説明

ポリアミド樹脂組成物

【課題】 耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性に優れた組成物、更には導電性にも優れる組成物を提供する。
【解決手段】 (A)ポリアミド、(B)ポリフェニレンエーテル及び(C)シングルサイト触媒で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体、必要に応じ、(D)導電性フィラー及び/又は(E)芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体及び/またはその水素添加物から成るポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐衝撃性・表面平滑性及び吸水後の寸法変化に優れるポリアミド樹脂組成物に関する。本発明のポリアミド樹脂組成物は自動車部品、電気・電子部品、機械部品等の用途に幅広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】ポリアミド−ポリフェニレンエーテルからなるポリマーアロイはエラストマーを配合することにより極めて有益な材料となり、古くから種々の用途に利用されている。例えば特開昭61−204262号公報には、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及びスチレン系炭化水素ポリマーブロック−共役ジエン系エラストマーブロック共重合体からなる組成物が開示されている。また、特開昭62−1289350号公報、特開平2−135246号公報、更には特開平5−339496号公報には、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、エチレン−α−オレフィン共重合体等を含むゴム状重合体からなる組成物が耐衝撃性の向上に有効であるという技術が開示されている。
【0003】しかしながら、これらの技術では衝撃性の向上は見られるが、連続相であるポリアミドが大気中の水分を吸収し、成形片の寸法が大きく変化する現象が見られ、これが大きな問題となっている。また、最近になりICトレー材料や自動車やオートバイの静電塗装を行う外装品を中心に導電性を付与した材料の要求が高まっている。導電性材料に対して市場からは、上記した耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性に加え、高い導電性が要求されている。
【0004】導電性樹脂組成物に関する公知の技術として、例えば特開平8−48869号公報には、相溶化されたポリフェニレンエーテル−ポリアミドのベース樹脂に導電性カーボンブラックを配合することにより、低い溶融粘度と高い耐衝撃性を持った導電性樹脂組成物が得られる技術が開示されている。また、特開平10−310695号公報には、ポリフェニレンエーテル、エチレン性不飽和構造単位を特定量以上含む衝撃改良ポリマー、多種のポリアミド及び導電性カーボンブラックからなる導電性組成物の技術が開示されている。
【0005】しかしながら、上記の技術でいう導電性とは、成形片を折りとった破断面間の導電性を測定しており、成形片スキン層の影響を完全に無視した測定方法となっている。通常、成形体に帯電させる場合、成形片を破断してから電圧をかけることは実際には行われておらず、このような導電性は、市場においてまったく実用的ではない。しかもこれらの技術によって得られる組成物は、表面外観(表面平滑性)に劣るため、更に利用価値の低いものとなってしまっている。
【0006】一般的に導電性と表面平滑性は相反する特性である。つまり表面平滑性に優れる材料ほど導電性が劣る傾向にある。導電性測定は、対面する2つの面にそれぞれ銀ペーストを塗布し、その間の抵抗値を測定することにより行われる。そのため、表面平滑性に優れる材料ほど銀ペーストとの接触面積が減少し、抵抗値は大きくなる傾向となる。しかしながら、市場からは、耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性は損なうことなく、しかも成形片を折りとることなく導電性を発現することのできる程の高い導電性を持つ材料が要求されている。
【0007】一方、特開平2−201811号公報には、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、導電性カーボンブラックからなる樹脂組成物において、導電性カーボンブラックを主としてポリアミド中に存在させる技術が開示されており、成形片を折りとることなく導電性(表面抵抗)が発現可能であることが開示されている。しかしながら、この技術では、組成物としての重要な特性(耐衝撃性、表面平滑性、吸水後の寸法変化)が大きく損なわれるため、利用価値の低いものとなってしまう。上述したように、市場の要求である耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性を完全に満足する技術がないのが現状であった。また、これに成形片を折りとることなく導電性を発現することのできる程の高い導電性を付与することは更に困難なことであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述したような従来技術では解決できなかった問題点を解消しようとするものである。すなわち本発明は、耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性に優れた組成物を提供することを目的とする。ここでいう吸水後の低寸法変化とは、吸水率が同じであるにもかかわらず成形片の寸法変化が小さいということである。また、本発明は耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性に優れ、更に導電性にも優れる組成物を提供することも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことにポリフェニレンエーテル、ポリアミド、シングルサイト触媒で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体からなる組成物が耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性に優れた組成物であることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、(A)ポリアミド50〜95重量部、(B)ポリフェニレンエーテル50〜5重量部の合計100重量部に対して、(C)シングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上で変性されたシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体1〜30重量部からなることを特徴とする耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性に優れるポリアミド樹脂組成物に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明する。本発明で使用することのできる(A)成分のポリアミドの種類としては、ポリマー主鎖に、アミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、いずれのものも使用することができる。一般にポリアミドは、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
【0011】上記のジアミンとしては、大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルナノメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0012】ジカルボン酸としては、大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマ−酸などが挙げられる。ラクタム類としては、具体的にはε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどが挙げられる。
【0013】また、アミノカルボン酸としては、具体的にはε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸などが挙げられる。本発明においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸は、単独あるいは二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類はいずれも使用することができる。また、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマ−の段階まで重合し、押出機等で高分子量化したものも好適に使用することができる。
【0014】特に本発明で有用に用いることのできるポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6(MXD:m−キシリレンジアミン)、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド6/12/6T、ポリアミド66/12/6T、ポリアミド6/12/6I、ポリアミド66/12/6Iなどが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミド類も使用することができる。これらは、もちろん2種以上組み合わせて使用しても構わない。
【0015】本発明で使用されるポリアミドの好ましい数平均分子量は5,000〜100,000であり、より好ましくは10,000〜30,000である。本発明におけるポリアミドは、分子量の異なる複数のポリアミドの混合物であっても良い。例えば数平均分子量10,000以下の低分子量ポリアミドと、30,000以上の高分子量ポリアミドとの混合物、数平均分子量10,000以下の低分子量ポリアミドと、15,000程度の一般的なポリアミドとの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、異種のポリアミドで分子量の異なるものを混合しても、もちろん構わない。
【0016】ポリアミドの末端基は、ポリフェニレンエーテルとの反応に関与する。ポリアミドは末端基として一般にアミノ基、カルボキシル基を有しているが、一般的にカルボキシル基濃度がアミノ基濃度を上回ると、耐衝撃性が低下し、流動性が向上し、逆にアミノ基濃度がカルボキシル基濃度を上回ると耐衝撃性が向上し、流動性が低下する。これらの好ましい比はアミノ基/カルボキシル基比で、9/1〜1/9であり、より好ましくは8/2〜1/9、更に好ましくは6/4〜1/9である。また、末端のアミノ基の濃度としては少なくとも10ミリ当量/kgであることが好ましく、更に好ましくは30ミリ当量/kg以上である。これらポリアミドの末端基の調整方法は、当業者には明らかであるような公知の方法を用いればよく、例えば、ポリアミドの重合時にジアミン類やジカルボン酸類の添加、モノカルボン酸の添加などが挙げられる。本発明におけるポリアミドは、末端基濃度の異なる複数のポリアミドの混合物であってももちろん構わない。
【0017】また、ポリアミドの耐熱安定性を向上させる目的で公知となっている下記式(1)に示したような金属系安定剤を使用することもできる。
【化1】


(式中、Mは銅、カリウム、ニッケル、錫及びセリウムからなる群より選ばれる金属イオンを表し、Xはハロゲン化物イオンおよびカルボキシレートイオンからなる群より選ばれるイオン基であり、nは1〜6の整数、yはMの正イオン電荷を表す整数、zはXの負イオン電荷を表す整数である。)
金属系安定剤の具体例としては、CuI、CuCl2 、酢酸銅、ヨウ化カリウム、ステアリン酸セリウム等が挙げられ、これらは、併用しても構わない。金属系安定剤の好ましい配合量はポリアミドの100重量部に対して、0.001〜1重量部である。
【0018】本発明で使用できる(B)成分のポリフェニレンエーテルとは、下記式(2)の構造の繰り返し単位を含有し、還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が、0.15〜0.70の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60の範囲、より好ましくは0.40〜0.55の範囲にあるホモ重合体及び/又は共重合体である。
【化2】


〔R1 、R4 は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わし、R2 、R3 は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
これらは、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても、何ら問題なく使用することができる。
【0019】本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0020】本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書に記載されているように第一塩化銅とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6−ジメチルフェノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報及び特開昭50−51197号公報及び同63−152628号公報等に記載された方法で容易に製造できる。また、本発明で使用できるポリフェニレンエーテルは、全部又は一部が変性されたポリフェニレンエーテルであっても構わない。ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルを指す。
【0021】該変性されたポリフェニレンエーテルの製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下で100℃以上、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の範囲の温度でポリフェニレンエーテルを溶融させることなく変性化合物と反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上360℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度で、ポリフェニレンエーテルと変性化合物を溶液中で反応させる方法等が挙げられ、これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法、及び(2)の方法が好ましく、更には(1)の方法が最も好ましい。
【0022】次に分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物について具体的に説明する。分子内に炭素−炭素二重結合とカルボン酸基、酸無水物基を同時に有する変性化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの酸無水物などが挙げられる。特にフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が良好で、フマル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。また、これら不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の1個又は2個のカルボキシル基がエステルになっているものも使用可能である。
【0023】分子内に炭素−炭素二重結合とグリシジル基を同時に有する変性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、エポキシ化天然油脂等が挙げられる。これらの中でグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートが特に好ましい。分子内に炭素−炭素二重結合と水酸基を同時に有する変性化合物としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オールなどの一般式Cn 2n-3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式Cn 2n-5OH、Cn 2n-7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコ−ル等が挙げられる。上述した変性化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0024】また、本発明に使用されるポリフェニレンエーテルは、重合溶媒に起因する有機溶剤が、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して5重量%未満の量で残存していても構わない。これら重合溶媒に起因する有機溶剤は、重合後の乾燥工程で完全に除去するのは困難であり、通常数百ppmから数%の範囲で残存しているものである。ここでいう重合溶媒に起因する有機溶媒としては、トルエン、キシレンの各異性体、エチルベンゼン、炭素数1〜5のアルコール類、クロロホルム、ジクロルメタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の1種以上が挙げられる。
【0025】また、本発明では、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して、ポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレンも含む)及び/又はハイインパクトポリスチレンを400重量部を越えない範囲で加えたものも含まれる。本発明においてのポリアミドとポリフェニレンエーテルの量比は、ポリアミド/ポリフェニレンエーテルが50/50〜95/5の範囲であることが好ましい。ポリアミド量が50重量%を下回ると表面平滑性が低下する。また95重量%を越えると耐衝撃性が低下する。
【0026】次に本発明で使用できる(C)成分は、シングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上で変性されたシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体である。これらは市販されており、公知である。例えば、特公平4−12283号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開平5−155930号公報、特開平3−163088号公報、米国特許5272236号報に記載されている。シングルサイト触媒は、シクロペンタジエニルあるいは置換シクロペンタジエニルを1ないし3分子含有するメタロセン触媒及び幾何学的制御による触媒などの活性点の性質が均一である触媒である。本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体(C)の重合方法は前記の特許公報などに示される気相法あるいは溶液法により重合することができる。好ましい重合法は、溶液法である。
【0027】エチレン単位と共重合できるモノマーとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ペンタデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、ノナデセン−1、またはエイコセン−1、イソブチレンなどの脂肪族置換ビニルモノマー及び、スチレン、置換スチレンなどの芳香族系ビニルモノマー、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、グリシジルアクリル酸エステル、グリシジルメタアクリル酸エステル、ヒドロキシエチルメタアクリル酸エステルなどのエステル系ビニルモノマー、アクリルアミド、アリルアミン、ビニル−p−アミノベンゼン、アクリロニトリルなどの窒素含有ビニルモノマー、ブタジエン、シクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、イソプレンなどのジエンなどを挙げることができる。
【0028】好ましくはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上とのコポリマーであり、更に好ましくは炭素数3〜16のα−オレフィン1種以上とのコポリマーであり、最も好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン1種以上とのコポリマーである。また、本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量としては、ウオータース社製150c−GPC装置で、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒とし、140℃、ポリスチレンスタンダードで測定した数平均分子量(Mn)が10,000以上であることが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000であり、更に好ましくは20,000〜60,000である。
【0029】また、本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の、前述のGPCによる測定で求めた分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量:Mw /Mn )は、3以下が好ましく、さらには1.8〜2.7がより好ましい。また、本発明のシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体の好ましいエチレン単位の含有率は、エチレン−α−オレフィン共重合体全量に対し30〜95重量%である。本発明においては、シングルサイト触媒で製造されたエチレン−α−オレフィンの共重合体の一部又は全部が、α,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体であっても構わない。ここでいう、α,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水フマル酸が挙げられ、これらの中で無水マレイン酸が特に好ましい。
【0030】本発明において、使用するエチレン−α−オレフィン共重合体はシングルサイト触媒で製造されたものであることが必須である。シングルサイト触媒以外の触媒で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を用いた場合は、組成物の流動性と導電性及び表面平滑性が低下するため好ましくない。本発明におけるシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又はそのα,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上での変性物の好ましい量比は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100重量部に対して1〜30重量部である。配合量が1重量部を下回ると、耐衝撃性が低下し、30重量部を越えると他の特性(例えば耐熱性等)が低下する。
【0031】本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい分散形態は、ポリアミドが連続相を形成し、それ以外の成分が数平均分散径10μm以下の分散相として存在している分散形態である。更に好ましくは、数平均分散径5μm以下である。ここでいう数平均分散径は、組成物の成形片中央部を流れ方向に対して垂直方向から観察した際の分散相の分散径である。具体的には、成形片を80℃に加熱したリンタングステン酸[12タングスト(VI)リン酸n水和物:H3 (PW1240)・nH2 O]10重量%水溶液に4時間浸漬し、ポリアミド部分を選択的に染色した後に、透過型電子顕微鏡で撮影し、得られた画像から、ポリアミド以外の部分、即ち、分散相の分散径を測定し、加算平均することにより求めることができる。また、分散形状が球形でない場合の分散径は、円相当直径をもって表す。例えば、楕円形の場合は、その短軸径と長軸径から楕円形の面積を求め、求めた面積から円相当直径を求め、これを分散径として表す。
【0032】本発明においては、(D)成分として導電性フィラーを(A)〜(C)成分の合計100重量部に対し、10重量部未満配合しても構わない。導電性フィラーを更に配合することにより、耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性に優れ、更に導電性にも優れるポリアミド樹脂組成物となる。本発明でいう導電性フィラーとは、樹脂に導電性能を付与するために添加されるすべての充填材が包含され、粒状、フレーク状及び繊維状フィラーなどが挙げられる。
【0033】粒状フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等が好適に使用できる。フレーク状フィラーとしては、アルミフレーク、ニッケルフレーク、ニッケルコートマイカ等が好適に使用できる。また、繊維状フィラーとしては、炭素繊維、炭素被覆セラミック繊維、カーボンウィスカー、アルミ繊維や銅繊維や黄銅繊維やステンレス繊維といった金属繊維等が好適に使用できる。これらの中では、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイトが特に好適である。さらにこれらの中でもカーボンブラックが最も好適である。
【0034】本発明で使用することのできる炭素繊維には、ポリアクリロニトリル(PAN)あるいは、ピッチ等を原料とした繊維を不活性雰囲気中で1000℃〜3500℃の間で焼成・炭化する事により得られる繊維はすべて包含される。好ましい繊維径は1〜30μmであり、より好ましくは5〜20μmである。本発明で使用することのできるカーボンブラックには、導電性付与に一般的に使用されているカーボンブラックはすべて包含される。好ましいカーボンブラックとしては、アセチレンガスを完全燃焼して得られるアセチレンブラックや、原油を原料にファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0035】特に好ましいカーボンブラックはジブチルフタレート(DBP)吸油量が70ml/100mg以上のものであり、より好ましくはDBP吸油量が100ml/100mg以上、更に好ましくは150ml/100mg以上のカーボンブラックである。ここでいうDBP吸油量とは、ASTM−D2414に定められた方法で測定した値である。また、カーボンブラックは、揮発分含量が1.0重量%未満のものがより好ましい。
【0036】市販品で入手可能な導電性カーボンブラックには、ケッチェンブラックインターナショナル社製のケッチェンブラックEC−600JD及びケッチェンブラックECが挙げられる。また、ハイペリオン・キャタリスト社から入手可能な炭素フィブリル等も使用可能である。本発明で使用することのできるグラファイトには、無煙炭、ピッチ等をアーク炉で高温加熱して得られるものはもちろんのこと、天然に産出される石墨も包含される。好ましい重量平均粒子径は1〜100μmであり、より好ましくは5〜50μmである。これら、導電性フィラーは公知の各種カップリング剤及び/又は収束剤を使用して、樹脂との密着性や取り扱い性を向上させても、もちろん構わない。
【0037】また本発明においては、(E)成分として芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体及びまたはその水素添加物を(A)〜(C)成分の合計100重量部に対し、30重量部未満の量で配合しても構わない。芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体及び/又はその水素添加物を添加することにより耐衝撃性と表面平滑性のバランスに更に優れる組成物となる。ここでいう芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを1個、好ましくは2個以上と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックを少なくとも1個含有する。また、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック重合体において芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との重量比は10/90〜90/10であることが望ましく、より好ましくは15/85〜80/20であり、さらに好ましくは15/85〜65/35である。これらは、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との重量比が異なるものを2種以上ブレンドしても構わない。また、鉱物油等を含有させたものも使用できる。
【0038】芳香族ビニル化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状あるいは放射状もしくはこれらの組み合わせのいずれであっても良く、共役ジエン化合物としてブタジエンを使用する場合は、ポリブタジエンブロック部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量が5〜80%が好ましく、さらには10〜70%が好ましい。
【0039】芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素添加物とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。また、本発明における芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体及び/又はその水素添加物の分子量としては、昭和電工社製GPC装置[SYSTEM21]で、クロロホルムを溶媒とし、40℃、ポリスチレンスタンダードで測定した数平均分子量(Mn)が、10,000〜500,000のものが好ましく、80,000〜300,000のものが最も好ましい。
【0040】これら芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体及びまたはその水素添加物は、異なるもの2種以上を混合して用いても構わないし、また、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基等で変性されたものを用いることも有用である。(E)成分の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体及び/又はその水素添加物の組成物中における存在形態に特に制限はないが、(B)成分のポリフェニレンエーテル中に存在することが好ましい。
【0041】本発明のポリアミド樹脂組成物においての各成分の好ましい量比は、(A)ポリアミド/(B)ポリフェニレンエーテル比が50/50〜95/5の合計100重量部に対して、(C)シングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又はそのα,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上の変性物が1〜30重量部である。また、本発明では、組成物の製造の際に相溶化剤を使用しても構わない。相溶化剤を使用する主な目的は、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物の物理的性質を改良することである。本発明で使用できる相溶化剤とは、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドまたはこれら両者と相互作用する多官能性の化合物を指すものである。この相互作用は化学的(たとえばグラフト化)であっても、または物理的(たとえば分散相の表面特性の変化)であってもよい。いずれにしても得られるポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物は改良された相溶性を示す。
【0042】本発明の実施の際に使用できるさまざまな相溶化剤の例としては、以下に説明するように、液体ジエンポリマ−、官能基含有ポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン類、オルガノシラン化合物、および、多官能性化合物がある。本発明で使用するのに適した液体ジエンポリマーとしては、共役ジエンのホモポリマー、ならびに共役ジエンと、他の共役ジエン、ビニルモノマー(たとえばスチレンおよびα−メチルスチレン)、オレフィン(たとえばエチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブチレン、ヘキセン−1、オクテン−1およびドデセン−1)、およびこれらの混合物より成る群の中から選択された少なくとも1種のモノマーとのコポリマーがあり、その数平均分子量は150〜10,000、好ましくは150〜5,000である。
【0043】これらのホモポリマーおよびコポリマーは、例えば米国特許第4054612号明細書、同第3876721号明細書および同第3428699号明細書に記載の方法によって製造することができる。これらポリマーの中には、特に、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(1,3−ペンタジエン)、ポリ(ブタジエン−イソプレン)、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリクロロプレン、ポリ(ブタジエン−α−メチルスチレン)、ポリ(ブタジエン−スチレン−イソプレン)、ポリ(ブチレン−ブタジエン)、などがある。
【0044】本発明で使用するのに適した官能基含有ポリマーとしては、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の官能基を含有したビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体が挙げられる。分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の官能基を含有したビニル化合物とは、ポリフェニレンエーテルの変性化合物として用いることのできるものと同一であり、これらから選ばれた1種以上を用いることができる。これらの中で、無水マレイン酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。また、芳香族ビニル化合物の例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。これら官能基含有ポリマーの中でも、最も好ましいものはスチレン−無水マレイン酸共重合体である。
【0045】本発明で使用するのに適したエポキシ化合物としては、(1)多価フェノール(たとえばビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシノールおよびヒドロキノン)とエピクロロヒドリンを縮合させることによって生成するエポキシ樹脂、(2)多価アルコール(たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリトリトールおよびトリメチロールエタンなど)とエピクロロヒドリンを縮合させることによって生成するエポキシ樹脂、(3)一価のアルコ−ル類と一価のフェノール類のグリシジルエーテル化生成物、例えば、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルおよびクレジルグリシジルエーテル、(4)アミノ化合物のグリシジル誘導体、たとえばアニリンのジグリシジル誘導体、ならびに(5)高級オレフィン、シクロアルケン、天然の不飽和油(たとえば大豆)または前記液体ジエンポリマーの各エポキシ化生成物などが挙げられる。
【0046】本発明で使用するのに適した酸化ポリオレフィンワックスとは公知であり、その説明およびその製法は米国特許第3822227号明細書および同第3756999号明細書ならびにドイツ特許公告第3047915号公報および同第2201862号公報に記載されている。一般に、これらはポリオレフィンの酸化または懸濁酸化によって製造される。
【0047】本発明で使用するのに適したキノン化合物の特徴は、非置換誘導体の分子内に6員の炭素環を少なくとも1個有し、環構造内に少なくとも2個のカルボニル基を有し(これらは両方とも同一の環内にあってもよいし、または2個以上の環がある場合には異なる環内にあってもよい。ただし、これらは単環式キノンの1,2配置または1,4配置に相当する位置を占める)、かつ、環構造内に少なくとも2個の炭素−炭素二重結合をもつ(この炭素−炭素二重結合とカルボニルの炭素−酸素二重結合は環構造内にあって、炭素−炭素二重結合とカルボニルの炭素−酸素二重結合は互いに共役している)ことである。非置換キノン内に2個以上の環が存在する場合、これらの環は縮合でも、非縮合でも、あるいは両者でもよい。非縮合環同士は、直接の炭素−炭素二重結合または=C−C=のような共役不飽和を有する炭化水素基によって結合されていてもよい。
【0048】また、置換キノンも本発明の範囲内に入る。置換が所望の場合置換度は1から置換可能な水素原子の最大数までとし得る。非置換キノン構造上に存在し得る各種置換基の例としては、ハロゲン、たとえば塩素、臭素、フッ素など、炭化水素基、たとえば分枝または非分枝で飽和または不飽和のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基およびシクロアルキル基、およびこれらのハロゲン化された誘導体、ならびに、ヘテロ原子、特に酸素、イオウまたはリンを有する類似の炭化水素基(これらの基はヘテロ原子を介して、たとえば酸素結合によってキノン環に結合する)がある。
【0049】各種キノン類の例としては、1,2−ベンゾキノン、1,4−ベンゾキノン、2,6−ジフェニルキノン、テトラメチルジキノン、2,2′−ジフェノキノン、4,4′−ジフェノキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン、2,6−ナフトキノン、クロラニル類、2−クロロ−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノンなどを挙げることができる。本発明の相溶化剤で使用するのに適したオルガノシラン化合物の特徴は、分子内に、(a)酸素結合を介して炭素に結合したケイ素原子を少なくとも1個、および(b)炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合及び/又はアミン基とメルカプト基より成る群の中から選択された官能基(ただしこれらの官能基は直接ケイ素原子に結合することはない)を少なくとも1個有することである。
【0050】このような化合物でC−O−Si成分は通常ケイ素原子に直接結合したアルコキシル基またはアセトキシ基として存在しており、これらアルコキシ基やアセトキシ基は一般に炭素原子数が15未満であり、ヘテロ原子(たとえば酸素)を含有していてもよい。さらにまた、この化合物中には2個以上のケイ素原子が存在していてもよく、このように多数のケイ素原子が存在する場合それらは酸素結合(たとえばシロキサン)、ケイ素結合または二官能性有機基(たとえばメチレン基やフェニレン基)を介して結合している。適切なオルガノシラン化合物の例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキサニル)エチルトリメトキシシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシシラン、ビニルトリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、5−ビシクロヘプテニルトリエトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0051】次に、本発明の相溶化剤として適した多官能性の化合物には3つのタイプがある。第一のタイプの多官能性化合物は、分子内に、(a)炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合と、(b)少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、酸ハロゲン化物基、無水物基、酸ハロゲン化物無水物基、酸アミド基、酸エステル基、イミド基、アミノ基またはヒドロキシ基とを両方とも有するものである。このような多官能性化合物の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、ジアミンと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などから選ばれるカルボン酸類とから得られる反応生成物、ジクロロ無水マレイン酸、マレイン酸アミド、不飽和ジカルボン酸(たとえばアクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、t−エチルアクリル酸、ペンテン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、リノール酸など)、以上の不飽和カルボン酸のエステル、酸アミドまたは無水物、不飽和アルコール(たとえばアルキルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、3−ブテン−1,4−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオールおよび式Cn 2n-5OH、Cn 2n-7OH、およびCn 2n-9OH(ただし、nは30までの正の整数)のアルコール類)、以上の不飽和アルコールの−OH基(1個または複数)をNH2 基で置き換えて得られる不飽和アミン、ならびに、官能化されたジエンポリマーおよびコポリマーが挙げられる。これらのうち、本発明の組成物用に好ましい相溶化剤は無水マレイン酸およびフマル酸である。このタイプの相溶化剤は本組成物のポリフェニレンエーテルとあらかじめ反応させることが可能である。
【0052】本発明で使用するのに適した第二のグル−プの多官能性相溶化剤化合物は、(a)式(OR)で表わされる基(式中、Rは水素またはアルキル基、アリール基、アシル基もしくはカルボニルジオキシ基である)と、(b)カルボン酸、酸ハロゲン化物、酸無水物、無水物、酸ハロゲン化物無水物、酸エステル、酸アミド、イミド、アミノおよびこれらの塩の中から選択された同じでも異なっていてもよい少なくとも2つの基とを両方とも有することで特徴付けられる。このグループの相溶化剤の典型例は、次式で表わされる脂肪族ポリカルボン酸、酸エステルおよび酸アミドである。
(RI O)m R(COORIIn (CONRIII IVsここで、Rは炭素原子が2〜20個、好ましくは2〜10個で直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素であり、RI は水素または炭素原子1〜10個、好ましくは1〜6個、最も好ましくは1〜4個のアルキル基、アリール基、アシル基もしくはカルボニルジオキシ基より成る群の中から選択され、RIIは各々独立して水素または炭素原子1〜20個、好ましくは1〜10個のアルキル基もしくはアリール基より成る群の中から選択され、RIII とRIVは各々独立して水素または炭素原子1〜10個、好ましくは1〜6個、最も好ましくは1〜4個のアルキル基もしくはアリール基より本質的に成る群の中から選択され、mは1に等しく、(n+s)は2以上であり、好ましくは2か3に等しく、nとsは各々が0以上である。また、(ORI )はカルボニル基に対してαかβであり、少なくとも2つのカルボニル基は2〜6個の炭素原子によって隔てられている。明らかに、RI 、RII、RIII およびRIVはこれらの置換基の炭素原子が6個未満の場合アリールにはなり得ない。
【0053】適切なポリカルボン酸を例示すると、たとえば無水物や水和酸などの各種市販形態を含めて、クエン酸、リンゴ酸およびアガリシン酸がある。これらの中でクエン酸およびリンゴ酸は、好ましい相溶化剤のひとつである。本発明に有用な酸エステルの例としては、たとえば、クエン酸アセチル、およびクエン酸モノステアリルおよび/またはクエン酸ジステアリルなどが挙げられる。本発明で有用な適した酸アミドとしては、たとえば、N,N′−ジエチルクエン酸アミド、N−フェニルクエン酸アミド、N−ドデシルクエン酸アミド、N,N′−ジドデシルクエン酸アミドおよびN−ドデシルリンゴ酸が挙げられる。
【0054】本発明で使用するのに適した第三のグループの多官能性相溶化剤化合物の特徴は、分子内に、(a)酸ハロゲン化物基、最も好ましくは酸塩化物基と、(b)カルボン酸基、カルボン酸無水物基および酸エステル基または酸アミド基、好ましくはカルボン酸基またはカルボン酸無水物基の少なくとも1個とを両方とも有することである。このグル−プに入る相溶化剤の例としては、トリメリト酸無水物酸塩化物、クロロホルミルコハク酸無水物、クロロホルミルコハク酸、クロロホルミルグルタル酸無水物、クロロホルミルグルタル酸、クロロアセチルコハク酸無水物、クロロアセチルコハク酸、トリメリト酸塩化物およびクロロアセチルグルタル酸を挙げることができる。さらに、このグル−プの相溶化剤はポリフェニレンエーテルの少なくとも一部分とあらかじめ反応させることによって相溶化剤をポリフェニレンエーテル官能化コンパウンドとして使用する事も可能である。
【0055】上記相溶化剤は各々米国特許第4315086号明細書および同第4642358号明細書等に詳細に記載されている。上記相溶化剤は単独で使用してもよいし、あるいはそれらを任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、これらは溶融混合の際に直接添加してもよいし、あるいはポリフェニレンエーテルもしくはポリアミドのいずれか一方もしくは両方、または本発明の組成物の製造の際に使用する他の樹脂状材料とあらかじめ反応させておいても構わない。これら、相溶化剤の好ましい量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの混合物100重量部に対して0.01〜20重量部であり、より好ましくは0.1〜10重量部である。本発明では、上記した成分のほかに、本成分の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
【0056】付加的成分の例を以下に挙げる。ポリエステル、ポリオレフィン等の他の熱可塑性樹脂、無機充填材(タルク、カオリン、ゾノトライト、ワラストナイト、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭素繊維、ガラス繊維など)、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、及び三酸化アンチモン等の難燃助剤等は(A)〜(C)成分の合計量100重量部に対して、それぞれ50部を越えない範囲で添加しても構わない。
【0057】また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ポリアミド樹脂用造核剤等の添加剤、各種過酸化物、スリップ剤、各種染料、酸化チタン等の顔料、離型剤等及び、上述した無機充填材と樹脂との親和性を高める為の公知のシランカップリング剤は、(A)〜(C)成分の合計量100重量部に対して、それぞれ10部を越えない範囲で添加しても構わない。もちろんこれら付加的成分を2種以上併用して使用することも可能である。本発明の組成物の製造方法として、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練方法が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練法が最も好ましい。この際の溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。
【0058】本発明における製造方法は特に制限はないが、好ましくは(1)(A)〜(C)成分を一括して添加し溶融混練する方法、(2)(B)成分をあらかじめ溶融混練した後、(A)成分及び(C)成分を追加供給し溶融混練する方法、(3)(A)成分及び(B)成分を溶融混練した後、(C)成分を追加供給し溶融混練する方法、(4)(B)成分と(C)成分をあらかじめ溶融混練した後、(A)成分を添加して溶融混練する方法。(5)(B)成分と(A)成分の一部を溶融混練した後、(A)成分の残りと、(C)成分を添加して溶融混練する方法等、種々のパターンが考えられるが、本発明の効果を損なわない限り、いずれの方法をとっても構わない。
【0059】このようにして得られる本発明のポリアミド樹脂組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形により各種部品の成形体として成形できる。本発明の組成物は、例えば、オートバイの外装部品用途・自動車の内装部品用途やフェンダー・ドアパネル等の外板・外装部品用途、電気・電子分野でのICトレー材料用途等に好適に利用することができる。
【0060】以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
(製造例1)
PA66の製造アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩2.4kg、及び純水2.5kgを10Lのオートクレーブの中に仕込み、よく攪拌した。充分窒素置換した後、攪拌しながら温度を室温から220℃まで約1時間かけて昇温した。この際、オートクレーブ内の水蒸気による自然圧で内圧はゲージ圧にして約1.77MPaになるが、1.77MPa以上の圧力にならないよう水を反応系外に除去しながらさらに約2時間加熱を続けた。その後、攪拌を停止し、内圧を徐々に低下させるためにオートクレーブ中の水を反応系外に除去し続け、約1時間かけて大気圧まで降圧した。加熱を止め、オートクレーブの全バルブを閉止して室温まで冷却した。冷却後オートクレーブを開け、約2kgのポリマーを採り出し粉砕した。得られたポリマーの硫酸相対粘度(ηr:ポリマー1g/95.5%硫酸100ml、25℃で測定)は、2.6であり、末端カルボキシル基濃度が75ミリ等量/kg、末端アミノ基濃度は45ミリ等量/kgであった。この得られたPAをPA66と称する。
【0061】(製造例2)
PA66/6Iの製造仕込みをアジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩2.00kgとイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩0.50kg、分子量調整用アジピン酸6.9g及び純水2.5kgに変えた以外は、すべて製造例1と同様に重合を行い、ポリマーを得た。このポリマーの硫酸相対粘度は、2.2であった。この得られたPAをPA66/6Iと称する。
【0062】(製造例3)
変性PPEの製造2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得られた還元粘度(0.5g/dlクロロホルム溶液、30℃測定)0.52のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(以下、単にPPEと略記)150kgと変性剤として、無水マレイン酸0.7kgを、ジャケット加熱可能な三井鉱山(株)社製FM500型ヘンシェルミキサーに入れ内部を窒素置換した後、撹拌羽根を高速回転し、剪断発熱により内容物を200℃まで50分かけて加熱した。ジャケット温度が200℃に到達した後、5分間高速回転を継続した後、冷水をジャケットに流し冷却し、固相状態で変性されたポリフェニレンエーテル(以下MPPEと略記)を得た。
【0063】内容物のうちの5gを100mlのクロロホルムに溶解後、300mlのアセトンを少量づつ滴下してポリマーを析出させ、ガラスフィルターを用いて濾別した。この操作を3回繰り返した後、140℃に設定した真空乾燥機で2時間真空乾燥を行った。次にこのMPPEを1gとり、内側からポリテトラフロロエチレンシート、アルミシート、鉄板の順に重ねたものの間にはさみ、280℃に温度設定したプレス成形機を用い、100kg/cm2 で圧縮成形しフィルムを得た。得られたフィルムそれぞれについて、日本分光社製FT/IR−420型フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、赤外分光測定を行った。MPPEフィルムに対する測定では、1790cm-1に、ポリフェニレンエーテルに付加した、マレイン酸由来のピークが観測された。PPEとマレイン酸の混合物を用いて、あらかじめ作成しておいた検量線式から計算されたマレイン酸の付加率は、0.34重量%であった。
【0064】(製造例4)
シングルサイト触媒を使用して製造されたエチレンとブテン−1の共重合体の無水マレイン酸変性物シングルサイト触媒を使用して製造されたエチレンとブテン−1の共重合体[ムーニー粘度ML1+4 (100℃)16、MFR3.6g/10分(190℃、2.16kg荷重)]100重量部に対して、無水マレイン酸1重量及び、ラジカル発生剤[パーヘキサ25B:日本油脂(株)社製]0.3重量部をドライブレンドし、200℃に設定した同方向回転二軸押出機(ZSK−25:ウェルナー&フライデラー社製:ドイツ国)に供給し、溶融混練し、無水マレイン酸変性物を得た。得られた反応生成物をアセトン抽出したあとのフィルムを赤外分光光度計で測定したところ、無水マレイン酸の付加率は0.9重量%であった。この得られたマレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体を、MEBR−1と略す。
【0065】(製造例5)エチレンとブテン−1の共重合体を、チーグラ系触媒を使用して製造されたエチレンとブテン−1の共重合体[ムーニー粘度ML1+4 (100℃)16、MFR3.6g/10分(190℃、2.16kg荷重)]に替えた以外は、すべて製造例4と同様にし、無水マレイン酸変性物を得た。得られた反応生成物の無水マレイン酸付加率は0.85重量%であった。この得られたマレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体を、MEBR−2と略す。
【0066】
【実施例1】320℃〜280℃にシリンダー温度を設定した、上流側と下流側にそれぞれ供給口のある同方向回転二軸押出機(ZSK−40:ウェルナー&フライデラー社製:ドイツ国)の上流側供給口より、クロロホルム溶液(0.5g/dl)の30℃測定での還元粘度が0.52のPPE37.8重量%及び、相溶化剤として無水マレイン酸0.28重量%を供給し、下流側供給口より製造例1で製造したPA66を56.7重量%及び、製造例−4で製造したMEBR−1を5.2重量%を供給し、スクリュー回転数300rpmで押し出し、水浴中で冷却し、ペレタイズしてペレットを得た。
【0067】なお、各実施例にはすべて、(A)〜(C)成分の合計100重量部に対して、酸化亜鉛及び硫化亜鉛がそれぞれ、0.5重量部、ヨウ化銅及びヨウ化カリウムがそれぞれ0.15重量部、モンタン酸ナトリウムが0.02重量部添加されている。得られたペレットを100℃で5時間真空乾燥し、シリンダー温度290℃、金型温度80℃に設定した射出成形機(IS−80EPN:東芝機械(株)社製)を用いて各種試験片に成形した。耐衝撃性の指標として、ASTM−D256に従いノッチ付きアイゾッド衝撃強度を測定した。また、表面平滑性の指標として、接触式表面粗度計を用いて、長さ90mm、幅50mm、厚み2mmの平板状成形片の中央部の平均表面粗度(Ra:単位μm)を測定した。
【0068】次に、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板状成形片を用いて、吸水率と、吸水後の寸法変化率を測定した。平板状成形片を、成形後すぐにアルミコーティングされた袋に入れヒートシールし、23℃の雰囲気下で48時間放置した後の、重量(W0 )と縦方向の長さ(L0 )と横方向の長さ(H0 )を、それぞれ測定した。次にこの平板状成形片を23℃の水中に21日間(3週間)浸漬した後の、重量(W21)と縦方向の長さ(L21)と横方向の長さ(H21)をそれぞれ測定した。これらの値を用いて吸水率は、次の式(3)で計算した。
[(W21−W0 )/W0 ]×100 式(3)
また、吸水後の寸法変化率は、次の式(4)及び式(5)で計算した。
寸法変化率(縦):[(L21−L0 )/L0 ]×100 式(4)
寸法変化率(横):[(H21−H0 )/H0 ]×100 式(5)
測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【0069】
【実施例2】上流側供給口より、PPE34.5重量%、無水マレイン酸0.26重量%及び、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体の水素添加物としてのスチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物[結合スチレン量が30重量%、数平均分子量200,000:以下単にSEBSと略する]8.6重量%を供給し、下流側供給口よりPA66を51.8重量%及び、MEBR−1を4.7重量%を供給する事に変えた以外は、すべて実施例1と同様に実施した。測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【0070】
【比較例1】実施例1のMEBR−1を製造例5で製造したMEBR−2に替えた以外は、実施例1と同様に実施し、測定した結果を組成とともに、表2に記載した。
【実施例3】上流側供給口より、PPE33.7重量%、無水マレイン酸0.25重量%及び、SEBS8.4重量%を供給し、下流側供給口よりPA66を50.5重量%と、MEBR−1を4.6重量%及び、導電性カーボンブラック[ケッチェンブラックEC−600JD:ケッチェンブラックインターナショナル社製:以下単にこれをKBと称する。]を2.53重量%を供給した以外は、実施例1と同様に実施し、耐衝撃性、表面平滑性及び、吸水率と吸水後の寸法変化率を測定した。
【0071】次に、新たに導電性の指標として長さ128mm、幅6.4mm、厚み3.2mmの成形片を成形し、幅6.4mm、厚み3.2mmの両面に銀ペーストを塗布し、風乾後、80℃に設定したオーブン中で、更に30分間乾燥した後の両端間の抵抗を測定した。抵抗の測定は、500Vの電圧を加えた際の抵抗値を、抵抗測定器[DG−525:三和電気計器(株)製]を用いて測定した。この抵抗値に銀ペースト塗布面積を乗じ、成形片の長さで除すことで体積抵抗値(オーム・cm)を算出した。この方法で算出した体積抵抗を体積抵抗−Aとする。
【0072】次に、公知文献開示のように折りとった断面での導電性を測定するために、長さ128mm、幅6.4mm、厚み3.2mmの成形片の両端を折りとって、長さ70mmで両端に破断面を持つ試験片とした。この試験片の両端の破断面に体積抵抗−Aで行った方法と同様に銀ペーストを塗布し、乾燥し、抵抗を測定し、体積抵抗値を算出した。この方法で算出した体積抵抗値を体積抵抗−Bとする。測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【0073】
【実施例4】PPE、相溶化剤としてのクエン酸、スチレン−イソプレンジブロック共重合体の水素添加物[結合スチレン量が30重量%、数平均分子量60,000:以下単にSEPと略する]、PA66、シングルサイト触媒で製造されたエチレンとオクテン−1の共重合体の無水マレイン酸変性物[オクテン含有量=28重量%、MFR=0.8g/10分(190℃、2.16kg荷重)、融点=55℃(DSC法:昇温速度10℃/分)、無水マレイン酸付加率=1.0重量%:以下これを単にMEORと略する。]、シングルサイト触媒で製造されたエチレンとオクテン−1の共重合体[オクテン含有量=24重量%、MFR=30g/10分(190℃、2.16kg荷重)、融点60℃(DSC法、昇温速度10℃/分):以下これを単にEORと略する]を表1に記載の割合で配合し、実施例3と同様に実施した。測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【0074】
【実施例5】ポリアミドをPA66からポリアミド6[ウベナイロン1013B:宇部興産(株)製:以下単にPA6と略記]に替え、SEPをSEBSに替え、表1記載の割合で配合した以外は、実施例4と同様に実施した。なお、この時、PA6全量に対して25重量%を、押出機の上流側供給口より添加し、残りの75重量%を下流側供給口より供給した。測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【0075】
【実施例6】ポリアミド成分をPA66とPA6の併用にし、表1記載の割合で配合した以外は、実施例5と同様に実施した。なお、この時、PA6の半量を、押出機の上流側供給口より添加し、残りの半量を下流側供給口より供給した。測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【実施例7】ポリアミド成分を製造例2で製造したPA66/6Iに替えた以外は、実施例3と同様に実施し、測定した結果を組成とともに表1に記載した。尚、得られた組成物はPA66/6I成分が連続相を形成し、それ以外の分散相の数平均分散径は2μmであった。
【0076】
【実施例8】MEBR−1をMEORとEORの併用に替え、表1記載の割合で配合した以外は、実施例7と同様に実施した。測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【実施例9】クエン酸を無水マレイン酸に替え、表1記載の割合で配合した以外は、実施例5と同様に実施し、測定した結果を組成とともに表1に記載した。なお、PA6は、その全量を下流側供給口より添加した。
【0077】
【実施例10】PPEの1/3量を製造例3で製造したMPPEに替えた以外は実施例9と同様に実施し、測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【実施例11】PPEの全量をMPPEに替えた以外は実施例9と同様に実施し、測定した結果を組成とともに表1に記載した。
【0078】
【表1】


【0079】
【比較例2】実施例3のMEBR−1をすべてSEBSに替えた以外は、実施例3と同様に実施した。組成及び測定した結果は、表2に記載した。
【比較例3】実施例3のMEBR−1を製造例5で製造したMEBR−2に替えた以外は、実施例3と同様に実施し、測定した結果を組成とともに、表2に記載した。
【0080】
【比較例4】実施例4のMEORとEORの合計7.8重量%をすべて、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物[結合スチレン量=30重量%、分子量=60,000:以下単にSEPSと略記する]に替えた以外は、実施例5と同様に実施し、測定した結果を組成とともに、表2に記載した。
【比較例5】実施例5のMEORとEORをすべてSEBSに替えた以外は、実施例5と同様に実施し、測定した結果を組成とともに、表2に記載した。
【比較例6】実施例6のMEORとEORをすべてSEBSに替えた以外は、実施例6と同様に実施し、測定した結果を組成とともに、表2に記載した。
【0081】
【表2】


【0082】実施例1の比較となるのが比較例1である。比較例1に比べて実施例1は、耐衝撃性及び表面粗度に優れ、しかもほぼ同じ吸水率にもかかわらず寸法変化率が極めて低くなっていることが判る。また実施例2は、実施例1に芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素添加物を添加したものであるが、実施例1に比べて耐衝撃性と表面粗度のバランスが更に向上していることが判る。実施例3〜6の比較となるものが、比較例2〜6である。
【0083】シングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を使用せず、シングルサイト触媒以外の触媒で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体を使用した例及び、一般的なスチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレンブロック共重合体を使用したものが比較例であるが、それらに比べて実施例は、いずれも耐衝撃性及び表面粗度に優れ、かつ、同じ吸水率にもかかわらず成形片の寸法変化率が極めて小さく、しかも成形片を折りとることなく導電性が発現していることが判る。
【0084】
【発明の効果】本発明の組成物は、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、シングルサイト触媒で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体よりなり、耐衝撃性、表面平滑性及び吸水後の低寸法変化性に優れるという効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ポリアミド50〜95重量部、(B)ポリフェニレンエーテル50〜5重量部の合計100重量部に対して、(C)シングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又はα,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上で変性されたシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体1〜30重量部を含有してなることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】 (A)成分のポリアミドが連続相を形成し、それ以外の成分が分散相として存在しており、該分散相が数平均分散径で10μm以下であるような分散形態であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】 (C)成分のエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が3以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】 (C)成分のエチレン−α−オレフィン共重合体を製造する際に使用するシングルサイト触媒が、シクロペンタジエニル或いは置換シクロペンタジエニルを1ないし3分子含有する触媒を1種以上含有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】 (C)成分のエチレン−α−オレフィン共重合体のエチレン単位の含有率が30〜95重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】 (D)成分として導電性フィラーを(A)〜(C)成分の合計100重量部に対し、10重量部未満配合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】 (E)成分として芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体及び/又はその水素添加物を(A)〜(C)成分の合計100重量部に対し、30重量部未満配合することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】 (E)成分が、芳香族ビニル化合物含有率が15〜65重量%であり、ポリスチレン換算の数平均分子量が80,000〜300,000である芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体及び/又はその水素添加物であることを特徴とする請求項7に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】 芳香族ビニル化合物とα,β−不飽和ジカルボン酸及び/又はその誘導体からなる共重合体、無水マレイン酸、フマル酸、クエン酸及びリンゴ酸から選ばれる1種以上の相溶化剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】 (B)成分のポリフェニレンエーテルの一部又は全部が、無水マレイン酸、フマル酸、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタアクリレートから選ばれる1種以上の化合物と、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、100℃以上であってポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以下の温度において、ポリフェニレンエーテルを溶融させることなく反応させた変性ポリフェニレンエーテルであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】 (D)成分の導電性フィラーが、導電性カーボンブラックであることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。

【公開番号】特開2001−302911(P2001−302911A)
【公開日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−14028(P2001−14028)
【出願日】平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】