説明

ポリウレタン弾性繊維

【課題】高い回復性、耐熱性を有し、衣料製品の解れ防止機能を有するポリウレタン弾性繊維を提供すること。
【解決手段】180℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維同士の熱接着剥離応力が0.2cN/dt以上であり、熱可塑性ポリウレタンを5%以上60%以下、ポリウレタンウレアを40%以上含むことを特徴とするポリウレタン弾性繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にポリウレタン弾性繊維を混用した衣料製品のほつれ防止に有用な熱接着性を有するポリウレタン弾性繊維及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン弾性繊維は、弾性機能に優れた伸縮性繊維であり、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿などと交編織され、ファンデーション、ソックス、パンティーストッキング、水着、スポーツウエア、レオタード等、多分野の衣料や、オムツ、包帯、サポーター、マスク、自動車内装材、ネット、テープ等、非衣料分野にも広く使用されている。
ポリウレタン弾性繊維は、一般的な衣料分野に使用される場合、通常交編織された布帛は、裁断、縫製、仕上げ加工等の製造工程を経て製品となる。ポリウレタン弾性繊維を用いて交編織された生地は、裁断して縫製する際に、縁部がほつれやすく、さらにほつれた縁部で布帛の編地組織からポリウレタン弾性繊維が抜けて、その部分の布帛の伸縮性が低下するという問題が生ずる。
【0003】
また、通常の製品において、裁断したままの状態では縁部がほつれてしまうため、ほつれを防止するために、何らかの縁始末がおこなわれている。例えば、裁断した縁部を折り返して2重にして縫合したり、テープ等の別布で包み込んで縫製するのが一般的である。しかし、これら縁始末や縫製といったほつれ止めの後処理作業は、衣料製品の生産工程において手間がかかり、経済的にも大きな負担となる。しかもこのように縁始末や縁部の縫製を施した衣料製品は、その部分の厚みが厚くなり段差が生じるため、ファンデーションなどの下着衣料では、その上にアウターウェアを着用した際に、アウターウェアに段差が凸条になって現れ、外観を損なう。また、ポリウレタン弾性繊維を用いた衣料は、ファンデーション、パンティストッキングなどの体に直接フィットさせる製品が多く、厚くなった縁部が着用感を低下させるという問題もある。
【0004】
ポリウレタン弾性繊維を用いた衣料の縁始末や縁部の縫製に関わる上記の問題を解決するために、近年ファッション化が進むブラジャー、ガードル、ボディスーツ等のファンデーションの分野において、裁断部の縁始末や縫製をしないことで、下着のラインがアウターウェアに現れない、いわゆる切りっぱなし開口部を有する衣類製品の製造方法が検討されている。
例えば、編組織が非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1編み組織で、かつ各編針において非弾性糸と弾性糸のうち少なくとも1方が閉じ目により編成された経編地からなる縁始末不要な生地を用いた衣類が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
しかし、生地の設計によって構造的に裁断した縁部のほつれを起こりにくくしているため、生地全体が厚地となるなど、生地設計によって得られる布帛に制約があり、衣類の用途が限定されるという問題点がある。
【0005】
また、熱融着弾性糸として低融点ポリウレタン弾性糸を用い、それ以外の糸をプレーティング編により編みたて、ヒートセット加工を施したほつれ止め機能がある編地を用い、同様に切りっぱなし開口部を有する衣類が提案されている。(特許文献2参照)
しかしながら、低融点のポリウレタン弾性糸は、生地や製品を型止めするためのセット工程や、染色工程での熱による物性低下が大きいため、高い温度条件で処理した場合に生地の回復性の低下が起こる。さらに、より厳しい熱的な加工条件を受けた場合、ポリウレタン弾性糸の糸切れが起こる。この生地を使用する製品では、加工条件に熱的制約があるという問題がある。
【特許文献1】特開2003−147618号公報
【特許文献2】特開2005−113349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い回復性、耐熱性を有し、衣料製品のほつれ防止機能を有するポリウレタン弾性繊維を提供することを目的とするものである。すなわち本発明のポリウレタン弾性繊維を使用することで、生地の編み設計の制約が少なく、生地、衣料製品の加工時の熱により、ほつれが抑制された生地を得ることができ、高温での加工においても、生地、衣料製品としても優れた物性を保持した生地、衣料製品を得ることができるポリウレタン弾性繊維を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、衣料製品のほつれ防止性を向上するためのポリウレタン弾性繊維として、ポリウレタンウレアと熱可塑性ポリウレタンを含有し、特定の熱接着性能を有するポリウレタン弾性繊維が、上記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)180℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維同士の熱接着剥離応力が0.2cN/dt以上であり、熱可塑性ポリウレタンを5%以上60%以下、ポリウレタンウレアを40%以上含むことを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
(2)180℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維とポリアミド繊維との熱接着剥離応力が0.02cN/dt以上であることを特徴とする上記(1)記載のポリウレタン弾性繊維。
(3)180℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維とポリエステル繊維との熱接着剥離応力が0.02cN/dt以上であることを特徴とする上記(1)記載のポリウレタン弾性繊維。
(4)140℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維と綿との熱接着剥離応力が0.01cN/dt以上であることを特徴とする上記(1)記載のポリウレタン弾性繊維。
(5)原糸の300%伸長回復繰り返し測定時の回復率が85%以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【0009】
(6)熱可塑性ポリウレタンの軟化点が50℃〜140℃であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
(7)熱可塑性ポリウレタンのガラス転移点が−70℃〜−20℃であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
(8)50%伸長下180℃の熱体に接触させた際に破断するまでの時間が30秒以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
(9)ジメチルシリコーン成分を2.5%以上含有し、変性シリコーン成分が0.1%未満であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
(10)熱可塑性ポリウレタンを5%以上60%以下、ポリウレタンウレアを40%以上含み、DMFまたはDMAcに溶解したポリウレタン組成物を、乾式紡糸法で紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(11)ジメチルシリコーン成分を含み、変性シリコーンの含有量が1.0%未満である油剤を、ポリウレタン弾性繊維にジメチルシリコーン成分が2.5%以上含有するように紡糸後に仕上げ剤として付与することを特徴とする上記(10)記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタン弾性繊維を生地、衣料製品に用いることで、加工処理時の熱によりポリウレタン弾性繊維同士、またはポリウレタン弾性繊維と相手糸とで接着が起こるため、ほつれが抑制された生地を得ることができる。また、本発明のポリウレタン弾性繊維は、耐熱性、回復性に優れるため、加工処理における熱的条件の制約が少なく、ポリウレタン弾性繊維が使用される繊維製品で一般的に用いられるあらゆる相手糸との組合せの製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、ポリウレタンウレアを40%以上含有するものである。耐熱性の高いポリウレタンウレアの含有量が40%以上とすることで、加工処理時の熱での糸切れが起こりにくく、良好な伸縮物性を有する生地がえられる。ポリウレタン弾性繊維およびその生地製品の耐熱性、物理的特性の観点から、より好ましくは50%以上であり、特に好ましくは75%以上である。
本発明に用いるポリウレタンウレアは、例えば、高分子ポリオール、ジイソシアネート、2官能性アミン、および単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を反応させて得ることができる。
【0012】
高分子ポリオールとしては、実質的に線状のホモ又は共重合体からなる各種ジオール、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエステルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリカーボネートジオール又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくはポリアルキレンエーテルグリコールであり、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール、テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール又はこれらの混合物等である。中でも、優れた弾性機能を示す、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコールが好適であり、数平均分子量としては500〜5,000が好ましい。より好ましい数平均分子量は、1,000〜3,000である。
【0013】
ジイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートが挙げられる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイシシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、3−(α−イソシアナートエチル)フェニルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0014】
鎖延長剤として用いる2官能性アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリエチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ピペラジン、o−,m−及びp−フェニレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、N,N’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビス[2−(エチルアミノ)−ウレア]等が挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いることができる。好ましくは、エチレンジアミン単独、又は1,2−プロピレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ペンタジアミンの群から選ばれる少なくとも1種が5〜40モル%含まれるエチレンジアミン混合物が挙げられる。より好ましくは、エチレンジアミン単独である。
【0015】
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ブタノール等のモノアルコールや、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等のモノアルキルアミンや、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミンが挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いることができる。モノアルコールより1官能性アミンであるモノアルキルアミンまたはジアルキルアミンが好ましい。
【0016】
本発明のポリウレタンウレアを製造する方法に関しては、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールとジイソシアネートをジイソシアネート過剰の条件下で反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、このウレタンプレポリマーを2官能性アミンで鎖伸張反応を行い、ポリウレタンウレアを得ることができる。本発明において好ましいポリマー基質としては、数平均分子量500〜5000のポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはテトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコールに過剰等量のジイソシアナートを反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成し、次いでプレポリマーに2官能性アミンと1官能性アミンとを反応させて得られるポリウレタンウレアである。
【0017】
ポリウレタン化反応の操作に関しては、ウレタンプレポリマー合成時やウレタンプレポリマーと活性水素含有化合物との反応時に、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等のアミド系極性溶媒を用いることができる。好ましくはジメチルアセトアミドである。
加えて、本発明のポリウレタン弾性繊維は熱可塑性ポリウレタンを5%以上60%以下含有する。熱可塑性ポリマーの含有量を5%以上とすることで、生地でのほつれ防止効果を得ることができるが、60%以下とすることで、弾性繊維の破断強伸度、パワー、回復性を損なわなず、良好な伸縮物性を有する生地を得ることができる。熱可塑性ポリマーの含有量は、好ましくは10%〜50%であり、より好ましいのは10%〜30%である。
【0018】
本発明に用いる熱可塑性ポリウレタンは、例えば、高分子ポリオール、ジイソシアネート、低分子ジオールを反応させて得ることができる。また、単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を反応させてもよい。
高分子ポリオールとしては、実質的に線状のホモ又は共重合体からなる各種ジオール、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエステルジオール、ポリチオエーテルジオール、又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール、テトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール、テトラメチレン基と3−メチルテトラメチレン基から成る共重合ポリエーテルグリコール又はこれらの混合物等である。ポリエステルジオールとしては、アジピン酸、フタル酸などの二塩基酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコール類との縮合脱水反応によるアジペート系ポリエステルジオール、ε−カプロラクトンの開環重合によるポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等である。高分子ポリオールは、数平均分子量として500〜2,500のものが好ましい。より好ましくは、600〜2,200であり、特に好ましくは、800〜1,800である。
【0019】
ジイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートが挙げられる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイシシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、3−(α−イソシアナートエチル)フェニルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はこれらの混合物又はこれらの共重合物等が挙げられる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0020】
鎖延長剤として用いるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサンを用いることができる。好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールである。
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ブタノール等のモノアルコールや、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等のモノアルキルアミンや、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミンが挙げられる。これらは単独で、又は混合して用いてもよい。
【0021】
本発明に用いることができる熱可塑性ポリウレタンを製造する方法に関しては、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレンエーテルグリコールとジイソシアネートをジイソシアネート過剰の条件下で反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、このウレタンプレポリマーをジオールで鎖伸長反応を行い、ポリウレタンを得ることができる。ポリウレタン化反応の操作に関しては、ウレタンプレポリマー合成時やウレタンプレポリマーとジオールとの反応時に、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等のアミド系極性溶媒を用いることができる。好ましくはジメチルアセトアミドである。
【0022】
本発明で用いられる熱可塑性ポリウレタンは、軟化点温度が低く、さらにガラス転移点の低いものが好ましい。軟化点については、JIS−K7206に規定されているビカット軟化温度が、50℃〜140℃のものが好ましく、60℃〜100℃のものがより好ましい。さらにガラス転移点については、示差走査熱量測定器(DSC)から求められる温度が、−70℃〜−20℃であることが好ましい。より好ましくは−70℃〜−40℃であり、特に好ましいのは−70℃〜−50℃である。この範囲のものでは、ポリウレタン弾性繊維の原糸の保存安定性に問題がなく、高い熱接着性能を得ることができる。また、ポリウレタンウレアを基質とする弾性繊維に対し、熱変形を起こしやすくすることができ、生地中を熱処理した際に、ポリウレタン繊維同士または相手繊維との接触面積が広がり、より高い熱接着性能を得ることができる。
【0023】
本発明中のポリウレタン弾性繊維は、後述の評価方法にて、180℃でポリウレタン弾性繊維同士を熱接着させた際の剥離応力が0.2cN/dt以上であることを特徴とする。熱接着剥離応力が0.2cN/dt以上とすることで、製品生地のほつれ防止機能を得ることができる。生地中でほつれ防止機能を発現させる観点から、ポリウレタン同士の熱接着剥離応力は0.3cN/dt以上であることが好ましく、0.45cN/dt以上であることがより好ましい範囲である。
【0024】
本発明のポリウレタン弾性繊維では、生地、製品で交編織する相手繊維と熱接着させた際の剥離応力が、それぞれ特定の性能以上あることが好ましい。製品生地中で、ポリウレタン弾性繊維同士だけでなく、相手繊維との熱接着性が高いことで、より高いほつれ防止機能を得ることができ、さらには例えば布帛を裁断した際の縁部で、編地組織からポリウレタン弾性繊維が抜けづらくなり、布帛の伸縮性低下が抑制される。なお、交編する相手繊維としては、たとえば、N6やN66等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、銅アンモニア再生レーヨン、ビスコースレーヨン、アセテートレーヨン、綿、絹、羊毛等の天然繊維があげられる。これらは、本発明のポリウレタン弾性繊維と単独または2種類以上を組み合わされて混用されるが、生地、製品でのほつれ防止機能を得るためには、相手繊維のうち少なくとも1種について、熱接着剥離応力が特定の性能を満たすことが好ましい。
【0025】
例えば、ポリアミド繊維との混用の場合、本発明のポリウレタン弾性繊維は、後述の評価方法にて、180℃でポリウレタン弾性繊維とポリアミド繊維とを熱により接着させた際の剥離応力が0.02cN/dt以上であることが好ましい。より好ましくは0.03cN/dt以上である。
また、例えば、ポリエステル繊維との混用の場合、本発明のポリウレタン弾性繊維は、180℃でポリウレタン弾性繊維とポリエステル繊維とを熱接着させた際の剥離応力が0.02cN/dt以上であることが好ましい。より好ましくは0.03cN/dt以上である。
さらに、例えば、綿との混用の場合、本発明のポリウレタン弾性繊維は、140℃でポリウレタン弾性繊維と綿とを熱により接着させた際の剥離応力が0.01cN/dt以上であることが好ましい。
【0026】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、原糸の300%伸長回復繰り返し測定時の回復率が85%以上であることが好ましい。回復率が85%以上とすることで、生地、製品の回復性が高く、ファンデーション、パンティストッキング等の体に密着する製品では、高いフィット感を得ることができる。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、生地製品を加工する時の糸切れ耐熱性の観点から、原糸を50%伸長下、180℃の熱体に接触させた際に、破断が起こるまでの時間が30秒以上であることが好ましい。高温でも糸切れしにくいため、加工時の温度条件の制約の少ない生地を提供することができる。
【0027】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、ジメチルシリコーンを2.5%以上含有することが好ましい。2.5%以上ジメチルシリコーンを含有することで、ポリウレタン弾性繊維を使用する際に、パッケージからの糸の解じょが良好となり、経時での解じょ性の低下を抑制することができる。
また本発明のポリウレタン弾性繊維は、変成シリコーンの含有率が0.1%未満であることが好ましい。変成シリコーンはジメチルシリコーン鎖の末端、中間部側鎖を官能基で修飾したものであり、例えば、アミノ変成シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン等があげられる。変成シリコーンは、繊維状に加工する紡糸前のポリウレタンドープ中に添加されたり、仕上げ油剤の成分として紡糸後に付与されて、ポリウレタン弾性繊維中に添加される。これら変成シリコーンは、変成されていないシリコーンに比べ、ポリウレタン成分との親和性が高く、加工処理を施しても、ポリウレタン繊維表面に残りやすいため、熱による接着性を低下させる。ポリウレタン繊維中に0.1%未満とすることで、ポリウレタン弾性繊維の熱接着性を発現することができる。より好ましくは、変成シリコーンを含有しないものである。
【0028】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、熱可塑性ポリウレタンを5%以上60%以下、ポリウレタンウレアを40%以上含むポリウレタン組成物を、アミド系極性溶媒に溶解して得られたポリウレタン紡糸原液を乾式紡糸して好適に製造される。乾式紡糸は溶融紡糸や湿式紡糸に比べてハードセグメント間の水素結合による物理架橋を最も強固に形成させることが出来るため好ましい。また、熱可塑性ポリウレタンが60%以下、ポリウレタンウレアが40%以上とすることで、乾式紡糸においては紡糸時の糸切れ等の問題が無い安定な生産ができ、糸長方向の斑の少ない品位の高いポリウレタン弾性繊維を得ることができる。アミド系極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドがあげられる。ポリウレタン弾性繊維中に熱可塑性ポリウレタンを含有させるには、どのような方法をとってもよく、例えば、熱可塑性ポリウレタンとポリウレタンウレアを均一に混合したポリウレタン組成物を用いても、熱可塑性ポリウレタンとポリウレタンウレアの混合比の異なるポリウレタン組成物を鞘芯で紡出して繊維の中心部と表面で熱可塑性ポリウレタン成分の濃度分布を変えたり、繊維表面に熱可塑性ポリウレタンを局在化させてもよい。また、熱可塑性ポリウレタンとポリウレタンウレアの混合比の異なるポリウレタン組成物を紡糸した後、合糸しても良いが、生産工程性の観点から、熱可塑性ポリウレタンとポリウレタンウレアを均一に混合したポリウレタン紡糸原液を紡糸することが好ましい。
【0029】
熱可塑性ポリウレタンとポリウレタンウレアを混合する方法は、例えばポリウレタン紡糸原液中で均一に混合させるには、アミド系極性溶媒中で合成した熱可塑性ポリウレタンおよび/またはポリウレタンウレアをそのまま混合する方法、無溶媒で重合した熱可塑性ポリウレタンをアミド系極性溶媒に溶解させた後にポリウレタンウレア溶液中に添加する方法、溶融した熱可塑性ポリマーをポリウレタンウレア溶液に添加する方法、粉末またはペレット状の熱可塑性ポリウレタンをポリウレタン組成物のアミド系極性溶媒溶液中で溶解させる方法等があげられる。
このポリウレタン紡糸原液には、ポリウレタン弾性繊維に通常用いられる他の化合物、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス着色防止剤、耐塩素剤、着色剤、艶消し剤、滑剤、充填剤等を添加してもよい。
【0030】
ポリウレタン弾性繊維には、ジメチルシリコーン成分を含み、鉱物油等からなる油剤をを含有させることができる。油剤の含有量は、パッケージに巻き取った際に、ポリウレタン弾性繊維の固形分に対し、2%以上10%以下であることが好ましい。油剤の含有のさせ方は、乾式紡糸後にポリウレタン弾性繊維に付与してもよく、また油剤を紡糸原液に予め含有させて乾式紡糸してもよく、そのいずれを行っても良い。乾式紡糸後に油剤を付与する場合、紡糸原液が乾式紡糸され繊維形成後であれば特に限定されないが、巻き取り機に巻き取られる直前が好ましい。繊維を巻き取った後で油剤を付与することは、巻き取り玉から繊維を解舒するのが困難である。付与方法は、油剤バス中に回転させた金属円筒の表面上に作った油膜に紡糸直後の糸を接触させる方法、ガイド付きのノズル先端から定量吐出した油剤を糸へ付着させる方法など公知の方法を用いることが出来る。また、油剤の紡糸原液への含有のさせ方は、紡糸原液を製造するどの時点に添加してもよく、紡糸原液に溶解又は分散させておく。
【0031】
油剤として、ジメチルシリコーン、鉱物油の他、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等の変成シリコーンを含有しても良いが、油剤成分中の変成シリコーンの含有量は、前述の理由から、あわせて1.0%未満であることが好ましい。また、ポリウレタン弾性繊維に付与した際に、ジメチルシリコーン成分が2.5%以上含有するように、ポリウレタン弾性繊維への油剤の含有量にあわせて、油剤中のジメチルシリコーン成分の含有量を変えることが好ましい。油剤中のジメチルシリコーンの含有量は、50%以上が好ましい。さらに油剤には、タルク、コロイダルアルミナ等の鉱物性微粒子、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィン、ポリエチレン等の常温で固体のワックス等を単独、または必要に応じて任意に組み合わせて用いても良い。
【実施例】
【0032】
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。
以下にポリウレタン弾性繊維の性能評価のための各種評価方法について述べる。
(1)熱接着剥離応力 (ポリウレタン弾性繊維同士)
5cm幅でサンプリング(両端は両面テープに挟んで固定)した2本の試験糸を、図1のように中心で交絡させ、1cmの間隔を空けて金型に固定する。原糸が100%伸長となるように伸長させた状態で、湯洗を90℃10分間行った後、乾熱で180℃1分間処理する。処理後、金枠からサンプルを外し、交絡を解除して、融着部だけで2本が接する状態にする。各々の試験糸両端は重ねておく。
引張試験機(オリエンテック(株)社製UTM−III−100型(商品名))を用い、各々の試験糸両端を試験機上下チャックにあわせてつかみセットする。50cm/分で引張り接着部が剥がれる際の最大応力P(cN)を測定し、ポリウレタン弾性繊維サンプルの繊度(dt)で除する。
【0033】
(2)熱接着剥離応力 (対ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿)
24ゲージ/2.54cmの4口丸編機にて、給糸4本中3本を混用相手糸、1本をポリウレタン弾性繊維試験糸を用い、相手糸の給糸速度450m/分に対し、試験糸180m/分のドラフト2.5の条件で丸編地を作成する。作成した編地を湯洗を90℃10分間行った後、乾熱で180℃1分間処理する。処理した編地を編目に沿って切断し、引張試験機(オリエンテック(株)社製UTM−III−100型(商品名))を用い、図2のように上部チャックに編地をセットし、編地の端から引き出したポリウレタン弾性繊維の端を下部チャックにセットし、50cm/分の速度で引張り、編地の一端からポリウレタン弾性繊維を抜き出す際の応力T(cN)を測定し、ポリウレタン弾性繊維サンプルの繊度(dt)で除する。
相手糸としては、それぞれ以下のものを用いる。
1) ポリアミド繊維: ナイロン66加工糸 78T/34f
2) ポリエステル繊維: ポリエステル加工糸 84T/36f
3) 綿: 綿 80番手/1
【0034】
(3)原糸300%伸長回復時応力、回復率
引張試験機(オリエンテック(株)社製UTM−III−100型(商品名))により、20℃、65%RH雰囲気下で、初期長5cmで引張試験機にセットし、1000%/分の速度で、伸度300%までの伸長・回復を3回繰り返した時の、3回目の回復時の伸度100%における応力R(cN)を測定する。
また、3回目回復時に応力が0になる伸長率をH(%)としたとき、回復率L(%)=100−Hで求める。
【0035】
(4)接触熱切断秒数
初期長14cmの試験糸を50%伸長して21cmとし、180℃の熱体に押し当て(接触部分1cm)、切断されるまでの秒数を測定する。
【0036】
(5)生地のほつれ性評価
24ゲージ/2.54cmの4口丸編機にて、ナイロン66加工糸78T/34fとのベア天竺丸編地を、ナイロン66の給糸速度86m/分、ポリウレタン弾性繊維試験糸39m/分のドラフト2.2、給糸張力5cNで編立する。編地を花王(株)社製非イオン系界面活性剤スコアロールFC250を2g/Lの浴中、浴比1:30で、80℃10分間精錬、リラックス後、乾熱で180℃1分間処理する。処理した編地を1辺を編目に沿って、1辺10cmの正方形に切断した試験片を、洗濯機で水30Lに対し、花王(株)社製洗剤アタック(商標)20gを入れた洗濯機で250分洗濯する。その後、流水条件下ですすぎ200分を行い、取り出した試験片の縁のほつれの有無を確認する。
【0037】
[実施例1]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールに対し、1.6倍当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。
一方、エチレンジアミンおよびジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、ポリウレタン固形分濃度30重量%、粘度450Pa・s(30℃)のポリウレタンウレア溶液PA1を得た。
【0038】
また別に、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、軟化点63℃、ガラス転移点−61℃の熱可塑性ポリウレタンを得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%の熱可塑性ポリウレタン溶液PU1を得た。
【0039】
得られたポリウレタンウレア溶液と熱可塑性ポリウレタン溶液をPA1:PU1=80:20の重量比で混合し、ポリウレタンウレアとポリウレタンをあわせた固形分に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量%をポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。
【0040】
この紡糸原液を紡糸速度800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタン弾性繊維をパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤として、ポリジメチルシロキサン80重量%、鉱物油18重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%からなる油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して4重量%付与し、紙製の紙管に巻き取ることで、44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0041】
[実施例2]
実施例1において、ポリウレタンウレア溶液と熱可塑性ポリウレタン溶液をPA1:PU1=50:50で混合する以外は、実施例1と同様にして44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0042】
[実施例3]
実施例1の熱可塑性ポリウレタン溶液PU2の代わりに、数平均分子量1780のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、軟化点96℃、ガラス転移点−54℃の熱可塑性ポリウレタンを得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%の熱可塑性ポリウレタン溶液PU2を得た。
得られた熱可塑性ポリウレタン溶液をPA1:PU2=80:20で混合し、実施例1と同様にして44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0043】
[実施例4]
実施例1の熱可塑性ポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量950のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、軟化点114℃、ガラス転移点−55℃の熱可塑性ポリウレタンを得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%の熱可塑性ポリウレタン溶液PU3を得た。
得られた熱可塑性ポリウレタン溶液をPA1:PU3=80:20で混合し、実施例1と同様にして44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0044】
[実施例5]
実施例1の熱可塑性ポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、軟化点64℃、ガラス転移点−40℃の熱可塑性ポリウレタンを得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%の熱可塑性ポリウレタン溶液PU4を得た。
得られた熱可塑性ポリウレタン溶液をPA1:PU4=80:20で混合し、実施例1と同様にして44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0045】
[実施例6]
実施例1の熱可塑性ポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリカプロラクトンジオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、軟化点130℃、ガラス転移点−48℃の熱可塑性ポリウレタンを得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%の熱可塑性ポリウレタン溶液PU5を得た。
得られた熱可塑性ポリウレタン溶液をPA1:PU5=80:20で混合し、実施例1と同様にして44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0046】
[実施例7]
実施例1の数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールに代えて、数平均分子量2000のテトラメチレン基と2,2−ジメチルプロピレン基からなる共重合ポリエーテルグリコール(2,2−ジメチルプロピレン基の共重合率10モル%)を用いる以外は同様な方法で、ポリウレタンウレア溶液PA2を得る。
得られたポリウレタンウレア溶液と熱可塑性ポリウレタン溶液をPA2:PU1=80:20で混合し、実施例1と同様にして44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0047】
[比較例1]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールに対し、1.6倍当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。
一方、エチレンジアミンおよびジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、ポリウレタン固形分濃度30重量%のポリウレタンウレア溶液PA1を得た。
【0048】
得られたポリウレタンウレア溶液中PA1の固形分に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量%をポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。
この紡糸原液を紡糸速度800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタン弾性繊維をパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤として、ポリジメチルシロキサン80重量%、鉱物油18重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%からなる油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して5重量%付与し、紙製の紙管に巻き取ることで、44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0049】
[比較例2]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、軟化点63℃、ガラス転移点−61℃の熱可塑性ポリウレタンを得る。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%の熱可塑性ポリウレタン溶液PU1を得た。
得られた熱可塑性ポリウレタン溶液PU1に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量%をポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。
【0050】
この紡糸原液を紡糸速度800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタン弾性繊維をパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤として、ポリジメチルシロキサン80重量%、鉱物油18重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%からなる油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して5重量%付与し、紙製の紙管に巻き取ることで、44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
以上の各実施例および比較例における組成を表1に、得られたポリウレタン弾性繊維の性能を表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によって製造されるポリウレタン弾性繊維を用いることにより、ほつれが抑制され、条件の制約の少ない加工性に優れた生地を得ることができる。また、加工時の熱により、縁始末不要とした生地を用い、ガードル、ブラジャー、インティメイト商品、肌着等の各種ストレッチファンデーションや、タイツ、パンティストッキング等において着用感に優れる好適な製品を提供できる。本発明のポリウレタン弾性繊維は、その他、ウェストバンド、ボディースーツ、スパッツ、水着、ストレッチスポーツウェアー、ストレッチアウター、医療用ウェア、ストレッチ裏地等衣料製品の他、熱接着機能を生かしたオムツ、ベルト等の非衣料用途にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ポリウレタン弾性繊維同士の熱接着剥離応力測定方法を示したものである。
【図2】ポリウレタン弾性繊維と混用相手糸との熱接着剥離応力測定方法を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
180℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維同士の熱接着剥離応力が0.2cN/dt以上であり、熱可塑性ポリウレタンを5%以上60%以下、ポリウレタンウレアを40%以上含むことを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
【請求項2】
180℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維とポリアミド繊維との熱接着剥離応力が0.02cN/dt以上であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項3】
180℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維とポリエステル繊維との熱接着剥離応力が0.02cN/dt以上であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項4】
140℃で乾熱処理した際のポリウレタン弾性繊維と綿との熱接着剥離応力が0.01cN/dt以上であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項5】
原糸の300%伸長回復繰り返し測定時の回復率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項6】
熱可塑性ポリウレタンの軟化点が50℃〜140℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項7】
熱可塑性ポリウレタンのガラス転移点が−70℃〜−20℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項8】
50%伸長下180℃の熱体に接触させた際に破断するまでの時間が30秒以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項9】
ジメチルシリコーン成分を2.5%以上含有し、変性シリコーン成分が0.1%未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項10】
熱可塑性ポリウレタンを5%以上60%以下、ポリウレタンウレアを40%以上含み、DMFまたはDMAcに溶解したポリウレタン組成物を、乾式紡糸法で紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【請求項11】
ジメチルシリコーン成分を含み、変性シリコーンの含有量が1.0%未満である油剤を、ポリウレタン弾性繊維にジメチルシリコーン成分が2.5%以上含有するように紡糸後に仕上げ剤として付与することを特徴とする請求項10記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−177359(P2007−177359A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375398(P2005−375398)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】