説明

ポリエステル系繊維構造物

【課題】優れたストレッチ性と柔軟な風合いを有するとともに、吸水性、撥水性、防汚性を有する繊維構造物を提供するものである。
【解決手段】
ポリエステル系繊維表面の、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められる原子数比O1S/C1SおよびN1S/C1Sの値が、繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部での値に比べて0.02以上増加していることを特徴とするポリエステル系繊維構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度なストレッチ性と柔軟な風合いを有し、かつ優れた吸水性、撥水性、防汚性に優れたポリエステル系繊維構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系繊維は、優れた物理的および化学的特性を有しているため、衣料用途や産業用途などに幅広く利用されている。ポリエステル系繊維構造物により優れたストレッチ性を付与する手段として、例えば、繊維に仮撚加工を施す方法が一般的に行われているが、従来からのストレッチ性の範囲にとどまるものである。また、例えば、特公昭44−2504号公報や特開平4−308271号公報には固有粘度差あるいは極限粘度差を有するポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)のサイドバイサイド型複合糸、特開平5−295634号公報にはPETとそれより高収縮性の共重合PETのサイドバイサイド型複合糸が記載されている。このようなサイドバイサイド型複合繊維を用いれば、ストレッチ性が向上するが、未だ不充分であった。
【0003】
一方、ポリエステル系繊維に吸水、防汚性を付与する方法として、特開平11−302977号公報で示されるように親水性樹脂を繊維表面に付着させる方法が提案されているが、樹脂によって風合いが硬くなり、ストレッチ性が低下し、風合いが損なわれるという欠点があった。
【0004】
また、ポリエステル系繊維を改質処理することによって表面を親水化する方法は特公昭60−34979号公報で示されるように、アクリル酸やメタクリル酸をグラフト重合させたり、特公昭58−46589号公報に示されるように、ラジカル重合可能な親水性モノマーをポリエステル繊維上で重合させる方法が提案されているが、これらの方法は性能が不十分であったり、風合いが硬くなり、ストレッチ性が損なわれるという欠点があった。また、化学薬品類を多量に使用するため、加工工程や製品そのものを廃棄したときに自然環境への負荷が大きいという欠点があった。これらを解決すべく、化学薬品類を使用せずに風合いを変化させることなく、ポリエステル系繊維を改質処理する方法として、特開昭58−8182号公報にプラズマ処理による改質方法が示されているが、さらなる性能向上が望まれている。
【0005】
一方、ポリトリメチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント糸からなる繊維構造物は、PETよりも優れたストレッチ性や柔軟な風合いを有するため、上記プラズマ処理による改質方法をポリトリメチレンテレフタレートに適用することが考えられる。しかし、ポリトリメチレンテレフタレートはPETよりメチル基が多いため、活性点が多く存在し、そのためPETと同様に処理しても過改質されてしまい、ポリトリメチレンテレフタレートの特徴であるストレッチ性が損なわれてしまうという問題があった。すなわち、ストレッチ性と柔軟な風合いを有し、かつ優れた吸水性と防汚性、もしくは撥水性と防汚性に優れたポリエステル系繊維はこれまで実現していない。
【特許文献1】特公昭44−2504号公報
【特許文献2】特開平4−308271号公報
【特許文献3】特開平5−295634号公報
【特許文献4】特開平11−302977号公報
【特許文献5】特公昭60−34979号公報
【特許文献6】特公昭58−46589号公報
【特許文献7】特開昭58−8182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決し、優れたストレッチ性と柔軟な風合いを有するとともに、吸水性、撥水性、防汚性を有する繊維構造物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の繊維構造物は、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とするポリエステル系繊維表面に、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められる原子数比O1S/C1SおよびN1S/C1Sの値が、繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部の値に比べて0.02以上増加していることを特徴とするものであり、またポリエステル系繊維表面に、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められる原子数比F1S/C1Sの値が、繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部の値に比べて0.02以上増加して撥水・防汚性が付与されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、かかるポリエステル系繊維の製造法は、非重合性ガスの雰囲気下で、放電処理および紫外線処理から選ばれた少なくとも1種の処理を施すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れたストレッチ性と柔軟な風合い、吸水性、撥水性、防汚性を有する繊維構造物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明においてポリエステル系繊維は、ポリエステル系合成繊維なら特に限定されないが、風合いやストレッチ性からポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略記する)を主体とする繊維が好ましく、PTTのサイドバイサイド繊維(少なくとも一方の成分がPTTであるサイドバイサイド繊維)であることがより好ましいPTT。PTT繊維は、代表的なポリエステル繊維であるPET(ポリエチレンテレフタレート)やポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記する)繊維と同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性が極めて優れている。
【0011】
本発明のPTTとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、20モル%、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
本発明に使用されるポリエステル系繊維の単繊維繊度は、0.1〜11デシテックスが好ましく、より好ましくは1.1〜10デシテックスである。総繊度は11〜550デシテックスのフィラメント糸条から構成されることが好ましい。単繊維繊度を0.1以上、11デシテックス以下とすることで、繊維構造物の風合いをソフトなものとし、良好なストレッチ性を得ることができる。
【0013】
本発明のポリエステル系繊維は、サイドバイサイド型の複合繊維であることが好ましい。サイドバイサイド型の複合繊維は、固有粘度や共重合成分、共重合率等が異なる重合体を貼り合わせ、それらの弾性回復特性や収縮特性の差によって、捲縮を発現するものである。好ましくは、サイドバイサイド型の一方を高収縮成分であるPTTとする。もう一方の低収縮成分には高収縮成分であるPTTとの界面接着性が良好で、製糸性が安定している繊維形成性ポリエステルであれば特に限定されるものではないが、力学的特性、化学的特性およびコスト面を考慮すると、繊維形成能のあるPETが好ましい。
【0014】
また、両成分の複合比率は、製糸性および高ストレッチ性を得るために、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲が好ましく、65:35〜45:55の範囲がより好ましい。
【0015】
高ストレッチ性の繊維構造物を得るためには、ポリエステル系繊維の収縮応力が高いことが好ましい。繊維構造物の熱処理工程で捲縮発現性を高めるには、収縮応力の極大を示す温度は110℃以上、応力の極大値は0.25cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは応力の極大値は0.28cN/dtex以上、更に好ましくは0.30cN/dtex以上である。また、シボの抑制という点では、0.50cN/dtex以下とすることが好ましい。
【0016】
また、本発明のポリエステル系繊維は、荷重下捲縮発現伸長率が15%以上であることが好ましい。従来は、特開平6−322661号公報等に記載されているように、潜在捲縮発現性のポリエステル繊維を荷重フリーに近い状態で熱処理し、そこでの捲縮特性を規定していたが、これでは繊維構造物中での拘束下での捲縮特性を必ずしも反映しているとは言えない。そこで本発明者らは、拘束下での捲縮発現能力が重要であることに着目し、実施例中の「測定方法」に示すような方法で熱処理を行う荷重下捲縮発現伸長率を定義した。
【0017】
この荷重下捲縮発現伸長率が高いほど捲縮発現能力が高いことを示しており、15%以上であれば本発明の目的とする高いストレッチ特性を繊維構造物に与えることができる。捲縮伸長率は、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である。
【0018】
また、ポリエステル系繊維の単繊維繊度については直径1μm以上であればよく、特に上限はないが100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、扁平断面、ダルマ型断面、C型断面、M型断面、H型断面、X型断面、W型断面、I型断面、+型断面、その他公知の異形断面であってもよく、何等限定されるものではないが、捲縮発現性と風合いのバランスからは、丸断面の半円状サイドバイサイド、軽量性、保温性を狙う場合は、中空サイドバイサイド、ドライ風合いを狙う場合は、三角断面サイドバイサイドが好ましく用いられる。
【0019】
0.5μmより小さい部分と0.5μmより大きな部分からなる異形断面の場合は、0.5μmより小さい部分もしくは0.5μmより大きな部分の表面のO1S/C1SおよびN1S/C1Sで表される原子数比のどちらか一方が0.5μmより大きな部分における表面から0.5μmの深さの値に対して0.02以上増加していることが望ましい。さらに、最も深い部分が0.5μm以下である繊維の場合は、処理後の表面のO1S/C1SおよびN1S/C1Sで表される原子数比が未処理に比べて0.02以上増加していることが望ましい。
【0020】
本発明のポリエステル系繊維は、その繊維表面付近のポリマーの分子鎖に、酸素含有官能基(エステル結合以外の酸素含有官能基)および/または窒素含有官能基が結合されており、具体的には、繊維表面のX線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められる原子数比O1S/C1SおよびN1S/C1Sの合計値が、繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部での原子数比O1S/C1SおよびN1S/C1Sの合計値に比べて0.02以上増加しているものである。また、本発明のポリエステル系繊維は、その繊維表面付近のポリマー分子鎖にフッ素含有官能基が結合されており、具体的には、繊維表面のX線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められる原子数比F1S/C1Sが、繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部での原子数比F1S/C1Sに比べて0.02以上増加しているものである。すなわち、分子鎖に酸素含有官能基、窒素含有官能基、フッ素含有官能基が結合したポリマーが繊維表面に偏在し、繊維内部よりも繊維表面の方に多く存在するものである。該原子数の増加が0.02より小さいと目的とする吸水性、撥水性、防汚性が得にくい場合がある。なお、該原子数比の増加は好ましくは0.03以上である。
【0021】
高分子の表面分析においてESCAは非常に有効であり、光電子の平均自由工程(数十〜数百nm)の範囲の極めて表面近傍を分析することが出来る。すなわち、本発明において繊維表面とは、繊維の表面から数十〜数百nmまでの付近をいう。
ESCAにて試料を分析して原子数比O1S/C1S、N1S/C1SおよびF1S/C1Sを測定する場合、まず始めにSurvey−scanを行い、試料に含まれる元素の種類を同定する。次に注目した元素の高分解内殻電子スペクトルを測定して、殻元素のシグナル強度比を決定する。この値とすでに各スペクトロメーターについて求められている各元素の相対感度から元素組成を決める。内殻電子スペクトルを化学シフトやグループシフトの値を参考にしながら解析して、原子の化学結合状態に関する情報を得る。そして、予想される官能基に相当する波形を組み合わせて波形解析を行い、各官能基の相対存在比を決定する。試料とX線源の角度を変えて測定するなどして、試料表面から深さ方向の元素組成変化(depth−profiling)に関する情報を得る。また、加速されたアルゴンイオンやガリウムイオンを試料表面に照射することによってスパッタエッチングし、このスパッタエッチングとESCA分析を繰り返すことによってもdepth−profilingを行うことができる。これにより、繊維表面のみならず、表面から0.5μm以上の深部の原糸数比を求めることができる。なお、表面の原子数比の増加について、全ての箇所において0.02以上増加していれば望ましいが、本発明においては3カ所の平均が0.02以上であればよい。
【0022】
本発明でいう繊維構造物とは、布帛はもちろん、帯状物、紐状物、糸状物など、その構造、形状はいかなるものであってもさしつかえない。ストレッチ性を活かすという点から、好ましくは織物、編地などの布帛である。
【0023】
本発明の繊維構造物が織物の場合、PTTを主体とするポリエステル系繊維のマルチフィラメント糸を経糸および緯糸の少なくとも一方に使用することが適度なストレッチ性を得るために好ましい。さらに、該ポリエステル系繊維が前述したサイドバイサイド型複合繊維であることが好ましい。
【0024】
織物に用いる該ポリエステル系繊維は、下記式で示す撚係数Kが3000〜15000で加撚することが好ましい。
T=K×[1/D1/2
T:1m当たりの撚数、D:糸条の繊度(dtex)×0.9
上記条件で加撚を施すことにより、織物にした際のシボの発生など、表面品位の低下を防ぎやすくすることができる。
【0025】
撚係数Kは、3000未満であると、シボを抑制することが困難となる傾向がある。撚係数Kが15000を超えると、目的とするストレッチ性が減少する。
【0026】
また、織密度が小さく織物組織の交錯点が少ない場合には、撚係数Kは上記範囲内で小さい方が好ましく、織密度が大きく交錯点が多い場合には撚係数Kは上記範囲内で大きい方が好ましい。例えば朱子織物のように交錯点の少ない組織においては、撚係数Kは3000〜5000が好ましい。また、平織物のように交錯点の多い組織においては好ましくは撚係数5000以上、より好ましくは8000以上である。また、充分なストレッチ性を得るためには、撚係数Kは13000以下が好ましい。
【0027】
また、撚糸方法は特に制限するものではなく、公知の技術で実施できる。また撚糸後、撚止めセットを実施しても良いが、セット温度は捲縮発現や製織に問題無い程度の低温が望ましい。製織する織機は、特に制限するものではなく、ウォータージェットルーム、エアージェットルーム、レピアルームなどを用いることができる。
【0028】
本発明のポリエステル系織物は、経緯の少なくとも一方について、織物伸長率が15%以上であることが好ましい。織物伸長率とは、実施例中の「測定方法」にて定義されるストレッチ性のパラメータである。織物伸長率が15%未満である場合には、人体の運動時の伸縮に追随できず、満足のいく着心地のものが得られない。
【0029】
本発明の繊維構造物が編地の場合、編地の構成糸に対する本発明のポリエステル系繊維の混率は、10%以上が好ましく、20%以上が好ましく、30%以上が更に好ましい。この混率が10%未満の場合は、後述する編地のタテ・ヨコ方向の平均伸長率、及び平均伸長回復率が小さくなり、充分なストレッチ性を得ることができない。該ポリエステル系繊維の編地への混用方法としては、他の素材との通常の交編、交撚、引き揃え、カバーリング、混繊等を採用することができ、用途、編地形成法、編組織等に応じて適宜使い分ければよい。また、編地の場合においても、サイドバイサイド型複合繊維を使用することが好ましい。
【0030】
他の素材としては、合成繊維であるポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリビニールアルコール系繊維、ポリ塩化ビニール系繊維、ポリウレタン系繊維もしくは半合成繊維であるアセテート系繊維もしくは再生繊維であるビスコース・レーヨン、キュプラを含むセルロース系繊維、牛乳蛋白繊維、大豆蛋白繊維を含む蛋白質系繊維、ポリ乳酸系繊維、もしくはこれらのフィラメント糸条使いや紡績糸使い、又は混紡糸使い、もしくは綿、麻を含む植物系天然繊維、もしくは羊毛、カシミヤ、絹を含む動物系天然繊維、または更にこれらの混紡糸使い等がある。
【0031】
また、本発明のポリエステル系編地は、従来のようにポリウレタン系弾性繊維を混用せずとも優れた伸長率および伸長回復率を得ることができることに特徴があるが、もちろん更に優れた編地の特性を得るために風合いや染色性等を損なわない範囲でポリウレタン系弾性繊維を混用してもよい。
【0032】
本発明のポリエステル系編地は、緯編地又は経編地からなる。緯編地としては、丸編地であるシングル丸編地やダブル丸編地、横編地、靴下編地、成型編地があり、各々の専用編機にて製編することができる。また、経編地としてはトリコット編地であるシングルトリコット編地やダブルトリコット編地、ラッシェル編地であるシングルラッシェル編地やダブルラッシェル編地、ミラニーズ編地である平型ミラニーズ編地や円形ミラニーズ編地があり、これらも各々の専用編機にて製編することができる。
【0033】
また、製編における編成条件は、通常糸使いの編成条件よりもループ長やランナー長を若干大きめに取り、編密度を粗くすることが好ましい。このことにより、
編地が染色加工工程を通過する際、その捲縮発現性が十分に発揮され、優れたストレッチ性とソフト感、ふくらみ感、風合いを得ることができる。
【0034】
本発明のポリエステル系編地は、タテ・ヨコ方向の平均伸長率が55%以上、タテ・ヨコ方向の平均伸長回復率が60%以上であることが好ましい。
【0035】
平均伸長率および平均伸長回復率は実施例に示す方法で測定することができるが、伸長率とは、織編地の伸びの程度を表すものであり、この数値が大きい程、ウエアにして着用した時、スポーツ等の激しい動きにも織編地が追従し易い。また、伸長回復率とは、身体の動きによって伸長した織編地が、素早く元の状態に戻ろうとする回復程度を表すものであり、この数値が大きい程、ウエアにして着用した時、よりフィット性に富み、動き易い。
【0036】
この伸長率と伸長回復率は織編地のタテ方向とヨコ方向の各々の数値を平均して考える必要がある。これは、ウエアにして実際に着用して動く場合、織編地のタテ方向あるいはヨコ方向の一方向のみ伸長されるわけではなく、人間の身体の丸みに応じて三次元的に伸長されるためである。この三次元的な伸長特性がタテ方向とヨコ方向の平均した伸長率である平均伸長率、及び、平均伸長回復率と相関し、よく一致するものである。
本発明のポリエステル系繊維構造物が織物の場合、平均伸長率は15%以上が好ましいが、20%以上がさらに好ましい。ポリエステル系繊維構造物が編地の場合、平均伸長率は55%以上が好ましいが、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。
【0037】
平均伸長回復率は、80%以上が好ましいが、70%以上でも良く、60%以上であれば身体の動きによって伸長されても十分素早く元の状態に回復される。しかし、60%未満であると身体の動きに追従しにくくなり、ウエアとしての見映えにも劣ることになる。
【0038】
次に本発明の繊維表面特性を付与するための方法について説明する。本発明の繊維表面特性を達成するためには、例えば、放電処理あるいは紫外線処理を採用することができる。
【0039】
本発明における放電処理とは、ガスに高電圧を印加することによって発生するプラズマ放電処理を意味するものであり、かかる放電には大気中で発生させる大気圧プラズマと、真空容器中で発生させる低圧プラズマがある。真空容器中で発生させる方法は、好ましくは20Torr以下、さらに好ましくは0.01〜10Torrの減圧下で高電圧を印加する。
【0040】
本発明の高電圧を印加する放電周波数は高周波、低周波、マイクロ波を用いることができ、また、直流も用いることができる。かかる高電圧印加用電源としてはパルス電源が好ましく使用される。
【0041】
本発明の放電処理ガス雰囲気に、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニアなどの非重合性ガスを単独で、あるいはそれらの二種以上の混合物を用いれば、酸素元素を含有する官能基や、窒素元素を含有する官能基がポリエステル分子鎖に形成されて、優れた吸水性、防汚性を付与することができ、またパーフルオロメタンやパーフルオロエタン等のフッ素系化合物の非重合性ガスを必須成分とするガスを用いればフッ素元素を含有する官能基が形成され、撥水性、防汚性の機能を付与することができる。本発明の放電処理ガス雰囲気に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の非重合性ガスや重合性ガスが混合していてもよい。処理装置としては、対向した電極を設置する。該電極の形状は平板状、棒状、ワイヤー状、ロール状、ナイフエッジ状などを使用でき、金属製または金属表面を誘電体で被覆したものを使用する。これらの電極を必要に応じて組み合わせて使用することができる。処理は、電極間の放電雰囲気部分に処理物を導入して直接処理方法か、放電部分の活性種を下流に流し、放電雰囲気に直接に曝さないで処理することができる。電極間の距離は、大気圧プラズマでは0.1〜1cmであり、好ましくは0.2〜0.4cmであり、低圧プラズマでは0.5〜8cm、好ましくは1〜4cmの範囲で用いれば均一な放電ができる。また、両電極は必要に応じて水などで冷却するのが好ましい。
【0042】
本発明の放電電力としては、放電電力を放電電極の面積で割った値で0.2〜25W/cmの範囲が好ましい。0.2W/cmより小さいと処理に時間がかかりすぎる傾向があり、25/cmを越えると放電が不安定になったり、熱により被処理物が損傷したりする傾向がある。処理時間は、数秒から数分の範囲で目的とする効果に応じて設定する。
【0043】
本発明における紫外線処理とは、大気中で取り出せる180〜400nmの波長領域の紫外線を照射する処理をいい、光源としては高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプなどを使用することができる。これらの中でもエネルギーレベルの高い183.9nmと253.7nmに波長に強いピークを有する低圧水銀ランプが好ましく使用される。低圧水銀ランプの場合、雰囲気の非重合性ガスとして酸素を含むものを使用すれば、オゾンが発生し、強い酸化作用により酸素元素を有する官能基を効率的に形成させることができる。かかる紫外線の照射強度は、照度が253nmの波長において好ましくは3mW/cm以上、好ましくは10mW/cm以上がよく、照射時間は数秒から数分であり、照度、時間は目的とする効果に応じて変更することができる。
【0044】
本発明の放電処理と紫外線処理を組み合わせて使用しても本発明の効果を達成することができる。
【0045】
本発明の非重合性ガス雰囲気での放電処理または紫外線処理によって繊維表面のポリエステル分子に直結して形成される官能基の表面濃度は、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められたO1S/C1S、N1S/C1Sで表される原子数比において、少なくとも一方が被改質部より0.02以上、好ましくは0.04以上増加しているものである。かかる官能基により脂肪族ポリエステル繊維の吸水性、防汚性が飛躍的に改善される。また、フッ素系ガスを含む雰囲気ではフッ素元素含有官能基が形成され、ESCAによる測定で求められる原子数比F1S/C1Sが0.02以上、好ましくは0.04以上増加しているものである。かかるフッ素含有官能基により高度な撥水性、防汚性が付与される。なお、前記放電処理や紫外線処理によって繊維表面に形成される官能基としては、−C=C−、−C−OH、−C=C−OH、CH−C=O、−C=O、−COOH、−NHなどが挙げられるが何ら限定されるものではない。
【0046】
本発明は、物理的処理により官能基を形成させて機能性を付与するので、ポリエステル系繊維のストレッチ性や風合いを阻害することはない。
【0047】
本発明の繊維構造物は、コート、セーター、ポロシャツ、Tシャツ、トレーニングパンツ、スラックス、下着、パンスト、靴下、裏地、芯地などの衣料用製品の部材として好適であり、ベッドカバー、枕カバー、カーテン、椅子貼り等の生活資材用製品などにも利用できる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。なお、実施例および比較例における測定値は、次の方法で得たものである。
【0049】
<織物伸長率>
JIS L 1096に示される伸長率A法(定速伸長法)で測定を行った。
【0050】
<収縮応力>
カネボウエンジニアリング(株)社製熱応力測定機で、昇温速度150℃/分で測定した。サンプルは10cm×2のループとし、初期張力は繊度(デシテックス)×0.9×(1/30)gfとした。
【0051】
<荷重下捲縮発現伸長率>
荷重下捲縮発現伸長率(%)=[(Lα−Lβ)/Lα]×100
Lα:繊維カセに0.9×10−2cN/dtexの荷重を吊した状態で沸騰水処理を15分間行い、風乾し、さらに160℃乾熱処理を15分間行った後、前記熱処理荷重を取り除き、180×10−3cN/dtexの荷重を吊した時のカセ長。
【0052】
Lβ:Lαを測定後、L0測定荷重を取り除いて再び0.9×10−3cN/dtexの荷重を吊した時のカセ長。
【0053】
<平均伸長率>
伸長率の試験法はJIS L 1018「メリヤス生地試験方法」の定速伸長法のグラブ法に準じて行った。すなわち、10cm×15cmの試験片をタテ、ヨコ方向にそれぞれ3枚ずつ採取した。自記記録装置付定速伸長形引張試験機を用い、上下つかみとも表側は2.54cm×2.54cm、裏側は2.54cm×5.08cmのものを取り付け、つかみ間隔を7.6cmとして試験片のたるみや、張力を除いてつかみに固定した。
【0054】
これを引張速度10cm/minで17.7N(1.8kg)荷重まで引伸ばし、その時のつかみ間隔を測った。次に荷重を徐々に取り除き、荷重ゼロ(0N)にまで戻し、そのときのつかみ間隔を測定した。初期つかみ間隔を伸び0mmとして、この荷重−除重による挙動を自記記録計に荷重−伸長−回復曲線として描いた(図1を参照)。
【0055】
これを基に、次の式により伸長率LA(%)を求め、3枚の平均値で表した。
伸長率LA(%)=[L1/L0]×100
L0:初期つかみ間隔(mm)=7.6cm
L1:17.7Nまで伸ばした時のL0(初期つかみ間隔)からの伸び(mm)
編地のタテ方向、ヨコ方向の各々についての伸長率を加算し、さらにその加算値を1/2にして平均伸長率とした。
【0056】
<平均伸長回復率>
また、伸長回復率LB(%)は、前記自記記録計で描いた荷重−伸長−回復曲線を基に、回復曲線がゼロ荷重になった時点のつかみ間隔を求め、次の式により伸長回復率LB(%)を算出し、3枚の平均値で表した。
伸長率回復率LB(%)=(L3/L1)×100
L3:L1−L2
L2:回復曲線がゼロ荷重になった時のL0(初期つかみ間隔)からの伸び(mm)
編地のタテ方向、ヨコ方向の各々についての伸長回復率を加算し、さらにその加算値を1/2にして平均伸長回復率とした。
【0057】
<改質処理>
(a)低圧プラズマ処理
放電電極に銅チューブをガラスで被覆したもの、アース電極にステンレス製ドラムを用い、放電周波数230KHz、放電電力6W/cm、真空度0.6Torrの窒素雰囲気下で10秒間の処理をした。
(b)大気圧プラズマ処理
放電電極にセラミックスを焼結したステンレス製平板、アース電極にステンレス平板を用い、放電周波数6KHz、放電電力7W/cmで空気中で10秒間処理した。
(c)紫外線処理
出力500Wの低圧水銀ランプで照度350mW/cm(253.7nm)で空気中で10秒間の処理を行った。
(d)低圧プラズマ処理(a)と同一の装置を用いて、放電周波数110KHz、放電電力5W/cm、真空度0.4Torrのパーフルオロメタン雰囲気下で10秒間の処理をした。
【0058】
<官能基の原子数比の測定>
(株)島津製作所製ESCA750装置を用いて励起X線;MgKα1.2線(1253.6eV)、横軸補正;中性炭素の1Sピークを284.6eVとして、光電子の検出角度;90度で測定した。
【0059】
布帛から切り出した小片を試料台にセットし、ESCA分析装置に投入して装置の測定手順に従って表面の分析を行った。次にアルゴンイオンを使ってスパッタエッチングを行い試料表面から深さ方向に0.5μm削った後、同様の手順で表面の分析を行った。
【0060】
<吸水性>
JIS L 1096(滴下法)により測定した。
【0061】
<撥水性>
JIS L 1092(スプレー法)により測定した。
【0062】
<防汚性>
JIS L 0821に規定されている汚染液150mlと直径6.4mmのステンレス鋼球10個をラウンダーメーター型洗濯試験機付属の450cc試験ビンに入れ、40±2℃に予熱した後、試料(白:5cm×10cm)を入れ、試験機に取り付け、40±2℃にて20分間回転した後、試料を取り出し、水洗した後風乾した。該汚染布の汚染の程度をJIS L 0805に規定された染色堅牢度試験用グレースケールで級判定し洗濯時における汚染のしにくさの程度を求めた。
【0063】
(実施例1)
固有粘度(IV)が1.18のホモPTTと固有粘度(IV)が0.60のホモPETをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度280℃で24孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1400m/分で引取り165デシテックス、24フィラメントのサイドバイサイド型複合未延伸糸を得た。さらにホットロール−熱板系延伸機(接糸長:20cm、表面粗度:3S)を用い、ホットロール温度85℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0倍で延伸して55デシテックス、24フィラメント(単繊維繊度d:2.3デシテックス)の延伸糸を得た。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。
【0064】
得られた高捲縮性ポリエステル複合繊維は、
収縮応力の極大温度 :130℃
収縮応力の極大値 :0.33cN/dtex
荷重下捲縮発現伸長率:20.5%
と優れた捲縮発現能力を示した。
【0065】
得られた高捲縮性ポリエステル複合繊維を2本引き揃えて110デシテックスとし、引き続いて、経糸と、緯糸の両方にこのマルチフィラメント糸を使用し、2/2綾組織の織物をウォータージェットルームにてタテ109×ヨコ73(本/2.54cm)の生機密度で製織した。
【0066】
次に得られた生機を液流バッチ方式により110℃でリラックス熱処理し、乾熱ピンテンター方式により190℃で中間セットし、減量率15%のアルカリ減量を行った後、分散染料を用いて120℃で染色した。120℃で2分乾燥した後、180℃で1分間熱処理し、密度がタテ145×ヨコ94(本/2.54cm)の織物を得た。
【0067】
この織物を放電電極に銅チューブをガラスで被覆したもの、アース電極にステンレス製ドラムを用い、放電周波数230KHz、放電電力6W/cm、真空度0.6Torrの窒素雰囲気下で10秒間の処理をした結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ特性、風合いに優れているとともに吸水性、防汚性を有する織物であった。
【0068】
(実施例2)
実施例1において得られた高捲縮性ポリエステル複合繊維を800t/m(撚係数K=8000に相当)の撚数で2本合撚して110デシテックスとして、次いで、70℃で40分間真空スチームセットにより撚り止めセットを行った。引き続いて、経糸と、緯糸の両方にこのマルチフィラメント糸を使用し、2/2綾組織の織物をウォータージェットルームにてタテ98×ヨコ76(本/2.54cm)の生機密度で製織した。
【0069】
次に得られた生機を液流バッチ方式により110℃でリラックス熱処理し、乾熱ピンテンター方式により190℃で中間セットし、減量率15%のアルカリ減量を行った後、分散染料を用いて120℃で染色した。120℃で2分乾燥した後、180℃で1分間熱処理し、密度がタテ134×ヨコ94(本/2.54cm)の織物を得た。
この織物を実施例1と同じ処理を施した結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ特性、風合いに優れているとともに吸水性、防汚性を有する織物であった。
【0070】
(実施例3)
実施例1で用いた織物を放電電極にセラミックスを焼結したステンレス製平板、アース電極にステンレス平板を用い、放電周波数6KHz、放電電力7w/cmで空気中で10秒間処理した結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ特性、風合いに優れているとともに吸水性、防汚性を有する織物であった。
【0071】
(実施例4)
実施例1で用いた織物を出力500Wの低圧水銀ランプで照度350mW/cm(253.7nm)で空気中で10秒間の処理を行った結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ特性、風合いに優れているとともに吸水性、防汚性を有する織物であった。
【0072】
(実施例5)
実施例1で用いた織物を低圧プラズマ処理(a)と同一の装置を用いて、放電周波数110KHz、放電電力5W/cm、真空度0.4Torrのパーフルオロメタン雰囲気下で10秒間の処理をした結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ特性、風合いに優れているとともに撥水性を有する織物であった。
【0073】
(比較例1)
実施例1で用いた織物の評価結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ性、風合いは優れているが吸水性と防汚性は劣るものであった。
【0074】
(比較例2)
実施例2で用いた織物の評価結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ性、風合いは優れているが吸水性と防汚性は劣るものであった。
【0075】
(比較例3)
経糸と緯糸の両方に84デシテックス72フィラメントの交絡を有するポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸を用い、2/1綾組織の織物をウォータージェットルームにてタテ110×ヨコ80(本/2.54cm)の生機密度で製織した。次に得られた生機を110℃でリラックス熱処理した後、分散染料を用いて120℃で染色した。この織物の評価結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ性、風合い、吸水性、防汚性全てにおいて劣るものであった。
【0076】
(比較例4)
比較例3で用いた織物を実施例1と同様の処理を行った。この織物の評価結果を表1に示す。表1に示すように、吸水性、防汚性は優れているがストレッチ性、風合いに劣るものであった。
【0077】
(比較例5)
実施例1で用いた織物を下記薬品を含む水溶液に浸漬後、ピックアップ率80%に設定したマングルで絞り、ピンテンターで130℃、2分乾燥させ、次いで170℃で1分間熱処理した。
特殊ポリエステル樹脂 30g/l
この織物の評価結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ性、吸水性と防汚性は優れているが風合いに劣るものであった。
【0078】
(比較例6)
実施例2で用いた織物を比較例5と同じ樹脂加工を行った。この織物の評価結果を表1に示す。表1に示すように、ストレッチ性、吸水性と防汚性は優れているが風合いに劣るものであった。
【0079】
(比較例7)
比較例3で用いた織物を比較例5と同じ樹脂加工を行った。この織物の評価結果を表1に示す。表1に示すように、吸水性と防汚性は優れているがストレッチ性、風合いに劣るものであった。
【0080】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の伸長率、平均伸長回復率の測定における荷重−伸長−回復曲線の説明図である。
【符号の説明】
【0082】
L0:初期つかみ間隔(mm)=7.6cm
L1:17.7Nまで伸ばした時のL0(初期つかみ間隔)からの伸び(mm)
L2:回復曲線がゼロ荷重になった時のL0(初期つかみ間隔)からの伸び(mm)
L3:L1−L2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系繊維表面の、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められる原子数比O1S/C1SおよびN1S/C1Sの値が、繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部での値に比べて0.02以上増加していることを特徴とするポリエステル系繊維構造物。
【請求項2】
ポリエステル系繊維表面の、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められる原子数比F1S/C1Sの値が、繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部の値に比べて0.02以上増加していることを特徴とするポリエステル系繊維構造物。
【請求項3】
該ポリエステル系繊維構造物がポリトリメチレンテレフタレートを主体とするポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル系繊維構造物。
【請求項4】
該ポリエステル系繊維構造物が、ポリトリメチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート以外の合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維から選ばれた少なくとも一つの繊維からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系繊維構造物
【請求項5】
該ポリエステル系繊維構造物の構成糸の全体重量の10%以上がポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル系繊維構造物。
【請求項6】
該ポリエステル系繊維が、一方がポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルである2種類のポリエステル系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維のマルチフィラメント糸であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル系繊維構造物。
【請求項7】
該マルチフィラメント糸が、下記式で示す撚係数Kが3000〜15000の範囲で加撚した糸条であることを特徴とする請求項6に記載のポリエステル系繊維構造物。
T=K×[1/D1/2
T:1m当たりの撚数、D:糸条の繊度(dtex)×0.9
【請求項8】
該マルチフィラメント糸が無撚であることを特徴とする請求項6または7に記載のポリエステル系繊維構造物。
【請求項9】
ポリエステル系繊維に、非重合性ガスの雰囲気下で、放電処理および紫外線処理から選ばれた少なくとも1種の処理を施すことを特徴とするポリエステル系繊維構造物の製造法。
【請求項10】
非重合性ガスが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア、パーフルオロメタンおよびパーフルオロエタンからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項9記載の繊維構造物の製造法。
【請求項11】
放電処理が、大気圧プラズマ処理または低圧プラズマ処理である請求項9または10に記載のポリエステル系繊維構造物の製造法。
【請求項12】
紫外線が、300nm以下の波長を含むものである請求項9または10に記載のポリエステル系繊維構造物の製造法。

【図1】
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