説明

ポリエステル樹脂組成物

【課題】長波紫外線遮蔽効果を長時間維持し、溶媒に対する溶解性が高く、優れた耐光性を有するポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物とポリエステル樹脂とを含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン化合物及びポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂組成物及びそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紫外線吸収剤を種々の樹脂などと共用して紫外線吸収性を付与することが行われている。紫外線吸収剤として無機系紫外線吸収剤と有機系紫外線吸収剤を用いる場合がある。無機系紫外線吸収剤(例えば、特許文献1〜3等を参照。)では、耐候性や耐熱性などの耐久性に優れている反面、吸収波長が化合物のバンドギャップによって決定されるため選択の自由度が少なく、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域まで吸収できるものはなく、長波紫外線を吸収するものは可視域まで吸収を有するために着色を伴ってしまう。
これに対して、有機系紫外線吸収剤は、吸収剤の構造設計の自由度が高いために、吸収剤の構造を工夫することによって様々な吸収波長のものを得ることができる。
【0003】
これまでにも様々な有機系紫外線吸収剤を用いた系が検討されており、特許文献4にはトリアゾール系の紫外線吸収剤が開示されている。特許文献5には特定の位置にアルコキシ基及びヒドロキシ基を有するトリスアリール−s−トリアジンが記載されている。しかし、極大吸収波長が長波紫外線領域にあるものは耐光性が悪く、紫外線遮蔽効果が時間とともに減少していってしまう。
更に近年開発の進む太陽電池等に適用される材料は、屋外で長時間太陽光の下に曝すことが必要であり、長期経時での紫外線の暴露により、その性質が劣化することは避けられなかった。このため、UV−A領域まで遮蔽効果を示し、かつこれまで以上の耐光性に優れた紫外線吸収剤として使用し得る化合物が求められている。
【0004】
一方、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は比較的耐光性も良く、濃度や膜厚を大きくすれば長波長領域まで比較的クリアにカットできる(例えば特許文献6及び7等を参照。)。しかし、通常これらの紫外線吸収剤を樹脂等に混ぜて塗布する場合、膜厚は数十μm程度が限界である。この膜厚で長波長領域までカットしようとするとかなり高濃度に紫外線吸収剤を添加する必要がある。しかしながら、単に高濃度に添加しただけでは紫外線吸収剤の析出や長期使用によるブリードアウトが生じるという問題があった。高濃度に添加すると、臭気の面で問題が生じる場合もあった。また、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、溶解性が低いものが多く、高濃度で樹脂等に混ぜて塗布することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−339033号公報
【特許文献2】特開平5−345639号公報
【特許文献3】特開平6−56466号公報
【特許文献4】特表2002−524452号公報
【特許文献5】特許第3965631号公報
【特許文献6】特開平6−145387号公報
【特許文献7】特開2003−177235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、長波紫外線遮蔽効果を長時間維持し、溶媒に対する溶解性が高く、臭気の点で問題がなく、優れた耐光性を有するポリエステル樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、溶媒に対する溶解性が高いため長期経時における析出やブリードアウトしにくく、色相の変化がない長波紫外線遮蔽効果を有するフィルム等の成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について詳細に検討した結果、UV−A領域まで遮蔽効果を示し、有機溶媒に高溶解性であり、これまでにない耐光性を有する新規トリアジン系化合物を見出し、これをポリエステル樹脂組成物に含有させることで本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
【0008】
〔1〕
下記一般式(1)で表される化合物とポリエステル樹脂とを含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はOHを除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
〔2〕
前記1価の置換基が、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基であり、前記1価の置換基が置換基を有する場合の置換基がハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基又はアルキルスルホニル基であることを特徴とする〔1〕に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔3〕
前記R1b、R1c及びR1dの少なくとも一つがハメット則のσp値が正である置換基であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔4〕
前記ハメット則のσp値が、0.1〜1.2の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔5〕
前記ハメット則のσp値が正である置換基が、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO及びSOMより選択される基であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物[R、Rは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。]。
〔6〕
前記ハメット則のσp値が正である置換基がCOOR又はCNであることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物[Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。]。
〔7〕
前記R1h又はR1nが、水素原子であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔8〕
前記R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが、水素原子であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔9〕
前記一般式(1)で表される化合物のpkaが−5.0〜−7.0の範囲であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔10〕
一般式(1)の化合物を0.01〜30質量%含むことを特徴とする〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔11〕
更に添加剤を含有することを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔12〕
前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート及びポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔13〕
前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする〔1〕〜〔12〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔14〕
前記添加剤が、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、蛍光増泊剤又は難燃剤であることを特徴とする〔11〕〜〔13〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
〔15〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル樹脂成形品であって、厚さが0.1μm〜25mmであることを特徴とするポリエステル樹脂成形品。
〔16〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる太陽電池用バックシート。
〔17〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる太陽電池用フロントシート。
〔18〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる窓貼りフィルム。
〔19〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる食品・医療用包装フィルム。
〔20〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる農業用フィルム。
〔21〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる光学用フィルム。
〔22〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる繊維。
〔23〕
〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる太陽電池用モジュール。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、有機溶媒に高溶解性で長波長領域においても紫外線遮蔽効果を示し、耐光性を有する前記一般式(1)で表される化合物を含有することにより、長波紫外線遮蔽効果を長時間維持し、溶媒に対する溶解性が高く、長期経時における色相の変化が抑制される。またこれを成形することにより、長期経時における析出やブリードアウト、色相の変化がない長波紫外線遮蔽効果を有するフィルム等の成形品を得ることができる。更に、用途によっては、紫外線吸収剤組成物が無臭であることが好ましいが、本発明の紫外線吸収剤組成物は、高濃度で使用しても無臭であり、臭気の点でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい太陽電池モジュールの構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される化合物とポリエステル樹脂とを含有する。
一般式(1)で表される化合物は、有機溶媒に高溶解性で長波長領域においても紫外線遮蔽効果を示し、耐光性を有する。従って、紫外線吸収剤としてポリエステル樹脂に添加した場合、析出やブリードアウトがなく、長波紫外線吸収能を長期間維持し、樹脂の色相の変化を抑制できる。
まず、下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0014】
【化2】

【0015】
[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はOHを除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
【0016】
1a、R1b、R1c、R1d、R1eは、互いに独立して、水素原子又はOHを除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。
1a、R1b、R1c、R1d、R1eが表す置換基のうち1〜3個がハメット則のσp値が正である置換基を表すことが好ましく、1〜2個がハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましい。
【0017】
前記一般式(1)における1価の置換基(以下Aとする)としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、置換又は無置換のカルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、アルキルカルボニル基(例えばアセチル)、アリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、置換スルホアミノ基)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、イミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えばメトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、置換又は無置換のスルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ)、チオシアネート基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、炭素数6〜20のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。
また、置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。その際、置換基の例としては、上述の1価の置換基Aを挙げることができる。
また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0018】
置換基同士で結合して形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
【0019】
前記一般式(1)における1価の置換基としては、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基が好ましく、OR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。)、アルキル基、アミド基がより好ましく、OR、アルキル基が更に好ましい。
は、水素原子又は1価の置換基を表し、1価の置換基としては前記置換基Aを挙げることができる。中でも炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表すことが好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基が更に好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0020】
本発明における好ましい第一の態様として、R1a、R1c、R1eのうち少なくとも1つが、ハメット則のσp値が正である置換基を表す態様を挙げることができる。R1cがハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましい。
1cがハメット則のσp値が正である置換基であり、R1a、R1b、R1d、R1eは水素原子を表すことが更に好ましい。
1cがハメット則のσp値が正である置換基を表す場合、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、耐光性が向上するため好ましい。
【0021】
また、好ましい第二の態様として、R1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である態様を挙げることができる。これにより、一般式(1)で表される化合物は、特に溶剤溶解性が優れるためポリエステル樹脂との相溶性に優れ、該化合物を含むポリエステル樹脂組成物は、該化合物が析出又はブリードアウトし難くいものとする効果を有する。
溶剤溶解性とは、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどの有機溶剤への溶解性を意味し、ポリエステル樹脂との相溶性の点で、使用する溶剤に対し、10質量%以上溶解することが好ましく、30質量%以上溶解することがより好ましい。
【0022】
<好ましい第一の態様>
第一の態様においては、前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、好ましくは、σ値が0.1〜1.2の電子求引性基である。σ値が0.1以上の電子求引性基の具体例としては、COOR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子、アルキル基が挙げられ、好ましくは水素原子である。)、CONR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。)、CN、ハロゲン原子、NO、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、アシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(又はその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えばCF)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。ハメットのσp値については、Hansch,C.;Leo,A.;Taft,R.W.Chem.Rev.1991,91,165−195に詳しく記載されている。
【0023】
前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、SOMである[R、Rは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す]。この中でもCOOR又はCNがより好ましく、COOR、であることが更に好ましい。優れた耐光性と溶解性を有するためである。
【0024】
、Rとしては水素原子又は1価の置換基を表し、1価の置換基としては前記置換基Aを挙げることができる。中でも炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0025】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1cがCOOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであることが好ましく、COOR又はCNよりが好ましく、CNが更に好ましい。
【0026】
また、本発明において、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが1価の置換基を表す場合は、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましく、R1g、R1h、R1i及びR1jのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基を表すことがより好ましく、R1hが前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことが更に好ましい。R1c及びR1hが前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を有するためである。
本発明において、R1h又はR1nがそれぞれ独立に水素原子、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであることが好ましく、R1h又はR1nが水素原子であることがより好ましく、R1h及びR1nが水素原子であることが更に好ましく、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0027】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1cがハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基であって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子を表すことが好ましく、R1cがCOOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子であることがより好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0028】
前記一般式(1)で表される化合物はpKaが−5.0〜−7.0の範囲であることが好ましい。更に−5.2〜−6.5の範囲であることがより好ましく、−5.4〜−6.0の範囲であることが特に好ましい。
【0029】
<好ましい第二の態様>
好ましい第二の態様として、R1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である態様を挙げることができる。
1a、R1c及びR1eが、水素原子を表し、R1b及びR1dが、互いに独立して、水素原子又はハメット則のσp値が正である置換基を表し、少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基である第二の態様においては、前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、又はSOMである[R、Rは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す]。
、Rの1価の置換基としては、前述のように前記置換基Aを挙げることができる。
前記一般式(1)におけるハメット則のσp値が正である置換基として、より好ましくは、COOR又はシアノ基であり、COORであることが更に好ましい。ハメット則のσp値が正である置換基がシアノ基である場合、優れた耐光性を示すためである。また、ハメット則のσp値が正である置換基がCOORである場合、優れた溶解性を示すためである。
は水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1〜15の直鎖又は分岐鎖アルキル基が更に好ましい。
【0030】
は、溶媒に対する溶解性の観点からは、炭素数5〜15の分岐鎖アルキル基がより好ましい。
分岐鎖アルキル基は2級炭素原子又は3級炭素原子を有し、2級炭素原子又は3級炭素原子を1〜5個含むことが好ましく、1〜3個含むことが好ましく、1又は2個含むことが好ましく、2級炭素原子及び3級炭素原子を1又は2個含むことがより好ましい。また、不斉炭素を1〜3個含むことが好ましい。
は、溶媒に対する溶解性の観点からは、2級炭素原子及び3級炭素原子を1又は2個含み、不斉炭素を1又は2個含む炭素数5〜15の分岐鎖アルキル基であることが特に好ましい。
これは、化合物構造の対称性がくずれ、溶解性が向上するためである。
【0031】
一方、紫外線吸収能の観点からは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基がより好ましい。
炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0032】
また、本発明において、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが1価の置換基を表す場合は、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましく、R1g、R1h、R1i及びR1jのうち少なくとも1つが、前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基を表すことがより好ましく、R1hが前記ハメット則のσp値が正である置換基を表すことが更に好ましい。R1b又はR1d、及びR1hが前記ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を有するためである。
本発明において、R1h又はR1nがそれぞれ独立に水素原子、COOR、CONR、シアノ基、CF、ハロゲン原子、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであることが好ましく、R1h又はR1nが水素原子であることがより好ましく、R1h及びR1nが水素原子であることが更に好ましく、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子を表すことが特に好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0033】
前記一般式(1)で表される化合物において、R1b又はR1d、がハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基であって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子を表すことが好ましく、R1b又はR1d、がCOOR、CONR、シアノ基、CF、ハロゲン原子、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)のいずれかであって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは水素原子であることがより好ましい。優れた耐光性を示すためである。
【0034】
前記一般式(1)で表される化合物はpKaが−5.0〜−7.0の範囲であることが好ましい。更に−5.2〜−6.5の範囲であることがより好ましく、−5.4〜−6.0の範囲であることが特に好ましい。
【0035】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
なお、下記の具体例中Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、−C13はn−ヘキシルを表す。
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
前記一般式(1)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得る。本発明においては代表的な形の一つで記述しているが、本発明の記述と異なる互変異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0047】
前記一般式(1)で表される化合物は、同位元素(例えば、H、H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0048】
前記一般式(1)で表される化合物は、任意の方法で合成することができる。
例えば、公知の特許文献や非特許文献、例えば、特開平7−188190号公報、特開平11−315072、特開2001−220385号公報、「染料と薬品」第40巻12号(1995)の325〜339ページなどを参考にして合成できる。具体的には、例示化合物(16)はサリチルアミドと3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル クロリドと2−ヒドロキシベンズアミジン塩酸塩とを反応させることにより合成できる。また、サリチルアミドとサリチル酸と3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミジン塩酸塩とを反応させることによっても合成できる。
【0049】
本発明にかかる一般式(1)で表される化合物は、有機溶媒に対する溶解性に優れるという特徴を有する。また、特定の位置にハメット則のσp値が正である置換基を有するため、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、優れた耐光性を有するという特徴を有する。紫外線吸収剤として用いた際にも、既知のトリアジン系化合物では、高い濃度で使用した場合、析出や長期使用によるブリードアウトが生じたり、分解して黄変したりするなど悪影響を及ぼすが、それに対して、本発明にかかる一般式(1)で表される化合物は優れた溶解性と耐光性を有するため高い濃度で使用した場合でも析出やブリードアウトが生じず、長時間使用した場合でも分解せず黄変することがないという効果が得られる。
本発明のポリエステル樹脂組成物において、前記一般式(1)で表される化合物は、一種のみ用いてもよく、異なる構造を有する二種以上を併用することもできる。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、前記一般式(1)で表される化合物は、一種のみ用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
本発明における前記化合物は、有機材料を光・酸素又は熱による損傷に対して安定化させるのに特に適している。中でも前記一般式(1)で表される化合物は、光安定剤、とりわけ紫外線吸収剤として好適に用いることができる。
【0051】
前記一般式(1)で表される化合物は特定の位置にハメット則のσp値が正である置換基を有するため、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、優れた耐光性を有するという特徴を有する。紫外線吸収剤として用いた際にも、既知のトリアジン系化合物を用いた場合は、長時間使用した場合は分解して黄変するなど悪影響を及ぼす。
それに対して、前記一般式(1)で表される化合物は優れた耐光性を有するため長時間使用した場合でも分解せず黄変することがないという効果が得られる。
【0052】
前記一般式(1)で表される化合物の極大吸収波長は、特に限定されないが、好ましくは250〜400nmであり、より好ましくは280〜380nmである。半値幅は好ましくは20〜100nmであり、より好ましくは40〜80nmである。
【0053】
本発明において規定される極大吸収波長及び半値幅は、当業者が容易に測定することができる。測定方法に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座7分光II」(丸善,1992年)180〜186ページなどに記載されている。具体的には、適当な溶媒に試料を溶解し、石英製又はガラス製のセルを用いて、試料用と対照用の2つのセルを使用して分光光度計によって測定される。用いる溶媒は、試料の溶解性と合わせて、測定波長領域に吸収を持たないこと、溶質分子との相互作用が小さいこと、揮発性があまり著しくないこと等が要求される。上記条件を満たす溶媒であれば、任意のものを選択することができる。本発明においては、酢酸エチル(EtOAc)を溶媒に用いて測定を行うこととする。
【0054】
本発明において、化合物の極大吸収波長及び半値幅は、酢酸エチルを溶媒として、濃度約5×10−5mol・dm−3の溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを使用して測定した値を使用する。
【0055】
スペクトルの半値幅に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座3 基本操作III」(丸善、1991年)154ページなどに記載がある。なお、上記成書では波数目盛りで横軸を取った例で半値幅の説明がなされているが、本発明における半値幅は波長目盛りで軸を取った場合の値を用いることとし、半値幅の単位はnmである。具体的には、極大吸収波長における吸光度の1/2の吸収帯の幅を表し、吸収スペクトルの形を表す値として用いられる。半値幅が小さいスペクトルはシャープなスペクトルであり、半値幅が大きいスペクトルはブロードなスペクトルである。ブロードなスペクトルを与える紫外線吸収化合物は、極大吸収波長から長波側の幅広い領域にも吸収を有するので、黄色味着色がなく長波紫外線領域を効果的に遮蔽するためには、半値幅が小さいスペクトルを有する紫外線吸収化合物の方が好ましい。
【0056】
時田澄男著「化学セミナー9 カラーケミストリー」(丸善、1982年)154〜155ページに記載されているように、光の吸収の強さすなわち振動子強度はモル吸光係数の積分に比例し、吸収スペクトルの対称性がよいときは、振動子強度は極大吸収波長における吸光度と半値幅の積に比例する(但しこの場合の半値幅は波長目盛りで軸を取った値である)。このことは遷移モーメントの値が同じとした場合、半値幅が小さいスペクトルを有する化合物は極大吸収波長における吸光度が大きくなることを意味している。このような紫外線吸収化合物は少量使用するだけで極大吸収波長周辺の領域を効果的に遮蔽できるメリットがあるが、波長が極大吸収波長から少し離れると急激に吸光度が減少するために、幅広い領域を遮蔽することができない。
【0057】
前記一般式(1)で表される化合物は、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、50000以上であることが特に好ましい。20000以上であれば、前記一般式(1)で表される化合物の質量当たりの吸収効率が十分得られるため、紫外線領域を完全に吸収するための前記一般式(1)で表される化合物の使用量を低減できる。これは皮膚刺激性や生体内への蓄積を防ぐ観点、及びブリードアウトが生じにくい点から好ましい。なお、モル吸光係数については、例えば日本化学会編「新版実験化学講座9 分析化学[II]」(丸善、1977年)244ページなどに記載されている定義を用いたものであり、上述した極大吸収波長及び半値幅を求める際に合わせて求めることができる。
【0058】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される化合物を、所望の性能を付与するために必要な任意の量で含有させることができる。これらは用いる化合物や樹脂によって異なるが、適宜含有量を決定することができる。含有量としては樹脂組成物中0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜15.0質量%であることがより好ましく、1.0〜4.0質量%であることが更に好ましい。含有量が上記の範囲であればより紫外線遮蔽効果が得られ、ブリードアウトをより効果的に抑制できるため好ましい。
【0059】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述のように紫外線吸収剤として、異なる構造を有する二種類以上の前記一般式(1)で表される化合物を含有していてもよい。また、前記一般式(1)で表される化合物とそれ以外の構造を有する一種類以上の紫外線吸収剤とを併用してもよい。基本骨格構造の異なる二種類(好ましくは三種類)の紫外線吸収剤を併用すると、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。また、二種類以上の紫外線吸収剤を併用すると、紫外線吸収剤の分散状態が安定化する作用もある。前記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤としては、いずれのものでも使用でき、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、シアノアクリレート系、安息香酸エステル系などの化合物が挙げられる。例えば、ファインケミカル、2004年5月号、28〜38ページ、東レリサーチセンター調査研究部門発行「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)96〜140ページ、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)54〜64ページなどに記載されている紫外線吸収剤が挙げられる。
【0060】
前記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤として好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、メロシアニン系化合物、トリアジン系化合物である。より好ましくはベンゾオキサジノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物である。特に好ましくはベンゾオキサジノン系化合物である。上記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤は、特願2008−273950号公報の段落番号〔0117〕〜〔0121〕に詳述されており、該公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0061】
前述したように、本発明のポリエステル樹脂組成物は、一般式(1)で表される化合物とベンゾオキサジノン系化合物を組み合わせて含有することが好ましい。一般式(1)で表される化合物は長波長領域においても優れた耐光性を有するため、より長波長領域まで遮蔽可能なベンゾオキサジノンの劣化を防ぐという効果を奏し、ベンゾオキサジノン系化合物と共に用いることで、より長波長領域まで長時間において遮蔽効果が持続できるため好ましい。
【0062】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される化合物を紫外線吸収剤として使用することのみで実用的には十分な紫外線遮蔽効果が得られるものの、更に厳密を要求する場合には隠蔽力の強い白色顔料、例えば酸化チタンなどを併用してもよい。
また、外観、色調が問題となる時、あるいは好みによって微量(0.05質量%以下)の着色剤を併用することができる。また、透明あるいは白色であることが重要である用途に対しては蛍光増白剤を併用してもよい。蛍光増白剤としては市販のものや特開2002−53824号公報記載の一般式[1]や具体的化合物例1〜35などが挙げられる。
【0063】
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂等の樹脂成分について説明する。
ポリエステル樹脂は多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)との重縮合体であり、カルボキシル基と水酸基との間のエステル結合を高分子形成の主要原因とする樹脂である。本発明に用いられるポリエステル樹脂は、モノマー成分として、下記のジカルボン酸及びその酸ハライド又は多価カルボン酸とジオールからなる。
【0064】
ジカルボン酸又はその酸ハライドの例としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、エチルコハク酸、ピメリック酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、1,2−及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族、脂環式のもの、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、2−メチルイソフタル酸、3−メチルフタル酸、2−メチルテレフタル酸、2,4,5,6−テトラメチルイソフタル酸、3,4,5,6−テトラメチルフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、3−クロルイソフタル酸、3−メトキシイソフタル酸、2−フルオロイソフタル酸、3−フルオロフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタル酸、3,4,5,6−テトラフルオロフタル酸、4,4’−オキシビス安息香酸、3,3’−オキシビス安息香酸、3,4’−オキシビス安息香酸、2,4’−オキシビス安息香酸、3,4’−オキシビス安息香酸、2,3’−オキシビス安息香酸、4,4’−オキシビスオクタフルオロ安息香酸、3,3’−オキシビスオクタフルオロ安息香酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルカルボン酸などの芳香族のものが挙げられる。
【0065】
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸の例としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸が挙げられる。
【0066】
本発明に用いられるポリエステル樹脂については、これらのジカルボン酸及び多価カルボン酸成分のうち、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸を用いることが好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることが特に好ましく、テレフタル酸を用いることが最も好ましい。
【0067】
ジオールの例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0068】
本発明に用いられるポリエステル樹脂については、これらのジオール成分のうちエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、ビスフェノールAを用いることが好ましく、エチレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビスフェノールを用いることが特に好ましく、エチレングリコールを用いることが最も好ましい。
【0069】
また本発明に用いられポリエステル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−80℃以上200℃以下であることが好ましく、−30℃以上180℃以下であることが更に好ましい。
このようなTgを示すポリエステル樹脂を用いたポリエステル樹脂組成物は適度な軟らかさと硬さとなるので、作業の効率が上がり、前記一般式(1)で表される化合物を紫外線吸収剤として用いた場合、紫外線吸収剤自体の光堅牢性を良化させる効果がある。
また本発明に用いられるポリエステル樹脂は、数平均分子量18500〜40000であることが好ましく、より好ましくは19000〜35000である。
【0070】
そのような樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンテレフタレート、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として1,4−ブチレングリコールを用いたポリブチレンテレフタレート、ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンナフタレート、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、及びジオール成分として1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン用いたポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1、2−ジフェノキシエタン−4、4’−ジカルボキシレート が好ましく、ポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0071】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の他に、他の樹脂成分を併用して含有させることができる。併用させることができる樹脂成分としては、天然あるいは合成ポリマーのいずれであってもよい。例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ4−メチルペンテン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリシクロペンテン、ポリノルボルネンなど)、ビニルモノマーのコポリマー(例えば、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/メチルペンテンコポリマー、エチレン/ヘプテンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/シクロオレフィンコポリマー(例えば、エチレン/ノルボルネンのようなシクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo−Olefin Copolymer))、プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アルキルメタクリレートコポリマーなど)、アクリル系ポリマー(例えば、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなど)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、ポリエーテル(例えば、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、ポリアセタール(例えば、ポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリスルホンポリエーテルケトン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、セルロースエステル(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリシロキサン、天然ポリマー(例えば、セルロース、ゴム、ゼラチンなど)、などが挙げられる。
【0072】
併用させることができる樹脂成分は、合成ポリマーである場合が好ましく、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、セルロースエステルがより好ましい。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロースが特に好ましい。併用させることができる樹脂成分は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0073】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述のように、一般式(1)で表される化合物以外の構造を有する紫外線吸収剤や、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、蛍光増泊剤、難燃剤等の任意の添加剤を適宜含有してもよい。
【0074】
酸化防止剤として、本発明のポリエステル樹脂組成物には、更にリン系安定剤を含有させることが、熱安定性を改良できるという点で好ましい。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも3価のリンを含み変色抑制効果を発現しやすい点で、ホスファイト、ホスホナイト等の亜リン酸エステルが好ましい。
【0075】
ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0076】
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、及びテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0077】
また、アシッドホスフェートとしては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0078】
本発明に用いるリン系安定剤は、2種類以上を混合して含有させることができるが、リン系安定剤の合計の含有割合は、ポリエステル樹脂組成物100質量部に対して0.0005〜0.3質量部であることが好ましく、0.001〜0.1質量部であることがより好ましい。上記の範囲であれば、安定剤としての効果が十分であり、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりにくい。
特に、本発明において、ポリエステル樹脂組成物100質量部に対し、一般式(1)で表される化合物0.05〜3質量部、リン系安定剤0.0005〜0.3質量部であることが好ましい。
【0079】
酸化防止剤として、本発明のポリエステル樹脂組成物には、更にヒンダードフェノール系安定剤を含有することが、一般式(1)で表される化合物を安定化し、ポリエステル樹脂組成物の光安定性を高められるという点で好ましい。
前記ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、フェノール性水酸基のオルト位に少なくともひとつの水素原子以外の置換基(例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環式基、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アミノ基など)を有する化合物が挙げられる。
前記ヒンダードフェノール系安定剤としては、酸化防止剤として公知の化合物で、市販されているものであってもよく、例えば、2,6−ジt−ブチルー4−メチルフェノール又は2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の酸化防止剤などが挙げられる。
本発明に用いるヒンダードフェノール系安定剤は、2種類以上を混合して含有させることができるが、ヒンダードフェノール系安定剤の合計の含有割合は、ポリエステル樹脂組成物100質量部に対して0.0001〜1質量部であることが好ましく、0.001〜0.1質量部であることがより好ましい。
【0080】
前記一般式(1)で表される化合物とポリエステル等の樹脂成分とを混合させ、本発明のポリエステル樹脂組成物を調製する方法については特に制限はない。
前記一般式(1)で表される化合物がポリエステル等の樹脂成分と相溶性を有する場合は、前記一般式(1)で表される化合物をポリエステル等の樹脂成分に直接添加することができる。また、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、及びペレタイザ−等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
ポリエステル等の樹脂成分と相溶性を有する補助溶媒に、前記一般式(1)で表される化合物を溶解し、その溶液をポリエステル等の樹脂成分に添加してもよい。前記一般式(1)で表される化合物を高沸点有機溶媒やポリマー中に分散し、その分散物をポリエステル等の樹脂成分に添加してもよい。
前記添加し混合する時期としては、ポリエステル等の樹脂成分を重合により形成する前であっても重合により形成した後であってもよい。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を任意の溶媒に溶解して形成されたものでもよい。
【0081】
高沸点有機溶媒の例には、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、安息香酸エステル、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、炭酸エステル、アミド、エーテル、ハロゲン化炭化水素、アルコール及びパラフィンが含まれる。リン酸エステル、ホスホン酸エステル、フタル酸エステル、安息香酸エステル及び脂肪酸エステルが好ましい。
【0082】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、合成樹脂が使用される全ての用途に使用可能であるが、特に日光又は紫外線を含む光に晒される可能性のある用途に特に好適に使用できる。具体例としては、例えばガラス代替品とその表面コーティング材、住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設、輸送機器等のウインドウフィルム、住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料及び該塗料によって形成させる塗膜、アルキド樹脂ラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜、アクリルラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜、蛍光灯、水銀灯等の紫外線を発する光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用材、食品、化学品、薬品等の容器又は包装材、ボトル、ボックス、ブリスター、カップ、特殊包装用、コンパクトディスクコート、農工業用シート又はフィルム材、印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤、ポリマー支持体用(例えば、機械及び自動車部品のようなプラスチック製部品用)の保護膜、印刷物オーバーコート、インクジェット媒体被膜、積層艶消し、オプティカルライトフィルム、安全ガラス/フロントガラス中間層、エレクトロクロミック/フォトクロミック用途、オーバーラミネートフィルム、太陽熱制御膜、日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等の化粧品、スポーツウェア、ストッキング、帽子等の衣料用繊維製品及び繊維、カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品、プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具、光学フィルタ、バックライトディスプレーフィルム、プリズム、鏡、写真材料等の光学用品、金型膜、転写式ステッカー、落書き防止膜、テープ、インク等の文房具、標示板、標示器等とその表面コーティング材等を挙げることができる。
【0083】
次に、本発明の成形品について説明する。
本発明の成形品は、本発明のポリエステル樹脂組成物より成形することができる。
前記ポリエステル樹脂組成物より形成した本発明の成形品の形状としては、平膜状、粉状、球状粒子、破砕粒子、塊状連続体、繊維状、管状、中空糸状、粒状、板状、多孔質状などのいずれの形状であってもよいが、析出やブリードアウトの抑制と長波紫外線遮蔽効果とのバランスから、厚さが0.1μm〜25mmの例えば、平膜状や板状であることが好ましい。
【0084】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を含有するので透明とすることができ、その場合、紫外線吸収フィルタや紫外線吸収膜として成形することができる。
この場合、本発明のポリエステル樹脂組成物は他の透明樹脂を含有させることができる。他の透明樹脂の例としては、ポリカーボネート、セルロースエステル(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)、ポリメチルメタクリレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド及びポリオキシエチレンなどが挙げられる。
前記ポリエステル樹脂組成物より得られた本発明の成形品は透明支持体とすることができ、透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることが更に好ましい。
【0085】
本発明の成形品は、前記ポリエステル樹脂組成物より成形してなり、優れた長波紫外線吸収能を有するので、紫外線吸収フィルタや容器として用いることができ、紫外線に弱い化合物などを保護することもできる。例えば、本発明の成形品は、前記ポリエステル樹脂組成物を押出成形又は射出成形などの任意の方法により成形することで、容器等として得ることができる。また、別途作製した成形品に本発明のポリエステル樹脂組成物の溶液を塗布・乾燥することで、前記ポリエステル樹脂組成物からなる紫外線吸収膜がコーティングされた成形品とすることもできる。
【0086】
このような本発明のポリエステル樹脂組成物の有する長波紫外線遮蔽効果と透明性とを有効に利用するために、本発明のポリエステル樹脂組成物は、特に、太陽電池用バックシート、窓貼りフィルム、食品・医療用包装フィルム、農業用フィルム、光学用フィルム、繊維の用途に好適に用いられる。
【0087】
本発明においては特開2009−209343号公報の段落番号〔0192〕〜〔0230〕に記載されている事項を適用できる。
【0088】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む包装材料について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む包装材料は、前記ポリエステル樹脂組成物を含むものであればいずれの種類の高分子から成る包装材料であってもよい。例えば、熱可塑性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、ポリオレフィン、ROMPなどが挙げられる。例えば無機物の蒸着薄膜層を有する樹脂であってもよい。例えばポリエステル樹脂組成物を含む樹脂を塗布した紙であってもよい。
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む包装材料は、食料品、飲料、薬剤、化粧品、個人ケア用品等いずれのものを包装するものであってもよい。例えば、食品包装、着色液体包装、記載の液状製剤用包装、医薬品容器包装、医療品用滅菌包装、写真感光材料包装、写真フィルム包装、紫外線硬化型インク用包装、シュリンクラベルなどが挙げられる。
【0089】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む包装材料は、例えば透明包装体であってもよいし、遮光性包装体であってもよい。
【0090】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む包装材料は、例えば紫外線遮蔽性を有するだけでなく、他の性能を合わせて持っていても良い。例えばガスバリヤー性を合わせて有するものや、酸素インジケータを内包するものや、ポリエステル樹脂組成物と蛍光増白剤を組み合わせるものなどが挙げられる。
【0091】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む包装材料は、いずれの方法を用いて製造してもよい。インキ層を形成させる方法、ポリエステル樹脂組成物を含有した樹脂を溶融押出し積層する方法、基材フィルム上にコーティングする方法、接着剤にポリエステル樹脂組成物を分散する方法などが挙げられる。
【0092】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む容器について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む容器は、前記ポリエステル樹脂組成物を含むものであればいずれの種類の高分子から成る容器であってもよい。例えば、熱可塑性樹脂容器、ポリエステル製容器、ポリエチレンナフタレート製容器、ポリエチレン製容器、環状オレフィン系樹脂組成物製容器、プラスチック容器、透明ポリアミド容器などが挙げられる。例えば樹脂を含む紙容器であってもよい。ポリエステル樹脂層を有するガラス容器であってもよい。
【0093】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む容器の用途は食料品、飲料、薬剤、化粧品、個人ケア用品、シャンプー等いずれのものを入れるものであってもよい。液体燃料貯蔵容器、ゴルフボール容器、食品用容器、酒用容器、薬剤充填容器、飲料容器、油性食品用容器、分析試薬用溶液容器、即席麺容器、耐光性化粧料容器、医薬品容器、高純度薬品液用容器、液剤用容器、紫外線硬化型インク用容器、Wプラスチックアンプルなどが挙げられる。
【0094】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む容器は、紫外線遮断性を有するだけでなく、他の性能を合わせて持っていてもよい。例えば抗菌性容器、可撓性容器、ディスペンサー容器、生分解性容器などが挙げられる。
【0095】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む容器はいずれの方法を用いて製造してもよい。
例えば二層延伸ブロー成形による方法、多層共押出ブロー成形方法、容器の外側に紫外線吸収層を形成させる方法、収縮性フィルムを用いた方法、超臨界流体を用いる方法などが挙げられる。
【0096】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む塗料及び塗膜について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む塗料は、前記一般式(1)で表わされる化合物を含むものであればいずれの成分からなる塗料であってもよい。例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アミノアルキッド樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系などが挙げられる。これらの樹脂は主剤、硬化剤、希釈剤、レベリング剤、はじき防止剤などを任意に配合することができる。
【0097】
例えば、透明樹脂成分としてアクリルウレタン樹脂、シリコンアクリル樹脂を選んだ場合には、硬化剤としてポリイソシアネートなどを、希釈剤としてトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶剤、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系を用いることができる。また、ここでアクリルウレタン樹脂とは、メタクリル酸エステル(メチルが代表的)とヒドロキシエチルメタクリレート共重合体とポリイソシアネートと反応させて得られるアクリルウレタン樹脂をいう。なおこの場合のポリイソシアネートとはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。透明樹脂成分としては、他にも例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルスチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。更にこれら成分に加えアクリル樹脂、シリコーン樹脂などのレベリング剤、シリコーン系、アクリル系等のはじき防止剤等を必要に応じて配合することができる。
【0098】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む塗料の使用目的としてはいずれの用途であってもよい。例えば紫外線遮蔽塗料、紫外線・近赤外線遮断塗料、電磁波遮蔽用塗料、クリアー塗料、メタリック塗料組成物、カチオン電着塗料、抗菌性及び無鉛性カチオン電着塗料、粉体塗料、水性中塗り塗料、水性メタリック塗料、水性クリヤー塗料、自動車、建築物、土木系品に用いられる上塗り用塗料、硬化性塗料、自動車バンパー等プラスチック材等に使用される塗膜形成組成物、金属板用塗料、硬化傾斜塗膜、電線用塗装材、自動車補修塗料、アニオン電着塗料、自動車用塗料、塗装鋼板用塗料、ステンレス用塗料、ランプ用防虫塗料、紫外線硬化型塗料、特抗菌性塗料、眼精疲労防止用塗料、防曇塗料、超耐候性塗料、傾斜塗料、光触媒塗料、可剥塗料、コンクリート剥離用塗料、防食塗料、保護塗料、撥水性保護塗料、板ガラス飛散防止用塗料、アルカリ可溶型保護塗料、水性一時保護塗料組成物、床用塗料、エマルション塗料、2液型水性塗料、1液性塗料、UV硬化性塗料、電子線硬化型塗料組成物、熱硬化性塗料組成物、焼付ラッカー用水性塗料、粉体塗料及びスラリー塗料、補修用塗料、粉体塗料水分散物、プラスチック用塗料、電子線硬化型塗料などが挙げられる。
【0099】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む塗料は一般に塗料(透明樹脂成分を主成分として含む)及びポリエステル樹脂組成物から構成されるが、好ましくはポリエステル樹脂組成物0〜20質量%の組成である。塗布する際の厚さは、好ましくは2〜1000μmであるが、更に好ましくは5〜200μmの間である。これら塗料を塗布する方法は任意であるが、スプレー法、ディッピング法、ローラーコート法、フローコーター法、流し塗り法などがある。塗布後の乾燥は塗料成分によって異なるが概ね室温〜120℃で10〜90分程度行うことが好ましい。
【0100】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む塗膜は、前記一般式(1)で表わされる化合物からなるポリエステル樹脂組成物を含む塗膜であり、上記の本発明のポリエステル樹脂組成物を含む塗料を用いて形成された塗膜である。
【0101】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含むインクについて説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含むインクは、前記ポリエステル樹脂組成物を含むものであればいずれの形態のインクであってもよい。例えば、染料インク、顔料インク、水性インク、油性インクなどが挙げられる。また、いずれの用途に用いられてもよい。例えば、スクリーン印刷インク、フレキソ印刷インク、グラビア印刷インク、平版オフセット印刷インク、凸版印刷インク、UVインク、EBインクなどが挙げられる。また例えば、インクジェットインクフォトクロミックインク、熱転写インク、マスキングインク、セキュリティインク、DNAインクなども挙げられる。
【0102】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含むインクを用いることで得られるいずれの形態も本発明に含まれる。例えば印刷物、印刷物をラミネートして得られる積層体、積層体を用いた包装材料や容器、インク受理層などが挙げられる。
【0103】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む繊維について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む繊維は、ポリエステル樹脂組成物を含むものであればいずれの種類の高分子を含む繊維であってもよい。例えば、ポリエステル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、セルロース繊維などが挙げられる。
【0104】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む繊維はいずれの方法で製造してもよい。例えば前記一般式(1)で表わされる化合物をあらかじめ含んだ高分子を繊維状に加工してもよいし、例えば繊維状に加工したものに対して前記一般式(1)で表わされる化合物を含む溶液などを用いて処理をおこなってもよい。超臨界流体を用いて処理をおこなってもよい。
【0105】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む繊維は各種用途に用いることができる。例えば、衣料、裏地、肌着、毛布、靴下、人工皮革、防虫メッシュシート、工事用メッシュシート、カーペット、特透湿・防水性シート、不織布、極細繊維、繊維からなるシート状物、清涼衣料透湿防水性シート、難燃性人工スエード状構造物、樹脂ターポリン、膜剤、外壁材剤、農業用ハウス、建築資材用ネット、メッシュ、フィルター基材、防汚膜剤、メッシュ織物、陸上ネット、水中ネット、極細繊維、防織繊維、エアバッグ用基布、紫外線吸収性繊維製品などが挙げられる。
【0106】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む建材について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む建材は、前記ポリエステル樹脂組成物を含むものであればいずれの種類の高分子を含む建材であってもよい。例えば、塩化ビニル系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリフェニレンエーテル系、ポリカーボネート系などが挙げられる。
【0107】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む建材はいずれの方法で製造してもよい。例えば前記ポリエステル樹脂組成物を含む材料を用いて所望の形に形成してもよいし、前記ポリエステル樹脂組成物を含む材料を積層して形成してもよいし前記一般式(1)で表わされる化合物を用いた被覆層を形成させてもよいし、前記ポリエステル樹脂組成物を含有する塗料を塗装して形成してもよい。
【0108】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む建材は各種用途に用いることができる。例えば、外装用建材、建材用木質構造体、建材用屋根材、抗菌性建築資材、建材用基材、防汚建材、難燃性材料、窯業系建材、装飾用建材、建材用塗装物品、化粧材、建築資材用ネット、建材用透湿防水シート、建築工事用メッシュシート、建材用フィルム表装用フィルム、建材用被覆材料、建材用接着剤組成物、土木建築構造物、歩行路用塗装材、シート状光硬化性樹脂、木材用保護塗装、押釦スイッチ用カバー、接合シート剤、建材用基材、壁紙、表装用ポリエステルフィルム、成形部材表装用ポリエステルフィルム、床材などが挙げられる。
【0109】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む記録媒体について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む記録媒体は、前記一般式(1)で表わされる化合物を含むものであればいずれのものであってもよい。例えば、インクジェット被記録媒体、昇華転写用受像シート、画像記録媒体、感熱記録媒体、可逆性感熱記録媒体、光情報記録媒体などが挙げられる。
【0110】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む画像表示装置について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む画像表示装置は前記一般式(1)で表わされる化合物を含むものであればいずれのものであってもよい。例えば、記載のエレクトロクロミック素子を用いた画像表示装置、いわゆる電子ペーパーと呼ばれる画像表示装置、プラズマディスプレー、有機EL素子を用いた画像表示装置などが挙げられる。本発明のポリエステル樹脂組成物は、例えば積層構造中に紫外線吸収層を形成させるものでもよいし、円偏光板など必要な部材中にポリエステル樹脂組成物を含むものを用いてもよい。
【0111】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む太陽電池保護シートについて説明する。本発明における適用する太陽電池は、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、色素増感太陽電池などいずれの形式の素子からなる太陽電池であってもよい。結晶シリコン太陽電池やアモルファスシリコン太陽電池において、防汚や耐衝撃性、耐久性を付与する保護部材としてカバー材が用いられている。また色素増感太陽電池において光(特に紫外線)に励起されて活性となる金属酸化物系半導体を電極材料として用いるため、光増感剤として吸着させた色素が劣化し、光発電効率が徐々に低下する問題があり、紫外線吸収層を設けることが提案されている。この場合、本発明の粘着剤組成物を含む太陽電池用保護シートは長波紫外線遮蔽効果を長時間維持できるため、優れた耐光性を示すという効果を奏する。
【0112】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む太陽電池保護シートはポリエステル樹脂の他にいずれの種類の高分子を含むものであってもよい。熱硬化性透明樹脂、α−オレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホン、アクリル樹脂、透明フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0113】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む太陽電池用保護シートは、必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。前記その他の成分としては、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、難燃剤、光安定剤、熱安定剤、蛍光増白剤等などが挙げられる。
【0114】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む太陽電池保護シートはいずれの方法で製造してもよい。例えば紫外線吸収層を形成してもよいし、それぞれポリエステル樹脂組成物を含む層を積層してもよいし、充填材層の樹脂に含まれていてもよいしポリエステル樹脂組成物を含む高分子からフィルムを形成してもよい。
【0115】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む太陽電池保護シートはいずれの形状であってもよい。フィルム、シート、積層フィルム、カバーガラス構造などが挙げられる。特開2000−91610号公報、特開平11−261085号公報に記載のフィルム、シート、例えば特開平11−40833号公報に記載の積層フィルム、特開平11−214736号公報に記載のカバーガラス構造などが挙げられる。なお、汎用性の観点から、シート状であることが好ましい。太陽電池用保護シートがシート状又はフィルム状のとき、その厚みは使用する規格に応じて任意に決めることができる。特に制限しないが好ましくは、30〜300μmの範囲であり、より好ましくは50〜200μmである。厚みが上記の範囲であればより剛性や機械的強度が得られるため好ましい。シート状の太陽電池用保護シートは、太陽電池用フロントシート、太陽電池用バックシートのいずれにも用いることができる。
【0116】
以下に太陽電池保護シートについて詳述する。
太陽電池用保護シートとしては、耐候性付与、電気絶縁性付与、集光効率向上、セル保護性(耐衝撃性)向上等の目的に応じ本発明のポリエステル樹脂を含有するPET又はPEN、液状EVA(エチレンビニルアセテート)、フィルム状EVA、フッ化ビニリデン共重合体とアクリル樹脂の混合物等、様々な材料が使用可能である。
【0117】
太陽電池用保護シートをセル上に固定するときは、材料の物性に合った方法を用いる。フィルム状の材料の場合はロール加圧後加熱密着、真空加圧後加熱密着等、液又はペースト状の材料の場合はロールコート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷等の様々な方法が可能である。
【0118】
太陽電池用保護シートとして本発明のポリエステル樹脂を含有するPET、PEN等の可撓性素材を用いる場合は、ロール状の支持体を繰り出してその上にセルを構成した後、上記の方法で連続して太陽電池保護シートを積層することができ、生産性が高い。
【0119】
太陽電池保護シートは、太陽電池用フロントシート、太陽電池用バックシートからなることが好ましい。本発明のポリエステル組成物は、太陽電池保護シートの太陽電池用フロントシート、太陽電池用バックシートのいずれに用いられるものであってもよい。
【0120】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む太陽電池モジュールについて説明する。太陽電池は、耐久性等の向上の点から保護シートを用いることが好ましい。保護シートに本発明のポリエステル樹脂組成物を用いることができ、保護シートとしては太陽電池用フロントシート、太陽電池用バックシートからなる太陽電池保護シートを挙げることができる。
【0121】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含む太陽電池モジュールについて説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む太陽電池モジュールは、支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や本発明のポリエステル樹脂を含有するPET、PEN等の太陽電池保護シート等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとることが好ましい。支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。例えば、特開2007−128943、特開2006−100527、特開2002−134767、特開2010−27714に記載の方法でモジュールを組みこれに本発明のポリエステル樹脂組成物を用いた太陽電池用保護シートを用いることができる。
【0122】
二酸化チタンの粒径は、分散液の粘度を高く保つ目的で、一次粒子の平均粒径が2nm以上50nm以下であることが好ましく、また一次粒子の平均粒径が2nm以上30nm以下の超微粒子であることがより好ましい。粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは5nm以下であるのが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、上記の超微粒子に対して平均粒径が50nmを越える大きな粒子を、低含率で添加することもできる。この場合、大粒子の含率は、平均粒径が50nm以下の粒子の質量の50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。上記の目的で添加混合する大粒子の平均粒径は、100nm以上が好ましく、250nm以上がより好ましい。
二酸化チタン分散液の分散溶媒としては、水及び/又は各種の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,ポリビニルアルコール、シトロネロール,ターピネオールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。
分散の際、必要に応じて例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、又はキレート剤等を分散助剤として少量用いてもよい。
【0123】
図1は、本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略図である。図1中31は強化ガラス、32は樹脂層、33は本発明の太陽電池封止材、34は太陽電池(セル)、35はフレーム、36は封止樹脂、37は配線、38は接着層をそれぞれ表す。図1の太陽電池モジュールでは、表面から光が入射する。
【0124】
次に、本上記太陽電池モジュールの製造方法について、図1を参照して説明する。
(1)清浄な強化ガラス31の上にEVA(エチレンビニールアセテートコポリマー)シート32を載せ、その上に太陽電池(セル)34を配置する。
(2)その上に本発明の太陽電池封止材33を重ねて置き、この状態で1時間ほど加熱してEVA層を架橋させる。
(3)強化ガラスに沿って余分なEVA及び裏面封止材(バックシート)をカットする。
(4)作製した部材を強化ガラス31側(太陽光が入射するおもて面になる)からフレーム35に押し込む。
(5)EVA層32及び本発明の太陽電池封止材33を一部カットして太陽電池セルの端子部分へ配線37を半田付けする。
(6)カット部をシリコーン樹脂やシリコーンゴムを塗布して端子部分を封止樹脂36により封止する。
(7)必要により、端子ボックスを設け、配線を行う。
【0125】
本発明のポリエステル樹脂組成物を含むガラス及びガラス被膜について説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含むガラス及びガラス被膜は、前記一般式(1)で表わされる化合物を含むものであればいずれの形態であってもよい。また、いずれの用途に用いられてもよい。例えば、熱線遮断性ガラスウインドガラス、着色ガラス、水銀ランプやメタルハライドランプなどの高輝度光源用紫外線シャープカットガラス、フリットガラス、車両用紫外線遮断ガラス、色つき熱線吸収ガラス、含蛍光増白剤紫外線吸収断熱ガラス、自動車用紫外線熱線遮断ガラス、外装用ステンドグラス、撥水性紫外線赤外線吸収ガラス、車両用ヘッドアップディスプレイ装置向けガラス、調光遮熱複層窓、紫外線赤外線カットガラス、紫外線カットガラス、窓用紫外線赤外線吸収ガラス、窓用紫外線遮断防汚膜、栽培室用透光パネル、紫外線赤外線吸収低透過ガラス、低反射率低透過率ガラス、エッジライト装置、粗面形成板ガラス、ディスプレイ用積層ガラス、導電性膜つきガラス、防眩性ガラス、紫外線赤外線吸収中透過ガラス、プライバシー保護用車両用窓ガラス、防曇性車両用ガラス、舗装材料用ガラス、水滴付着防止性及び熱線遮断性を有するガラス板、紫外線赤外線吸収ブロンズガラス、合わせガラス、ID識別機能つきガラス、PDP用光学フィルタ、天窓などが挙げられる。本発明のポリエステル樹脂組成物を含むガラスはいずれの方法によって作られてもよい。
【0126】
また、その他使用例としては照明装置用光源カバー、人工皮革、スポーツゴーグル、偏向レンズ、各種プラスチック製品向けハードコート、窓外側貼り付け用ハードコート、窓張りフィルム、高精細防眩性ハードコートフィルム、帯電防止性ハードコートフィルム、透過性ハードコートフィルム、特開2002−113937号公報に記載の偽造防止帳表、芝の紫斑防止剤、樹脂フィルムシート接合用シール剤、導光体、ゴム用コーティング剤、農業用被覆材、染色ろうそく、布地リンス剤組成物、プリズムシート、特保護層転写シート、光硬化性樹脂製品、床用シート、遮光性印刷ラベル、給油カップ、硬質塗膜塗工物品、中間転写記録媒体、人工毛髪、ラベル用低温熱収縮性フィルム、釣り用品、マイクロビーズ、プレコート金属板、薄肉フィルム、熱収縮性フィルム、インモールド成形用ラベル、投影スクリーン、化粧シート、ホットメルト接着剤、接着剤、電着コート、ベースコート、木材表面保護、調光材料、調光フィルム、調光ガラス、防蛾灯、タッチパネル、樹脂フィルムシート接合用シール剤、ポリカーボネートフィルム被覆、光ファイバテープ、固形ワックスなどが挙げられる。
【0127】
本発明のポリエステル樹脂組成物の上述した使用方法は、単独で用いるだけでなく、その他材料と組み合わせて層を成して使用することも可能である。例えば、粘着層の付与、ハードコート層の付与、赤外線遮断層の付与、断熱剤層の付与、表面改質剤層の付与、剥離剤層の付与、防曇機能層の付与、などが挙げられる。
これらの層は、いずれの方法で積層してもよく、例えば溶融押し出して積層する方法、コーティングする方法、接着剤を使用しポリエステル樹脂組成物フィルムに層を積層する方法などが挙げられる。
【0128】
粘着層に使用可能な樹脂としては特に制限はなく、従来公知の様々な粘着剤の中から、状況に応じて適宜選択して用いることができるが、耐候性などの点から、特にアクリル系、ウレタン系及びシリコーン系粘着剤が好適である。
例えば、ポリエステル樹脂フィルム上に赤外線遮蔽層が設けられた場合、その赤外線遮断層側の反対面に、粘着剤層を介して剥離シートを設けることができる。
この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
また、この粘着剤層の上に設けられる剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。なお、上記粘着剤層には、必要に応じ、紫外線吸収剤や光安定剤を含有させることができる。
【0129】
また、例えば、ハードコート層の付与について詳細に述べる。
【0130】
ハードコート層に用いることのできる樹脂は、アクリレート系の官能基を有するポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等とこれらのオリゴマー及びプレポリマーを主成分とした樹脂、シリコーン系樹脂等が使用できる。これらの樹脂は、熱、紫外線、電子線等のエネルギーを加えることで架橋するものである。また、紫外線照射により架橋する樹脂を使用する場合は、光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−ヒドロキシケトン、ベンジルジメチルケタール、α−アミノケトン、ビスアシルフォスフィンオキサイド等を混合することが望ましい。
【0131】
特にハードコート性の観点からシリコーン系ハードコート層が好ましい。
形成されたハードコート層の厚さは、通常0.05〜30μm、好ましくは1.0〜20μmの範囲である。ハードコート層は、本発明のポリエステル樹脂フィルムの一方の表面に形成されるか、若しくは本発明のポリエステル樹脂フィルムを含む多層フィルムの一方の表面に形成されていてもよい。本発明の樹脂フィルムと耐衝撃性樹脂フィルムとの積層体である場合には、耐候性樹脂フィルムの表面にハードコート層を設けることが特に好ましい。
【0132】
シリコーン系ハードコート層は、シロキサン結合を有するケイ素化合物を含有する層であって、例えば無機シリカ系化合物(ポリケイ酸も含む)及び/又はポリオルガノシロキサン系化合物を主成分とする層を好ましく挙げることができる。
この無機シリカ系化合物やポリオルガノシロキサン系化合物、あるいはこれらの混合系は、以下のような様々な方法によって製造することができる。
例えば、一般式[1]
1nSi(OR2) 4-n …[1]
〔式中のR1は非加水分解性基であって、アルキル基、置換アルキル基(置換基:ハロゲン原子、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基など)、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、R2は低級アルキル基であり、nは0又は1〜3の整数である。R1及びOR2がそれぞれ複数ある場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよく、また複数のOR2は同一でも異なっていてもよい。〕で表されるアルコキシシラン化合物を、塩酸や硫酸などの無機酸、シュウ酸や酢酸などの有機酸を用いて部分又は完全加水分解し、重縮合させる方法が好ましく用いられる。この場合、nが0の化合物、すなわちテトラアルコキシシランを完全加水分解すれば無機シリカ系のバインダーが得られるし、部分加水分解すれば、ポリオルガノシロキサン系バインダー又は無機シリカ系とポリオルガノシロキサン系との混合系バインダーが得られる。一方、nが1〜3の化合物では、非加水分解性基を有するので、部分又は完全加水分解により、ポリオルガノシロキサン系バインダーが得られる。この際、加水分解を均一に行うために、適当な有機溶媒を用いてもよい。
【0133】
前記一般式[1]で表されるアルコキシシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシランなどが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この際、必要ならば、アルミニウム化合物、例えば塩化アルミニウムやトリアルコキシアルミニウムなどを適当量添加することができる。
更に、別の方法として、原料のケイ素化合物にメタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム又は水ガラス(ケイ酸ナトリウム混合物)を用い、塩酸、硫酸、硝酸などの酸又は塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなどの金属化合物を作用させ、加水分解処理する方法を用いることができる。この加水分解処理により、遊離のケイ酸が生成するが、このものは重合しやすく、原料の種類によって異なるが、鎖状、環状、網目状のものの混合物である。水ガラスから得られたポリケイ酸は、
一般式[2]
【0134】
【化13】

【0135】
(式中のmは重合度を示し、Rは水素、ケイ素又はマグネシウムやアルミニウムなどの金属である。)で表される鎖状構造のものが主体となる。このようにして、完全な無機シリカ系バインダーが得られる。なお、無機シリカ系バインダーとして、シリカゲル(SiO・nHO)も使用することができる。このハードコート層においては、ハードコート性能が重要視されることから、必要な密着性が維持される範囲で、できるだけ無機シリカ系化合物を多く含む層が好適である。また、このハードコート層には、耐擦傷性が損なわれない範囲で、所望により無機系紫外線散乱剤などを含有させることができる。このハードコート層は、ハードコート剤含有塗工液を、公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、多層基材上に塗工し、加熱して硬化させることにより形成することができる。
【0136】
赤外線遮蔽層に用いることのできる樹脂としては、特に制限はなく、様々な樹脂の中から、状況に応じて適宜選択して用いることができる。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなるフィルム又はこれらの積層フィルムが挙げられる。この透明基材フィルムの厚さとしては特に制限はなく、使用目的に応じて適宜選定すればよいが、通常は5〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲である。
また、この樹脂には酸化防止剤や紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。
【0137】
赤外線遮蔽層に用いることができる赤外線遮蔽剤は、無機系赤外線遮蔽剤と有機系赤外線遮蔽剤とに大別することができる。前者の無機系赤外線遮蔽剤としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、硫化亜鉛などが挙げられるが、特に酸化錫、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、ITO(錫ドープ酸化インジウム)の金属酸化物が好適である。有機系赤外線遮蔽剤としては、例えばシアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物、フタロシアニン系化合物、トリアリルメタン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、更にはN,N,N',N'−テトラキス(p−ジ−n−ブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミニウムの過塩素酸塩、フェニレンジアミニウムの塩素塩、フェニレンジアミニウムのヘキサフルオロアンチモン酸塩、フェニレンジアミニウムのフッ化ホウ素酸塩、フェニレンジアミニウムのフッ素塩、フェニレンジアミニウムの過塩素酸塩などのアミノ化合物などが挙げられる。
【0138】
次に、高分子材料の耐光性を評価する方法について説明する。高分子材料の耐光性を評価する方法として、「高分子の光安定化技術」(株式会社シーエムシー,2000年)85ページ〜107ページ、「高機能塗料の基礎と物性」(株式会社シーエムシー,2003年)314ページ〜359ページ、「高分子材料と複合材製品の耐久性」(株式会社シーエムシー,2005年)、「高分子材料の長寿命化と環境対策」(株式会社シーエムシー,2000年)、H.Zweifel編「Plastics Additives Handbook 5th Edition」(Hanser Publishers)238ページ〜244ページ、葛良忠彦著「基礎講座2 プラスチック包装容器の科学」(日本包装学会,2003年)第8章などの記載を参考にできる。
また各々の用途に対する評価としては下記の既知評価法により達成できる。高分子材料の光による劣化は、JIS−K7105:1981、JIS−K7101:1981、JIS−K7102:1981、JIS−K7219:1998、JIS−K7350−1:1995、JIS−K7350−2:1995、JIS−K7350−3:1996、JIS−K7350−4:1996、JIS-C-2318-1997:5331の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。
【0139】
包装・容器用途として用いられる場合の耐光性は、JIS−K7105の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。その具体例としては、ボトル胴体の光線透過率、透明性評価、キセノン光源を用いた紫外線暴露後のボトル中身の官能試験評価、キセノンランプ照射後のヘーズ値評価、ハロゲンランプ光源としたヘイズ値評価、水銀灯暴露後のブルーウールスケールを用いた黄変度評価、サンシャインウェザーメーターを用いたヘーズ値評価、着色性目視評価、紫外線透過率評価、紫外線遮断率評価、光線透過率評価、インク容器内インキの粘度評価、光線透過率評価、日光暴露後の容器内サンプル目視、色差ΔE評価、白色蛍光灯照射後の紫外線透過率評価、光透過率評価、色差評価、光線透過率評価、ヘーズ値評価、色調評価、黄色度評価、遮光性評価、L表色系色差式を用いた白色度評価、キセノン光を分光した後の波長ごとの暴露後サンプルにおける色差ΔEaを用いた黄ばみ評価、紫外線暴露後、紫外線吸収率評価、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後のフィルム引っ張り伸び評価、キセノンウェザーメーター暴露後の抗菌性評価、蛍光灯照射後の包装内容物褪色性評価、サラダ油充填ボトルに対する蛍光灯暴露後の油の過酸化物価評価、色調評価、ケミカルランプ照射後の吸光度差評価、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後の表面光沢度保持率、外観評価、サンシャインウェザロメーターを用いた暴露後の色差、曲げ強度評価、遮光比評価、灯油中の過酸化物生成量評価などがあげられる。
【0140】
塗料・塗膜用途として用いられる場合の長期耐久性は、JIS−K5400、JIS−K5600−7−5:1999、JIS−K5600−7−6:2002、JIS−K5600−7−7:1999、JIS−K5600−7−8:1999、JIS−K8741の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。その具体例としてはキセノン耐光試験機及びUVCON装置による暴露後の色濃度及びCIE L色座標における色差ΔEa、残留光沢を用いた評価、石英スライド上フィルムに対するキセノンアーク耐光試験機を用いた暴露後の吸光度評価、ロウにおける蛍光灯、UVランプ暴露後の色濃度及びCIE L色座標における色差ΔEaを用いた評価、メタルウェザー耐候性試験機を用いた暴露後の色相評価、メタルハイドランプを用いた暴露試験後の光沢保持率評価及び色差ΔEaを用いた評価、サンシャインカーボンアーク光源を用いた暴露後光沢感の評価、メタルウェザー耐候性試験機を用いた暴露後の色差ΔEaを用いた評価、光沢保持率、外観評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率評価、QUV耐候性試験機を用いた暴露後の色差ΔEaを用いた評価、光沢保持率評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後光沢保持率評価、塗装板に対するサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の外観評価サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率、明度値変化評価、塗膜に対するデューサイクルWOM暴露後の塗膜劣化状態の外観評価、塗膜の紫外線透過率評価、塗膜の紫外線遮断率評価、サンシャインウェザーオーメーターを用いた塗膜の光沢保持率80%となる時間比較評価、デューパネル光コントロールウェザーメーターを用いた暴露後の錆発生評価、屋外暴露後の塗装済み型枠に対するコンクリートの強度評価、屋外暴露後の色差ΔEaを用いた評価、碁盤目密着評価、表面外観評価、屋外暴露後の光沢保持率評価、カーボンアーク光源を用いた暴露後の黄変度(ΔYI)評価等があげられる。
【0141】
インク用途として用いられる場合の耐光性は、JIS−K5701−1:2000、JIS−K7360−2、ISO105−B02の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には事務所用蛍光灯、褪色試験機を用いた暴露後の色濃度及びCIE L色座標の測定による評価、キセノンアーク光源を用いた紫外線暴露後の電気泳動評価、キセノンフェードメーターによる印刷物の濃度評価、100Wケミカルランプを用いたインク抜け性評価、ウェザーメーターによる画像形成部位の色素残存率評価、アイスーパーUVテスターを用いた印刷物のチョーキング評価、及び変色評価、キセノンフェードメーター暴露後の印刷物についてCIE L色座標における色差ΔEaを用いた評価、カーボンアーク光源を用いた暴露後の反射率評価などが挙げられる。
【0142】
太陽電池モジュールの耐光性は、JIS−C8917:1998、JIS−C8938:1995の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、キセノンランプに太陽光シミュレーション用補正フィルタを装着した光源による暴露後のI−V測定光発電効率評価、サンシャインウェザーメーター、フェードメータを用いた暴露後の変褪色グレースケール等級評価、色、外観密着性評価などがあげられる。
【0143】
繊維及び繊維製品の耐光性は、JIS−L1096:1999、JIS−A5905:2003、JIS−L0842、JIS−K6730、JIS−K7107、DIN75.202、SAEJ1885、SN−ISO−105−B02、AS/NZS4399の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。紫外線透過率評価、キセノン光源、カーボンアーク光源を用いた暴露後のブルースケール変褪色評価、記載のUVカット率評価、紫外線遮断性評価、ドライクリーニング後のカーボンアーク光源を用いた暴露後ブルースケール変褪色評価、フェードオメーターを用いた暴露後の明度指数、クロマティクネス指数に基づく色差ΔE評価、UVテスター、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後の引っ張り強度評価、全透過率評価、強力保持率評価、紫外線保護係数(UPF)評価、高温フェードメーターを用いた暴露後の変褪色グレースケール評価、屋外暴露後の外観評価、紫外線暴露後の黄色度(YI)、黄変度(ΔYI)評価、規約反射率評価等があげられる。
【0144】
建材の耐光性は、JIS−A1415:1999の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の表面色調評価、カーボンアーク光源を用いた暴露後の外観評価、アイスーパーUVテスターを用いた暴露後の外観評価、暴露後の吸光度評価、暴露後の色度、色差評価、メタルハイドランプ光源を用いた暴露後のCIE L色座標における色差ΔEaを用いた評価、光沢保持率評価、特開平10−44352号公報、特開2003−211538号公報、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後のヘーズ値変化評価、暴露後の引張試験機を用いた伸度保持率評価、溶媒浸漬後の紫外線透過率評価、アイスーパーUVテスターを用いた暴露後の外観目視評価、QUV試験後の光沢率変化評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率評価、ブラックライトブルー蛍光灯を用いた紫外線暴露後の色差ΔEaを用いた評価、コーブコン促進試験機を用いた暴露後の密着保持率評価、紫外線遮断性評価、特屋外暴露(JIS−A1410)後の外観評価、全光透過率評価、ヘイズ変化評価、引張せん断接着強さ評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露後の全光線透過率評価、ヘイズ評価、黄変度評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の黄変度(ΔYI)、紫外線吸収剤残存率評価等が挙げられる。
【0145】
記録媒体用途として用いられる場合の耐光性はJIS−K7350の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、蛍光灯照射後の印字部位における地肌色差変化評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露による画像濃度残存率評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露による光学反射濃度変化評価、サンテストCPS光褪色試験機を用いた暴露後のL評価形による黄変度評価、フェードメーターを用いた暴露後の褪色評価、キセノンフェードメーターを用いた暴露後の褪色目視評価、室内太陽光暴露後の色濃度保持率評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露後の色濃度保持率評価、フェードメーターを用いた暴露後のC/N評価、蛍光灯暴露後のかぶり濃度評価、蛍光灯を用いた暴露後の光学反射濃度評価、消去性評価、アトラスフェードメーターを用いた暴露後の色差ΔE評価、カーボンアークフェードメーターを用いた暴露後の褪色目視評価、有機EL素子色変換特性保持率評価、キセノン褪色試験機による暴露後の有機ELディスプレイ輝度測定評価などが挙げられる。
【0146】
その他の評価法としてはJIS−K7103、ISO/DIS9050の方法及びこれを参考とした方法によって評価できる。具体的には、ポリカーボネート被覆フィルムのUVテスターによる暴露後の外観評価、人工毛髪における紫外線暴露後のブルースケール評価、促進耐候性試験機を用いた暴露後の評価用処理布水接触角評価、特開2005−55615号公報に記載の耐候試験機を用いた暴露後の投影スクリーンに映し出された映像目視評価、サンシャインウェザーメーター、メタルウェザーメーターを用いた暴露後の試験体表面劣化、意匠性変化目視評価、金属ランプリフレクターを用いた点灯暴露後の外観目視評価ボトル用ラベルの光線透過率評価、キセノンウェザーメーターを用いた湿度条件下、暴露後のポリプロピレン劣化評価、サンシャインウェザオメーターを用いたハードコートフィルムの劣化評価、基材の劣化評価、親水性評価、耐擦傷性評価、キセノンランプ光源を用いた暴露後の人工皮革のグレースケール色差評価、水銀灯を用いた暴露後の液晶デバイス特性評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の密着性評価、芝の紫斑度合い評価、キセノンアーク光源を用いた暴露後紫外線透過率評価、引張強度評価、コンクリート密着速度評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後外観評価、及び塗膜密着性評価、カーボンアーク光源を用いた暴露後の黄変度、密着性評価、紫外線フェードメーターを用いた接着性能評価、照明点灯時における昆虫類飛来抑制評価、アイスーパーUVテスターを用いた合わせガラスの黄変度(ΔYI)評価、QUV照射、耐湿テストを行った後の表面外観評価、光沢保持率評価、デューパネル光コントロールウェザーメーターを用いた経時色差評価、キセノンウェザロメーターを用いた暴露後の木材基材塗布状態における光沢度(DI)、黄色度指数(YI)評価、紫外線照射、暗闇を繰り返した後の紫外線吸収率評価、紫外線暴露後の染料褪色色差ΔE評価等が挙げられる。
【実施例1】
【0147】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0148】
〔合成例〕合成例1(例示化合物(2)の調製)
【0149】
【化14】

【0150】
(X−2の合成)
3つ口フラスコに、アセトキシム39.5g(1.1モル当量)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)600mL、カリウム-t-ブトキシド60.6g(1.1モル当量)を入れて室温で30分攪拌した。その後、内温を0℃とし、そこへ化合物(X−1)60g(1.0モル当量)をゆっくり滴下した。滴下後、内温を25℃まで昇温し、その温度で1時間攪拌した。
反応混合物を塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルで抽出・分液操作を行い、得られた有機相に飽和食塩水を加えて洗浄し分液した。こうして得られた有機相を、ロータリーエバポレータで濃縮して得られた残留物を化合物(X−2)の粗生成物として得た。
【0151】
(X−3の合成)
3つ口フラスコに、上記で得られた化合物(X−2)の粗成生物の全量を入れ、エタノール700mLと1mol/Lの塩酸水500mLを加えて、反応混合物を内温80℃まで昇温しその温度で3時間攪拌した。
反応混合物を内温25℃まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルで抽出・分液操作を行い、得られた有機相に飽和食塩水を加えて洗浄し分液した。こうして得られた有機相を、ロータリーエバポレータで濃縮して得られた残留物を化合物(X−3)の粗生成物として得た。
【0152】
(X−4の合成)
3つ口フラスコに、フラスコ内を窒素ガスで満たした後に10%Pd−C(和光純薬工業社製)を6.5g添加し、エタノールを2,000mL、上記で得られた化合物(X−3)の粗成生物を全量加えて加熱・還流した。そこへギ酸55mL(3モル当量)をゆっくり滴下し、この温度で5時間攪拌した。その後反応混合物を内温25℃まで冷却し、セライトろ過を行い炉別した母液に1,5−ナフタレンジスルホン酸を105g加えて、内温を70℃まで昇温し、30分攪拌した。その後、徐々に室温まで冷却して結晶を濾別し化合物(X−4)を100g得た。収率は化合物(X−1)を出発物質として72%であった。得られた結晶は、淡茶色であった。
H NMR(重DMSO):δ6.95−6.98(1H)、δ7.02−7.04(1H)、δ7.40−7.51(3H)、δ7.90−7.95(1H)、δ8.75(1H)、δ8.85−8.88(2H)、δ9.03(2H)、δ10.89(1H)
【0153】
(合成中間体Cの合成)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU355.2gを添加し溶解させた。この溶液に4−シアノベンゾイル クロリド193.2gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1200mLと塩酸150mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Cを292.8g得た(収率94%)。
【0154】
【化15】

【0155】
合成中間体C200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸110.5gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Dを177.2g得た(収率95%)。
【0156】
【化16】

【0157】
化合物(X−4)6.2gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液4.3gを添加した。この溶液に合成中間体D5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(2)を7.1g得た(収率96%)。
MS:m/z 367(M+)H NMR(CDCl):δ7.01−7.13(4H),δ7.56−7.59(2H),δ7.91−7.93(2H),δ8.52−8.54(2H),δ8.58−8.60(2H),δ12.77(2H)λmax=355nm(EtOAc)
【0158】
合成例2(例示化合物(m−2)の調製)
サリチルアミド160.0gにアセトニトリル600mLとDBU355.2gを添加し溶解させた。この溶液に3-シアノベンゾイル クロリド193.2gを添加し、室温で24時間攪拌した。この反応液に水1200mLと塩酸150mLを添加し、得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Mを296.0g得た(収率95%)。
【0159】
【化17】

【0160】
合成中間体M200.0gにアセトニトリル1200mLと硫酸110.5gを添加し、90℃で4時間攪拌した。この反応液にトリエチルアミン600mLを添加し、室温まで冷却した。得られた固体を濾過、水洗浄して合成中間体Nを177.3g得た(収率95%)。
【0161】
【化18】

【0162】
化合物(X−4)6.2gにメタノール50mLと28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液4.3gを添加した。この溶液に合成中間体N5.0gを添加し、60℃で3時間攪拌した。この反応液を室温まで冷却した後、塩酸を0.2mL添加した。得られた固体を濾過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(m−2)を6.9g得た(収率93%)。MS:m/z 367(M+)
【0163】
上記と同様の方法を用いて、実施例で使用した化合物を作製した。
【0164】
<pKaの測定法>
例示化合物(2)を吸光度が1となるようにアセトニトリルに溶解させ、この溶液に70%過塩素酸(酢酸溶媒)を滴下し、pHを変化させていった。その際の溶液吸収スペクトルを測定し、λmaxにおける吸光度から各pHにおけるトリアジンフリー体とプロトン付加体の比率を計算した。その値が等しくなる点よりpKaの値を求めた。ここで、トリアジンフリー体とは、例示化合物(2)そのものを表し、プロトン付加体とは、例示化合物(2)のトリアジン環の窒素原子にプロトンが付加したものを表す。同様にして例示化合物(21)、(24)、(120)、(m−2)、(m−3)、(m−4)、(m−21)、(m−31)、(m−20)、(m−1)、並びに比較化合物である(例A1)、及び(例A2)についてpKaの値を求めた。吸収スペクトルは、島津製作所製分光光度計UV−3600(商品名)を用いて測定した。pHは、東亜電波工業製pHメーター計HM60G(商品名)を用いて測定した。なお、吸光度はそれぞれの化合物の極大吸収波長で測定した値である。結果を表1に示す。
【0165】
【表1】

【0166】
〔実施例1〕
固有粘度が0.78のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを170℃で6時間乾燥したものと、化合物(m−21)で示される紫外線吸収剤を混合し、押し出し機に投入した。溶融温度280℃で溶融混合し、紫外線吸収剤含有ペレットを得た。ペレットとポリエチレンテレフタレートを、前記紫外線吸収剤が正味2.3質量%となるような含有量に調節し、280℃で溶融混合を行い、厚さ99μm±2μmのフィルムを得た。
【0167】
〔実施例2〕
固有粘度が0.62のポリエチレンナフタレート(PEN)のペレットと、化合物(21)で示される紫外線吸収剤を混合し、押し出し機に投入した。溶融温度300℃で溶融混合し、紫外線吸収剤含有ペレットを得た。ペレットとポリエチレンナフタレートを、前記紫外線吸収剤が正味2.3質量%となるような含有量に調節し、280℃で溶融混合を行い、厚さ99μm±2μmのフィルムを得た。
【0168】
〔実施例3〕
固有粘度が0.78のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを170℃で6時間乾燥したものと、化合物(m−31)で示される紫外線吸収剤を混合し、押し出し機に投入した。溶融温度280℃で溶融混合し、紫外線吸収剤含有ペレットを得た。ペレットとポリエチレンテレフタレートを、前記紫外線吸収剤が正味5.0質量%となるような含有量に調節し、280℃で溶融混合を行い、厚さ45μm±2μmのフィルムを得た。
【0169】
〔実施例4〕
固有粘度が0.9のポリブチレンテレフタレート(PBT)のペレットと、化合物(m−31)で示される紫外線吸収剤を混合し、押し出し機に投入した。溶融温度260℃で溶融混合し、紫外線吸収剤含有ペレットを得た。ペレットとポリブチレンテレフタレートを、前記紫外線吸収剤が正味2.5質量%となるような含有量に調節し、260℃で溶融混合を行い、厚さ99μm±2μmのフィルムを得た。
【0170】
〔実施例5〕
固有粘度が0.78のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを170℃で6時間乾燥したものと、化合物(m−20)で示される紫外線吸収剤を混合し、押し出し機に投入した。溶融温度280℃で溶融混合し、紫外線吸収剤含有ペレットを得た。ペレットとポリエチレンテレフタレートを、前記紫外線吸収剤が正味2.9質量%となるような含有量に調節し、280℃で溶融混合を行い、厚さ99μm±2μmのフィルムを得た。
【0171】
〔実施例6〕
固有粘度が0.78のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを170℃で6時間乾燥したものと、化合物(m−2)で示される紫外線吸収剤を混合し、押し出し機に投入した。溶融温度280℃で溶融混合し、紫外線吸収剤含有ペレットを得た。ペレットとポリエチレンテレフタレートを、前記紫外線吸収剤が正味1.6質量%となるような含有量に調節し、280℃で溶融混合を行い、厚さ100μm±2μmのフィルムを得た。
【0172】
〔実施例7〕
固有粘度が0.78のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを170℃で6時間乾燥したものと、(m−1)で示される紫外線吸収剤を混合し、押し出し機に投入した。溶融温度280℃で溶融混合し、紫外線吸収剤含有ペレットを得た。ペレットとポリエチレンテレフタレートを、前記紫外線吸収剤が正味0.5質量%となるような含有量に調節し、280℃で溶融混合を行い、厚さ320μm±2μmのフィルムを得た。
【0173】
〔実施例8〕〜〔実施例13〕
実施例1と同様に、下表に示した紫外線吸収剤、添加剤を含んだ樹脂フィルムを成形した。
【0174】
〔比較例1及び2〕
実施例1と同様に、(例A1)で示される紫外線吸収剤を含んだフィルムを成形した(比較例1)。
これと同様に比較例2のフィルムを作成した。
【0175】
≪評価≫〔耐光性〕
作成した各フィルムを、メタルハライドランプ(350nm以下カットフィルター存在化)(商品名:アイスーパーUVテスター、岩崎電気製)で照度90mW/cm、温度63℃、湿度50%の条件で光照射した。評価は黄変度(ΔY.I.)と破断強度保持率で評価した。破断強度は東洋精機製ストログラフVE10Dを使用し、フレッシュ膜の強度を100%として24h時間後の強度との相対比を強度保持率(%)として算出し、比較例1の強度保持率を1としたとき、以下の評価基準にて実験を行った。
◎:比較例1に対して4以上の場合
○:比較例1に対して2以上4未満の場合
△:比較例1に対して1以上2未満の場合
×:比較例1に対して0.1以上1未満の場合
〔溶解性〕
各フィルムを作成する際の樹脂への溶解性を評価した。樹脂と供に押し出し機内へ投入して各溶融温度で混練する際、溶融に掛かった時間が比較例1でフィルムを作成したときにかかった時間を1とし以下の評価基準にて評価を行った。
◎:比較例1に対して0.8倍未満の時間で済んだ場合
○:比較例1に対して1.0倍未満0.8倍以下の時間で済んだ場合
△:比較例1に対して1.0倍の時間が掛かった場合
×:比較例1に対して1.0倍より多く時間が掛かった場合〔黄色度〕
黄色度(YI)とは無色又は白色から色相が黄色向に離れる度合いである。黄色度の測定方法は測白色差計を用いて、三刺激値X.Y.Zを求め、次の式を用いて計算する。
〔1164〕
黄変度(△YI)とは光、熱などの環境に曝露されたプラスチックの劣化の評価に用いられ、初期の黄色度と曝露後の黄色度の差によって表示される。黄変度は次の式で求められる。
△YI=YI―Ylo
△YI :黄変度
YI :曝露後の黄変度
Ylo :試験用フィルム初期の黄色度
【0176】
【表2】

【0177】
(例A1)、(例A2)は以下の化合物を示す。
【0178】
【化19】

【0179】
上記化合物は市販で入手可能なものであり、例A1はCiba社製 Tinuvin1577FF、例A2はCYTEC社製 CYASORB UV-1164である。
また、PETは東洋紡績社製 ME-553を用いた。
【0180】
以上の結果から、本発明のポリエステル樹脂組成物(実施例1〜13)は、比較例と比して、耐光性及び溶解性において優れることがわかった。また実施例で得られたフィルムを、農業用フィルムやPDP用フィルム、食品・医療用包装フィルム、窓貼りフィルムとして使用すると、市販のフィルムと比較し、耐光性に優れることが分かった。
【0181】
<製造例1;太陽電池用バックシート>
太陽電池モジュールから相対的に遠い側(外側)に配置される外層から、厚みが25μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムからなる樹脂フィルム層、上記実施例1で作成したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる樹脂フィルム層の順に積層された2つの樹脂フィルム層から形成され、PETフィルム層の内側表面にポリエステル系のプライマー層がコーティングされた。PENフィルム層とPETフィルム層との間には、ドライラミネート用接着剤からなる接着剤層が配置された。
【0182】
最外層から、PENフィルム(25μm)、接着剤層、PETフィルム(99μm±2μm)、ポリエステル系のプライマー層が積層された構成の太陽電池用バックシートを作成した。このように作成された太陽電池用バックシートは、耐光性に優れることが分かった。
【0183】
<製造例2;太陽電池用バックシート>
実施例2で作成した、厚さ99μm±2μmのPENフィルムの両面に接着剤層(日本触媒(株)のポリメントNK350と、油化シエル(株)のエピコート828(硬化剤)を使用し、ポリメントNK350、エピコート828=100、4.5(質量比)で配合後、トルエンで希釈した接着剤を使用して作成した。)を設け、その両面に、厚さ25μmの白色のポリフッ化ビニルフィルム(デュポン(株)、テドラーフィルム)を積層した。
最外層から、ポリフッ化ビニルフィルム(25μm)、接着剤(乾燥塗布量4.5gm)、PENフィルム(99μm±2μm)、接着剤(乾燥塗布量4.5g/m)、ポリフッ化ビニルフィルム(25μm)が積層された構成の太陽電池用バックシートを作成した。
このように作成された太陽電池用バックシートは耐光性に優れることが分かった。
【0184】
<製造例3;太陽電池用フロントシート>
50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製 SPPET3811、厚さ38μm)の片面に、アクリル系バインダー(NIPOL Lx811、日本ゼオン(株)製)100質量部及びシリカフィラー(日産株式会社 商品名スノーテックスZL)5質量部からなる防眩処理(コート厚:約2μm)を行った。このように作製された太陽電池のフロントシートは、太陽電池モジュールに接着し用いることができる。
最外層から、防眩処理層(約99μm)、PETフィルム(50μm)、感圧接着剤層(20μm)、PENフィルム(99μm±2μm)が積層された構成の太陽電池用フロントシートを作成した。
このように作成された太陽電池用フロントシートは、太陽電池モジュールに接着し用いることができる。この保護シートは耐光性に優れることが分かった。
【0185】
<製造例4;太陽電池用バックシート>
実施例2において、紫外線吸収剤の化合物(21)を化合物(m−21)に置き換えて作成した以外は同様の操作で作成した厚さ99μm±2μmのPENフィルムの両面に、以下記載の方法で調製した下塗り層をバインダー量が塗布量で0.1g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが約0.1μmになるように形成した。下塗り層の片側一面に、以下記載の方法で調整した含フッ素ポリマー層形成用塗布液を、バインダー量が塗布量で2.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み約2μmの含フッ素ポリマー層を形成した。
含フッ素ポリマー層とは逆の面には、下記記載の方法で調製した着色層形成のための塗料を塗布し、180℃で1分間乾燥させて、二酸化チタン量が7.0g/m、バインダー1.2g/mの着色層を形成した。
最外層から、含フッ素ポリマー層(2μm)、下塗り層(0.1μm)、PENフィルム(99μm±2μm)、下塗り層(0.1μm)、着色層が積層された構成の太陽電池用バックシートを作成した。このように作成された太陽電池用バックシートは耐光性に優れることが分かった。
【0186】
各層の塗布液調製方法
―下塗り層形成用塗布液の調整−
下記組成中の各成分を混合し、下塗り層形成用塗布液を調製した。
・ポリエステル系バインダー ・・・48.0質量部
(バイロナールDM1245(東洋紡(株)製、固形分30質量%))
・カルボジイミド化合物(架橋剤)・・・10.0質量部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:10質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・3.0質量部
(エポクロスWS700、(株)日本触媒製、固形分:25質量%)
・界面活性剤・・・15.0質量部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・ 蒸留水・・・907.0質量部
【0187】
−裏面ポリマー層形成用塗布液の調製−
下記組成中の各成分を混合し、裏面ポリマー層形成用塗布液を調製した。
・オブリガートSSW0011F(バインダー、P−101)・・・247.8質量部
(フッ素系バインダー、AGCコーテック(株)製、固形分:39質量%)
・カルボジイミド化合物(架橋剤、A−1)・・・24.2質量部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:40質量%)
・界面活性剤・・・24.2質量部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・蒸留水・・・703.8質量部
【0188】
−二酸化チタン分散物の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
(二酸化チタン分散物の組成)
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm)・・・39.9質量%
〔タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%〕
・ポリビニルアルコール・・49.9質量%
〔PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10質量%〕
・界面活性剤〔デモールEP、花王(株)製、固形分:10質量%〕・・0.5質量%
・蒸留水・・・9.7質量%
【0189】
−着色層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、着色層用塗布液を調製した。
(塗布液の組成)
・二酸化チタン分散物・・・78.0質量%
・シラノール変性ポリビニルアルコールバインダー・・・11.4質量%
〔R1130、株〕クラレ製、固形分:7質量%〕
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・・・3.0質量%
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%〕
・オキサゾリン化合物・・・2.0質量%
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25%;架橋剤〕
・蒸留水・・・5.6質量%
【0190】
〔実施例14〜17〕
〔太陽電池モジュールの作製〕
製造例1〜4で作製した太陽電池用フロントシート及びバックシートを用いて、実施例14〜17の太陽電池モジュールを作製した。
〔太陽電池モジュールの製法〕
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート〔三井化学ファブロ(株)製のSC50B〕と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート〔三井化学ファブロ(株)製のSC50B〕と、製造例1〜4のシートと、をこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ〔日清紡(株)製、真空ラミネート機〕を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。EVAの接着条件は、以下の通りである。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
このようにして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。作製した太陽電池モジュールを用いて発電運転をしたところ、太陽電池として良好な発電性能を示した。
≪評価≫
〔太陽電池モジュールのエネルギー変換効率比較〕
製造例1〜4の太陽電池用保護シートを用いて太陽電池モジュールを作成しエネルギー変換効率を測定した。本発明のポリエステル樹脂組成物を用いた太陽電池用保護シートを使用した太陽電池モジュールのエネルギー変換効率は従来の紫外線吸収剤を利用した保護シートと比較し、高いエネルギー変換効率が得られることが分かった。本発明のポリエステル樹脂組成物を用いた太陽電池用保護シートは、公知の太陽電池モジュールに組み込むことができる。各製造例において使用された紫外線吸収剤の代わりに、同量の比較紫外線吸収剤を含むものを比較例3〜6として同様にフィルムを作成し、比較例3〜6を基準に、実施例14〜17をそれぞれ評価した。
具体的には、特開2007−128943に記載のモジュールに太陽電池用バックシートと太陽電池用フロントシートとして本発明のポリエステル樹脂組成物を用いた太陽電池用保護シートを付与した際に、上記の比較例3〜6を基準として、実施例14〜17のそれぞれのエネルギー変換効率を次のように評価した。
なお、光電池のエネルギー変換効率の測定は以下のように行った。
500Wのキセノンランプ(ウシオ電気社製)に太陽光シミュレーション用補正フィルター(Oriel社製AM1.5direct(商品名))を装着し、上記太陽電池に対し、入射光強度が100mW/cmの模擬太陽光を、多孔質半導体微粒子電極(感光性電極)の側から照射した。素子は恒温装置のステージ上に密着して固定し、照射中の素子の温度を50℃に制御した。電流電圧測定装置(ケースレー社製ソースメジャーユニット238型(商品名))を用いて、素子に印加するDC電圧を10mV/秒の定速でスキャンし、素子の出力する光電流を計測することにより、光電流−電圧特性を測定した。これによりエネルギー変換効率をもとめた。
◎:実施例で製造した太陽電池モジュールの発電効率が、比較例で製造した太陽電池モジュールの発電効率の1.5倍以上
○:実施例で製造した太陽電池モジュールの発電効率が、比較例で製造した太陽電池モジュールの発電効率の1倍以上1.5倍未満
△:実施例で製造した太陽電池モジュールの発電効率が、比較例で製造した太陽電池モジュールの発電効率と同等
×:実施例で製造した太陽電池モジュールの発電効率が、比較例で製造した太陽電池モジュールの発電効率の1倍未満
【0191】
【表3】

【0192】
<製造例5;繊維>
固有粘度1.0のポリエチレンテレフタレートをエクストルーダ型紡糸機で紡糸し、化合物(m−21)紫外線吸収剤を含む油剤を付与し、延伸して繊度1260デニール、単糸繊度11.7デニールのポリエステル糸を得た。油剤の付着量は繊維質量に対して1質量%であった。これで得られた繊維は良好な耐光性を有していた。
【符号の説明】
【0193】
10・・・太陽電池モジュール
31・・・強化ガラス
32・・・樹脂層
33・・・太陽電池封止材
34・・・太陽電池(セル)
35・・・フレーム
36・・・封止樹脂
37・・・配線
38・・・接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物とポリエステル樹脂とを含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【化1】

[R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、互いに独立して、水素原子又はOHを除く1価の置換基を表し、置換基のうち少なくとも1つは、ハメット則のσp値が正である置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。]
【請求項2】
前記1価の置換基が、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基であり、前記1価の置換基が置換基を有する場合の置換基がハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基又はアルキルスルホニル基であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記R1b、R1c及びR1dの少なくとも一つがハメット則のσp値が正である置換基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記ハメット則のσp値が、0.1〜1.2の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ハメット則のσp値が正である置換基が、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO及びSOMより選択される基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物[R、Rは、互いに独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。]。
【請求項6】
前記ハメット則のσp値が正である置換基がCOOR又はCNであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物[Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。]。
【請求項7】
前記R1h又はR1nが、水素原子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが、水素原子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
前記一般式(1)で表される化合物のpkaが−5.0〜−7.0の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
一般式(1)の化合物を0.01〜30質量%含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
更に添加剤を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート及びポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項14】
前記添加剤が、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、蛍光増泊剤又は難燃剤であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル樹脂成形品であって、厚さが0.1μm〜25mmであることを特徴とするポリエステル樹脂成形品。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる太陽電池用バックシート。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる太陽電池用フロントシート。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる窓貼りフィルム。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる食品・医療用包装フィルム。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる農業用フィルム。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる光学用フィルム。
【請求項22】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる繊維。
【請求項23】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなる太陽電池用モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2012−36359(P2012−36359A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261825(P2010−261825)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】