されて、上型51の裏面成形面51a及び下型52の凹面52aの温度を所定範囲で調整するようになっている。
【0034】
次に、上記のように構成された製造装置によって表皮パネル3を製造する要領について説明する。まず、図3〜図5に示すように、本体部成形装置によって表皮材10の本体部10aを成形する。すなわち、上型21及び下型22を型締めした状態で、射出成形機のノズルから溶融樹脂材料をキャビティに射出する(図4参照)。キャビティ内の樹脂材料が固化した後に型開きすると、表皮材10の本体部10aが得られる(図5参照)。
【0035】
次いで、図6に示すように、本体部10aを突出壁部成形装置の下型27の湾曲面27aに載置し、図7に示すように、上型26及び下型27を型締めした状態で、射出成形機のノズルから溶融樹脂材料をキャビティに射出する。すると、図8に示すように、溶融樹脂材料が、本体部10aの周縁部に溶着した状態で成形され、図9に示すように、固化後に型開きすると、本体部10aと突出壁部10bとが一体化した表皮材10が得られる。このように、本体部10a及び突出壁部10bを射出成形する際、成形型20、25のキャビティには、成形に必要なだけの樹脂材料を供給すればよいので、樹脂材料の無駄が殆どない。また、溶融樹脂材料を成形型20、25で成形することで、残留応力が生じ難く、高精度な表皮材10を得ることが可能になる。
【0036】
しかる後、図11に示すように、上記表皮材10を発泡材成形装置の下型52の凹面52aに嵌める。このときの上型51及び下型52の温度は、後述の発泡材料Cが熱硬化する温度まで上昇しており、例えば、約80℃となっている。
【0037】
そして、次のようにして発泡材料Cを表皮材10の裏面に供給する。
【0038】
すなわち、図10に示すように、発泡材料供給装置30においては、気体供給装置31及び材料供給装置32により、気体及びウレタン材料が、気体導入装置33の第1及び第2ピストンポンプ33a、33bに供給される。ウレタン材料としては、例えば、サンスター技研株式会社製のペースト状の自在成型エラストマーフォーム材(ペンギンフォーム)を用いることができる。このフォーム材は、流動性のある1液タイプである。尚、ウレタン材料は、上記したものに限られず、機械発泡が可能な材料であれば特に限定されない。
【0039】
気体導入装置33の第1及び第2ピストンポンプ33a、33bは別々に動作する。まず、弁33cを開いて弁33d、33gを閉じた状態にしてから、第1ピストンポンプ33aのシリンダー内に、吸入行程で気体を所定量流入させる。その後、弁33cを閉じて弁33dを開いてから、吸入行程の後にウレタン材料を流入させる。ウレタン材料を所定量流入させたら、弁33c、33dを共に閉じたまま、弁33gを開いて吐出行程に移行し、気体及びウレタン材料を吐出管に送出する。第1ピストンポンプ33aが吐出行程に移行したら、第2ピストンポンプ33bのシリンダに同様にして気体及びウレタン材料を流入させた後、気体及びウレタン材料を吐出管に送出する。つまり、気体導入装置33は、バッチ式に作動するようになっており、気体とウレタン材料との混合物は、第1及び第2ピストンポンプ33a、33bから交互に吐出されるようになっている。また、各ピストンポンプ33a、33bのシリンダに流入する気体とウレタン材料との比率は、気体供給装置31及び材料供給装置32による供給圧力や、弁33c〜33fの開閉タイミング及び開閉量によって任意に調整可能となっている。
【0040】
第1及び第2ピストンポンプ33a、33bから吐出された混合物は、加圧装置35の第1及び第2ピストンポンプ35a、35bに吸入される。すなわち、弁35cを開いて弁35e、35dが閉じた状態で第1ピストンポンプ35aが吸入行程になると、混合物がシリンダに吸入される。そして、弁35eを開いて弁35cを閉じた状態で第1ピストンポンプ35aが吐出行程に移行すると、混合物が吐出される。このときの圧力は、150kg/cm2以上に設定され、また、流量は、100〜1000ml/min程度に設定されている。第2ピストンポンプ35bも同様にして混合物を吸入し吐出する。第1及び第2ピストンポンプ35a、35bは、交互に作動する。
【0041】
加圧装置35の第1及び第2ピストンポンプ35a、35bから吐出された混合物は、分散装置36の分散用管36aに流入する。分散用管36aに流入した混合物の圧力は、150kg/cm2以上で、流量は、100〜1000ml/min程度に設定されているので、混合物が分散用管36aを流通する間に、気体が微細な気泡となってウレタン材料中に略均一に分散する。これにより、本発明の発泡材料Cが得られる。この気泡の平均粒径は、約0.01mm〜0.03mm程度の微細なものである。
【0042】
分散装置36から送出された発泡材料Cは、吐出装置37の吐出用管37aを経て、ノズル37bから吐出されて、図11に示すように表皮材10の裏面に供給される。発泡材料Cは、ノズル37cから吐出されることで、大気開放された状態となる。よって、ノズル37cから吐出された後の単位質量当たりの体積は、吐出される前の単位質量当たりの体積よりも大きくなるが、これは化学変化による発泡ではないため、大気開放された直後に体積が大きくなってから以後は、体積の変化は殆ど無い。尚、ノズル37bから吐出された後の単位質量当たりの体積を、ノズル37bから吐出される前の単位質量当たりの体積で除した値が発泡倍率であり、この発泡倍率は、気体とウレタン材料との混合比率によって任意に設定できるようになっている。
【0043】
各表皮材10の裏面に供給する発泡材料Cの量は、上述の如く発泡材料Cが吐出後に殆ど体積変化しないものなので、発泡材11の体積と略同じ量である。
【0044】
上記のようにして発泡材料Cを表皮材10の裏面に供給した後、図12に示すように、上型51と下型52とを型締めすると、発泡材料Cは、上型51の裏面成形面51aで成形されるとともに、上型51及び下型52によって加熱されて硬化して、図13に示すように、発泡材11が得られる。この発泡材11の成形時に、発泡材11は、表皮材10に接着された状態となる。このように発泡材料Cを機械発泡させて発泡材11を得るようにしているので、従来の化学発泡させた場合のように雰囲気環境の影響を受け難く、よって、発泡材11の発泡状態は全体として見たときに均一に近い状態となる。また、発泡材料C中には、気体が微細な気泡となって分散して存在しているので、発泡材11は、その気泡同士が壁で仕切られていて繋がってない、いわゆる独立気泡構造を有するものとなる。
【0045】
そして、上型51及び下型52を型開きすると、表皮パネル3が得られる。以上が、表皮パネル製造工程である。
【0046】
尚、発泡材料Cを表皮材10の裏面に供給する場合には、例えば、表皮材10の裏面中心部近傍から外周部へ向けて渦巻きを描くように供給してもよい。こうすることで、発泡材料Cの中に空気が入り難くなり、発泡材11をより均一な発泡状態とすることが可能になる。発泡材料Cは、表皮材10の裏面外周部から中心部へ向けて渦巻きを描くように供給してもよい。発泡材料Cの供給方法は、上記したものに限定されるものではない。
【0047】
その後、表皮パネル接合行程に移って、表皮パネル3をチューブ2の補強層5に接着するとともに、隣り合う表皮パネル3、3の突出壁部10b、10b同士を接着する。以上のようにしてボール1を得ることができる。
【0048】
以上説明したように、この実施形態1によれば、チューブ2と表皮材10との間の発泡材11を機械発泡してなるものとしたので、発泡材11の発泡状態を全体として均一に近い状態とすることができる。これにより、ボール1の歪みを抑制できるとともに、ボール1の部位によって硬さが異なるのを回避できる。よって、ボールを例えば蹴った場合に、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じが自然になるとともに、リバウンドも自然になり、使用感の良好なボール1を得ることができる。
【0049】
また、発泡材11が独立気泡構造を有しているので、例えば雨天時等にボール1が水を吸って重くなってしまうのを抑制でき、天候によらず使用感を良好にできる。また、埃等が発泡材11の内部に入り込むのも抑制できる。また、これらのことにより、ボール1の長寿命化を図ることもできる。
【0050】
また、連続気泡構造のものに比べて、発泡材11中の気泡が独立した小さいものとなる。これにより、例えば蹴ることによって発泡材11が衝撃を受けて、気泡の壁が破れて隣り合う気泡が連通した場合においても、連続気泡構造のものに比べて小さい空間とすることが可能になる。その結果、発泡材11の強度低下が抑制される。また、気泡が小さいものなので、チューブ2や表皮材10への接着面積を広く確保することが可能になり、強い接着力が得られる。これらのことにより、ボール1の耐久性が向上する。
【0051】
また、発泡材11中に小さい気泡が独立して形成されているので、発泡材11の部位による硬度を均一に近づけることが可能になるとともに、各部位の比重も均一に近づき、ボール1の重量を簡単に規定重量にすることが可能になる。上記のように発泡材11の部位による硬度を均一に近づけることで、例えば蹴った際にボール1の飛ぶ方向や、脚へ食い込む感じに違和感を感じなくなる。
【0052】
また、発泡材料Cに空気、炭酸ガス、窒素のいずれかを混合させるようにしたので、製造工程において、安全性が高く、人体や環境への悪影響が無い。また、発泡材11においても、安全性が高く、人体や環境への悪影響が無いものが得られる。
【0053】
また、表皮材10を射出成形品としたことで、例えば、フィルム状の材料から打ち抜いて表皮材を成形する場合に比べて、歩留まりが向上するとともに、寸法精度を高めることができる。
【0054】
また、表皮材10を射出成形してなるものとしたので、無駄な材料が殆ど生じなくなって歩留まりを向上でき、また、表皮材10の寸法精度を高めることができ、扱いやすいボール1を得ることができる。
【0055】
また、表皮材10の突出壁部10bの樹脂を本体部10aの樹脂よりも柔らかくしたので、使用時に突出壁部10bが突っ張り難くなり、よって、表面の硬さが均一に近いボール1を得ることができる。これにより、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じが自然になるとともに、リバウンド特性も自然になり、ボール1の使用感を良好にすることができる。
【0056】
尚、表皮材10の本体部10aと突出壁部10bとは一体成形してもよい。この場合、図14に示す変形例1のように、突出壁部10bの厚みを本体部10aの厚みよりも薄くすることも可能である。突出壁部10bの厚みは、本体部10aの1/2〜1/3の範囲で設定するのが好ましい。これにより、突出壁部10bの剛性が低下して、突出壁部10bが突っ張り難くなり、ボール1の硬さが全体に亘って均一に近づくようになる。変形例1において、本体部10aと突出壁部10bとを別々に成形するようにしてもよい。
【0057】
また、図15に示す変形例2のように、表皮材10の突出壁部10bの突出高さを低くして、突出壁部10bの先端部をチューブ2の補強層5から離すようにしてもよい。この変形例2のものでは、突出壁部10bの先端部と補強層5との間に発泡材11が介在することになり、ボール1の硬さが全体に亘って均一に近づくようになる。この変形例2において、突出壁部10bの厚みを本体部10aの厚みよりも薄くしてもよいし、また、本体部10aと突出壁部10bとを別々に成形するようにしてもよい。
【0058】
また、表皮材10の本体部10aの厚みを部位によって変えてもよいし、突出壁部10bの厚みを部位によって変えてもよい。
【0059】
また、図16に示す変形例3のように、発泡材11を、突出壁部10b側の内側部11aと外側部11bとで別々に成形してもよい。この場合、外側部11bを内側部11aよりも柔らかくするのが好ましい。具体的には、発泡材11の外側部11bの発泡倍率を内側部11aの発泡倍率よりも大きくすることや、外側部11bのウレタン材料を内側部11aのウレタン材料よりも柔らかくすることで可能となる。この変形例3の発泡材11を形成する場合には、図示しないが、外側部11bを成形する成形型と、内側部11aを成形する成形型とを用意して、外側部11bと内側部11aとを別々に成形する。また、外側部11bと内側部11aとは接着してもよいし、熱溶着してもよい。また、外側部11bと内側部11aとは、ウレタン材料以外の材料で構成してもよい。また、外側部11bと内側部11aとは、異なる材料で構成してもよく、硬さも任意に設定することができる。
【0060】
また、図17に示す変形例4のように、発泡材11が多数のビーズ55を有するようにしてもよい。このビーズ55は、成形前に発泡材料Cに混ぜておくことで、発泡材11に分散させることができる。ビーズ55の比重を発泡材11の比重よりも小さくすることで、ボール1の重量を軽くすることができ、また、逆に、ビーズ55の比重を発泡材11の比重よりも大きくすることで、ボール1の重量を重くすることができる。ビーズ55は、例えば、各種樹脂材で構成することができるものである。ビーズ55の個数や大きさ、材質は、任意に設定できる。例えば、発泡材11よりも高反発な材料でビーズ55を形成した場合には、ボール1の反発性を向上させることができ、低反発な材料でビーズ55を形成した場合には、ボール1の反発性を低下させることができる。また、ビーズ55の直径は、例えば、0.01mm〜3.00mmの範囲内で設定するのが好ましい。また、ビーズ55の形状は、球以外であってもよい。
【0061】
また、図18に示す変形例5のように、表皮材10の突出壁部10bを短くした場合に、隣り合う表皮材10の周縁部に対応するように、別体の発泡材12を設けるようにしてもよい。この周縁部の発泡材12を発泡材11よりも柔らかくするのが好ましい。こうすることで、ボール1の突出壁部11bに対応する部位の硬さを、他の部位の硬さに近づけることができる。
【0062】
また、図19に示す変形例6のように、発泡材11の裏面に凹凸部11cを設けてもよい。これにより、チューブ2の補強層5との接触面積が増加して、発泡材11の剥がれや浮きを抑制できる。凹凸部11cは、発泡材11の裏面の一部に設けてもよいし、全面に設けてもよい。
【0063】
また、図20に示す変形例7のように、表皮材10の本体部10aに凹凸部を設けることによって波板形状に形成してもよい。この波板形状は、表皮材10の射出成形時に成形型20によって形成されたものである。このように表皮材10を射出成形することによって、凹部や凸部を容易に形成することができる。また、本体部10aを波板状にすることなく、ボール1の周方向に延びる凸条(凸部)や凹条(凹部)を設けてもよいし、ディンプル形状部(凹部)を設けてもよい。表皮材10の凹部や凸部の形状によって、カーブのかかり易いボール1や飛びやすいボール1とすることもできる。尚、上記のように本体部10aの表側に凹部や凸部を形成することで、それらに対応した形状が本体部10aの裏側にも形成されることになるが、本体部10aが射出成形してなるものであることから、裏側の形状と表側の形状とは異なる形状にすることも可能である。
【0064】
また、図21に示す変形例8のように、発泡材11の裏面に複数の凹部11cを形成してもよい。これにより、ボール1を蹴ったときの脚へ食い込む感じや、リバウンド特性、頭や脚へ与える衝撃といったボール1の使用感を発泡材11によって変更することが可能になる。また、図22に示す変形例9のように、発泡材11に凹部11dを設ける場合に、凹部11dのうち、その底部側(表皮パネル3表面側)の断面を球形にして拡大させてもよい。この変形例8では、発泡材11に凹部11dを形成して柔らかくしながら、補強層5との接着面積を十分に確保することができ、剥がれや浮きを抑制できる。また、凹部11dによってボール1のリバウンド性を調整することも可能である。
【0065】
また、図23に示す変形例10のように、例えば、学校名が印刷されたフィルム56を表皮材10の本体部10aに設けるようにしてもよい。この場合、表皮材10を形成する材料は透光性を有する材料とする。このフィルム56は、表皮材10の成形時、成形型20の裏面側成形面22aに保持しておく(インサート成形する)ことで、フィルム56の表面を樹脂材で覆うことができる。これにより、フィルム56の表面を保護することができ、ボール1の使用によって文字が消えてしまうのを抑制できる。インサートするフィルム56には、学校名に限らず、チーム名、クラブ名、スポーツ協会の認定マーク、大会名の他、ボール1のメーカー名等の各種文字や模様を印刷しておくことが可能である。また、そのようにフィルム56の表面が透光性のある樹脂材で覆われることにより、フィルム56の文字や模様はボール1の表面よりも奥に見えることになって、ボール1のデザインに高級感を与えることができるとともに、ボール1の見栄えを向上できる。また、複数枚のフィルム56を1枚の表皮材10にインサート成形するようにしてもよい。フィルム56の大きさや形状は任意に設定できるものである。また、フィルム56を、表皮材10の表側にインサート成形してもよいし、表皮材56の厚み方向中間部にインサート成形するようにしてもよい。また、フィルム56をインサート成形することなく、表皮材10の表面や裏面に貼り付けるようにしてもよい。
【0066】
変形例1〜10として例示する構造は、任意に組み合わせることが可能である。
【0067】
また、上記実施形態では、発泡材11を表皮材10に一体に成形するようにしているが、これに限らず、例えば、発泡材11を、表皮材10の裏面の形状に対応する形状に予め成形しておき、この発泡材11を表皮材10に接着するようにしてもよい。すなわち、発泡材料をシート材にしておき、このシート材から型を用いて表皮材10の裏面形状に一致する形状の発泡材11を切り抜くようにすることで、表皮材10の裏面の形状に対応する発泡材11を得ることができる。
【0068】
この場合、発泡材11は、チューブ2の外周面形状に沿うように湾曲した形状とするのが好ましい。また、発泡材11をチューブ2の補強層5に接着した後に、表皮材10を発泡材11に接着するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、複数の表皮パネル3を同じ硬さの発泡材11で構成するようにしているが、これら表皮パネル3のうち、例えば1枚のみを他の表皮パネル3よりも硬くしたり、柔らかくしてもよい。これにより、例えば、サッカーボールにおいては、コーナーキックやフリーキックの際に、例えばカーブをかかりやすくすることができる等、ボールコントロールが容易になる。他の表皮パネル3と硬さを変えた表皮パネル3の数は、2枚や3枚であってもよい。また、その表皮パネル3の色や模様を他の表皮パネル3と変えるのが好ましい。
【0070】
また、上記実施形態では、表皮材10の本体部10aと突出壁部10bとを別体の装置で成形するようにしているが、本体部10aと成形型と突出壁部10bの成形型とが一体化した装置を用いて成形するようにしてもよい。
【0071】
(実施形態2)
図25は、本発明の実施形態2に係るボール1の断面図である。この実施形態2に係るボール1は、チューブ2の補強層5に設けた発泡材57が実施形態1のように分割されていない点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態2のボール1について、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0072】
発泡材57は、発泡材料を機械発泡させてなるものであり、チューブ2の補強層5の全体に亘って均一な厚さで連続して設けられており、一体成形されたものである。また、各表皮材10には、実施形態1のような突出壁部が無く、裏面全体が発泡材57の表面に貼り付けられている。
【0073】
この実施形態2のボール1は、次のようにして製造される。すなわち、まず、チューブ2の補強層5の表面全体に、図26に示すようにして、実施形態1の発泡材料供給装置30を用いて発泡材料Cを塗布し、補強層5を発泡材料Cでコーティングした状態にする。その後、図示しないが、約80℃に加熱された加熱炉に入れて発泡材料を硬化させることにより、図27に示すように発泡材57が得られる。これが発泡材形成工程である。
【0074】
その後、発泡材57の表面に表皮材10を接着する。このとき、隣り合う表皮材10、10の周縁部同士も接着しておく。これが表皮材接合工程である。表皮材10は、実施形態1の本体壁部成形装置と同様な装置によって得ることが可能である。
【0075】
この実施形態2のものでも、チューブ2と表皮材10との間の発泡材57を機械発泡してなるものとしたことで、ボールを例えば蹴った場合に、飛び方や転がり方、脚へ食い込む感じが自然になるとともに、リバウンドも自然になり、使用感の良好なボール1を得ることができる。
【0076】
尚、上記実施形態2において、実施形態1の変形例4のように発泡材57がビーズを有するものであってもよい。実施形態2において、表皮材10に波板形状や、凸条、凹条、ディンプル形状を設けてもよい。実施形態2において、表皮材10にフィルムをインサート成形してもよい。
【0077】
また、上記実施形態1、2では、表皮材10が単層構造である場合について説明したが、表皮材10は、多層構造であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態1、2において、表皮材10を透光性のある樹脂材料で形成するようにしてもよい。これにより、発泡材11、57の色がボール1の表面から透けて見えるようになり、ボール1を、深みのあるデザインとすることができる。この場合、発泡材11、57の色を任意に設定することで、発泡材11、57をデザインの一部として利用することができる。また、表皮材10を有色の透明にすることで、発泡材11、57の色と表皮材10の色とが混ざって見えることになり、デザインの自由度が向上する。また、表皮材10に印刷を施す場合には、発泡材11、57の色を利用することで、その印刷色を減らすことが可能になる。また、表皮材10を無色透明とすることで、シースルーデザインのボール1を得ることができる。また、表皮材10の色を、多色が不完全に混ざったようなマーブル模様にしてもよいし、発泡材11、57の色を同様なマーブル模様にしてもよい。また、表皮材11を形成する樹脂材や発泡材11の材料には、蓄光材や、光を反射する反射材、蛍光材等を混ぜてもよい。
【0079】
また、上記実施形態1、2では、ボール1の表皮材10が五角形や六角形の場合について説明したが、これに限らず、表皮材10の形状は、任意に設定することができる。例えば、表皮材10を半球状にして2枚を合わせるようにしてもよいし、球を1/4や1/5にした形状にしてこれらを複数枚合わせるようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態1、2では、表皮材10が湾曲した形状である場合について説明したが、この表皮材10は、平板形状であってもよい。同様に、発泡材11も平板形状であってもよい。
【0081】
また、発泡材11、57の発泡倍率を変化させることで、ボール1の重量を変更することや、反発性(リバウンド性)を変更することも容易に可能である。
【0082】
また、発泡材11、57の厚みや、表皮材10の厚みは任意に設定することができる。
【0083】
また、表皮材10には、パッド印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷によって印刷層を形成するようにしてもよい。この場合、印刷層は、表皮材10の一部に形成してもよいし、全面に形成してもよい。
【0084】
また、表皮材10の材料や色は、互いに変えてもよい。また、表皮材10は、例えば、樹脂製のシート材から打ち抜いて得るようにしてもよい。
【0085】
また、本発明は、サッカーボール、フットサル用ボール、ハンドボール、バスケットボール、バレーボール等の球技用のボールの他、玩具用のボールに適用することも可能である。また、上記実施形態では、本発明の芯部をチューブ2で構成しているが、芯部は、中空構造のもの以外にも、スポンジやゲル等からなる中実構造のものであってもよい。また、芯部の材料は、上記したものに限られず、様々な種類のものを用いることができる。また、芯部の形状は、球形以外にも、例えばラグビーボールのような形状であってもよい。また、芯部は、多層構造であってもよい。
【0086】
また、フットサル用のボールにおいては、サッカーボール等に比べてリバウンド性を低下させる必要があるが、この場合に、発泡材11を低反発にすることで、内部に詰め物をすることなく、所望のリバウンド性を得ることができる。これにより、内部が軽く、かつ、外周部が重いボールが得られるので、コントロール性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明は、例えば、サッカーボール等に適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ボール
2 チューブ(芯部)
3 表皮パネル
10 表皮材
11、57 発泡材
11d 凹部
55 ビーズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部と、該芯部の外側に設けられた発泡材と、該発泡材の外側に設けられた表皮材とを備えたボールであって、
上記発泡材は、熱硬化エラストマーフォーム材が機械発泡されてなる独立気泡構造を有するものであることを特徴とするボール。
【請求項1】
芯部と、該芯部の外側に設けられた発泡材と、該発泡材の外側に設けられた表皮材とを備えたボールであって、
上記発泡材は、熱硬化エラストマーフォーム材が機械発泡されてなる独立気泡構造を有するものであることを特徴とするボール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−176290(P2012−176290A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137241(P2012−137241)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2007−331429(P2007−331429)の分割
【原出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2007−331429(P2007−331429)の分割
【原出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
[ Back to top ]