説明

ポリウレタンの製造方法

【構成】 高分子ポリオール、有機ポリイソシアネートおよび必要に応じて鎖伸長剤を使用してポリウレタンを製造する際に、有機ポリイソシアネートの少なくとも一部として、2位および6位が各々2個のアルキル基で置換されているピペリジン環を含む基を側鎖にペンダント状で有している平均分子量が1500以上のプレポリマー型有機ポリイソシアネートを使用してポリウレタンを製造する
【効果】 日光、NOxガス、自動車の排気ガス等の屋外暴露や塩素系漂白剤等による黄変が極めて少なく且つ安定剤のポリウレタンからの脱落のない、弾性回復性、引張強度、耐熱性等の物性に優れたポリウレタンを製造することができる

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリウレタンの製造方法に関する。詳細には、耐熱性、耐候性、耐変色性等に優れたポリウレタンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリウレタンは力学的特性に優れ、成形や加工が容易であるところから、各種成形品、人工皮革、弾性繊維、塗料、接着剤等の広範な用途に利用されている。しかし、ポリウレタンは製造後時間が経過するにつれて、日光、NOxガス、自動車の排気ガス等の屋外暴露、塩素系漂白剤や溶剤等の化学物質との接触などによって次第に黄変し、強度や伸度等の機械的特性が低下するなどの欠点を有しており、用途上大きな制約を受けている。
【0003】ポリウレタンの上記した欠点を改良するために、2位および6位が各々2個のアルキル基で置換されているピペリジン環、すなわちヒンダードピペリジン環を有するヒンダードアミン化合物をポリウレタン重合体中に添加することが従来行われている。しかし、この方法による場合は、ヒンダードアミン化合物のポリウレタン製品表面へのブルーミング、ポリウレタンとの低相溶性、水洗やドライクリーニングによるポリウレタンからの脱落等の問題があった。
【0004】そこで、上記の問題を解決するために、ヒンダードピペリジン環を含有するヒンダードアミン化合物をポリウレタンに化学的に結合させる方法が提案されている。従来提案されているヒンダードアミン化合物の化学結合方法としては、■ヒンダードアミン化合物をポリウレタン製造時に末端停止剤として使用する方法、■ヒンダードアミン化合物を鎖伸長剤として用いてポリウレタンのハードセグメント部分にヒンダードピペリジン環を側鎖状で導入する方法、および■ヒンダードピペリジン環自体をポリウレタンの主鎖中に導入する方法があり、上記■および■の方法は、特開昭53−39395号公報や特開昭55−18409号公報等に、また上記■の方法は特開昭53−1294号公報に記載されている。
【0005】しかしながら、上記■の方法による場合は、ヒンダードアミン化合物が末端停止剤として働くために、ポリウレタンの重合度を高める上で障害となる。特に、ポリウレタンの耐候性や耐変色性の一層の向上を求めてヒンダードアミン化合物を多量に使用した場合には、ポリウレタンが極めて低い重合度のまま末端停止されて所望の重合度のポリウレタンを製造できないという欠点があり、ヒンダードアミン化合物の使用量が限られる。
【0006】また上記■の方法の場合は、嵩高いヒンダードピペリジン環がハードセグメント部分に側鎖として存在することによって、ハードセグメント間での水素結合による架橋構造の形成が阻害されるため、ポリウレタン本来の優れた力学的特性、例えば弾性回復性、引張強度などの低下を招き易く、また耐熱性が失われ易いという欠点を有している。
【0007】そして、上記■の方法による場合は、ヒンダードアミン化合物の光安定機構として知られているラジカル捕捉機構と同様に、光によってポリウレタン主鎖中のピペリジン環の窒素原子の部分でポリウレタン主鎖が切断され易いことから、ポリウレタンの耐光性が向上せず、光にさらされた場合にはむしろ主鎖の切断を招き易く、力学的強度の低下を生じ易いという欠点を有する。
【0008】
【発明の内容】上記の点から、本発明者らは、上記した従来技術■〜■におけるような問題を生ずることなく、ヒンダードアミン化合物をポリウレタン分子中に化学的に結合させる方法を求めて研究を行ってきた。その結果、ヒンダードピペリジン環を含有する上記ヒンダードアミン化合物を末端停止剤や鎖伸長剤として用いずに、該ヒンダードアミン化合物を所定値以上の分子量を有するプレポリマー型有機ポリイソシアネート中に側鎖としてペンダント状で組み込み、そのプレポリマーをポリウレタン製造時に使用すると、上記の目的を達成できることを見出して本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネートおよび必要に応じて鎖伸長剤を使用してポリウレタンを製造するに際して、有機ポリイソシアネートの少なくとも一部として、2位および6位が各々2個のアルキル基で置換されているピペリジン環を含む基を側鎖にペンダント状で有している平均分子量が1500以上のプレポリマー型有機ポリイソシアネートを使用することを特徴とするポリウレタンの製造方法である。
【0010】本発明において、上記の「2位および6位が各々2個のアルキル基で置換されているピペリジン環を含む基を側鎖にペンダント状で有している平均分子量が1500以上のプレポリマー型有機ポリイソシアネート」(以後「ピペリジン側鎖含有プレポリマー」という)は、1500以上の平均分子量、好ましくは2000〜10000の平均分子量を有し、且つヒンダードピペリジン環が該プレポリマー中に側鎖としてペンダント状で存在しているものであればいずれでもよく、その製造法等は特に限定されない。該ピペリジン側鎖含有プレポリマーがポリイソシアネートプレポリマーとして機能するためには、1個よりも多いイソシアネート基を有していることが必要であり、通常、平均して約1.8〜3個のイソシアネート基を1分子当たり有しているのが好ましい
【0011】上記要件を満たす限り、ピペリジン側鎖含有プレポリマーはどのようにして製造されたものでもよく、その製造法は特に限定されないことは、上記したとおりであるが、本発明で使用するピペリジン側鎖含有プレポリマーの内容の理解を助けるために、その好ましい製造法の一例を下記に説明する。
【0012】ピペリジン側鎖含有プレポリマーの製造例(1) 水酸基等の活性水素原子数Fが、2<F<4であるポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等の比較的高分子量のポリオールに、有機ポリイソシアネート(例えば有機ジイソシアネート)を反応させて、平均イソシアネート基数が2よりも大きい、好ましくは2.2〜3.8のイソシアネート末端プレポリマーを製造する。
(2) 上記(1)で製造したイソシアネート末端プレポリマーに、イソシアネート反応性の活性水素原子を1個有する2位および6位が各々2個のアルキル基で置換されているピペリジン環を含むヒンダードアミン化合物を、該イソシアネート末端プレポリマーのイソシアネート基当量よりも少ない量で反応させて、1個よりも多い、好ましくは平均して約1.8〜3個の未反応イソシアネート基を残留して有し且つヒンダードピペリジン環が側鎖としてペンダント状でプレポリマーに結合している、平均分子量が1500以上の上記ピペリジン側鎖含有プレポリマーを製造する。
【0013】上記の工程(1)で使用する2<F<4のポリオールとしては、■ グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3個以上の水酸基を有する低分子ポリオールの少なくとも1種の存在下に、有機ジカルボン酸および低分子ジオールを反応させて製造した2<F<4のポリエステルポリオール■ グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3個以上の水酸基を有する低分子ポリオールの少なくとも1種に、ラクトン化合物を場合によりグリコールとともに反応させた製造した2<F<4のポリエステルポリオール、■ グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3個以上の水酸基を有する低分子ポリオールの少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを反応させて製造した2<F<4のポリエーテルポリオール等を挙げることができる。そして、それらのポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールは、通常約300〜5000、特に約500〜3000の平均分子量を有するのが望ましい。
【0014】また、上記の工程(1)で使用する有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートを使用するのが好ましく、そのような有機ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができ、これらの有機ジイソシアネートの1種または2種以上を使用するのがよい。
【0015】そして、上記の工程(2)で使用する「イソシアネート反応性の活性水素原子を1個有する2位および6位が各々2個のアルキル基で置換されているピペリジン環を含むヒンダードアミン化合物」としては、ピペリジン環の2位と6位の位置に合計4個のアルキル基が結合しており且つイソシアネート反応性の活性水素原子を1個有するものであれば、この種の技術において知られているヒンダードアミン化合物のいずれも使用できる。その代表的な化合物としては下記の式(I)で表される化合物を挙げることができる。
【0016】
【化1】


(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれアルキル基であり、R5は直接結合または2価の基であり、AおよびBはそれぞれ1価の基であり、AおよびBの一方のみがイソシアネート反応性の活性水素原子を有し、mは1以上の数である)
【0017】上記式(I)の化合物において、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜4の低級アルキル基であるのが好ましく、4個のアルキル基のすべてがメチル基であるのが特に好ましい。また、R5が2価の基の場合は、アルキレン基、アリーレン基等の2価の炭化水素基またはエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合等を有する2価の基であることができる。更に、AおよびBの一方がイソシアネート反応性の活性水素原子を有する1価の基であって、好ましくはアミノ基、水酸基、カルボキシル基、或いは水酸基、アミノ基またはカルボキシル基を有するその他の1価の基(例えばアミノメチル基、ヒドロキシメチル基、アミノエチル基等)から選ばれ、AおよびBの残りの一方がアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基等のイソシアネート反応性の活性水素原子を持たない1価の基である。また、mは1〜20であるのが好ましい。
【0018】式(I)で表される化合物に含まれるヒンダードアミン化合物の具体例としては、下記の式(II)で示される1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、下記の式(III)で示される1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジンおよび下記の式(IV)で示される化合物等を挙げることができる。
【0019】
【化2】


【0020】
【化3】


【0021】
【化4】


(式中、nは2〜20の数を示す)
【0022】そして、上記のヒンダードアミン化合物のうちでは、式(IV)で示される化合物が、ピペリジン側鎖含有プレポリマー分子中に複数のヒンダードピペリジン環を導入することができ好ましい。
【0023】また、本発明で使用するピペリジン側鎖含有プレポリマーにおいては、ヒンダードアミン化合物の割合が、ピペリジン側鎖含有プレポリマーの重量に基づいて、約5〜70%、好ましくは10〜60%程度であるのが、ポリウレタンの耐候性、耐光性、耐変色性、耐熱性等の向上、良好な力学的特性の保持等の点から好ましい。そして、ピペリジン側鎖含有プレポリマーを製造する上記(2)の反応は、通常、約50〜200℃、好ましくは約70〜160℃の温度で行うのがよい。
【0024】そして本発明で上記ピペリジン側鎖含有プレポリマーを使用してポリウレタンを製造するに当たっては、ピペリジン側鎖含有プレポリマーの存在下にワンショット法またはプレポリマー法により製造しても、あるいは任意の方法でピペリジン側鎖を持たないポリウレタンを製造した後にピペリジン側鎖含有プレポリマーを加え反応させて該ポリウレタンの分子に結合させてもよい。
【0025】ワンショット法による場合は、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネートおよび必要に応じて鎖伸長剤を同時に反応させてポリウレタンを製造するが、その場合に有機ポリイソシアネートの少なくとも一部として、平均して1個よりも多い、好ましくは1.8〜3個、より好ましくは1.9〜2.8個のイソシアネート基を有している上記のピペリジン側鎖含有プレポリマーを使用する。有機ポリイソシアネートにおけるピペリジン側鎖含有プレポリマーの割合は、ピペリジン側鎖含有プレポリマーの分子量、そこに結合しているヒンダードピペリジン環の量、他の有機ポリイソシアネートの種類等に応じて種々変わり得るが、通常、ピペリジン側鎖含有プレポリマーをも含めた有機ポリイソシアネートの全重量に基づいて、約0.5〜60%程度にするのが望ましい。また、その場合にワンショット用原料混合物におけるイソシアネート基:水酸基等の活性水素原子の割合は、モル比で、0.9:1〜1.2:1の範囲になるようにするのが望ましい。
【0026】また、プレポリマー法によってポリウレタンを製造する場合は、高分子ポリオールと通常の有機ポリイソシアネートとからイソシアネート末端プレポリマーを製造した後、このイソシアネート末端プレポリマーに上記したピペリジン側鎖含有プレポリマーおよび鎖伸長剤を加えて反応させてポリウレタンを製造するとよい。この場合も、(イソシアネート末端プレポリマーおよびピペリジン側鎖含有プレポリマーを合計したイソシアネート基):(鎖伸長剤等における活性水素原子)の割合が、モル比で、0.9:1〜1.2:1の範囲になるようにするのが望ましい。
【0027】更に、ポリウレタンを製造した後に上記のピペリジン側鎖含有プレポリマーを加え反応させてヒンダードピペリジン側鎖を含有するポリウレタンを製造する場合は、例えば、常法のワンショット法またはプレポリマー法によって熱可塑性ポリウレタンを製造した後に、該熱可塑性ポリウレタンに上記ピペリジン側鎖含有プレポリマーを加えて加熱溶融してポリウレタン分子中の活性水素原子にピペリジン側鎖含有プレポリマーのイソシアネート基を反応させて、ヒンダードピペリジン環を含む基をポリウレタンの側鎖にペンダント状に結合させる。
【0028】上記したワンショット法やプレポリマー法において使用する上記高分子ポリオールとしては、平均分子量500〜5000、好ましくは1000〜3000のものを使用するのが好ましい。高分子ポリオールとしては、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオールおよびポリエーテルエステルジオール等の少なくとも1種を使用するのが好ましいが、勿論高分子ジオールに限定されず、目的とするポリウレタンの種類に応じて、高分子トリオール、高分子テトラオール等の高分子ポリオールを単独でまたは高分子ジオールと組み合わせて使用することができる。
【0029】例えば、上記におけるポリエステルジオールとしては、ジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)の少なくとも1種と、低分子ジオール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等)の少なくとも1種とから得られるポリエステルジオール、ラクトン化合物の開環重合により得られるポリカプロラクトンジオール、ポリメチルバレロラクトンジオール等のポリラクトンジオールを挙げることができる。
【0030】また、ポリカーボネートジオールとしては、例えばジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート等)の少なくとも1種と、低分子ジオール(例えば上記したエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等)の少なくとも1種とから製造されるポリカーボネートジオールを挙げることができる。
【0031】更に、ポリエーテルジオールとしては、環状エーテル(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等)の開環重合により得られるポリエーテルジオール、グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等)の重縮合により得られるポリエーテルジオールが好ましい
【0032】また、ポリエーテルエステルジオールとしては、上記したようなポリエステルジオールに上記した環状エーテルを反応させて製造したものや、上記したポリエステルジオールとポリエーテルジオールを反応させたもの等を使用することができる。
【0033】そして、ポリウレタンの製造に使用するピペリジン側鎖含有プレポリマー以外の有機ポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等を使用することができ、好ましくは有機ジイソシアネートを使用する。その場合の有機ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができ、これらの有機ジイソシアネートは1種のみを使用してもまたは2種以上を併用してもよい。
【0034】また、本発明においては、必要に応じて鎖伸長剤を使用することができるが、その際の鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、キシリレングリコール等のジオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等のジアミン類の1種または2種以上を使用することができる。
【0035】そして、上記いずれの方法による場合も、最終的に得られるポリウレタン中におけるヒンダードピペリジン環の結合割合は特に制限されないが、耐光性や耐候性の向上効果や経済性の点などを勘案すると、通常、ポリウレタン用原料の全重量に基づいて、ピペリジン側鎖含有プレポリマーの使用割合が約0.1〜20%になるようにしてポリウレタンを製造するのが望ましい。
【0036】そして、上記した本発明のポリウレタンの製造反応は、得られるポリウレタンの性状に応じて既知の種々の方法により行うことができる。例えば、熱可塑性のポリウレタンを製造する場合は、バッチ式または連続式の反応装置を使用して熱可塑性ポリウレタンを製造し、そこで得られた熱可塑性ポリウレタンに更に種々の成形加工や処理を施して、各種の成形品(フイルム、シート、他の成形品等)、繊維、合成皮革、塗料、接着剤等にしてもよく、または型や他の成形装置を使用して重合と成形を同時に行ってもよい。また、熱硬化性ポリウレタンの場合は、各種成形装置を使用して重合と成形を同時に行っても、またはポリウレタン用原料混合物を重合前の状態でとどめておき(例えば多液性混合物)、それを成形用、塗料、接着剤、シーラント等の種々の用途に使用してもよい。
【0037】また、本発明のポリウレタンの製造に当たっては、ポリウレタンの製造において通常使用されている、触媒、活性剤、発泡剤、消泡剤、他の安定剤、染料や顔料等の着色剤、充填剤、難燃剤、滑剤等の任意の成分を必要に応じて使用することができる。
【0038】以下に本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はそれにより限定されない。また、下記の例中の部は重量部を表す。更に、下記の例において、耐光性試験、溶剤抽出性の評価および製造されたプレポリマーのイソシアネート基の定量は、以下の方法により行った。
【0039】〈耐光性試験〉下記の各例で製造されたポリウレタンフイルム(厚さ0.1mm)に対して、スガ試験機社製のカーボンアーク型フェードメーターFAL−5型を用いて83℃の温度で20時間紫外線を照射して、その耐光堅牢度および強度保持率を調べた。耐光堅牢度は、褐変の程度を下記に示した5段階評価により行った。
耐光堅牢度評価の基準5・・・変色なし(無色)
4・・・やや黄色に変色3・・・黄色に変色2・・・黄色〜褐色に変色1・・・褐色に変色また、強度保持率は、島津製作所製のオートグラフを使用してポリウレタンフイルムの強度を測定し、下記の数式1より算出した。
【0040】
【数1】
強度保持率(%)=(紫外線照射後の強度/紫外線照射前の強度)×100
【0041】〈溶剤抽出性〉各例で製造されたポリウレタンフイルム(厚さ0.1mm)を浴比1:1000で70℃のパークレン中に5時間浸漬後、50℃で1時間乾燥したものを、上記方法により耐光性試験をおこなって、その耐光堅牢度および強度保持率を求めた。
【0042】〈イソシアネート基の定量〉プレポリマーを含有する反応液の0.1gを、0.01規定ジ−n−ブチルアミンのジメチルホルムアミド溶液40ml中に加えて溶解した後、0.01規定塩酸のメタノール溶液でブロムフェノールブルーを指示薬として用いて中和滴定を行って定量した。
【0043】また、各例で用いた化合物は、以下の略号により示すとおりである。
PES−X:3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパンおよびアジピン酸を反応させて得られた平均水酸基数3のポリエステルポリオール(平均分子量1000)
PES−Y:3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパンおよびアジピン酸を反応させて得られた平均水酸基数3のポリエステルポリオール(平均分子量2000)
P−312:平均水酸基数3のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学工業社製;プラクセル−312、平均分子量1250)
P−2010:ポリ(3−メイチルペンタンアジペート)ジオール[(株)クラレ製;クラポールP−2010、平均分子量2000)
PCL:ポリカプロラクトンジオール(平均分子量2000)
BD:1,4−ブタンジオールMDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート622LD:上記した式(IV)で示したヒンダードアミン化合物(チバガイギー社製耐光安定剤;チヌビン622LD、平均分子量3400)
LS−765:下記の式(V)で示されるイソシアネート基および活性水素原子を持たないヒンダードアミン化合物[三共(株)製サノールLS−765]
【0044】
【化5】


【0045】《参考例 1》[ピペリジン側鎖含有プレポリマーの製造]
窒素シールした反応容器に100部のPES−Xを入れ、80℃に保ちながら75部のMDIを加え、40分間反応させた後、イソシアネート基の残存量を上記の定量法により求めたところ、49.9モル%であった。次いで、622LDを113部加えて1時間反応させて、ピペリジン側鎖含有プレポリマー(プレポリマーA)を得た。プレポリマーAのイソシアネート基の残存量は26.5モル%であり、平均官能基数(平均イソシアネート基数)2.65、そしてプレポリマーAにおける622LDの結合量(含有量)は39.2重量%であった。
【0046】《参考例2〜5》[ポリイソシアネートプレポリマーの製造]
PES−Xの代わりに下記の表1に示したポリオールを表1に示した量で使用し、且つ表1に示した量のMDIおよび622LDを使用して、または622LDを使用しないで、参考例1と同様にして、表1に示したピペリジン側鎖含有プレポリマー(プレポリマーB〜D)およびピペリジン側鎖無含有プレポリマー(プレポリマーE)を製造した。これらのプレポリマーの平均イソシアネート基数および622LDの含有量は表1に示すとおりであった。
【0047】
【表1】
参考例1 参考例2 参考例3 参考例4 参考例5 プレポリマー用原料 ポリオールの種類 PES-X PES-Y PES-Y P-312 PES-Y/P-2010 ポリオール使用量(部) 100 200 200 125 130/70 MDI使用量(部) 75 75 75 75 66.3 622LD使用量(部) 113 113 226 68 0生成プレポリマー 種 類 A B C D E 平均NCO基数 2.65 2.65 2.33 2.80 2.65 622LD含有量 39.2 29.1 45.1 25.4 0 (重量%)
【0048】《実施例 1》[ポリウレタンの製造]
反応容器にP−2010を32部、BDを2.9部入れ、80℃に保ちながら12.1部のMDIと0.61部のプレポリマーAを加えて撹拌した後、220℃に保ったニーダー中に移して10分間反応させた。得られた反応物を230℃で熱プレスして厚さ0.1mmのポリウレタンフイルムを製造した。このポリウレタンフイルムの耐光性試験および溶剤抽出後の耐光性試験を上記した方法により行って、その耐光堅牢度および強度保持率を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0049】《実施例2〜4》[ポリウレタンの製造]
プレポリマーAの代わりに参考例2〜4で製造したプレポリマーを使用し、また実施例4では更にP−2010の代わりにPCLを使用して、実施例1と同様にしてポリウレタンおよびポリウレタンフイルムを製造して、各実施例で得られたポリウレタンフイルムの耐光性試験を実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0050】《比較例 1》[ポリウレタンの製造]
反応容器にP−2010を32部、BDを2.9部入れ、80℃に保ちながら12.0部のMDIと0.96部のプレポリマーEを加えて撹拌した後、220℃に保ったニーダー中に移して10分間反応させた。得られた反応物を230℃で熱プレスして厚さ0.1mmのポリウレタンフイルムを製造した。このポリウレタンフイルムの耐光性試験を実施例1と同様に行った。その結果を下記の表2に示す。
【0051】《比較例 2》[ポリウレタンの製造]
反応容器にP−2010を32部、BDを2.9部入れ、80℃に保ちながら12.1部のMDIと0.47部のLS−765を加えて撹拌した後、220℃に保ったニーダー中に移して10分間反応させた。得られた反応物を230℃で熱プレスして厚さ0.1mmのポリウレタンフイルムを製造した。このポリウレタンフイルムの耐光性試験を実施例1と同様に行った。その結果を下記の表2に示す。
【0052】
【表2】
実 施 例 比 較 例 1 2 3 4 1 2 ポリウレタン用原料 ポリオールの種類 P-2010 P-2010 P-2010 PCL P-2010 P-2010 ポリオール使用量(部) 32 32 32 32 32 32 ブタンジオール使用量(部)2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 MDI使用量(部) 12.0 12.0 12.1 12.0 12.0 12.1 プレポリマー 種 類 A B C D E − 使用量(部) 1.22 1.66 1.06 1.92 0.96 − 622LD含量(重量%) 1.0 1.0 1.0 1.0 0 −LS−765含量(重量%) 0 0 0 0 0 1.0耐 光 性 試 験 溶剤抽出処理前 耐光堅牢度 4 4 4 4 1 4 強度保持率(%) 80 81 85 79 35 80 溶剤抽出処理後 耐光堅牢度 4 4 4 4 1 2 強度保持率(%) 79 79 84 76 30 50
【0053】上記表2の結果から、ピペリジン側鎖含有プレポリマーを有機ポリイソシアネートの一部として使用してポリウレタンを製造している本発明の実施例1〜4では、耐光性に極めて優れたポリウレタンが得られ、その優れた耐光性は溶剤抽出処理後もほとんど低下しないことがわかる。これに対して、ヒンダードアミン化合物を何ら加えていない比較例1のポリウレタンは当初から耐光性が劣っていること、またイソシアネート基や活性水素原子を持たない非反応性のヒンダードアミン化合物を配合している比較例2では、当初は耐光性があるものの、溶剤抽出処理によってその耐光性が失われることがわかる。
【0054】
【発明の効果】本発明の方法により、日光、NOxガス、自動車の排気ガス等の屋外暴露や塩素系漂白剤等の化学物質との接触による黄変の極めて少ない、安定化されたポリウレタンを得ることができる。そして、本発明による場合は、ヒンダードアミン化合物がポリウレタンに化学的に結合しているポリウレタンが得られることにより、ポリウレタン製品表面へのブルーミング、ポリウレタンとの低相溶性、洗濯やクリーニングによるポリウレタンからの脱落等の問題が生じない。更に、本発明の方法による場合は、低重合度状態での重合体の末端封鎖、ポリウレタンのハードセグメント部分へのヒンダードピペリジン環の導入およびポリウレタン主鎖中へのピペリジン環の導入が生じず、ヒンダードピペリジン環はポリウレタンのソフトセグメントに側鎖としてペンダント状で結合されるから、重合度の高い、弾性回復性、引張強度、耐熱性等の物性に優れたポリウレタンを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 高分子ポリオール、有機ポリイソシアネートおよび必要に応じて鎖伸長剤を使用してポリウレタンを製造するに際して、有機ポリイソシアネートの少なくとも一部として、2位および6位が各々2個のアルキル基で置換されているピペリジン環を含む基を側鎖にペンダント状で有している平均分子量が1500以上のプレポリマー型有機ポリイソシアネートを使用することを特徴とするポリウレタンの製造方法