説明

ポジトロンCT装置および再構成方法

【課題】画像再構成の高速化を実現することができるポジトロンCT装置および再構成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】端点選択部11は、同時計数される2つのγ線検出器3内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択し、サブLOR決定部12は、2つのγ線検出器3間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、端点選択部11で選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定し、システム行列算出部13は、サブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めている。したがって、システム行列の算出に先立って必要なデータが、一様に分割して得られた従来の全てのサブLORから分割する場合よりも少ないサンプリング点(端点)で得られたサブLORへ低減する。その結果、画像再構成の高速化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体内に投与されたポジトロン放射性薬剤から放出される放射線を検出してポジトロンの分布画像を画像として生成するポジトロンCT装置および再構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロンCT装置、すなわちPET(Positron Emission Tomography)装置は、陽電子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本のγ線を検出して複数個の検出器でγ線を同時に検出したときのみ(つまり同時計数したときのみ)被検体の画像を再構成するように構成されている。
【0003】
このPET装置では、放射性薬剤を被検体に投与した後、対象組織における薬剤蓄積の過程を経時的に測定することで、様々な生体機能の定量測定が可能である。したがって、PET装置によって得られる画像は機能情報を有する。
【0004】
具体的には、被検体として人体を例に採って説明すると、被検体の体内にポジトロン(陽電子)放射性の同位元素(例えば15O、18F、11Cなど)を注入し、これらから放出されるポジトロンが電子と結合する際に発生するγ線を検出する。このγ線の検出を、被検体の長手方向の軸である体軸周りを取り囲むようにしてリング状に配置された多数のγ線検出器からなる検出器列により行う。そして、コンピュータにより通常のX線CT(Computed Tomography)と同様の手法で計算を行って面内で特定し、被検体のイメージを作成する。
【0005】
画像を再構成するときには、下記のような手法が用いられる(例えば、非特許文献1、2参照)。先ず、視野(FOV: Field of View)内の3次元のボクセル(voxel)で構成される画素をν(j=0,1,…,J−1)、i番目のLOR(Line Of Response)をL(i=0,1,…,I−1)で表す。LORとは、同時計数する2つの検出器を結ぶ仮想上の直線のことである。画素が3次元のボクセルからなる場合には、LORは、各ボクセルから発生して、反対方向に放射された2個のγ線フォトンを検出した2つの検出器を結ぶチューブ(Tube)状領域のことである。
【0006】
さて、PET画像の再構成では、ボクセルνから発生したγ線フォトンがLOR(L)で検出される確率aijが重要な役割を果たす。このaijは、「システム行列」と呼ばれる。画像再構成の定式化については、非特許文献1、2を参照されたい。
【0007】
ijを厳密に計算することは困難であるが、各Lについて、その両端の検出器内部にサンプリング点を取って、νから生じたγ線フォトンが検出器の微小領域で検出される確率aij(s)の和(ここでは和をNで除算したaij(s)の加算平均)を、下記(1)式で近似する手法が用いられている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
【数1】

【0009】
より具体的に説明すると、検出器内部の結晶のサンプリング点を結んでN本のサブLORを描く。このとき対象となるLも含めてN本のサブLORによって分割される微小領域の個数もNとなる。γ線が検出器の微小領域sで検出される検出確率aij(s)を評価し、これらを各サブLORについて、上記(1)式で平均化することでaijが求められる。
【0010】
ところで、数値積分等の分野では、全く規則性のない(純粋な意味での)乱数を用いずに積分値の収束が早くなるように工夫された点列を用いて演算を行う手法がある(例えば、非特許文献4参照)。このような数列を「準乱数列」と呼ぶ。準乱数列では、例えば3次元での点列では、例えばHaltonの点列などがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Nakamura T, Kudo H: Derivation and implementation of ordered-subsets algorithms for list-mode PET data, IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record: 1950-1954, 2005
【非特許文献2】Tanaka E, Kudo H: Subset-dependent relaxation in block-iterative algorithms for image reconstruction in emission tomography. In: Phys Med Biol 48, 1405-1422, 2003
【非特許文献3】高橋悠,山谷泰賀,小林哲哉,他 :近接撮影型DOI-PETの画像再構成における観測系モデルの検討.JAMIT AnnualMeeting 2006 講演予稿集,OP10-7
【非特許文献4】伏見正則:確率的方法とシミュレーション.岩波講座 応用数学 [方法 10]2.1節,1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、PET装置では、高分解能化に対する要望が強く、そのためにはLORの個数Iやボクセル数Jを大きくする必要がある。この場合、非常に多くのaijを計算する必要があり、画像再構成時間の増大を招く。特に、上述したような画素が3次元のボクセルからなる場合には、LORの個数Iやボクセル数Jの増大に伴って、画像再構成時間の増大が顕著になる。
【0013】
具体的に説明すると、LORの個数Iやボクセル数Jを大きくするために、検出器の結晶を(微小領域に)細かく細分化する必要がある。検出器の結晶に対して3次元の各方向に一様な分割を行った場合、微小領域の数は分割数の6乗に比例し、演算時間も同じく6乗に比例して増大する。
【0014】
結晶数をN、ボクセル数をNνとしたとき、システム行列の成分数は凡そN・Nν/2となる。近年の装置では、N=5×10〜6×10、Nν=5×10〜10×10であり、演算すべき成分数はN・Nν/2=6×1016〜18×1016に達する。そのため、LORの両端の結晶の分割数を増すことは、システム行列の演算時間を著しく増大させる。
【0015】
この対策として、全てのサブLORではなく、LORに対して平行なサブLORのみを用いて、吸収・散乱を評価してシステム行列を求める手法が上述した非特許文献3で提案されている。しかし、この手法では、LORに対して平行でないサブLORの影響が考慮されない問題点がある。
【0016】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、画像再構成の高速化を実現することができるポジトロンCT装置および再構成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、被検体内に投与されたポジトロン放射性薬剤から放出される放射線を検出して電気信号を出力する複数の検出器と、前記電気信号に基づいて、2つの前記検出器において放射線が同時観測されたことを検出する同時計数回路と、前記同時計数回路の出力に基づいて、システム行列を算出するシステム行列算出手段と、前記システム行例に基づいて、前記ポジトロンの分布画像を画像として生成する再構成手段とを有するポジトロンCT装置であって、前記同時計数される2つの検出器内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択する端点選択手段と、前記2つの検出器間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、前記端点選択手段で選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定するサブLOR決定手段とを備え、前記サブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めることを特徴とするものである。
【0018】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、端点選択手段は、同時計数される2つの検出器内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択し、サブLOR決定手段は、2つの検出器間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、端点選択手段で選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定する。システム行列の算出に際して、従来ではLORの両端の結晶を細分してサブLORを決定して、システム行列を求めていたのに対して、この発明のポジトロンCT装置によれば、空間内に一様に分布するように事前に定められた規則にしたがって生成された準乱数を用いて端点を選択し、その端点間で結ぶことでサブLORを決定して、システム行列算出手段は、サブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めている。そして、そのシステム行列に基づいて、ポジトロンの分布画像を画像として再構成手段は生成する。したがって、システム行列の算出に先立って必要なデータが、一様に分割して得られた従来の全てのサブLORから分割する場合よりも少ないサンプリング点(端点)で得られたサブLORへ低減する。その結果、画像再構成の高速化を実現することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、被検体内に投与されたポジトロン放射性薬剤から放出される放射線に基づくポジトロンの分布画像を画像として生成する再構成方法であって、一連の再構成方法は、(a)前記放出される放射線が2つの検出器において同時観測されたことを検出することで放射線を同時計数する際に、その同時計数される2つの検出器内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択する端点選択工程と、(b)前記2つの検出器間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、前記端点選択工程で選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定するサブLOR決定工程と、(c)前記サブLOR決定工程で決定された前記サブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めるシステム行列算出工程と、(d)前記システム行列算出工程で求められたシステム行列に基づいて、前記ポジトロンの分布画像を画像として生成する再構成工程とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、端点選択工程では、同時計数される2つの検出器内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択し、サブLOR決定工程では、2つの検出器間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、端点選択工程で選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定し、システム行列算出工程では、サブLOR決定工程で決定されたサブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めている。その結果、画像再構成の高速化を実現することができる。
【0021】
また、この発明のポジトロンCT装置および再構成方法の一例は、画素は3次元のボクセルからなり、各検出器の3次元内に分布する3つの準乱数に基づいてサブLORを決定することである(請求項2、4に記載の発明)。同時計数する2つの検出器では、合計6次元空間内に一様に分布する6次元の準乱数列を用いて端点を選択して、これらを結んだサブLORを用いてシステム行列を求める。
【0022】
また、この発明の再構成方法の他の一例は、同時計数される2つの検出器を結ぶ仮想上の直線である同時計数LORと画素との交叉範囲を求める交叉範囲算出工程を備え、システム行列算出工程では、サブLORごとの検出確率であり、かつ交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素を演算することによりシステム行列を求めることである(請求項5に記載の発明)。システム行列の算出に際して、従来では視野内にある全データのシステム行列中の要素を演算して、システム行列を求めていたのに対して、請求項5に記載の発明によれば、システム行列算出工程では、サブLORごとの検出確率であり、かつ交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素を演算して、システム行列を求めている。したがって、システム行列の算出に先立って必要なデータが従来の視野内にある全データから交叉範囲分のデータへ低減して、画像再構成の高速化をより一層実現することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明の一例は、上述した画素は3次元のボクセルからなり、上述した交叉範囲算出工程では、LOR両端にある検出器に外接する平行六面体で近似して3次元の交叉範囲を求めることである(請求項6に記載の発明)。3次元の交叉範囲を求めるには、LOR両端にある検出器を含み、かつできるだけ小さい平行六面体を考える。この場合には、上述した検出器に外接する平行六面体が、最も小さい平行六面体となり、この平行六面体と交叉するボクセルをLORと交叉する可能性のあるボクセルとする近似を行うことで3次元の交叉範囲を求めることができる。
【0024】
上述した平行六面体では、平行六面体を形成する各々の面が長方形あるいは正方形であるのが好ましい(請求項7に記載の発明)。このように平行六面体を設定することで、LORが直交する平行六面体の断面も長方形あるいは正方形となり、その断面の各辺もボクセル境界面と平行になる。そして、サイズも、その「長辺×短辺×視野(FOV)の一辺」の3次元配列となり、上述したシステム行列の算出に必要な初期化作業に関するプログラム作成が簡略化される。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係るポジトロンCT装置および再構成方法によれば、同時計数される2つの検出器内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択し、2つの検出器間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定し、決定されたサブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めている。その結果、画像再構成の高速化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図である。
【図2】γ線検出器の概略斜視図である。
【図3】再構成工程を含んだ一連の再構成方法の流れを示すフローチャートである。
【図4】従来の微小領域への検出確率の説明に供するγ線検出器での同時計数を示した模式図である。
【図5】LORと交叉する可能性のあるボクセルと保持用配列との説明に供する模式図である。
【図6】γ線検出器に外接する平行六面体の模式図である。
【図7】外接六面体およびボクセルの断面に関する模式図である。
【図8】準乱数を用いた端点の選択および本実施例におけるサブLORの決定の説明に供する模式図である。
【図9】サブLORの本数と再構成画像のノイズ(%)との関係を示したグラフである。
【実施例】
【0027】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図であり、図2は、γ線検出器の概略斜視図である。
【0028】
本実施例に係るPET装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1を備えている。この天板1は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸Zに沿って平行移動するように構成されている。このように構成することで、天板1に載置された被検体Mは、後述するガントリ2の開口部2aを通って、頭部から順に腹部、足部へと走査されて、被検体Mの画像を得る。なお、走査される部位や各部位の走査順序については特に限定されない。
【0029】
天板1の他に、本実施例に係るPET装置は、開口部2aを有したガントリ2と、γ線検出器3とを備えている。γ線検出器3は、被検体Mの体軸Z周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ2内に埋設されている。γ線検出器3は、この発明における検出器に相当する。
【0030】
その他にも、本実施例に係るPET装置は、天板駆動部4とコントローラ5と入力部6と出力部7とメモリ部8と同時計数回路9と交叉範囲算出部10と端点選択部11とサブLOR決定部12とシステム行列算出部13と再構成部14とを備えている。天板駆動部6は、天板1の上述した移動を行うように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。交叉範囲算出部10は、この発明における交叉範囲算出手段に相当し、端点選択部11は、この発明における端点選択手段に相当し、サブLOR決定部12は、この発明におけるサブLOR決定手段に相当し、システム行列算出部13は、この発明におけるシステム行列算出手段に相当し、再構成部14は、この発明における再構成手段に相当する。
【0031】
コントローラ5は、本実施例に係るPET装置を構成する各部分を統括制御する。コントローラ5は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。
【0032】
入力部6は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ5に送り込む。入力部6は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部7はモニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
【0033】
メモリ部8は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例では、同時計数回路9で同時計数された計数値(カウント)や同時計数した2つのγ線検出器3からなる検出器対やLORといった同時計数に関するデータや、交叉範囲算出部10で求められた交叉範囲分のデータや、準乱数や、システム行列算出部13で求められたシステム行列や、再構成部14で処理された画像などについてはRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。特に、本実施例では、交叉範囲算出部10で求められた交叉範囲分のデータが記憶可能な交叉範囲メモリ部8aをメモリ部8内のメモリ領域内に有しており、交叉範囲分のデータを交叉範囲メモリ部8aに書き込んで記憶し、システム行列算出部13によるシステム行列の算出時に交叉範囲メモリ部8aから読み出す。また、本実施例では、準乱数列(α0s,α1s,…,α5s)が記憶可能な準乱数メモリ部8bをメモリ部8内のメモリ領域内に有しており、準乱数列に基づいた端点やサブLORの算出時に準乱数メモリ部8bから読み出す。ROMには、各種の核医学診断を含めて撮像を行うためのプログラム等を予め記憶しており、そのプログラムをコントローラ5が実行することでそのプログラムに応じた核医学診断をそれぞれ行う。
【0034】
交叉範囲算出部10と端点選択部11とサブLOR決定部12とシステム行列算出部13と再構成部14とは、例えば上述したメモリ部8などに代表される記憶媒体のROMに記憶されたプログラムあるいは入力部6などに代表されるポインティングデバイスで入力された命令をコントローラ5が実行することで実現される。
【0035】
放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線をγ線検出器3のシンチレータブロック31(図2を参照)が光に変換して、変換されたその光をγ線検出器3の光電子増倍管(PMT: Photo Multiplier Tube)33(図2を参照)は増倍させて電気信号に変換する。その電気信号を画像情報(画素値、すなわちγ線検出器3で同時計数されたカウント値)として同時計数回路9に送り込む。
【0036】
具体的には、被検体Mに放射性薬剤を投与すると、ポジトロン放出型のRIのポジトロンが消滅することにより、2本のγ線が発生する。同時計数回路9は、シンチレータブロック31(図2を参照)の位置とγ線の入射タイミングとをチェックし、被検体Mの両側にある2つのシンチレータブロック31でγ線が同時に入射したときのみ、送り込まれた画像情報を適正なデータと判定する。一方のシンチレータブロック31のみにγ線が入射したときには、同時計数回路10は棄却する。つまり、同時計数回路9は、上述した電気信号に基づいて、2つのγ線検出器3においてγ線が同時観測されたことを検出する。
【0037】
同時計数回路9に送り込まれた画像情報を、交叉範囲算出部10や端点選択部11やサブLOR決定部12やシステム行列算出部13や再構成部14に送り込む。再構成部14は、システム行列算出部13で求められたシステム行列に基づいて再構成して、被検体Mの画像を求める。具体的には、システム行例に基づいて、ポジトロンの分布画像を画像として再構成部14は生成する。画像を、コントローラ5を介して出力部7に送り込む。このようにして、再構成部14で得られた画像に基づいて核医学診断を行う。交叉範囲算出部10や端点選択部11やサブLOR決定部12やシステム行列算出部13の具体的な機能については後述する。
【0038】
γ線検出器3は、図2に示すようにシンチレータブロック31と、そのシンチレータブロック31に対して光学的に結合されたライトガイド32と、そのライトガイド32に対して光学的に結合された光電子増倍管(以下、単に「PMT」と略記する)33とを備えている。シンチレータブロック31を構成する各シンチレータ素子は、γ線の入射に伴って発光することでγ線から光に変換する。この変換によってシンチレータ素子はγ線を検出する。シンチレータ素子において発光した光がシンチレータブロック31で十分に拡散されて、ライトガイド32を介してPMT33に入力される。PMT33は、シンチレータブロック31で変換された光を増倍させて電気信号に変換する。その電気信号は、上述したように画像情報(画素値)として同時計数回路9(図1を参照)に送り込まれる。
【0039】
次に、交叉範囲算出部10や端点選択部11やサブLOR決定部12やシステム行列算出部13の具体的な機能について、図3〜図8を参照して説明する。図3は、再構成工程を含んだ一連の再構成方法の流れを示すフローチャートであり、図4は、従来の微小領域への検出確率の説明に供するγ線検出器での同時計数を示した模式図であり、図5は、LORと交叉する可能性のあるボクセルと保持用配列との説明に供する模式図であり、図6は、γ線検出器に外接する平行六面体の模式図であり、図7は、外接六面体およびボクセルの断面に関する模式図であり、図8は、準乱数を用いた端点の選択および本実施例におけるサブLORの決定の説明に供する模式図である。図4、図6ではγ線検出器3として、シンチレータブロック31のみを図示して、ライトガイド32やPMT33については図示を省略する。
【0040】
ボクセルνから発生したγ線フォトンがi番目のLOR(L)でaijの確率で検出されるとする。従来では、図4に示すように、LORの両端の結晶ごとに微小領域sに細分化して、微小領域s間で結ばれる仮想上の直線をサブLORとする。図4では代表して、1つのサブLORのみを図示しているが、実際には微小領域sの総数(サンプリング数)Nだけ、サブLORが存在する。なお、サブLORは必ずしもLORに対して平行である必要はないことに留意されたい。また、各サブLORは必ずしも等間隔である必要はないことに留意されたい。νから生じたγ線フォトンがγ線検出器3の微小領域sでaij(s)の確率で検出される。
【0041】
従来の場合には、画像の高分解能化を実現するために結晶を3次元の各方向に一様に分割して微小領域sの細分化を行う。本実施例では、準乱数に基づいて端点を選択し、ひいてはサブLORを決定するが、その説明についてはステップS2、S3で後述する。先ず、交叉範囲について説明する。
【0042】
(ステップS1)交叉範囲算出
従来において、各Lについてボクセル数Jに等しい配列A(図5を参照)を用意し、下記(2)式で加算を行えば、システム行列中の要素であるaijを求めることができる。しかし、実際には、上述したようにLORの形状が細いチューブ状であるので、大半のボクセルνはLOR(L)と交叉せず、これら交叉しないボクセルνに対応するaijは“0”である。そこで、本実施例では、交叉範囲算出部10(図1を参照)は、LOR(L)と交叉する可能性のあるボクセルνを事前にリストアップして、これに対応するaijのみを保持する配列A´(図5を参照)を用意して、下記(2)式を用いてaij(s)を加算してaijを求める。さらに言えば、後述するステップS3で決定されたサブLORであり、かつ、この交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素であるaijを求めることになる。
【0043】
より具体的に説明すると、図5に示すように、画像全体を示す視野内のボクセル数Jに等しい配列Aにおいて、交叉範囲算出部10(図1を参照)は、LOR(L)とボクセルνとの交叉範囲を求めるために交叉範囲を示す保持用配列A´を求める。LOR(L)と交叉する可能性のあるボクセルνを、図5では斜線のハッチングで示す。
【0044】
上述した交叉範囲を求めるには、図6に示すように、LOR両端にある検出器3,3に外接する平行六面体HEXで近似して3次元の交叉範囲を求める。3次元の交叉範囲を求めるには、LOR両端にある検出器3,3を含み、かつできるだけ小さい平行六面体HEXを考える。この場合には、上述した検出器3,3に外接する平行六面体HEXが、最も小さい平行六面体となり、この平行六面体HEXと交叉するボクセルνをLOR(L)と交叉する可能性のあるボクセルνとする近似を行うことで3次元の交叉範囲を求めることができる。すなわち、図5に戻って説明すると、平行六面体HEXを含む最小範囲のボクセルνの集合体が、図5の斜線のハッチングで示す交叉範囲となる。
【0045】
上述した平行六面体HEXでは、好ましくは、平行六面体を形成する各々の面を長方形あるいは正方形と設定する。このように平行六面体HEXを設定することで、図7に示すように、LOR(L)が直交する平行六面体HEXの断面も長方形あるいは正方形となり、その断面の各辺(図7では太枠で表記)もボクセル境界面と平行になる。このときの交叉範囲の断面も、図7では斜線のハッチングで示す。そして、サイズも、その「長辺×短辺×視野(FOV)の一辺」(断面が正方形の場合には、「(断面の一辺)×視野(FOV)の一辺」)の3次元配列となり、システム行列の算出に必要な初期化作業に関するプログラム作成が簡略化される。
【0046】
このように求められた保持用配列A´を交叉範囲分のデータとして、交叉範囲メモリ部8a(図1を参照)に書き込んで記憶する。そして、システム行列算出部13(図1を参照)によるシステム行列の算出時(ステップS4)に交叉範囲メモリ部8aから読み出す。また、本実施例では、好ましくは、この交叉範囲内から端点を選択するために、端点選択部11(図1を参照)による端点の選択時(ステップS2)でも交叉範囲メモリ部8aから読み出す。このステップS1は、この発明における交叉範囲算出工程に相当する。
【0047】
(ステップS2)端点選択
次に、微小領域sで検出されるサブLORとボクセルνとの交叉長をlij(s)とする。この交叉長lij(s)を用いてaijは下記(2)式のように表される。ここで、下記(2)式中のAは、i番目のLORであるL(i=0,1,…,I−1)でγ線フォトンが検出される感度を表す。
【0048】
【数2】

【0049】
上述したように、従来の場合には、結晶を3次元の各方向に一様に分割して、サブLORの端点を決定した後に、その分割数のサブLORの分だけ上記(2)式で加算を行えば、システム行列中の要素であるaijを求めることができる。両端の結晶をそれぞれ3次元方向に細分化して平均化することは、6次元積分を実行することに相当する。高次元の数値積分を効率的に求める手法として、準乱数を用いてサンプリング点を定める「準MonteCarlo法」と呼ばれる手法が知られている。準乱数とは、通常の乱数よりも空間内に一様に分布するように事前に定められた規則にしたがって生成される数列のことであり、等分割する場合よりも少ないサンプリング点で高精度な積分値が得られる手法である。
【0050】
本実施例では、6次元の準乱数列(α0s,α1s,…,α5s)を用いて端点選択部11(図1を参照)は、図8に示すように決定する。なお、この際、好ましくは、ステップS1で求められた交叉範囲内から端点を選択するようにすると、端点選択部11での演算負担を低減させることができる。もちろん、端点選択部11で端点を選択した後に、交叉範囲内に含まれる端点のみを選択してもよい。
【0051】
準乱数列(α0s,α1s,…,α5s)については、上述した非特許文献4のようにHaltonの点列で求められたものを用いる。その際、準乱数列の値を正規化して区間〔0,1〕に収めることが可能であり、図8に示すように、結晶の寸法をαis倍するなどして端点を選択すればよい。例えば、同時計数の対となる一方のγ線検出器3について、結晶の3次元方向をx方向,y方向,z方向としたとき、x方向の結晶の全長をLとするとともに、y方向の結晶の全長をLとし、z方向の結晶の全長をLとすると、端点の座標を(α0s・L,α1s・L,α2s・L)とすることができる。同時計数の対となる残りのγ線検出器3についても、同様に、残りの準乱数列(α3s,α4s,α5s)を適用することで、端点を選択することができる。このステップS2は、この発明における端点選択工程に相当する。
【0052】
(ステップS3)サブLOR決定
選択された各γ線検出器3内の端点をそれぞれ結んで、サブLOR決定部12(図1を参照)はサブLORを決定する。このステップS3は、この発明におけるサブLOR決定工程に相当する。
【0053】
(ステップS4)システム行列算出
上述したように、交叉範囲メモリ部8aから読み出された交叉範囲分のデータ(保持用配列A´)を用意し、上記(2)式を用いてaij(s)を加算していけば、システム行列算出部13(図1を参照)はシステム行列中の要素であるaijを求めることができる。さらには、この交叉範囲に含まれる端点で決定されたサブLORの分だけ、上記(2)式を用いてaij(s)を加算していけば、システム行列算出部13はaijを求めることができる。このステップS4は、この発明におけるシステム行列算出工程に相当する。
【0054】
(ステップS5)再構成
再構成部14(図1を参照)は、システム行列算出部13で求められたシステム行列に基づいて再構成する。システム行列に基づいた再構成について、上述した非特許文献1を参照して説明する。ここでは、list-mode DRAMA法(Dynamic Row-Action Maximum Likelihood Algorithm)を適用して説明する。list-mode DRAMA法では、γ線フォトンが観測されたイベント(事象)を時系列に並べたデータを用いて画像を再構成する。
【0055】
γ線検出器3で検出されたイベントの総数をTとし、t番目のイベント(t=0,1,…,T−1)に対応するLORをi(t)とする。各イベントをL個のサブセットS(l=0,1,…,L−1)に分割する。各ボクセルν(j=0,1,…,J−1)に関し、k回目(k=0,1,…)の反復におけるl番目のサブセットに対応する画素値更新が行われる直前,直後の画素値をそれぞれx(k,l),x(k,l+1)とする。
【0056】
偶発、散乱イベントや吸収の効果を無視した場合、画素値x(k,l)の更新式は下記(3)式のように表される。
【0057】
【数3】

【0058】
なお、上記(3)式中のλ(k,l)は緩和パラメータ(relaxation parameter)であり、上記(3)式中のCは規格化行列(normalization matrix)である。また、pljは「Blocking Factor」と呼ばれ、選び方には任意性があるが、本実施例ではpljがlに依らないBlocking Factor Aを用いている(下記(4)式を参照)。
【0059】
【数4】

【0060】
先ず、考えられる全てのLOR(N/2程度の本数)についてaijを加算し、Σaij(i=0,1,…までのaijの総和)を求める。Σaijは再構成された画像(再構成画像)と等しいサイズを持つ画像で、ボクセルνがいずれかのLORで検出される確率を表すので、「感度分布マップ」と呼ぶ。この感度分布マップを用いることで、上記(3)式中のC、pljを求めることができる。
【0061】
具体的には、初期画像であるx(0,0)を適宜に設定する。初期画像x(0,0)については、例えば一様な画素値を有する画像であればよく、x(0,0)>0とする。設定された初期画像x(0,0)と、ステップS4で求められたaij(上記(3)式ではi→i(t)としているので、ai(t)j)とを用いて、上記(3)式に繰り返し代入することで、x(0,0),…,x(0,L−1)が逐次に求められ、最終的に求められたx(0,L−1)をx(1,0)とすることでx(1,0)に繰り上げる。以下、同様に、xを順に繰り上げる(x(0,0),x(1,0)…,x(k,0))。反復を表すkの回数については特に限定されず、適宜に設定すればよい。このように最終的に求められたxをそれに対応するボクセルνごとに並べることで再構成部14(図1を参照)は再構成を行い、被検体Mの画像を求める。このステップS5は、この発明における再構成工程に相当する。
【0062】
なお、システム行列に基づいた再構成については、上述したDRAMA法に限定されず、スタティックな(つまり静的な)RAMLA法(Row-Action Maximum Likelihood Algorithm)でもよいし、ML−EM法(Maximum Likelihood Expectation Maximization)でもよいし、OSEM法(Ordered Subset ML-EM)でもよい。上記(3)式のような逐次近似式を用いた逐次近似法を用いて再構成するのが好ましい。
【0063】
上述の構成を備えた本実施例に係るPET装置によれば、端点選択部11は、同時計数される2つのγ線検出器3内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択し(ステップS2)、サブLOR決定部12は、2つのγ線検出器3間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、端点選択部11で選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定する(ステップS3)。システム行列の算出に際して、従来ではLORの両端の結晶を細分してサブLORを決定して、システム行列を求めていたのに対して、本実施例に係るPET装置によれば、空間内に一様に分布するように事前に定められた規則にしたがって生成された準乱数を用いて端点を選択し、その端点間で結ぶことでサブLORを決定して(ステップS3)、システム行列算出部13は、サブLORごとの検出確率aijを演算することによりシステム行列を求めている(ステップS4)。そして、そのシステム行列に基づいて、ポジトロンの分布画像を画像として再構成部14は生成する(ステップS5)。したがって、システム行列の算出に先立って必要なデータが、一様に分割して得られた従来の全てのサブLORから分割する場合よりも少ないサンプリング点(端点)で得られたサブLORへ低減する。その結果、画像再構成の高速化を実現することができる。なお、従来と同じ演算時間にすれば、その分だけ画像の精度を向上させることができる。
【0064】
本実施例では、画素は3次元のボクセルからなり、各γ線検出器3の3次元内に分布する3つの準乱数に基づいてサブLORを決定している。同時計数する2つのγ線検出器3では、合計6次元空間内に一様に分布する6次元の準乱数列(α0s,α1s,…,α5s)を用いて端点を選択して、これらを結んだサブLORを用いてシステム行列を求めている。
【0065】
本実施例では、好ましくは、同時計数される2つのγ線検出器3を結ぶ仮想上の直線である同時計数LORと画素との交叉範囲を求める(ステップS1)。ステップS1では、サブLORごとの検出確率であり、かつ交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素を演算することによりシステム行列を求める。システム行列の算出に際して、従来では視野内にある全データのシステム行列中の要素aijを演算して、システム行列を求めていたのに対して、本実施例によれば、ステップS4では、サブLORごとの検出確率であり、かつ交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素aijを上記(2)式を用いて演算して、システム行列を求めている。したがって、システム行列の算出に先立って必要なデータが従来の視野内にある全データ(配列A)から交叉範囲分のデータ(保持用配列A´)へ低減して、画像再構成の高速化をより一層実現することができる。
【0066】
なお、円筒ファントムを用いて、従来の一様分割で画像を再構成した場合と、本実施例のように準乱数を用いてサンプリング点を定める準MonteCarlo法で画像を再構成した場合とで、再構成画像はほぼ同程度の分解能が得られたことがシミュレーション結果から確認されている。
【0067】
また、図9に示すように、サブLORの本数と再構成画像のノイズ(%)との関係の比較からも明らかなように、同じサブLOR数で比較すると、準MonteCarlo法(図9では準モンテカルロ法)を用いた方が、ノイズが小さくなっていることがわかる。サブLOR数が等しければ、両手法の演算時間は等しくなるので、同じ演算時間で比較すれば、準MonteCarlo法を用いた方が高精度の画像が得られることが図9からもわかる。
【0068】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0069】
(1)上述した実施例では、ポジトロンCT装置(PET装置)単独であったが、PET装置とCT装置とを組み合わせたPET−CT装置にも適用することができる。
【0070】
(2)上述した実施例では、画素は3次元のボクセルからなり、各検出器の3次元内に分布する3つの準乱数に基づいてサブLORを決定したが、画素は2次元のピクセル(pixel)からなる場合に適用してもよい。この場合には、各検出器の2次元内に分布する2つの準乱数(2つの検出器で合計4次元空間内に一様に分布する4つの準乱数)に基づいてサブLORを決定すればよい。
【0071】
(3)上述した実施例では、画素は3次元のボクセルからなり、LOR両端にある検出器に外接する平行六面体で近似して3次元の交叉範囲を求めたが、画素は2次元のピクセル(pixel)からなる場合に適用してもよい。この場合には、LOR両端にある検出器に外接する平行四辺形あるいは長方形で近似して2次元の交叉範囲を求めればよい。
【0072】
(4)上述した実施例では、LORと画素との交叉範囲を求め、サブLORごとの検出確率であり、かつ交叉範囲に含まれるシステム行列中の要素を演算することによりシステム行列を求めたが、図5に示すように画像全体を示す視野内のボクセル数Jに等しい配列Aを対象にして、サブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めてもよい。
【符号の説明】
【0073】
3 … γ線検出器
10 … 交叉範囲算出部
11 … 端点選択部
12 … サブLOR決定部
13 … システム行列算出部
14 … 再構成部
α0s,α1s,…,α5s … 準乱数
… i番目のLOR
A´ … (交叉範囲を示す)保持用配列
ij … 確率(システム行列中の要素)
ν … ボクセル
HEX … 平行六面体
M … 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に投与されたポジトロン放射性薬剤から放出される放射線を検出して電気信号を出力する複数の検出器と、前記電気信号に基づいて、2つの前記検出器において放射線が同時観測されたことを検出する同時計数回路と、前記同時計数回路の出力に基づいて、システム行列を算出するシステム行列算出手段と、前記システム行例に基づいて、前記ポジトロンの分布画像を画像として生成する再構成手段とを有するポジトロンCT装置であって、前記同時計数される2つの検出器内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択する端点選択手段と、前記2つの検出器間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、前記端点選択手段で選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定するサブLOR決定手段とを備え、前記サブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めることを特徴とするポジトロンCT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポジトロンCT装置において、画素は3次元のボクセルからなり、各検出器の3次元内に分布する3つの準乱数に基づいて前記サブLORを決定することを特徴とするポジトロンCT装置。
【請求項3】
被検体内に投与されたポジトロン放射性薬剤から放出される放射線に基づくポジトロンの分布画像を画像として生成する再構成方法であって、一連の再構成方法は、(a)前記放出される放射線が2つの検出器において同時観測されたことを検出することで放射線を同時計数する際に、その同時計数される2つの検出器内における各結晶内部の点を、準乱数を用いて選択する端点選択工程と、(b)前記2つの検出器間で結ぶ仮想上の直線であるサブLORを、前記端点選択工程で選択された点を端点として端点間で結ぶことで決定するサブLOR決定工程と、(c)前記サブLOR決定工程で決定された前記サブLORごとの検出確率を演算することによりシステム行列を求めるシステム行列算出工程と、(d)前記システム行列算出工程で求められたシステム行列に基づいて、前記ポジトロンの分布画像を画像として生成する再構成工程とを備えることを特徴とする再構成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の再構成方法において、画素は3次元のボクセルからなり、前記サブLOR決定工程では、各検出器の3次元内に分布する3つの準乱数に基づいて前記サブLORを決定することを特徴とする再構成方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の再構成方法において、前記同時計数される2つの検出器を結ぶ仮想上の直線である同時計数LORと画素との交叉範囲を求める交叉範囲算出工程を備え、前記システム行列算出工程では、前記サブLORごとの検出確率であり、かつ前記交叉範囲に含まれる前記システム行列中の要素を演算することによりシステム行列を求めることを特徴とする再構成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の再構成方法において、前記画素は3次元のボクセルからなり、前記交叉範囲算出工程では、前記LOR両端にある前記検出器に外接する平行六面体で近似して3次元の前記交叉範囲を求めることを特徴とする再構成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の再構成方法において、前記平行六面体を形成する各々の面が長方形あるいは正方形であることを特徴とする再構成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−266235(P2010−266235A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115658(P2009−115658)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】