説明

ポリエステル樹脂水分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られる皮膜形成物

【課題】感熱接着性と耐ブロッキング性とを兼備し、しかも皮膜形成時における皮膜乾燥後において耐ブロッキング性が迅速に発現するポリエステル樹脂水分散体を経済的、かつ、生産性よく提供すること。
【解決手段】融点50〜110℃、結晶融解熱量60J/g以上、降温結晶化温度30℃以上、および酸価20〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(A);および融点50℃未満および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b1)、融点を有さず、かつガラス転移点50℃以下および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b2)、またはそれらの混合物からなるポリエステル樹脂(B);を、(A)/(B)=3/97〜50/50(質量比)の範囲で含有しているポリエステル樹脂水分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤等の種々の分野において、バインダー成分や皮膜形成用樹脂として特に有用なポリエステル樹脂の水分散体、および、その製造方法、ならびにそれから得られるポリエステル樹脂皮膜形成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、顔料分散性、加工性、耐薬品性、耐候性、各種基材への密着性等に優れていることから、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤等の種々の分野において、バインダー成分や皮膜形成用樹脂として大量に使用されている。
【0003】
前記分野においては、ポリエステル樹脂を溶媒に溶解または分散したものを基材に塗工して皮膜が形成される。特に、接着剤としては、その後の工程で皮膜を加熱して使用するのが一般的である。こうした用途では、皮膜が、与えられた熱に感応してすばやく軟化するとともに、冷却によってすばやく固化して凝集力(接着力)を発揮すること(感熱接着性)が求められる。併せて、このようなポリエステル樹脂を塗布した基材を巻き取ったり、あるいは枚様に重ね取ったりする際には、ブロッキングを起こさないこと(耐ブロッキング性)、およびそのような耐ブロッキング性が迅速に発現すること)が求められる。ブロッキングとはポリエステル樹脂を塗布された基材を重ね合わせたときに自己または外部からの圧力を受けて粘着により一体化する現象である。ブロッキングが起こると、一体化された基材を剥離する作業を要するので、使用時の取扱いが煩雑になる。そのようなブロッキングを防止する耐ブロッキング性がポリエステル樹脂の塗布後、迅速に発現しないと、塗布された基材を速やかに重ね合わせることができないので、塗布後の取扱いがやはり煩雑になる。
【0004】
一方で、ポリエステル樹脂を塗工液にする手段として、近年の環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場から、従来の有機溶剤溶液から、水性媒体による「水性化」または「水分散化」に代替する動きが活発である。
【0005】
すでに、結晶性ポリエステル樹脂の水分散体として、樹脂を有機溶剤に膨潤させたものを水性媒体中に分散し、さらにその分散体から有機溶剤を除去することによって製造されたものが開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、特定酸価の非晶性のポリエステル樹脂を両親媒性の有機溶剤および塩基性化合物を用いて、水性化することが報告されている(特許文献2)。さらに、高分子量の非晶性あるいは結晶化度が低いポリエステル樹脂を用い、両親媒性の有機溶剤からの転相後、水分散体中の有機溶剤を除去することで貯蔵安定性に優れた水分散体が得られることが見いだされている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2005−281547号公報
【特許文献2】特開平9−296100号公報
【特許文献3】国際公開第2004/037924号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1においては、用いられているポリエステル樹脂の結晶性(結晶融解熱量)が十分でなく、溶融から固化にいたる時間が長いため、皮膜形成時における皮膜乾燥後において、耐ブロッキング性が発現する時間が長かった。そのため十分な耐ブロッキング性が得られなかった。また、特許文献2、3において具体的に用いられているポリエステル樹脂は、感熱接着性と耐ブロッキング性とをバランスよく備えたものではなかった。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するものであり、感熱接着性と耐ブロッキング性とを兼備し、しかも皮膜形成時における皮膜乾燥後において耐ブロッキング性が迅速に発現するポリエステル樹脂水分散体を経済的、かつ、生産性よく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の2種のポリエステル樹脂を、特定の割合で含有する水分散体から得られる皮膜は前記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明は、
融点50〜110℃、結晶融解熱量60J/g以上、降温結晶化温度30℃以上、および酸価20〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(A);および
融点50℃未満および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b1)、融点を有さず、かつガラス転移点50℃以下および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b2)、またはそれらの混合物からなるポリエステル樹脂(B);
を、(A)/(B)=3/97〜50/50(質量比)の範囲で含有していることを特徴とするポリエステル樹脂水分散体に関する。
【0011】
本発明はまた、上記ポリエステル樹脂水分散体をコートした後、分散媒体を除去してなる皮膜に関する。
【0012】
本発明はまた、上記ポリエステル樹脂水分散体の製造方法であって、ポリエステル樹脂(A)の水分散体とポリエステル樹脂(B)の水分散体を混合することを特徴とする製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリエステル樹脂水分散体によれば、低温接着性および耐ブロッキング性に優れる樹脂皮膜を形成できるため、ヒートシール材のバインダー成分として接着性フィルムなどに好適である。特に皮膜形成時における皮膜乾燥後において耐ブロッキング性が迅速に発現するため、皮膜形成後の取扱いが簡便である。
【0014】
本発明の製造方法によれば、スルホン酸ナトリウムのような親水性の強い基を導入したり、乳化剤を使用したりすることなしに、比較的分子量や結晶性の高いポリエステル樹脂を安定に水分散体とすることができるため、親水性基や乳化剤の導入による耐水性劣化の懸念がない。
【0015】
本発明の水分散体は、有機溶剤量を低減できるため、総じて環境保護、職場環境の改善の立場から優れた素材であり、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のポリエステル樹脂水分散体は、少なくともポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とが特定の割合で分散媒体中に含有・分散されてなる液状物である。
【0017】
<ポリエステル樹脂>
本発明においてポリエステル樹脂(A)は、融点が50〜110℃、好ましくは60〜100℃の範囲内である。融点が低すぎる場合には、水分散体を乾燥して得られる皮膜形成物の耐ブロッキング性発現に比較的長時間を要する。融点が高すぎる場合には、脂肪族成分を主とするポリエステル樹脂のときは安定な水分散体が得られず、また、芳香族成分を主とするポリエステル樹脂のときは、安定な水分散体を得るための組成においては結晶性が低く、乾燥して得られる形成物の耐ブロッキング性発現に比較的長時間を要するため好ましくない。
【0018】
ポリエステル樹脂(A)は、結晶融解熱量が60J/g以上、好ましくは62〜120J/gであり、かつ降温結晶化温度が30℃以上、好ましくは30〜60℃である。結晶融解熱量が小さすぎる場合あるいは降温結晶化温度が低すぎる場合は、いずれも水分散体を乾燥して得られる形成物の耐ブロッキング性発現に比較的長時間を要するため好ましくない。
【0019】
ポリエステル樹脂(A)の酸価は20〜40mgKOH/g、好ましくは22〜32mgKOH/gである。酸価が低すぎると安定な水分散体が得られない場合がある。酸価が高すぎると、ポリエステル樹脂水分散体から乾燥により形成させた樹脂皮膜の接着性が低下する場合がある。
【0020】
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は5,000以上であることが好ましく、7,000〜15,000であることがより好ましい。数平均分子量が5,000未満の場合には、乾燥皮膜形成物の凝集力が低下する場合がある。分子量分布については特に限定されない。
【0021】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移点は特に限定されず、通常は例えば−20℃以下である。
【0022】
本明細書中、樹脂の熱的特性である融点、結晶融解熱量、降温結晶化温度、およびガラス転移点はJIS K7121に従い、DSC(示差走査熱量)分析で測定された値を用いている。
【0023】
数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー,流出液:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)で測定された値を用いている。
【0024】
上記のようなポリエステル樹脂(A)を用いることにより、耐ブロッキング性を向上させることができ、特に皮膜形成時における皮膜乾燥後において耐ブロッキング性が迅速に発現するようになる。
【0025】
本発明においてポリエステル樹脂(B)は、融点が50℃未満、好ましくは30〜48℃のポリエステル樹脂(b1)、または融点を有さず、かつガラス転移点が50℃以下、好ましくは−25〜30℃のポリエステル樹脂(b2)である。ポリエステル樹脂(B)はポリエステル樹脂(b1)とポリエステル樹脂(b2)との混合物であってもよい。ポリエステル樹脂(b1)の融点またはポリエステル樹脂(b2)のガラス転移点が高すぎると、接着性が低下する。
【0026】
ポリエステル樹脂(b1)は、接着力の発現の観点から、結晶融解熱量が0.3〜20J/gであることが好ましく、より好ましくは5〜10J/gである。
ポリエステル樹脂(b1)のガラス転移点は特に限定されず、通常は例えば−30〜−10℃である。
【0027】
ポリエステル樹脂(b2)について、融点を有さない、とは、DSC(示差走査熱量)分析において昇温測定時に吸熱ピークを示さないことを意味する。
詳しくはポリエステル樹脂(b2)を、DSC(示差走査熱量)測定装置(パーキンエルマー社製 DSC7)で、−30℃から速度20℃/分で200℃まで昇温測定したとき、吸熱ピークは現れない。なお、ピークとはその前後において接線の傾きが正または負で異なるときの頂点を指すものとする。
【0028】
ポリエステル樹脂(b1)およびポリエステル樹脂(b2)の酸価は、通常2〜40mgKOH/gを有し、樹脂の凝集力の点から特に4〜30mgKOH/gであることが好ましく、5〜20mgKOH/gであることが特に好ましい。以下、ポリエステル樹脂(b1)およびポリエステル樹脂(b2)の両者を包含して指すとき、単にポリエステル樹脂(B)と示すものとする。
【0029】
ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は8,000以上であることが好ましく、10,000〜25,000であることがより好ましい。数平均分子量が8,000未満の場合には、乾燥皮膜形成物の接着強度が低下する場合がある。分子量分布については特に限定されない。
【0030】
上記のようなポリエステル樹脂(B)を用いることにより、皮膜の凝集力が増大し、その結果、当該皮膜を介した接着力が向上する。
【0031】
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との質量比率は、通常(A)/(B)の比で3/97〜50/50の範囲であり、好ましくは5/95〜40/60の範囲でり、より好ましくは5/95〜20/80ある。ポリエステル樹脂(A)の比率が3%未満の場合には十分な耐ブロッキング性が得られず、50%を超える場合には接着力が低下する傾向にある。
【0032】
ポリエステル樹脂(A)および(B)はいずれも多塩基酸成分の1種類以上と多価アルコール成分の1種類以上とを重縮合させることや、重縮合後に多塩基酸成分で解重合すること、また、重縮合後に酸無水物を付加させることなど、公知の方法によって製造することができる。このとき、多塩基酸成分および/または多価アルコール成分、ならびに各種条件を調整することによって、樹脂の融点、結晶融解熱量、降温結晶化温度、ガラス転移点、数平均分子量および酸価などを制御可能である。
【0033】
例えば、後で詳述するように、酸成分として芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を使用する場合において、酸成分中の脂肪族ジカルボン酸の割合を増すと、結晶融解熱量が高くなり、ガラス転移点は低くなる。脂肪族ジカルボン酸の割合を減じると、結晶融解熱量が低くなり、ガラス転移点は高くなる。
【0034】
また例えば、酸成分としてテレフタル酸(TPA)とイソフタル酸(IPA)を併用する場合において、TPAを少なく、IPAを少なくすると、融解熱量は高くなる。TPAを少なく、IPAを多くすると、融解熱量は低くなる。TPAを多く、IPAを少なくすると、融点、融解熱量は高くなる。例えば、TPAを多く、IPAを多くすると、融点は高くなる。
【0035】
また例えば、アルコール成分として脂肪族グリコールを使用する場合において、脂肪族グリコール、特に1,4−ブタンジオールの割合を増すと、樹脂の結晶融解熱量は増大する。脂肪族グリコール、特に1,4−ブタンジオールの割合を減じると、樹脂の結晶融解熱量は減少する。
また例えば、酸成分としてコハク酸とセバシン酸を、グリコール成分として1,4−ブタンジオールを用いる場合においてコハク酸にセバシン酸を共重合すると融点および降温結晶化温度は低くなる。
【0036】
また例えば、解重合のための多塩基酸成分の使用量を増大させると、樹脂の数平均分子量は小さくなり、酸価は高くなる。当該多塩基酸成分の使用量を減少させると、樹脂の数平均分子量は増大し、酸価は低下する。このとき、多塩基酸成分として3官能以上のものを用いると、2官能のものを用いる場合よりも、酸価の増大は顕著になる。
【0037】
ポリエステル樹脂(A)および(B)の製造に使用可能な多塩基酸成分および多価アルコール成分、ならびに好ましい成分および樹脂組成について以下、説明する。なお、それらの説明は、特記しない限り、ポリエステル樹脂(A)および(B)の共通の説明として適用可能である。
【0038】
多塩基酸としては、脂肪族多塩基酸、芳香族多塩基酸、脂環族多塩基酸を挙げることができる。具体的な化合物では、脂肪族多塩基酸として、例えば、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、無水2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
【0039】
ポリエステル樹脂(A)を構成する多塩基酸としては、前記した多塩基酸の中でも脂肪族多塩基酸、特に脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分に占める脂肪族多塩基酸の割合としては、60モル%以上であることが、形成される皮膜の結晶性を向上させるうえで好ましく、75モル%以上であることがより好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂(B)を構成する多塩基酸としては、前記した多塩基酸の中でも芳香族多塩基酸を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂(B)を構成する全酸成分に占める芳香族多塩基酸の割合としては、40モル%以上であることが、樹脂の凝集力とポリエステルフィルムなどの基材に対する接着力を向上させるうえで好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。
【0041】
多価アルコールとしては、脂肪族グリコール、脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコール等を挙げることができる。具体的な化合物では、脂肪族グリコールとして、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げられる。脂環族グリコールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。エーテル結合含有グリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールさらにはビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0042】
ポリエステル樹脂(A)を構成する多価アルコールとしては、前記した多価アルコールの中でも、脂肪族グリコール、特にエチレングリコールや1,4−ブタンジオールを用いることが結晶性を向上させるという点で好ましい。ポリエステル樹脂(A)を構成する全アルコール成分に占める脂肪族グリコールの割合としては、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0043】
ポリエステル樹脂(B)を構成する多価アルコールとしては、前記した多価アルコールの中でも、脂肪族グリコールが基材への接着力を向上させるうえで好ましい。特に、脂肪族グリコールの中でも、ポリエステル樹脂(b1)を構成する多価アルコールとしては、1,4−ブタンジオールが、またポリエステル樹脂(b2)を構成する多価アルコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールが好ましい。ポリエステル樹脂(B)を構成する全アルコール成分に占める脂肪族グリコールの割合としては、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0044】
ポリエステル樹脂(A)および/またはポリエステル樹脂(B)を構成する多塩基酸または多価アルコールの一部として、3官能以上の多塩基酸または多価アルコールを使用してもよい。3官能以上の多塩基酸としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。3官能以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。ただし、3官能以上の多塩基酸または多価アルコールの使用量としては、ポリエステル樹脂を構成する全酸成分または全アルコール成分に対し10モル%以下、さらには5モル%以下となる範囲にとどめることが、形成される皮膜の高加工性を損ねないために好ましい。
【0045】
ポリエステル樹脂(A)および/またはポリエステル樹脂(B)の構成成分として、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体等のヒドロキシカルボン酸を使用してもよい。
【0046】
ポリエステル樹脂(A)は、前記した結晶融解熱量および降温結晶化温度等の熱特性を発現させる観点から、少なくとも脂肪族多塩基酸(特に脂肪族ジカルボン酸)と脂肪族グリコールとをモノマー成分として含有することが好ましい。そのような観点から、より好ましい「脂肪族多塩基酸−脂肪族グリコール」の組み合わせを以下に示す。
(AC1)ドデカン二酸−エチレングリコール;
(AC2)セバシン酸−1,4−ブタンジオール;
(AC3)セバシン酸およびコハク酸−1,4−ブタンジオール。
皮膜形成時における皮膜乾燥後において耐ブロッキング性をより迅速に発現させる観点から、上記組み合わせ(AC1)が最も好ましい。
【0047】
そのような好ましいポリエステル樹脂(A)のモノマー成分の組み合わせにおいて、脂肪族多塩基酸および脂肪族グリコールの含有割合はそれぞれ、ポリエステル樹脂(A)の脂肪族多塩基酸および脂肪族グリコールの割合として前記した範囲内であればよい。
【0048】
ポリエステル樹脂(B)は、基材への接着性や凝集力の大きさの観点から、少なくとも芳香族多塩基酸と脂肪族グリコールとをモノマー成分として含有することが好ましい。このとき、所望により、脂肪族多塩基酸を含有してもよい。そのような観点から、より好ましい「芳香族多塩基酸−脂肪族多塩基酸−脂肪族グリコール」の組み合わせを以下に示す。
(BC1)テレフタル酸およびイソフタル酸−セバシン酸−1,4−ブタンジオール;
(BC2)テレフタル酸およびイソフタル酸−セバシン酸−エチレングリコールおよびネオペンチルグリコール。
【0049】
そのような好ましいポリエステル樹脂(B)のモノマー成分の組み合わせにおいて、芳香族多塩基酸および脂肪族グリコールの含有割合はそれぞれ、ポリエステル樹脂(B)の芳香族多塩基酸および脂肪族グリコールの割合として前記した範囲内であればよい。脂肪族多塩基酸の含有割合は、ポリエステル樹脂(B)を構成する全酸成分に対して60モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂水分散体中におけるポリエステル樹脂の含有率としては、その使用される用途、目的とする皮膜の厚み、皮膜の成形方法によって適宜選択されるが、通常1〜50質量%であり、5〜40質量%が好ましい。50質量%を超えるとポリエステル樹脂水分散体の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。一方、1質量%未満では、均一な皮膜を形成できない場合がある。上記ポリエステル樹脂の含有率はポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との総含有率である。
【0051】
<塩基性化合物>
ポリエステル樹脂(A)および/またはポリエステル樹脂(B)はカルボキシル基を有し、水分散体中、当該カルボキシル基の一部または全部が塩基性化合物で中和されている。その結果、カルボキシルアニオンが生成し、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂微粒子は凝集せず安定に分散するため、界面活性剤を使用せずに分散安定性の良好なポリエステル樹脂水分散体が得られる。
【0052】
塩基性化合物はポリエステル樹脂中のカルボキシル基と中和反応を起こし、水性化を推進する。塩基性化合物が皮膜形成物中に残存するとその性能を低下させる傾向があるため、本発明における塩基性化合物としては、乾燥によって揮散させ易い化合物が好ましい。そのような塩基性化合物としては、アンモニアや有機アミン化合物が挙げられる。有機アミン化合物の沸点としては160℃以下であることが好ましい。また、水と共沸可能なものが特に好ましい。中でもアンモニア、トリエチルアミンが最も好ましい。塩基性化合物は、単一物でも、また、複数の混合物としても使用できる。
【0053】
塩基性化合物は、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基の量に応じて使用され、少なくともこれを部分中和し得る量であればよく、カルボキシル基に対して0.6〜15倍当量であることが好ましく、0.8〜6倍当量であることがより好ましい。0.6倍当量未満では塩基性化合物添加の効果が認められない場合があり、一方15倍当量を超えると、ポリエステル樹脂水分散体の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
【0054】
<水分散体の製造方法>
本発明のポリエステル樹脂水分散体は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を混合したのち水分散体としてもよいが、両者を別々に水分散体としたのち、所定の割合で混合攪拌することのほうが、両成分の特徴を十分に引き出し、かつ、製造も容易である。すなわち、ポリエステル樹脂(A)の水分散体とポリエステル樹脂(B)の水分散体を混合することが好ましい。
【0055】
本発明のポリエステル樹脂(A)の水分散体を製造する方法を例示する、すなわち、以下の工程を経ることで安定な水分散体を得ることができる。ポリエステル樹脂(A)を両親媒性有機溶剤に加熱して溶液とする工程(工程1)、加熱状態のまま前記溶液と塩基性化合物および水とを混合して乳化液とする工程(工程2)、前記乳化液から有機溶剤を溜去する工程(工程3)を含む方法である。
【0056】
(工程1)
ポリエステル樹脂(A)を両親媒性有機溶剤に溶解させて溶液を得る。両親媒性有機溶剤は、親水性であり、かつ、それ自身が水と共沸する作用を有するものであり、好ましくは、アルコール、ケトン、エーテル、グリコール誘導体から選択される150℃以下の沸点を有するものであり、特に沸点110℃以下のものが好ましい。
【0057】
本発明に用いることのできる両親媒性有機溶剤としては、アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、グリコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。環状エーテルとしてテトラハイドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0058】
ポリエステル樹脂(A)を上記の両親媒性有機溶剤に溶解する方法は特に限定されず、適宜加熱や攪拌をおこなうなど、通常の方法を用いればよい。
【0059】
(工程2)
次に、ポリエステル樹脂(A)の両親媒性有機溶剤溶液と、水および前記の塩基性化合物とを混合することにより転相乳化をおこなう。このとき、混合の順序は特に限定されず、例えば、前記溶液を攪拌しておき、ここに水と塩基性化合物との混合液を少量ずつ添加してもよいし、塩基性化合物を加えた後、水を加えてもよい。
【0060】
(工程3)
乳化の後、水分散体の保存安定性の観点から、両親媒性有機溶剤を溜去する。両親媒性有機溶剤は、水とともに共沸させることによって、系外へ溜去することができる。溜去の程度は所望の性能や安定性の観点から適宜決定すればよいが、ポリエステル樹脂(A)水分散体全体の0.5質量%以下にまで溜去することができる。有機溶剤の含有率はガスクロマトグラフィで定量することができる。
【0061】
本発明においては、工程1〜2を通じて、40℃〜(両親媒性有機溶剤の沸点)の温度範囲でおこなうことが好ましく、特に好ましい温度範囲は、50℃〜150℃である。40℃未満であると、ポリエステル樹脂(A)を溶解した状態に保つことが困難となり、溶液の粘度が著しく高くなる場合がある。また、両親媒性有機溶剤の沸点を超えるとこの両親媒性有機溶剤の飛散が顕著となり好ましくない場合がある。
【0062】
工程3における温度条件は、特に限定されないが、両親媒性有機溶剤と水が共沸する温度以上とすることが好ましい。両親媒性有機溶剤の溜去が進行すれば、最終的には系内は水の沸点となる。このときポリエステル樹脂(A)にとって高温が好ましくない場合には、減圧下でおこない、沸点を低下させてもよい。工程3の終了後には、速やかに40℃以下にまで冷却することが好ましい。
【0063】
また、工程2において、両親媒性有機溶剤の溶液へ塩基性化合物および水を添加して転相乳化をおこなった後、直ちに工程3を実施して有機溶剤を溜去することが好ましい。これは、転相後に両親媒性有機溶剤を含む系では水分散体が安定しないこと、および特殊な設備を使用せず、しかも比較的単純な工程で安定した品質で生産できることなどの理由による。さらに、工程1,2を前記のように40℃〜(両親媒性有機溶剤の沸点)の条件でおこなえば、工程2に続けて直ちに工程3をおこなううえで、工程の所要時間を短縮することができ、省エネルギーの点から有利である。
【0064】
前記各工程をおこなうためには、特殊な装置は必要としない。液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された分散媒体と樹脂粉末ないしは粒状物の混合物を適度に撹拌でき、かつ溜出する蒸気を凝集できるコンデンサがあればよく、好ましくは槽内を40℃〜(両親媒性有機溶剤の沸点または水の沸点のいずれか高い方の温度)に加熱できる装置がよい。
【0065】
本発明のポリエステル樹脂(B)の水分散体を製造する方法としては、特に限定されないが、たとえば酸価が8〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)、水、前記の両親媒性有機溶剤、塩基性化合物を40〜100℃で加熱攪拌するなどの公知の方法で製造できる。ついで、ポリエステル樹脂(A)の水分散体の場合と同様に、水とともに有機両親媒性有機溶剤を溜去することができる。
【0066】
また、他の方法としてたとえば、酸価が2〜10mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)を両親媒性有機溶剤に溶解し、この溶液を塩基性化合物とともに水に分散させ、ついでポリエステル樹脂(A)の水分散体の場合と同様に、水とともに有機両親媒性有機溶剤を溜去することで分散状態が安定な水分散体が製造できる。
【0067】
ポリエステル樹脂(A)および(B)の水分散体の製造工程においては、水分散体への粗大な粒子の混入を防ぐ目的で、必要に応じ、濾過等をおこなってもよい。例えば、300〜600メッシュ程度のステンレス製フィルターを用いればよい。また、空気圧0.2MPa程度で加圧濾過してもよい。
【0068】
ポリエステル樹脂(A)および(B)が分散される分散媒体は水性媒体であって、水を主成分とする液体からなる媒体であり、前記した有機溶剤を含有していてもよい。
【0069】
本発明のポリエステル樹脂水分散体における有機溶剤の含有量は、ポリエステル樹脂水分散体が安定化する範囲であれば特に限定されないが、工程3による溜去などを行って、0.5質量%以下とすることが好ましい。なお、コーティング時のハジキや泡の発生を抑える目的で、性能に差し支えない範囲で有機溶剤を加えてもよい。また、所望の固形分濃度以上に分散媒体を溜去した後で、水により希釈して固形分濃度を調整してもよい。
【0070】
本発明においては、有機両親媒性有機溶剤を溜去した場合にはpHが6近辺まで低くなる場合がある。ポリエステル樹脂水分散体のpHは6.6以上であることが好ましい。pHの調整は、前記製造方法の工程3の後、ポリエステル樹脂水分散体に塩基性化合物を添加しておこなうことが好ましい。pHは8.5以上であると、菌や黴の発生が抑制されるためさらに好ましい。水分散体のpHが6.6より小さい場合は水分散体が固化しやすい傾向があり、また抗菌の効果が小さい。一方、pHの上限は、特に限定されないが、12.0より大きい場合は経時的にポリエステル樹脂の分子量を低下させるおそれがあるため12.0以下であることが好ましい。pHを調整するための塩基性化合物としては、前記工程2で使用されるアンモニアやアミンが用いられる。
【0071】
<水分散体の特性>
本発明の水分散体の粘度は、特に限定されないが、例えば、基材への塗布等を目的とする場合には、1〜100mPa・sの範囲にあれば良好である。また、水分散体の体積平均粒径も特に限定されないが、400nm以下であれば安定となるため好ましく、300nm以下であることがより好ましい。
【0072】
<水分散体の使用方法>
本発明の水分散体を基材表面にコートした後、分散媒体(水性媒体)を除去することによって、均一な皮膜を基材表面に密着させて形成できる。詳しくは、本発明の水分散体は、皮膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂皮膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材の特性等により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、30〜250℃が好ましく、90〜160℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜20分間が好ましく、10秒〜5分が特に好ましい。
【0073】
本発明の水分散体を用いて樹脂皮膜を形成する場合、その厚さは、その用途によって適宜選択されるものであるが、通常0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μm、最適は0.5〜25μmである。樹脂皮膜の厚さが前記範囲となるように成膜すれば、均一性に優れた樹脂皮膜が得られる。樹脂皮膜の厚さを調節するためには、コーティングに用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする樹脂皮膜の厚さに適した濃度の水分散体を使用することが好ましい。
【実施例】
【0074】
実施例によって本発明を具体的に説明する。
なお、各種の特性については、以下の方法によって測定または評価した。
(1)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlの水/ジオキサン=1/9(体積比)に溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
(2)ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
【0075】
(3)ポリエステル樹脂の融点、融解熱量、結晶化温度、ガラス転移点
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量)測定装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて、−30℃から速度20℃/分で200℃まで昇温測定をおこない、200℃で3分間保ったのち、速度20℃/分で−40℃まで降温測定をおこなった。このとき得られた結晶に由来するピークのうち、昇温測定時のピークトップ温度(JIS K 7121で定義された融解ピーク温度Tpm)を融点とし、このときの吸熱量を融解熱量とし、降温測定時のピークトップ温度(JIS K 7121で定義された結晶化ピーク温度Tpc)を結晶化温度とした。また同様の測定をおこない、−30℃から速度20℃/分で200℃まで昇温する過程で発現する吸熱側への変位の立ち上がりの温度(JIS K 7121で定義された補外ガラス転移開始温度Tig)をガラス転移点とした。
【0076】
(4)ポリエステル樹脂水分散体の固形分濃度
ポリエステル分散体を1g秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、ポリエステル樹脂固形分濃度を求めた。
(5)ポリエステル樹脂水分散体の粘度
株式会社トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、温度30℃における水分散体の回転粘度を測定した。
【0077】
(6)ポリエステル樹脂水分散体中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG-HT(5%)-Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール]を用い、水分散体または水分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
【0078】
(7)ポリエステル樹脂水分散体のpH
株式会社堀場製作所製、ガラス電極式水素濃度計、pH METER F−21を用いて25℃で測定した。
(8)ポリエステル樹脂粒子の平均粒径
日機装株式会社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、体積平均粒子径を求めた。
【0079】
(9)樹脂皮膜の厚さ
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINE Σ)を用いて、基材(実施例ではポリエステル(PET)フィルム(ユニチカ株式会社製、厚さ38μm))の厚みを予め測定しておき、水分散体を用いて基材上に樹脂皮膜を形成した後、この樹脂皮膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂皮膜の厚さとした。
【0080】
(10)タック消滅時間
PETフィルム(ユニチカ株式会社製、厚さ38μm)に水分散体を卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、マイヤーバー装着)を用いてコートし、120℃の熱風オーブン中で1分乾燥して厚さ5μmの樹脂皮膜を形成した後、23℃の室温に取り出し、PETフィルムをコート面が接触するように重ね合わせてタックが消滅するまでの時間(秒)を測定した。15秒以下を実用上問題のない範囲、10秒以下を好ましい範囲と判定した。タックとは粘着性であり、重ね合わせたPETフィルムに50KPaの圧力をかけても接着しなくなったとき、タックが消滅したものと認定した。1時間でタックが消滅しないものを「消滅せず」とした。
【0081】
(11)耐ブロッキング性の評価
(10)と同様にして樹脂皮膜を形成し、23℃の室温に1日間放置した後、コート面が接触するように重ねて、50KPaの圧力をかけて45℃で7日間静置した。その後、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い20℃の雰囲気で、剥離面の角度90度、剥離速度50mm/分、剥離幅25mmの剥離強度を測定した。0.1N/25mm以下を実用上問題のない範囲内、0.05N/25mm以下を好ましい範囲と判定した。
【0082】
(12)接着試験
(10)と同様にして樹脂皮膜を形成し、23℃の室温に1日間放置した後、コート面が接触するように重ねて、ヒートプレス機にて、120℃、シール圧0.2MPa、10秒間圧着した。このサンプルを(11)と同様に剥離強度を測定した。3.0N/25mm以上を実用上問題のない範囲内、5.0N/25mm以上を好ましい範囲と判定した。
【0083】
(13)分散状態
5℃の環境下で貯蔵したところ、1ヶ月以上たっても沈殿や層分離や固化が生じないものを「安定」と認定した。1ヶ月後、沈殿や層分離や固化が生じたものを「不安定」と認定した。
【0084】
[ポリエステル樹脂製造例]
(ポリエステル樹脂「P−1」の製造例)
ドデカン二酸253.6g、エチレングリコール95.2g、トリメチロールプロパン0.7g、テトラ−n−ブチルチタネート0.11gを、攪拌機を備えた耐熱圧ガラス容器中に採り、235℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。3時間後に系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸10.4gを添加し、1.5時間撹拌して解重合反応をおこない、ポリエステル樹脂「P−1」を得た。
【0085】
(ポリエステル樹脂「P−2」〜「P−5」の製造例)
表1に示した仕込みの原料組成を用いたこと以外、ポリエステル樹脂「P−1」の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル樹脂「P−2」〜「P−5」を得た。
【0086】
(ポリエステル樹脂「P−6」の製造例)
テレフタル酸78.6g、セバシン酸143.7g、1,4−ブタンジオール153.4g、テトラ−n−ブチルチタネート0.12gを、攪拌機を備えた耐熱圧ガラス容器中に採り、220℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。4時間の重合反応後に系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸8.7gを添加し、2時間撹拌して解重合反応をおこない、ポリエステル樹脂P−6を得た。
【0087】
(ポリエステル樹脂「P−7」、「P−9」および「P−11」の製造例)
表1に示した仕込みの原料組成を用いたこと以外、ポリエステル樹脂「P−6」の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル樹脂「P−7」、「P−9」および「P−11」を得た。
【0088】
(ポリエステル樹脂「P−8」の製造例)
テレフタル酸99.6g、イソフタル酸16.6g、セバシン酸60.6g、ネオペンチルグリコール59.3g、エチレングリコール38.4gを、攪拌機を備えた耐熱圧ガラス容器中に採り、250℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物0.13gを添加した後、系の温度を270℃にし、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。3時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ250℃になったところで無水トリメリット酸1.15gを添加し、2時間撹拌して解重合反応をおこない、ポリエステル樹脂P−8を得た。
【0089】
(ポリエステル樹脂「P−10」および「P−12」の製造例)
表1に示した仕込みの原料組成を用いたこと以外、ポリエステル樹脂「P−8」の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル樹脂「P−10」および「P−12」を得た。
【0090】
【表1】

【0091】
DDA:ドデカン二酸、SEA:セバシン酸、ADA:アジピン酸、SUAA:無水コハク酸、TPA:テレフタル酸、IPA:イソフタル酸、TMA:トリメリット酸、TMAA:無水トリメリット酸、
EG:エチレングリコール、NPG:ネオペンチルグリコール、BD:1,4−ブタンジオール、TMP:トリメチロールプロパン
【0092】
ポリエステル「P−1」〜「P−12」の組成を物性値とともに表2にまとめて示す。
【0093】
【表2】

【0094】
DDA:ドデカン二酸、SEA:セバシン酸、ADA:アジピン酸、SUA:コハク酸、TPA:テレフタル酸、IPA:イソフタル酸、TMA:トリメリット酸、
EG:エチレングリコール、NPG:ネオペンチルグリコール、BD:1,4−ブタンジオール、TMP:トリメチロールプロパン
【0095】
実施例及び比較例で用いたポリエステル樹脂水分散体は、次のようにして製造した。
【0096】
[ポリエステル樹脂水分散体製造例]
(ポリエステル樹脂水分散体「E−1」の製造)
3リットルの3口丸底フラスコにポリエステル樹脂「P−1」200g、メチルエチルケトン467gを採り、60℃の湯浴に浸漬して攪拌機を用いて透明な液になるまで溶解した。加熱攪拌を持続しながらトリエチルアミン27gを加えた後、蒸留水653gを系の均一化に注意しながら少しずつ加えて転相乳化した。次にこれを85℃の油浴に移し、冷却管を取り付け攪拌しながらメチルエチルケトンを水と共沸させて溜出した。溜出状況に応じて油浴を昇温し、最終的に120℃とした。溜出液の質量を測りながら680.3gに達した時点で加熱を止め、水浴で室温まで冷却した。さらに28%のアンモニア水2.6gを添加して攪拌した後、フラスコ内の液状成分を600メッシュ(あやたたみ織り)のフィルターで濾過を行い、ポリエステル樹脂水分散体「E−1」を得た。この分散体を各種物性について分析した。この水分散体の外観を目視で観察したところ、沈殿や層分離や固化の見られない均一なものであった。
【0097】
(ポリエステル樹脂水分散体「E−2」の製造)
ポリエステル樹脂「P−2」を用い、トリエチルアミンを33gとし、最終段階で加える28%のアンモニア水を0.9gとした以外はポリエステル樹脂水分散体E−1の製造例と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂水分散体「E−2」を得た。
【0098】
(ポリエステル樹脂水分散体「E−3」の製造)
ポリエステル樹脂「P−3」を用い、トリエチルアミンに代えて28%のアンモニア水を19gとし、最終段階で加える28%のアンモニア水を0.9gとした以外はポリエステル樹脂水分散体E−1の製造例と同様の操作を行ってポリエステル樹脂水分散体「E−3」を得た。
【0099】
(ポリエステル樹脂水分散体「E−4」の製造)
3リットルの3口丸底フラスコにポリエステル樹脂「P−4」200g、メチルエチルケトン467gを採り、60℃の湯浴に浸漬して攪拌機を用いて透明な液になるまで溶解した。加熱攪拌を持続しながらトリエチルアミン35gを加えた後、蒸留水653gを系の均一化に注意しながら少しずつ加えて転相乳化した。次にこれを85℃の油浴に移し、冷却管を取り付け攪拌しながらメチルエチルケトンを水と共沸させて溜出した。溜出状況に応じて油浴を昇温し、最終的に120℃とした。溜出液の質量を測りながら680.3gに達した時点で加熱を止め、水浴で室温まで冷却したところ固化した。
【0100】
(ポリエステル樹脂水分散体「E−5」の製造)
3リットルの3口丸底フラスコにポリエステル樹脂「P−5」200g、メチルエチルケトン467gを採り、60℃の湯浴に浸漬して攪拌機を用いて透明な液になるまで溶解した。加熱攪拌を持続しながらトリエチルアミン35gを加えた後、蒸留水653gを系の均一化に注意しながら少しずつ加えて転相乳化した。次にこれを85℃の油浴に移し、冷却管を取り付け攪拌しながらメチルエチルケトンを水と共沸させて溜出した。溜出が進むにつれて樹脂が凝集し均一な分散体は得られなかった。
【0101】
(ポリエステル樹脂水分散体「E−6」の製造)
ポリエステル樹脂「P−6」を用い、トリエチルアミンに代えて28%のアンモニア水を15gとし、最終段階で加える28%のアンモニア水を0.9gとした以外はポリエステル樹脂水分散体E−1の製造例と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂水分散体「E−6」を得た。
【0102】
(ポリエステル樹脂水分散体「E−7」の製造)
2リットルのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂「P−7」を400gとメチルエチルケトンを600g投入し、約70℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2リットル)に前記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を18℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度 600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン38gを添加し、続いて100g/minの速度で18℃の蒸留水462gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に20℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が20質量%の水分散体を得た。次いで、得られたポリエステル樹脂水分散体800gを丸底フラスコに仕込み、これを85℃の油浴に移し、冷却管を取り付け攪拌しながらメチルエチルケトンを水と共沸させて溜出した。溜出状況に応じて油浴を昇温し、最終的に120℃とした。溜出液の質量を測りながら284gに達した時点で加熱を止め、水浴で室温まで冷却した。さらに28%のアンモニア水2.1gを添加して攪拌した後、フラスコ内の液状成分を600メッシュ(あやたたみ織り)のフィルターで濾過をおこない、ポリエステル樹脂水分散体「E−7」を得た。この分散体を各種物性について分析した。この水分散体の外観を目視で観察したところ、沈殿や層分離や固化の見られない均一なものであった。
【0103】
(ポリエステル樹脂水分散体「E−8」、「E−9」、「E−11」および「E−12」の製造)
それぞれポリエステル樹脂「P−8」、「P−9」、「P−11」および「P−12」を用いた以外はポリエステル樹脂水分散体「E−7」の製造例と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂水分散体「E−8」、「E−9」、「E−11」および「E−12」を得た。
【0104】
(ポリエステル樹脂水分散体「E−10」の製造)
3リットルの3口丸底フラスコに水558.4g、イソプロピルアルコール135.0g、ポリエステル樹脂「P−10」300g、28質量%アンモニア水6.4gを採り、温浴に浸漬して攪拌しながら内温70℃に加熱した。1時間後、加熱攪拌を持続しながら系に水249.8gを加えた。次いでフラスコに冷却管を取り付け、油浴を85℃としてイソプロピルアルコールと水を共沸させて留出した。留出状況に応じて油浴を昇温し、最終的に120℃とした。留出液の質量を測りながら249.8gに達した時点で加熱を止め、水浴で室温まで冷却した。フラスコ内の液状成分を600メッシュ(あやたたみ織り)のフィルターで濾過を行い、ポリエステル樹脂水性分散体「E−10」を得た。この分散体を各種物性について分析した。この水分散体の外観を目視で観察したところ、沈殿や層分離や固化の見られない均一なものであった。
【0105】
前記ポリエステル樹脂水分散体単独での評価結果をまとめて表3に示す。
【0106】
【表3】

【0107】
実施例1
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−1」15gと「E−7」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−13」を得た。
【0108】
実施例2
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−1」30gと「E−7」70gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−14」を得た。
【0109】
実施例3
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−1」5gと「E−8」95gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−15」を得た。
【0110】
実施例4
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−1」40gと「E−8」60gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−16」を得た。
【0111】
実施例5
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−2」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−2」15gと「E−7」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−17」を得た。
【0112】
実施例6
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−3」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−3」15gと「E−7」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−18」を得た。
【0113】
実施例7
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−11」を用い、「E−1」25gと「E−11」75gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−19」を得た。
【0114】
実施例8
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−12」を用い、「E−1」27gと「E−12」73gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−20」を得た。
【0115】
比較例1
ポリエステル樹脂(A)水分散体を混合せず、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を単独で用いた。
【0116】
比較例2
ポリエステル樹脂(A)水分散体を混合せず、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を単独で用いた。
【0117】
比較例3
ポリエステル樹脂(B)水分散体を混合せず、ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を単独で用いた。
【0118】
比較例4
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−7」を用い、「E−1」55gと「E−7」45gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−21」を得た。
【0119】
比較例5
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−1」60gと「E−8」40gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−22」を得た。
【0120】
比較例6
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−6」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−6」15gと「E−8」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−23」を得た。
【0121】
比較例7
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−9」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−8」を用い、「E−9」15gと「E−8」85gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−24」を得た。
【0122】
比較例8
ポリエステル樹脂(A)水分散体として「E−1」を、ポリエステル樹脂(B)水分散体として「E−10」を用い、「E−1」25gと「E−10」75gを室温下で約5分間攪拌混合してポリエステル樹脂水分散体「E−25」を得た。
【0123】
前記の実施例および比較例で得られたポリエステル樹脂水分散体の性能およびそれから得た皮膜での評価結果をまとめて表4に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
表4から明らかなように、実施例1〜8においては、「P−7」、「P−8」、「P−11」、「P−12」が粘着性であるにもかかわらず、耐ブロッキング性に優れ、しかも本来の接着性を保持している。
【0126】
これに対して、各比較例では次のような問題があった。
比較例1、2では耐ブロッキング性の試験において本来の接着性に近い値ほどのブロキングが生じる。
比較例3では耐ブロッキング性は優れるものの、接着性が非常に低い。
比較例4、5ではポリエステル樹脂(A)の比率が50%をこえると接着性が劣ることが明確である。
比較例6、7では接着性は優れているがタック消滅時間が長く、耐ブロッキング性に欠ける。
比較例8ではポリエステル樹脂(B)のガラス転移点が50℃を超えると接着性が著しく低下することが明確である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のポリエステル樹脂水分散体は皮膜形成用として有用であり、例えば、鋼板やフィルムのアンカーコート剤、紙やフィルムの接着剤、塗料やインキのバインダー成分、紙やフィルムのコーティング剤として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点50〜110℃、結晶融解熱量60J/g以上、降温結晶化温度30℃以上、および酸価20〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(A);および
融点50℃未満および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b1)、融点を有さず、かつガラス転移点50℃以下および酸価2〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(b2)、またはそれらの混合物からなるポリエステル樹脂(B);
を、(A)/(B)=3/97〜50/50(質量比)の範囲で含有していることを特徴とするポリエステル樹脂水分散体。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)および/またはポリエステル樹脂(B)がカルボキシル基を有し、かつ、該カルボキシル基の一部または全部が塩基性化合物で中和されており、
水分散体のpHが6.6以上である請求項1に記載のポリエステル樹脂水分散体。
【請求項3】
ポリエステル樹脂(A)が少なくとも脂肪族多塩基酸と脂肪族グリコールとをモノマー成分として含有し、
ポリエステル樹脂(B)が少なくとも芳香族多塩基酸と脂肪族グリコールとをモノマー成分として含有する請求項1または2に記載のポリエステル樹脂水分散体。
【請求項4】
ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分に占める脂肪族多塩基酸の割合が60モル%以上であり、
ポリエステル樹脂(A)を構成する全アルコール成分に占める脂肪族グリコールの割合が80モル%以上であり、
ポリエステル樹脂(B)を構成する全酸成分に占める芳香族多塩基酸の割合が40モル%以上であり、
ポリエステル樹脂(B)を構成する全アルコール成分に占める脂肪族グリコールの割合が80モル%以上である請求項3に記載のポリエステル樹脂水分散体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂水分散体をコートした後、分散媒体を除去してなる皮膜。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂水分散体の製造方法であって、ポリエステル樹脂(A)の水分散体とポリエステル樹脂(B)の水分散体を混合することを特徴とする製造方法。