説明

ポリエステル系エラストマー発泡体、及び該発泡体で構成された電気・電子機器用シール材

【課題】 優れたクッション性及び優れた加工性を有するポリエステル系エラストマー発泡体、及び該発泡体で構成される電気・電子機器用シール材を提供する。
【解決手段】 本発明のポリエステル系エラストマー発泡体は、密度が0.03〜0.15g/cm3であるポリエステル系エラストマー発泡体であって、融点が190〜220℃のポリエステル系エラストマーを含み、該ポリエステル系エラストマーの融点から高温側10±2℃の温度で測定した溶融張力が10〜25cNであるポリエステル系エラストマー組成物を発泡させることにより形成されることを特徴とする。前記ポリエステル系エラストマー発泡体は、融点が190〜220℃のポリエステル系エラストマーとエポキシ系架橋剤とを含むポリエステル系エラストマー組成物を発泡させることにより形成されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子機器(携帯電話、携帯端末、デジタルカメラ、ビデオカメラ、パーソナルコンピューター、家電製品など)に用いられるシール材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー発泡体は、優れたクッション性を有し、シール材、クッション材、パット材などに有用である。例えば、携帯電話やデジタルカメラ等の電気・電子機器の液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどの防塵材や緩衝材などとして使用されている。そして、今後、電気・電子機器の形態として、ますます小型化、軽量化、薄型化へシフトしていく傾向があり、当然に、それに用いられる発泡体も細幅化、薄層化が求められている。
【0003】
そのような状況下、従来、エラストマー発泡体としては、未架橋タイプ又は架橋タイプのポリオレフィン系エラストマー発泡体等が知られている(特許文献1参照)。しかし、ポリオレフィン系エラストマー発泡体は、残留歪が大きいため、打抜加工時(特に、細幅加工時)に、シール材として要求される厚さや形状を維持することが困難となる場合があり、加工性の低下という問題があった。
【0004】
また、ポリエステル系エラストマーを用いた発泡体も知られており、主に、優れた機械的性質及び化学的特性の面から、耐熱性やリサイクル性に優れた材料としても用いられている。例えば、リサイクル性に優れている発泡体として、脂肪族−芳香族コポリエステル系樹脂からなる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体が知られている(特許文献2、特許文献3参照)。しかしながら、脂肪族の成分として乳酸樹脂を含んでいるため、高温雰囲気下に弱く、耐熱性や長期保存性が劣るという問題があった。また、脂肪族の成分として含まれる乳酸樹脂の融点が低い場合、該熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の圧縮残留歪が大きくなりやすいという問題や、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の成形時の樹脂温度が270〜290℃と高温であるため、樹脂が劣化してしまい、発泡成形し難いという問題があった。
【0005】
さらに、エラストマー発泡体として、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体が知られている(特許文献4参照)。しかしながら、該発泡体は厚みの大きい発泡体(厚さ:10mm以上)であるため、電気・電子機器用途向けの小型化、軽量化、薄型化には適さず、さらに、その防塵性にも問題があった。また、発泡前の熱可塑性ポリエステル系樹脂の密度が1.39g/cm3以上であるため、発泡体に成形した場合、柔軟性やクッション性に優れず、衝撃吸収能が低下する問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−250529号公報
【特許文献2】特開2003−41036号公報
【特許文献3】特開2003−103595号公報
【特許文献4】特開2000−053796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリエステル系エラストマー発泡体において、その圧縮残留歪が大きいと、打抜加工の際に、必要とされる厚さや形状を有しない不良加工品を生じる場合があり、加工性の低下という問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、優れたクッション性及び優れた加工性を有するポリエステル系エラストマー発泡体を提供することにある。
本発明の他の目的は、また、圧縮残留歪が小さく、打抜加工時において、必要とされる厚さや形状を有しない不良加工品を生じないポリエステル系エラストマー発泡体を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、ポリエステル系エラストマー発泡体で構成されている電気・電子機器用シール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、密度が特定の範囲内の値を有するポリエステル系エラストマー発泡体において、発泡させるポリエラストマー組成物の、ポリエステル系エラストマーの融点から高温側10±2℃の温度で測定した溶融張力を特定の範囲内の値を有するように制御すれば、優れたクッション性を有し、且つ優れた加工性、特に打抜加工時の細幅・薄層加工性を有するポリエステル系エラストマー発泡体を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、密度が0.03〜0.15g/cm3であるポリエステル系エラストマー発泡体であって、融点が190〜220℃のポリエステル系エラストマーを含み、該ポリエステル系エラストマーの融点から高温側10±2℃の温度で測定した溶融張力が10〜25cNであるポリエステル系エラストマー組成物を発泡させることにより形成されることを特徴とするポリエステル系エラストマー発泡体を提供する。
【0011】
前記ポリエステル系エラストマーは、融点が190〜220℃のポリエステル系エラストマーとエポキシ系架橋剤とを含むポリエステル系エラストマー組成物を発泡させることにより形成されることが好ましい。
【0012】
前記ポリエステル系エラストマー発泡体において、圧縮残留歪としては、15%以下が好ましい。
【0013】
また、前記ポリエステル系エラストマー発泡体において、発泡剤としては、超臨界状態の不活性ガスが好ましい。
【0014】
本発明は、上記のポリエステル系エラストマー発泡体で構成されている電気・電子機器用シール材を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリエステル系エラストマー発泡体は、前記構成を有しているので、優れたクッション性、及び優れた加工性、特に打抜加工時の細幅・薄層加工性を有することができる。さらに、電気・電子機器用シール材を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のポリエステル系エラストマー発泡体は、密度が0.03〜0.15g/cm3であるポリエステル系エラストマー発泡体であって、融点が190〜220℃のポリエステル系エラストマーを含み、且つポリエステル系エラストマーの融点から高温側10±2℃の温度で測定した溶融張力が10〜25cNであるポリエステル系エラストマー組成物を発泡させることにより形成される発泡体である。なお、本発明において、発泡体の密度とは、見掛け密度を意味する。
【0017】
本発明において、ポリエステル系エラストマーを構成するポリエステル系熱可塑性樹脂(ポリエステル系熱可塑性ポリマー)としては、ポリオール成分と、ポリカルボン酸成分との反応(重縮合)によるエステル結合部位を有する樹脂であれば特に制限されないが、例えば、芳香族ジカルボン酸(二価の芳香族カルボン酸)とジオール成分との縮重合により得られるポリエステル系熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0018】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンカルボン酸(例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸など)、ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、1,18−オクタデカンジオール、ダイマージオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、キシリレンジオール、ナフタレンジオール等の芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテルグリコールなどのジオール成分などが挙げられる。なお、ジオール成分としては、ポリエーテルジオールや、ポリエステルジオールなどのポリマー形態のジオール成分であってもよい。前記ポリエーテルジオールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびこれらを共重合させたコポリエーテル等のポリエーテルジオールなどが挙げられる。また、ジオール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
このようなポリエステル系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート系樹脂などが挙げられる。また、上記ポリアルキレンテレフタレート系樹脂を2種類以上共重合して得られる共重合体であってもよい。なお、ポリアルキレンテレフタレート系樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態の共重合体であってもよい。
【0021】
また、ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル系熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0022】
このようなポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、(i)前記芳香族ジカルボン酸と、前記ジオール成分のうちヒドロキシル基とヒドロキシル基との間の主鎖中の炭素数が2〜4であるジオール成分との、重縮合により形成されるポリエステルをハードセグメントとし、前記芳香族ジカルボン酸と、前記ジオール成分のうちヒドロキシル基とヒドロキシル基との間の主鎖中の炭素数が5以上であるジオール成分との、重縮合により形成されるポリエステルをソフトセグメントとする、ポリエステル・ポリエステル型の共重合体;(ii)上記(i)と同様のポリエステルをハードセグメントとし、前記ポリエーテルジオールなどのポリエーテルをソフトセグメントとする、ポリエステル・ポリエーテル型の共重合体;(iii)上記(i)及び(ii)と同様のポリエステルをハードセグメントとし、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとする、ポリエステル・ポリエステル型の共重合体などが挙げられる。
【0023】
ハードセグメントとして用いられるポリエステルとしては、例えば、前記ポリアルキレンテレフタレート系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)が挙げられる。
【0024】
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリカプロラクトン;脂肪族ジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸など)と前記ジオール成分とのポリエステル;ヒドロキシカルボン酸(例えば、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸など)の縮合によって形成されるポリエステルなどが挙げられる。
【0025】
なお、ポリエステル系エラストマーは、ポリエステル系エラストマーがハードセグメント及びソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル系熱可塑性エラストマーである場合、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分が含まれていてもよい。また、ポリエステル系エラストマーは、前記ポリエステル系熱可塑性樹脂とゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分で構成されていてもよい。
【0026】
ポリエステル系エラストマーの融点は、融点を複数有する場合、温度の最も高い融点を採用する。
【0027】
このようなゴム成分あるいは熱可塑性エラストマー成分としては、ゴム弾性を有し、発泡可能なものであれば特に制限はなく、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、二トリルブチルゴムなどの天然又は合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、及びそれらの水素添加物などのスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらのゴム成分あるいは熱可塑性エラストマー成分は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのゴム成分や熱可塑性エラストマー成分は、例えば、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、防塵材又はシール材としたときの柔軟性及び形状追随性に著しく優れる。
【0028】
ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の割合としては、ポリエステル系エラストマーがハードセグメント及びソフトセグメントのブロック共重合体であるポリエステル系熱可塑性エラストマーである場合、それ自体で弾性を有するため、必要に応じて適宜含まれていればよい。また、ポリエステル系熱可塑性樹脂と、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分との混合物の混合比率(重量%)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1(好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは20/80〜80/20)であってもよい。ポリエステル系熱可塑性樹脂と、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分との混合物において、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の割合が、1重量%未満であると、ポリエステル系熱可塑性樹脂発泡体のクッション性が低下しやすく、一方、99重量%を超えると、発泡時にガス抜けが生じやすくなり、高発泡性の発泡体を得ることが困難になる。
【0029】
ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
ポリエステル系エラストマー組成物には、本願発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて架橋剤が含まれていてもよい。このような架橋剤としては、水酸基やカルボキシル基と反応する架橋剤である限り特に制限されず、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シラノール系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
中でも、架橋剤としては、エポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤は、加水分解(例えば、原料の吸湿に起因する加水分解など)、熱分解、酸化分解などによるポリエステル鎖の切断を防止でき、さらに切断されたポリエステル鎖を再結合できるため、ポリエステル系エラストマー組成物の溶融張力をより向上させることができるためである。
【0032】
このようなエポキシ系架橋剤としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物なら特に制限されず、例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。なお、エポキシ系架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
エポキシ系架橋剤の使用量は、押出条件、所望する発泡倍率等によって適宜調整されるが、例えば、ポリエステル系熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部(好ましくは0.05〜10重量部)である。
【0034】
ポリエステル系エラストマー組成物には、結晶化促進剤が含まれていてもよい。ポリエステル系エラストマー組成物において、結晶化促進剤を配合すれば、優れた成形性を得ることができる。
【0035】
結晶化促進剤としては、例えば、オレフィン系樹脂が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂としては、分子量分布が広く且つ高分子量側にショルダーを持つタイプの樹脂、微架橋タイプの樹脂(若干架橋されたタイプの樹脂)、長鎖分岐タイプの樹脂などを用いることが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1など)との共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなど)との共重合体などのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ポリオレフィン系樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれの形態の共重合体であってもよい。
【0036】
結晶化促進剤の配合量としては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル系熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜30重量部(好ましくは0.5〜15重量部)の範囲から適宜選択することができる。
【0037】
ポリエステル系エラストマー組成物には、さらに、パウダー粒子を含んでいることが好ましい。パウダー粒子は、発泡成形時の発泡核剤としての機能を発揮することができる。そのため、パウダー粒子を配合することにより、良好な発泡状態の熱可塑性樹脂発泡体を得ることができる。パウダー粒子としては、例えば、パウダー状のタルク、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、モンモリナイト等のクレイ、カーボン粒子、グラスファイバー、カーボンチューブなどを用いることができる。パウダー粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
なお、パウダー粒子としては、平均粒子径(粒径)が0.1〜20μm程度のパウダー状の粒子を好適に用いることができる。パウダー粒子の平均粒子径が0.1μm未満では核剤として十分機能しない場合があり、粒径が20μmを超えると発泡成形時にガス抜けの原因となる場合があり好ましくない。
【0039】
パウダー粒子の配合量としては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル系熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜150重量部(好ましくは0.2〜130重量部、さらに好ましくは0.3〜50重量部)の範囲から適宜選択することができる。パウダー粒子の配合量がポリエステル系熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1重量部未満であると、均一な発泡体を得ることが困難になり、一方、150重量部を超えると、ポリエステル系エラストマー組成物としての粘度が著しく上昇するとともに、発泡形成時にガス抜けが生じてしまい、発泡特性を損なう恐れがある。
【0040】
また、ポリエステル系エラストマー発泡体は、ポリエステル系熱可塑性樹脂により構成されているため、燃えやすいという特性(もちろん、欠点でもある)を有している。そのため、特に、発泡部材を、電気・電子機器用途などの難燃性の付与が不可欠な用途では、パウダー粒子として、難燃性を有しているパウダー粒子(例えば、パウダー状の各種の難燃剤など)を配合することが好ましい。なお、難燃剤は、難燃剤以外のパウダー粒子とともに用いることができる。
【0041】
本発明では、パウダー状の難燃剤において、難燃剤としては無機難燃剤が好適である。無機難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤などであってもよいが、塩素系難燃剤や臭素系難燃剤は、燃焼時に人体に対して有害で機器類に対して腐食性を有するガス成分を発生し、また、リン系難燃剤やアンチモン系難燃剤は、有害性や爆発性などの問題があるため、ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤を好適に用いることができる。ノンハロゲン−ノンアンチモン系無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物等の水和金属化合物などが挙げられる。なお、水和金属酸化物は表面処理されていてもよい。難燃剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
難燃剤を用いる場合、難燃剤の使用量としては、特に制限されず、例えば、ポリエステル系エラストマー組成物全量に対して10〜70重量%(好ましくは25〜65重量%)の範囲から適宜選択することができる。難燃剤の使用量が少なすぎると、難燃化効果が小さくなり、逆に多すぎると、高発泡の発泡体を得ることが困難になる。
【0043】
ポリエステル系エラストマー組成物には、必要に応じて、滑剤が配合されていてもよい。このような滑剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、及び、その誘導体(例えば、脂肪族カルボン酸無水物、脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩、脂肪族カルボン酸のアルカリ土類金属塩など)が挙げられる。中でも、ラウリル酸及びその誘導体、ステアリン酸及びその誘導体、クロトン酸及びその誘導体、オレイン酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、グルタン酸及びその誘導体、ベヘン酸及びその誘導体、モンタン酸及びその誘導体などの炭素数3〜30の脂肪酸カルボン酸及びその誘導体が好ましい。また、炭素数3〜30の脂肪酸カルボン酸及びその誘導体の中でも、樹脂中への分散性、溶解性、表面外観改良の効果等の観点から、ステアリン酸及びその誘導体、モンタン酸及びその誘導体が好ましく、特に、ステアリン酸のアルカリ金属塩、ステアリン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。さらに、ステアリン酸のアルカリ金属塩、ステアリン酸のアルカリ土類金属塩の中でも、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウムがより好適に用いられる。また、上記脂肪族カルボン酸、及びその誘導体以外にも、アクリル系滑剤が好適に用いられる。
【0044】
滑剤を用いる場合、滑剤の使用量としては、特に制限されず、例えば、ポリエステル系熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部(好ましくは0.5〜10重量部)である。滑剤の使用量が少なすぎると、滑剤を加えることにより生ずる効果が小さくなり、逆に多すぎると、高発泡の発泡体を得ることが困難になる。また、滑剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、ポリエステル系エラストマー組成物には、上記滑剤以外にも、必要に応じて、各種添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の種類は特に限定されず、発泡成形に通常使用される各種添加剤を用いることができる。具体的には、添加剤として、例えば、気泡核剤、結晶核剤、可塑剤、着色剤(黒色着色を目的としたカーボンブラック、顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、界面活性剤、張力改質剤、収縮防止剤、流動性改質剤、クレイ、加硫剤、表面処理剤、分散助剤、ポリエステル樹脂用改質剤、パウダー状以外の各種形態の難燃剤などが挙げられる。添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択することができ、通常の熱可塑性樹脂の成形の際に用いられる添加量を採用することができる。
【0046】
上記の成分を含むポリエステル系エラストマー組成物のポリエステル系エラストマーの融点は、190〜220℃である。なお、融点温度は、示差熱分析計(DSC)で測定される。なお、ポリエステル系エラストマーの融点とは、再昇温過程での吸熱ピーク値温度を言う。
【0047】
溶融張力とは、規定の装置を用い、規定のダイより、規定の温度および押出速度で押し出された溶融樹脂を、規定の引取速度でストランド状に引き取ったときの張力をいう。本発明においては、ROSAND社製のCapillary Extrusion Rheometerを用い、直径が2mm、長さが20mmのキャピラリーより、8.8mm/minの一定速度で押し出された樹脂を2m/minの引取速度で引き取ったときの値を溶融張力とする。
【0048】
また、ポリエステル系エラストマー組成物の溶融張力は、10〜25cNである。そして、溶融張力が10〜25cNであるため、ポリエステル系エラストマー組成物が発泡成形する際、気泡壁の破壊が生じにくくなり、高発泡倍率の発泡体を得ることができる。なお、溶融張力が10cNより低いと発泡特性が低下する場合があり、一方、溶融張力が25cNより高いと流動性が低下する場合がある。
【0049】
なお、ポリエステル系エラストマー組成物にエポキシ系架橋剤を含ませれば、加水分解(例えば、原料の吸湿に起因する加水分解など)、熱分解、酸化分解などによってポリエステル鎖が切断されるのを防ぐことができ、さらに切断されたポリエステル鎖を再結合させることできるので、ポリエステル系エラストマー組成物の溶融張力を向上させることができる。従って、溶融張力が低下する添加剤を添加しても、エポキシ系架橋剤を添加することによって、溶融張力を10〜25cNに調整することができる。また、ポリエステル系エラストマー組成物を構成するポリエステル系熱可塑性樹脂の溶融張力が10cN未満であっても、エポキシ系架橋剤を添加することによって、該ポリエステル系エラストマーから溶融張力が10〜25cNのポリエステル系エラストマー組成物を得ることができる。
【0050】
また、溶融張力は、ポリエステル系エラストマーの融点から高温側に10±2℃の温度で測定した値である。ポリエステル系エラストマーは、融点未満の温度では溶融状態にならず、一方、融点から高温側に大きく超えた温度では完全に流動体となり、溶融張力を測定することができないためである。
【0051】
ポリエステル系エラストマー組成物の発泡方法については、特に制限されないが、ポリエステル系エラストマー組成物に高圧の不活性ガスを含浸させた後、減圧する(圧力を解放する)発泡方法が好ましい。物理的発泡方法(物理的方法による発泡方法)では、発泡剤として用いられる物質の可燃性や毒性、及びオゾン層破壊などの環境への影響が懸念されるが、不活性ガスを用いた発泡方法は、このような発泡剤を使用しない点で、環境に配慮した方法である。また、化学的発泡方法(化学的方法による発泡方法)では、発泡ガスの残渣が発泡体中に残存するため、特に低汚染性の要求が高い電子機器用途においては、腐食性ガスやガス中の不純物による汚染が問題となる場合があるが、不活性ガスを用いた発泡方法では、このような不純物等のないクリーンな発泡体を得ることができる。さらに、物理的発泡方法及び化学的発泡方法では、いずれにおいても微細な気泡構造を形成することは難しく、特に300μm以下の微細気泡を形成することは極めて困難であるといわれている。
【0052】
また、ポリエステル系エラストマー発泡体を形成する際に用いられる不活性ガスとしては、ポリエステル系エラストマー組成物に対して不活性で且つ含浸可能なものであれば特に制限されず、例えば、二酸化炭素(炭酸ガス)、窒素ガス、ヘリウム、空気等が挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、発泡体の素材として用いるポリエステル系エラストマー組成物への含浸量が多く、含浸速度の速い点から、二酸化炭素を好適に用いることができる。
【0053】
さらに、ポリエステル系エラストマー組成物への含浸速度を速めるという観点から、前記高圧の不活性ガス(特に、二酸化炭素)は、超臨界状態であることが好ましい。超臨界状態では、ポリエステル系エラストマー組成物へのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、前記のように高濃度で含浸することが可能であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0054】
ポリエステル系エラストマー組成物に、高圧の不活性ガスを含浸させることにより、発泡体を製造する際には、予めポリエステル系エラストマー組成物を、例えば、シート状などの適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体(未発泡成形物)とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧の不活性ガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ方式で行ってもよく、ポリエステル系エラストマー組成物を加圧下、高圧の不活性ガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続方式で行ってもよい。このように、予め成形した未発泡樹脂成形体を不活性ガスに含浸させてもよく、また、溶融したポリエステル系エラストマー組成物に不活性ガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧の際に成形に付してもよい。
【0055】
具体的には、バッチ方式でポリエステル系エラストマー発泡体を製造する際、未発泡樹脂成形体を製造する方法としては、例えば、ポリエステル系エラストマー組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いて成形する方法、前記と同様のポリエステル系エラストマー組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混錬機を使用して均一に混錬しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚みにプレス成形する方法、射出成形機を用いて成形する方法などが挙げられる。所望の形状や厚さの成形体が得られる適宜な方法により成形すればよい。こうして得られた未発泡樹脂成形体(ポリエステル系エラストマー組成物による成形体)を耐圧容器(高圧容器)中に入れて、高圧の不活性ガス(二酸化炭素など)を注入(導入)し、未発泡樹脂成形体中に高圧の不活性ガスを含浸させるガス含浸工程、十分に高圧の不活性ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、ポリエステル系エラストマー組成物に気泡核を発生させる減圧工程、場合によっては(必要に応じて)、加熱することによって気泡核を成長させる加熱工程を経て、ポリエステル系エラストマー組成物中に気泡を形成させる。なお、加熱工程を設けずに、室温で気泡核を成長させてもよい。このようにして気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化することにより、ポリエステル系エラストマー発泡体を得ることができる。なお、未発泡樹脂成形体の形状は特に限定されず、ロール状、板状等の何れであってもよい。また、高圧の不活性ガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。さらに、気泡核を成長させる際の加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。さらにまた、発泡に供する未発泡樹脂成形体(未発泡成形物)は、シート状の物に限らず、用途に応じて種々の形状(例えば、角柱状など)のものを使用することができる。また、発泡に供する未発泡樹脂成形体は、押出成形、プレス成形、射出成形以外に、他の成形方法により作製することもできる。
【0056】
一方、連続方式でポリエステル系エラストマー発泡体を製造する場合は、例えば、ポリエステル系エラストマー組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混錬しながら、高圧の不活性ガス(二酸化炭素など)を注入(導入)し、十分に高圧の不活性ガスをポリエステル系熱可塑性樹脂中に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイスなどを通してポリエステル系エラストマー組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により製造することができる。また、場合によっては(必要に応じて)、加熱することによって気泡を成長させる加熱工程を設けてもよい。このようにして気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化することにより、ポリエステル系エラストマー発泡体を得ることができる。なお、上記混練含浸工程及び成形減圧工程では、押出機のほか、射出成形機などを用いて行うこともできる。また、シート状、角柱状、その他の任意の形状のポリエステル系エラストマー発泡体を得られる方法を適宜選択すればよい。
【0057】
高圧の不活性ガスの混合量は特に制限されないが、例えば、ポリエステル系エラストマー組成物全量に対して2〜10重量%程度である。所望の密度や発泡倍率が得られるように、適宜調節して混合すればよい。
【0058】
バッチ方式におけるガス含浸工程や連続方式における混練含浸工程で、高圧の不活性ガスを未発泡樹脂成形体やポリエステル系エラストマー組成物に含浸させるときの圧力は、不活性ガスの種類や操作性等を考慮して適宜選択できるが、例えば、不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、3MPa以上(例えば、3〜100MPa程度)、好ましくは4MPa以上(例えば、4〜100MPa程度)とするのがよい。不活性ガスの圧力が3MPaより低い場合には、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎ、例えば、防音効果が低下するなどの不都合が生じやすくなり、好ましくない。これは、圧力が低いと不活性ガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、3MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0059】
また、バッチ方式におけるガス含浸工程や連続方式における混練含浸工程で、高圧の不活性ガスを未発泡樹脂成形体やポリエステル系エラストマー組成物に含浸させるときの温度は、用いる高圧の不活性ガスやポリエステル系エラストマー組成物の組成等によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、例えば、10〜350℃程度である。例えば、バッチ方式において、シート状の未発泡樹脂成形体に高圧の不活性ガスを含浸させる場合の含浸温度は、10〜250℃(好ましくは40〜220℃)程度である。また、連続方式において、ポリエステル系エラストマー組成物に高圧の不活性ガスを注入し混練する際の温度は、60〜350℃程度が一般的である。なお、高圧の不活性ガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度(含浸温度)は32℃以上(特に40℃以上)であることが好ましい。
【0060】
なお、前記減圧工程において、減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜300MPa/s程度である。また、前記加熱工程における加熱温度は、例えば、40〜250℃(好ましくは60〜250℃)程度である。
【0061】
また、このようなポリエステル系エラストマー発泡体の製造方法によれば、高発泡倍率のポリエステル系エラストマー発泡体を製造することができるので、厚いポリエステル系エラストマー発泡体を製造することが出来るという利点を有する。例えば、連続方式でポリエステル系エラストマー発泡体を製造する場合、混練含浸工程において押出し機内部での圧力を保持するためには、押出し機先端に取り付けるダイスのギャップを出来るだけ狭く(通常0.1〜1.0mm)する必要がある。従って、厚いポリエステル系エラストマー発泡体を得るためには、狭いギャップを通して押出されたポリエステル系エラストマー組成物を高い倍率で発泡させなければならないが、従来は、高い発泡倍率が得られないことから、形成される発泡体の厚みは薄いもの(例えば0.5〜2.0mm程度)に限定されてしまっていた。これに対して、高圧の不活性ガスを用いて製造されるポリエステル系エラストマー発泡体は、最終的な厚みで0.50〜5.00mmの発泡体を連続して得ることが可能である。特に、本発明のポリエステル系エラストマー発泡体は、最終的な厚みで0.50〜5.00mm(好ましくは、0.6〜4.00mm)の発泡体であることが好ましい。なお、このような厚みを有するポリエステル系エラストマー発泡体を得るためには、ポリエステル系エラストマー発泡体の相対密度(発泡後の密度/未発泡状態での密度)が0.02〜0.2(好ましくは0.03〜0.15)であることが望ましい。前記相対密度が0.2を超えると発泡が不十分であり、また0.02未満では発泡体の強度が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0062】
本発明では、ポリエステル系エラストマー発泡体の密度(見掛け密度)は、上記のような厚みを持つポリエステル系エラストマー発泡体を得るために、0.03〜0.15g/cm3(好ましくは0.04〜0.12g/cm3)であることが好ましい。ポリエステル系エラストマー発泡体の密度が0.15g/cm3を超えると、発泡が不十分となり、一方、0.03g/cm3未満であると、ポリエステル系エラストマー発泡体の強度が著しく低下する場合があり、好ましくない。つまり、本発明では、ポリエステル系エラストマー発泡体の密度が0.03〜0.15g/cm3であれば良好な発泡特性(高い発泡倍率)が得られるため、ポリエステル系エラストマー発泡体において、適度な強度と柔軟性をもち、優れたクッション性が得られる。
【0063】
なお、ポリエステル系エラストマー発泡体の密度(見掛け密度)は、以下のように算出する。ポリエステル系エラストマー発泡体を100mm×100mmサイズに打ち抜き、試験片とし、試験片の寸法をノギスで測定する。次に、試験片の重量を電子天秤にて測定する。そして、次式により算出する。
密度(g/cm3)=試験片の質量/試験片の体積
【0064】
なお、このようなポリエステル系エラストマー発泡体において、気泡構造としては、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造であり、その割合は特に制限されない)が好ましく、特に、ポリエステル系エラストマー発泡体中に独立気泡構造部が80%以上(なかでも90%以上)となっている気泡構造が好適である。
【0065】
本発明では、ポリエステル系エラストマー発泡体の圧縮残留歪は、15%以下(例えば、0.1〜15%)、好ましくは10%以下(例えば、0.1〜10%)であることが好ましい。圧縮残留歪の値を小さくすると、優れた形状固定性が得られるため、気泡構造が変形・収縮しにくくなる。従って、ポリエステル系エラストマー発泡体において、圧縮残留歪の値を小さくすると、優れた加工性を容易に得ることができる。
【0066】
なお、ポリエステル系エラストマー発泡体の圧縮残留歪は、以下のように算出する。ポリエステル系エラストマー発泡体を打抜き、試験片(厚さ:5〜25mm、長さ:25〜50mm、幅:25〜50mm)とし、この試験片の厚さを正確に測定する。この時の値を、最初の試験片の厚みaとする。なお、試験片の厚さが5mmに満たない場合は、試験片は重ね合わせて用いられる。次に、この試験片を所定の治具を用いて、上下から2枚の圧縮板(アルミ板)で挟んで厚さが50%となるまで圧縮する。この圧縮状態を維持したまま、80℃雰囲気下、24時間保管する。24時間経過後、圧縮状態を維持したまま常温に戻す。そして、常温に戻ってから圧縮状態を解き、30分間常温に放置し、この試験片の厚さを正確に測定する。この時の値を、50%圧縮状態解放後の試験片の厚みbとする。これらの値より、次式を用いて、ポリエステル系エラストマー発泡体の圧縮残留歪(%)を算出する。なお、いずれも温度が23±2℃、相対湿度が50±5%の環境下で測定する。
圧縮残留歪(%)=(a−b)/a×100
【0067】
上記のポリエステル系エラストマー発泡体の厚み(最終的な厚み)、ポリエステル系エラストマー発泡体の密度(見掛け密度)、相対密度、圧縮残留歪などは、用いる不活性ガス、ポリエステル系エラストマーがハードセグメントとソフトセグメントとのブロック共重合体である場合におけるハードセグメントとソフトセグメントとの割合やその成分など、ポリエステル系熱可塑性樹脂やゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分などの種類に応じて、例えば、ガス含浸工程や混練含浸工程における温度、圧力、時間などの操作条件、減圧工程や成形減圧工程における減圧速度、温度、圧力などの操作条件、減圧後又は成形減圧後の加熱工程における加熱温度などを適宜選択、設定することにより調整することができる。
【0068】
本発明のポリエステル系エラストマー発泡体の形状は、特に制限されず、用途などに応じて適宜選択することができる。例えば、シート状、角柱状、異形状などの形状を選択することができる。
【0069】
本発明のポリエステル系エラストマー発泡体は、上記構成を有するため、優れたクッション性、及び優れた加工性、特に打抜加工時の細幅・薄層加工性を有する。このため、本発明のポリエステル系エラストマー発泡体には、打抜加工(特に、細幅・薄層の打抜加工)を容易に施すことができる。そして、加工の際に、必要な厚さや形状を有しない不良加工品を生じることはなく、加工が施されたポリエステル系エラストマー発泡体において、必要な厚さや形状を維持することができる。
【0070】
本発明のポリエステル系エラストマー発泡体は、上記特性(優れたクッション性、及び優れた加工性)を有するため、電気・電子機器等のシール材として、用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
ハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルとのブロック共重合体[商品名「ハイトレル5577」:東レ・デュポン社製](230℃のメルトフローレート:1.8g/10min)を、ローラ型の羽根を設けた混錬機[商品名「ラボプラストミル」:東洋精機株式会社製]により、230℃の温度で混錬した後、240℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ1mmのシート状に成形して未発泡ポリエステル系エラストマー成形体(密度:1.19g/cm3)を得た。
この未発泡ポリエステル系エラストマー成形体を耐圧容器にいれ、198℃の雰囲気下、15MPaの加圧下で、15分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。15分後、急激に減圧することにより、厚さが2.6mmであるポリエステル系エラストマー発泡体を得た。
【0073】
(実施例2)
ハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルとのブロック共重合体[商品名「ハイトレル4777」:東レ・デュポン社製](220℃のメルトフローレート:1.5g/10min)を、ローラ型の羽根を設けた混錬機[商品名「ラボプラストミル」:東洋精機株式会社製]により、220℃の温度で混錬した後、230℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ1mmのシート状に成形して未発泡ポリエステル系エラストマー成形体(密度:1.15g/cm3)を得た。
この未発泡ポリエステル系エラストマー成形体を耐圧容器にいれ、189℃の雰囲気下、15MPaの加圧下で、15分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。15分後、急激に減圧することにより、厚さが2.3mmであるポリエステル系エラストマー発泡体を得た。
【0074】
(実施例3)
ハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルとのブロック共重合体[商品名「ハイトレル5577」:東レ・デュポン社製](230℃のメルトフローレート:1.8g/10min):100重量部、アクリル系滑剤(商品名「メタブレンL−1000」:三菱レイヨン株式会社製):5重量部、ポリオレフィン系エラストマー(商品名「ニューストレンSH9000」:日本ポリプロ株式会社製):1重量部、水酸化マグネシウム(平均粒径:0.7μm):1重量部を二軸混錬機により、220℃の温度で混錬した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、240℃の雰囲気中、17(注入後13)MPa/cm2の圧力で二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、厚さが2.5mmであるポリエステル系エラストマー発泡体を得た。
【0075】
(実施例4)
ハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルとのブロック共重合体[商品名「ハイトレル5577」:東レ・デュポン社製](230℃のメルトフローレート:1.8g/10min):100重量部、アクリル系滑剤(商品名「メタブレンL−1000」:三菱レイヨン株式会社製):5重量部、ポリオレフィン系エラストマー(商品名「ニューストレンSH9000」:日本ポリプロ株式会社製):1重量部、水酸化マグネシウム(平均粒径:0.7μm):1重量部、カーボンブラック(商品名「旭#35」:旭カーボン社製):5重量部、エポキシ系架橋剤(3官能エポキシ化合物、商品名「TEPIC−G」:日産化学工業株式会社製):0.5重量部を二軸混錬機により、220℃の温度で混錬した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、240℃の雰囲気中、17(注入後13)MPa/cm2の圧力で二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、厚さが2.2mmであるポリエステル系エラストマー発泡体を得た。
【0076】
(実施例5)
ハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルとのブロック共重合体[商品名「ハイトレル5577」:東レ・デュポン社製](230℃のメルトフローレート:1.8g/10min):100重量部、アクリル系滑剤(商品名「メタブレンL−1000」:三菱レイヨン株式会社製):10重量部、ポリオレフィン系エラストマー(商品名「ニューストレンSH9000」:日本ポリプロ株式会社製):10重量部、水酸化マグネシウム(平均粒径:0.7μm):1重量部、カーボンブラック(商品名「旭#35」:旭カーボン社製):5重量部、エポキシ系架橋剤(2官能エポキシ化合物、商品名「デナコールEX−711」:ナガセケムテックス株式会社製):1.33重量部を二軸混錬機により、220℃の温度で混錬した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、240℃の雰囲気中、17(注入後13)MPa/cm2の圧力で二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、厚さが2.1mmであるポリエステル系エラストマー発泡体を得た。
【0077】
(実施例6)
ハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルとのブロック共重合体[商品名「ハイトレル5577」:東レ・デュポン社製](230℃のメルトフローレート:1.8g/10min):100重量部、アクリル系滑剤(商品名「メタブレンL−1000」:三菱レイヨン株式会社製):5重量部、ポリオレフィン系エラストマー(商品名「ニューストレンSH9000」:日本ポリプロ株式会社製):1重量部、水酸化マグネシウム(平均粒径:0.7μm):1重量部、カーボンブラック(商品名「旭#35」:旭カーボン社製):5重量部、エポキシ系架橋剤(3官能エポキシ化合物、商品名「TEPIC−G」:日産化学工業株式会社製):0.5重量部、エポキシ系架橋剤(2官能エポキシ化合物、商品名「デナコールEX−711」:ナガセケムテックス株式会社製):0.67重量部を二軸混錬機により、220℃の温度で混錬した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、240℃の雰囲気中、17(注入後13)MPa/cm2の圧力で二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、厚さが2.3mmであるポリエステル系エラストマー発泡体を得た。
【0078】
(比較例1)
ハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルとのブロック共重合体[商品名「ハイトレル3046」:東レ・デュポン社製](190℃のメルトフローレート:10g/10min)を、ローラ型の羽根を設けた混錬機[商品名「ラボプラストミル」:東洋精機株式会社製]により、180℃の温度で混錬した後、190℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ1mmのシート状に成形して未発泡ポリエステル系エラストマー成形体(密度:1.07g/cm3)を得た。
この未発泡ポリエステル系エラストマー成形体を耐圧容器にいれ、155℃の雰囲気下、15MPaの加圧下で、15分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。15分後、急激に減圧することにより、厚さが1.5mmであるポリエステル系エラストマー発泡体を得た。
【0079】
(比較例2)
熱可塑性ポリプロピレン(230℃のメルトフローレート:4g/10min):50重量部と、エチレンプロピレン系エラストマー:50重量部(JIS−A硬度:69)から構成される組成物を、ローラ型の羽根を設けた混錬機[商品名「ラボプラストミル」:東洋精機株式会社製]により、190℃の温度で混錬した後、200℃に加熱した熱板プレスを用いて厚さ1mmのシート状に成形して、未発泡成形体(密度:0.90g/cm)を得た。
この未発泡成形体を耐圧容器にいれ、156℃の雰囲気下、15MPaの加圧下で、15分間保持することにより、二酸化炭素を含浸させた。15分後、急激に減圧することにより、厚さが2.8mmである発泡体を得た。
【0080】
(比較例3)
ハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルとのブロック共重合体[商品名「ハイトレル5577」:東レ・デュポン社製](230℃のメルトフローレート:1.8g/10min):100重量部、アクリル系滑剤(商品名「メタブレンL−1000」:三菱レイヨン株式会社製):5重量部、ポリオレフィン系エラストマー(商品名「ニューストレンSH9000」:日本ポリプロ株式会社製):1重量部、水酸化マグネシウム(平均粒径:0.7μm):1重量部、カーボンブラック(商品名「旭#35」:旭カーボン社製):5重量部を二軸混錬機により、220℃の温度で混錬した後、ストランド状に押出し、水冷後ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、240℃の雰囲気中、17(注入後13)MPa/cm2の圧力で二酸化炭素ガスを注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させた後、発泡に適した温度まで冷却後、ダイから押出して、厚さが2.4mmであるポリエステル系エラストマー発泡体を得た。
【0081】
(評価)
実施例及び比較例について、下記の(融点の測定方法)及び(溶融張力の測定方法)により、融点及び溶融張力を測定した。測定結果は、それぞれ、表1の「融点(℃)」、「溶融張力(cN)」の欄に示した。
また、下記の(密度の測定方法)及び(圧縮残留歪の測定方法)により、それぞれの発泡体の密度(見掛け密度)及び圧縮残留歪を測定した。測定結果は、それぞれ、表1の「発泡体の密度(g/cm3)」、「圧縮残留歪(%)」の欄に示した。
さらに、それぞれの発泡体について、下記の(加工性の評価方法)により加工性を評価した。その結果を表1の「加工性」の欄に示した。
さらにまた、下記の(成形性の評価方法)により成形性を評価した。その結果を表1の「成形性」の欄に示した。
【0082】
(融点の測定方法)
実施例及び比較例の融点は、それぞれの発泡体の形成に用いられる未発泡ポリエステル系エラストマー成形体(実施例1〜2、比較例1)やペレット(実施例3〜6、比較例2〜3)の融点を測定することにより求めた。
融点の測定には、示差熱分析計[「DSC200」:エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製]を用いた。
測定サンプルを20℃から260℃まで昇温速度10℃/minの割合で昇温させ、260℃に昇温後に測定サンプルを急冷した。そして、再び測定サンプルを20℃から260℃まで昇温速度10℃/minの割合で昇温させ、この昇温過程での吸熱ピーク値を融点とした。
【0083】
(溶融張力の測定方法)
実施例及び比較例の溶融張力は、それぞれの発泡体の形成に用いられる成形前の未発泡ポリエステル系エラストマー成形体(実施例1〜2、比較例1)や混錬後のペレット(実施例3〜6、比較例2〜3)の溶融張力を測定することにより求めた。
溶融張力の測定には、ROSAND社製のCapillary Extrusion Rheometerを用い、キャピラリーダイサイズ:φ2mm、L/D=10mmのキャピラリーから上方より荷重をかけて8.8mm/minの一定速度でストランド状に押し出し、該押し出し物を張力検出プーリーを通過させて送りロールに巻き取る。この際に、巻き取り速度を徐々に上げていき、該押し出し物が切断するまで速度を上げる。そして、一般的には、切断直前の張力を溶融張力とするが、本発明では、引き取り速度2m/minの時の張力を溶融張力とした。
【表1】

【0084】
(密度の測定方法)
発泡体の密度(見掛け密度)は、以下のように算出した。それぞれの実施例及び比較例の発泡体を100mm×100mmサイズに打ち抜き、試験片とし、試験片の寸法をノギスで測定した。次に、試験片の重量を電子天秤にて測定した。そして、次式により算出した。
密度(g/cm3)=試験片の質量/試験片の体積
【0085】
(圧縮残留歪の測定方法)
発泡体の圧縮残留歪は、以下のように算出した。それぞれの実施例及び比較例の発泡体を、一辺の長さが30mmの正方形に切断し、試験片とし、この試験片の厚さを正確に測定した。この時の値を、最初の試験片の厚みaした。次に、この試験片を所定の治具を用いて、上下から2枚の圧縮板(アルミ板)で挟んで厚さが50%となるまで圧縮し、この圧縮状態を維持したまま、24時間保管した。24時間経過後、圧縮状態を解き、30分間放置し、この試験片の厚さを正確に測定した。この時の値を、50%圧縮状態解放後の試験片の厚みbとした。これらの値より、次式を用いて、それぞれの実施例及び比較例の発泡体の圧縮残留歪(%)を算出した。なお、いずれも温度:23℃、湿度:50%の雰囲気下で行った。
圧縮残留歪(%)=(a−b)/a×100
【0086】
(加工性の評価方法)
それぞれの実施例及び比較例の発泡体を、ポリプロピレン板上で、加工刃[商品名「NCA07」(厚さ:0.7mm、刃先角度:30°):株式会社ナカヤマ製]2枚に0.3mmのスペーサーを挟み込み固定したもの用いて、打抜加工を施した。打抜加工後、それぞれの加工後の発泡体を目視で観察し、下記の評価基準により、加工性を評価した。
加工性の評価基準
○(加工性良好):加工後の発泡体において、気泡構造を維持している(発泡体を打ち抜いた際、発泡体のつぶれが小さい)。
×(加工性不良):加工後の発泡体において、気泡構造を維持していない(発泡体を打ち抜いた際、発泡体のつぶれが大きい)。
【0087】
(成形性の評価方法)
それぞれの実施例及び比較例の発泡体の外観を、目視で観察することにより、成形性を評価した。
成形性の評価基準
○(成形性良好):シワや気泡の発生が確認されず、外観が良好である。
×(成形性不良):シワや気泡の発生が確認され、外観が不良である。
【0088】
【表2】

なお、比較例1の発泡体は、発泡が不十分であったため、圧縮残留歪は測定しなかった。
【0089】
実施例では、ポリエステル系エラストマーが発泡する際、高い発泡倍率で発泡し、また、発泡後のポリエステル系エラストマー発泡体で著しく収縮することはないことが確認された。
また、実施例のポリエステル系エラストマー発泡体は、打抜加工の際に不良加工品を生ずることはなく、優れた加工性を有することが確認された。さらに、実施例のポリエステル系エラストマー発泡体は、作製の際にシワや気泡の発生が生ずることはなく、優れた成形性により良好な外観を有することが確認された。
比較例3は、実施例3において黒色着色を目的にカーボンブラックをさらに配合したものであり、実施例3と比較して溶融張力が低下していた(表1参照)。
実施例4は、比較例3においてエポキシ系架橋剤をさらに配合したものであり、比較例3と比較して溶融張力が向上していた(表1参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.03〜0.15g/cm3であるポリエステル系エラストマー発泡体であって、融点が190〜220℃のポリエステル系エラストマーを含み、該ポリエステル系エラストマーの融点から高温側10±2℃の温度で測定した溶融張力が10〜25cNであるポリエステル系エラストマー組成物を発泡させることにより形成されることを特徴とするポリエステル系エラストマー発泡体。
【請求項2】
融点が190〜220℃のポリエステル系エラストマーとエポキシ系架橋剤とを含むポリエステル系エラストマー組成物を発泡させることにより形成される請求項1記載のポリエステル系エラストマー発泡体。
【請求項3】
圧縮残留歪が15%以下である請求項1又は2記載のポリエステル系エラストマー発泡体。
【請求項4】
発泡剤として超臨界状態の不活性ガスを用いて形成された請求項1〜3何れかの項に記載のポリエステル系エラストマー発泡体。
【請求項5】
請求項1〜4何れかの項に記載のポリエステル系エラストマー発泡体で構成されている電気・電子機器用シール材。

【公開番号】特開2008−45120(P2008−45120A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187645(P2007−187645)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】